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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61G
管理番号 1376352
審判番号 不服2020-7606  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-03 
確定日 2021-07-21 
事件の表示 特願2016-536415号「呼吸器系の健康を改善するための組成物および脊椎動物の肺のハイポチオシアン酸イオンの濃度を高めるための装置の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日国際公開、WO2015/026958、平成28年12月 1日国内公表、特表2016-537144号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)8月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年8月20日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月18日に手続補正書が提出され、平成30年9月4日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年5月27日付けで2回目の拒絶理由が通知され、同年12月3日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月23日付けで2回目の拒絶理由による拒絶査定がされ、その後、同年6月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年7月27日に審判請求書を補正する手続補正書(方式)が提出され、同年9月8日に上申書が提出されたものである。

第2 本願の請求項1の記載
令和2年6月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項は、拒絶査定の対象となった、令和1年12月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項と同じであり、記載内容の変更はない。
そして、本願の請求項1?15に係る発明は、令和2年6月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定しようとしているものであると認められるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。
「必要とする被験者の呼吸器疾病を治療するための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物であって:前記方法は、
0.01?1.0百万分率(ppm)の最終濃度で、実質的に水和とオゾンを含まず、かつ、少なくとも0.05単位のPHPGの供与量を提供する精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む治療用の密閉空間を提供する工程と;ついで
少なくとも1つの期間にわたって前記必要とする被験者を前記密閉空間に曝露する工程と、を含み、
前記治療が、呼吸器感染症の重篤度の低減、呼吸器感染症の持続期間の短縮、呼吸器感染症の伝染の防止、集団内での呼吸器感染症の伝染の低減、または、それらのいずれかの組み合わせを含む、ことを特徴とする組成物。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明に対する新規性進歩性の拒絶の理由は、以下のとおりである。
請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2010-535807号公報

第4 引用文献の記載事項等
1 記載事項
原査定の拒絶の理由により引用された引用文献1には図面とともに次の記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。
(1a)「【請求項1】
微生物の制御や環境の消毒または改善をするための方法において、(a) 実質的に水和,オゾン,プラズマ種や有機質種のない精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成し、(b) PHPGを、微生物の制御や環境の消毒または改善をもたらすべく作用するように環境中の表面上および空気中へ放出することからなる方法。
・・・
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、生成されたPHPGの濃度は、0.005ppm乃至0.10ppmである方法。
【請求項4 】
請求項1に記載の方法において、上記微生物の制御や環境の消毒または改善は、室内空気処理,水の浄化,カビ除去,バクテリア除去およびウイルス除去を含む方法。」

(1b)「【0034】
或る実施形態では、微生物の制御や空気の殺菌または改善および関連する環境(その中の表面を含む)を参照して、PHPGの量は、殺菌すべき環境において略0.005ppmから略0.10ppmまで、特に略0.02ppmから略0.05ppmまでに変化する。このような量は、例えばネコカリシウイルス(E PAは、ノロウイルスの代替と認めている),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),バンコマイシン耐性腸球菌ファカリス(VRE),クロストリジウム・ディフィシル(C-Diff),ジェオバシラス・ステアロサーモフィラス,クロコウジカビに対して有効なことが実証されている。このような量のPHPGは、(学校,病院,事務所,家庭,他の共用領域を含むがこれらに限られない)人のいる領域で安全に使用でき、表面を汚染する微生物を殺菌し、空中の病原菌を殺菌し、例えばインフルエンザ大流行の拡大を防ぎ,院内感染を制御し,一般の疾病の伝染を減じるなどの微生物制御を提供する。」

(1c)【表3】は次のとおりである。


2 認定事項
「環境中の表面上および空気中へ放出する」「精製過酸化水素ガス(PHPG)」を含むもの(摘示(1a)の請求項1参照。)は、「室内空気処理,」「カビ除去,バクテリア除去およびウイルス除去を含む」「微生物の制御や環境の消毒または改善をするための方法」(摘示(1a)の請求項1、4参照。)に使用するための組成物といえるものである。

3 引用発明
上記「1」、「2」より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」ともいう。)が記載されているものと認める。
「室内空気処理,カビ除去,バクテリア除去およびウイルス除去を含む微生物の制御や環境の消毒または改善をするための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物であって、(a) 実質的に水和,オゾン,プラズマ種や有機質種のない精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成し、(b) PHPGを、微生物の制御や環境の消毒または改善をもたらすべく作用するように環境中の表面上および空気中へ放出することからなり、
生成されたPHPGの濃度は、0.005ppm乃至0.10ppmであり、
学校,病院,事務所,家庭,他の共用領域を含む人のいる領域で安全に使用でき、表面を汚染する微生物を殺菌し、空中の病原菌を殺菌し、例えばインフルエンザ大流行の拡大を防ぐ組成物。」

第5 対比・判断
1 本願発明(その1)について
(1)対比
本願の請求項1に係る発明は、「必要とする被験者の呼吸器疾病を治療するための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物」に係る発明である。
そうすると、本願の請求項1の事項のうち、「前記方法は、」「かつ、少なくとも0.05単位のPHPGの供与量を提供する精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む治療用の密閉空間を提供する工程と;ついで 少なくとも1つの期間にわたって前記必要とする被験者を前記密閉空間に曝露する工程と、を含み、」という事項は、治療方法に係る事項であって、当該「組成物」自体を特定する事項とはいえない。
上述したように本願の請求項1に係る発明は、「組成物」の発明であるから、上記の治療方法に係る事項は、請求項1に記載されているものの、実質的に本願の請求項1に係る発明を特定する事項とはいえないから、「組成物」の発明である本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明(その1)」という。)を改めて整理すると次のとおりのものといえる。
「必要とする被験者の呼吸器疾病を治療するための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物であって:
0.01?1.0百万分率(ppm)の最終濃度で、実質的に水和とオゾンを含まず、
前記治療が、呼吸器感染症の重篤度の低減、呼吸器感染症の持続期間の短縮、呼吸器感染症の伝染の防止、集団内での呼吸器感染症の伝染の低減、または、それらのいずれかの組み合わせを含む、ことを特徴とする組成物。」

以上のことを踏まえて、本願発明(その1)と引用発明とを対比する。
ア 後者の「精製過酸化水素ガス(PHPG)」及び「PHPG」は前者の「精製過酸化水素ガス(PHPG)」及び「PHPG」に、同様に、「水和」は「水和」に、「オゾン」は「オゾン」に、それぞれ相当する。

イ 後者の「(a) 実質的に水和,オゾン,プラズマ種や有機質種のない精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成し、(b) PHPGを、微生物の制御や環境の消毒または改善をもたらすべく作用するように環境中の表面上および空気中へ放出することからなり、生成されたPHPGの濃度は、0.005ppm乃至0.10ppmであり」ということと、前者の「0.01?1.0百万分率(ppm)の最終濃度で、実質的に水和とオゾンを含まず」ということとは、「実質的に水和とオゾンを含まず」ということで共通するといえる。

ウ 前者の「治療」は「呼吸器感染症の重篤度の低減、呼吸器感染症の持続期間の短縮、呼吸器感染症の伝染の防止、集団内での呼吸器感染症の伝染の低減、または、それらのいずれかの組み合わせを含む」というものであるから、「治療」が「呼吸器感染症の伝染の防止」や「集団内での呼吸器感染症の伝染の低減」である場合も含むものである。
そして、後者の「インフルエンザ」は呼吸器感染症の一種であり、ウイルスを吸い込むことなどにより集団内で伝染しやすく、呼吸器感染症の症状なども発症するものであるから、「インフルエンザ大流行の拡大を防ぐ」ということは、インフルエンザの伝染の防止ないし集団内でのインフルエンザの伝染の低減をしているといえる。また、前者の「治療」には、「呼吸器感染症の伝染の防止」や「集団内での呼吸器感染症の伝染の低減」である場合も含むものであるから、そのような前提を踏まえれば、後者の「人」は、前者の「被験者」に相当するといえる。
そうすると、後者の「学校,病院,事務所,家庭,他の共用領域を含む人のいる領域で安全に使用でき、表面を汚染する微生物を殺菌し、空中の病原菌を殺菌し、例えばインフルエンザ大流行の拡大を防ぐ」、「室内空気処理,カビ除去,バクテリア除去およびウイルス除去を含む微生物の制御や環境の消毒または改善をするための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物」は、前者の「治療が、呼吸器感染症の重篤度の低減、呼吸器感染症の持続期間の短縮、呼吸器感染症の伝染の防止、集団内での呼吸器感染症の伝染の低減、または、それらのいずれかの組み合わせを含む」、「必要とする被験者の呼吸器疾病を治療するための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物」に相当するといえる。

エ 以上のことを総合すると、本願発明(その1)と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点1〕
「必要とする被験者の呼吸器疾病を治療するための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物であって:
実質的に水和とオゾンを含まず、
前記治療が、呼吸器感染症の重篤度の低減、呼吸器感染症の持続期間の短縮、呼吸器感染症の伝染の防止、集団内での呼吸器感染症の伝染の低減、または、それらのいずれかの組み合わせを含む組成物。」

〔相違点1〕
「精製過酸化水素ガス(PHPG)」の濃度について、本願発明(その1)は「0.01?1.0百万分率(ppm)の最終濃度」であるのに対し、引用発明は「0.005ppm乃至0.10ppm」である点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
引用発明の「生成されたPHPGの濃度は、0.005ppm乃至0.10ppmであり」ということは、摘示(1b)の「PHPGの量は、殺菌すべき環境において略0.005ppmから略0.10ppm」という記載も踏まえれば最終濃度であることが自明のことといえる。
そして、最終濃度について、本願発明(その1)と引用発明とは、少なくとも「0.01?0.10百万分率(ppm)」の範囲で共通するものであるから、この意味において上記相違点1における最終濃度については実質的な相違点とはいえない。
また、具体的な最終濃度は、所望とする殺菌効果や人体に対する安全性等を考慮して当業者が適宜設定すべきことであるので、引用発明の数値範囲から外れる範囲についても、当業者であれば所望により適宜設定し得たことである。
そして、それによる効果も当業者の予測の範囲内といえる。

したがって、本願発明(その1)は、引用発明であるか、あるいは、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。。

2 本願発明(その2)について
「必要とする被験者の呼吸器疾病を治療するための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物」に係る本願の請求項1に係る発明については、上記「1」のとおりであるが、仮に、「前記方法は、」「かつ、少なくとも0.05単位のPHPGの供与量を提供する精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む「治療用の密閉空間を提供する工程と;ついで 少なくとも1つの期間にわたって前記必要とする被験者を前記密閉空間に曝露する工程と、を含み、」という事項が、当該「組成物」を特定する事項と理解し得るものであり、本願の請求項1の記載(上記「第2」参照。)により特定されるものが、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明(その2)」という。)であるとして、以下検討する。
(1)対比
本願発明(その2)と引用発明とを対比する。
ア 本願発明(その2)における本願発明(その1)と共通する事項と、引用発明との対比については、上記「1(1)」のとおりである。

イ 以上のことから、本願発明(その2)と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点2〕
「必要とする被験者の呼吸器疾病を治療するための方法に使用するための精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む組成物であって:
実質的に水和とオゾンを含まず、
前記治療が、呼吸器感染症の重篤度の低減、呼吸器感染症の持続期間の短縮、呼吸器感染症の伝染の防止、集団内での呼吸器感染症の伝染の低減、または、それらのいずれかの組み合わせを含む組成物。」

〔相違点2〕
「精製過酸化水素ガス(PHPG)」の濃度について、本願発明(その2)は「0.01?1.0百万分率(ppm)の最終濃度」であるのに対し、引用発明は「0.005ppm乃至0.10ppm」である点。

〔相違点3〕
「方法」について、本願発明(その2)は「前記方法は、」「少なくとも0.05単位のPHPGの供与量を提供する精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む治療用の密閉空間を提供する工程と;ついで少なくとも1つの期間にわたって前記必要とする被験者を前記密閉空間に曝露する工程と、を含み、」という事項を有するのに対し、引用発明は当該事項の特定がない点。

(2)判断
ア 相違点2について
まず、上記相違点2について検討すると、上記相違点1と同一内容であり、その判断についても、上記「1(2)」で示したとおりである。

イ 相違点3について
次に、上記相違点3について検討する。
(ア)引用発明の「学校,病院,事務所,家庭,他の共用領域を含む人のいる領域」は、摘示(1b)の「PHPGの量は、殺菌すべき環境において略0.005ppmから略0.10ppm」という記載も踏まえれば、実質的に密閉空間であることは明らかである(屋外であれば濃度の維持ができないし、屋内であっても開放空間であれば同様に濃度の維持ができない。)から、引用発明も精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む密閉空間を提供する工程を有しているといえる。また、そのような「領域」には「人」が所定の期間留まることは明らかであって、引用発明も「人」を当該「領域」に曝露する工程を有しているといえる。そして、密閉空間が「治療用」であること、及び人が「被験者」であることについては、上記「1(1)ウ」で示したことと同様である。

(イ)そして、「供与量」について本願明細書の段落【0093】の「供与量は、被験者をPHPG含有環境に曝す時間数を乗じたppmでのPHPGの濃度と等価のPHPGの『単位数』で定義可能である。」との記載を踏まえて以下検討する。
引用発明の「学校」においては、学生や教員等の学校職員が5時間程度以上留まることは、十分想定し得ることであり、「病院」における入院患者や医師等の病院職員、「事務所」における従業員、及び「家庭」における家族についても同様のことがいえる。
そうすると、上記相違点2についての判断において、本願発明(その2)と引用発明とで「精製過酸化水素ガス(PHPG)」の最終濃度が共通する「0.01?0.10百万分率(ppm)」(上記「1(2)」も参照。)の範囲を検討すると、引用発明の当該範囲において最も濃度が低い0.01百万分率(ppm)であっても5時間以上なら、0.05単位以上となるため、引用発明も「少なくとも0.05単位のPHPGの供与量を提供する」という事項を実質的に有しているといえる。

(ウ)以上のことを総合すると、引用発明は、上記相違点3に係る本願発明(その2)の「前記方法は、」「少なくとも0.05単位のPHPGの供与量を提供する精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む治療用の密閉空間を提供する工程と;ついで少なくとも1つの期間にわたって前記必要とする被験者を前記密閉空間に曝露する工程と、を含み、」という事項を実質的に有しているといえる。

(エ)あるいは、上記(ア)?(ウ)まではいえなかったとしても、引用発明においてもある程度の時間にわたって人を精製過酸化水素ガス(PHPG)に曝露した方が、殺菌効果を期待できることは自明のことであるから(引用文献1の実験結果を示す【表3】(摘示(1c)も参照。)、引用発明において「少なくとも0.05単位のPHPGの供与量を提供する」ようにし、さらに「人のいる領域」を「密閉空間」として「精製過酸化水素ガス(PHPG)を含む治療用の密閉空間を提供する工程」と「少なくとも1つの期間にわたって前記必要とする被験者を前記密閉空間に曝露する工程」とを含ませることにより、上記相違点3に係る本願発明(その2)の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、それによる効果も当業者の予測の範囲内といえる。

したがって、本願発明(その2)は、引用発明であるか、あるいは、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 請求人の主張について
請求人は、令和2年7月27日付けの手続補正書(方式)により補正された審判請求書(4,(2))及び同年9月8日付けの上申書(4.(2))において、新規性の理由に対し、「本願発明についていえば、引用文献1には必要とする被験者における疾病、いわんや呼吸器疾病については全く記載されていないと思料いたします。したがいまして、本願発明は引用文献1に記載された発明とは別異の発明であると思料いたします。」と主張する。
しかしながら、本願の請求項1に係る発明において、「治療」が「呼吸器感染症の伝染の防止」や「集団内での呼吸器感染症の伝染の低減」を含むものであるところ、引用発明は「インフルエンザ大流行の拡大を防ぐ」という事項を有するものであり、当該事項が、本願の請求項1に係る発明における「呼吸器感染症の伝染の防止」ないし「集団内での呼吸器感染症の伝染の低減」に相当することは、上記「第5 1(1)ウ」で述べたとおりであるので、請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであるか、あるいは、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-02-12 
結審通知日 2021-02-16 
審決日 2021-03-04 
出願番号 特願2016-536415(P2016-536415)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小島 哲次  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
出口 昌哉
発明の名称 呼吸器系の健康を改善するための組成物および脊椎動物の肺のハイポチオシアン酸イオンの濃度を高めるための装置の使用  
代理人 山尾 憲人  
代理人 江間 晴彦  

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