ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B23D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B23D |
---|---|
管理番号 | 1376677 |
異議申立番号 | 異議2020-700774 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-10-08 |
確定日 | 2021-05-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6679545号発明「スクラップ切断装置、及びスクラップを切断する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6679545号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、4について訂正することを認める。 特許第6679545号の請求項2、3及び5に係る特許を維持する。 特許第6679545号の請求項1及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6679545号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成29年8月8日に出願され、令和2年3月23日にその特許権の設定登録がされ、同年4月15日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、その手続の概要は以下のとおりである。 令和 2年10月 8日 :特許異議申立人 株式会社モリタ環境テッ ク(以下「申立人」という。)による請求 項1ないし5に係る特許に対する特許異議 の申立て 令和 3年 1月28日付け:取消理由通知書 同 年 3月31日 :特許権者 富士車輌株式会社(以下「特許 権者」という。)による意見書及び訂正請 求書の提出 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和3年3月31日に提出の訂正請求書によってされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正事項は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1(訂正請求書2ページ) 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2(訂正請求書3ページ) 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、4について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、本件発明1ないし5をまとめて「本件特許発明」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(なお、下線部は、訂正箇所について特許権者が付したものである。) 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 金属製物質を複数含んで成る集合体であるスクラップが供給される供給部と、 前記供給部に供給された前記スクラップを搬送する搬送機構と、 昇降自在であり下降したときに、前記供給部から搬送された前記スクラップの一部を下方に押圧することにより、押圧方向に当該スクラップの一部が圧縮され変形させられた被押圧部を形成させる押さえスライドを含む押圧機構と、 前記被押圧部を、昇降自在な上刃、及び下降したときの前記上刃に近接するように固定された下刃、の間で切断する切断機構と、 を備えるスクラップ切断装置であって、 前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させる押圧上昇停止機構と、 前記押さえスライドにより押圧されている前記被押圧部において、前記スクラップの一部と比べて当該押さえスライドにより押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記押圧方向の厚みを検出する厚み検出機構と、 前記上刃が上昇するときに、前記厚み検出機構により検出された前記厚みの長さよりも所定の長さ、上方の位置で当該上刃が上昇するのを停止させる上刃上昇停止機構と、 を備え、 前記上刃上昇停止機構における前記所定の長さは、前記被押圧部での前記押圧方向の厚みがスプリングバックにより当該押圧方向とは逆方向に増す長さよりも長く設定されていることを特徴とするスクラップ切断装置。 【請求項3】 前記厚み検出機構は、前記スクラップの一部が前記押さえスライドにより下方に押圧されて圧縮され変形して形成された前記被押圧部の上面の位置に基づいて前記厚みを検出することを特徴とする請求項2に記載されたスクラップ切断装置。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 金属製物質を複数含んで成る集合体であるスクラップが供給される供給部と、 前記供給部に供給された前記スクラップを搬送する搬送機構と、 昇降自在であり下降したときに、前記供給部から搬送された前記スクラップの一部を下方に押圧することにより、押圧方向に当該スクラップの一部が圧縮され変形させられた被押圧部を形成させる押さえスライドを含む押圧機構と、 前記被押圧部を、昇降自在な上刃、及び下降したときの前記上刃に近接するように固定された下刃、の間で切断する切断機構と、 を備えるスクラップ切断装置を用いて、前記供給部に供給された前記スクラップを下方に押圧して圧縮し変形させてから切断する方法であって、 前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させ、 前記押さえスライドにより押圧されている前記被押圧部において、前記スクラップの一部と比べて当該押さえスライドにより押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記押圧方向の厚みを検出し、 前記上刃が上昇するときに、検出された前記厚みの長さよりも所定の長さ、上方の位置で当該上刃が上昇するのを停止させ、 前記被押圧部での前記押圧方向の厚みがスプリングバックにより当該押圧方向とは逆方向に増す長さよりも長くなるように、前記所定の長さを調節することを特徴とする切断する方法。」 第4 取消理由についての当審の判断 1.取消理由の概要 当審が令和3年1月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 請求項1、4に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載の発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 引用文献1:実願昭55-191628号(実開昭57-112822号 )のマイクロフィルム(甲第1号証) 引用文献2:特開2010-46795号公報 2.取消理由についての判断 上記第3に示すとおり、本件発明1及び4は削除されているから、当審が通知した取消理由により請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要及び申立人が提出した証拠 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要、及び申立人が提出した証拠である甲第1号証ないし甲第7号証は、以下のとおりである。(以下、各甲号証を「甲1」などという。) 甲1:実願昭55-191628号(実開昭57-112822号)のマ イクロフィルム 甲2:取扱説明書(運転,メンテナンスマニュアル)の抜粋、(特)12 50AK型ギロチンプレス(F2273)、株式会社モリタ、平成 16年5月、写し 甲3:契約仕様書、(特)1250AK型ギロチンプレス、株式会社モリ タ、平成15年8月作成、写し 甲4:受講証明書、(特)1250AK型ギロチンプレス、株式会社モリ タ、平成16年6月22日、写し 甲5:製品(工事)検収完了・引渡書、(特)1250AK型ギロチンプ レス、株式会社モリタ、平成16年6月22日、写し 甲6:図面、名称「切断・押えリミットスイッチ」、図番「EY1-03 8」型式「1600/1250AK型ギロチンプレス」、工番「F 2273」、MORITA CORPORATION、2004年 3月3日、写し 甲7:特開2009-000797号公報 1.甲1に基づく特許法第29条第1項第3号(新規性)及び特許法第29条第2項(進歩性)の理由(本件発明1、4) 本件発明1、4は、甲1に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである。または、本件発明1、4は、甲1に記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は取り消されるべきである。(特許異議申立書39-42ページ、52-53ページ) 2.甲2に基づく新規性及び進歩性の理由(本件発明1、4) 本件発明1、4は、甲2に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである。または、本件発明1、4は、甲2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は取り消されるべきである。(特許異議申立書42-45ページ、53ページ) 3.甲1及び甲7に基づく進歩性の理由(本件発明2、3及び5) 本件発明2、3及び5は、甲1に記載の発明及び甲7に記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は取り消されるべきである。(特許異議申立書45-48ページ、51-52ページ、53ページ) 4.甲2及び甲7に基づく進歩性の理由(本件発明2、3及び5) 本件発明2、3及び5は、甲2に記載の発明及び甲7に記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は取り消されるべきである。(特許異議申立書48-51ページ、52ページ、53-54ページ) 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 取消理由通知において採用しなかった上記第5の1.ないし4.の特許異議申立理由について検討する。 1.上記第5の1.及び2.の特許異議申立理由について 本件発明1、4については、上記第3に示すとおり、本件訂正請求により削除されているから、上記第5の1.及び2.の特許異議申立理由により特許を取り消すことはできない。 2.上記第5の3.の特許異議申立理由について 申立人は、上記第5の3.の特許異議申立理由として、本件発明2、3及び5は、甲1に記載の発明及び甲7に記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである旨を主張しているため、以下に検討する。 (1)甲1の記載事項 甲1(実願昭55-191628号(実開昭57-112822号)のマイクロフィルム)には、次の事項が記載されている。 ア 「本考案は切断処理装置における上昇位置調整装置に関するものである。」(マイクロフィルムの明細書2ページ1-2行) イ 「従来金属スクラップ等を圧縮し切断する装置においては、押え体を下降させて金属スクラップ等を圧縮し、ついでカツターにより所定の長さに切断していた。その際押え体が所定の上昇限界位置から下降した位置に関係なく、カツターを所定の上昇限界位置まで上昇させた上で、切断のためにカツターを下降させていた。しかし切断のためには押え体の下降位置より若干上部までカツターが上昇すれば十分であり、不必要な高さまでカツターを上昇させることは、駆動エネルギーにとつて不経済であるばかりでなく、所要時間も多く必要であつた。 本考案は上刃体の上昇位置を、押え体の下降位置にその都度対応させることにより、必要最小限の上昇ストロークに自動的に調整し、エネルギーのロスを無くするとともに作業時間の短縮を図ることを目的とするものである。」(同2ページ3-19行) ウ 「第1図において切断処理装置のテーブル1のテーブル面1aに連続して、押圧台2が位置しており、この押圧台の外端部のエツヂに下刃3を設けている。押圧台2の上方には、テーブル上に供給される金属スクラップ等の被切断物7をテーブル面に連続する押圧台に押え付けるための手段としての押え体4がフレーム5より垂設してある。この押え体4はフレーム5上に支持されているシリンダ6の操作により上下動自在である。 押え体4の外方には、この例では開口部8を有するギロチン式の上刃体9が隣接してある。この上刃体9はフレーム5により支持されたシリンダ10の操作により昇降自在である。この上刃体9の開口部8の上縁部に上刃11が設けてあり、上記下刃3と協働して切断可能である。 押え体4は、その下降距離をパルス信号に変換してカウントするようにプリセツトカウンタ12に接続してあり、また上刃体9は、その上昇距離をパルス信号に変換してカウントするようにプリセツトカウンタ12に接続してある。」(同3ページ1-20行) エ 「第2図を参照して上昇位置調整について説明する。いまa点を押え体4の上昇限界位置とし、d点を切断下降確認位置とする。このa点とd点とは設計時に確定されているので固定点であり、その間の距離Lは一定である。またb点を押え体4の下降停止位置とし、このときの押え体の下降に対応して切断用の上刃体9が上昇した位置をc点とする。c点は安全性のためにb点より若干上位に設定してあり、b-c間の距離Cは一定(たとえば100mm)である。押え体の下降ストロークをAとし、b点からd点までの距離をBとし、上刃体の上昇ストロークをDとすると、 L=A+B , D=B+C であるので、 D=L+C-A である。」(同4ページ1-16行) オ 「すなわち押え体4の下降ストロークA_(n)が大きくなるということは、それにより圧縮された厚さが小さくなることであるから、このとき上刃体9はこの厚さに安全距離Cが加わつただけ上昇すればよく、したがつて上昇ストロークDnは小さくてよい。そこでプリセツトカウンタ12をL+Cに相当するパルス数に設定する。そして押え体4の下降ストロークのパルス数をプロセツトカウンタ12によりカウントし、ついで切断用の上刃体9の上昇ストロークのパルス数をプリセツトカウンタ12によりカウントし、プリセツトカウンタによるカウント数が設定値までに至つたとき、上刃体9の上昇を停止する。」(同4ページ18行-5ページ10行) カ 「作動について説明すると、予めブロツク化した被切断物7を搬送手段(図示せず。)によつてテーブル面1aおよび押圧台2上に移動させる。押え体4によりこれを押圧する。この下降ストロークA_(1)はプリセツトカウンタ12によりカウントされる。上刃体9を下降させるがこのときは開口部8から被切断物の先端部が突出していないので何物も切断しない。ついで上刃体9を上昇させる。この上昇ストロークD_(1)はプリセツトカウンタ12によりカウントされる。プリセツトカウンタのカウント数が設定値に至つたとき、上刃体9の上昇を停止する。ついで押え体4が上昇し、搬送手段により上記の押圧された先端部を開口部8内に移動させ、再び押え体4を下降させて先端部に続く部分を押圧する。・・・そこで上刃体9を下降させ開口部8から突出している先端部すなわち下降ストロークA_(1)で圧縮された部分を上下両刃11,3で切断する。上刃体9を上昇させ、この上昇ストロークD_(2)はプリセツトカウンタ12によりカウントされ、設定値に至つたとき上昇停止する。・・・この動作が自動的に繰り返えされる。したがつて上刃体9の上昇ストロークは、常に次に切断すべき部分を圧縮したときの押え体4の下降ストロークに対応しているので、必要最小限の上昇動作ですみ、エネルギー的,時間的なロスがない。」(同5ページ15行-7ページ4行) キ 「第1図 」 ク 「第2図 」 (2)甲1の記載事項及び図面から理解できる事項 また、上記(1)から、以下の点が理解できる。 ケ 上記(1)カの「押え体4によりこれを押圧する。」、「圧縮された部分を上下両刃11,3で切断する。」及び「上刃体9の上昇を停止する。」との記載から、引用文献1の「切断処理装置」が、「押え体4を含む押圧手段」、「圧縮された部分を切断する切断手段」及び「上刃体9(上刃11)の上昇を停止する上刃上昇停止手段」を備えていること コ 上記(1)キの第1図から、押え体4により被切断物7の圧縮された部分(押圧台2の載置面と押え体4との間の一点鎖線の部分。以下、「圧縮された部分」という。)は、被切断物7の圧縮されていない部分(被切断物7のテーブル面1a上の一点鎖線の部分。以下、「圧縮されていない部分」という。)と比べて、押え体4により押圧され圧縮され変形させられて薄くなっていること サ 上記(1)エ及び上記(1)クの第2図から、押え体4の下降ストロークAは、押え体4の上昇限界位置であるa点から、押え体4が被切断物7を圧縮し下降が停止した位置である押え体4の下降停止位置b点までの距離であり、b点は、被切断物7の圧縮された部分の上面の高さであること また、上記(1)オの「すなわち押え体4の下降ストロークA_(n)が大きくなるということは、それにより圧縮された厚さが小さくなることであるから、このとき上刃体9はこの厚さに安全距離Cが加わつただけ上昇すればよく」との記載から、甲1では、押え体4の下降ストロークA_(n)に基づいて、被切断物7の押え体4により圧縮された部分の上面の高さ(圧縮された部分の厚み)を検出しているといえるものであり、該押え体4の下降ストロークA_(n)をカウントするプリセットカウンタ12は、圧縮された部分の厚みを検出する厚み検出手段といえること(なお、符号「A」は、下降ストロークの観念的な長さを意味し、符号「A_(n)」は、個別に計測された下降ストロークの数値を意味すると解されるので、以下では、符号「A_(n)」で統一して記載する。)。 (3)甲1発明 したがって、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「金属スクラップ等の被切断物7が供給されるテーブル1と、 前記テーブル1に供給された前記被切断物7を搬送する搬送手段と、 昇降自在であり下降したときに当該被切断物7の圧縮されていない部分を下方に押圧することにより、押圧方向に当該被切断物7の圧縮されていない部分が圧縮され変形させられた圧縮された部分を形成させる押え体4を含む押圧手段と、 前記圧縮された部分を、昇降自在な上刃体9の上刃11、及び下降したときの前記上刃体9の上刃11に近接するように固定された下刃3、の間で切断する切断手段と、 を備える切断処理装置であって、 前記押え体4により押圧されている前記圧縮された部分において、前記被切断物7の圧縮されていない部分と比べて当該押え体4により前記圧縮された部分の厚みを検出するプリセットカウンタ12と、 前記上刃体9の上刃11が上昇するときに、前記プリセットカウンタ12により検出された前記圧縮された部分の厚みよりも安全距離C、上方のc点の位置で前記上刃体9の上刃11が上昇するのを停止させる上刃上昇停止手段と、 を備える切断処理装置。」 (4)甲7の記載事項等及び甲7に記載の技術的事項 甲7(特開2009-000797号公報)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、断裁装置、特に押さえ部材および断裁刃の待機位置の調整に関するものである。 【背景技術】 【0002】 図4は、紙、製本物あるいは樹脂や木材等のシート状材などの被断裁物を断裁する従来の断裁機の一例を示すもので、図4において、1は被断裁物、2は被断裁物1を位置決め載置する載置台と、3は断裁時に被断裁物1がずれないように該被断裁物1を載置台2へ押圧締め付ける押さえ部材と、4は押さえ板3で押圧した被断裁物1を切断する断裁刃である。」 イ 「【0015】 断裁制御装置31は、中央演算処理装置(CPU)31a、CPUを実行するプログラムを格納したROM31b、入出力インターフェース31c、押さえ部材21の待機位置、断裁刃22の待機位置および押さえ部材21を加圧するトルクなどの設定値を格納する設定値メモリ31dを備えて構成されており、断裁開始信号に基づいて断裁を開始すると、図2に示すように動作する。 【0016】 すなわち、モータ駆動回路34に正転駆動信号を出力し、押さえ部材を下降させる。このとき電流検出器36から電流値を入力し、その電流値をトルク値に変換し、予め設定したトルク値と比較し、変換したトルク値が設定トルク値に到達する(押さえ部材が被断裁物を押さえるとトルクが急増する)と、ロータリーエンコーダ38により到達時点の押さえ部材の位置を設定値メモリ31dに記憶する。この記憶値は被断裁物の高さとなる。この高さを基準にして、その高さに20mm?30mmを加算し、その値を押さえ部材の待機位置として設定値メモリ31dに設定し、また、さらに押さえ部材の待機位置の設定値に約5mmを加算して断断裁刃の待機位置として設定値メモリ31dに設定する。 【0017】 ついで、モータ駆動回路35に正転駆動信号を出力し、断裁刃を下降させ、最下降位置に到達した時点でモータ駆動回路35に逆転駆動信号を出力して断裁刃を上昇させる。断裁刃の刃先が上昇し押さえ部材の位置に到達すると、モータ駆動回路34に逆転駆動信号を出力して押さえ部材を上昇させる。断裁刃の上昇が継続し設定値メモリ31dに設定した断断裁刃の待機位置に到達すると、モータ駆動回路35に停止信号を出力し、断裁刃を停止させる。また、押さえ部材の上昇で設定値メモリ31dに設定した押さえ部材の待機位置に到達すると、モータ駆動回路34に停止信号を出力し、押さえ部材を停止させる。押さえ部材および断裁刃がこの停止位置、すなわち待機位置にある状態で次の断裁を開始する。これによって押さえ部材21および断裁刃22は、被断裁物1の高さが高い場合には高く、低い場合には低く被断裁物1の高さに対応した上方位置で待機することとなり、断裁1サイクルに要する時間が短縮される。なお、押さえ部材および断裁刃の位置はロータリーエンコーダ38および39から取得する。」 ウ 上記ア及びイから、甲7には、 「紙、製本物あるいは樹脂や木材等のシート状材などの被断裁物を断裁する断裁装置において、被断裁物の高さである押さえ部材の位置に20mm?30mmを加算し、その値を押さえ部材の待機位置とする断裁制御装置31を備える」 との技術的事項(以下、「甲7に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 (5)本件発明2及び3についての判断 ア 対比 本件発明2と、甲1発明とを対比すると、甲1発明の「金属スクラップ等の被切断物7」又は「被切断物7」は、本件発明2の「金属製物質を複数含んで成る集合体であるスクラップ」又は「スクラップ」に相当し、以下同様に、「テーブル1」は「供給部」に、「搬送手段」は「搬送機構」に、「被切断物7の圧縮されていない部分」は「スクラップの一部」に、「圧縮された部分」は「被押圧部」に、「押え体4」は「押さえスライド」に、「押圧手段」は「押圧機構」に、「上刃体9の上刃11」は「上刃」に、「下刃3」は「下刃」に、「切断手段」は「切断機構」に、「切断処理装置」は「スクラップ切断装置」に、「押え体4により前記圧縮された部分の厚み」は「押さえスライドにより押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記押圧方向の厚み」に、「上刃上昇停止手段」は「上刃上昇停止機構」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明の「前記被切断物7の圧縮されていない部分と比べて当該押え体4により前記圧縮された部分の厚みを検出するプリセットカウンタ12」は、その機能に鑑みれば、本件発明2の「前記スクラップの一部と比べて当該押さえスライドにより押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記押圧方向の厚みを検出する厚み検出機構」に相当する。 イ 一致点及び相違点 そうすると、本件発明2と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 <一致点> 「金属製物質を複数含んで成る集合体であるスクラップが供給される供給部と、 前記供給部に供給された前記スクラップを搬送する搬送機構と、 昇降自在であり下降したときに、前記供給部から搬送された前記スクラップの一部を下方に押圧することにより、押圧方向に当該スクラップの一部が圧縮され変形させられた被押圧部を形成させる押さえスライドを含む押圧機構と、 前記被押圧部を、昇降自在な上刃、及び下降したときの前記上刃に近接するように固定された下刃、の間で切断する切断機構と、 を備えるスクラップ切断装置であって、 前記押さえスライドにより押圧されている前記被押圧部において、前記スクラップの一部と比べて当該押さえスライドにより押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記押圧方向の厚みを検出する厚み検出機構と、 前記上刃が上昇するときに、前記厚み検出機構により検出された前記厚みの長さよりも所定の長さ、上方の位置で当該上刃が上昇するのを停止させる上刃上昇停止機構と、 を備えるスクラップ切断装置。」 <相違点1> 本件発明2は、「前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させる押圧上昇停止機構」を備えているのに対し、甲1発明では、押え体4(押さえスライド)が上昇するのを停止させる位置については特定されていない点。 <相違点2> 本件発明2は、「前記上刃上昇停止機構における前記所定の長さは、前記被押圧部での前記押圧方向の厚みがスプリングバックにより当該押圧方向とは逆方向に増す長さよりも長く設定されている」のに対し、甲1発明は、上刃上昇停止手段(上刃上昇停止機構)における安全距離Cが、スプリングバックにより押圧方向とは逆方向に増す長さよりも長く設定されているか不明である点。 ウ 判断 (ア)上記相違点1について検討する。 甲1の上記(1)ウ、エには、押え体4の上昇限界位置をa点とし、押え体4はプリセツトカウンタ12で下降ストロークのパルス数をカウントし、該a点を基準とする押え体4の下降ストロークをAとして、上刃体の上昇ストロークDを「D=L+C-A」なる計算式から算出する旨が示されていることからすると、甲1発明において、「前記プリセットカウンタ12により検出された前記圧縮された部分の厚みよりも安全距離C、上方のc点の位置で前記上刃体9の上刃11が上昇するのを停止させる」ためには、a点を基準とする押え体4の下降ストロークAを用いて上記計算式のもとで上刃体の上昇ストロークDを得るべく、押え体4が、その上昇限界位置(a点)まで上昇してa点からの下降ストロークA(実際は個別に計測するA_(n))をカウントすることは必須の要件と認められる(上記(2)サも参照されたい。)から、甲1発明において、押え体4が上昇して停止する位置を、上記上昇限界位置(a点)以外の位置とすることには阻害事由があるといえる。また、甲1には、押え体4で被切断物7を押さえる都度毎に、被切断物7の「押え体4の直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出」して、該検出された位置に基づいて押え体4が上昇するのを停止させるとの技術思想も見いだせない。 さらに、上記(4)のとおり、甲7には、被断裁物の高さである押さえ部材の位置に20mm?30mmを加算し、その値を押さえ部材の待機位置とするとの技術的事項が記載されているにすぎず、甲7の「押さえ部材の位置」は、甲1発明の「圧縮された部分の厚み」に相当するから、結局、甲7には、「押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置」、すなわち、押さえスライドで押圧する前のスクラップの厚みを検出することが示されていない。 よって、上記相違点1は、甲1発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (イ)上記のとおり、相違点1は、甲1発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (ウ)また、本件発明3は本件発明2に従属する請求項であり、甲1発明と対比すると、少なくとも上記イで示した相違点1で相違するから、本件発明2と同様の理由により、本件発明3は、甲1発明及び甲7に記載の技術的事項に基づいて、当業者といえども容易に発明できたものとはいえない。 エ 申立人の相違点1についての主張について 相違点1に係る本件発明2の構成について、申立人は甲第7号証の記載事項を考慮すれば、甲1発明において、上刃(11)が設けられた上刃体(9)の上昇位置の制御に加えて、押え体(4)の上昇位置をも、被切断物(7)の厚みに基づいて制御することに何ら困難性はないし、上方からスクラップを圧縮するという甲1発明の押え体(4)の役割からすれば、次に押さえる部分のうち最も高い部分の位置を検出し、押え体(4)の上昇停止位置をそれよりも高くすることは当然である旨(特許異議申立書47ページ13行-48ページ10行)を主張するが、甲1発明に甲7に記載の技術的事項を考え合わせても相違点1に係る本件発明2が容易になし得るものではないことは上記ウで説示したとおりである。 また、次に押さえる部分(甲1発明における「被切断物7の圧縮されていない部分」)のうち最も高い部分の位置を検出することは甲1にも甲7にも記載も示唆もないから、上方からスクラップを圧縮するという甲1発明の押え体4の役割からすれば、次に押さえる部分のうち最も高い部分の位置を検出し、押え体4の上昇停止位置をそれよりも高くすることは当然である旨の申立人の主張は採用できない。 (6)本件発明5についての判断 本件発明5の「前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させ」るとの構成は、上記(5)イの本件発明2の相違点1に係る「前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させる押圧上昇停止機構」との構成と同様の構成である。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、上記(5)ウに説示したとおり、甲1発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)小括 以上のとおり、本件発明2、3及び5は、甲1発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、上記第5の3.の特許異議申立理由により特許を取り消すことはできない。 3.上記第5の4.の特許異議申立理由について 申立人は、上記第5の4.の特許異議申立理由として、本件発明2、3及び5は、甲2に記載の発明及び甲7に記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである旨を主張しているため、以下に検討する。 (1)甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 ア (表紙) 「(特)1250AK型ギロチンプレス(F2273)」(2-3行)、「取扱説明書(運転,メンテナンスマニュアル)」(4-5行)、「平成16年5月」(7行)、「株式会社モリタ」(8行)の表記 イ (「まえがき」ページ) 「このたびは,弊社のギロチンプレスをご用命賜り誠にありがとうございます。私共は,このギロチンプレスをお納めできましたことを光栄に存じますと共に,このギロチンプレスが御社の設備の合理化ならびに生産性の向上に役立つことを期待致しております。 『ギロチンプレス』は労働安全衛生法第59条第3項の「厚生労働省令で定める危険又は有害な業務」及び同規則第36条第2号の『シャー』に該当致します。それに伴い,いくつかの事柄が義務付けられておりますので,事業者の皆様方及びギロチンプレスを操作される方はこのマニュアルを必ずお読みになり,内容を理解された上で実際にご使用下さいますようお願い致します。又,常にこのマニュアルを手元に置かれて作業されることをお勧め致します。」(2-11行) ウ (「第1章運転編」2ページ) 「本機は,廃車,廃船材,建築廃材や長尺形鋼,棒鋼,パイプ及びこれらの混合物,構造物を圧縮,切断処理することを目的としたギロチンプレスです。」(第3-4行)、「送りシリンダのピストンロッドの先端には送り移動盤が取り付けられており,ピストンロッドを前進させることにより送り移動盤が前進し供給ボックス内の圧縮されたスクラップを切断装置へ送り込んでいます。スクラップの切断長さは,この送り移動盤の移動量の増減により変化させています。 切断シリンダ,押えシリンダのピストンロッドの各先端にカッティング盤,押え盤がそれぞれ取り付けられており,ピストンロッドを前進させることにより押え盤でスクラップを圧縮し,カッティング盤でスクラップを切断しています。」(12-18行) エ (「第1章運転編」5ページ) 「○1 切断装置 切断シリンダ ピストンロッドに取り付けられたカッティング盤を上昇,下降させます。 押えシリンダ ピストンロッドに取り付けられた押え盤を上昇,下降させます。 カッティング盤 シヤー刃(上刃)が取り付けてあり,スクラップを切断します。 押え盤 スクラップを切断前に圧縮します。 シヤー刃 スクラップを切断する上刃と下刃があります。」(1-11行) (当審注:「○1」は1の丸囲み) オ (「第1章運転編」6ページ) 「○2 供給ボックス装置 ・・・ 送り移動盤 圧縮されたスクラップを切断装置に送ります。 供給ボックス 圧縮,切断処理するスクラップを投入します。」(1-15行) (当審注:「○2」は2の丸囲み) カ (「第1章運転編」10ページ) 「スクラップは押え盤で押さえ,カッティング盤を下降させる事により切断されます。下刃は切断本体フレームに対し水平に,上刃は下刃に対して最も切断能力を発揮する角度で取り付けてあります。」(12-14行) キ (「第1章運転編」68ページ) 「4)切断動作を変更したい ・・・「各種モード設定画面」の [切断動作選択] 「全ストローク」 「無段階」 切断動作の上昇位置(ストローク)を変更したい 「各種モード設定画面」の[切断動作選択][全ストローク][無段階]のいずれかを選択します。 この機能は,カッティング盤の上昇終了位置をスクラップの高さに自動調整することで,切断上昇行程を短縮することを目的にしています。 「備考」 切断無段階動作とは・・・ 以下の図に示すように,押え下降工程時の押え移動盤の停止位置を基準にして,切断サイクル毎にPCがスクラップの高さに合わせたカッティング盤の上昇終了位置を調整するモードです。 全ストローク動作に比べ,カッティング盤の上昇ストロークが短くなり切断上昇行程時間が短くなります。 ※但し,押え移動盤で押えた後のスクラップの厚みが大きい場合には,カッティング盤が全ストローク動作と同じ位置まで上昇します。」(1-20行) (当審注:68ページの「押え移動盤」との用語は、上記エの用語の定義からみて、「押え盤」と同義と認め、以下「押え盤」とする。また、「備考」は、四角の枠囲み。) ク (「第1章運転編」152ページ) 「14. 添付図面,機器取扱説明書及び点検表 (1)図面 ○1組立図 ○2配置図 ○3危険表示指示図 ○4電気設備図面」(1-6行) (当審注:「○1」ないし「○4」は、それぞれ1ないし4を丸囲み) ケ (「第1章運転編」9ページ) 「図2-3 」 コ (「第1章運転編」68ページ) 「図面 」 サ (「第1章運転編」69ページ) 「図面 」 シ (添付図面の「電気設備図面」の「図番 F2273-610」) 「図面の一部 」 (2)甲2の記載事項及び図面から理解できる事項 また、上記(1)からみて、甲2から以下の事項が認定できる。 ア 上記(1)ウ、コ、サ、シから、甲2のギロチンプレスは、昇降自在であり下降したときにスクラップの一部を下方に押圧することにより、押圧方向にスクラップの一部が圧縮され変形させられた被押圧部を形成させる押え盤を含む押圧機構を有すること、及び、前記被押圧部を、昇降自在な上刃、及び下降したときの前記上刃に近接するように固定された下刃、の間で切断するカッティング盤を有すること イ 上記(1)キには、甲2のギロチンプレスの切断無段階動作なるモードに関して、押え盤により押圧されているスクラップの被押圧部において、前記スクラップの押圧されていない部分と比べて当該押え盤により押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記被押圧部の高さを基準としてPC(プログラマブルコントローラ)がカッティング盤の上昇終了位置を調整する旨が記載されているから、上記(1)シに図示されている「押え位置検出」の手段は、押え盤により押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなったスクラップの被押圧部の高さを検出する高さ検出機構であること ウ 上記(1)キ、コ、サから、甲2のギロチンプレスは、切断無段階動作なるモードにおいて、カッティング盤の上刃が上昇するときに、スクラップの被押圧部の厚みの長さよりも所定の長さ、上方の位置で当該カッティング盤が上昇するのを停止させること (3)甲2発明 上記(1)及び(2)より、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 <甲2発明> 「スクラップが供給される供給ボックスと、 前記供給ボックスに供給された前記スクラップを搬送する送り移動盤と、 昇降自在であり下降したときに当該スクラップの押圧されていない部分を下方に押圧することにより、押圧方向に当該スクラップの一部が圧縮され変形させられた被押圧部を形成させる押え盤を含む押圧機構と、 前記被押圧部を、昇降自在な上刃、及び下降したときの前記上刃に近接するように固定された下刃、の間で切断するカッティング盤と、 を備えるギロチンプレスであって、 前記押え盤により押圧されている前記被押圧部において、前記スクラップの押圧されていない部分と比べて当該押え盤により押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記被押圧部の高さを検出する高さ検出機構と、 前記カッティング盤の上刃が上昇するときに、前記高さ検出機構により検出された前記高さよりも所定の長さ、上方の位置である上昇終了位置で当該カッティング盤の上刃が上昇するのを停止させる切断無段階動作なるモードと、 を備えるギロチンプレス。」 (4)甲7に記載の技術的事項について 甲7に記載の技術的事項は、上記2.(4)ウのとおりである。 (5)本件発明2及び3についての判断 ア 対比 本件発明2と、甲2発明とを対比すると、甲2発明の「スクラップ」は、上記(1)ウに鑑みれば金属製物質を複数含んでいるから、本件発明2の「金属製物質を複数含んで成る集合体であるスクラップ」又は「スクラップ」に相当し、以下同様に、「供給ボックス」は「供給部」に、「送り移動盤」は「搬送機構」に、「スクラップの押圧されていない部分」は「スクラップの一部」に、「押え盤」は「押さえスライド」に、「カッティング盤」は「切断機構」に、「ギロチンプレス」は「スクラップ切断装置」に、「被押圧部の高さ」は「押圧方向の厚み」に、「高さ検出機構」は「厚み検出機構」に、「前記カッティング盤の上刃が上昇するときに、前記高さ検出機構により検出された前記高さよりも所定の長さ、上方の位置である上昇終了位置で当該カッティング盤の上刃が上昇するのを停止させる」は「前記上刃が上昇するときに、前記厚み検出機構により検出された前記厚みの長さよりも所定の長さ、上方の位置で当該上刃が上昇するのを停止させる」に、「切断無段階動作なるモード」はその機能に鑑みれば「上刃上昇停止機構」に、それぞれ相当する。 イ 一致点及び相違点 上記アに照らせば、本件発明2と甲2発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点3及び4で相違する。 <一致点> 「金属製物質を複数含んで成る集合体であるスクラップが供給される供給部と、 前記供給部に供給された前記スクラップを搬送する搬送機構と、 昇降自在であり下降したときに、前記供給部から搬送された前記スクラップの一部を下方に押圧することにより、押圧方向に当該スクラップの一部が圧縮され変形させられた被押圧部を形成させる押さえスライドを含む押圧機構と、 前記被押圧部を、昇降自在な上刃、及び下降したときの前記上刃に近接するように固定された下刃、の間で切断する切断機構と、 を備えるスクラップ切断装置であって、 前記押さえスライドにより押圧されている前記被押圧部において、前記スクラップの一部と比べて当該押さえスライドにより押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記押圧方向の厚みを検出する厚み検出機構と、 前記上刃が上昇するときに、前記厚み検出機構により検出された前記厚みの長さよりも所定の長さ、上方の位置で当該上刃が上昇するのを停止させる上刃上昇停止機構と、 を備えるスクラップ切断装置。」 <相違点3> 本件発明2は、「前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させる押圧上昇停止機構」を備えているのに対し、甲2発明では、押え盤(押さえスライド)が上昇するのを停止させる位置については特定されていない点。 <相違点4> 本件発明2は、「前記上刃上昇停止機構における前記所定の長さは、前記被押圧部での前記押圧方向の厚みがスプリングバックにより当該押圧方向とは逆方向に増す長さよりも長く設定されている」のに対し、甲2発明は、切断無段階動作なるモードにおけるカッティング盤の上刃の上昇終了位置が、スクラップのスプリングバックにより押圧方向とは逆方向に増す長さよりも長く設定されているか不明である点。 ウ 判断 相違点3を検討すると、当該相違点3は、本件発明2と甲1発明との相違点1(上記2.(5)イ)と同様の相違点であるところ、甲7には、「押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置」、すなわち、押さえスライドで押圧する前のスクラップの厚みを検出することが示されていないから、相違点3は、甲2発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、本件発明2は、相違点4を検討するまでもなく、甲2発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 さらに、本件発明3は本件発明2に従属する請求項であり、甲2発明と対比すると、少なくとも上記イで示した相違点3で相違するから、同様の理由により、甲2発明及び甲7に記載の技術的事項に基づいて、当業者といえども容易に発明できたものとはいえない。 エ 申立人の主張についての検討 相違点3に係る本件発明2の構成について、申立人は、本件発明2と甲1発明との相違点1と同様に、甲7の記載を考慮すれば、甲2発明において上刃が設けられたカッティング盤の上昇位置の制御に加えて、押え盤の上昇位置をも、スクラップの厚みに基づいて制御することに何らの困難性はない旨(特許異議申立書51ページ6-12行)を主張するが、次に押さえる部分(甲2発明における「スクラップの押圧されていない部分」)のうち最も高い部分の位置を検出することは甲2にも甲7にも記載も示唆もないから、申立人の主張は採用できない。 (6)本件発明5についての判断 本件発明5の「前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させ」るとの構成は、上記(5)イの本件発明2の相違点3に係る「前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させる押圧上昇停止機構」との構成と同様の構成である。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、上記(5)ウに説示したとおり、甲2発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)小括 以上のとおり、本件発明2、3及び5は、甲2発明及び甲7に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、上記第5の4.の特許異議申立理由により特許を取り消すことはできない。 4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についてのむすび 以上のとおり、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について検討しても、本件発明2、3及び5に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2、3及び5に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項2、3及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件請求項1及び4に係る特許についての本件訂正請求により削除されているから、特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】 金属製物質を複数含んで成る集合体であるスクラップが供給される供給部と、 前記供給部に供給された前記スクラップを搬送する搬送機構と、 昇降自在であり下降したときに、前記供給部から搬送された前記スクラップの一部を下方に押圧することにより、押圧方向に当該スクラップの一部が圧縮され変形させられた被押圧部を形成させる押さえスライドを含む押圧機構と、 前記被押圧部を、昇降自在な上刃、及び下降したときの前記上刃に近接するように固定された下刃、の間で切断する切断機構と、 を備えるスクラップ切断装置であって、 前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させる押圧上昇停止機構と、 前記押さえスライドにより押圧されている前記被押圧部において、前記スクラップの一部と比べて当該押さえスライドにより押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記押圧方向の厚みを検出する厚み検出機構と、 前記上刃が上昇するときに、前記厚み検出機構により検出された前記厚みの長さよりも所定の長さ、上方の位置で当該上刃が上昇するのを停止させる上刃上昇停止機構と、 を備え、 前記上刃上昇停止機構における前記所定の長さは、前記被押圧部での前記押圧方向の厚みがスプリングバックにより当該押圧方向とは逆方向に増す長さよりも長く設定されていることを特徴とするスクラップ切断装置。 【請求項3】 前記厚み検出機構は、前記スクラップの一部が前記押さえスライドにより下方に押圧されて圧縮され変形して形成された前記被押圧部の上面の位置に基づいて前記厚みを検出することを特徴とする請求項2に記載されたスクラップ切断装置。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 金属製物質を複数含んで成る集合体であるスクラップが供給される供給部と、 前記供給部に供給された前記スクラップを搬送する搬送機構と、 昇降自在であり下降したときに、前記供給部から搬送された前記スクラップの一部を下方に押圧することにより、押圧方向に当該スクラップの一部が圧縮され変形させられた被押圧部を形成させる押さえスライドを含む押圧機構と、 前記被押圧部を、昇降自在な上刃、及び下降したときの前記上刃に近接するように固定された下刃、の間で切断する切断機構と、 を備えるスクラップ切断装置を用いて、前記供給部に供給された前記スクラップを下方に押圧して圧縮し変形させてから切断する方法であって、 前記供給部から前記押さえスライドの直下へ搬送される途中である前記スクラップにおいて、当該押さえスライドの直下に至る直前である部分のうちで最も高い部分の位置を検出して、当該押さえスライドが上昇するときに、検出された前記最も高い部分の位置よりも所定の長さ、上方の位置で、当該押さえスライドが上昇するのを停止させ、 前記押さえスライドにより押圧されている前記被押圧部において、前記スクラップの一部と比べて当該押さえスライドにより押圧され圧縮され変形させられたことにより薄くなった前記押圧方向の厚みを検出し、 前記上刃が上昇するときに、検出された前記厚みの長さよりも所定の長さ、上方の位置で当該上刃が上昇するのを停止させ、 前記被押圧部での前記押圧方向の厚みがスプリングバックにより当該押圧方向とは逆方向に増す長さよりも長くなるように、前記所定の長さを調節することを特徴とする切断する方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-05-06 |
出願番号 | 特願2017-153632(P2017-153632) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(B23D)
P 1 651・ 121- YAA (B23D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中川 康文 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
大山 健 河端 賢 |
登録日 | 2020-03-23 |
登録番号 | 特許第6679545号(P6679545) |
権利者 | 富士車輌株式会社 |
発明の名称 | スクラップ切断装置、及びスクラップを切断する方法 |
代理人 | 阿部 伸一 |
代理人 | 楠本 高義 |
代理人 | 平松 拓郎 |
代理人 | 平松 拓郎 |
代理人 | 楠本 高義 |
代理人 | 中川 茂樹 |
代理人 | 太田 貴章 |
代理人 | 中川 茂樹 |