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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1376628
審判番号 不服2020-3951  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-24 
確定日 2021-08-05 
事件の表示 特願2018- 20948「営農システム及び営農プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月31日出願公開、特開2018- 85149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月28日を出願日とする特願2013-070592号の一部を、平成28年6月16日に新たな特許出願として出願した特願2016-119592号の一部を、平成30年2月8日に新たな特許出願としたものであって、令和元年5月7日付けで拒絶理由が通知され、同年7月16日に手続補正がなされたが、同年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年3月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
これに対し、当審において、令和3年2月4日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年4月9日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、令和3年4月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 複数の農作区画に区分けされた農作地を、前記農作区画毎に管理する農作区画管理部と、
前記農作区画毎の農作物の収量データを当該農作区画に割り当てる収穫評価管理部と、
前記農作区画に割り当てられた収量データに基づいて、少なくとも収量に関する値を含む収穫評価情報を出力データとして生成する出力データ生成部と、を備え、
前記出力データ生成部により生成される前記出力データは、前記農作区画を示す圃場情報表示領域と、前記収量を表示する収量表示領域とを、表示画面における異なる表示領域に同時に表示するとともに、前記収量表示領域に前記収量をグラフとして表示するように構成され、
前記圃場情報表示領域に複数の圃場が表示され、前記収量表示領域に前記複数の圃場の農作物の収量が表示され、選択された圃場の収量が、選択されていない圃場の収量と識別可能に表示される営農システム。」

第3 当審において通知した拒絶理由
当審が通知した拒絶理由のうちの理由3の概要は、次のとおりのものである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1,2について、引用文献1?3
引用文献1:特開2006-277321号公報
引用文献2:特開平5-204303号公報
引用文献3:国際公開第2011/039820号

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
当審が通知した拒絶理由において引用した引用文献1には、以下のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。
【0001】
本発明は、事業者の経営状況の分析を支援する経営分析支援システムに関し、特に、地図情報を利用した農業の経営分析を支援するシステムに関する。
【0006】
本発明の経営分析支援システムは、地図画面上に表示された複数の顧客あるいは圃場の位置に、これらの顧客あるいは圃場毎の収穫高あるいは生産高をグラフ表示する手段と、この手段により表示された収穫高あるいは生産高グラフから、収穫高あるいは生産高が高い第1の顧客あるいは圃場を選択する手段と、この選択手段により選択された第1の顧客あるいは圃場に関する詳細履歴データを表示する手段と、前記収穫高あるいは生産高グラフから、収穫高あるいは生産高が前記第1の顧客あるいは圃場より低い第2の顧客あるいは圃場を選択する手段と、この選択手段により、選択された第2の顧客あるいは圃場に関する詳細履歴データを表示する手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
なお、本願発明の実施形態においては、コンサルタント業務の例として農業経営者である農家に対して、農業協同組合が行う場合に対して説明する。したがって、コンサルタント業務の顧客は農家である組合員であり、対象事業は農家が耕作する圃場での農業である。しかし本発明は、このような場合に限られるものではなく、農業以外の畜産業、林業、その他各種の事業経営にも適用可能である。
【0022】
本実施形態の全体構成は、図1に示すように、処理コンピュータ本体10と、これに接続された操作入力部であるキーボード21およびマウス22と、出力部として接続された表示モニタ23およびプリンタ24とからなる。処理コンピュータ本体10には、操作入力部であるキーボード21およびマウス22が接続されている中央処理部11を備えられている。この中央処理部11には処理プログラム部13、データベース記憶部14、グラフィック処理部15、出力インターフェース16が、それぞれシステムバス12を介して接続される。出力インターフェース16には出力部の表示モニタ23或いはプリンタ24が接続されている。また、処理プログラム部13は、アプリケーションプログラムとしての地図システム13b及び管理分析システム13cと、これ等を載せて作動させるOS(Operating System)13aとを保持している。地図システム13bはGIS(geographic information system:システム)が用いられる。
【0023】
データベース記憶部14は、図2に模式的に示すように、処理コンピュータ本体10における処理の対象となるデータや参照する基本データが、それぞれ所定の記憶部に記憶蓄積される。記憶される基本データは、例えば地図表示データ31、緯度経度データ及び大字小字データ32、分析ツールデータ33などであり、蓄積されるデータは、組合員データ41、職員データ42、圃場データ43、土壌データ44、品種データ45、共同管理資料46、分析結果データ34などである。なお、一般的な事業経営の場合に蓄積されるデータは、上記のデータに変えて、顧客データ(41)、設備・店舗データ(43)、生産・販売データ(44)、品目データ(45)などが用いられる。
【0024】
図3に、本実施形態の経営分析支援システムを用いた経営分析業務の処理手順概要を示す。この処理手順は、履歴及び実績の入力を行うステップS1、各種の分析を行うステップS2、そして評価及び資源投入計画を策定するステップS3からなる。
【0025】
ステップS1では、訪問予定の登録(ステップS1a)、訪問(営業・指導)実績の登録(ステップS1b)、及び生産(圃場)履歴の登録(ステップS1c)など行う。この登録は、後述するように、管理分析システム13cによりデータが作成され、データベース記憶部14の所定の記憶部に蓄積される。
【0026】
また、ステップS2では、同じく後述するように、管理分析システム13cにより、生産高或いは収穫量を圃場毎に抽出し表示、或いは同地区内・別地区の組合員毎に抽出し表示、更には過去の履歴データを参照したグラフ化を行いこれの表示などが行われる。
【0030】
ステップS1は、農業協同組合の営農指導員のような職員が、対象としている地区の組合員に、日々訪問応対して行っている指導活動、営業情報を個人メモ、訪問履歴、圃場履歴として記録し、蓄積する最初の手順である。これは、職員が本実施形態の経営分析支援システムの操作入力部であるキーボード21或いはマウス22を操作して入力し、図4(a)のフローチャートに示すような手順により、これ等入力が編成されてデータとして、データベース記憶部14の所定の記憶部にそれぞれが蓄積される。
【0033】
本実施形態の経営分析支援システムにおけるメニュー構成は、図5のサイトマップ(メニュー系譜)にも示すように、「訪問予定」、「訪問実績」、「圃場分析」、「資料管理」、「データ管理」及び「組合員検索」からなり、それぞれのメニュー項目の下に、更に具体的な作業を行うためのメニュー項目が、メニューボタンとして設けられている。すなわち、「訪問予定」では本日の予定、今週の予定、(訪問をする地域の)地図、予定出力が、「訪問実績」では訪問の実績入力、(訪問済み地域)地図、日報出力、月報出力が、「圃場分析」では(収穫量)グラフ表示、地図メモ表示、訪問予定、土壌別表示、品種別表示が、「資料管理」では資料検索、資料登録が、「データ管理」では組合員マスタメンテナンス、圃場マスタメンテナンス、品種マスタメンテナンス、土壌マスタメンテナンス、指導員マスタメンテナンスが、そして「組合員情報」には個人メモ、訪問履歴、圃場履歴が、それぞれリンクされている。
【0036】
地図入力モードにおける入力データは、データベース記憶部14に記憶したデータに基づいて、地図上の位置と関連付けられる。すなわち、組合員情報のリストに含まれる居宅や圃場の住所表示による大字・小字情報は、緯度経度情報に変換され、データベース記憶部14に記憶されている。この地図入力モードを用いることにより、例えば、新規組合員に関する組合員データとその圃場データの入力、或いは既存組合員を含む訪問予定の入力では、新規組合員と既存組合員の住居地や圃場との位置関係が容易に理解できる。
【0040】
上述のように、ステップS1は、指導員或いは職員が行う日々の営業活動、訪問、巡回時の状況視察、生産・収穫物の出荷などの機会毎に、データを収集・集積することになる。なお、この様にして入力される項目は、前述したように、例えば、訪問予定、訪問実績、作付け時期、収穫時期、収穫高、生産高、販売高、購買高、作付け品種、施肥品種、施肥量、土壌種別、注水量、日照時間、生育丈、生育株数などである。またこれ等の項目に対応するデータは、実施月日、実施回数、実施量額、積算量額、計測量数、名称などである。
【0043】
分析は、先ずステップS23で、分析画面91の左下部分設けられたグラフ表示メニュー92の条件設定ボックス内にグラフ表示条件を設定する。ボックス92aでは、グラフに表示する値、すなわち、出来高、販売高、購買高のいずれかを選択する。また、ボックス92bでは、グラフ表示対象、すなわち、組合員、圃場のいずれかを選択する。ボックス92cでは、作付けした品種、例えば水稲、大麦、大根、ジャガイモなどの種名称を選択する。ボックス92dにチェックを指示すると、過去3年間のグラフを表示する。
【0044】
なお、分析画面91の地図画面上において、93aは組合員宅の位置を示し、93b、93cは圃場を示している。また、同図の右側部分には、地図画面上で指定された組合員93aについての組合員情報欄94が表示されている。この組合員情報欄には、例えば、組合員コード、氏名、住所、電話、所有圃場数、総面積94a等が表形式で表示されている。また、この組合員情報欄94には、毎年の出来高、販売高、購買高が表示された集計表94bが含まれている。さらに、この組合員情報欄94には、指定された組合員93aについての詳細な履歴データを表示するためのボタン94cが表示されている。この詳細な履歴データは、図4に示すデータベース記憶部14に蓄積され組合員データ等である。
【0045】
上述の設定を終了した後、「表示」ボタン92eをクリックすると、ステップS24で、図9(b)に示す分析画面95が表示される。この分析画面95には、組合員別、あるいは、圃場別の出来高、販売高、あるいは購買高が、例えば、過去3年間の推移を示す棒グラフ97a、97bにより表示される。この棒グラフ97a、97bでは、指定された特定の品種についてのみの表示を行うが、全品種の合計で表示することもできる。また、品種のほか、収穫時期、圃場の土壌の種類等の類似する条件を特定し、棒グラフとして表示する。
【0046】
このように、分析画面95には、一定の地域に存在する複数の組合員毎あるいは圃場毎の生産高を示す棒グラフが表示されるため、ステップS25において、組合員毎、あるいは圃場毎の生産高の比較を視覚的に容易に行うことができる。この結果、生産高が最も高い組合員あるいは圃場と、生産高が低い組合員あるいは圃場とを抽出することができる。図10(a)は、生産高が最も高い圃場101を指定した分析画面95であり、図10(b)は、生産高が低い圃場102を指定した分析画面95である。なお、分析画面95には、また、地図画面上で指定された圃場101についての圃場情報欄98が表示されている。この圃場情報欄98には、例えば、組合員コード、圃場番号98a、名称98b、住所、面積、土壌名98c、作付け品種98d等が表形式で表示されている。また、この圃場情報欄98には、毎年の出来高、販売高、購買高が表示された集計表98eが含まれている。さらに、この圃場情報欄98には、指定された圃場101についての詳細な履歴データを表示するためのボタン98fが表示されている。この圃場101についての詳細な履歴データは、図4に示すデータベース記憶部14に蓄積され組合員データ41および圃場データ44等である。
【0047】
次に、図4のステップS26で、図10(a)(b)において指定された生産高が最も高い圃場101と低い圃場102について、履歴データを表示するためのボタン98fを押して、図10(c)、(d)に示すそれぞれの詳細な履歴データ103、104を表示モニタ23の画面に表示し、あるいはプリンタ24により印刷出力する。
【0048】
ステップS27では、生産高が最も高い圃場101と低い圃場102について、それぞれの詳細な履歴データ103、104を比較することにより、それらの相違点を発見することにより営農指導員による経営分析が行われる。例えば訪問指導や巡回の詳細な履歴データ103、104における、供給物欄105a、105b及び種類欄106a、106bから指導した肥料の種類を、金額欄107a、107bから供給した数量を、また訪問日108a、108bから施肥時期を比較して、相違が発見されたとすると、生産高が最も高い圃場101における肥料の種類、分量、施肥時期を、生産高が低い圃場102を耕作する組合員が改善すべき事項として抽出する。この分析結果は、データベース記憶部14の分析結果34に蓄積する。
【0049】
図4のステップS28で、営農指導員は抽出された改善事項を考慮した経営計画を策定し、ステップS29で、生産高が低い圃場102を耕作する組合員に対して経営指導を行う。これによって、一連の経営分析とそれに基づく指導を終了する。
【0050】
以上説明した本発明の実施形態によれば、経営分析に用いるデータは、営農指導員が日々行う組合員宅への訪問、指導活動の実施記録という形式でデータベースに蓄積されるため、分析のために新たに情報収集を行う手数を省くことができ、効率的に分析を行うことができる。
【0051】
また、これ等のデータ入力方式は、キー入力によるリスト形式と地図画面で入力するGUI形式が併用されるため、入力が容易にできる。
【0052】
さらに本実施形態による経営分析支援システムでは、地図画面上に過去の生産・収穫高等のグラフ表示を行うので、一定地域内の全ての組合員毎あるいは圃場毎の生産高比較を視覚的に容易に行うことができる。
【0053】
さらに、地図画面上に生産高が表示されるので、圃場の場所的な特性に関連する分析も行うことができる。
【0054】
さらに、地図画面の組合員居宅マーク或いは圃場域を指定すると、それ等の詳細データを表示できるので、地図画面で視覚的な差異を認知して、データによりその詳細を確認することができる。

以上の記載によると、引用文献1には、
「地図情報を利用した、農家が耕作する圃場での農業を対象とする、農家の農業経営分析を支援するシステムであって(【0001】、【0021】)、
処理コンピュータ本体10、操作入力部、表示モニタ23を備え(【0022】、図1)、
処理コンピュータ本体10は、操作入力部と接続された中央処理部11を備え、中央処理部11には、システムバスを介して、処理プログラム部13、データベース記憶部14、グラフィック処理部15、出力インターフェース16が接続され、
処理プログラム部13において、地図システム13b及び管理分析システム13cが作動し(【0022】)、
データベース記憶部14には、地図表示データ31、圃場データ43が記憶され(【0023】)、
操作入力部から、収穫高、生産高、販売高などのデータが入力され、入力されたデータは、管理分析システム13cにより、データベース記憶部14の所定の記憶部に蓄積され(【0025】、【0030】、【0040】)、
管理分析システム13は、
分析画面91の地図画面上において、圃場(93b、93c)を示し(【0044】、図9(a))、
分析画面91のグラフ表示メニュー92の条件設定ボックス内において、グラフ表示条件として、出来高及び圃場が選択されると(【0043】)、
地図画面上の各圃場の近辺に、圃場毎の過去3年間の出来高の推移を示す棒グラフを表示した分析画面95を表示し(【0026】、【0043】、【0045】、図9(b))、
分析画面95において、地図画面上で指定された圃場101についての圃場情報欄98に、組合員コード、圃場番号98a、名称98b、住所、面積、土壌名98c、作付け品種98d、及び、毎年の出来高、販売高、購買高が表示された集計表98eを表示し(【0046】)、
圃場情報欄98において、ボタン98fが押されると、詳細な履歴データを表示し、操作者は、詳細な履歴データにおいて、肥料の種類、分量、施肥時期を参照することができ、圃場毎の生産量、肥料の種類、分量、施肥時期を比較することができる(【0046】、【0047】、【0048】)、
農家の農業経営分析を支援するシステム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献2
当審が通知した拒絶理由において引用した引用文献2には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地図データ(ベクトルデータ)と属性データとを表示する地図・属性データ表示装置に係わり、特に地図データと属性データとの対応関係を明確にした地図・属性データ表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の表示装置においては、ベクトルデータにより描かれたCRT画面の地図上に当該地図に関する情報,例えば道路・家屋・地域などのような対象物に関連する文字,数字,記号等の情報である属性データを表示する場合、次のような2通りの表示方法が考えられている。
【0003】その1つの表示方法は、CRT画面に表示されたベクトルデータに地図上の例えば各地域に当該地域別人口などを棒グラフ,円グラフ,数値などで直接表示する方法であり、
【0004】他の1つ方法は、同じくCRT画面の地図上に予め定めた大きさのウィンドウを生成し、そのウインドウ内に例えば複数の地域の人口などを棒グラフ,円グラフ,数値などで表示する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の表示方法は、各地域からそれぞれ直線状の棒グラフなどを表示するので、地域数が多いとか、或いは各地区からの棒グラフが長くなると、地図上に表示された地域別データの棒グラフが互いに重なり合い、それらデータの意味内容を視覚的に認識できない問題がある。
【0006】一方、後者の表示方法は、CRT画面に表示された地図上のウインドウ内に例えば地域別人口を表示するとき、地図上の特定の地域とウインドウ内の該当地域との間の対応付けが難しく、迅速に所要とする地域の識別ができなかったり、或いは誤まった識別をする問題がある。
【0007】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、表示画面の地図上に当該地図に関連する属性データを大量に表示可能とし、しかも地図データと属性データとの対応付けが容易であり、多数の地図データおよび属性データの中から特定のデータを迅速に識別しうる地図・属性データ表示装置を提供することを目的とする。
【0016】次に、以上のような装置の動作について図3および図4を参照しながら説明する。オペレータの指示により、或いは所定の周期ごとに地図・属性データ表示用プログラムの動作を開始すると、描画用CPU11は、描画用メモリ14など必要な構成要素の初期化処理を行った後(ST1)、保存装置13内の地図の構成要素であるベクトルデータを読み出し(ST2)、図4(a)に示すように描画用メモリ14に書き込んだ後、その描画用メモリ14の内容であるベクトルデータ17を表示装置16に転送する。従って、この表示装置16にはベクトルデータ17である例えば複数の地域からなる地図が表示される(ST3)。
【0017】しかる後、描画用CPU11は、オペレータから属性データの表示要求の指示があり、或いはプログラムに属性データの表示要求が規定されている場合、保存装置13から既に読み出したベクトルデータに関連している属性データを読み出して棒グラフまたは円形グラフなど,所要とする図形に加工した後、描画用メモリ14上に図4(b)に示すように前記ベクトルデータ17とは別に座標データの指定に基づいて予め定めた大きさのウインドウ18を生成するとともに、このウインドウ18内に加工された属性データを書き込んでいき(ST4)、かつ、この書き込んだ属性データの表示位置を順次データメモリ15の表示位置の該当するエリアに書き込んでいく。なお、保存装置13からの属性データの読み出しはST2においてベクトルデータと同時に読み出してもよいものである。
【0018】以上のようにして加工された属性データを描画用メモリ14に書き込んだ後、ステップST5に移行し、ここで画面上の特定位置を指定したか否かを判断する。このとき、オペレータがある地域例えばBの特定位置20を指定しているとき、特定位置指定と判断し、その与えられた特定位置20から最も近いベクトルデータの図形識別子(座標名b)を決定し、このデータメモリ15の図形識別子と属性識別子との対応付けを参照することにより属性識別子を決定する(ST6)。
【0019】さらに、属性識別子を決定すると当該属性識別子から先にデータメモリ15に保持されている属性データの表示位置から該当する項目の属性データの表示位置(座標)を決定する(ST7)。そして、この決定された座標を用いて、描画用メモリ14上の該当する属性データ(地域B)を強調表示状態21に書き込む(ST8)(図4c)。この強調表示は他の属性データよりも見易くするような処理を行うものであって、例えば該当属性データの各画素の濃度値に適当の関数を用いて変換したり、或いは階調変換処理などを行って各画素の濃度値を強調する。従って、表示装置16の画面には複数の属性データA,B,C,D,Eのうち、属性データBが強調された状態で表示され、オペレータにおいて注目する地域Bの属性データの状態が容易、かつ、迅速に識別できる。
【0020】さらに、前記ステップST5において画面上の特定位置を指定していない場合、次のステップST9に移行し、属性データの項目表示位置が指定されたか否かを判断する。このとき、属性データの項目表示位置が指定されている場合、属性データ指定と判断し、その属性データの指定項目から図形識別子を決定する(ST10)。そして、この決定された図形識別子から描画用メモリ14上でのベクトルデータを割り出し、先に保持しているベクトルデータの表示位置の中から該当するベクトルデータの項目表示位置(座標)を決定し(ST11)、この描画用メモリ14上の決定された表示位置の該当ベクトルデータを強調表示状態に書込む(ST12)。
【0021】従って、以上のような実施例の構成によれば、属性データのIDである属性識別子とベクトルデータのIDである図形識別子とを対応付けする一方、属性データの各項目の描画用メモリ内での表示位置を記憶しているので、描画用メモリ上のベクトルデータと同じく描画用メモリ上の属性データとの対応付けが可能となり、属性データに対応したベクトルデータ、またベクトルデータに対応した属性データを認識でき、これによって描画用メモリ上の地図に関連したデータを大量に表示できる。
【0022】また、地図の構成要素であるベクトルデータと関連する属性データをある形式で表示する際、各項目の属性データの描画用メモリ内での表示位置を予め記憶し、特定位置が指定されたとき、図形識別子から属性識別子を決定し、この属性識別子から該当する属性データを割り出し、先に保持されている属性データの表示位置から該当する属性データの項目表示位置を決定し、該当する属性データの表示部分の強調表示を行い、逆に、ある項目の属性データが指定されたとき、属性識別子および図形識別子から描画用メモリ14のベクトルデータを決定し、かかるベクトルデータを強調表示するので、ベクトルデータと属性データとの対応関係が明確になり、あるベクトルデータが属性データ内のどのデータに対応しているかが容易に識別することができる。
【0023】なお、上記実施例では、ある項目の属性データとこの項目に関係するベクトルデータとが別々に強調表示するようにしたが、これら両方のデータを同時に強調表示することも可能であり、この場合には該当ベクトルデータと属性データの該当項目との関係が一層明確になる。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。

上記段落【0016】の記載によると、ベクトルデータは、複数の地域からなる地図を表示するためのデータであるから、引用文献2には、
「地図上に属性データとして地域別人口などを表示する場合、地図上の各地域に当該地域別人口などを棒グラフ,円グラフ,数値などで直接表示する方法と、地図上にウィンドウを生成し、そのウィンドウ内に複数の地域の人口などを棒グラフなどで表示する方法とがあるものの、前者の方法では、地域数が多いとか、或いは各地域からの棒グラフが長くなると、地図上に表示された地域別データの棒グラフが互いに重なり合い、それらデータの意味内容を視覚的に認識できない問題があり、また、後者の方法では地図上の特定の地域とウィンドウ内の該当地域との間の対応付けが難しいという問題があるため(【0001】?【0007】)、これらの問題を解決するため、図4(b)に示されるように、属性データを読み出してグラフに加工した後、地図とは別にウィンドウを生成し、このウィンドウに地域A?Eの属性データを棒グラフで表示し(【0017】、図4(b))、オペレータが地図上のある地域を指定すると、対応する地域の属性データを強調表示し(【0018】、【0019】、図4(b)(c))、また、属性データを指定すると、地図上にある対応する地域を強調表示し(【0020】)、強調表示は、地図上の地域と属性データとを同時に行ってもよい(【0023】)こと」(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

3 引用文献3
当審が通知した拒絶理由において引用した引用文献3には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。
背景技術
[0002]各地域の時系列データを処理し、グラフとして地図上に表示する情報処理システムがある(例えば、非特許文献1)。このような情報処理システムは、時系列データベースに格納された気温や人口等の時系列データと、市区町村データベースに格納された地図データから、ユーザの要求に合致する情報を取り出す。時系列データの値に応じて地図上に色分けして表示する。各時系列データの値の時間変化を表示したい場合には、横軸を時間軸とし、縦軸を量とし、折れ線グラフ、や棒グラフによって各時系列データの値の時刻変化を表示する。
発明が解決しようとする課題
[0004]上述した情報処理システムでは、時系列データの値に応じて地図上に色分けして表示するため、値が近い場合等は色の比較が行いづらい。地図上の各地点棒グラフを表示する場合、各地点の棒グラフの原点が一致せず、各地域の時系列データの比較が行いづらい。
[0005]本発明は、各地域の時系列データの比較が行いやすい情報処理装置および情報処理方法を提供することを目的とする。
[0033]図4は、本実施の形態に係る情報処理装置の表示部209に表示される画像の一例を表す図である。表示部209に表示される全体画像701は、地図および地図上グラフを表示する第1の領域702と、時系列データのグラフを表示する第2の領域703とを含む。全体画像701は、さらにグラフィカルユーザインターフェース(GUI)704を含んでもよい。
[0034]第1の領域702に表示される地図は、2D表示の地図(図4(a)地図705)と3D表示の地図(図4(b)地図706)とを含む。
[0035]地図上グラフとは、時系列データを第1の領域702の地図上に表示したグラフである。例えば、図4(a)において、地域A707の時系列データを表す地図上棒グラフA740は、第1の領域702の地域A707上に表示される。
[0106]図10は、グラフ描画部111が描画するグラフを表す図である。
[0107]グラフ描画部111が第2の領域703に描画するグラフ形式は、例えば、ある時刻における各地域の時系列データを表す2D棒グラフと、ある地域の時系列データの時刻変化を表す2D折れ線グラフと、各地域の時系列データの時刻変化を表す3D棒グラフと、3D折れ線グラフ等がある。これら以外にも、円グラフ、面グラフ、表といった、統計図表全般が含まれる。
[0108]グラフ描画部111は、描画したグラフを表示部209に出力する。
[0109]表示部209は、地図描画部109から出力された地図情報要素の境界形状を第1の領域702に地図として表示する。
[0110]表示部209は、地図上グラフ表示部110から出力された地図上グラフを第1の領域702に表示する。
[0111]表示部209は、グラフ描画部110から出力されたグラフを第2の領域703に表示する。
[0112]表示部209は、受付部101が決定する表示条件301を設定、変更するためのGUI704を表示する。
[0113]操作者は、入力装置210(マウス207等)により、第1の領域702や、第2の領域703や、GUI704上で、表示条件301を指定する。これにより、受付部101は、要素数制限部103に表示条件301を出力する。

以上の記載によると、引用文献3には、
「従来、各地域に関する時系列データをグラフとして地図上に表示する場合、データの値に応じて地図上に色分けして表示したり、地図上に棒グラフで表示したりすることが行われていたが、時系列データの値に応じて地図上に色分け表示するため、値が近い場合等は色の比較が行いづらく、地図上の各地点に棒グラフを表示する場合、各地点の棒グラフの原点が一致せず、各地域の時系列データの比較が行いづらいという問題があったため([0002]、[0004])、当該問題を解決するため、表示部209に表示する全体画像701を、地図および地図上グラフを表示する第1の領域702と、時系列データのグラフを表示する第2の領域703とで構成し([0033]、図4(a))、第1の領域702には、各地域の境界を表示した地図と、各地域A?Eに関する時系列データを棒グラフで地図上の各地域に表示し([0033]、[0035]、[0107]、[0109]、[0110]、図4(a)、図10)、第2の領域703には、操作者の指定した表示条件でグラフを表示し([0113])、例えば、ある時刻における各地域A?Eの時系列データを2D棒グラフで表示する([0107]、[0111]、図4(a)、図10(a))情報処理装置」(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

第5 対比
本願発明と、引用発明とを対比する。
1 引用発明の「農家の農業経営分析を支援するシステム」は、農業経営に関するシステムであるから、本願発明と同様の「営農システム」であるといえる。
2 本願明細書の段落【0015】、【0016】には、「農作区画は、畦によって囲まれた圃場とする。もちろん、そのような圃場をさらに区分けした区分を、このシステムでの最小管理単位としてもよい。」と記載されていることから、「圃場」は「農作区画」であるといえ、引用発明の「圃場」は、本願発明の「農作区画」に相当する。
そして、引用発明は、「地図画面上で指定された圃場101についての圃場情報欄98に、組合員コード、圃場番号98a、名称98b、住所、面積、土壌名98c、作付け品種98d、及び、毎年の出来高、販売高、購買高が表示された集計表98eを表示する」から、農作地を圃場毎に管理しているといえる。
よって、引用発明は、本願発明の「複数の農作区画に区分けされた農作地を、前記農作区画毎に管理する農作区画管理部」に相当する構成を有している。
3 引用文献1には明記はないものの、引用発明では、操作入力部から入力された、収穫高、生産高、販売高などのデータは、圃場毎に集計表やグラフで表示されるから、引用発明において、収穫高、生産高、販売高などのデータは、圃場毎に入力され、圃場に割り当てられることは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の「前記農作区画毎の農作物の収量データを当該農作区画に割り当てる収穫評価管理部」に相当する構成を有している。
4 引用発明において、管理分析システム13は、「地図画面上の各圃場の近辺に、圃場毎の過去3年間の出来高の推移を示す棒グラフを表示した分析画面95を表示」し、「地図画面上で指定された圃場101についての圃場情報欄98に、毎年の出来高、販売高、購買高を示す集計表98eを表示」し、各圃場の履歴データを参照することにより、「圃場毎の生産量、肥料の種類、分量、施肥時期を比較する」ものであるから、圃場毎の生産量に基づく評価を行うものであり、引用発明は、「前記農作区画に割り当てられた収量データに基づいて、少なくとも収量に関する値を含む収穫評価情報」を表示しているといえる。
そして、引用発明において、分析画面95等の画面は、出力インターフェース16を介して、表示データとして表示モニタ23に出力されることにより表示されることは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の「前記農作区画に割り当てられた収量データに基づいて、少なくとも収量に関する値を含む収穫評価情報を出力データとして生成する出力データ生成部」に相当する構成を有している。
5 「前記出力データ生成部により生成される前記出力データ」について、引用発明の「分析画面95」の「地図画面」は、本願発明の「表示画面」に相当し、引用発明の地図画面上と過去3年間の出来高の推移を示す棒グラフを表示する構成と、本願発明の「前記農作区画を示す圃場情報表示領域と、前記収量を表示する収量表示領域とを、表示画面における異なる表示領域に同時に表示するとともに、前記収量表示領域に前記収量をグラフとして表示する」構成とは、いずれも、「前記農作区画と、前記収量とを、表示画面に同時に表示するとともに、前記収量をグラフとして表示するように構成」される点で共通する。
6 引用発明の「地図画面上の各圃場の近辺に、圃場毎の過去3年間の出来高の推移を示す棒グラフを表示」する構成と、本願発明の「前記圃場情報表示領域に複数の圃場が表示され、前記収量表示領域に前記複数の圃場の農作物の収量が表示され、選択された圃場の収量が、選択されていない圃場の収量と識別可能に表示される」こととは、いずれも、「前記表示画面に、複数の圃場が表示され、前記複数の圃場の農作物の収量が表示される」点で共通する。
7 以上、1?6によると、本願発明と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりである。
[一致点]
複数の農作区画に区分けされた農作地を、前記農作区画毎に管理する農作区画管理部と、
前記農作区画毎の農作物の収量データを当該農作区画に割り当てる収穫評価管理部と、
前記農作区画に割り当てられた収量データに基づいて、少なくとも収量に関する値を含む収穫評価情報を出力データとして生成する出力データ生成部と、を備え、
前記出力データ生成部により生成される前記出力データは、前記農作区画と、前記収量とを、表示画面に同時に表示するとともに、前記収量をグラフとして表示するように構成され、
前記表示画面に、複数の圃場が表示され、前記複数の圃場の農作物の収量が表示される営農システム。」
[相違点1]
表示画面が、本願発明では「複数の圃場が表示され」る「農作区画を示す圃場情報表示領域」と、「複数の圃場の農作物の収量」が「グラフとして表示」される「収量を表示する収量表示領域」とを有し、「圃場情報表示領域」と「収量表示領域」とは、「表示画面における異なる表示領域」であるのに対し、引用発明では、収量のグラフを、圃場を表示する地図画面に表示するものであり、「圃場情報表示領域」と「表示画面における異なる表示領域」である「収量表示領域」に表示するものではない点。
[相違点2]
表示画面が、本願発明では、選択された圃場の収量が、選択されていない圃場の収量と識別可能に表示されるのに対し、引用発明では、地図画面上の各圃場の近辺に、圃場毎の収量を示す棒グラフが表示される点。

第6 当審の判断
1 [相違点1]及び[相違点2]について
[相違点1]及び[相違点2]は、いずれも、表示画面の表示に関連した相違点であるため、まとめて検討する。
引用文献2記載事項によると、地図の地域に関するデータを地図上にグラフで表示すると、地域数が多い場合、或いは各地域からの棒グラフが長くなると、地図上に表示された地域別データの棒グラフが互いに重なり合い、それらデータの意味内容を視覚的に認識できない問題があることから、地図上にウィンドウを生成し、そのウィンドウ内に複数の地域の人口などを棒グラフなどで表示する方法があり、また、引用文献3記載事項によると、地図上の各地点に各地域に関する時系列データを棒グラフで表示する場合、各地点の棒グラフの原点が一致せず、各地域の時系列データの比較が行いづらいという問題があることから、表示画面を地図および地図上グラフを表示する第1の領域702と、時系列データのグラフを表示する第2の領域703とで構成し、第1の領域702には、各地域の境界を表示した地図と、各地域A?Eに関する時系列データを棒グラフで地図上の各地域に表示し、第2の領域703には、操作者の指定した表示条件でグラフを表示し、例えば、ある時刻における各地域A?Eの時系列データを2D棒グラフで表示している。
引用文献2及び引用文献3のそれぞれに記載されている解決しようとする課題は、引用文献2においては、「地図上に表示された地域別データの棒グラフが互いに重なり合い、それらデータの意味内容を視覚的に認識できない」というものであり、引用文献3においては、「各地点の棒グラフの原点が一致せず、各地域の時系列データの比較が行いづらい」というものであり、それぞれ異なるものの、いずれも、地図画像と地図に関するデータのグラフとをともに表示する場合、地図を表示する領域とは別にグラフを表示する領域を設けるという点で共通している。そして、上記の地図を表示する領域とは別にグラフを表示する領域を設けるに際して、地図を表示する領域と別ウィンドウとする構成、あるいは、地図を表示する領域と異なる領域とする構成のいずれを採用しても、引用文献2及び引用文献3に記載された上記のそれぞれの課題をともに解決することができることは明らかである。
このように、地図上に地図に関するデータをグラフ表示する際に、地図とは別のウィンドウにグラフを表示する構成と、地図を表示する領域と異なる領域にグラフの表示領域を設けてグラフを表示する構成のいずれを採用するかは、視覚的に見易くし、グラフの比較を行い易くするという課題解決手段として、互いに置換可能な周知技術である。
また、上記のように地図とは別のウィンドウ又は地図を表示する領域と異なる領域にグラフの表示領域を設けた場合、引用文献2記載事項によると、地図上の特定の地域とグラフ表示領域の該当地域のグラフとの間の対応付けが難しいという問題があるため、オペレータが地図上のある地域を指定すると、対応する地域の属性データを強調表示し、また、属性データを指定すると、地図上にある対応する地域を強調表示し、強調表示を地図上の地域と属性データについて同時に行うことは、地図と地図に関するデータを表示する際の周知技術である。
ここで、引用発明においても、圃場の数が多くなれば、グラフの数が多くなり、見づらくなるという引用文献2に記載された課題と同様の課題、及び、グラフの原点が一致しないため、データの比較が行いにくいという引用文献3に記載された課題と同様の課題が考えられるから、引用発明の、圃場を表示する地図画面と圃場の収量のグラフを表示する際に、引用文献2記載の、地図上に地図とは別のウィンドウを生成し、そのウィンドウ内に複数の地域に関するデータを棒グラフなどで表示する状態で、オペレータが地図上のある地域を指定すると、対応する地域の属性データを強調表示し、また、属性データを指定すると、地図上にある対応する地域を強調表示し、強調表示を地図上の地域と属性データについて同時に行う周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得た事項である。
そして、引用文献2記載事項の複数の地域に関するデータを棒グラフなどで地図とは別のウィンドウに表示する構成を、地図の表示領域とは別の領域で表示する構成としても同様の作用効果が得られることは先に検討したとおり明らかであり、引用文献3記載事項によると、地図の表示領域と異なる領域に複数の地域に関するデータを棒グラフなどで表示することは周知技術であるから、グラフを表示するためのウィンドウを、表示画面の地図の表示領域と異なる領域とすることは、設計上の微差にすぎず、当業者が、引用発明に引用文献2記載の周知技術を採用するにあたり、適宜変更し得た事項である。
したがって、引用発明において、圃場を表示する地図画面に収量のグラフを表示することに代えて、圃場情報表示領域に複数の圃場を表示し、収量のグラフを、圃場情報表示領域とは表示画面における異なる表示領域である収量表示領域に表示し、選択された圃場の収量が、選択されていない圃場の収量と識別可能に表示されるように構成することは、当業者が容易に想到し得た事項である。

2 作用効果について
請求人は、令和3年4月9日提出の意見書において、本願発明は、「選択された圃場の収量が、選択されていない圃場の収量と識別可能に表示されることから、圃場情報表示領域と収量表示領域とが異なる領域に表示されていても、現在、どの圃場の収量に注目しているのかが容易に判別できる。これにより、例えば、農作区画毎で収量の違いが生じている場合、注目している圃場と他の圃場の圃場条件の違いなどを、同一画面上で、考察することが可能となる」という格別の作用効果を奏すると主張するが、当該作用効果は、引用文献1の段落【0046】に「このように、分析画面95には、一定の地域に存在する複数の組合員毎あるいは圃場毎の生産高を示す棒グラフが表示されるため、ステップS25において、組合員毎、あるいは圃場毎の生産高の比較を視覚的に容易に行うことができる。この結果、生産高が最も高い組合員あるいは圃場と、生産高が低い組合員あるいは圃場とを抽出することができる。」、段落【0048】に「ステップS27では、生産高が最も高い圃場101と低い圃場102について、それぞれの詳細な履歴データ103、104を比較することにより、それらの相違点を発見することにより営農指導員による経営分析が行われる。例えば訪問指導や巡回の詳細な履歴データ103、104における、供給物欄105a、105b及び種類欄106a、106bから指導した肥料の種類を、金額欄107a、107bから供給した数量を、また訪問日108a、108bから施肥時期を比較して、相違が発見されたとすると、生産高が最も高い圃場101における肥料の種類、分量、施肥時期を、生産高が低い圃場102を耕作する組合員が改善すべき事項として抽出する。」と記載され、引用文献2の段落【0007】に「表示画面の地図上に当該地図に関連する属性データを大量に表示可能とし、しかも地図データと属性データとの対応付けが容易であり、多数の地図データおよび属性データの中から特定のデータを迅速に識別しうる」と記載されていることから、引用発明並びに引用文献2及び引用文献3の記載事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものではない。

3 むすび
したがって、本願発明は、引用発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-05-27 
結審通知日 2021-06-01 
審決日 2021-06-17 
出願番号 特願2018-20948(P2018-20948)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷川 智秀  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 畑中 高行
高瀬 勤
発明の名称 営農システム及び営農プログラム  
代理人 特許業務法人R&C  

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