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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1376169
審判番号 不服2020-7889  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-09 
確定日 2021-07-15 
事件の表示 特願2016- 51499「磁気センサおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日出願公開、特開2017-166927〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)3月15日の出願であって、その手続の経緯は、次のとおりである。
令和 元年11月29日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(原査定の謄本の送達日:同年3月10日)
令和 2年 6月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和2年6月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正は、特許請求の範囲についての補正であり、本件補正により削除された請求項はないところ、本件補正により特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所を示す。)

「 半導体基板と、
前記半導体基板の表面に離間領域を介して離間して配置された一対のホール素子と、
前記半導体基板の裏面上に設けられた導電層と、
前記導電層を介して前記半導体基板の裏面上に設けられた磁気収束板と、を備え
前記磁気収束板は前記一対のホール素子のそれぞれの少なくとも一部に平面視において重なるように配置されていることを特徴とする磁気センサ。」

2 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年2月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「 半導体基板と、
前記半導体基板の表面に離間領域を介して離間して配置された一対のホール素子と、
前記半導体基板の裏面上に設けられた導電層と、
前記導電層上に設けられた磁気収束板と、を備え
前記磁気収束板は前記一対のホール素子のそれぞれの少なくとも一部に平面視において重なるように配置されていることを特徴とする磁気センサ。」

3 補正の適否
本件補正のうち、請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「導電層上に設けられた磁気収束板」について、「導電層を介して前記半導体基板の裏面上に設けられた磁気収束板」とするものであるところ、当該補正が請求項の削除又は誤記の訂正を目的とするものではないことは明らかである。
また、補正前の請求項1において、「導電層」は、「半導体基板の裏面上に設けられた導電層」であるから、補正前の請求項1の記載においても「導電層上に設けられた磁気収束板」が「導電層を介して前記半導体基板の裏面上に設けられた磁気収束板」であることは明らかである。したがって、上記補正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもない。そして、拒絶査定においては、請求項1について、発明が明確でないことは拒絶の理由とはしていないから、特許法17条の2第5項4号括弧書きの「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。」の要件を満たすものでもない。
そして、補正前の請求項1に記載の「導電層上に設けられた磁気収束板」と補正後の請求項1に記載の「導電層を介して前記半導体基板の裏面上に設けられた磁気収束板」は、磁気収束板について同一の事項が特定されていることから、上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもない。
以上検討のとおり、上記補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。

4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1から6に係る発明は、令和2年2月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1から6に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1の記載は、前記第2の2に示したとおりである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。


第4 原査定の拒絶の理由
原査定における本願発明についての拒絶の理由は、次のとおりである。

1 理由1
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができない。
2 理由2
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献2に記載された発明に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献2:米国特許出願公開第2014/0367813号明細書

第5 各引用文献の記載事項及び引用発明の認定
1 引用文献2に記載された事項及び引用発明の認定
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、米国特許出願公開第2014/0367813号明細書(平成26年12月18日発行。以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、下線は、当審が付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。括弧内に、当審による日本語訳を示した。
「[0008] Digital compass is one type of magnetic sensors that may be manufactured using semiconductor manufacturing processes. In one type of such a compass, a plurality of Hall elements is formed on a semiconductor substrate, and integrated magnetic concentrators are formed thereon to amplify the terrestrial magnetism. The term digital compass as used herein encompasses electronic compass, digital compass and geomagnetic sensor.
[0009] An example of an integrated magnetic concentrator (IMC) is a flat-shaped magnetic field concentrator made of a magnetic material. A magnetic sensor can be constructed with a flat-shaped magnetic field concentrator and a plurality of Hall elements arranged in a vicinity of the magnetic field concentrator to detect the direction of a three-dimensional magnetic field. In such a magnetic sensor, Hall effect occurs in the presence of a magnetic field. With the application of a predetermined voltage to the semiconductor substrate, electrons or holes move, and the direction of the electrons or holes change due to the amplified magnetic field. As a result, the path of travel is lengthened. Accordingly, resistance increases, and the Hall elements are used to detect the same. Generally, a plurality of Hall elements is arranged in the magnetic sensor to monitor the changes in resistance or the amount of electric currents.
[0010] A magnetic sensor with the above-described constitution may be capable of detecting a horizontal magnetic field with the magnetic field concentrators and may also be capable of amplifying an electric field in a region in which the Hall elements are disposed.」
([0008]デジタルコンパスは、半導体製造プロセスを使用して製造され得る磁気センサの1つのタイプである。このようなコンパスの一つのタイプにおいては、半導体基板上に複数のホール素子が形成され、その上に集積型磁気コンセントレータが形成されて地磁気を増幅するものがある。本明細書で使用されるデジタルコンパスという用語は、電子コンパス、デジタルコンパス、および地磁気センサを包含する。
[0009]集積磁気コンセントレータ(IMC)の一例は、磁性材料で作られた平面形状の磁場コンセントレータである。磁気センサは、平板状の磁場コンセントレータと、当該磁場コンセントレータの近傍に配置された複数のホール素子とで構成されて3次元磁場の方向を検出することができる。このような磁気センサでは、磁界の存在下でホール効果が生じる。半導体基板に所定の電圧を印加すると、電子又は正孔が移動し、増幅された磁界によって電子又は正孔の向きが変化する。その結果、移動経路が長くなる。このため、抵抗が大きくなり、この抵抗の増大をホール素子を用いて検出する。一般に、磁気センサには、複数のホール素子が配置され、抵抗変化や電流量をモニタする。
[0010]上記構成の磁気センサは、磁場コンセントレータによって水平磁場を検出することができるとともに、ホール素子が配置された領域の電場を増幅することができる。)

「[0011] FIG. 1 illustrates a plan view of a magnetic sensor disclosed in U.S. Pat. No. 6,545,462, which includes a flat shaped magnetic field concentrator 3.」
[0012] The above constitution has a shortcoming of increasing offset voltage due to high stress on the Hall-effect elements 2.1 to 2.6.
[0013] Recently, attempts have been made to decrease the offset voltage of magnetic sensors by reducing the stress on the thick magnetic field concentrators. The offset voltage occurs when the Hall elements have voltage other than zero in the absence of the magnetic field.
[0014] Higher offset voltage leads into higher possibility of malfunction. High offset voltage causes minute changes in the actual voltage of the Hall elements in the presence of a magnetic field, and thus deteriorates the sensitivity of the magnetic sensor.
[0015] By lowering the signal-to-noise value, high offset voltage causes shortcomings such as difficulty of detecting minute changes in a magnetic field. Accordingly, the reduction of the offset voltage and the improvement of sensitivity are desirable.」
([0011]図1は、米国特許第6545462号明細書に開示された磁気センサの平面図であり、平坦な形状の磁場コンセントレータ3を含む。
[0012]上記の構成は、ホール効果素子2.1から2.6に対する高い応力に起因してオフセット電圧が増大するという欠点を有する。
[0013]最近、厚い磁場コンセントレータに対する応力を低減することによって磁気センサのオフセット電圧を低減する試みがされている。オフセット電圧は、磁界がないときにホール素子が0以外の電圧を有するときに発生する。
[0014]より高いオフセット電圧は、誤動作のより高い可能性につながる。磁界の存在下でオフセット電圧が高いと、ホール素子の実電圧に微小な変化が生じ、これにより磁気センサの感度が低下する。
[0015]信号対雑音値を低下させることによって、高いオフセット電圧は、磁場の微小な変化を検出することが困難であるなどの欠点を引き起こす。そのため、オフセット電圧の低減及び感度の向上が望まれる。)

「[0051] FIG. 2A is a cross-section view of an example of a magnetic sensor that is formed with a semiconductor substrate.
[0052] Referring to FIG. 2A, the magnetic sensor 200 includes a substrate 220 having a plurality of Hall elements 210 arranged therein, a protective layer 230 formed on the substrate 220, a base layer 240 formed on the protective layer 230 and an integrated magnetic concentrator (IMC 250) formed on the base layer 240 and having a bent or an elevated portion on a surface thereof. The substrate 220 may be a semiconductor substrate. The base layer 240 is so sized as to have a larger area in a plan view than the IMC 250. That is, the cross-sectional area of the IMC 250 along a plan parallel to the base layer 240 is smaller in size than the area of the protective layer 230 that the base layer 240 covers. Accordingly, the base layer 240 protrudes from an edge of the IMC 250. Referring to FIG. 2A, the base layer 240 has a protruding portion 240a that extends from an edge of the base layer 240 by a predetermined length B outside an outer circumference of the IMC 250 to the edge of the base layer 240.」
([0051]FIG.2Aは、半導体基板を用いて形成された磁気センサの一例の断面図である。
[0052]FIG.2Aに示すように、磁気センサ200は、複数のホール素子210が配列された基板220と、基板220の上に形成された保護膜230と、保護膜230の上に形成された下地膜240と、下地膜240の上に形成され、表面に屈曲部又は隆起部を有する集積型磁気コンセントレータ(IMC250)を備える。基板220は、半導体基板であってもよい。下地膜240は、IMC250よりも平面視における面積が大きくなるように形成されている。すなわち、下地膜240に平行な平面に沿ったIMC250の断面積は、下地膜240が覆う保護層230の面積よりも小さい。したがって、下地膜240は、IMC250の縁部から突出する。FIG.2Aに示すように、下地膜240は、下地膜240の縁部からIMC250の外周の外側に所定の長さBだけ延びる突出部240aを有する。)

「[0061] Further, to increase the sensitivity of the Hall elements 210 to magnetic field, the Hall elements 210 may be aligned in a vertical direction of the magnetic sensor to overlap a predetermined area thereof with the edge of the IMC 250. For example, the centers of the Hall elements 210 may be aligned to overlap with the edge of the IMC 250.
[0062] Referring to FIG. 2A, with reference to the edge of the IMC 250, the centers of the Hall elements 210 are within a predetermined range that does not deviate from a width A of the Hall elements 210. The width A of the Hall elements 120 may be 50 mm or less, for example.
[0063] The distance C from an upper portion of the Hall elements 210 to a lower portion of the IMC 250 may range between 1 μm and 30 mm, for example.」
([0061]さらに、磁場に対するホール素子210の感度を増加させるために、ホール素子210は、その所定のエリアが磁気センサの垂直方向で、IMC250の縁部と重なるように整列され得る。例えば、ホール素子210の中心は、IMC250の縁と重なるように配置される。
[0062]FIG.2Aに示すように、IMC250の縁部を基準として、ホール素子210の中心は、ホール素子210の幅Aから逸脱しない所定の範囲内にある。ホール素子210の幅Aは、例えば50μm以下である。
[0063]ホール素子210の上部からIMC250の下部までの距離Cは、たとえば、1?30μmの範囲であり得る。)

「[0067] Because the base layer 240 and the IMC 250 have elevated portions on its surface that has a predetermined configuration, and because the area of the protective layer 230 that the base layer 240 covers is larger than the cross-sectional area of the IMC 250 along a plane parallel to the base layer 240, the stress exerted on the Hall elements 210 is reduced in comparison to a structure that has a flat-shaped IMC with its base layer 240 and the IMC 250 having the same size. Furthermore, the size of offset voltage is reduced, and the sensitivity of the Hall elements 210 is improved. To be specific, because the base layer is larger in its cross-sectional area than the IMC, the base layer can absorb some of the stress exerted on the IMC. Further, the influence on the Hall element can be minimized by reducing the cross-sectional area or length of the base layer. The stress as used herein refers to pressure, tensile stress and/or compressive stress exerted on the Hall element.」
([0067]下地膜240及びIMC250は、所定の構成を有する隆起部分をその表面上に有し、下地膜240が覆う保護層230の面積は、下地膜240に平行な平面に沿ったIMC250の断面積よりも大きいので、ホール素子210に及ぼされる応力は、下地膜240及びIMC250が同じサイズを有する平坦な形状のIMCを有する構造と比較して低減される。また、オフセット電圧の大きさは小さくなり、ホール素子210の感度は改善する。具体的には、下地膜はその断面積がIMCよりも大きいので、下地膜はIMCに及ぼされる応力の一部を吸収することができる。また、下地膜の断面積や長さを減らすことにより、ホール素子への影響を最小限に抑えることができる。ここで、応力とは、ホール素子に作用する圧力、引張応力及び/又は圧縮応力をいう。)

「[0068]Referring to FIG. 2B, a plan view of another example of a magnetic sensor 200 is illustrated. In this example, the second buffer elevation layers 235a are formed in the shape of two concentric circles, and the surface of the base layer 240 and the surface of the IMC 250 also have elevated portions in the shape of two concentric circles. However, in other examples, the second buffer elevation layers 235a may have a plan view in which a plurality of polygons are arranged in a loop shape or in which only one circle is formed. The upper surface of an IMC 250 may include elevated portions with a corresponding shape. As used in herein, a corresponding shape includes slight variations of size, slopes and curvature. As illustrated in FIG. 2B, the protruding portion 240a of the base layer 240 extends beyond the edge of the IMC 250.
[0069] Referring to FIG. 2B, the hall elements 210 have a shape of a cross, and a center portion of the cross is aligned along an edge of the IMC 250. However, in other examples, the hall elements 210 may have various different shapes, such as a rectangular shape or a polygonal shape. Further, while six hall elements 210 are arranged along an edge of the IMC 250 illustrated in FIG. 2B, in other examples, the number of hall elements 210 may vary. Also, in other examples, the outer edge of the hall elements 210 may be aligned with the outer edge of the base layer 240.」
(「[0068]FIG.2Bには、磁気センサ200の別の例の平面図が示されている。この例で、第2緩衝隆起膜235aは、2つの同心円の形状に形成され、下地膜240の表面及びIMC250の表面も2つの同心円の形状の隆起部分を有する。しかし、他の例では、第2緩衝隆起膜235aは、複数の多角形がループ状に配置された平面図を有してもよく、1つの円のみが形成された平面図を有していてもよい。IMC250の上側表面は、対応する形状の隆起部分を含み得る。ここで使用されるように、対応する形状には、サイズ、形状、勾配及び曲率のわずかな変更も含まれる。FIG.2Bに示されるように、下地膜240の突出部分240aは、IMC250の縁部を越えて延びる。
[0069]FIG.2Bに示すように、ホール素子210は十字形状を有し、十字の中央部はIMC250の縁に沿って整列される。しかしながら、他の例では、ホール素子210は、矩形又は多角形などの様々な異なる形状を有してもよい。また、FIG.2Bでは、IMC250の縁に沿って6つのホール素子210が配置されているが、ホール素子210の数は変化し得る。また、他の例では、ホール素子210の外縁は、下地膜240の外縁と一致してもよい。)

「[0076] An example of a method of manufacturing a magnetic sensor will be explained in a greater detail below with reference to FIGS. 3A to 3P.
[0077] First, referring to FIG. 3A, a plurality of Hall elements 210 are formed in a substrate 220.The plurality of Hall elements 210 may be buried in the substrate 220 or formed on the surface of the substrate 220 at predetermined intervals from each other. The substrate 220 may include a complementary metal-oxide semiconductor (CMOS).
[0078] The Hall elements 210 include an N-type region and a P-type region, each formed by implanting N-type or P-type ions. In this example, the P-type region is formed on a predetermined portion of the surface of the semiconductor substrate, while the N-type region is formed deeper than the P-type region. The Hall elements 210 constructed as explained above are capable of detecting changes in magnetic force that is amplified by the magnetic material.」
([0076]磁気センサを製造する方法の一例を、FIG.3AからFIG.3Pを参照してより詳細に説明する。
[0077]最初に、FIG.3Aに示すように、基板220には、複数のホール素子210が形成されている。複数のホール素子210は、基板220に埋め込まれていてもよいし、基板220の表面に所定の間隔で形成されていてもよい。基板220は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を含むことができる。
[0078]ホール素子210は、N型領域及びP型領域を含み、それぞれN型又はP型イオンを注入することによって形成される。この例では、P型領域は、半導体基板の表面の所定の部分に形成され、N型領域は、P型領域よりも深く形成されている。上述のように構成されたホール素子210は、磁性体によって増幅される磁力の変化を検出することができる。」

「[0094] Referring to FIG. 3H, the base layer 240 is formed on the first buffer elevation layer 234 with the second buffer elevation 235a formed thereon, for the purpose of facilitating the electroplating that is to be subsequently performed. For example, the base layer 240 may be formed by consecutively depositing a TiW layer 242 and a Cu layer 241 in a sputtering process or in a vacuum evaporation coating process. Accordingly, the TiW layer 242 and the Cu layer 241 may be formed in sequence.
[0095] In this example, the total thickness of the TiW layer 242 and the Cu layer 241 may be 200?800 nm. The role of the base layer 240 is to facilitate the electroplating of the electric material in the subsequent process. As mentioned above, because the base layer 240 is formed on the second buffer elevation 235a, the base layer 240 has an elevated portion and a bent in its cross-section.
[0096] Referring to FIG. 3I, in order to form the IMC 250, a pattern mask 243 for the IMC 250 is first prepared by photolithography and arranged on the base layer 240. Then, referring to FIG. 3J, NiFe is electroplated on the pattern mask 243, and the IMC 250 is deposited on the upper portion of the base layer 240.」
([0094]FIG.3Hに示すように、後続の電気めっき工程を容易にするために、第2緩衝隆起膜235aが形成された第1緩衝隆起膜234上に下地膜240が形成される。例えば、下地膜240は、TiW膜242とCu膜241をスパッタリングプロセス又は真空蒸着コーティングプロセスで連続的に堆積することによって形成されることができる。これにより、TiW膜242とCu膜241は順次形成されることができる。
[0095]この例では、TiW膜242とCu膜241の合計厚さは200?800nmであり得る。下地膜240の役割は、後続のプロセスにおける電気材料の電気めっきを容易にすることである。上述したように、下地膜240は、第2緩衝隆起膜235a上に形成されるので、下地膜240は、隆起部分を有し、その断面において曲がっている。」
[0096]FIG.3Iに示すように、IMC250を形成するために、まず、フォトリソグラフィーによりIMC250のためのパターンマスクが下地膜240上に適用される。そして、FIG.3Jに示すように、NiFeがパターンマスク243上に電気めっきされ、IMC250が下地層240の上部に堆積される。)

「FIG.1



「FIG.2A



「FIG.2B



「FIG.3A



「FIG.3H



「FIG.3I



「FIG.3J



(2)引用文献2に記載された事項の検討
ア 下地膜が形成された基板220の面について
基板220に形成されるホール素子について、段落[0078]においては、次のように記載されている。
「ホール素子210は、N型領域及びP型領域を含み、それぞれN型又はP型イオンを注入することによって形成される。この例では、P型領域は、半導体基板の表面の所定の部分に形成される。」
それぞれ、N型又はP型イオンを注入することにより形成されるN型領域及び該P型領域は、半導体基板220の表面及びその近傍に形成されるものであるから、ホール素子210は、半導体基板220の表面及びその近傍に形成されるものである。
この点を踏まえてFIG.2Aを参酌すると、FIG.2Aから、ホール素子は基板220の表面に形成され、基板220のホール素子が形成された面基板220のホール素子が形成された面とは反対側の面上に下地膜240が形成されていることを読み取ることができる。

イ ホール素子210の配置について
段落[0068]を参酌しつつ、磁気センサ200の平面図である、FIG.2Bを参酌すると、次に事項を読み取ることができる。
IMC250の縁に沿って整列されている6つのホール素子210は、その中心がそれぞれ円周上に存在し、かつ、当該円周を6つの円弧に6等分する位置に6つのホール素子210が配置されており、当該円周の中心に対して反対側にホール素子210が存在するように配置されていること。

(3)引用発明の認定
上記(1)及び(2)に記載した事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、確認を容易にする目的で、日本語訳の段落、図面番号、前記(2)の項目を各段落の末尾に示した。

<引用発明>
「 複数のホール素子210が配列された基板220と、基板220の上に形成された保護膜230と、保護膜230の上に形成された下地膜240と、下地膜240の上に形成され、表面に屈曲部又は隆起部を有する集積型磁気コンセントレータ(IMC250)を備える、磁気センサ200であって、([0052]、FIG.2A)
基板220は、半導体基板であり、([0052]、FIG.2A)
磁場に対するホール素子210の感度を増加させるために、ホール素子210は、その所定のエリアが磁気センサの垂直方向で、IMC250の縁部と重なるように整列されており、かつ、ホール素子210の中心は、IMC250の縁と重なるように配置されており、([0061]、FIG.2A)
IMC250の縁に沿って6つのホール素子210が配置されてよいが、ホール素子210の数は変化し得るものであり、([0069]、FIG.2B)
電気めっき工程を容易にするために、第2緩衝隆起膜235aが形成された第1緩衝隆起膜234上に下地膜240が形成されており、下地膜240は、TiW膜242とCu膜241をスパッタリングプロセス又は真空蒸着コーティングプロセスで連続的に堆積することによって形成されたものであり、([0094]、FIG.3H)
NiFeがパターンマスク243上に電気めっきされ、IMC250が下地層240の上部に堆積されたものであり、([0096]、FIG.3J)
ホール素子は基板220の表面に形成され、基板220のホール素子が形成された面とは反対側の面上に下地膜240が形成されているものであり、(前記(2)ア、FIG.2A)
IMC250の縁に沿って整列されている6つのホール素子210は、その中心がそれぞれ円周上に存在し、かつ、当該円周を6つの円弧に6等分する位置に6つのホール素子210が配置されており、当該円周の中心に対して反対側にホール素子210が存在するように配置されている、(前記(2)イ、FIG.2B)
磁気センサ。」

2 引用文献4及び引用文献4記載の技術の認定
(1)引用文献4に記載された事項
当審が新たに引用する、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献2において先行技術を示す文献として提示された米国特許出願第6545462号明細書(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審による。括弧内に対応する日本語訳として、引用文献4のパテントファミリである特開2002-071381号公報の対応箇所の記載を、段落番号も含めてそのまま摘記した。
2欄54行-3欄62行
「 FIG. 1 shows a plan view of a sensor in accordance with the invention which is suitable, for example, as an angle sensor for the control of a brushless electric motor with three coils. The sensor comprises a semiconductor chip I with six horizontal Hall-effect elements 2.1 to 2.6 and one single magnetic field concentrator 3. With this first example, the magnetic field concentrator 3 is formed disc-shaped and the six Hall-effect elements 2 are arranged distributed at equal distances along the edge 4 of the magnetic field concentrator 3.
The Hall-effect elements 2.1 to 2.6 are realised with a generally known technology, preferably CMOS technology as n-doped well 6 (FIG. 2) in a p-doped substrate 7 (FIG. 2). Horizontal Hall-effect elements are sensitive to the components of the magnetic field which impinge vertically on the surface 8 of the semiconductor chip 1. In the example, the Hall-effect elements 2.1 to 2.6 have a cross-shaped structure whose alignment is preferably parallel to 100 crystal axis so that the influence of changing mechanical stresses on the Hall signal remains as low as possible.
The magnetic field concentrator 3 consists of ferromagnetic material, preferably permalloy or mu-metal or a metal glass which, for example, are available as a tape of around 15 .mu.m to 30 .mu.m thickness. A metal glass with a comparatively low coercitive field strength is preferred so that no Hysteresis effects occur. Furthermore, their magnetization is to a large extent isotropic.
The magnetic field concentrator 3 extends in a plane 9 and has a flat shape, ie, its thickness is considerably less than its extension in the plane. The magnetic field concentrator 3 preferably has an equal thickness. It can however be formed thicker in the middle than at the edge. The magnetic field concentrator 3 therefore works as a concentrator for the components of the magnetic field which lie in the plane 9. The function of the magnetic field concentrator 3 will be explained in more detail based on FIG. 2. In this example, the magnetic field concentrator 3 has a centre of symmetry 5, it is namely rotationally symmetrical.
FIG. 2 shows a section of the sensor along the line 1--1 of FIG. 1 as well as a permanent.magnet 10 producing a magnetic field which, for example, is mounted on the rotational axis 11 of a brushless electric motor 12 with three coils. Within its environment, the magnetic field concentrator 3 alters the course of the field lines 13 of the magnetic field and, in particular, has the effect that the field lines which, in the absence of the magnetic field concentrator 3 would run parallel to the surface 8 of the semiconductor chip 1, penetrate the Hall-effect element 2.1 almost vertically to the surface 8. The relative permeability of the material of the magnetic field concentrator 3 is greater than 1000, while the relative permeability of air and of the semiconductor substrate 7 amount to around 1. Therefore, the field lines are practically always aligned vertical to the surface of the magnetic field concentrator 3. The Hall-effect elements 2.1 to 2.6 are arranged in the area of the lateral edge 4 of the magnetic field concentrator 3 as there the vertical component of the magnetic field is largest.
Hall-effect elements lying diametrically opposed in relation to the centre of symmetry 5 (FIG. 1) form one pair each for production of an output signal whereby the Hall voltage of one Hall-effect element is subtracted from the Hall voltage of the other Hall-effect element. Because the field lines penetrate both Hall-effect elements of a pair in opposing vertical direction, the voltages which are created by the "redirecting" of the magnetic field cumulate while the Hall voltages created, for example, because of an external, magnetic interference field vertically penetrating the Hall-effect elements cancel each other out. Furthermore, technology dependent offset voltages are at least partially compensated. The Hall-effect elements 2.1 and 2.4 therefore together produce the output signal S.sub.1, Hall-effect elements 2.2 and 2.5 produce the output signal S.sub.2 and the Hall-effect elements 2.3 and 2.6 produce the output signal S.sub.3. The strength of the output signals S.sub.1, S.sub.2 and S.sub.3 is dependent on the direction of the magnetic field in the plane 9.」




(【0009】図1、例えば、3個のコイルを有するブラシレス電気モータの制御用の角度センサとして適した発明に対応するセンサの平面図を示している。センサは2.1から2.6の6個の水平ホール効果素子を有する半導体チップ1と1個の磁場センサ集線装置(コンセントレータ)3とを備えている。この最初の例を用いると、磁場コンセントレータ3がディスク上に形成され、かつ、6個のホール効果素子2は磁場コンセントレータ3の端部4に沿って等距離で分散して配置している。
【0010】ホール効果素子2.1から2.6は、pドープ基板7(図2)におけるnドープ井戸6(図2)として、一般に周知の技術、好適にはCMOS技術を用いて実現されている。水平ホール効果素子は、半導体チップ1の表面8上に垂直に入射する磁場の成分に敏感である。例では、ホール効果素子2.1から2.6は、好ましくは[100]結晶軸に平行に並んだ十字型構造を有し、そのため、ホール信号上での機械的応力を変化させる影響をできる限り小さく維持する。
【0011】磁場コンセントレータ3は強磁性材料から成り、好適には、例えば約15μmから30μmの膜厚のテープとして使用可能な、パーマロイ又はミューメタル又はメタルグラスから成る。比較的低い保持力を有する金属ガラスが好適であり、そのため、ヒステリシス効果は生じない。さらに、それらの磁化は非常に等方的である。
【0012】磁場コンセントレータ3は平面9に延びており、平たい形状を有し、すなわち、その厚さは面上での広がりに比べてかなり小さい。磁場コンセントレータ3は等しい厚さを有することが好ましい。しかしながら、端部より中央部で厚く形成することもできる。従って、磁場コンセントレータ3は、面上に存在する磁場の成分に対してコンセントレータとして作用する。磁場コンセントレータ3の機能を図2をもとに詳細を説明する。この例では、磁場コンセントレータ3は対称中心5を有する。すなわち、それは回転対称である。
【0013】図2は、図1の線I-Iに沿ったセンサの断面図であって、例えば、3個のコイルを有するブラシレス電気モータ12の回転軸11上に載置された磁場を生成する永久磁石10を示している。その環境内では、磁場コンセントレータ3は、磁力線13のコースを変え、特に、磁場コンセントレータ3がない場合に半導体チップ1の表面8にほとんど垂直に走る磁力線が、表面8に対してほとんど垂直にホール効果素子2.1を貫くという効果を有する。磁場コンセントレータ3の材料の相対透磁率は1000より大きく、一方、空気及び半導体基板7の相対透磁率は約1である。従って、磁力線は実際はいつも磁場コンセントレータ3の表面に対して垂直に並んでいる。ホール効果素子2.1から2.6は、磁場の垂直成分が最大なので、磁場コンセントレータ3の面方向端部4領域に配置している。
【0014】回転中心に対して径方向に反対に位置するホール効果素子は、出力信号の各生成に対して一対形成し、それによって一つのホール効果素子のホール電圧が他のホール効果素子のホール電圧から引かれる。磁力線が垂直方向に反対の一対のホール効果素子の両方を貫くので、磁場の“再方向付け”によって生成した電圧が蓄積し、一方、例えば、垂直にホール効果素子を貫く外側干渉磁場のために、生成したホール電圧が互いにキャンセルする。さらに、技術依存オフセット電圧は少なくとも部分的に補償される。従って、ホール効果素子2.1と2.4とは信号S1を生成し、ホール効果素子2.2と2.5とは信号S2を生成し、ホール効果素子2.3と2.6とは信号S3を生成する。出力信号S1、S2及びS3の強さは面9における磁場の方向に依存する。)

(2)引用文献4に記載された技術の認定
上記(1)の摘記事項を踏まえると、次の技術が引用文献4に記載されていると認められる(以下、当該技術を「引用文献4記載の技術」という。)。
<引用文献4記載の技術>
「 6個の水平ホール効果素子が磁場コンセントレータの端部に沿って等距離で分散して配置される半導体チップ1と1個の磁場センサ集線装置を備えるセンサにおいて、
回転中心に対して径方向に反対に位置するホール効果素子は、出力信号の各生成に対して一対形成し、それによって一つのホール効果素子のホール電圧が他のホール効果素子のホール電圧から引かれるものであり、
3組のホール素子対からそれぞれ3個の出力信号を生成すること。」

3 引用文献5に記載された事項及び技術常識1の認定
(1)引用文献5に記載された事項
当審が新たに引用する、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-047708号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0034】
図1(a),(b)は、本発明に係る磁気センサの実施例1を説明するための構成図で、ホール素子と磁気収束板の位置関係を説明するための構成図である。図1(a)は平面図で、図1(b)は図1(a)におけるL-L線断面図である。
【0035】
本発明の磁気センサは、ホール素子を含む検知部と各種回路を含む信号処理部とからなっている。本実施例1に係る磁気センサの検知部は、Si基板15の上部平面上に埋め込まれるようにして所定の間隔をおいて左右2個一対の正方形のホール素子12R,12Lが設けられている。このホール素子12R,12Lの四隅には直角三角形のコンタクト電極13R,13Lが設けられ、ホール素子12R,12Lの感磁部14R,14Lの表面と電極13R,13Lの表面とSi基板15の表面は、同一平面上に配置されている。一対のホール素子12R,12Lは、信号処理部と一体となったSi基板15上に形成されていることが好ましい。
【0036】
また、保護膜16は、Si基板15上で、ホール素子12R,12Lの感磁部14R,14Lを覆うように設けられている。さらに、保護膜16上には磁気収束板11が設けられ、この磁気収束板11は、感磁部14R,14Lの所定領域を覆うようにして配置されている円形の薄膜状磁性体板である。」

「【0041】
なお、磁気収束板11の形状は、円形だけでなく、正方形又は多角形の薄膜状磁性体板であってもかまわない。正方形の薄膜状磁性体板については、実施例4において後述する。また、本実施例1においては、左右2個一対のホール素子を用いた場合について説明したが、上下2個一対のホール素子を用いてもかまわない。また、図6に基づいて後述するように、左右(X軸)上下(Y軸)4個二対のホール素子を用いてもかまわない。さらに、2n角形の薄膜状磁性体板を用いる場合には、対向する各辺毎に一対のホール素子を配置してn対からなる(ただしn>1)ホール素子を用いてもかまわない。また、各辺に複数個のホール素子を配置し、同じ辺上の複数個の素子の出力電圧を演算してその辺の出力電圧を代表させてもかまわない。」

「【0042】
図1においては、左側のホール素子12LをL素子,右側のホール素子12RをR素子としている。磁気収束板11の厚さは6μmであり、磁気収束板11の下面と感磁部面の距離は4μmである。この4μmの間は、めっきをつけるための下地材である、Ti,W,Cuと、主にSiからなるICの保護膜16や配線層であり、いずれも非磁性体である。」

「【図1】



(2)技術常識1の認定
引用文献5の記載事項(【0034】から【0036】、【0041】、【図1】)を踏まえると、引用文献5には、基板の上部平面上に所定の間隔をおいて形成されたホール素子を備える磁気センサにおいて、ホール素子を「対(つい)にして用いること」が記載されていると認められる。引用文献5に記載された当該技術事項及び前記2において示した、引用文献4に記載の技術事項を踏まえると、次の技術事項は、技術常識であると認められる(以下「技術常識1」という。)。
<技術常識1>
「基板の上部平面上に所定の間隔をおいて形成されたホール素子を備える磁気センサにおいて、対となるホール素子を複数組備えること。」


4 引用文献6に記載された技術事項及び技術常識2の認定
(1)引用文献6に記載された事項
当審が新たに引用する、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-150732号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0003】
図3は、従来のロータリ・パルス・エンコーダの一例を示した図である。符号11は、所定の等しいピッチで磁極が交互に反転するように着磁されたリングであり、符号12および13は、その近傍に配置された磁気センサとしてのホールICである。ここで、回転角度または回転速度の検知のためには、パルス数をカウントするだけでよく、この場合は、センサは1個のみが使用される。図4は、このような場合に使用されるホールICのブロック図であり、ホール素子21、アンプ22、シュミット回路23、ドライバが一体化されている。このようなホールICは、広く用いられている。」

「【0019】
(第1の実施形態) 図1Aは、本発明の第1の実施形態のホールICと着磁リングの関係を説明する図であり、図1Bは、図1AにおけるホールICの平面を説明する図である。なお、この図1Aおよび図1Bは、拡大図ではなく、着磁リングとホールICの寸法の相対関係を表すことを意図していない。このホールICでは、Si基板上に2個のホール素子を離して形成し、その上部に保護膜をつけた後、2個のホール素子を端部でオーバーラップするように、長方形状にめっきでNi-Fe合金からなる薄膜磁性板14が形成されている。図1Bに示す面が、磁極の円周面に平行に配置される面であり、ホール素子12および13は、図1Bに示す面に垂直方向の磁束密度を検出する。2つのホール素子は、図1Aにおいて、回転方向に沿った直線上に位置するように、ホールICは方向付けされる。」

「【0035】
以上に考察したように、図1A、図1Bおよび図5に示す位置検出装置により得られた2つの信号、例えば、前記2つのホール素子の各出力の差の信号と、前記2つのホール素子の各出力の和の信号は、着磁リングの着磁ピッチや、着磁リングとホール素子の間隔に関わらず、正確にπ/2の位相差をもっているため、2個の信号の排他的論理和を取ることで、1回転あたりのパルス数を、正確に1:1のデューティー比で倍にすることができる。すなわち、分解能を倍にすることができる。」

「【図1A】



「【図1B】



(2)技術常識2の認定
上記(1)の摘記事項においては、「対」の文言は明記されていないものの、2個のホール素子の差信号及び和信号を生成していることから、当該2個のホール素子は、「対」として使用されていることが分かる。引用文献6に記載されているように、次の技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識5」という。)。
<技術常識2>
「基板上に2個のホール素子を離して形成した磁気センサにおいて、2個のホール素子から差の信号と和の信号を生成し、対として使用すること。」


5 引用文献3に記載された技術事項
(1)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-333721号公報(平成19年12月27日出願公開。以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【0042】
図10(a)?(c)及び図11(d)?(f)は、本発明に係る磁気センサの製造方法の一実施例を説明するための工程断面図である。
【0043】
まず、図10(a)に示すように、SiやGaAsからなる半導体基板13中に、この半導体基板13の表面と同一の平面になるように互いに所定の距離を隔てて複数のホール素子14a,14bを埋め込み形成し、次に、半導体基板13上に、SiO_(2)やSiNなどの絶縁層を介しながらIC配線層17を形成して、半導体回路11を形成する(磁気センサチップの作製)。さらにその上に、通常のIC形成時に行われるパッシベーション保護膜やポリイミド膜をパターニングすることにより、半導体回路11上にポリイミドからなる保護層15を5μmの厚さで形成する(ポリイミドパターニング)。
【0044】
次に、図10(b)に示すように、保護層15上に、Ti、W又はTiW合金からなる膜厚0.01?1μmの第1の金属膜16aをスパッタリング法又は真空蒸着法により形成する(第1下地層形成)。」
【0045】
次に、図10(c)に示すように、第1の金属膜16a上に、Cuからなる膜厚0.1?2μmの第2の金属膜16bをスパッタリング法又は真空蒸着法により形成する(第2下地層形成)。この第1下地層及び第2下地層は、UBM層(Under Bump Metal)にあたる。保護層15と下地金属層16a,16bの合計の厚みは約6μmである。
【0046】
次に、図11(d)に示すように、第2の金属膜16b上に、ホール素子14a,14b上が空隙部18aとなるように、フォトリソグラフィーによるレジストパターンニングによりフォトレジスト18を形成する(レジストパターン形成)。ここにおいて、空隙部18aは、複数のホール素子14a,14bの感磁面の中心位置が、空隙部18aの中心位置から半径距離の0.58?0.92倍の領域内に位置するように形成する。
【0047】
次に、図11(e)に示すように、第2の金属膜16b上の空隙部18aに、膜厚5?30μmの磁気増幅機能を有する磁気収束板12を電解めっきで形成する(磁性体メッキ処理)。これにより、複数のホール素子14a,14bの感磁面の中心位置が、磁気収束板12の中心位置から半径距離の0.58?0.92倍の領域内に位置することになる。
【0048】
この磁気収束板12は、Fe-Ni系合金を電解メッキにより作製したもので、パーマロイやスーパーマロイ(Fe-Ni系合金)からなることが好ましく、それにCoを添加したものは、磁気ヒステリシスが減少するのでより好ましい。さらには、パーメンジュール(Fe-Co系合金)又はセンダスト(Fe-Si-Al系合金)からなることが好ましい。
【0049】
次に、図11(f)に示すように、フォトレジスト18を除去する(レジストパターン除去)。その結果、磁気収束板12が第2の金属膜16b上に残ることになる。」

「【図10】



「【図11】



(2)引用文献3に記載の技術事項の認定
前記(1)の摘記事項を踏まえると、引用文献3には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「 半導体基板中に、この半導体基板の表面と同一の平面になるように互いに所定の距離を隔てて複数のホール素子を埋め込み形成し、次に、半導体基板上にIC配線層を形成し、このIC配線層上にポリイミドからなる保護層を5μmの厚さで形成し、この保護層上に、Ti、W又はTiW合金からなる膜厚0.01?1μmの第1の金属膜を形成し、この第1の金属膜上に、Cuからなる膜厚0.1?2μmの第2の金属膜を形成し、この第2の金属膜上に磁気増幅機能を有する磁気収束板を電解めっきで形成した磁気センサであって、保護層と下地金属層の合計の厚みは約6μmであること。」

第6 本願発明と引用発明の対比
1 本願発明と引用発明の構成ごとの対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明と引用発明は、「磁気センサ」の発明である点で一致する。

(2)引用発明の磁気センサは、「基板220」を備えるところ、「基板220は、半導体基板」であるから、本願発明と引用発明は、「半導体基板」を備える点で一致する。

(3)引用発明においては、「複数のホール素子210が配列された基板220」を備え、「ホール素子は基板220の表面に形成され」ているから、半導体基板の表面に配置された複数のホール素子を備えているということができる。
さらに、引用発明においては、「IMC250の縁に沿って整列されている6つのホール素子210は、その中心がそれぞれ円周上に存在し、かつ、当該円周を6つの円弧に6等分する位置に6つのホール素子210が配置されており、当該円周の中心に対して反対側にホール素子210が存在するように配置されている」から、引用発明の6つの「ホール素子210」は、離間領域を介して離間して配置されているということができる。
以上を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記半導体基板の表面に離間領域を介して離間して配置された複数のホール素子」を備える点で共通する。

(4)引用発明においては、「下地膜240」は、「TiW膜242とCu膜241をスパッタリングプロセス又は真空蒸着コーティングプロセスで連続的に堆積することによって形成されたもの」であるから、導電性を有することは明らかである。そして、引用発明においては、「基板220のホール素子が形成された面とは反対側の面上に下地膜240が形成されている」ことも踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記半導体基板の裏面上に設けられた導電層」を備える点で一致する。

(5)引用発明の「磁気コンセントレータ(IMC250)」は、「下地層240の上部に堆積されたもの」であるから、上記(4)の検討も踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記導電層上に設けられた磁気収束板」を備える点で一致する。

(6)引用発明において、「ホール素子210は、その所定のエリアが磁気センサの垂直方向で、IMC250の縁部と重なるように整列されており、かつ、ホール素子210の中心は、IMC250の縁と重なるように配置されて」いるから、上記(5)における検討も踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記磁気収束板は前記複数のホール素子のそれぞれの少なくとも一部に平面視において重なるように配置されている」点で共通する。

2 一致点及び相違点の認定
上記1の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明は、次のアの一致点において一致し、次のイの相違点において一応の相違があると認められる。

ア 一致点
「 半導体基板と、
前記半導体基板の表面に離間領域を介して離間して配置された複数のホール素子と、
前記半導体基板の裏面上に設けられた導電層と、
前記導電層上に設けられた磁気収束板と、を備え
前記磁気収束板は前記複数のホール素子のそれぞれの少なくとも一部に平面視において重なるように配置されている磁気センサ。」

イ 相違点
「複数のホール素子」について、本願発明は、「一対のホール素子」を備えるのに対し、引用発明は、当該ホール素子を対で使用することは特定されていない点。


第7 判断
1 相違点について
(1)引用文献4の参酌
引用発明が記載されている引用文献2は、先行技術を示す文献として「引用文献4」を引用している(引用文献の段落[0011]参照)。そして、「オフセット電圧の低減及び感度の向上が望まれる」([0015]参照)としており、引用発明は引用文献4記載の技術の改善をするものである。
したがって、引用発明は、引用文献4記載の技術(「6個の水平ホール効果素子が磁場コンセントレータの端部に沿って等距離で分散して配置される半導体チップ1と1個の磁場センサ集線装置を備えるセンサにおいて、回転中心に対して径方向に反対に位置するホール効果素子は、出力信号の各生成に対して一対形成し、それによって一つのホール効果素子のホール電圧が他のホール効果素子のホール電圧から引かれるものであり、3組のホール素子対からそれぞれ3個の出力信号を生成すること。」(前記第5の3(2)参照))を前提として当然に把握されるべきである。
してみれば、引用発明における各ホール素子を「円周の中心に対して反対側にホール素子2」と対にして用いることは当然に把握されることであるから、前記相違点は、引用文献2に記載されているに等しい事項であり、実質的な相違点ではない。少なくとも、引用文献2で引用された引用文献4記載の技術から当業者には自明の事項である。

(2)技術常識1の参酌
前記第5の3(2)」において認定したとおり、「基板の上部平面上に所定の間隔をおいて形成されたホール素子を備える磁気センサにおいて、対となるホール素子を複数組備えること。」は技術常識である(技術常識1)。したがって、引用発明における6個のホール素子を、3対のホールそして捉えることは、引用文献2に記載されているに等しい技術事項であるから、前記相違点は実質的な相違点ではなく、少なくとも、当業者にとって自明の技術事項であると認められる。

(3)技術常識2の参酌
「基板上に2個のホール素子を離して形成した磁気センサにおいて、2個のホール素子から差の信号と和の信号を生成し、対として使用すること。」は技術常識であると認められる(前記第5の4(2)の「技術常識2」を参照)。したがって、本願発明においては、「一対のホール素子」の数の限定はないものの、仮に「一対のホール素子」の数が「一組」に限定されたとしても、このような設計変更は、当業者にとって自明である。そして、このような設計変更をしたことにより、当業者が予測できない格別顕著な効果を奏するとは認められない。
したがって、仮に「一対のホール素子」の数が「一組」に限定されたとしても、この点は、当業者が容易に想到し得たものである。

(4)相違点の判断のむすび
以上検討のとおり、本願発明と引用発明の間に実質的な差異はなく、本願発明は、引用発明と同一であり、少なくとも、本願発明は、引用発明及び技術常識1又は技術常識2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。したがって、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

2 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書において次の2点の主張をしている。
ア 請求人の主張1
引用文献2は、「FIG.4に、基板(SUB)の表面にホール素子(Hall element)が形成され、その上面に層間膜(ILD)、その上に配線層間膜(IMD)、その上に保護膜(Passivation)を形成し、その上方にIMCを形成することを記載して」いることから、引用発明は、「ホール素子210が、基板220の表面(もしくは表面近傍)に形成され、ホール素子210の上面に保護層230、その上面にベース層240、さらにその上面、すなわち「基板220の表面上」側にIMC250(磁気収束板)が形成され」たものであるため、本願発明と引用発明は、この点で相違する。

イ 請求人の主張2
引用文献2には、「複数のホール素子210は、IMC250(磁気収束板)の下部から距離C(例えば、1μmから30μmの間)の範囲、つまり「基板220の表面(もしくは表面近傍)」に形成され、IMC250(磁気収束板)も「基板220の表面上」に形成することを明確に記載して」いるため、引用発明は、「ホール素子210が、基板220の表面(もしくは表面近傍)に形成され、ホール素子210の上面に保護層230、その上面にベース層240、さらにその上面、すなわち「基板220の表面上」側にIMC250(磁気収束板)が形成され」たものであり、本願発明と引用発明は、この点で相違する。

(2)請求人の主張の検討
ア 請求人の主張1について
引用文献2には、FIG.2A、FIG.2B、FIG.3A、FIG.3HからFIG.3Jにおける半導体基板220について、該半導体基板220の表面及びホール素子形成領域付近を切り出した図面であることは、記載されていない。また、FIG.2A、FIG.2B、FIG.3A、FIG.3HからFIG.3Jにおけるホール素子210、下地膜240、磁気コンセントレータ(IMC)250について、半導体基板220におけるホール素子210上面に保護層230、下地膜240、磁気コンセントレータ(IMC)250を形成することも記載されていない。
請求人が主張の根拠とするFIG.4に示される実施形態は、当審が引用した実施形態に加えて、半導体基板と下地層との間に層間膜(ILD)、配線層間膜(IMD)保護膜(Passivation)を含んでおり、FIG.4に示される実施形態と当審で引用する実施形態は、別の実施形態である。
以上の点及び前記第5の1(2)アで検討した点を考慮すると、当審が引用発明について「ホール素子は基板220の表面に形成され、基板220のホール素子が形成された面とは反対側の面上に下地膜240が形成されているものであり」、と認定したことに誤りがあるとは認められない。したがって、請求人の主張1は、採用できない。

イ 請求人の主張2について
引用文献3には、「半導体基板中に複数のホール素子を形成した磁気センサであって、保護層と下地金属層の合計の厚みが約6μmであるもの」が記載されている(前記第5の3(2)参照)。また、引用文献5の段落【0041】を参酌すると、「磁気収束板の下面と感磁部面の距離は4μmである。この4μmの間は、めっきをつけるための下地材であるTi、W、Cuと、主にSiからなるICの保護膜16や配線層であり」との記述がある。
以上の事例も参酌すると、保護膜と下地層との厚みは、配線層の厚みを加味したとしても数μm程度であると推測できるから、たとえ「磁気コンセントレータ(IMC250)の下部からの複数のホール素子210の距離Cが例えば1?30μmで」あったとしても、例えば、半導体基板の厚みとして「30μm - 数μm」の厚みを有することが理解できる。
そうすると、引用文献2において、「磁気コンセントレータ(IMC250)の下部からの複数のホール素子210の距離Cが例えば1?30μm」との記載があることは、下地膜形成面がホール素子形成面の反対側にあると読み取ることの妨げにはならない。
したがって、請求人の主張点2を採用することはできない。


3 補正後の請求項1に係る発明について

引用発明において、「基板220は、半導体基板であり」、「電気めっき工程を容易にするために、第2緩衝隆起膜235aが形成された第1緩衝隆起膜234上に下地膜240が形成されており、下地膜240は、TiW膜242とCu膜241をスパッタリングプロセス又は真空蒸着コーティングプロセスで連続的に堆積することによって形成されたものであり、」「NiFeがパターンマスク243上に電気めっきされ、IMC250が下地層240の上部に堆積されたもの」であるから、本件補正後の請求項1に係る発明と引用発明は、「導電層を介して前記半導体基板の裏面上に設けられた磁気収束板」を備えている点で一致するということができる。
この点を踏まえると、本件補正により特定された「導電層を介して前記半導体基板の裏面上に設けられた磁気収束板」の点は、引用発明との対比において相違点を構成するものでないから、本件補正後の請求項1に係る発明と引用発明の相違点は、本願発明(本件補正前の請求項1に係る発明)と引用発明の相違点と一致する。
そうすると、仮に本件補正が却下されることなく本件補正後の請求項1について独立特許要件又は特許要件の判断をしたとしても、前記1及び前記2の判断に影響を与えるものではない。したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法29条1項3号に該当する又は同法29条2項の規定に違反し、特許を受けることができないものである。


第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-04-30 
結審通知日 2021-05-06 
審決日 2021-05-28 
出願番号 特願2016-51499(P2016-51499)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G01R)
P 1 8・ 574- Z (G01R)
P 1 8・ 57- Z (G01R)
P 1 8・ 113- Z (G01R)
P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永井 皓喜  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 中塚 直樹
清水 靖記
発明の名称 磁気センサおよびその製造方法  
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