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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1376691
異議申立番号 異議2020-700363  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-26 
確定日 2021-06-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6612343号発明「前駆体組成物、感光性樹脂組成物、前駆体組成物の製造方法、硬化膜、硬化膜の製造方法および半導体デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6612343号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。 特許第6612343号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6612343号に係る出願(特願2017-526399号、以下「本願」ということがある。)は、平成28年6月29日(優先権主張:平成27年6月30日、特願2015-132079号)の国際出願日に出願人富士フイルム株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされたものとみなされる特許出願であり、令和元年11月8日に特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、令和元年11月27日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき、令和2年5月26日に特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」ということがある。)により、「特許第6612343号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」ということがある。)

3.審理すべき範囲
上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6612343号の特許請求の範囲の全請求項に係る発明についての特許を審理の対象とすべきものであって、本件特許異議の申立てに係る審理の対象外となる請求項は存しない。

4.以降の手続の経緯
令和2年 9月30日付け 取消理由通知
令和2年11月27日 意見書・訂正請求書
令和3年 1月 7日付け 通知書(申立人あて)
(なお、上記通知書に対する申立人からの意見書等の提出はなかった。)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人が主張する取消理由はそれぞれ以下のとおりである。

申立人は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、下記甲第1号証及び甲第2号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下の(1)及び(2)が存するとしている。

(1)本件の請求項1ないし17に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であり、また、本件の請求項1、2、4-6、8-11及び13-17に係る発明は、いずれも、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1ないし17に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。)
(2)本件特許の請求項1ないし17に係る発明は、いずれも甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。)

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2010-250059号公報
甲第2号証:特開2006-342310号公報
(以下、上記「甲第1号証」及び「甲第2号証」を、それぞれ、「甲1」及び「甲2」と略す。)

第3 当審が通知した取消理由の概要
当審は、本件特許第6612343号に対する上記第2に示す特許異議の申立てを審理した上、以下の取消理由を通知した。

●本件の請求項1、2、4ないし6、8ないし11及び13ないし16に係る発明は、いずれも、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1、2、4ないし6、8ないし11及び13ないし16に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由A」という。)
●本件特許の請求項1ないし17は、その記載が不備であり、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由B」という。)

第4 令和2年11月27日付訂正請求による訂正の適否

1.訂正内容
令和2年11月27日付訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし17を一群の請求項ごとに訂正するものであって、以下の訂正事項を含むものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「光ラジカル重合開始剤を含む、感光性樹脂組成物。」と記載されているのを、
「光ラジカル重合開始剤を含み、前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(2)で表される繰返し単位を含む感光性樹脂組成物。

一般式(2)中、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R^(111)は、2価の有機基を表し、R^(115)は、4価の有機基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4において、「R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。」との記載を「R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許諸求の範囲の請求項5において、「前記A^(1)およびA^(2)の少なくとも一方が、」との記載を「前記一般式(1-1)における、A^(1)およびA^(2)の少なくとも一方が、」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12において、「前記複素環含有ポリマー前駆体が重合性不飽和基を有する、感光性樹脂組成物の製造方法。」との記載を
「前記複素環含有ポリマー前駆体が重合性不飽和基を有し、前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む感光性樹脂組成物の製造方法。

一般式(2)中、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R^(111)は、2価の有機基を表し、R^(115)は、4価の有機基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。」と訂正する。

2.検討
以下の検討において、本件訂正前の請求項1ないし17をそれぞれ項番に従い「旧請求項1」のようにいい、訂正後の請求項1ないし17についてそれぞれ項番に従い「新請求項1」のようにいう。

(1)訂正の目的
上記訂正事項1ないし4に係る各訂正では、旧請求項1、4、5又は12について、本件特許に係る明細書の【0019】の記載に基づき、複素環含有ポリマー前駆体である「ポリイミド前駆体」について、「式(2)」で表される繰り返し単位を含むものに限定すると共に、「式(2)」又は「式(1-1)」に記載された「R^(113)」基及び「R^(114)」基が「それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す」ことに限定することにより、旧請求項1、4、5又は12に係る特許請求の範囲が減縮されて新請求項1、4、5又は12となっていることが明らかであるから、訂正事項1ないし4に係る各訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、本件訂正における上記訂正事項1ないし4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的要件に適合する。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
上記(1)でそれぞれ説示したとおり、訂正事項1ないし4に係る各訂正は、訂正前の明細書の記載に基づいて、旧請求項1、4、5又は12に係る特許請求の範囲を実質的に減縮していることが明らかであるから、訂正事項1ないし4に係る訂正は、いずれも、新たな技術的事項を導入するものではなく、訂正前の各請求項に係る特許請求の範囲を実質的に変更又は拡張するものでもない。
したがって、上記各訂正事項に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1ないし17の全ての請求項についてされているから、本件訂正に係る訂正の適否の検討において、独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。

3.訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正を認める。

第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項
訂正後の本件特許に係る請求項1ないし17には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
複素環含有ポリマー前駆体の少なくとも一種を含み、
前記複素環含有ポリマー前駆体は、ポリイミド前駆体であり、
前記複素環含有ポリマー前駆体の重量平均分子量/数平均分子量である分散度が2.5?3.1であり、
前記複素環含有ポリマー前駆体が重合性不飽和基を有し、
光ラジカル重合開始剤を含み、
前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(2)で表される繰返し単位を含む
感光性樹脂組成物。
【化1】

一般式(2)中、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R^(111)は、2価の有機基を表し、R^(115)は、4価の有機基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。
【請求項2】
前記分散度が2.8?3.1である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記複素環含有ポリマー前駆体として、重量平均分子量および構成する繰り返し単位の少なくとも1種が互いに異なる複素環含有ポリマー前駆体を、2種以上含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記複素環含有ポリマー前駆体の少なくとも1種が、一般式(1-1)で表される繰り返し単位を有する前駆体である、請求項1?3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物;
【化2】

一般式(1-1)中、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R^(111)は、2価の有機基を表し、R^(112)は、単結合または2価の基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。
【請求項5】
前記一般式(1-1)における、A^(1)およびA^(2)の少なくとも一方が、酸素原子である、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記R^(112)は、単結合、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1?10の炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO_(2)-および-NHCO-、ならびにこれらの組み合わせから選択される基である、請求項4または5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
重量平均分子量が10000?20000の複素環含有ポリマー前駆体と、重量平均分子量が28000?42000の複素環含有ポリマー前駆体を、0.8?1.2:1.2?0.8の質量比で含む、請求項1?6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、硬化性化合物を含む、請求項1?7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記硬化性化合物が、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含む、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記硬化性化合物が、エチレン性不飽和基を2個以上含む化合物である、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
再配線層用層間絶縁膜形成用である、請求項1?10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
複素環含有ポリマー前駆体であって、重量平均分子量が互いに異なる複素環含有ポリマー前駆体を、2種以上を用い、かつ、光ラジカル重合開始剤を用いることを含み、
前記複素環含有ポリマー前駆体は、ポリイミド前駆体であり、前記複素環含有ポリマー前駆体が重合性不飽和基を有し、前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む感光性樹脂組成物の製造方法。
【化2】

一般式(2)中、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R^(111)は、2価の有機基を表し、R^(115)は、4価の有機基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。
【請求項13】
請求項1?11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる、硬化膜。
【請求項14】
再配線層用層間絶縁膜である、請求項13に記載の硬化膜。
【請求項15】
請求項1?11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いることを含む、硬化膜の製造方法。
【請求項16】
感光性樹脂組成物を基板に適用する工程と、基板に適用された感光性樹脂組成物を硬化する工程とを有する、請求項15に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項17】
請求項13または14に記載の硬化膜、あるいは、請求項15または16に記載の製造方法で製造された硬化膜を有する、半導体デバイス。」
(以下、上記請求項1ないし17に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明17」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)

第6 当審の判断
当審は、
当審が通知した上記取消理由及び申立人が主張する上記取消理由についてはいずれも理由がなく、ほかに本件の各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきもの、
と判断する。
以下、当審が通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由につき具体的に検討・詳述する。

I.取消理由1及び2並びに取消理由Aについて
申立人が主張する取消理由1及び2並びに当審が通知した取消理由Aは、いずれも本件特許が特許法第29条に違反して特許されたものであることをいうものであるから、併せて検討する。

1.各甲号証に記載された事項及び各甲号証に記載された発明
上記取消理由1及び2並びに取消理由Aにつき検討するにあたり、甲1及び甲2に記載された事項を確認し、記載された事項に基づき、甲1及び甲2に記載された各発明の認定を行う。(記載事項に係る下線は、元々あるものを除き、当審が付した。)

(1)甲1

ア.甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。

(1a)
「【請求項1】
ポリアミド酸(A)と、光塩基発生剤(B)と、三重項増感剤及び/又は光ラジカル開始剤(C)と、光重合性化合物(D)と、を含有する感光性樹脂組成物であって、前記ポリアミド酸100質量部に対して、前記光塩基発生剤が1質量部?10質量部、前記増感剤及び/又は前記光ラジカル開始剤が0.1質量部?7質量部、前記重合性化合物が1質量部?10質量部であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記光重合性化合物が、アクリル基または、メタクリル基のいずれかの重合性基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
・・(中略)・・
【請求項12】
前記ポリアミド酸が、ジアミンと酸二無水物とを用いて得られるポリアミド酸であり、式(1)で表されるジアミンを用いて得られることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
・・(中略)・・
【請求項16】
前記ポリアミド酸が更に、式(5)で表される酸二無水物を用いて得られることを特徴とする請求項12から請求項15のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化5】

【請求項17】
前記ポリアミド酸が重合性末端を有するポリアミド酸であり、前記重合性末端が式(6)で表される化合物を用いて得られる重合性末端であることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化6】

(式(6)中、R^(b)はフェニル基もしくは水素であり、R^(c)は式(7)から選ばれる2価の有機基であり、R^(d)はそれぞれ独立に水素またはメチル基であり、それぞれ同じでも異なっていても良い。)
【化7】

【請求項18】
前記ポリアミド酸が分子量の異なる少なくとも2種のポリアミド酸を混合したものであり、それぞれの分子量が重量平均分子量で3万以上と3万未満とであることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項19】
さらに難燃剤(E)を含有することを特徴とする請求項1から請求項18のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項20】
さらに可塑剤(F)を含有することを特徴とする請求項1から請求項19のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1から請求項20のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする感光性フィルム。
【請求項22】
キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた請求項21に記載の感光性フィルムと、を具備することを特徴とする積層フィルム。
【請求項23】
前記感光性フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することを特徴とする請求項22に記載の積層フィルム。
【請求項24】
配線を有する基材と、請求項21に記載の感光性フィルム、又は請求項22もしくは請求項23に記載の積層フィルムを用いて構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とする回路基板。
【請求項25】
請求項1から請求項20のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて、少なくとも配線を有する基材上に樹脂組成物層を形成する工程と、前記樹脂組成物層にパターン露光を行う工程と、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行う工程と、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする工程と、を具備することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項26】
少なくとも、請求項21に記載の感光性フィルム、又は請求項22もしくは請求項23に記載の積層フィルムのいずれかを配線を有する基材上にラミネートして樹脂組成物層を形成する工程と、前記樹脂組成物層にパターン露光を行う工程と、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行う工程と、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする工程と、を具備することを特徴とする回路基板の製造方法。」

(1b)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、光塩基発生剤を用いた新規な感光性樹脂組成物及びそれを用いた回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、高い絶縁性、耐熱耐寒性、高強度などの優れた特性に基づいて様々な分野で応用されている。近年、伸長著しいフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと省略する)においては、ポリイミドが基材、カバーレイとして用いられている。近年のIC実装技術の高度化や高密度化とあいまってFPCも配線の微細化が求められており、ポリイミドを用いたカバーレイにも高度な加工性が求められている。
【0003】
FPCの製造においては、ポリイミド基材を機械的に打ち抜き、位置合わせを行って貼り合わせを行うので、位置合わせ精度を高くできないという問題があった。これを解決すべく、アクリレート樹脂やエポキシ樹脂を用いたソルダレジストフィルムをベースにした感光性フィルムの検討がなされてきたが、可撓性などの物性面でポリイミドには及ばなかった(例えば、特許文献1?特許文献3)。
【0004】
また、ポリアミド酸とアクリルモノマーまたはメタクリルモノマーとを配合したラジカル重合性の感光性樹脂組成物の提案があるが、この場合はポリアミド酸100質量部に対してアクリルモノマーを100質量部近く添加する必要があり、硬化後のフィルムの屈曲耐性、難燃性を損なう虞がある(例えば、特許文献4)。
【0005】
また、感光基を側鎖に有するポリアミド酸エステルを用いた感光性樹脂組成物の提案もあるが、この場合は現像後に300℃?450℃程度で高温キュアして側鎖の感光基を分解し、イミド化する必要がある(例えば、特許文献5)。さらにポリアミド酸エステルを用いた感光性樹脂組成物に光塩基発生剤を添加した提案もあるが、この場合も同様に、現像後に300℃?450℃程度で高温キュアして側鎖の感光基を分解し、イミド化する必要がある(例えば、特許文献6)。これらの感光性ポリアミド酸エステルは、FPCのカバーレイとして用いる場合は高温でのキュアが回路基板を傷める懸念がある。
【0006】
光塩基発生剤を用いた感光性ポリアミド酸としては、光塩基発生剤としてニトロベンジルカルバメートを用いたポジ型の感光性樹脂組成物(例えば、特許文献7)や、アシルオキシイミノ基を有する光塩基発生剤を用いたネガ型の感光性樹脂組成物の提案がある(例えば、特許文献8)。
【0007】
しかしながら、従来知られている光塩基発生剤は、光分解性が必ずしも充分ではなく、また、光塩基発生剤を用いた感光性樹脂組成物フィルムの現像後の膜減りや耐薬品性は、実用性を満たしえるものではなかった。
・・(中略)・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされるものであり、従来の感光性樹脂組成物では困難であった、現像後の膜減りを抑制し、200℃以下での低温キュアで、屈曲耐性、難燃性、耐薬品性を満たし得る感光性樹脂組成物を及びそれを用いた回路基板を提供することを目的とする。」

(1c)
「【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリアミド酸と光塩基発生剤と三重項増感剤及び/又は光ラジカル開始剤と光重合性化合物と、を含有するため光塩基発生剤より発生する塩基の触媒作用によるポリアミド酸のイミド化と、光重合性化合物のラジカル重合と、により感光性樹脂組成物の露光部のアルカリ現像液に対する溶解性を効果的に低下することができ、現像後の膜減りが少ないネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。またイミド化によるアルカリ溶解性低下とラジカル重合によるアルカリ溶解性の低下を併用している為、光重合性化合物の添加量を低減でき、屈曲耐性、難燃性を損なうことがない。また現像後に残存するポリアミド酸は、フィルム中に存在する塩基触媒にてイミド化する為200℃以下での低温キュアが可能である。キュア後のフィルムは少量の光重合性化合物の架橋構造を含有する為、耐薬品性も良好である。これらの組成設計により、本発明によれば、従来の感光性樹脂組成物では困難であった、現像後の膜減りの抑制し、200℃以下での低温キュアで、屈曲耐性、難燃性、及び耐薬品性を満たし得る感光性樹脂組成物及びそれを用いた回路基板を提供することができる。」

(1d)
「【0042】
本発明に係るポリアミド酸は主鎖中及び/又は末端に重合性基を持つポリアミド酸を用いてもよい。ポリアミド酸の主鎖中の重合性基は特に制限はないが例えば、式(5)で表される化合物を用いて導入することができる。本発明に係るポリアミド酸は式(5)で表される化合物を、全酸二無水物に対して3モル%?20モル%含むことが好ましい。より好ましくは5モル%?10モル%である。式(5)で表わされる化合物の含有量が全酸二無水物に対して5モル%?10モル%であれば、低反り、低反発性、機械物性に優れる。
【0043】
【化6】

【0044】
ポリアミド酸の末端の重合性基は特に制限はないが、例えば、式(6)で表される化合物を用いて導入することができる。式(6)で表される化合物がアミンの場合は、ポリアミド酸の酸無水物末端と反応させることで導入することができる。式(6)で表される化合物が酸クロライドの場合はポリアミド酸のアミン末端と反応させることで導入することができる。式(6)で表される化合物が酸無水物の場合はポリアミド酸のアミン末端と反応させることで導入することができる。式(6)で表される化合物は、ポリアミド酸の全ジアミンと全酸二無水物の合計に対して3モル%?30モル%含むことが好ましい。より好ましくは、5モル%?10モル%である。式(6)で表わされる化合物の含有量が全ジアミンと全酸二無水物の合計に対して5モル%?10モル%であれば、低反り、低反発性、機械物性に優れる。これら式(6)で表される化合物はそれぞれ単独、又は組み合わせて用いることができる。
【0045】
【化7】

(式(6)中R^(b)はフェニル基もしくは水素であり、R^(c)は式(7)から選ばれる2価の有機基であり、R^(d)はそれぞれ独立に水素またはメチル基でありそれぞれ同じでも異なっていても良い。)
【0046】
【化8】



(1e)
「【0114】
以上のようにして作成した本発明に係る感光性フィルムを、配線を有する基材に、前記配線を覆うように圧着することにより、基材上にカバーレイを備えた回路基板を形成することができる。また、上記の感光性フィルム以外に、キャリアフィルムと感光性フィルムとを備える積層フィルム若しくはこの積層フィルムの上に更にカバーフィルムを備えた積層フィルムを用いても同様に回路基板を形成することができる。
【0115】
上記方法によって感光性インクまたは感光性フィルムを用いて形成された任意の基材上に形成されたカバーレイは、少なくとも露光、アルカリ現像の工程を経て、キュアなどの処理が施される。
【0116】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて、回路基板を製造することができる。この回路基板の製造方法においては、回路基板を製造し、少なくとも配線を有する基材上に感光性樹脂組成物を塗布後乾燥して樹脂組成物層を形成し、樹脂組成物にパターン露光を行い、パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行い、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする。
【0117】
また、回路基板の製造方法においては、少なくとも、上記感光性フィルム、又は上記積層フィルムのいずれかを配線を有する基材上にラミネートして樹脂組成物層を形成し、前記樹脂組成物層にパターン露光を行い、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行い、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする。
【0118】
配線を有する基材としては、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板などのような硬質基材、あるいはポリイミドフィルムなどのフレキシブルな基板などの任意の基材上に配線を有するものが挙げられる。これらの中で、折り曲げ可能の観点からフレキシブルな基板上に配線を有するも基材が好ましい。
【0119】
樹脂組成層の形成方法としては、感光性インクを用いる場合は前述したスクリーン印刷法が好適に用いられる。
【0120】
感光性フィルムを用いる場合は、前記配線を有する基材の配線側と感光性フィルムを接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネートなどを行う方法などが挙げられる。この中で、配線間への感光性フィルムの埋め込みの観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。前記配線を有する基材上に感光性フィルムを積層する際の加熱温度は、感光性フィルムが基材に密着し得る温度であれば限定されない。基材への密着の観点や感光性フィルムの分解や副反応の観点から、30℃?400℃が好ましい。より好ましくは、50℃?150℃である。
【0121】
本発明に係るカバーレイは、露光後、現像を行う前に必要に応じて加熱処理(以下PEBと表記)を施した後、未露光部位をアルカリ現像にて溶解することにより、ネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。この場合において、露光に用いる光源は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーなどが挙げられる。この中で、高圧水銀灯、超高圧水銀灯が好ましい。
【0122】
PEBを実施する際の温度は現像性の観点から100℃?160℃が好ましい。加熱は、空気雰囲気下、窒素雰囲気下のいずれで行っても良い。また、加熱方法としては特に制限はないが、オーブン、焼成炉、ホットプレートなどを用いて行うことができる。
【0123】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、未露光部位を溶解し得る溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。現像性の観点から、炭酸ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。
【0124】
次いで、本発明のカバーレイを形成した回路基板を必要に応じてキュアすることによりカバーレイを具備する回路基板を形成する。キュアは、溶媒の除去の観点や副反応や分解、基材上の配線を傷めないなどの観点から、30℃?400℃の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、100℃?200℃が好ましい。さらに好ましくは120℃?180℃である。キュアは、空気雰囲気下、窒素雰囲気下のいずれで行っても良い。また、キュア方法としては特に制限はないが、オーブン、焼成炉、ホットプレートなどを用いて行うことができる。
【0125】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、感光性インク或いは感光性フィルムとして現像後の膜減りを抑制でき、キュアを施した後は耐薬品性、屈曲耐性、難燃性を有することから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネルなどに使用されるプリント配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。」

(1f)
「【実施例】
【0126】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
【0127】
<ポリアミド酸合成例使用試薬>
ポリアミド酸合成例において用いた試薬である無水マレイン酸(和光純薬工業社製)、4-エチニルフタル酸無水物(富士フイルム社製、商品名:FF MONOMER301)、4-フェニルエチニルフタル酸無水物(マナック社製、商品名:PEPA)、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(東京化成工業社製)、オキシジフタル酸二無水物(マナック社製)、ペンタンジオール-ビス-無水トリメリット酸エステル(黒金化成社製、商品名:5BTA)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(イハラケミカル工業社製、商品名:エラスマー1000、平均分子量1238)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(和歌山精化社製)は特別な精製を実施せずに反応に用いた。
【0128】
<ポリアミド酸合成例1>
攪拌器を取り付けた1リットルのセパラブルフラスコに、窒素気流下にて、γ-ブチロラクトン(42.16g)と無水マレイン酸(0.27g/2.8mmol)と1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(2.41g/8.24mmol)を入れ、40℃で30分攪拌した。次いで、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(0.50g/2.0mmol)とペンタンジオール-ビス-無水トリメリット酸エステル(8.14g/18mmol)を入れ、60℃で10分攪拌した。次いで、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(4.33g/3.5mmol)と1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(2.41g/8.24mmol)を入れ、60℃で3時間攪拌した。反応液が褐色透明になったら室温に冷却し、孔サイズ10μmのろ紙を用いて反応液を加圧ろ過して回収し、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸含有率30質量%)を得た。数平均分子量は約13,000、重量平均分子量は約33,000であった。本ポリアミド酸溶液はそのまま感光性樹脂組成物の作製に用いた(以下ポリアミド酸A1と表記)。
・・(中略)・・
【0133】
<ポリアミド酸合成例6>
攪拌器を取り付けた1リットルのセパラブルフラスコに、窒素気流下にて、γ-ブチロラクトン(46.15g)と4-フェニルエチニルフタル酸無水物(1.99g/8mmol)と1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(2.41g/8.24mmol)とを入れ、40℃にて30分攪拌した。その後、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(0.50g/2mmol)とペンタンジオール-ビス-無水トリメリット酸エステル(8.14g/18mmol)と、を入れ60℃にて20分攪拌した。その後ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(4.33g/3.5mmol)と1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(2.41g/8.24mmol)を入れ、2時間攪拌した。反応液が褐色透明になったら室温に冷却し、孔サイズ10μmのろ紙を用いて反応液を加圧ろ過し回収し、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸含有率30質量%)を得た。数平均分子量は約4,500、重量平均分子量は約13,000であった。本ポリアミド酸溶液はそのまま感光性樹脂組成物の作製に用いた(以下ポリアミド酸A6と表記)。
・・(中略)・・
【0145】
<配合例使用試薬>
(C)成分として用いた2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン(和光純薬工業社製)(略称ジエチルチオキサントン、以下DETXと表記)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名:IRG-819)(以下IRG-819と表記)、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル(日本化薬社製、商品名:KAYACURE EPA)(以下EPAと表記)、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](チバ・ジャパン社製、商品名:OXE-01)(以下OXE-01と表記)は特別な精製を実施せずに配合に用いた。
【0146】
(D)成分として用いたε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製、商品名:アロニックスM-327)(以下M-327と表記)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、商品名:アロニックスM-305)(以下M-305と表記)は特別な精製を実施せずに配合に用いた。
・・(中略)・・
【0151】
<感光性樹脂組成物配合例1>
【表1】

(表中、数字は質量部を表す。(A)成分の配合量はポリアミド酸溶液中に含まれるポリアミド酸の値である。)」

イ.甲1に記載された発明
甲1には、上記ア.の記載事項(特に摘示(1f)の下線部、特に「実施例1」に係る記載)からみて、
「γ-ブチロラクトン、無水マレイン酸及び1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンを40℃で30分撹拌し、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物及びペンタンジオール-ビス-無水トリメリット酸エステルを入れて60℃で10分撹拌し、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート及び1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンを入れて60℃で3時間撹拌して得た、数平均分子量約13,000、重量平均分子量約33,000であるポリアミド酸A1の60質量部と、
γ-ブチロラクトン、4-フェニルエチニルフタル酸無水物及び1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンを40℃で30分撹拌し、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物とペンタンジオール-ビス-無水トリメリット酸エステルを入れて60℃で20分撹拌し、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートと1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンを入れて2時間撹拌して得た、数平均分子量約4,500、重量平均分子量約13,000であるポリアミド酸A6の40質量部と、
光塩基発生剤PBG2 5質量部と、
2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン(ジエチルチオキサントン(DETX))3質量部、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル(KAYACURE EPA)1質量部と
ペンタエリスリトールトリアクリレート(アロニックスM-305)7質量部、からなる感光性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

(2)甲2

ア.甲2に記載された事項
上記甲2には、以下の事項が記載されている。

(2a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも式(1)の構造と式(2)の構造を1分子中に有するポリイミド前駆体。
【化1】

【化2】

(式中R^(1)は4価の有機基を示し、R^(2)は、少なくとも1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する1価の有機基を側鎖に有する、2価の有機基、R^(3)は式(3)を示し、式(3)中、R^(4)は、同一であっても異なっていても良く、メチル基・エチル基・フェニル基のいずれかを示し、x=2?10、y=4?30を示す。)
【化3】

【請求項2】
請求項1記載の式(1)及び式(2)に加えて、式(4)の構造を1分子中に有するポリイミド前駆体。
【化4】

(式中、R^(5)は、分子中に炭素-炭素二重結合を有さない、2価の有機基を示す。)
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体中の全R_(2)、R_(3)、R_(5)中、前記式(1)のR_(2)のモル分率が1?80%であり、前記式(2)のR_(3)のモル分率が10?90%であり、前記式(4)のR_(5)のモル分率が0?70%であることを特徴とする請求項2記載のポリイミド前駆体。
【請求項4】
前記式(1)において、R^(2)が式(5)であることを特徴とする請求項1?3記載のポリイミド前駆体。
【化5】

(R^(6)は、同一であっても異なっていても良く、炭素-炭素二重結合を有する1価の有機基もしくは水素のいずれか一方を示し、R^(7)は、同一であっても異なっていても良く、-,-(C=O)-,-C(CH_(3))_(2)-,-CH_(2)-,-SO_(2)-,-O-,-C(CF_(3))_(2)-,-CH(CH_(3))-,-C(CH_(3))(CH_(2)CH_(3))-,シクロヘキシルのいずれかを示し、R^(8)は、同一であっても異なっていても良く、H,CH_(3)-,CH_(3)CH_(2)-,OH,COOHのいずれかを示し、mは0?3を示す。但し、式(5)中には少なくとも1つ以上の、炭素-炭素二重結合を有する1価の有機基が存在するものとする。)
【請求項5】前記式(1)において、R^(2)が式(6)であることを特徴とする請求項1?3記載のポリイミド前駆体。
【化6】

(R^(6)は、同一であっても異なっていても良く、炭素-炭素二重結合を有する1価の有機基もしくは水素のいずれか一方を示し、R^(7)は、同一であっても異なっていても良く、-,-(C=O)-,-C(CH_(3))_(2)-,-CH_(2)-,-SO_(2)-,-O-,-C(CF_(3))_(2)-,-CH(CH_(3))-,-C(CH_(3))(CH_(2)CH_(3))-,シクロヘキシルのいずれかを示し、R^(8)は、同一であっても異なっていても良く、H,CH_(3)-,CH_(3)CH_(2)-,OH,COOHのいずれかを示し、nは1?4を示す。但し、式(6)中には少なくとも1つ以上の、炭素-炭素二重結合を有する1価の有機基が存在するものとする。)
【請求項6】
請求項1?5記載の(A)ポリイミド前駆体100重量部に加えて、(B)炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル化合物1?400重量部を必須成分とする感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に加えて、(C)光反応開始剤0.01?50重量部を必須成分とする感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に加えて、(D)炭素-炭素二重結合および3級アミノ基を分子内に有する化合物或いは炭素-炭素二重結合およびアミド基を有する化合物0.01?30重量部を必須成分とする感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項6?8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなることを特徴とする感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項10】
請求項9に記載の感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護層として形成してなることを特徴とするプリント配線板。」

(2b)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、部分イミド化したポリイミド前駆体およびその利用に関するものである。
・・(中略)・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リジット及びフレキシブルプリント基板用途として感光性ポリイミドを用いることが可能な、200℃以下の低温でイミド化することが出来るポリイミド前駆体及びそれを用いた感光性組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は以下の炭素-炭素二重結合を側鎖に有する部分イミド化したポリイミド前駆体及びそれと炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル化合物を必須成分とする感光性樹脂組成物を提供するものであり、これにより上記課題を解決しうる。」

(2c)
「【発明の効果】
【0020】
本発明のポリイミド前駆体は、以上のように特定の構造のジアミンを含有し、部分イミド化した部位に炭素-炭素二重結合を有する有機基を側鎖に有している。したがって、上記ポリイミド前駆体と炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル化合物とを含有してなる感光性樹脂組成物は従来のイミド系感光性樹脂組成物よりも低い温度でイミド化させることが可能となる。それゆえ、プリント基板等の電子部品に用いた場合、イミド化時の加熱によって、他の構成材が熱劣化することを防ぐという効果を奏する。」

(2d)
「【0101】
・・(中略)・・
<プリント配線板の作製> 本発明にかかる感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護層として形成してなるプリント配線板を作製する手法について、説明する。プリント配線板として、パターン回路が形成されてなるCCL(以下、回路付きCCLともう。)を用いる場合を例に挙げて説明するが、多層のプリント配線板を形成する場合にも、同様の手法により層間絶縁層を形成することができる。
【0102】
まず、上記にて説明した保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、支持体フィルムを有してなる三層構造シートから保護フィルムを剥離する。以下では、保護フィルムが剥離されたものを支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストと記載する。そして、感光性ドライフィルムレジストと回路付きCCLの回路部分とが対向するように、該回路付きCCLを、支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストにて覆い、熱圧着によって貼り合せる。この熱圧着による貼り合わせは、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理等によって行えばよく、特に限定されるものではない。
【0103】
上記貼り合わせを、熱ラミネート処理、熱ロールラミネート処理(以下、ラミネート処理と記載)によって行う場合、処理温度は、ラミネート処理が可能である下限の温度(以下、圧着可能温度)以上であればよい。具体的には、上記圧着可能温度は、50?150℃の範囲内であることが好ましく、60?120℃の範囲内であることがより好ましく、特に80?120℃の範囲内であることが好ましい。
【0104】
上記処理温度が150℃を超えると、ラミネート処理時に、感光性ドライフィルムレジストに含まれる感光性反応基の架橋反応が生じ、感光性ドライフィルムレジストの硬化が進行する場合がある。一方、上記処理温度が50℃未満であると、感光性ドライフィルムレジストの流動性が低く、パターン回路を埋め込むことが困難となる。さらに、銅回路付きCCLの銅回路や該銅回路付きCCLのベースフィルムとの接着性が低下する場合がある。
【0105】
上記の熱圧着処理によって、回路付きCCL上に感光性ドライフィルムレジストが積層され、さらに支持体フィルムが積層されたサンプルが得られる。次いで、この貼り合わせサンプルについてパターン露光及び現像を行う。パターン露光及び現像に際しては、上記貼り合わせサンプルの支持体フィルム上にフォトマスクパターンを配置し、該フォトマスクを介して露光処理を行う。その後、支持体フィルムを剥離して現像処理を行うことにより、フォトマスクパターンに応じた穴(ビア)が形成される。
【0106】
なお、上記支持体フィルムは、露光処理後に剥離しているが、回路付きCCL上に支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストが貼り合わせられた後に、すなわち、露光処理を行う前に剥離してもよい。感光性ドライフィルムレジストを保護する点からは、露光処理が完了した後に剥離することが好ましい。
【0107】
ここで露光に用いる光源としては、300?430nmの光を有効に放射する光源が好ましい。この理由は、感光性ドライフィルムレジストに含有される光反応開始剤が、通常450nm以下の光を吸収して機能するためである。
【0108】
また、上記現像処理に用いる現像液としては、塩基性化合物が溶解した塩基性溶液を用いればよい。塩基性化合物を溶解させる溶媒としては、上記塩基性化合物を溶解することができる溶媒であれば特に限定されないが、環境問題等の観点から、水を使用することが特に好ましい。
【0109】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン化合物等を挙げることができる。上記塩基性化合物は1種を用いてもよいし、2種以上の化合物を用いてもよい。
【0110】
上記塩基性溶液に含有される塩基性化合物の濃度は、0.1?10重量%の範囲内であることが好ましいが、感光性ドライフィルムレジストの耐アルカリ性の点から、0.1?5重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0111】
なお、現像処理の方法としては、特に限定されないが、塩基性溶液中に現像サンプルを入れて攪拌する方法や、現像液をスプレー状にして現像サンプルに噴射する方法等が挙げられる。
【0112】
本発明においては、特に、液温40℃に調整した1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を現像液に用い、スプレー現像機を用いて行う現像処理を例示することができる。ここで、スプレー現像機とは、現像液をスプレー状にしてサンプルに噴射する装置であれば特に限定されない。
【0113】
ここで、感光性ドライフィルムレジストのパターンが描けるまでの現像時間は、パターンが描ける時間であればよいが、180秒以下の時間で現像できることが好ましく、90秒以下の時間で現像できることがより好ましく、60秒以下の時間で現像できることが最も好ましい。現像時間が180秒を超えると生産性が劣る傾向がある。
【0114】
ここで、現像時間の目安として、Bステージ(半硬化)状態の感光性ドライフィルムレジストの溶解時間を測定する方法がある。具体的には、感光性ドライフィルムレジストを銅箔光沢面に貼り合わせたサンプルを、未露光の状態で、1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)を現像液として、スプレー圧0.85MPaで、スプレー現像処理を行うという方法である。このスプレー現像処理により、感光性ドライフィルムレジストが180秒以下の時間で溶解して除去されることが好ましい。感光性ドライフィルムレジストが溶解除去されるまでの時間が180秒を超えると、作業性が低下する傾向がある。
【0115】
上記のように露光・現像処理が施された後、感光性ドライフィルムレジストに対して、加熱キュアを行うことにより、感光性ドライフィルムレジストが完全に硬化する。これにより、硬化した感光性ドライフィルムレジストは、プリント配線板の絶縁保護膜となる。
【0116】
また、多層のプリント配線板を形成する場合には、プリント配線板の保護層を層間絶縁層とし、該層間絶縁層上に、さらにスパッタリングや鍍金、もしくは銅箔との貼り合わせ等を行った後、パターン回路を形成し、上記のように感光性ドライフィルムレジストをラミネートすればよい。これにより、多層のプリント配線板を作製することができる。
【0117】
なお、本実施の形態では、感光性ドライフィルムレジストを、プリント配線板の絶縁保護材料または層間絶縁材料として用いる場合について説明したが、上記の用途以外に用いることも可能である。」

(2e)
「【実施例】
【0118】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0119】
ポリイミドの原料として、1,2-エタンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(以下、TMEGと示す)(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート)-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(以下、ESDAと示す)、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(以下、BPADAと示す)、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物(以下DSDAと示す)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAと示す)、2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、a-BPDAと示す)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(以下、BAPS-Mと示す)、シリコンジアミン、ジアミノ安息香酸、[ビス(4-アミノ-3-カルボキシ)フェニル]メタン(以下、MBAAと示す)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下6FAPと示す)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下DAM-1と示す)を用いた。溶媒として、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジオキソランを用いた。
【0120】
(実施例1)
<炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマーの合成:1>
攪拌機を設置した2000mlのセパラブルフラスコに、6FAP36.63g(100mmol)、DMF180gをとり、冷却撹拌を行った。ESDA115.3g(200mmol)、DMF50gを更に加え、1時間撹拌を続けた。
反応溶液をバットにとり、真空オーブン中200℃で1時間加熱することにより、OH基を有する酸二無水物末端オリゴマー145gを得た。
【0121】
次いで、上記OH基を有する酸二無水物末端オリゴマー74.16g(酸二無水物として50mmol)、無水メタクリル酸 30.83g(200mmol)、和光純薬製Q-1301 100mgを容器にとり、100℃で6時間撹拌を行った。反応終了後、ジオキソラン100gを加え、ヘキサンに投入し、析出した固体を濾別し、真空オーブン(45℃)で乾燥を行い、目的の炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマー79gを得た。(収率97.5%)
1H-NMRで2重結合の導入量を測定した。Varian社製 Gemini300 操作周波数300Hzを用い、溶媒DMSO-d6に1%になるように溶解して測定した。芳香環由来のδ6.8?8.6のシグナルと、CH_(2)=C由来のδ6.1付近のシグナル比より、2重結合の導入量を決定した。導入率は、100%であり、6FAP由来のOH基のシグナルも無くなっていた。
<ポリイミド前駆体の合成>
上記の炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマー48.58g(酸二無水物として30mmolに相当)とESDA17.30g(30mmol)をジオキソラン 150gに溶解した。
シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)24.9g(30mmol)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルシロキサン7.46g(30mmol)とジオキソラン 32.36gの混合溶液を加え、2時間室温で撹拌を行いポリイミド前駆体溶液を得た。
【0122】
分子量は、高速GPC(東ソー社製、商品名HLC-8220GPC)を用いて測定した。測定条件は、DMF(0.036M LiBr,0.019Mリン酸含む)を展開溶媒とし、カラムとしてShodex製、商品名:KD-805-M 2本を用い、カラム温度を40℃とし、検出器としてPI(PEO標準)を用い、流量を0.6ml/minとした。その結果、重量平均分子量は40000、数平均分子量は15000、重量平均分子量/数平均分子量は、2.67であった。
<ポリイミド前駆体の評価:耐マイグレーション>
新日鐵化学製フレキシブル銅貼積層板(ポリイミド系の樹脂の片面に銅箔を形成している片面銅貼積層板:SC18-25-00FR)に図1に示すライン/スペース=50/50μmの櫛型パターンを形成した。
【0123】
上記ポリミド前駆体溶液を上記櫛型パターンにバーコーターを用い塗布し、90℃で10分、120℃で10分、170℃で1時間加熱して有機溶剤を除去し積層体とした。
【0124】
85℃、85%RHの環境試験機中で、被覆した櫛型パターンの両端子に60Vの直流電圧を印加し、抵抗値の変化やマイグレーションの有無を観察した。
【0125】
耐マイグレーション性は500時間以上10^(-6)Ω以上の抵抗値を示し、デンドライトは観察されなかった。よって、170℃のイミド化で完全にイミド化が完了していることが確認された。
【0126】
(比較例1)
m-フェニレンジアミン3.24g(30mmol)、KF-8010(信越シリコーン製)49.8g(60mmol)、DMF30gを反応容器にとり、ESDA51.89g(90mmol)を加え、1時間撹拌した。次いで、次いで、トリエチルアミン0.6g、和光純薬株式会社製Q-1301 200mg、グリシジルメタクレート17.06g(120mmol)を加え、60℃で1時間撹拌を行った。反応終了後、反応溶液をイソプロピルアルコールに投入し、沈殿した樹脂を、真空オーブンで乾燥して、98gのポリイミド前駆体を得た。
【0127】
実施例1と同様にしてグリシジルメタクレートの導入量を決定した。導入量は、アミド酸の全カルボン酸の22%に導入されていることが判った。
【0128】
このポリアミド酸溶液は、実施例1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は53000、数平均分子量は19600、重量平均分子量/数平均分子量は、2.70であった。
<ポリイミド前駆体の評価:耐マイグレーション>
実施例1と同様にして耐マイグレーション性を評価したところ、50時間で短絡し、デンドライトが形成されていた。よって、170℃イミド化ではイミド化が終了していないことが確認された。
【0129】
(実施例2)
<感光性樹脂組成物の調整>
以下に示す成分を混合して、ジオキソラン溶液に固形分濃度が30重量%になるように調製した。
(A)実施例1で合成したポリイミド前駆体 49重量部
(B)不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル化合物
大阪有機化学株式会社製V#2308 10重量部
共栄社化学株式会社製 ライトアクリレートNP-4EA15重量部、および第一工業製薬株式会社製BR-42M 15重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド 1重量部
(E)その他:大塚化学株式会社製フォスファゼン化合物SPE-100 10重量部重量部
(接着性)
耐熱性樹脂組成物溶液をポリイミドフィルム アピカル25NPI(鐘淵化学工業製)に乾燥後の厚みが25ミクロンなるように塗布し、90℃5分乾燥し、電解銅箔(三井金属製3EC-VLP 1オンス)の粗面を耐熱性樹脂組成物側に合せて、条件110℃、20000Pa・mでラミネートし160℃2時間加熱して積層物を得た。この積層物をJIS C 6481の引き剥がし強度(90度)に準じて行った。ただし、幅は、3mm幅で測定し、1cmに換算した。接着強度は、5.8N/cmであった。
(半田耐熱性) 耐熱性樹脂組成物溶液を電解銅箔(三井金属製3EC-VLP1オンス)の輝面に乾燥後の厚みが25ミクロンなるように塗布し、90℃5分乾燥し、160℃2時間加熱して積層物を得た。この積層物を40℃95%RH 24時間調湿後、半田浴に10秒浸漬し、表面の膨れ及び変色の有無を観察した。膨れ・変色の無かった最高温度を半田耐熱温度とした。半田耐熱温度は、280℃であった。
(感光能)上記で作製した感光性樹脂組成物の溶液をPETフィルム(厚み25μm)上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、90℃で2分乾燥して有機溶剤を除去し、感光性ドライフィルムレジストとした。
【0130】
感光性ドライフィルムレジストの感光性樹脂組成物面を電解銅箔(三井金属製3EC-VLP 1オンス)の輝面に積層し、遮光しながら100℃、20000Pa・mでラミネート加工し積層体とした。
【0131】
積層体の上にマスクパターンをのせ、400nmの光を300mJ/cm^(2)だけ露光し、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)で現像した。フォトマスクパターンは、500μmφ、200μmφ、100μmφの微細な穴及びライン/スペースが500μm/500μm、200μm/200μm、100μm/100μmのラインを描いたものである。現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去した。
【0132】
100μmφの微細な穴及びライン/スペースが100μm/100μmまで描くことが出来た。
(感光性樹脂の耐マイグレーション性)
新日鐵化学製フレキシブル銅貼積層板(ポリイミド系の樹脂の片面に銅箔を形成している片面銅貼積層板:SC18-25-00FR)に図1に示すライン/スペース=50/50μmの櫛型パターンを形成した。
【0133】
この櫛型パターンの上に、上記で作成した感光性ドライフィルムレジストを積層し、条件100℃、20000Pa・mでラミネートした。400nmの光を400mJ/cm^(2)だけ露光し、その後、180℃で2時間加熱して積層した。
【0134】
85℃、85%RHの環境試験機中で、被覆した櫛型パターンの両端子に60Vの直流電圧を印加し、抵抗値の変化やマイグレーションの有無を観察した。
耐マイグレーション性は500時間以上10^(-6)Ω以上の抵抗値を示し、デンドライトは観察されなかった。
・・(中略)・・
【0136】
(実施例3)
<炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマーの合成:2>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコに、BPADA41.64g(80mmol)、ジオキソラン150gを加え、撹拌した。6FAP14.65g(40mmol)を上記容器に加え1時間撹拌を続けた。この反応溶液に、βピコリン7.45g(80mmol)、無水メタクリル酸61.66g(400mmol)、和光純薬株式会社製Q-1301 200mgを加え、室温で1時間、100℃で3時間過熱撹拌を行った。
【0137】
反応終了後、ジオキソラン100gを加え、ヘキサンに投入し、析出した固体を濾別し、真空オーブン(45℃)で乾燥を行い、目的の炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマー58gを得た。(収率96.2%)
1H-NMRで2重結合の導入量を測定した。Varian社製 Gemini300操作周波数300Hzを用い、溶媒DMSO-d6に1%になるように溶解して測定した。芳香環由来のδ6.8?8.6のシグナルと、CH_(2)=C由来のδ6.1付近のシグナル比より、2重結合の導入量を決定した。導入率は、100%であり、6FAP由来のOH基のシグナルも無くなっていた。
<ポリイミド前駆体の合成>
上記の酸二無水物末端オリゴマー45.21g(酸二無水物として30mmolに相当)をジメチルフォルムアミド180gに溶解した。1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルシロキサン7.46g(30mmol)とジメチルフォルムアミド10gの混合溶液を加え2時間室温で撹拌した。反応終了後、反応溶液をイソプロピルアルコールに投入し、沈殿した樹脂を、真空オーブンで乾燥して、50gのポリイミド前駆体を得た。
【0138】
このポリイミド前駆体溶液は、実施例1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は45000、数平均分子量は17000、重量平均分子量/数平均分子量は、2.65であった。
<ポリイミド前駆体の評価:耐マイグレーション>
実施例1と同様にして耐マイグレーション性を評価したところ、耐マイグレーション性は500時間以上10^(-6)Ω以上の抵抗値を示し、デンドライトは観察されなかった。よって、170℃のイミド化で完全にイミド化が完了していることが確認された。
<感光性樹脂組成物の調整>
以下に示す成分を混合して、ジオキソラン溶液に固形分濃度が30重量%になるように調製した。
(A)上記で合成したポリイミド前駆体 49重量部
(B)不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル化合物
大阪有機化学株式会社製V#2308 10重量部
共栄社化学株式会社製 ライトアクリレートNP-4EA15重量部、および第一工業製薬株式会社製BR-42M 15重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド 1重量部
(E)その他:大塚化学株式会社製 フォスファゼン化合物SPE-100 10重量部重量部
(接着性)
耐熱性樹脂組成物溶液をポリイミドフィルム アピカル25NPI(鐘淵化学工業製)に乾燥後の厚みが25ミクロンなるように塗布し、90℃5分乾燥し、電解銅箔(三井金属製3EC-VLP 1オンス)の粗面を耐熱性樹脂組成物側に合せて、条件110℃、20000Pa・mでラミネートし160℃2時間加熱して積層物を得た。この積層物をJIS C 6481の引き剥がし強度(90度)に準じて行った。ただし、幅は、3mm幅で測定し、1cmに換算した。接着強度は、5.8N/cmであった。
(半田耐熱性) 耐熱性樹脂組成物溶液を電解銅箔(三井金属製3EC-VLP 1オンス)の輝面に乾燥後の厚みが25ミクロンなるように塗布し、90℃5分乾燥し、160℃2時間加熱して積層物を得た。この積層物を40℃95%RH 24時間調湿後、半田浴に10秒浸漬し、表面の膨れ及び変色の有無を観察した。膨れ・変色の無かった最高温度を半田耐熱温度とした。半田耐熱温度は、280℃であった。
(感光能)上記で作製した感光性樹脂組成物の溶液をPETフィルム(厚み25μm)上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、90℃で2分乾燥して有機溶剤を除去し、感光性ドライフィルムレジストとした。
【0139】
感光性ドライフィルムレジストの感光性樹脂組成物面を電解銅箔(三井金属製3EC-VLP 1オンス)の輝面に積層し、遮光しながら100℃、20000Pa・mでラミネート加工し積層体とした。
【0140】
積層体の上にマスクパターンをのせ、400nmの光を300mJ/cm^(2)だけ露光し、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)で現像した。フォトマスクパターンは、500μmφ、200μmφ、100μmφの微細な穴及びライン/スペースが500μm/500μm、200μm/200μm、100μm/100μmのラインを描いたものである。現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去した。
【0141】
100μmφの微細な穴及びライン/スペースが100μm/100μmまで描くことが出来た。
(感光性樹脂の耐マイグレーション性)
新日鐵化学製フレキシブル銅貼積層板(ポリイミド系の樹脂の片面に銅箔を形成している片面銅貼積層板:SC18-25-00FR)に図1に示すライン/スペース=50/50μmの櫛型パターンを形成した。
【0142】
この櫛型パターンの上に、上記で作成した感光性ドライフィルムレジストを積層し、条件100℃、20000Pa・mでラミネートした。400nmの光を400mJ/cm^(2)だけ露光し、その後、180℃で2時間加熱して積層した。
【0143】
85℃、85%RHの環境試験機中で、被覆した櫛型パターンの両端子に60Vの直流電圧を印加し、抵抗値の変化やマイグレーションの有無を観察した。
【0144】
耐マイグレーション性は500時間以上10^(-6)Ω以上の抵抗値を示し、デンドライトは観察されなかった。
・・(中略)・・
【0146】
(実施例4)
<炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマーの合成:3>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコに、BPADA41.64g(80mmol)、DMF 100gを加え、氷冷しながら撹拌した。式(13)19.79(40mmol)をDMF50gに溶解し、上記容器に加え1時間撹拌を続けた。
この反応溶液に、βピコリン7.45g(80mmol)、無水メタクリル酸61.66g(400mmol)、和光純薬株式会社製Q-1301 200mgを加え、室温で1時間、100℃で3時間過熱撹拌を行った。
【0147】
反応終了後、ジオキソラン100gを加え、ヘキサンに投入し、析出した固体を濾別し、真空オーブン(45℃)で乾燥を行い、目的の炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマー57gを得た。(収率94.5%)
1H-NMRで2重結合の導入量を測定した。Varian社製 Gemini300 操作周波数300Hzを用い、溶媒DMSO-d6に1%になるように溶解して測定した。芳香環由来のδ6.8?8.6のシグナルと、CH_(2)=C由来のδ6.1付近のシグナル比より、2重結合の導入量を決定した。導入率は、100%であり、式(13)由来のOH基のシグナルも無くなっていた。
【0148】
【化31】
(式は省略)
<ポリイミド前駆体の合成>
上記の酸二無水物末端オリゴマー45.21g(酸二無水物として30mmolに相当)とESDA17.30g(30mmol)をジオキソラン135gに溶解した。シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)49.8 g (60mmol)とジオキソラン33.2gの混合溶液を加え、2時間室温で撹拌を行った。
【0149】
このポリイミド前駆体溶液は、実施例1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は55000、数平均分子量は19000、重量平均分子量/数平均分子量は、2.89であった。
<ポリイミド前駆体の評価>
実施例1と同様にして耐マイグレーション性を評価したところ、耐マイグレーション性は500時間以上10^(-6)Ω以上の抵抗値を示し、デンドライトは観察されなかった。よって、170℃のイミド化で完全にイミド化が完了していることが確認された。
<感光性樹脂組成物の調整>
以下に示す成分を混合して、ジオキソラン溶液に固形分濃度が30重量%になるように調製した。
(A)上記で合成したポリイミド前駆体 49重量部
(B)不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル化合物
大阪有機化学株式会社製V#2308 10重量部
共栄社化学株式会社製 ライトアクリレートNP-4EA15重量部、および第一工業製薬株式会社製BR-42M 15重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド 1重量部
(E)その他:大塚化学株式会社製 フォスファゼン化合物SPE-100 10重量部重量部
(接着性)
実施例2と同様の方法で接着強度を測定したところ、接着強度は、6.8N/cmであった。
(半田耐熱性)
実施例2と同様の方法で、半田耐熱温度を測定したところ、半田耐熱温度は、280℃であった。
(感光能)
実施例2と同様の方法で感光能を評価したところ、100μmφの微細な穴及びライン/スペースが100μm/100μmまで描くことが出来た。
(感光性樹脂の耐マイグレーション性)
実施例2と同様に耐マイグレーション性を評価したところ、耐マイグレーション性は500時間以上10^(-6)Ω以上の抵抗値を示し、デンドライトは観察されなかった。
【0150】
(実施例5)
<酸二無水物末端オリゴマーの合成>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコに、BPADA41.64g(80mmol)、DMF 100gを加え、氷冷しながら撹拌した。3,5-ジアミノ安息香酸4.56g(40mmol)をDMF50gに溶解し、上記容器に加え1時間撹拌を続けた。反応溶液をバットにとり、真空オーブン中190℃で1時間加熱することにより、酸二無水物末端オリゴマー43.0gを得た。
<ポリイミド前駆体の合成>
上記の酸二無水物末端オリゴマー33.57g(酸二無水物として30mmolに相当)をジオキソラン70gに溶解した。シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)24.9g(30mmol)とジオキソラン16.6gの混合溶液を加え、室温で2時間撹拌を行った。次いで、トリエチルアミン0.6g、和光純薬株式会社製Q-1301 200mg、グリシジルメタクレート11.37g(80mmol)を加え、60℃で1時間撹拌を行った。反応終了後、反応溶液をイソプロピルアルコールに投入し、沈殿した樹脂を、真空オーブンで乾燥して、50gのポリイミド前駆体を得た。
【0151】
実施例1と同様にしてグリシジルメタクレートの導入量を決定した。導入量は、全カルボン酸の20%に導入されていることが判った。(但し、アミド酸のカルボン酸或いは、安息香酸のカルボン酸のどちらに導入されているかは不明。)
このポリイミド前駆体溶液は、実施例1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は55000、数平均分子量は19000、重量平均分子量/数平均分子量は、2.89であった。
<ポリイミド前駆体の評価>
実施例1と同様にして耐マイグレーション性を評価したところ、耐マイグレーション性は500時間以上10^(-6)Ω以上の抵抗値を示し、デンドライトは観察されなかった。よって、170℃のイミド化で完全にイミド化が完了していることが確認された。
<感光性樹脂組成物の調整>
以下に示す成分を混合して、ジオキソラン溶液に固形分濃度が30重量%になるように調製した。
(A)上記で合成したポリイミド前駆体 49重量部
(B)不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル化合物
大阪有機化学株式会社製V#2308 10重量部
共栄社化学株式会社製 ライトアクリレートNP-4EA15重量部、および第一工業製薬株式会社製BR-42M 15重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド 1重量部
(E)その他:大塚化学株式会社製 フォスファゼン化合物SPE-100 10重量部重量部
(接着性)
実施例2と同様の方法で接着強度を測定したところ、接着強度は、6.8N/cmであった。
(半田耐熱性)
実施例2と同様の方法で、半田耐熱温度を測定したところ、半田耐熱温度は、280℃であった。
(感光能)
実施例2と同様の方法で感光能を評価したところ、100μmφの微細な穴及びライン/スペースが100μm/100μmまで描くことが出来た。
(感光性樹脂の耐マイグレーション性)
実施例2と同様に耐マイグレーション性を評価したところ、耐マイグレーション性は500時間以上10^(-6)Ω以上の抵抗値を示し、デンドライトは観察されなかった。
・・(中略)・・
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上のように、本発明にかかるポリイミド前駆体は、特定の構造を有する部分イミド化したポリイミド前駆体である。それゆえ、上記ポリイミド前駆体と炭素-炭素2重結合を有する(メタ)アクリル化合物とを含有している感光性樹脂組成物は、200℃以下でイミド化することが可能である。
【0154】
したがって、本発明は、基板の耐熱性が低い電子部品、例えばリジットやFPC基板の製造に利用できる。それだけではなく、本発明は、感光性ポリイミドを含むフィルムや積層体に代表される各種樹脂成形品を製造する分野に利用することができる。さらには、このようなフィルムや積層体を用いた電子部品の製造に関わる分野にも広く応用することが可能である。」

(2)甲2に記載された発明
甲2には、上記ア.の記載事項からみて、以下のア.ないしエ.の各発明が記載されている。

ア.上記(1)の記載事項(特に摘示(2e)の【0119】ないし【0121】及び【0129】ないし【0134】の下線部)からみて、
「(A)2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)と(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート)-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(ESDA)とを原料とする炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマー及び(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート)-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(ESDA)とシリコンジアミン及び1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルシロキサンとを反応してなる重量平均分子量40000、数平均分子量15000、重量平均分子量/数平均分子量が2.67である炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入されたポリイミド前駆体
(B)不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル化合物
(C)光反応開始剤
を含有する感光性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明1」という。)が記載されている。

イ.上記(1)の記載事項(特に摘示(2e)の【0136】ないし【0144】の下線部)からみて、
「(A)4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(BPADA)と2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)とを原料とする炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマーと1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルシロキサンとを反応してなる重量平均分子量45000、数平均分子量17000、重量平均分子量/数平均分子量が2.65である炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入されたポリイミド前駆体
(B)不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル化合物
(C)光反応開始剤
を含有する感光性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明2」という。)が記載されている。

ウ.上記(1)の記載事項(特に摘示(2e)の【0146】ないし【0149】の下線部)からみて、
「(A)4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(BPADA)とメチレンビス[6-(4-アミノ-3,5-ジメチルベンジル)-p-クレゾール-2](「式(13)」)とを原料とする炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマー及び(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート)-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(ESDA)とシリコンジアミンとを反応してなる重量平均分子量55000、数平均分子量19000、重量平均分子量/数平均分子量が2.89である炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入されたポリイミド前駆体
(B)不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル化合物
(C)光反応開始剤
を含有する感光性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明3」という。)が記載されている。

エ.上記(1)の記載事項(特に摘示(2e)の【0150】及び【0151】の下線部)からみて、
「(A)4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(BPADA)と3,5-ジアミノ安息香酸とを原料とする酸二無水物末端オリゴマーとシリコンジアミンとを反応してなり、更にグリシジルメタクリレートを反応させて炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された重量平均分子量55000、数平均分子量19000、重量平均分子量/数平均分子量が2.89である炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入されたポリイミド前駆体
(B)不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル化合物
(C)光反応開始剤
を含有する感光性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明4」という。)が記載されている。

2.検討
本件の各発明につき、各甲号証に記載された発明又は記載に基づき検討する。

(1)甲1発明に基づく検討

ア.本件発明1について

(ア)対比
本件発明1と上記甲1発明とを対比する。
甲1発明における「ポリアミド酸A1」及び「ポリアミド酸A6」は、いずれも「ポリアミド酸」という「ポリイミド前駆体」である限りにおいて、いずれも本件発明1の「ポリイミド前駆体であ」る「複素環含有ポリマー前駆体」に相当する。
さらに、甲1発明における「2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン」は、本件発明1における「光ラジカル重合開始剤」に相当する。
してみると、本件発明1と上記甲1発明とは、
「複素環含有ポリマー前駆体の少なくとも一種を含み、
前記複素環含有ポリマー前駆体は、ポリイミド前駆体であり、
光ラジカル重合開始剤を含む、
感光性樹脂組成物。」
で一致し、下記の点で相違する。

相違点1a:「ポリイミド前駆体」である「複素環含有ポリマー前駆体」につき、本件発明1では「重合性不飽和基を有し」「一般式(2)で表される繰返し単位を含む」のに対して、甲1発明では、「ポリアミド酸A1」又は「ポリアミド酸A6」である点

相違点1b:本件発明1では「前記複素環含有ポリマー前駆体の重量平均分子量/数平均分子量である分散度が2.5?3.1であ」るのに対して、甲1発明では、「ポリアミド酸A1」と「ポリアミド酸A6」との混合物に係る「分散度」につき特定されていない点

(イ)検討

(a)相違点1aについて
上記相違点1aにつき検討すると、甲1発明における2種の「ポリアミド酸」は、いずれも無水マレイン酸又は4-フェニルエチニルフタル酸無水物に由来する末端の重合性不飽和基及びビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物に由来する主鎖の重合性不飽和基をそれぞれ有することが明らかであるから、重合性不飽和基を有するものではあるが、繰返し単位におけるテトラカルボン酸残基に結合する部分は遊離カルボキシル基であることが明らかであり、本件発明1の「一般式(2)」における「R^(113)」及び「R^(114)」に相当する側鎖部分に「重合性不飽和基を有する1価の有機基」が結合したものではない。
してみると、本件発明1における「ポリイミド前駆体」と甲1発明における2種の「ポリアミド酸」とは、化学構造を異にすることが明らかであり、実質的に相違するものと認められる。
そして、甲1及び甲2の記載を検討しても、甲1発明における「ポリアミド酸」として、「R^(113)」及び「R^(114)」に相当する側鎖部分に「重合性不飽和基を有する1価の有機基」が結合したものに代えるべき動機となる事項が存するものとは認められない。
したがって、上記相違点1aは、実質的な相違点であって、さらに甲1及び甲2に記載された事項を組み合わせたとしても、甲1発明において、当業者が適宜なし得ることであるということはできない。

(b)相違点1bについて
上記相違点1bにつき検討すると、甲1発明の各「ポリアミド酸」は、それぞれ「数平均分子量約13,000、重量平均分子量約33,000」及び「数平均分子量約4,500、重量平均分子量約13,000」であり、重量平均分子量/数平均分子量の値がそれぞれ約2.53及び2.89であるものとはいえるものの、それら2種のポリアミド酸の混合物に係る重量平均分子量/数平均分子量の値については依然不明であるから、上記相違点1bは実質的な相違点である。
そして、甲1及び甲2の記載を検討しても、甲1発明における「ポリアミド酸」として、重量平均分子量/数平均分子量である分散度が2.5?3.1であるポリアミド酸混合物を使用すべき動機となる事項が存するものとは認められない。
したがって、上記相違点1bは、実質的な相違点であって、さらに甲1及び甲2に記載された事項を組み合わせたとしても、甲1発明において、当業者が適宜なし得ることであるということはできない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができない。

イ.他の本件発明について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2ないし17についても、上記イ.で説示した理由と同一の理由により、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできず、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということもできない。

ウ.甲1発明に基づく検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし17は、いずれも甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲2発明に基づく検討

ア.本件発明1について

(ア)対比
本件発明1と上記甲2発明1ないし甲2発明4とをそれぞれ対比すると、甲2発明1ないし甲2発明4における「(A)・・炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入されたポリイミド前駆体」は、それぞれ本件発明1における「複素環含有ポリマー前駆体の少なくとも一種を含み、前記複素環含有ポリマー前駆体は、ポリイミド前駆体であり、」及び「前記複素環含有ポリマー前駆体が重合性不飽和基を有し、」に相当することが明らかである。
また、甲2発明1ないし甲2発明4における「(C)光反応開始剤」は、光照射によりラジカルを発生する化合物である(必要ならば甲2【0067】参照)から、それぞれ本件発明1における「光ラジカル重合開始剤」に相当する。
さらに、甲2発明1ないし甲2発明4における「感光性樹脂組成物」は、それぞれ本件発明1における「感光性樹脂組成物」に相当することが明らかである。
してみると、本件発明1と上記甲2発明1ないし甲2発明4とは、
「複素環含有ポリマー前駆体の少なくとも一種を含み、
前記複素環含有ポリマー前駆体は、ポリイミド前駆体であり、
前記複素環含有ポリマー前駆体が重合性不飽和基を有し、
光ラジカル重合開始剤を含む、
感光性樹脂組成物。」
で一致し、下記の点でのみ一応相違するかに見える。

相違点2a:本件発明1では「前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(2)で表される繰返し単位を含む」のに対して、甲2発明1ないし甲2発明4では、「ポリイミド前駆体」が当該「一般式(2)で表される繰返し単位」を含むことにつき特定されていない点
相違点2b:本件発明1では「前記複素環含有ポリマー前駆体の重量平均分子量/数平均分子量である分散度が2.5?3.1であ」るのに対して、甲2発明1ないし甲2発明4では上記「分散度」につき特定されていない点

(イ)検討
上記相違点2aにつき検討すると、甲2発明1ないし甲2発明3では、いずれも炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された酸二無水物末端オリゴマーに対して他のテトラカルボン酸化合物及びジアミン化合物を反応させてポリイミド前駆体を製造しており、アミド酸繰返し単位の2つのカルボキシル基に対していずれにも炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された単位が形成されるものとは認められない。
また、甲2発明4では、3,5-ジアミノ安息香酸を原料とする酸二無水物末端オリゴマーとシリコンジアミンとを反応させてポリアミド酸とし、更にグリシジルメタクリレートを反応させて炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入されたものであり、アミド酸繰返し単位の2つのカルボキシル基及び3,5-ジアミノ安息香酸に由来するカルボキシル基につき炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入される可能性があるところ、甲2には「導入量は、全カルボン酸の20%に導入されていることが判った。(但し、アミド酸のカルボン酸或いは、安息香酸のカルボン酸のどちらに導入されているかは不明。)」なる記載がある(【0151】)から、当該導入量が少ないこと及びアミド酸部分のカルボキシル基が優先的に反応する要因がないことからみて、アミド酸繰返し単位の2つのカルボキシル基のいずれにも炭素-炭素2重結合を有する1価の有機基が導入された単位が実質的に存するものではないと解するのが自然である。
してみると、本件発明1における「ポリイミド前駆体」と甲2発明1ないし甲2発明4に係る「ポリイミド前駆体」とは、化学構造を異にするものであるから、実質的に相違するものと認められる。
そして、甲1及び甲2の記載を検討しても、甲2発明における「ポリイミド前駆体」として、「R^(113)」及び「R^(114)」に相当するアミド酸単位の2つのカルボキシル基のいずれにも「重合性不飽和基を有する1価の有機基」が結合したものに代えるべき動機となる事項が存するものとも認められない。
したがって、上記相違点2aは、実質的な相違点であって、さらに甲1及び甲2に記載された事項を組み合わせたとしても、甲1発明において、当業者が適宜なし得ることであるということはできない。

(ウ)小括
よって、上記相違点2bにつき検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明1ないし甲2発明4、すなわち甲2に記載された発明であるということはできず、また、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができない。

イ.他の本件発明について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2ないし17についても、上記イ.で説示した理由と同一の理由により、甲2に記載された発明であるということはできず、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということもできない。

ウ.甲2発明に基づく検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし17は、いずれも甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.取消理由1、2及びAに係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし17は、いずれも、甲1又は甲2に記載された発明ではなく、甲1及び甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、申立人が主張する取消理由1及び2並びに当審が通知した取消理由Aは、いずれも理由がない。

II.当審が通知した取消理由Bについて
当審が通知した取消理由Bについて以下検討する。

1.取消理由Bの概要
当審が通知した取消理由Bは、要するに、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載からみて、本件発明の解決課題は、「感光性樹脂組成物の解像性の適正露光範囲が広い、すなわち、露光ラチチュードが広い感光性樹脂組成物、その製造方法、硬化膜、硬化膜の製造方法及び半導体デバイス」の提供にあるものと認められるところ、本件発明において使用する「複素環含有ポリマー前駆体」としての「ポリイミド前駆体」につき、「一般式(2)において、R^(113)およびR^(114)の少なくとも一方は、重合性不飽和基を有することが好まし」く「これによれば、感度および解像性がより良好なネガ型感光性樹脂を得ることができる」と作用機序が記載されているのみであり、
実施例に係る記載を更に検討しても、「一般式(2)」における「R^(113)およびR^(114)」の両方が重合性不飽和基を有する繰り返し単位のみからなる「ポリイミド前駆体」を使用した場合につき記載されているのみであって、当該発明の詳細な説明の記載に基づき、「重合性不飽和基」がポリイミド前駆体の他の部位に存在する場合について上記課題を解決できるような効果を奏し得るものと認識することはできないし、さらに、本件の各請求項に記載された事項を具備するものであれば、上記課題を解決できると当業者が認識できるような技術常識が存するものとも認められない。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明では、当業者が、たとえその技術常識に照らしたとしても、本件の各請求項に記載された事項で特定される発明につき、上記課題を解決できると認識することができるように記載されているものではないから、本件の請求項1ないし17の記載では、各項に記載された事項で特定される発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないというものである。

2.検討
上記第4で説示した適法にされた本件訂正により訂正された請求項1の記載に基づき、再度検討すると、本件発明1で使用する「ポリイミド前駆体」につき「下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む」とされ、当該「一般式(2)中、・・R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。」と規定された。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明における、本件発明において使用する「複素環含有ポリマー前駆体」としての「ポリイミド前駆体」については、「一般式(2)において、R^(113)およびR^(114)の少なくとも一方は、重合性不飽和基を有することが好まし」く「これによれば、感度および解像性がより良好なネガ型感光性樹脂を得ることができる」との作用機序に係る記載(【0040】)から、本件の請求項1に係る事項を具備する発明(本件発明1)が、上記解決課題を解決できるであろうことは、当業者が認識することができるものと認められる。
また、本件特許明細書の実施例に係る記載からみても、「R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基」であるポリイミド前駆体を使用した本件発明1の場合、上記課題を解決できることが看取できるものといえる。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、本件の各請求項に記載された事項で特定される発明につき、上記課題を解決できると認識することができるように記載されているものといえるから、本件の請求項1ないし17の記載では、各項に記載された事項で特定される発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができる。

3.取消理由Bに係る検討のまとめ
以上のとおり、本件の請求項1ないし17の各記載は、いずれも特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしているから、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでない。
よって、取消理由Bは理由がない。

III.当審の判断のまとめ
よって、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許は、当審が通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由につき、いずれも理由がなく、取り消すことができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正については適法であるからこれを認める。
また、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許は、当審が通知した理由並びに申立人が主張する理由及び提示した証拠によっては、取り消すことができない。
ほかに、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素環含有ポリマー前駆体の少なくとも一種を含み、
前記複素環含有ポリマー前駆体は、ポリイミド前駆体であり、
前記複素環含有ポリマー前駆体の重量平均分子量/数平均分子量である分散度が2.5?3.1であり、
前記複素環含有ポリマー前駆体が重合性不飽和基を有し、
光ラジカル重合開始剤を含み、
前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(2)で表される繰返し単位を含む
感光性樹脂組成物。
【化1】

一般式(2)中、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R^(111)は、2価の有機基を表し、R^(115)は、4価の有機基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。
【請求項2】
前記分散度が2.8?3.1である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記複素環含有ポリマー前駆体として、重量平均分子量および構成する繰り返し単位の少なくとも1種が互いに異なる複素環含有ポリマー前駆体を、2種以上含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記複素環含有ポリマー前駆体の少なくとも1種が、一般式(1-1)で表される繰り返し単位を有する前駆体である、請求項1?3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物;
【化2】

一般式(1-1)中、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R^(111)は、2価の有機基を表し、R^(112)は、単結合または2価の基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。
【請求項5】
前記一般式(1-1)における、A^(1)およびA^(2)の少なくとも一方が、酸素原子である、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記R^(112)は、単結合、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1?10の炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO_(2)-および-NHCO-、ならびにこれらの組み合わせから選択される基である、請求項4または5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
重量平均分子量が10000?20000の複素環含有ポリマー前駆体と、重量平均分子量が28000?42000の複素環含有ポリマー前駆体を、0.8?1.2:1.2?0.8の質量比で含む、請求項1?6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、硬化性化合物を含む、請求項1?7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記硬化性化合物が、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含む、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記硬化性化合物が、エチレン性不飽和基を2個以上含む化合物である、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
再配線層用層間絶縁膜形成用である、請求項1?10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
複素環含有ポリマー前駆体であって、重量平均分子量が互いに異なる複素環含有ポリマー前駆体を、2種以上を用い、かつ、光ラジカル重合開始剤を用いることを含み、
前記複素環含有ポリマー前駆体は、ポリイミド前駆体であり、前記複素環含有ポリマー前駆体が重合性不飽和基を有し、前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む感光性樹脂組成物の製造方法。
【化2】

一般式(2)中、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R^(111)は、2価の有機基を表し、R^(115)は、4価の有機基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。
【請求項13】
請求項1?11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる、硬化膜。
【請求項14】
再配線層用層間絶縁膜である、請求項13に記載の硬化膜。
【請求項15】
請求項1?11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いることを含む、硬化膜の製造方法。
【請求項16】
感光性樹脂組成物を基板に適用する工程と、基板に適用された感光性樹脂組成物を硬化する工程とを有する、請求項15に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項17】
請求項13または14に記載の硬化膜、あるいは、請求項15または16に記載の製造方法で製造された硬化膜を有する、半導体デバイス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-05-20 
出願番号 特願2017-526399(P2017-526399)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久保 道弘  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 橋本 栄和
近野 光知
登録日 2019-11-08 
登録番号 特許第6612343号(P6612343)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 前駆体組成物、感光性樹脂組成物、前駆体組成物の製造方法、硬化膜、硬化膜の製造方法および半導体デバイス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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