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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
管理番号 1376696
異議申立番号 異議2020-700785  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-13 
確定日 2021-06-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6679837号発明「セメント組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6679837号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第6679837号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6679837号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成27年4月14日の出願であって、令和2年3月24日にその特許権の設定登録がされ、同年4月15日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年10月13日 :特許異議申立人 浜 俊彦(以下「申立人」という。)による請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立て
同年12月22日付け:取消理由通知
令和3年 2月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月30日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年2月9日提出の訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1、2からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するセメント組成物であって、
前記セメントの単位セメント量を90?214kg/m^(3)としたセメント組成物。」
との記載を、
「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、
前記セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし、
前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし、
単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、
「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するセメント組成物であって、
水結合材比を21?47%としたセメント組成物。」
との記載を、
「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、
水結合材比を21?40%とし、
前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし、
単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート。」
に訂正する。

2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、請求項1に記載された「高炉スラグ微粉末」との記載を、「高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)」に訂正し、請求項1に記載された「前記セメントの単位セメント量を90?214kg/m^(3)とした」との記載を
「前記セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし、
前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし、
単位水量を150?185kg/m^(3)とした」
に訂正し、請求項1に記載された「セメント組成物」との記載を、「コンクリート」に訂正して、「セメント組成物」の各発明特定事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 「高炉スラグ微粉末」との記載を、「高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)」に訂正することは、「高炉スラグ微粉末」から「ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末」を除外する、いわゆる「除くクレーム」という記載様式に基づく訂正であって、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、「単位セメント量」を「109?214kg/m^(3)」とすること、「結合材の単位量」を「438?714kg/m^(3)」とすること、及び、「単位水量」を「150?185kg/m^(3)」とすることは、それぞれの数値範囲の境界値が明細書の段落【0030】の表2A?表2Eに記載されており、このような境界値を上限及び下限とした数値範囲が記載されていることは明細書の記載から自明な事項であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、「コンクリート」とすることは、明細書の段落【0015】に記載されているから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。

ウ 訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、請求項2に記載された「水結合材比を21?47%とした」との記載を
「水結合材比を21?40%とし、
前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし、
単位水量を150?185kg/m^(3)とした」
に訂正し、請求項2に記載された「セメント組成物」との記載を、「コンクリート」に訂正して、「セメント組成物」の各発明特定事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 「水結合材比」を「21?40%」とすること、「結合材の単位量」を「438?714kg/m^(3)」とすること、及び、「単位水量」を「150?185kg/m^(3)」とすることは、それぞれの数値範囲の境界値が明細書の段落【0030】の表2A?表2Eに記載されており、このような境界値を上限及び下限とした数値範囲が記載されていることは明細書の記載から自明な事項であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、「コンクリート」とすることは、明細書の段落【0015】に記載されているから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。

ウ 訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)申立人の主張について
申立人は、令和3年3月30日提出の意見書において、本件訂正について、本件訂正後の請求項1に係る発明では、高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積と、単位セメント量と、結合材の単位量と、単位水量との数値範囲の組合せを特定しており、本件訂正後の請求項2に係る発明は、水結合材比と、結合材の単位量と、単位水量との数値範囲の組合せを特定しているところ、明細書の表2A?2Eには、これらの数値範囲の端点自体は実験値として記載されているものの、各種数値範囲を組み合わせることは明細書に記載されておらず、また、各種数値範囲を組み合わせることは、セメント組成物の強度を向上させるとの課題を解決するための技術思想として明細書から把握することができないから、本件訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものではない旨を主張している。
しかしながら、コンクリートを製造する際に、セメント、結合材及び水の単位量並びに水結合材比を所定の範囲に調整することは本願出願時の技術常識であるから、明細書の表2A?2Eにセメント、結合材及び水の単位量並びに水結合材比の数値範囲の境界値が記載されているのであれば、これら境界値を上限及び下限としたセメント、結合材及び水の単位量並びに水結合材比の数値範囲の組合せも明細書に記載されていると同然と理解されるため、このような数値範囲の組合せは、明細書の記載から自明な事項である。
また、高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積についての訂正は、上記(1)イに記載されるとおり、いわゆる「除くクレーム」という記載様式に基づく訂正であって、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、本件訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、当該主張は採用することができない。

(4)独立特許要件について
特許異議申立ては、全ての請求項1、2についてされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は訂正箇所を示す。)。

「【請求項1】
24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、
前記セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし、
前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし、
単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート。
【請求項2】
24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、
水結合材比を21?40%とし、
前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし、
単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート。」

2 取消理由の概要
令和2年12月22日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1
設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証又は甲第7号証に記載された発明であり、設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証又は甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものである。

(2)取消理由2
設定登録時の請求項1、2に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び引用文献8に記載の技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

<甲号証及び引用文献一覧>
甲第1号証:檜垣 誠 他、高炉スラグ微粉末を大量に使用したコンクリートの経時安定性に関する実験的研究 その1 コンクリートとモルタルによる基礎実験、日本建築学会大会学術講演梗概集(東海)、日本、2012.09.発行、第291-292頁
甲第2号証:西 祐宜 他、高炉スラグ微粉末を大量混合したコンクリートの経時安定性改善に関する一提案 その1 モルタル試験による高炉スラグ用分散剤の検討、土木学会第67回年次学術講演会、2012.09.発行、第923-924頁
甲第3号証:特開平5-319889号公報
甲第4号証:特開2009-67652号公報
甲第5号証:根岸 稔 他、高炉スラグ微粉末を大量混合したコンクリートの経時安定性改善に関する一提案 その2 コンクリート試験によるフレッシュ性状および耐久性、土木学会第67回年次学術講演会、日本、2012.09.発行、第925-926頁
甲第6号証:和地 正浩 他、高炉スラグ高含有セメントを用いたコンクリートの性質、コンクリート工学年次論文集、日本、2010.発行、Vol.32、No.1、第485-490頁
甲第7号証:溝渕 麻子 他、混和材を高含有したコンクリートのCO_(2)削減効果、コンクリート工学年次論文集、日本、2014.発行、Vol.36、No.1、第118-123頁
引用文献8:セメントの常識、社団法人セメント協会、2007.01.発行、第22頁、第27頁(一部が甲第8号証である。)

3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由のうち、上記2の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。

(1)申立理由1
設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証又は甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証又は甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書第12頁下から第13行?第15頁第5行、第17頁第7行?第18頁第7行、第18頁第14行?第20頁第21行)。

(2)申立理由2
設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書第15頁第6行?第16頁第15行)。

(3)申立理由3
設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書第16頁第16行?第17頁第6行)。

(4)申立理由4
設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第4号証に記載された発明並びに甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書第20頁第22行?第21頁第19行)。

(5)申立理由5
設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第6号証に記載された発明並びに、甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書第21頁第20行?第21頁第6行)。

<甲号証一覧>
甲第1号証?甲第7号証:上記2の甲第1号証?甲第7号証に同じ。
甲第8号証:セメントの常識、社団法人セメント協会、2007.01.発行、第27頁(引用文献8の一部である。)

4 甲号証及び引用文献の記載事項について
(1)甲第1号証の記載内容及び引用発明
ア 甲第1号証の記載内容
甲第1号証には、下記の事項が記載されている(当審注:下線は当審による。以下同様。)。

a 「近年、環境負荷低減を目的として高炉スラグ微粉末(以下BFS)の使用が促進されており、コンクリート材料として有効活用する研究が進んでいる^(1))。」(第291頁左欄第2?4行)

b 「2.1 コンクリート試験
表1にコンクリートの使用材料、表2にBFSの化学組成、表3にコンクリートの調合を示す。混和剤は高性能AE減水剤(以下HWRA)を使用した。BFS置換率を0、25、50および75%と変化させ、単位水量を一定にした場合とHWRAの添加率を一定にした場合の経過安定性について検討を行った。」(第291頁左欄第12?15行)

c 「

」(第291頁右欄)

d 「

」(第291頁)

イ 甲第1号証に記載された発明
上記アによれば、甲第1号証には、コンクリートの使用材料として、比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末が記載され、コンクリートの調合「165-BFS75」として、W/Bが45.0%であり、単位量(kg/m^(3))が、水(W)165、セメント(C)92、高炉スラグ微粉末(BFS)275、細骨材(S1)414、細骨材(S2)409、粗骨材(G)936である調合について記載され、当該調合のコンクリートについて検討が行われたことが記載されている。
よって、甲第1号証には、「165-BFS75」に基づく発明として、以下の発明(以下、甲1発明という。)が記載されている。

「セメント及び比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末と、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、W/Bが45.0%であり、単位量(kg/m^(3))が、水165、セメント92、高炉スラグ微粉末275、細骨材813、粗骨材936である調合としたコンクリート。」

(2)甲第2号証の記載内容及び引用発明
ア 甲第2号証の記載内容
甲第2号証には、下記の事項が記載されている。

a 「近年,環境負荷低減を目的として高炉スラグ微粉末(以下BFS)の使用が促進されており,コンクリート材料として有効活用する研究が進んでいる.」(第923頁第2?3行)

b 「2.モルタル試験の実験概要
表1に使用材料,表2にBFSの化学組成,表3にモルタルの配合を示す.測定項目はJIS A1171(6.1)-2000に規定されるミニスランプコーンを用いて,ミニスランプを測定した.」(第923頁第6?10行)

c 「

」(第923頁)

d 「

」(第923頁)

イ 甲第2号証に記載された発明
上記アによれば、甲第2号証には、使用材料として比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末が記載され、モルタルの配合「BFS75%」として、W/Bが45%であり、単位量(g/L)が、水(W)266、セメント(C)149、高炉スラグ微粉末(BFS)447、細骨材(S)1357である配合について記載され、当該配合のモルタルについて検討が行われたことが記載されている。
よって、甲第2号証には、「BFS75%」に基づく発明として、以下の発明(以下、甲2発明という。)が記載されている。

「セメント及び比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末と、細骨材と、水と、を有するモルタルであって、W/Bが45%であり、単位量(g/L)が、水266、セメント149、高炉スラグ微粉末447、細骨材1357である配合としたモルタル。」

(3)甲第3号証の記載内容及び引用発明
ア 甲第3号証の記載内容
甲第3号証には、下記の事項が記載されている(当審注:「…」は当審による省略を表す。丸文字は{}で表した。以下同様。)。

a 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、材料分離がなくスランプフロー値の優れた水硬性セメント組成物に関する。」

b 「【0010】
【発明の作用】本発明の水硬性セメント組成物に用いる水硬性成分は、5700?6300cm^(2)/gのブレーン値を有する高炉スラグ微粉末50?80重量%とポルトランドセメント20?50重量%とからなる混合物である。」

c 「【0014】
上記水硬性成分の単位量は300kg/m^(3)以上、400kg/m^(3)未満とする。水硬性成分の単位量として300kg/m^(3)未満の場合、材料分離を生じ易くなる。またその単位量が400kg/m^(3)を越えると経済的に不利となる。…」

d 「【0035】
コンクリート試験[1]
材料
セメント :普通ポルトランドセメント(比重=3.16、ブレーン値=3400)
高炉スラグ微粉末:エスメント(新日鉄製) (比重=2.89、ブレーン値=6000)
細骨材{1} :御衣野産山砂 (比重=2.54)
細骨材{2} :藤原産石灰砕砂5mm以下(比重=2.68)
粗骨材 :藤原産石灰砕石 2005(比重=2.70)
石灰微粉末 :藤原産石灰微粉末0.15mm以下(比重=2.68)
上記材料を用い、表2に示す配合のフレッシュコンクリートを調整し、下記の方法で充填性、分離抵抗性を測定した。その結果を表3に示す。石灰微粉末は全骨材中の百分率で、表3に示した量となるように添加し、細骨材{2}の一部として用いた。…」

e 「【0042】
コンクリート試験[2]
コンクリート試験[1]と同様の材料、試験方法により試験した。表4に配合、及び結果を示す。」

f 「【0043】
【表4】



イ 甲第3号証に記載された発明
上記アによれば、甲第3号証には、コンクリート試験の材料として、ブレーン値が6000の高炉スラグ微粉末が記載され、「実施例9」として、水-結合材が44%であり、単位量(kgf/m^(3))が、水155、セメント104、高炉スラグ微粉末245、細骨材1 290、細骨材2 710、粗骨材833であるコンクリート配合について記載され、当該配合のコンクリートについて試験が行われたことが記載されている。
よって、甲第3号証には、「実施例9」に基づく発明として、以下の発明(以下、甲3-1発明という。)が記載されている。

「セメント及びブレーン値が6000の高炉スラグ微粉末と、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、水-結合材が44%であり、単位量(kgf/m^(3))が、水155、セメント104、高炉スラグ微粉末245、細骨材1000、粗骨材833である配合としたコンクリート。」

また、甲第3号証には、コンクリート試験の材料として、ブレーン値が6000の高炉スラグ微粉末が記載され、「実施例10」として、水-結合材が41%であり、単位量(kgf/m^(3))が、水145、セメント104、高炉スラグ微粉末245、細骨材1 295、細骨材2 729、粗骨材833であるコンクリート配合について記載され、当該配合のコンクリートについて試験が行われたことが記載されている。
よって、甲第3号証には、「実施例10」に基づく発明として、以下の発明(以下、甲3-2発明という。)が記載されている。

「セメント及びブレーン値が6000の高炉スラグ微粉末と、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、水-結合材が41%であり、単位量(kgf/m^(3))が、水145、セメント104、高炉スラグ微粉末245、細骨材1024、粗骨材833である配合としたコンクリート。」

(4)甲第4号証の記載内容及び引用発明
ア 甲第4号証の記載内容
甲第4号証には、下記の事項が記載されている。

a 「【0001】
本発明は、海洋コンクリート構造物用の高炉セメント組成物およびこれを用いたフレッシュコンクリートに関し、特に海水に暴露される箇所に用いる海洋コンクリート構造物用の高炉セメント組成物およびこれを用いたフレッシュコンクリートに関する。」

b 「【0012】
一方、本発明の高炉セメント組成物に用いられる高炉スラグ微粉末は、ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gであり、好適には、6500?12000cm^(2)/gであり、より好適に、8000?11000cm^(2)/gである。6000未満であると、海浜部における中性化抑制が十分ではない。15000を超えるとコスト面で好ましくない。 なお、ブレーン比表面積は、ブレーン値とも呼ばれる。…」

c 「【実施例】
【0017】
次いで、本発明にかかる高炉セメント組成物を用いたフレッシュコンクリートからなるコンクリート構造物の供試体(実施例)、その他の高炉セメントを用いたフレッシュコンクリートからなるコンクリート構造物の供試体(比較例:従来例に相当)、高炉セメント未配合とした普通ポルトランドセメントを用いたフレッシュコンクリートからなるコンクリート構造物の供試体(標準品)の各種のコンクリート構造物の供試体を作成し、これらを材齢10年に至るまで、標準養生、海中暴露、感潮暴露、海浜暴露したのち、一般的物理特性(圧縮強度、動弾性係数、静弾性係数)および化学特性(鉄筋の発錆、中性化深さ、塩素イオン量、SO_(3)イオン量)を測定し、各例(実施例および比較例)の標準品に対する有意差を判断する試験を行った。
【0018】
(1)フレッシュコンクリート材料について
各例に用いるフレッシュコンクリートを製造するにあたって以下の材料を用いた。高炉スラグ微粉末として、JIS A 6206(コンクリート用スラグ微粉末JIS)に適合するブレーン比表面積4300cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末(住金鉱化株式会社製:スミットメント)を使用した。…」

d 「【0020】
(3)フレッシュコンクリートの作成と測定
上記のフレッシュコンクリート材料を用いて、各例にかかるフレッシュコンクリートを調合した。各例にかかるフレッシュコンクリートの材料組成、調合態様および物性は、下記の表1のとおりである。
なお、フレッシュコンクリートの水粉体比(W/B)は実用性が高く、各例の差がはっきりする点で実施例1?15、および比較例1?4までについては55%に統一した。また、水粉体比(W/B)の相違を明らかすべく、比較例5については水粉体比(W/B)を80%とした。ただし、本発明者らは、水粉体比(W/B)のみを変更しても、各例間の結果差が、水粉体比(W/B)55%とほとんど同様となることを知見している。
【0021】
【表1】



イ 甲第4号証に記載された発明
上記アによれば、甲第4号証には、「実施例10」として、水粉体比(W/B)が54.93%であり、単位量(kg/m^(3))が、水167、セメント91、ブレーン値11000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末213、細骨材740、粗骨材1074であるコンクリート配合について記載され、当該配合のコンクリート供試体について試験が行われたことが記載されている。
よって、甲第4号証には、「実施例10」に基づく発明として、以下の発明(以下、甲4発明という。)が記載されている。

「セメント及びブレーン値11000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末と、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、水粉体比(W/B)が54.93%であり、単位量(kg/m^(3))が、水167、セメント91、高炉スラグ微粉末213、細骨材740、粗骨材1074である配合としたコンクリート。」

(5)甲第5号証の記載内容及び引用発明
ア 甲第5号証の記載内容
甲第5号証には、下記の事項が記載されている。

a 「3.コンクリートの使用材料と配合
表2にコンクリートの使用材料,表3にコンクリートの配合を示す.セメントは3銘柄等量配合とし,BFSはその1と同じものを使用した.」(第925頁第11?14行)

b 「4.試験項目
コンクリートの練混ぜ,経時安定性試験及び養生は,室温20℃の恒温室で行った.」(第925頁第18?20行)

c 「

」(第925頁)

d 「

」(第925頁)

イ 第5号証に記載された発明
上記アによれば、甲第5号証には、コンクリートの使用材料として、比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末が記載され、「45-BFS75」として、W/Bが45.0%であり、単位量(kg/m^(3))が、水(W)155、セメント(C)86、高炉スラグ微粉末(BFS)258、細骨材(S1)439、細骨材(S2)436、粗骨材(G)936であるコンクリート配合について記載され、当該配合のコンクリートについて試験が行われたことが記載されている。
よって、甲第5号証には、「45-BFS75」に基づく発明として、以下の発明(以下、甲5発明という。)が記載されている。

「セメント及び比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末と、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、W/Bが45.0%であり、単位量(kg/m^(3))が、水155、セメント86、高炉スラグ微粉末258、細骨材875、粗骨材936である配合としたコンクリート。」

(6)甲第6号証の記載内容及び引用発明
ア 甲第6号証の記載内容
甲第6号証には、下記の事項が記載されている。

a 「要旨:セメント・コンクリートのエネルギーとCO_(2)の削減を目的に試作した高炉スラグ高含有セメント(ECMセメント)を用いたコンクリートについて,圧縮強度,乾燥収縮,自己収縮,中性化等の基礎的性質を調べ,構造体への適用性を検討した。」(第485頁上段第1?3行)

b 「本論文は,高炉スラグ含有率60?75%の試作した高炉スラグ高含有セメント(以下,ECMセメント,ECMは「エネルギー・CO_(2)ミニマム」の略)を用いたコンクリートの基礎的性質を調べ,実用化の可能性について検討したものである。」(第485頁左欄第17?21行)

c 「2. 基礎的性質の検討(実験1)
2.1 実験概要
高炉スラグ含有量60?75%の3種のECMセメントと高炉セメントB種および普通ポルトランドセメントを用いた水セメント比50%のフレッシュコンクリートと硬化コンクリートの性質を調べ,ECMセメントを使用したコンクリートの基礎的性質を検討した。
2.2 使用材料とコンクリートの配(調)合
セメントの物理的性質と化学成分,その他の使用材料の物理的性質等を表-1,表-2に示す。コンクリートの配(調)合を表-3に示す。図-1は普通セメントのCO_(2)原単位を750kg/tとし,高炉スラグで普通セメントを置き換えるとその分CO_(2)原単位が小さくなるとして求めた各セメントのCO_(2)原単位を示す。高炉セメントB種の高炉スラグ含有量は45%としている。CO_(2)を削減する上で高炉スラグの含有量の高いセメントを使用するのが有効なことが明らかである。」(第485頁右欄第3?19行)

d 「

」(第486頁左欄)

e 「

」(第486頁左欄)

f 「

」(第486頁右欄)

g 「2.3 実験結果
(1)フレッシュコンクリートの性質
スランプ18cmを得るのに要する減水剤の添加量を図-2に示す。ECMセメント(ECM-50)は普通セメント(N-50)や高炉セメントB種(BB-50)よりも減水剤の添加量が少なく流動性の高いコンクリートとなることがわかる。…図-3にブリーディング量の測定結果を示す。ECMセメントのブリーディング量が最も少なく,分離抵抗性に優れたコンクリートが得られることがわかる。」(第486頁左欄第4?15行)

h 「

」(第486頁右欄)

i 「

」(第486頁右欄)

j 「(2)圧縮強度と静弾性係数
圧縮強度の試験結果を図-4に示す。…高炉スラグ含有量75%のECM3を用いたコンクリートは初期強度の発現,強度の絶対値いずれも相当に小さい。」(第486頁左欄第16行?487頁第1行)

k 「

」(第486頁右欄)

l 「ECMセメントは環境負荷の少ないセメントとして構造的に適用できる可能性を確認したが,耐久性や構造体の強度等,実用化に必要な課題についてさらに研究を行い,セメントや化学混和材の改良も期待したい。」(490頁左欄下から第7?4行)

イ 甲第6号証に記載された発明
上記アによれば、甲第6号証には、「ECM3-50」として、4000ブレーンの高炉スラグの含有量が75%のECMセメントを含み、水セメント比(W/C)が50%であり、単位量(kg/m^(3))が、水(W)160、ECMセメント(C)320、細骨材(S)855、粗骨材(G)957であるコンクリート配合について記載され、当該配合のコンクリートについて試験が行われたことが記載されている。
よって、甲第6号証には、「ECM3-50」に基づく発明として、以下の発明(以下、甲6発明という。)が記載されている。

「4000ブレーンの高炉スラグの含有量が75%のECMセメントと、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、水セメント比(W/C)が50%であり、単位量(kg/m^(3))が、水160、ECMセメント320、細骨材855、粗骨材957である配合としたコンクリート。」

(7)甲第7号証の記載内容及び引用発明
ア 甲第7号証の記載内容
甲第7号証には、下記の事項が記載されている。

a 「要旨:本研究は,混和材を高含有したコンクリートのCO_(2)削減効果を把握することを目的に,結合材の種類および混合割合,水結合材比をパラメータとした実験を行い,結合材水比と強度の関係および結合材水比とCO_(2)排出量の関係をもとめ,対象とするコンクリートのCO_(2)排出量低減率を算定した。」(第118頁上段第1?3行)

b 「3.1 使用材料
使用材料の種類および品質を表-1に示す。結合材としては,普通ポルトランドセメント,高炉スラグ微粉末,フライアッシュおよびシリカフュームを用いた。
3.2 実験条件
実験の設定条件を表-2に,パラメータとした結合材の混合割合および予備実験により決定した単位水量を表-3にそれぞれ示す。
各種結合材の組合せおよび結合材料に対する各種材料の混合割合をパラメータとし,結合材はセメントをベースとして,その一部を高炉スラグ微粉末で置換した2成分系,高炉スラグ微粉末の一部を更にフライアッシュで置換した3成分系,フライアッシュの一部をシリカフュームで置換した4成分系に大別する。水結合材比は30%,37%および44%の3水準とした。…
3.3 試験およびCO_(2)排出量の算定方法
コンクリート製造後,所定のフレッシュ性状であることを確認し,各調合の材齢28日における標準養生強度を求めた。」(第119頁左欄第4?25行)

c 「

」(第118頁)

d 「

」(第119頁右欄)

e 「4.1 強度試験結果
結合材の混合割合と28日標準養生強度の関係に整理した結果を図-1に示す。」(119頁左欄下から第3?1行)

f 「

」(第119頁右欄)

イ 甲第7号証に記載された発明
上記アによれば、甲第7号証には、使用材料として高炉スラグ微粉末の比表面積が4360cm^(2)/gであることが記載され、「調合No.3」として、結合材の混合割合がセメント(C)25%、高炉スラグ微粉末(BS)75%である結合材を用い、単位水量を149kg/m^(3)とし、水結合材比を30%、37%又は44%として、細骨材及び粗骨材を使用材料としたコンクリートの調合について記載され、当該調合のコンクリートを製造したことが記載されている。
よって、甲第7号証には、「ECM3-50」に基づく発明として、以下の発明が記載されている。

甲7-1発明
「セメント25%、比表面積が4360cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末75%からなる結合材と、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、水結合材比30%であり、単位量(kg/m^(3))が、水149である調合としたコンクリート。」

甲7-2発明
「セメント25%、比表面積が4360cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末75%からなる結合材と、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、水結合材比37%であり、単位量(kg/m^(3))が、水149である調合としたコンクリート。」

甲7-3発明
「セメント25%、比表面積が4360cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末75%からなる結合材と、細骨材と、粗骨材と、水と、を有するコンクリートであって、水結合材比44%であり、単位量(kg/m^(3))が、水149である調合としたコンクリート。」

(8)引用文献8又は甲第8号証の記載内容
ア 引用文献8又は甲第8号証の記載内容
引用文献8には、下記a?cの事項が記載されている。また、甲第8号証には、下記aの事項が記載されている。

a 「(1)水セメント比
硬化したコンクリートに要求される性質として、強度と耐久性が挙げられる。これらの性質は、コンクリート柱の水とセメントの質量比(「水セメント比」といい、セメントペーストの濃度を表現し、“W/C”の記号で表す)による影響が大きいので、コンクリートをつくるときのもっとも重要な要素と考えて良い。
水セメント比は、図2-5に示すように、その値が大きくなる(濃度が薄くなる)と、強度は小さくなり、同様にコンクリートの耐久性も低下する。


」(第27頁左欄第2?11行、図2-5)

b 「3.6 コンクリートのつくり方
コンクリート(モルタル、セメントペーストの場合も含まれる)をつくるときの各材料の混合割合または使用量を「配合」(土木構造物の場合)、あるいは「調合」(建築構造物の場合)という。
配合・調合(以下、配合という)によってコンクリートの性質は大きく異なるので、使用する条件に合わせて適切に決める必要がある。すなわち、作業に適した「ワーカビリティー」、所要の「強度」および「耐久性」を満足するように、配合を定める。そのためには、いろいろな試験を行って、必要な性質を満足するように配合を決めて行くが、その行為のことを、土木工事では「配合設計」、建築工事では「調合設計」という。
コンクリートの配合は、前述のように、おもにワーカビリティーと強度によって定まる。その手順は、いろいろな方法があるが、おおむね以下のように整理することができる(表8)。
{1}使用する材料の比重を求める。
{2}作業に適したワーカビリティー(スランプの値で表す)を決める。
→ コンクリートの単位水量(コンクリート1mに加える水の質量)の概略が決まる。
{3}必要な強度と耐久性から水セメント比を決める。
→ 単位水量と水セメント比から単位セメント量(コンクリート1m^(3)に必要なセメントの質量)が計算される。
{4}細骨材と粗骨材の混合比率(「細骨材率」あるいは“s/a"と称する)を決める。
{5}それぞれの材料の容積の合計が空気量を含めて1m^(3)になるように計算する。そのさい、空気量を想定する。
{6}このようにして求めた計算上の配合で実際に「試験練り」を行って、所要の品質であるかどうか確かめ、それぞれの単位量を修正して最適なものとする。」(第22頁左欄第1行?右欄下から第3行)

c 「

」(第22頁)

イ 引用文献8又は甲第8号証に記載の技術的事項
a 上記アaから、引用文献8又は甲第8号証には、下記の技術的事項(引用8技術的事項1又は甲8技術的事項1という。)が記載されている。

「コンクリートの水セメント比が大きくなるほど強度が低くなる。」

b 上記アb、cから、引用文献8には、下記の技術的事項(引用8技術的事項2という。)が記載されている。

「コンクリートの配合・調合は、使用する条件すなわち主にワーカビリティーと強度に合わせて、概ね以下の手順で決める。{1}使用する材料の比重を求める。{2}作業に適したワーカビリティを決め、単位水量の概略を仮定する。{3}必要な強度と耐久性から水セメント比を決めて単位セメント量を計算する。{4}細骨材と粗骨材の混合比率を決める。{5}空気量を想定し、それぞれの材料の容積の合計が空気量を含めて1m^(3)となるように計算する。{6}試験練りを行い、品質の確認、単位量の修正を行う。」

(9)申立人が令和3年3月30日に意見書と共に提出した甲第9号証(西 祐宜 他、各種混和材を用いたコンクリートにおける化学混和剤の適用状況と今後の課題、日本、2014.05.発行、Vol.52、No.5、第480-483頁)の記載内容
ア 甲第9号証の記載内容
甲第9号証には、下記の事項が記載されている。

a 「3.高炉スラグ微粉末
高炉スラグ微粉末を使用することで,省資源型および省エネルギー型,環境負荷物質低減型の環境配慮が行える。…ただし、高炉スラグ微粉末の置換率が60%以上(高炉セメントC種以上)になると,ワーカビリティーの確保が困難になるケースが認められる。…そのため,高炉スラグ微粉末を大量置換する際には,減水性,経時安定性,凝結時間を考慮した上で,(高性能)AE減水剤の添加率と単位水量を調整する必要がある。…」(第481頁左欄第15行?第30行)

イ 甲第9号証に記載の技術的事項
上記アから、甲第9号証には、下記の技術的事項(甲9技術的事項1という。)が記載されている。

「高炉スラグ微粉末の置換率が60%以上になると、ワーカビリティーの確保が困難になるケースがあり、高炉スラグ微粉末を大量に置換する際は、単位水量を調整する必要がある。」

(10)申立人が令和3年3月30日に意見書と共に提出した甲第10号証(一般財団法人日本建築センター、建設技術審査証明(建築技術)報告書、BCJ-審査証明-202、技術名称:低炭素型のコンクリート「クリーンクリート」)の記載内容
ア 甲第10号証の記載内容
甲第10号証には、下記の事項が記載されている。

a 「1.3 技術の概要
低炭素のコンクリート「クリーンクリート」は、結合材であるセメントの一部を、二酸化炭素排出量の少ない高炉スラグ微粉末等の混和材に置換することで、普通ポルトランドセメントのみを使用したコンクリートに比べて二酸化炭素排出量を大幅に低減することができるコンクリートであり、表1の諸元及び性能の範囲のものである。

」(第1頁第13行?最終行)

b 「9.審査証明経緯
(1) 2012年3月26日付けで新規に依頼された本技術について、技術審査を行い、2012年10月1日付けで技術審査を完了した。
(2) 2017年5月16日付けで依頼された本技術に関する更新及び下記の変更について技術審査を行い、2017年7月27日付け技術審査を完了した。なお、更新日は2017年10月1日とし、審査証明の有効期限は、更新前の有効期限から起算して5年間(2022年9月30日まで)とする。
・代表者の変更」(第3頁下から第8行?第1行)

イ 甲第10号証に記載の技術的事項
上記アaから、甲第10号証には、下記の技術的事項(甲10技術的事項1という。)が記載されている。

「ポルトランドセメントの混合割合が10から30%、高炉スラグ微粉末の混合割合が45から90%、フライアッシュの混合割合が0から30%である結合材を含み、単位水量の最大値が185kg/m^(3)、単位結合材量の最小値が270kg/m^(3)、水結合材比が30%以上のコンクリート。」

5 判断
(1)甲第1号証を主たる証拠とする取消理由1及び申立理由1について
ア 本件発明1について(取消理由1、申立理由1)
甲1発明において、セメントと高炉スラグ微粉末は、ともに本件発明1の「結合材」に相当する。
また、甲1発明においてセメント及び高炉スラグ微粉末の合計を100重量部としたとき、セメントは92/(92+275)×100=25重量部であり、高炉スラグ微粉末は75重量部であるから、甲1発明において、単位量(kg/m^(3))がセメント92、比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末275であることは、本件発明1のコンクリートが「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材」を有することに相当する。
そして、甲1発明の単位量(kg/m^(3))が水165であることは、本件発明1において「単位水量を150?185kg/m^(3)とした」ことに相当する。
そうすると、本件発明1は、甲1発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点1-1>
本件発明1は「セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲1発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント92のコンクリートである点。
<相違点1-2>
本件発明1は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲1発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント92、高炉スラグ微粉末275のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点1-2について検討すると、甲1発明の結合材の単位量、すなわち、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量は、367kg/m^(3)であり、当該数値は、本件発明1の結合材の単位量の数値範囲と異なっているから、上記相違点1-2は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点1-2に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第1号証には、結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらないから、甲1発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2について(取消理由1、申立理由1)
上記アと同様に対比すると、本件発明2は、甲1発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点1-3>
本件発明2は「水結合材比を21?40%とし」たコンクリートであるのに対し、甲1発明は、W/Bが45.0%のコンクリートである点。
<相違点1-4>
本件発明2は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲1発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント92、高炉スラグ微粉末275のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点1-4について検討すると、甲1発明の結合材の単位量、すなわち、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量は、367kg/m^(3)であり、当該数値は、本件発明2の結合材の単位量の数値範囲と異なっているから、上記相違点1-4は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点1-4に係る本件発明2の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第1号証には、結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらないから、甲1発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 小活
以上のとおりであるから、甲第1号証を主たる証拠とする取消理由1及び申立理由1に理由はない。

(2)甲第2号証を主たる証拠とする取消理由1及び申立理由1について
ア 本件発明1について(取消理由1、申立理由1)
甲2発明において、セメントと高炉スラグ微粉末は、ともに本件発明1の「結合材」に相当する。
また、甲2発明においてセメント及び高炉スラグ微粉末の合計を100重量部としたとき、セメントは149/(149+447)×100=25重量部であり、高炉スラグ微粉末は75重量部であるから、甲2発明において、単位量(g/L)がセメント149、比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末447であることは、本件発明1のコンクリートが「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材」を有することに相当する。
そして、甲2発明の単位量(m/L)がセメント149であることは、g/Lはkg/m^(3)と同義であるから、本件発明1において「セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし」たことに相当し、甲2発明の単位量(g/L)がセメント149、高炉スラグ微粉末447であることは、その和が149+447=596であるから、本件発明1において「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たことに相当する。
そうすると、本件発明1は、甲2発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有する」ものであって、「前記セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし、前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たものである点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点2-1>
本件発明1は「コンクリート」であるのに対し、甲2発明は、モルタルである点。
<相違点2-2>
本件発明1は「単位水量を150?185kg/m^(3)とした」ものであるのに対し、甲2発明は、単位量(g/L)が水266であるものである点。

事案に鑑み、上記相違点2-2について検討すると、甲2発明の水の単位量は、266kg/m^(3)と同義であり、当該数値は、本件発明1の単位水量の数値範囲と異なっているから、上記相違点2-2は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点2-2に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第2号証には、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらないから、甲2発明において、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2について(取消理由1、申立理由1)
上記アと同様に対比すると、本件発明2は、甲2発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有する」ものであって、「前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たものである点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点2-3>
本件発明2は「コンクリート」であるのに対し、甲2発明は、モルタルである点。
<相違点2-4>
本件発明2は「水結合材比を21?40%とし」たものであるのに対し、甲2発明は、W/Bが45%であるものである点。
<相違点2-5>
本件発明2は「単位水量を150?185kg/m^(3)とした」ものであるのに対し、甲2発明は、単位量(g/L)が水266であるものである点。

事案に鑑み、上記相違点2-5について検討すると、甲2発明の水の単位量は、266kg/m^(3)と同義であり、当該数値は、本件発明2の単位水量の数値範囲と異なっているから、上記相違点2-5は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点2-5に係る本件発明2の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第2号証には、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらないから、甲2発明において、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 小活
以上のとおりであるから、甲第2号証を主たる証拠とする取消理由1及び申立理由1に理由はない。

(3)甲第3号証を主たる証拠とする取消理由1及び申立理由1について
ア 本件発明1について(取消理由1、申立理由1)
(ア)甲3-1発明との対比・判断
甲3-1発明において、セメントと高炉スラグ微粉末は、ともに本件発明の「結合材」に相当する。
また、甲3-1発明においてセメント及び高炉スラグ微粉末の合計を100重量部としたとき、セメントは104/(104+245)×100=29.8重量部であり、高炉スラグ微粉末は70.2重量部であるから、甲3-1発明において、単位量(kgf/m^(3))がセメント104、高炉スラグ微粉末245であることは、本件発明1のセメント組成物が「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末」「とを有する100重量部の結合材」を有することに相当する。
そして、甲3-1発明の単位量(kgf/m^(3))が水155であることは、本件発明1において「単位水量を150?185kg/m^(3)とした」ことに相当する。
そうすると、本件発明1は、甲3-1発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末」「とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点3-1>
本件発明1は「ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く」ものであるのに対し、甲3-1発明は、ブレーン値が6000の高炉スラグ微粉末である点。
<相違点3-2>
本件発明1は「セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲3-1発明は、単位量(kgf/m^(3))がセメント104のコンクリートである点。
<相違点3-3>
本件発明1は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲3-1発明は、単位量(kgf/m^(3))がセメント104、高炉スラグ微粉末245のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点3-3について検討すると、甲3-1発明の結合材の単位量、すなわち、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量は、349kg/m^(3)であり、当該数値は、本件発明1の結合材の単位量の数値範囲と異なっているから、上記相違点3-3は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点3-3に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第3号証には、上記4(3)アb、cの記載によれば、セメント及び高炉スラグ微粉末の水硬性成分の単位量を300kg/m^(3)以上、400kg/m^(3)未満とすることが記載されているから、甲3-1発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは、その動機付けがないばかりか阻害要因があるため、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)甲3-2発明との対比・判断
本件発明1と甲3-2発明とを対比及び判断しても、甲3-1発明で検討した同じ理由により、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2について(取消理由1、申立理由1)
(ア)甲3-1発明との対比・判断
上記ア(ア)と同様に対比すると、本件発明2は、甲3-1発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点3-4>
本件発明2は「水結合材比を21?40%とし」たコンクリートであるのに対し、甲3-1発明は、水-結合材が44%のコンクリートである点。
<相違点3-5>
本件発明2は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲3-1発明は、単位量(kgf/m^(3))がセメント104、高炉スラグ微粉末245のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点3-5について検討すると、甲3-1発明の結合材の単位量、すなわち、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量は、349kg/m^(3)であり、当該数値は、本件発明2の結合材の単位量の数値範囲と異なっているから、上記相違点3-5は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点3-5に係る本件発明2の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第3号証には、上記4(3)アb、cの記載によれば、セメント及び高炉スラグ微粉末の水硬性成分の単位量を300kg/m^(3)以上、400kg/m^(3)未満とすることが記載されているから、甲3-1発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは、その動機付けがないばかりか阻害要因があるため、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)甲3-2発明との対比・判断
本件発明2と甲3-2発明とを対比及び判断しても、甲3-1発明で検討した同じ理由により、本件発明2は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 小活
以上のとおりであるから、甲第3号証を主たる証拠とする取消理由1及び申立理由1に理由はない。

(4)甲第4号証を主たる証拠とする取消理由1、申立理由1及び申立理由4について
ア 本件発明1について(取消理由1、申立理由1)
甲4発明において、セメントと高炉スラグ微粉末は、ともに本件発明の「結合材」に相当する。
また、甲4発明においてセメント及び高炉スラグ微粉末の合計を100重量部としたとき、セメントは91/(91+213)×100=29.9重量部であり、高炉スラグ微粉末は70.1重量部であるから、甲4発明において、単位量(kg/m^(3))がセメント91、高炉スラグ微粉末213であることは、本件発明1のセメント組成物が「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末」「とを有する100重量部の結合材」を有することに相当する。
そして、甲4発明の単位量(kg/m^(3))が水167であることは、本件発明1において「単位水量を150?185kg/m^(3)とした」ことに相当する。
そうすると、本件発明1は、甲4発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末」「とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点4-1>
本件発明1は「ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く」ものであるのに対し、甲4発明は、ブレーン値11000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末である点。
<相違点4-2>
本件発明1は「セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲4発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント91のコンクリートである点。
<相違点4-3>
本件発明1は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲4発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント91、高炉スラグ微粉末213のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点4-1について検討すると、甲4発明の高炉スラグ微粉末はブレーン値11000cm^(2)/gであり、当該数値は、本件発明1のブレーン比表面積の数値範囲と異なっているから、上記相違点4-1は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点4-1に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第4号証には、上記4(4)アbの記載によれば、高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gとすることが記載されているから、甲4発明において、「ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く」ものとすることは、その動機付けがないばかりか阻害要因があるため、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2について(申立理由4)
上記アと同様に対比すると、本件発明2は、甲4発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点4-4>
本件発明2は「水結合材比を21?40%とし」たコンクリートあるのに対し、甲4発明は、水粉体比(W/B)が54.93%のコンクリートである点。
<相違点4-5>
本件発明2は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲4発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント91、高炉スラグ微粉末213のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点4-5について検討すると、甲第4号証には、結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらず、甲5発明、甲8技術的事項1は、結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることを示すものではなく、甲7-1発明は、結合材の単位量が「438?714kg/m^(3)」の範囲内であるが、高炉スラグ微粉末の比表面積等の前提となる条件が甲4発明と全く異なることからすれば、甲4発明に直ちに適用できるものではないから、甲4発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第4号証に記載された発明並びに甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小活
以上のとおりであるから、甲第4号証を主たる証拠とする取消理由1、申立理由1及び申立理由4に理由はない。

(5)甲第5号証を主たる証拠とする取消理由1、申立理由1及び申立理由2について
ア 本件発明1について(申立理由2)
甲5発明において、セメントと高炉スラグ微粉末は、ともに本件発明1の「結合材」に相当する。
また、甲5発明においてセメント及び高炉スラグ微粉末の合計を100重量部としたとき、セメントは86/(86+258)×100=24.7重量部であり、高炉スラグ微粉末は75.3重量部であるから、甲5発明において、単位量(kg/m^(3))がセメント86、比表面積:4540cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末258であることは、本件発明1のセメント組成物が「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材」を有することに相当する。
そして、甲5発明の単位量(kg/m^(3))が水155であることは、本件発明1において「単位水量を150?185kg/m^(3)とした」ことに相当する。
そうすると、本件発明1は、甲5発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点5-1>
本件発明1は「セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲5発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント86のコンクリートである点。
<相違点5-2>
本件発明1は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲5発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント86、高炉スラグ微粉末258のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点5-2について検討すると、甲第5号証には、結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらず、甲8技術的事項1も結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることを示すものではないから、甲5発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2について(取消理由1、申立理由1)
上記アと同様に対比すると、本件発明2は、甲5発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点5-3>
本件発明2は「水結合材比を21?40%とし」たコンクリートであるのに対し、甲5発明は、W/Bが45.0%のコンクリートである点。
<相違点5-4>
本件発明2は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲5発明は、単位量(kg/m^(3))がセメント86、高炉スラグ微粉末258のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点5-4について検討すると、甲5発明の結合材の単位量、すなわち、セメント及び高炉スラグ微粉末の合計単位量は、344kg/m^(3)であり、当該数値は、本件発明2の単位水量の数値範囲と異なっているから、上記相違点5-4は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点5-4に係る本件発明2の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第5号証には、結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらないから、甲5発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第5号証に記載された発明ではなく、また、甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 小活
以上のとおりであるから、甲第5号証を主たる証拠とする取消理由1、申立理由1及び申立理由2に理由はない。

(6)甲第6号証を主たる証拠とする取消理由2、申立理由3及び申立理由5について
ア 本件発明1について(取消理由2、申立理由3)
甲6発明の「ECMセメント」は、本件発明1の「結合材」に相当する。
また、甲6発明におけるコンクリートが「4000ブレーンの高炉スラグ含有量75%のECMセメント」を有することは、本件発明1のコンクリートが「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材」を有することに相当する。
そして、甲6発明の単位量(kg/m^(3))が水160であることは、本件発明1において「単位水量を150?185kg/m^(3)とした」ことに相当する。
一方、甲6発明は、単位量(kg/m^(3))が、ECMセメント320であるから、ECMセメントのうち高炉セメント以外のセメント(本件発明1の「セメント」に相当)の単位量(kg/m^(3))は、320×(100-75)%=80であるところ、当該単位量は、本件発明1の単位セメント量である「90?214kg/m^(3)」よりも小さい。
そうすると、本件発明1は、甲6発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点6-1>
本件発明1は「セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲6発明は、ECMセメントのうち高炉セメント以外のセメントの単位量(kg/m^(3))が80のコンクリートである点。
<相違点6-2>
本件発明1は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲6発明は、単位量(kg/m^(3))がECMセメント320のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点6-2について検討すると、甲第6号証には、結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらず、さらに、引用8技術的事項1、2、甲8技術的事項1も結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることを示すものではないから、甲6発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第6号証に記載された発明及び引用文献8に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲第6号証に記載された発明及び甲第8号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2について(取消理由2、申立理由5)
上記アと同様に対比すると、本件発明2は、甲6発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、」「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点6-3>
本件発明2は「水結合材比を21?40%とし」たコンクリートであるのに対し、甲6発明は、水セメント比(W/C)が50%であるコンクリートである点。
<相違点6-4>
本件発明2は「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たコンクリートであるのに対し、甲6発明は、単位量(kg/m^(3))がECMセメント320のコンクリートである点。

事案に鑑み、上記相違点6-4について検討すると、甲第6号証には、結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらず、さらに、甲5発明、引用8技術的事項1、2、甲8技術的事項1は結合材の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることを示すものではなく、甲7-1発明は、結合材の単位量が「438?714kg/m^(3)」の範囲内であるが、水セメント比(W/C)等の前提となる条件が甲6発明と全く異なることからすれば、甲6発明に直ちに適用できるものではないから、甲6発明において、セメント及び高炉スラグ微粉末の単位量を「438?714kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第6号証に記載された発明及び引用文献8に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲第6号証に記載された発明並びに、甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 小活
以上のとおりであるから、甲第6号証を主たる証拠とする取消理由2、申立理由3及び申立理由5に理由はない。

(7)甲第7号証を主たる証拠とする取消理由1及び申立理由1について
ア 本件発明1について(取消理由1、申立理由1)
(ア)甲7-1発明との対比・判断
甲7-1発明におけるコンクリートがセメント25%、比表面積が4360cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末75%からなる結合材を有することは、本件発明1のセメント組成物が「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材」を有することに相当する。
そして、甲7-1発明におけるコンクリートがセメント25%、高炉スラグ微粉末75%からなる結合材を有するとともに、水結合材比30%であり、単位量(kg/m^(3))が、水149であることは、セメントの単位量を算出すると149/30%×25%=124.2kg/m^(3)であり、結合材の単位量を算出すると、149/30%=496.7kg/m^(3)であるから、本件発明1において「セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし」、「結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」たことに相当する。
そうすると、本件発明1は、甲7-1発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、前記セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし、前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」た「コンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点7-1>
本件発明1は「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」であるのに対し、甲7-1発明は、単位量(kg/m^(3))が、水149であるコンクリートである点。

上記相違点7-1について検討すると、甲7-1発明の水の単位量は、149kg/m^(3)であり、当該数値は、本件発明1の単位水量の数値範囲と異なっているから、上記相違点7-1は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点7-1に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第7号証には、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらないから、甲7-1発明において、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第7号証に記載された発明ではなく、また、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)甲7-2発明との対比・判断
本件発明1と甲7-2発明とを対比及び判断しても、甲7-1発明で検討した同じ理由により、本件発明1は、甲第7号証に記載された発明ではなく、また、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2について(取消理由1、申立理由1)
(ア)甲7-1発明との対比・判断
甲7-1発明において、水結合材比30%であることは、本件発明2の「水結合材比を21?40%とし」たことに相当する。
そして、その余の点を上記ア(ア)と同様に対比すると、本件発明2は、甲7-1発明と、「24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、水結合材比を21?40%とし、前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし」た「コンクリート」である点で一致し、下記の点で相違する。

<相違点7-2>
本件発明2は「単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート」であるのに対し、甲7-1発明は、単位量(kg/m^(3))が、水149であるコンクリートである点。

上記相違点7-2について検討すると、甲7-1発明の水の単位量は、149kg/m^(3)であり、当該数値は、本件発明2の単位水量の数値範囲と異なっているから、上記相違点7-2は、実質的なものといえる。
次に、上記相違点7-2に係る本件発明2の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第7号証には、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらないから、甲7-1発明において、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第7号証に記載された発明ではなく、また、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)甲7-2発明、甲7-3発明との対比・判断
本件発明2と甲7-2発明又は甲7-3発明とを対比及び判断しても、甲7-1発明で検討した同じ理由により、本件発明2は、甲第7号証に記載された発明ではなく、また、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、令和3年3月30日提出の意見書において、甲第9号証及び甲第10号証を提出して、本件特許1、2は、甲第7号証に記載された発明並びに甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨を主張している。
この点について検討すると、甲第7号証には、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることの動機付けとなる記載は見当たらず、さらに、甲9技術的事項1は水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることを示すものでもないから、甲7-1発明において、水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
また、甲第10号証は、上記4(10)アbの記載を考慮しても、どの時点でどのような内容が公開されていたのか不明であるため、取消理由の証拠として採用することができない。また、仮に、出願日前に甲第10号証が公開されていたとしても、甲10技術的事項1は単位水量を150kg/m^(3)以上とすることを示すものでもないから、甲7-1発明に適用しても水の単位量を「150?185kg/m^(3)」の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件発明1、2は、甲第7号証に記載された発明並びに甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立人の主張は採用できない。

エ 小活
以上のとおりであるから、甲第7号証を主たる証拠とする取消理由1及び申立理由1に理由はない。

第4 むすび
以上のとおり、請求項1、2に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由、及び、取消理由に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積6000?15000cm^(2)/gの高炉スラグ微粉末を除く)とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、
前記セメントの単位セメント量を109?214kg/m^(3)とし、
前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし、
単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート。
【請求項2】
24.8重量部以上30.0重量部未満のセメントと70.0重量部より大きく75.2重量部以下の高炉スラグ微粉末とを有する100重量部の結合材と、骨材と、水と、を有するコンクリートであって、
水結合材比を21?40%とし、
前記結合材の単位量を438?714kg/m^(3)とし、
単位水量を150?185kg/m^(3)としたコンクリート。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-05-25 
出願番号 特願2015-82232(P2015-82232)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C04B)
P 1 651・ 113- YAA (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浅野 昭  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 伊藤 真明
金 公彦
登録日 2020-03-24 
登録番号 特許第6679837号(P6679837)
権利者 株式会社大林組
発明の名称 セメント組成物  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 一色国際特許業務法人  

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