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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1376160
審判番号 不服2019-14328  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-28 
確定日 2021-07-14 
事件の表示 特願2016-555957「同時X平面撮像を用いた画像レジストレーション及び誘導」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月17日国際公開、WO2015/136392、平成29年 4月27日国内公表、特表2017-511728〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年3月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年10月24日付けで拒絶理由が通知され、平成31年4月25日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年6月28日付けで拒絶査定されたのに対し、同年10月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされ、その後、当審より令和2年6月17日付けで拒絶理由が通知され、同年12月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、令和2年12月23日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
画像アライメントのためのシステムであって、
使用者が第1の撮像モダリティからの第1の画像を第2の撮像モダリティからの第2の画像と視覚的に手動でアライメントさせることを可能にするように構成されるアライメント機構と、
前記第1の撮像モダリティと関連付けられる撮像機構であって、少なくとも2つの撮像平面における画像を同時に提供するように構成され、前記アライメント機構と関連付けられる、撮像機構と、
少なくとも2つの第1の画像の前に前記第2の撮像モダリティを用いて収集され且つ当該システムのメモリ内に格納される対応する少なくとも2つの第2の画像でオーバーレイされた、各々が前記少なくとも2つの撮像平面のうちの異なる撮像平面を示す前記少なくとも2つの第1の画像を、当該システムのディスプレイに同時に表示するように構成される、画像処理モジュールであって、前記少なくとも2つの第1の画像と前記対応する少なくとも2つの第2の画像との間での、前記アライメント機構を用いた前記アライメントを可能にするように更に構成される、画像処理モジュールと、
メモリ内に格納される、並びに、前記少なくとも2つの撮像平面内の前記アライメントが達成されたときに、前記アライメントに基づいて、前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像とレジストレーションさせるように構成される、レジストレーションモジュールとを含み、
前記画像処理モジュールは、前記アライメント機構を用いた前記アライメントに際して、前記少なくとも2つの撮像平面のうちの1つの撮像平面に対する静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像の傾斜取得角を決定し、該第2の静止画像の傾斜取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像の傾斜を相関によって調整するように構成される
前記レジストレーションモジュールは、デバイス誘導における使用のために前記第1及び第2の画像を融合させるように構成される、
システム。」(下線は請求人が付与した補正箇所である。)

第3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審が通知した令和2年6月17日付け拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)の概略は、次のとおりである。
1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 当審の判断
1 理由1(明確性)について
(1)請求項1のア及びイについて
(ア)通知した具体的内容
当審拒絶理由通知の理由1の(1)アにおいて、
「「使用者アライメント」とは、技術的にどのようなことを特定しているのか不明確である。
本願明細書の【0005】?【0008】(以下、下線は当審において付与したものである。以下同様。)には、「本原理によれば、画像アライメントのためのシステムが、画像の使用者アライメントを可能にするように構成されるアライメント機構を含む。」と記載され、「使用者アライメント」との用語が数カ所記載されており、また、【0050】にも「ブロック506では、多数の平面内で第1の画像と第2の画像との間の使用者アライメントを可能にするよう、第1の画像は第1の撮像モダリティのために処理され、収集される第2の画像は第2の撮像モダリティのために処理される。」との記載はあるが、その技術的な定義を表すような記載はない。
さらに、「加えて、使用中、多数の対応する平面内の画像122及び128は、使用者が例えば2つの直交平面の間でアライメント機能を遂行するのを可能にして、レジストレーションモジュール115によるレジストレーション位置での固定の前に適切な画像アライメントを保証するよう、同時に視覚化されてよい。」(【0028】)等の記載はあるものの、それらの記載を参照しても「使用者アライメント」が何であるのか明確に理解できない。」と指摘し、
さらに、イとして、
「「使用者アライメント」が不明確であることは上記で述べたとおりであるが、「画像の使用者アライメントを可能にするように構成されるアライメント機構」自体も明確とはいえない。
「アライメント」については、本願明細書の【0026】に「ディスプレイ又は複数のディスプレイ118は、2つ又はそれよりも多くの撮像モダリティの画像平面を整列(アライメント)させる視覚的なフィードバックを使用者に与えるように設けられる。」と記載されていることから、「整列」と同義語であると一応理解される。
しかし、「画像の」「整列」機構とは、同じ請求項1記載の「前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせする」との関係において、どのようなことを行う機構と理解すればいいのか明確でない。」と指摘した。

(イ)本件補正後の記載
請求人は、上記指摘に関する「画像の使用者アライメントを可能にするように構成されるアライメント機構」を、本件補正によって「使用者が第1の撮像モダリティからの第1の画像を第2の撮像モダリティからの第2の画像と視覚的に手動でアライメントさせることを可能にするように構成されるアライメント機構」と補正している。

(ウ)請求人の主張
請求人は、意見書で上記(ア)の指摘に対して、以下のように主張するのみである。
「請求項1中の「画像の使用者アライメントを可能にするように構成されるアライメント機構」という記載を「使用者が第1の撮像モダリティからの第1の画像を第2の撮像モダリティからの第2の画像と視覚的に手動でアライメントさせることを可能にするように構成されるアライメント機構」とより一層明確にしました。」

(エ)判断
上記(ア)において、本願明細書に「整列(アライメント)」との記載があり、「整列」と同義語であると一応理解されるとしたうえで、画像の「整列」機構とは、同じ請求項1記載の「前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせする」との関係において、どのようなことを行う機構と理解すればいいのか明確でないと指摘したのに対し、請求人は何ら説明をしていない。
上記(イ)で補正した内容は、「アライメント機構」について、「第1の撮像モダリティからの第1の画像を第2の撮像モダリティからの第2の画像と視覚的に手動でアライメントさせることを可能にするように構成されるアライメント機構」と特定したものであるが、依然として「前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせする」との関係においてどのようなことを行う機構と理解すればいいのか明確に理解できない。
また、「使用者アライメント」について、「使用者が第1の撮像モダリティからの第1の画像を第2の撮像モダリティからの第2の画像と視覚的に手動でアライメントさせる」と特定しているが、技術常識に鑑みて、「第1の撮像モダリティからの第1の画像」(例えば、超音波画像)と「第2の撮像モダリティからの第2の画像」(例えば、CT、MRIの画像)とを「視覚的に手動で」整列(アライメント)させることは想定されず、補正された「使用者が第1の撮像モダリティからの第1の画像を第2の撮像モダリティからの第2の画像と視覚的に手動でアライメントさせる」ことについても依然として技術的に明確とはいえない。

(2)請求項1のウについて
(ア)通知した具体的内容
当審拒絶理由通知の理由1の(1)ウにおいて、
「「前記アライメント機構と関連付けられる、撮像機構」、「前記少なくとも2つの第1の画像と前記対応する第2の画像との間の前記アライメント機構を用いた使用者アライメントを可能にするように更に構成される、画像処理モジュール」についても、上記(1)で述べたとおり「アライメント機構」が不明確であるから、それと「関連付けられる」撮像機構も不明確であり、「第1の画像と前記対応する第2の画像との間の」「アライメント機構」についても不明確である。」と指摘した。

(イ)本件補正後の記載
請求人は、上記指摘に関する「前記少なくとも2つの第1の画像と前記対応する第2の画像との間の前記アライメント機構を用いた使用者アライメントを可能にするように更に構成される、画像処理モジュール」を、本件補正によって「前記少なくとも2つの第1の画像と前記対応する少なくとも2つの第2の画像との間での、前記アライメント機構を用いた前記アライメントを可能にするように更に構成される、画像処理モジュール」と補正している。

(ウ)請求人の主張
請求人は、意見書で上記(ア)の指摘に対して、以下のように主張するのみである。
「上述の通り、請求項1中の「アライメント機構」は明確です。従って、請求項1中の「前記アライメント機構と関連付けられる、撮像機構」及び「前記少なくとも2つの第1の画像と前記対応する第2の画像との間の前記アライメント機構を用いた使用者アライメントを可能にするように更に構成される、画像処理モジュール」という記載も明確であると考えます。」

(エ)判断
請求人は、「アライメント機構」が明確であることを前提に、上記(ア)で指摘した点について「明確であると考えます。」と主張するのみであり、「アライメント機構」が不明確であることは、上記(1)で述べたとおりであるから、請求人の主張は、その前提において受け入れられない。
仮に、アライメント機構がなにがしかの整列を行うものとしても、整列と「関連付けられる」撮像機構(例えば、超音波プローブ)とは技術的にどのようなことを特定しようとしているのか不明確である。
また、補正された「前記少なくとも2つの第1の画像と前記対応する少なくとも2つの第2の画像との間での、前記アライメント機構を用いた前記アライメントを可能にするように更に構成される、画像処理モジュール」についても、「前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせする」との関係において不明確である。

(3)請求項1のエについて
(ア)通知した具体的内容
上記(1)及び(2)とも関連するが、当審拒絶理由通知の理由1の(1)エにおいて、
「「前記少なくとも2つの撮像平面内のアライメントが達成されたときに前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせするように構成される」について、「アライメントの達成」と画像間の「位置合わせ」との関係が明確でない。」と指摘した。

(イ)本件補正後の記載
請求人は、上記指摘に関する「前記少なくとも2つの撮像平面内のアライメントが達成されたときに前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせするように構成される」を「前記少なくとも2つの撮像平面内の前記アライメントが達成されたときに、前記アライメントに基づいて、前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像とレジストレーションさせるように構成される」と補正している。

(ウ)請求人の主張
請求人は、意見書で上記(ア)の指摘に対して、以下のように主張するのみである。
「請求項1中の「前記少なくとも2つの撮像平面内のアライメントが達成されたときに前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせするように構成される、レジストレーションモジュール」という記載を「前記少なくとも2つの撮像平面内の前記アライメントが達成されたときに、前記アライメントに基づいて、前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像とレジストレーションさせるように構成される、レジストレーションモジュール」とより一層明確にしました。」

(エ)判断
上記(ア)で指摘した「アライメントの達成」と画像間の「位置合わせ」との関係について、請求人は何ら説明していない。
また、上記(イ)での補正内容は、「位置合わせする」を「前記アライメントに基づいて、」「レジストレーションさせる」と特定したものであるが、「レジストレーション」は「位置合わせ」のこととしても(本願明細書の【0001】に「レジストレーション(位置合わせ)」と記載されている。)、「アライメントの達成」と「前記アライメントに基づいて、」画像間の「位置合わせ」との関係については、依然として不明確である。

(4)請求項1のオ及びキについて
(ア)通知した具体的内容
当審拒絶理由通知の理由1の(1)オにおいて、
「「第2の画像の取得角」における「角」とは、何に対する何の角度を特定しているのか明確でない。
この点、本願明細書には「傾斜するMR又はCT取得のために、傾斜取得の角度はDICOMヘッダ内に格納される。その値を超音波又は他の実時間撮像システムによって読み取り、X平面が適用される同じ傾斜角を有するようX平面の取得に適用し得る。」(【0039】)、「傾斜しているMR又はCT取得のために、例えばDICOMヘッダ内に格納される、傾斜取得の角度を、超音波又は他の実時間撮像システムによって読み取り、X平面が適用される同じ傾斜角を有するよう、X平面の取得に適用し得る。」(【0044】)と記載されているが、「MR又はCT」の何が何に対して傾斜した角度であるのか記載されていない。」と指摘し、
さらに、キとして、
「「前記少なくとも2つの撮像平面内のアライメントが達成されたときに前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせする」ことと、「静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像の取得角を決定し、該第2の静止画像の取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像を補正する」こととの関係が明確でない。すなわち、第1の画像と対応する第2の画像との「位置合わせ」と、第2の画像の取得角に従って行う「第1の画像の補正」との関係が明確でない。」と指摘した。

(イ)本件補正後の記載
請求人は、上記指摘に関する「静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像の取得角を決定し、該第2の静止画像の取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像を補正する」を「前記アライメント機構を用いた前記アライメントに際して、前記少なくとも2つの撮像平面のうちの1つの撮像平面に対する静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像の傾斜取得角を決定し、該第2の静止画像の傾斜取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像の傾斜を相関によって調整する」と補正している。

(ウ)請求人の主張
請求人は、意見書で上記(ア)の指摘に対して、以下のように主張するのみである。
「請求項1中の「前記画像処理モジュールは、静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像の取得角を決定し、該第2の静止画像の取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像を補正するように構成される」という記載を「前記画像処理モジュールは、前記アライメント機構を用いた前記アライメントに際して、前記少なくとも2つの撮像平面のうちの1つの撮像平面に対する静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像の傾斜取得角を決定し、該第2の静止画像の傾斜取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像の傾斜を相関によって調整するように構成される」とより一層明確にしました。」

(エ)判断
a オについて
上記(ア)で、「第2の画像の取得角」における「角」とは、何に対する何の角度を特定しているのか明確でないと指摘したことに対しては、上記(イ)で記載したとおり、「第2の画像の傾斜取得角」と補正されたが、傾斜取得「角」としても、何に対する何の角度を特定しているのか明確でなく、意見書においても、傾斜取得「角」が何に対する何の角度を特定しているのか何ら説明がない。
してみれば、依然として、傾斜取得「角」について不明確である。

b キについて
上記(ア)で、第1の画像と対応する第2の画像との「位置合わせ」と、第2の画像の取得角に従って行う「第1の画像の補正」との関係が明確でないと指摘したことに対しては、上記(イ)で記載したとおり、「第2の静止画像の傾斜取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像の傾斜を相関によって調整する」と補正されたが、第1の画像と対応する第2の画像との「位置合わせ」と、第2の静止画像の傾斜取得角に従って行う「第1の画像の傾斜を相関によって調整する」こととの関係は特定されておらず、意見書においても、前記両者の関係について何ら説明がない。
してみれば、依然として、第1の画像と対応する第2の画像との「位置合わせ」と、第2の静止画像の傾斜取得角に従って行う「第1の画像の傾斜を相関によって調整する」こととの関係は不明確である。

(5)請求項3(補正前の請求項4)について
(ア)通知した具体的内容
当審拒絶理由通知の理由1の(2)において、
「「前記アライメント機構は、複数の画像平面の各々の画像平面内の対応する地点を同時に整列させるよう、前記第1の画像及び/又は前記第2の画像内の地点を選択するように構成される」と特定されており、アライメント機構が、地点を同時に「整列させる」ように地点を選択するとはどのようなことであるのか明確でない。」と指摘した。

(イ)本件補正後の記載
請求人は、上記指摘に関する「前記アライメント機構は、複数の画像平面の各々の画像平面内の対応する地点を同時に整列させるよう、前記第1の画像及び/又は前記第2の画像内の地点を選択するように構成される」を「前記アライメント機構は、前記第1の画像及び/又は前記第2の画像内の共通の地点を選択して、複数の画像平面の各々の画像平面内の対応する地点を同時に整列させるように構成される」と補正している。

(ウ)請求人の主張
請求人は、意見書で上記(ア)の指摘に対して、以下のように主張するのみである。
「請求項3中の「複数の画像平面の各々の画像平面内の対応する地点を同時に整列させるよう、前記第1の画像及び/又は前記第2の画像内の地点を選択するように構成される」という記載を「前記第1の画像及び/又は前記第2の画像内の共通の地点を選択して、複数の画像平面の各々の画像平面内の対応する地点を同時に整列させるように構成される」とより一層明確にしました。」

(エ)判断
「前記第1の画像及び/又は前記第2の画像内の共通の地点を選択」することについて、「第1の画像内の共通の地点」、「第2の画像内の共通の地点」とは、それぞれの画像内において何が共通した地点のことを特定しているのか不明確であり、そして、「対応する地点を同時に整列させる」とは、「点」を「同時に」どのように「整列」させることを特定しようとしているのか不明確であり、これらについて意見書において何ら説明がない。
してみれば、補正された「前記第1の画像及び/又は前記第2の画像内の共通の地点を選択して、複数の画像平面の各々の画像平面内の対応する地点を同時に整列させる」ことは、依然として不明確である。

(6)請求項7及び10について
請求項7及び10は、本件補正前の各々請求項8及び11に対応し、それらについては、当審拒絶理由通知の理由1の(3)及び(4)において、
「請求項8は、上記請求項1のシステムの発明を方法の発明としたものであるから、上記請求項1で指摘した事項については同様に不明確である。」、「請求項11は、上記請求項4(本件補正後の請求項3)のシステムの発明を方法の発明としたものであるから、上記請求項4で指摘した事項については同様に不明確である。」と指摘したのに対し、請求人は、上記本件補正後の請求項1及び3と同じ対応をしていることから、請求項7については上記(1)?(4)で述べたとおり、請求項10については記(5)で述べたとおり、請求項1及び3と同様に不明確といえる。

(7)小括
よって、請求項1、3、7及び10並びにそれらを引用する請求項の記載は、不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 理由3(実施可能要件)について
(1)通知した具体的内容
当審拒絶理由通知の理由3において、以下のように指摘した。
「ア 請求項の記載
本願発明は、第1の画像(ライブ画像)と第2の画像(静止画像)を融合させるものであり、そのために、請求項1に係る発明では、「・・・前記少なくとも2つの撮像平面内のアライメントが達成されたときに前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像と位置合わせするように構成される、レジストレーションモジュールとを含み、前記画像処理モジュールは、静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像の取得角を決定し、該第2の静止画像の取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像を補正するように構成される、システム」の発明となっており、請求項8に係る発明では「・・・前記複数の平面内の視覚的なアライメントが達成された後に、前記複数の平面内で対応する第2の画像との前記第1の画像の前記アライメントを固定することを含み、前記処理することは、静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像についての傾斜取得角に従ってライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像を調節することを含む、方法」の発明となっている。

イ 一般的なレジストレーション
超音波画像と、CT、MRI等の画像とを融合あるいは合成する際には、前者の座標系と後者の座標系とを座標変換して、位置合わせを行うのが本願優先日前の周知技術(例えば、原査定の引用文献1?3、等参照)である。

ウ 判断
(ア)それに対し、本願請求項1及び8に係る発明では、第1の画像と第2の画像とのアライメントを行い両者の位置合わせをする、そして、第2の画像についての傾斜取得角に従って第1の画像の補正(調節)を行っているが、そのアライメント、さらに、傾斜取得角に従う補正をどのように行うのか本願明細書には具体的に記載されていない。
上記周知技術に鑑みて、それらを第1の画像と第2の画像との間で座標変換を行うことも想定されるところであるが、アライメントと座標変換、傾斜取得角に従う補正と座標変換との関係も不明であるから、上記周知技術を踏まえても、アライメントによる位置合わせ、さらに、傾斜取得角に従う補正をどのように行うのかについては当業者といえども明らかではない。
してみると、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及び8並びにそれらを引用する請求項2?7及び9?14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

(2)本件補正後の記載
上記(1)で請求項の記載に下線を付した部分については、本件補正によって、以下のような下線部の記載となった。
ア 請求項1について
「・・・前記少なくとも2つの撮像平面内の前記アライメントが達成されたときに、前記アライメントに基づいて、前記少なくとも2つの撮像平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像とレジストレーションさせるように構成される、レジストレーションモジュールとを含み、
前記画像処理モジュールは、前記アライメント機構を用いた前記アライメントに際して、前記少なくとも2つの撮像平面のうちの1つの撮像平面に対する静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像の傾斜取得角を決定し、該第2の静止画像の傾斜取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像の傾斜を相関によって調整するように構成される、・・・システム。」
イ 請求項7について
「・・・前記複数の平面内の前記アライメントが達成された後に、レジストレーションモジュールが、前記アライメントに基づいて、前記複数の平面内で前記第1の画像を前記対応する第2の画像とレジストレーションさせることを含み、前記処理することは、前記少なくとも2つの撮像平面に対する静止画像である前記第2の画像のうちの1つの第2の画像についての傾斜取得角に従って、ライブ画像である前記第1の画像のうちの1つの第1の画像の傾斜を相関によって調節することを含み、・・・方法。」

(3)請求人の主張
請求人は、意見書で上記(1)の指摘に対して、以下のように主張している。
「「アライメント機構」による「アライメント」又は「整列」をどのように行うかは、例えば、明細書段落0024の記載(アライメントのために画像を動かす三次元マウスとして機能する3Dプローブであるアライメント及び撮像装置136)、明細書段落0026の記載(2つ又はそれよりも多くの撮像モダリティの画像平面を整列させる視覚的なフィードバックを与えるディスプレイ118)、明細書段落0028の記載(アライメントに際して、静止画像128から傾斜取得角度を読み出し、ライブ画像122中で相関を行うこと)、及び明細書段落0037の記載(多平面内の画像122及び128の同時の視覚化は、アライメントにおけるあらゆる傾きを直ちに強調し、この傾きは、例えば、超音波122及びCT128の矢状平面が整列させられるまでアライメント機構132を調節することによって、直ちに視覚化され且つ矯正される)から当業者に明らかです。
よって、発明の詳細な説明は、請求項1-12に係る発明を実施し得る程度に明確且つ十分に記載されています。」

(4)判断
上記(1)で指摘したことを、(2)で記載した本件補正後の記載にあてはめると、以下のようになる。
a アライメントが達成された後に、アライメントに基づいて第1の画像を対応する第2の画像とレジストレーションさせ、そして、第2の静止画像の傾斜取得角に従って、第1の画像の傾斜を相関によって調整することを行っているが、そのアライメント、さらに、傾斜取得角に従う相関による調整をどのように行うのか本願明細書には具体的に記載されていない。
b 周知技術に鑑みて、第1の画像と第2の画像との間で座標変換を行うことも想定されるところであるが、アライメントと座標変換、傾斜取得角に従う相関による調整と座標変換との関係も不明であるから、上記周知技術を踏まえても、アライメントによるレジストレーション、さらに、傾斜取得角に従う相関による調整をどのように行うのかについては当業者といえども明らかではない。
それに対し、請求人の主張は、上記(3)で摘記したとおり、明細書の記載を抜き出しただけで、何ら技術的な説明をしていないことから、当審の上記(1)の指摘に対してどのように対応しているのか不明である。そこで、当審で請求人の主張を整理すると、以下のようなことを主張しているとも考えられる。
「アライメント」又は「整列」は、アライメントのために画像を動かす三次元マウスとして機能する3Dプローブであるアライメント及び撮像装置、2つ又はそれよりも多くの撮像モダリティの画像平面を整列させる視覚的なフィードバックを与えるディスプレイによって行う。そして、アライメントに際して、静止画像から傾斜取得角度を読み出し、ライブ画像中で相関を行い、アライメントにおけるあらゆる傾きを強調し、この傾きは、例えば、超音波及びCTの矢状平面が整列させられるまでアライメント機構を調節することによって矯正される。
しかし、上記説明では、アライメントを撮像装置、ディスプレイによってどのように行うのか不明であり、傾斜取得角度を静止画像からどのように決定するのか不明であり、傾斜取得角に従う相関による調整をライブ画像でどのように行うのか不明であり、そして、アライメントと座標変換、傾斜取得角に従う相関による調整と座標変換は、そもそも関係があるのかについても不明であるから、アライメントによるレジストレーション、さらに、傾斜取得角に従う相関による調整をどのように行うのかについては当業者といえども明らかではないことに変わりはない。

(5)小括
よって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及び7並びにそれらを引用する請求項2?6及び8?12に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のことから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしおらず、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないことから、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-02-03 
結審通知日 2021-02-09 
審決日 2021-02-24 
出願番号 特願2016-555957(P2016-555957)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A61B)
P 1 8・ 536- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 三崎 仁
磯野 光司
発明の名称 同時X平面撮像を用いた画像レジストレーション及び誘導  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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