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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01Q
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01Q
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01Q
管理番号 1376718
異議申立番号 異議2020-700298  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-27 
確定日 2021-06-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6600686号発明「レーダセンサ、およびレーダアンテナの放射特性に影響を与えることに適した方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6600686号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 特許第6600686号の請求項1、4-5、7-11及び13に係る特許を維持する。 特許第6600686号の請求項2、3、6及び12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6600686号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)12月 7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年12月 5日、ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、令和元年10月11日にその特許権の設定の登録がされ、同年10月30日に特許掲載公報が発行された。
その後の本件特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。

令和2年 4月27日 :特許異議申立人 新井 誠一(以下「特許異議
申立人」という。)より請求項1乃至13に係
る特許に対する特許異議の申立て
令和2年11月12日付け:取消理由通知書
令和3年 2月18日受付:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(
以下「本件訂正請求」という。)
令和3年 3月 4日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第120
条の5第5項)

なお、特許異議申立人は、令和3年 3月 4日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に応答しなかった。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「レーダアンテナ(1)であって、…レーダアンテナ。」と記載されているのを、「レーダアンテナ(1)と…レーダシステム。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4、5、7から11、および13も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「エネルギーの位相位置(φ1、φ2、φ3)」と記載されているのを、「エネルギーの位相位置(φ1、φ2)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4、5、7から11、および13も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「依存している、」と記載されているのを、「依存しており、前記レーダアンテナ(1)に対する前記複数の無給電素子(2)の配置は、アジマス方向における前記放射特性を絞るように定められている、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4、5、7から11、および13も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」と記載されているのを、「請求項1に記載のレーダシステム」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、7から11、および13も同様に訂正する)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」と記載されているのを、「請求項1または4に記載のレーダシステム」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項7から11、および13も同様に訂正する)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から6のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」と記載されているのを、「請求項1、4、および5のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8から11、および13も同様に訂正する)。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8に「1MHzから200GHzの周波数範囲、好ましくは20GHzから100GHzの周波数範囲で」と記載されているのを、「1MHzから200GHzの周波数範囲で」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9から11、および13も同様に訂正する)。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から7のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」と記載されているのを、「請求項1、4、5、および7のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9から11、および13も同様に訂正する)。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項9に「好ましくは70GHzから80GHzの周波数範囲で」と記載されているのを、「70GHzから80GHzの周波数範囲で」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10、11、および13も同様に訂正する)。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から8のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」と記載されているのを、「請求項8に記載のレーダシステム」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10、11、および13も同様に訂正する)。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から9のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」と記載されているのを、「請求項1、4、5、および7から9のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11および13も同様に訂正する)。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1から10のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」と記載されているのを、「請求項1、4、5、および7から10のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項13も同様に訂正する)。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項12を削除する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1から11のいずれか一項に記載のレーダアンテナ(1)、または請求項12に記載のレーダシステム」と記載されているのを、「請求項1、4、5、および7から11のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正する。

訂正前の請求項1、4、5、7から11及び13について、請求項4、5、7から11及び13は、訂正事項1から3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1、4、5、7から11及び13に対応する訂正後の請求項1、4、5、7から11及び13は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-13〕に対して請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1) 訂正事項1
ア 訂正前の請求項1において、特許発明に係る「レーダアンテナ」が、特許明細書の段落0015等に記載される符号1で示される「マイクロストリップ技術を用いた被影響アンテナライン」を意味するのか、当該「被影響アンテナライン」と「複数の無給電素子2」を含む「レーダアンテナシステム」(例えば特許明細書の段落0014、0016、0019などに記載)を意味するのかが明確でなかったものを、特許発明が「マイクロストリップ技術を用いた少なくとも一本のアンテナラインからな」る「レーダアンテナ(1)」と「複数の無給電素子(2)」とを備える「レーダシステム」に係るものであることを明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 訂正事項1に係る訂正は、発明の対象を「レーダアンテナ」から訂正前の請求項12に記載された「レーダシステム」に変更するものであって、訂正前の請求項12に記載された内容を実質的に導入するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項12に記載された内容を実質的に導入するものであり、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2に係る訂正は、発明の詳細な説明に記載されていない符号φ3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。
イ 訂正事項2に係る訂正は、発明の詳細な説明に記載されていない参照符号を削除して、記載されているφ1、φ2だけにするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項2に係る訂正は、明らかな誤記の訂正を目的として参照符号の一部を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3に係る訂正は、「前記レーダアンテナ(1)に対する前記複数の無給電素子(2)の配置は、アジマス方向における前記放射特性を絞るように定められている」という記載により、レーダアンテナ(1)と複数の無給電素子(2)の配置をより具体的に特定し、さらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項3に記載された発明特定事項で発明を限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項3に記載された発明特定事項で発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4は、請求項2を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項4は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項4は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5は、請求項3を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項5は、請求項3を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項5は、請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6は、訂正事項1に係る発明の対象の「レーダアンテナ」から「レーダシステム」への変更、訂正事項4に係る請求項2の削除、および訂正事項5に係る請求項3の削除との整合性をとるために、訂正前の請求項4における「請求項1から3のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」という記載を「請求項1に記載のレーダシステム」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明、および特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項6に係る訂正は、訂正後の請求項1の記載との整合性をとるために特許請求の範囲を減縮しているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項6に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮しているとともに、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7は、訂正事項1に係る発明の対象の「レーダアンテナ」から「レーダシステム」への変更、訂正事項4に係る請求項2の削除、および訂正事項5に係る請求項3の削除との整合性をとるために、訂正前の請求項5における「請求項1から4のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」という記載を「請求項1または4に記載のレーダシステム」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明、および特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項7に係る訂正は、訂正後の請求項1の記載との整合性をとるために特許請求の範囲を減縮しているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項7に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮しているとともに、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項8について
ア 訂正事項8は、請求項6を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項8は、請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項8は、請求項6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項9について
ア 訂正事項9は、訂正事項1に係る発明の対象の「レーダアンテナ」から「レーダシステム」への変更、訂正事項4に係る請求項2の削除、訂正事項5に係る請求項3の削除、および訂正事項8に係る請求項6の削除との整合性をとるために、訂正前の請求項7における「請求項1から6のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」という記載を「請求項1、4、および5のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明、および特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項9に係る訂正は、訂正後の請求項1の記載との整合性をとるために特許請求の範囲を減縮しているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項9に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮しているとともに、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(10)訂正事項10について
ア 訂正前の請求項8においては、レーダアンテナ(1)と複数の無給電素子(2)が「1MHzから200GHzの周波数範囲、好ましくは20GHzから100GHzの周波数範囲」で使用されるとの記載から、「好ましくは20GHzから100GHzの周波数範囲」という記載を削除することにより不明瞭性を解消しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 訂正事項10に係る訂正は、「1MHzから200GHzの周波数範囲」に含まれる「好ましくは20GHzから100GHzの周波数範囲」を記載から削除するものであり、当初記載である「1MHzから200GHzの周波数範囲」自体を変更するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項10に係る訂正は、「1MHzから200GHzの周波数範囲」に含まれる「好ましくは20GHzから100GHzの周波数範囲」を記載から削除するものであり、当初記載である「1MHzから200GHzの周波数範囲」自体を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(11)訂正事項11について
ア 訂正事項11は、訂正事項1に係る発明の対象の「レーダアンテナ」から「レーダシステム」への変更、訂正事項4に係る請求項2の削除、訂正事項5に係る請求項3の削除、および訂正事項8に係る請求項6の削除との整合性をとるために、訂正前の請求項8における「請求項1から7のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」という記載を「請求項1、4、5、および7のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明、および特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項11に係る訂正は、訂正後の請求項1の記載との整合性をとるために特許請求の範囲を減縮しているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項11に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮しているとともに、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(12)訂正事項12について
ア 訂正前の請求項9においては、レーダアンテナ(1)と複数の無給電素子(2)が「好ましくは70GHzから80GHzの周波数範囲」で使用されるとの記載から、「好ましくは」という記載を削除することにより不明瞭性を解消しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 訂正事項12に係る訂正は、「好ましくは」という記載を削除するものであり、当初記載である「70GHzから80GHzの周波数範囲」自体を変更するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項12に係る訂正は、「好ましくは」という記載を削除するものであり、当初記載である「70GHzから80GHzの周波数範囲」自体を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(13)訂正事項13について
ア 訂正事項13は、訂正事項1に係る発明の対象の「レーダアンテナ」から「レーダシステム」への変更、訂正事項4に係る請求項2の削除、訂正事項5に係る請求項3の削除、訂正事項8に係る請求項6の削除、および訂正事項10に係る数値範囲に係る訂正との整合性をとるために、訂正前の請求項9における「請求項1から8のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」という記載を「請求項8に記載のレーダシステム」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明、および特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項13に係る訂正は、訂正後の請求項1および8の記載との整合性をとるために特許請求の範囲を減縮しているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項13に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮しているとともに、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(14)訂正事項14について
ア 訂正事項14は、訂正事項1に係る発明の対象の「レーダアンテナ」から「レーダシステム」への変更、訂正事項4に係る請求項2の削除、訂正事項5に係る請求項3の削除、および訂正事項8に係る請求項6の削除との整合性をとるために、訂正前の請求項10における「請求項1から9のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」という記載を「請求項1、4、5、および7から9のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明、および特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項14に係る訂正は、訂正後の請求項1の記載との整合性をとるために特許請求の範囲を減縮しているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項14に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮しているとともに、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(15)訂正事項15について
ア 訂正事項15は、訂正事項1に係る発明の対象の「レーダアンテナ」から「レーダシステム」への変更、訂正事項4に係る請求項2の削除、訂正事項5に係る請求項3の削除、および訂正事項8に係る請求項6の削除との整合性をとるために、訂正前の請求項11における「請求項1から10のいずれか一項に記載のレーダアンテナ」という記載を「請求項1、4、5、および7から10のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明、および特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項15に係る訂正は、訂正後の請求項1の記載との整合性をとるために特許請求の範囲を減縮しているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項15に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮しているとともに、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(16)訂正事項16について
ア 訂正事項16は、請求項12を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項16は、請求項12を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項16は、請求項12を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(17)訂正事項17について
ア 訂正事項17は、訂正事項1に係る発明の対象の「レーダアンテナ」から「レーダシステム」への変更、訂正事項4に係る請求項2の削除、訂正事項5に係る請求項3の削除、訂正事項8に係る請求項6の削除、および訂正事項16に係る請求項12の削除との整合性をとるために、訂正前の請求項13における「請求項1から11のいずれか一項に記載のレーダアンテナ(1)、または請求項12に記載のレーダシステム」という記載を「請求項1、4、5、および7から11のいずれか一項に記載のレーダシステム」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明、および特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項17に係る訂正は、訂正後の請求項1の記載との整合性をとるために特許請求の範囲を減縮しているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項17に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮しているとともに、訂正発明の目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-13〕について、訂正することを認める。


第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1乃至13に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」乃至「本件発明13」という。)は、令和3年2月18日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
レーダアンテナ(1)と、
前記レーダアンテナ(1)の放射特性に影響を与える複数の無給電素子(2)を備え、
前記レーダアンテナ(1)は、マイクロストリップ技術を用いた少なくとも一本のアンテナラインからなり、
前記複数の無給電素子(2)は、マイクロストリップ技術を用いたアンテナラインであり、かつ二本平行に並んで配列されており、
前記放射特性は、前記レーダアンテナ(1)に対する前記複数の無給電素子(2)の空間的位置、および前記レーダアンテナ(1)と前記複数の無給電素子(2)から放射されるエネルギーの位相位置(φ1、φ2)に依存しており、
前記レーダアンテナ(1)に対する前記複数の無給電素子(2)の配置は、アジマス方向における前記放射特性を絞るように定められている、
レーダシステム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記複数の無給電素子(2)は、当該無給電素子(2)同士の相互結合、および前記レーダアンテナ(1)との相互結合の少なくとも一方により、前記放射特性を変化させる、
請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記複数の無給電素子(2)は、影響を受ける前記レーダアンテナ(1)の長手軸の両側の少なくとも一方において平行に配置されている、
請求項1または4に記載のレーダシステム。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記レーダアンテナ(1)および前記複数の無給電素子(2)は、レドームで覆われている、
請求項1、4、および5のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項8】
前記レーダアンテナ(1)と前記複数の無給電素子(2)は、1MHzから200GHzの周波数範囲で使用される、
請求項1、4、5、および7のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項9】
前記レーダアンテナ(1)と前記複数の無給電素子(2)は、70GHzから80GHzの周波数範囲で使用される、
請求項8に記載のレーダシステム。
【請求項10】
前記レーダアンテナ(1)は、送信アンテナ、受信アンテナ、あるいは送受信アンテナとして使用されうる、
請求項1、4、5、および7から9のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項11】
前記レーダアンテナ(1)は、物体の位置と速度の少なくとも一方を特定するレーダシステムの内部で使用されうる、
請求項1、4、5、および7から10のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
請求項1、4、5、および7から11のいずれか一項に記載のレーダシステムを用いて複数の無給電素子(2)によりレーダアンテナ(1)の放射特性に影響を与える方法であって、
a)信号源(0)から送信アンテナ(1)へエネルギーを伝播させるステップ(11)と、
b)前記送信アンテナ(1)から空間へ、位相位置φ1を有するエネルギーを放射するステップ(12)と、
c)前記送信アンテナ(1)から放射されたエネルギーの一部を、前記複数の無給電素子(2)に衝突させるステップ(13)と、
d)位相位置φ2を有するエネルギーの一部を、前記複数の無給電素子(2)で反射して空間へ放射するステップ(14)と、
e)エネルギーの一部を前記複数の無給電素子(2)で受け取るステップ(15)と、
f)エネルギーの一部を前記複数の無給電素子(2)から前記送信アンテナ(1)へ戻し反射するステップ(16)と、
を含んでおり、
前記送信アンテナ(1)の放射特性は、前記ステップ(14)で前記複数の無給電素子(2)から放射されたエネルギーによって影響を受け、前記ステップ(12)で前記送信アンテナ(1)から放射されたエネルギーは、前記ステップ(14)で前記複数の無給電素子(2)から放射されたエネルギーと重畳する、
方法。」


第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1乃至13に係る特許に対して、当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

1 (進歩性)請求項1、2、4乃至13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

・請求項1?2、4?6に対して、
甲第1号証:国際公開第2008/028739号
甲第4号証:特開2013-168875号公報
甲第5号証:特開2007-37077号公報
・請求項7?12に対して、
甲第1号証:国際公開第2008/028739号
甲第4号証:特開2013-168875号公報
甲第5号証:特開2007-37077号公報
甲第7号証:特開2009-246460号公報
甲第8号証:特開2009-130451号公報
・請求項13に対して、
甲第1号証:国際公開第2008/028739号
甲第4号証:特開2013-168875号公報
甲第5号証:特開2007-37077号公報
甲第7号証:特開2009-246460号公報
甲第8号証:特開2009-130451号公報
甲第3号証:特開2009-200790号公報

2 (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)請求項1において、「レーダアンテナ(1)」と、「レーダアンテナ」の関係が明確でない。
請求項1を直接的、あるいは間接的に引用する、請求項2?13についても、同様である。
(2)請求項6には、「前記終端は、好ましくは、開放ライン端、短絡ライン端、あるいはアブソーバか電力調節部を伴う終端である」ことが記載されており、「好ましくは、」に続く「開放ライン端、短絡ライン端、あるいはアブソーバか電力調節部を伴う終端」であることが、必須の構成要素であるかが不明である。
請求項6を直接的、あるいは間接的に引用する、請求項7?13についても、同様である。
(3)請求項8には、「1MHzから200GHzの周波数範囲、好ましくは20GHzから100GHzの周波数範囲で使用される」ことが記載されており、「好ましくは」に続く「20GHzから100GHzの周波数範囲」が、必須の構成要素であるかが不明である。
請求項8を、直接的、あるいは間接的に引用する請求項9?13についても、同様である。
(4)請求項9には、「好ましくは70GHzから80GHzの周波数範囲で使用される」ことが記載されており、「好ましくは」に続く「70GHzから80GHzの周波数範囲」が、必須の構成要素であるかが不明である。
請求項9を、直接的、あるいは間接的に引用する請求項10?13についても、同様である。
(5)請求項12は、
「 請求項1から11のいずれか一項に記載のレーダアンテナ(1)、および当該レーダアンテナ(1)の放射特性に影響を与える複数の無給電素子(2)を備えている、
レーダシステム。」であるが、引用する請求項1は、「前記レーダアンテナ(1)の放射特性に影響を与える複数の無給電素子(2)を備え、」るレーダアンテナであり、請求項12の「レーダシステム」が備えている「複数の無給電素子(2)」と、請求項1で特定される「レーダアンテナ(1)」が備える「複数の無給電素子(2)」の関係が不明であり、レーダシステムの構成が明確に理解できない。

3 (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)請求項1に記載される、「φ3」は、発明の詳細な説明に記載されていない。
請求項1を、直接的、あるいは間接的に引用する請求項2?13についても、同様である。
(2)請求項6に記載される、「開放ライン端、短絡ライン端、あるいはアブソーバか電力調節部を伴う終端」は、発明の詳細な説明に記載されていない。
請求項6を、直接的、あるいは間接的に引用する請求項7?13についても、同様である。


第5 当審の判断
1 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)取消理由で引用した甲号証の記載
ア 甲第1号証の記載事項、及び甲1発明
甲第1号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与したものである。)。

(ア) (1ページ15?17行)

(当審訳:
先を見通す検出システムを用いる運転者支援機能の分野においては、数年前から主に76?77GHzの周波数範囲で動作するレーダセンサ系が使用されている。)

(イ) (1ページ28?33行)

(当審訳:
通常、第1世代および第2世代の77GHzレーダセンサはレンズアンテナを用いて動作する。レンズの焦点面に位置する複数の給電アンテナにより、部分的に重なり合うビームローブが形成される(アナログビーム形成)。この原理を図1に示す。個々のビームローブにおける信号振幅および/または信号位相を用いて対象物の方位角度位置が決定される。)

(ウ) (2ページ6?28行)

(当審訳:
自動車のレーダセンサにおける平面アンテナは、通常、アンテナ群として構成されている[1、4、5、6、7]。その場合、直列給電されるアンテナ列が仰角方向に設置され、これらのアンテナ列によって方位角方向にビーム形成が行われる。このようなアンテナの基本構造が図2に示されている。

発明の利点
請求項1の措置によって、すなわち、少なくとも1つの給電されるアンテナ素子と並んで、自由空間波長の半波長に略等しい最小距離をおいた寄生結合されるアンテナ素子を用いてビームローブの拡幅を達成できるように、アンテナアレイの放射に影響を及ぼすことができる。アンテナ素子として、単独放射器のみならず個々の放射器の群も使用することができる。このことは以下の利点をもたらす:
-アンテナの特性が単独放射器に比べて拡張される、
-電力分割器のための追加スペースが必要でない
-わずかな損失しか生じない。
したがって、実際に、(中央を犠牲にして)縁領域におけるアンテナ利得が高くなり、特性が矩形特性に近くなる(相応の損失を伴う電力分割器を用いてアンテナ特性の拡張も達成できるが、損失によって、縁領域における利得は、通常、単独素子の場合と比べてそれほど大きくはない)。)

(エ) (4ページ21?30行)

(当審訳:
自動車レーダセンサのレーダアンテナのメインローブは、方位角方向において、用途のために十分な角度範囲で送信信号が放射されるように設計される。中程度から長い到達範囲の用途(典型的なACC)については、典型的な曲線半径の場合でも道路、特にアウトバーンの複数の車線に照射するために、一般に±4°?±8°の角度範囲で十分である。
図1によるレーダセンサでは、送信のために、受信のときと同じビームロープが使用され(モノスタティックシステム)、すべてのビームローブについて同時に発信され、それにより結果として生じる放射特性は、個々のビームローブの位相を考慮して合計したビームロープに相当する。)

(オ) (5ページ4?21行)

(当審訳:
方位角方向に可能な限り幅広いビームローブを達成するために、通常、仰角方向に重ねて配置された個々の素子1、図3、からなるアンテナ列が使用され、パッチ素子からなる個々のアンテナ列が送信アンテナTxとして図示されている。しかしそれによってビームロープの3dB幅を±60°のオーダーで方位角方向に実現できるのではなく、単一パッチ素子のビームローブの3dB幅は、極性方向に応じて約±52°(E平面)および約±41°(H平面)となる。後者の値は、通常使用される直接の直列給電(図6を参照)に該当する。重ねて配置して結合された素子(帯域幅を大きくするための「stacked patches」)を使用する場合、通常、ビームローブはより幅狭である。
複数のアンテナ列が並設される場合、通常、アパーチャが拡大することからビームローブが方位角方向に幅狭になる。アンテナ列の特定の振幅割り当て、および位相割り当てを用いてビームローブの拡幅を達成することもできる。しかしこの手法には、第1に、相応の電力分割器のためのスペースが設けられなければならず(図2を参照)、第2の電力分割器に付加的な損失が生じるという欠点がある。第3に、サイドローブが生じ得る。特に、アンテナ特性におけるサイドローブと結びついたゼロ点(または極小)は、レーダセンサの照射領域においては容認できない。)


(カ) (5ページ23?29行)

(当審訳:
これに対して本発明では、方位角方向および/または仰角方向の平面において少なくとも1つの一次放射器10のビームロープを拡幅するために、少なくとも1つの別の寄生の、特に同様に平面アンテナ素子が1つ/複数の一次放射器10に対して方位角方向および/または仰角方向に平行に配置されており、この少なくとも1つの別のアンテナ素子11は、自由空間波長の半波長に略等しい最小距離で電磁界結合によって一次放射器10に単に寄生的に結合されている。)

(キ) (6ページ13?21行

(当審訳:
図3は、給電40を有する一次放射器10における寄生アンテナ素子(図3a)の、一次放射器と寄生アンテナ素子との間に距離d1をおいて仰角方向(図3b)または方位角方向(図3c)の、および仰角方向Eの1つの寄生アンテナ素子と方位角方向Aに対称の2つの寄生アンテナ素子との組合せ(図3d)としての本発明によるアレイを例示的に示し、外側のアンテナ素子の距離d2は、内側のアンテナ素子の距離の略2倍の大きさである。
自動車レーダセンサにおける平面アンテナは、通常、マイクロストリップ線路で構成されている。)

(ク) (7ページ1?20行)

(当審訳:
図4は、直列給電を用いるアンテナ列1と並列給電を用いるアンテナ列2の構造を模式的に示す。上記の信号線平面において、アンテナ列の給電線20が配置されている。これらの給電線は、通常、マイクロストリップ線路として形成されており、その際、適合すべき異なったインピーダンスを有する複数の区分が生じ得る。
給電線20にはアンテナ放射器素子50が結合されている。これは、最も簡単な事例では給電線への直列接続による直接結合30によって、または例えば供給線、フィードスルーによって、または静電容量結合により実現することができる。他の可能性は、放射器素子をスロット結合の形で電磁界を介して結合するか、またはスロットが直接、放射器として使用される。
放射器素子として、例えばパッチスタプ、ポール、スロット、または個々の素子の群が用いられる。すべての入力電力を放射することで反射が生じない素子50aが列1の端に設置されてもよい。
図5は、直列給電を有する群の形での使用を図示する。一次放射器および寄生アンテナ素子50として、直列給電される個々の放射器群が使用される。図6は、図5aによるコンセプトの例示的実現を示す。放射器として、直接給電されるパッチ素子50が使用される。)

(ケ) (7ページ28行?8ページ8行

(当審訳:
図9は、方位角に対するアンテナ利得の測定結果を示す。その際、アンテナは以下の構造および特性を有する:
I.直接給電されるパッチ素子による実現における図4による直列給される単独列(図6を参照)、
II.両側に、付加的に1つずつ対称に配置された寄生列(図6の構造)を具備する同様の構造の列。
単独列のビーム特性を寄生列によって著しく拡幅することができ、その際、わずかな損失しか生じないことが確認される。電力分割器によっても同様にビームローブの拡幅を達成できるが、これは格段に大きい損失と引き換えに達成される。約±35°より大きい角度の場合、それによって利得が約2dB大きくなる。すなわち、縁領域においてアンテナ特性が事実上高くなり、これは中央角度領域における利得を犠牲にし、したがってアンテナ線図が矩形特性に近くなる。さらにサイドローブが生じず、それと結びついたゼロ点もアンテナ線図に生じない。)

(コ) (10ページ7行?12ページ21行)



(当審訳:
1.特に平面アンテナ素子の形の少なくとも1つの一次放射器(10)を備えるアンテナアレイであって、前記少なくとも1つの一次放射器(10)のビームローブを拡幅するために、少なくとも1つの別の寄生の、特に同様に平面アンテナ素子(11)が前記1つ/複数の一次放射器(10)に対して、方位角方向および/または仰角方向に平行に配置されており、前記少なくとも1つの別のアンテナ素子(11)は、自由空間波長の半波長に略等しい最小距離で、電磁界結合によって前記一次放射器(10)に単に寄生的に結合されている、アンテナアレイ。
(中略)
3.前記一次放射器(10)の両側に、それぞれ正確に1つの寄生アンテナ素子(11)が前記相応の方向に設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のアンテナアレイ。
4.前記一次放射器(10)の両側に、それぞれ2つの寄生素子(11)が前記相応の方向に設けられ、前記第2寄生素子の、前記少なくとも1つの一次放射器(10)からの距離が、前記第1寄生アンテナ素子の略2倍であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアンテナアレイ。
(中略)
6.1つまたは複数の給電(21)を介して接続されている個々のアンテナ放射器の群が一次放射器(10)として、または寄生アンテナ素子(11、50)として使用されることを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載のアンテナアレイ。
7.前記群の前記給電(21)は、直列給電として形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のアンテナアレイ。
8.前記寄生アンテナ素子(50)は、一端または両端で低反射終端されている直列給電群によってなることを特徴とする、請求項7に記載のアンテナアレイ。
9.前記終端は、給電される高周波電力のほとんどを放射する寄生アンテナ素子(50a)によって行われることを特徴とする、請求項8に記載のアンテナアレイ。
10.前記終端は、終了抵抗器によって行われることを特徴とする、請求項8に記載のアンテナアレイ。
(中略)
15.前記一次放射器(10)および/または前記寄生アンテナ素子(11)のためのアンテナ素子として、
-平面パッチ素子、平面スタブ素子、または平面ダイポール素子、
-重ねて、または並設された2つ以上のパッチ素子からなる結合されたパッチ素子、
-金属化された平面におけるスロット
といったタイプの平面放射器が使用されることを特徴とする、請求項1?14のいずれか1項に記載のアンテナアレイ。
(中略)
18.自動車レーダセンサにおいて使用するための請求項1?17のいずれか1項に記載のアンテナアレイ。)

(サ) 図2?6、9


したがって、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。

「自動車レーダセンサにおいて使用するためのアンテナアレイであって(12ページ20?21行、4ページ21行?25行)、
前記アンテナアレイは、平面アンテナ素子の形の少なくとも1つの一次放射器(10)を備え(10ページ7行?14行、7ページ17行?20行、Fig.6)、
前記少なくとも1つの一次放射器(10)の方位角におけるビームローブを拡幅するために、少なくとも1つの別の寄生の、平面アンテナ素子(11)が前記一次放射器に対して方位角方向に平行に配置されており、前記少なくとも1つの別のアンテナ素子(11)は、自由空間波長の半波長に略等しい最小距離で、電磁界結合によって前記一次放射器(10)に単に寄生的に結合され(10ページ7行?14行、2ページ10行?18行、7ページ17行?20行、7ページ28行?8ページ8行、Fig.6,9)、
直列給電として形成される給電線を介して接続されている個々のアンテナ放射器の群が前記一次放射器(10)として使用され(11ページ1行?7行、7ページ1行?20行、Fig.4a,5a,5b,6)、
直列給電として形成される給電線を介して接続されている個々のアンテナ放射器の群が前記寄生アンテナ素子(11)として使用され(11ページ1行?7行、7ページ1行?20行、Fig.4a,5a,5b,6)、
前記一次放射器(10)および前記寄生アンテナ素子(11)のためのアンテナ素子として、平面パッチ素子が使用され(12ページ2行?9行、7ページ13行?15行)、
直列給電として形成される給電線は、マイクロストリップ線路であり(7ページ1行?5行)、
前記寄生アンテナ素子(11)は、一次放射器(10)の両側に、それぞれ2つの寄生素子(11)が設けられ(10ページ26行?30行、6ページ13行?18行、Fig.3d)、
寄生結合されるアンテナ素子を用いて方位角におけるビームローブの拡幅を達成できるように、アンテナアレイの放射に影響を及ぼすことができる(2ページ13行?18行)、アンテナアレイ。」

イ 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る広角アンテナ及びアレーアンテナを、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の広角アンテナ110及び広角アンテナ110を複数配列して形成されたアレーアンテナ100の構成を示す平面図である。図1(a)はアレーアンテナ100の構成を示す平面図であり、図1(b)は広角アンテナ110の構成を示す平面図である。
【0022】
アレーアンテナ100は、基板120の一方の面(放射面)上に複数の広角アンテナ110を1列に配列し、基板120の他方の面にグランド121を備えて構成されている。図1(a)では、広角アンテナ110が励振方向に6個配列されている。なお、アレーアンテナ100は、基板120の放射面側の外周に沿って導体層122が形成されており、導体層122は、図示しないスルーホール等でグランド121に電気的に接続されている。必ずしも導体層122を設ける必要はないが、基板上での高周波回路と共存時の不要結合回避や、後述のとおり放射パターンの調整といった効果を得るため積極的に用いても良い。
【0023】
図1(b)に示す広角アンテナ110は、1つの給電素子111と2つの無給電素子112とが基板120上に配置されて構成されている。2つの無給電素子112は、給電素子111の励振方向と直交する方向に給電素子111を挟んで配置されている。給電素子111及び無給電素子112は、基板120上にパターン形成されたパッチ素子としており、広角アンテナ110はマイクロストリップパッチアンテナとなっている。但し、パッチアンテナに限定されず、例えば基板上に設けられたダイポールアンテナでもよい。以下では、給電素子111及び無給電素子112の励振方向の長さをパッチ長と称し、励振方向と直交する方向の長さをパッチ幅と称することとする。なお、以下で説明する寸法は、物理的な長さ(物理長)ではなく、すべて電気的な長さ(電気長)を表すものとする。
【0024】
アレーアンテナ100では、広角アンテナ110が2つの無給電素子112を有している。給電素子111を左右から挟むように無給電素子112を配置することで、例えば図2(a)に例示するように、無給電素子112を有さないときの放射パターン50の正面方向の利得のピークを低下させ、放射パターン51のように広角方向の利得を高めることができる。図2は、横軸を放射角度(°)、縦軸を利得(dBi)とする放射パターンを示している。横軸の放射角度は、基板(本実施形態の基板120に相当)の長手方向の垂直な面上において、アレーアンテナの中心から基板に垂直な方向(放射方向の正面)を0°としたときの角度である。利得のピーク値が0dBとなるように規格化した規格化利得の一例を図2(b)に示す。同図に示す放射パターン51‘のように、2つの無給電素子112を配置することで放射パターンを広角化することができる。」

「【0039】
図4に示す放射パターンは、給電素子111と無給電素子112の放射、特に給電素子に対する無給電素子の振幅比及び位相差によって決定される。そこで、この振幅比及び位相差が、無給電素子112のパッチ長Lの変化によりどのように変化するかを、図6を用いて説明する。図6(a)はパッチ長Lに対する振幅比の変化を示し、図6(b)はパッチ長Lに対する位相差の変化を示しており、それぞれシミュレーションにおけるパッチに励振される電流特性結果を用いている。」

【図1】


以上の記載より、甲第4号証には、「給電素子と無給電素子からなるアンテナにおいて、放射特性が給電素子に対する無給電素子の振幅比及び位相差によって決定されること」が記載されている。


ウ 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0040】
図1に示すように、電気絶縁材料(例えば絶縁性合成樹脂)製の平らな基板100の前面上に、いずれも矩形の導電体薄膜である3つのアンテナ素子が104、102、106が一直線上に並んで配置される。中央のアンテナ素子102は、マイクロ波信号源から直接的に(つまり、電線を通じて)マイクロ波電力の給電を受ける給電素子である。給電素子102の両側の2つのアンテナ素子104、106は、直接的な給電は受けない無給電素子である。給電素子102の励振方向は図中の上下方向であり、3つのアンテナ素子104、102、106の配列方向は励振方向と直交する方向である。この実施形態では、一例として、左右の無給電素子104と106は、中央の給電素子102について線対象の位置、すなわち、給電素子102から等距離の位置に配置されており、寸法も同じである。無給電素子104、106の寸法は、給電素子102のそれとほぼ同じとすることができるが、違えることもできる(励振方向の長さは、使用するマイクロ波の波長に応じて最適な値があるので、アレンジできる範囲には狭いが、励振方向に直交する方向の幅は、より広い範囲でアレンジできる)。」

「【0049】
図3に示すように、両方のスイッチ120、124がオンである(つまり、両方の無給電素子104、106が接地されている)場合、電波ビームは点線で示すように、基板100に垂直な方向に放射される。両方のスイッチ120、124がオフである(つまり、両方の無給電素子104、106が接地されていない)場合にも、電波ビームは、一点鎖線で示すように、基板100に垂直な方向に放射される。」

「【0059】
図5に示すように、素子間スペースSを0から拡大していった場合、素子間スペースSが2λg(λgは、マイクロ波の基板上で波長)に達するまで、素子間スペースSにほぼ比例して、位相差Δθ(無給電素子の給電素子に対する遅れ位相差)が180度から360度まで増えていく。これは、実質的には、無給電素子の方が給電素子よりも、360度からΔθを差し引いた値だけ位相が進んでいることを意味する。その進み位相差(360-Δθ)は、素子間スペースSの拡大に伴って180度から0度まで減っていく。」

「【0062】
図6に示すように、位相差Δθ(無給電素子の給電素子に対する遅れ位相差)が180度から360度まで増えていく(実質的には、無給電素子の給電素子に対する進み位相差が180度から0度まで減っていく)と、これにほぼ比例して、放射角度はマイナス(無給電素子とは逆側へ電波ビームが傾く)の範囲で約30度から0度まで変化することが分かる。また、位相差Δθが360度を超えた場合(図6中では、180度未満の範囲に示されている)では、放射角度はプラスになる、つまり、電波ビームは無給電素子の側へ傾く。
【0063】
図5と図6より、素子間スペースSによって、電波ビームが無給電素子の側へ傾くか逆側に傾くか、および、その放射角度の大きさが変化することがわかる。例えば、素子間スペースSが0から2λgの範囲内では、電波ビームは無給電素子とは逆側へ傾き、素子間スペースSが2λgを超えると無給電素子の方へ傾く。」

【図1】

【図3】


以上の記載より、甲第5号証には、「給電素子と無給電素子の素子間スペースにより、給電素子と無給電素子との間の位相差が変化し、放射方向が変わること」が記載されている。


エ 甲第7号証、甲第8号証、甲第3号証の記載事項
(ア) 甲第7号証には、次の事項が記載されている。
「【0027】
図7は、本発明の一実施形態であるマイクロストリップアンテナ400の構成図である。マイクロストリップアンテナ400は、X方向に配置された非励振素子の外側に、λ/4相当のT型モノポール17,27を備えている。17,27を備えることによって、X方向の指向性を強くしつつ、図6の場合に比べ、マイクロストリップアンテナの低背化をすることが可能である。図6に例示の単純なモノポールでは、Z方向に長くなるので、マイクロストリップアンテナを覆うレドームの高さが高くなってしまうからである。また、逆F型アンテナ等の低背型の非励振素子を使用してもよい。

(イ) 甲第8号証には、次の事項が記載されている。
「【0007】
この目的を達成するために本発明が提供するアンテナ装置は、長手方向の両端部に形成された高さ0.1乃至0.25λの側面部を備え、0.5乃至1.5λの幅を有する方形の第1反射板と、長手方向の両端部に形成された高さ0.25乃至0.5λの側面部を備え、1乃至2λの幅を有する方形の第2反射板と、第1反射板の長手方向の中心軸上に第1反射板から0.2乃至0.3λ離隔して配置されたアンテナエレメントと、を備え、第1反射板は、第2反射板の側面部と第1反射板の側面部との間に0.25乃至0.5λの間隙が設けられるように前記第2反射板上に重ねて配置される。
【0008】
このアンテナ装置は、第1反射板と、第2反射板と、アンテナエレメントとを覆うレドームをさらに備えてもよい。
また、このアンテナ装置は、第1反射板の長手方向の中心軸上に第1反射板から0.5?1λ離隔して配置された無給電素子をさらに備えてもよい。
無給電素子は直径0.05λ以下の円形棒状であってもよく、幅0.05λ以下の平板形状であってもよい。
また、第2反射板と無給電素子とは、レドームと一体に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアンテナ装置によれば、放射パターン特性のF/B比を改善するとともに、水平面内で100°以上の広域な半値幅を実現することができる。また、水平面内半値幅を60°?140°の範囲内で自在に可変することができる上、ダイポールアンテナ、クロスダイポールアンテナ、パッチアンテナ等、使用するアンテナの種類にかかわらず同様の効果を得ることが可能である。
さらに、本発明のアンテナ装置は、従来の同様のアンテナ装置と比較して設計自由度が高く、用途に合わせて電気特性のチューニングを容易に行うことができる。」

(ウ) 甲第3号証には、次の事項が記載されている。
「【0007】
本願発明は、上記課題を解決するために、例えば、以下のような発明を開示する。
フェーズドアンテナにおいて、素子の一部のみ給電して(間引き給電)、その給電位相を簡便に決定して、ビームを所望の方向に指向させるアンテナ装置。
以下、説明を加える。
【0008】
給電素子F1とF3と寄生素子Pがある場合、ビームをθだけ振るため、FlとF3の給電電波に次式の位相差φ1-φ3を与える。
【0009】
次に図2を参照する。
Pは給電されていない寄生素子であり、図1のF2と置換している。寄生素子Pがある場合、PはF1とF3からの放射波を受けて、表面に電流を誘起する。この電流は電波を再放射し、アンテナ系全体の利得に寄与する。」


(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と、甲1発明を対比する。
甲1発明の「ビームローブ」は、本件発明1の「放射特性」に相当する。
甲1発明の、「一次放射器(10)」は、「平面アンテナ素子の形」であり、「直列給電として形成される給電線を介して接続されている個々のアンテナ放射器の群」が使用されるものであり、「アンテナ素子として、平面パッチ素子が使用され」、「直列給電として形成される給電線は、マイクロストリップ線路であ」るから、本件発明1の「マイクロストリップ技術を用いた少なくとも一本のアンテナラインからな」る「レーダアンテナ」に対応する。
甲1発明の、「一次放射器(10)のビームローブを拡幅するため」の「少なくとも1つの別の寄生の、平面アンテナ素子(11)」である「寄生アンテナ素子(11)」は、「直列給電として形成される給電線を介して接続されている個々のアンテナ放射器の群」が使用されるものであり、「アンテナ素子として、平面パッチ素子が使用され」、「直列給電として形成される給電線は、マイクロストリップ線路であ」り、「一次放射器に対して方位角方向に平行に配置され」、「一次放射器(10)の両側に、それぞれ2つの寄生素子(11)が設けら」れている。
したがって、甲1発明の「寄生アンテナ素子(11)」は、本件発明1の「マイクロストリップ技術を用いたアンテナラインであり、かつ二本平行に並んで配列されて」いる、「レーダアンテナの放射特性に影響を与える複数の無給電素子」に対応する。
甲1発明の「アンテナアレイ」は、「一次放射器(10)」と「寄生アンテナ素子(11)」を備え、「自動車レーダセンサにおいて使用するための」ものであるから、本件発明1の「レーダシステム」に対応する。

以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で、一致ないし相違する。
<一致点>
「レーダアンテナと、
前記レーダアンテナの放射特性に影響を与える複数の無給電素子を備え、
前記レーダアンテナは、マイクロストリップ技術を用いた少なくとも一本のアンテナラインからなり、
前記複数の無給電素子は、マイクロストリップ技術を用いたアンテナラインであり、かつ二本平行に並んで配列されている、
レーダシステム。」

<相違点1>
本件発明1は、「前記放射特性は、前記レーダアンテナに対する前記複数の無給電素子の空間的位置、および前記レーダアンテナと前記複数の無給電素子から放射されるエネルギーの位相位置に依存している」ことが特定されているの対して、甲1発明は、当該事項について、特定されていない点。

<相違点2>
本件発明1は、「前記レーダアンテナに対する前記複数の無給電素子の配置は、アジマス方向における前記放射特性を絞るように定められている」のに対して、甲1発明は、「少なくとも1つの別の寄生の、平面アンテナ素子(11)が前記一次放射器に対して方位角方向に平行に配置されており、前記少なくとも1つの別のアンテナ素子(11)は、自由空間波長の半波長に略等しい最小距離で、電磁界結合によって前記一次放射器(10)に単に寄生的に結合され」「方位角におけるビームローブを拡幅する」点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
レーダアンテナに対する複数の無給電素子の配置を、アジマス方向における放射特性を絞るように定めることは、取消理由で引用した甲第4号証、甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証、及び甲第3号証に、開示も示唆もされておらず、当業者に自明な事項でもない。
また、後述(第6の2)する異議申立人が提出した証拠にも、レーダアンテナに対する複数の無給電素子の配置を、アジマス方向における放射特性を絞るように定めることは、開示も示唆もされていない。

したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が容易になしえたものではない。

イ 本件発明4-5、7-11及び13について
本件発明4-5、7-11及び13は、いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであり、甲1発明とは、上記相違点1,2がある。
したがって、本件発明4-5、7-11及び13は、上記アと同様に、当業者が容易になしえたものではない。


2 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
(1)上記第4の2(1)で指摘した事項は、訂正事項1に係る訂正により、本件発明1、4-5、7-11及び13は、「レーダアンテナ(1)と、・・・レーダシステム。」に訂正され、明確な記載となった。
(2)上記第4の2(2)で指摘した事項は、訂正事項8に係る訂正により請求項6が削除され、解消した。
(3)上記第4の2(3)で指摘した事項は、訂正事項10に係る訂正により請求項8の「好ましくは20GHzから100GHzの周波数範囲」の記載が削除され、解消した。
(4)上記第4の2(4)で指摘した事項は、訂正事項12に係る訂正により請求項9の「好ましくは」の記載が削除され、解消した。
(5)上記第4の2(5)で指摘した事項は、訂正事項16に係る訂正により請求項12が削除され、解消した。


3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)上記第4の3(1)で指摘した事項は、訂正事項2に係る訂正により、請求項1の「φ3」が削除され、解消した。
(2)上記第4の3(2)で指摘した事項は、訂正事項8に係る訂正により請求項6が削除され、解消した。


4 小括
よって、取消理由で通知した理由によっては、本件発明1、4-5、7-11及び13に係る特許を取り消すことはできない。


第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由の概要
(1)請求項1乃至6及び8乃至13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、新規性を有しないものである。
(2)請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第6号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有しないものである。

2 異議申立人が提出した証拠
甲第1号証 国際公開第2008/028739号
甲第2号証 特開2001-111335号公報
甲第3号証 特開2009-200790号公報
甲第4号証 特開2013-168875号公報
甲第5号証 特開2007-37077号公報
甲第6号証 特開平9-246852号公報
甲第7号証 特開2009-246460号公報
甲第8号証 特開2009-130451号公報
甲第9号証 拒絶理由通知書
甲第10号証 意見書

3 当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号(新規性)について
甲第1号証に記載された発明は、上記第5の1(1)アに記載したとおりである。
そして、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、上記第5の1(2)で対比したように、相違点1,2に係る構成で相違するものである。
また、本件発明4-5、8-11及び13は、いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであり、甲1発明とは、上記相違点1,2がある。

したがって、本件発明1、4-5、8-11及び13は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。

(2)特許法第29条第2項(進歩性)について
訂正前の請求項3で特定される事項は、本件訂正請求により、実質的に本件発明1の上記相違点2に係る構成である。
異議申立人は、特許異議申立書で、
「前述したおり、例えば甲1(7頁上から17行?18行)では
「複数のアンテナ列が併設される場合、通常、アパーチャが拡大することからビームローブが方位角方向に幅狭になる。」
と記載されており、複数のアンテナ列を並列に配置することで、通常、ビームローブが方位角方向=アジマス方向に幅狭になり、アジマス方向における放射特性が絞られることが開示されている。
当該記載は甲1における「本発明」には該当しないかもしれないが、甲1において「方位角方向に幅狭になる」ことが開示されているのであるから、甲1を目の当たりにした当業者において、複数の無給電素子をアジマス方向における放射特性を絞るように配置することは、当業者であれば容易である。」(特許異議申立書37ページ)
旨、主張する。
当該記載は、上記第5の1(1)ア(オ)の摘記及び(サ)図2にあるように、「ビームローブが放射角方向に幅狭になる」ためには各アンテナ列が、いずれも給電される必要があるから、「別の寄生の、平面アンテナ素子(11)」を「前記一次放射器に対して放射角方向に平行に配置」したものではない。
そして、甲1発明は、一次放射器(10)の方位角におけるビームローブを拡幅するために」、「別の寄生の、平面アンテナ素子(11)が前記一次放射器に対して方位角方向に平行に配置」し、「前記少なくとも1つの別のアンテナ素子(11)は、自由空間波長の半波長に略等しい最小距離で、電磁界結合によって前記一次放射器(10)に単に寄生的に結合」させるものであるから、別の寄生の、平面アンテナ素子(11)を、アジマス方向における放射特性を絞るように定めて、配置することは、阻害要因があるといえる。

4 小括
よって、取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について検討しても、本件発明1、4-5、7-11及び13に係る特許を取り消すことはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、本件請求項1、4-5、7-11及び13に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1、4-5、7-11及び13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2、3、6及び12に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、請求項2、3、6及び12に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダアンテナ(1)と、
前記レーダアンテナ(1)の放射特性に影響を与える複数の無給電素子(2)を備え、
前記レーダアンテナ(1)は、マイクロストリップ技術を用いた少なくとも一本のアンテナラインからなり、
前記複数の無給電素子(2)は、マイクロストリップ技術を用いたアンテナラインであり、かつ二本平行に並んで配列されており、
前記放射特性は、前記レーダアンテナ(1)に対する前記複数の無給電素子(2)の空間的位置、および前記レーダアンテナ(1)と前記複数の無給電素子(2)から放射されるエネルギーの位相位置(φ1、φ2)に依存しており、
前記レーダアンテナ(1)に対する前記複数の無給電素子(2)の配置は、アジマス方向における前記放射特性を絞るように定められている、
レーダシステム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記複数の無給電素子(2)は、当該無給電素子(2)同士の相互結合、および前記レーダアンテナ(1)との相互結合の少なくとも一方により、前記放射特性を変化させる、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記複数の無給電素子(2)は、影響を受ける前記レーダアンテナ(1)の長手軸の両側の少なくとも一方において平行に配置されている、
請求項1または4に記載のレーダシステム。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記レーダアンテナ(1)および前記複数の無給電素子(2)は、レドームで覆われている、
請求項1、4、および5のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項8】
前記レーダアンテナ(1)と前記複数の無給電素子(2)は、1MHzから200GHzの周波数範囲で使用される、
請求項1、4、5、および7のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項9】
前記レーダアンテナ(1)と前記複数の無給電素子(2)は、70GHzから80GHzの周波数範囲で使用される、
請求項8に記載のレーダシステム。
【請求項10】
前記レーダアンテナ(1)は、送信アンテナ、受信アンテナ、あるいは送受信アンテナとして使用されうる、
請求項1、4、5、および7から9のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項11】
前記レーダアンテナ(1)は、物体の位置と速度の少なくとも一方を特定するレーダシステムの内部で使用されうる、
請求項1、4、5、および7から10のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
請求項1、4、5、および7から11のいずれか一項に記載のレーダシステムを用いて複数の無給電素子(2)によりレーダアンテナ(1)の放射特性に影響を与える方法であって、
a)信号源(0)から送信アンテナ(1)へエネルギーを伝播させるステップ(11)と、
b)前記送信アンテナ(1)から空間へ、位相位置φ1を有するエネルギーを放射するステップ(12)と、
c)前記送信アンテナ(1)から放射されたエネルギーの一部を、前記複数の無給電素子(2)に衝突させるステップ(13)と、
d)位相位置φ2を有するエネルギーの一部を、前記複数の無給電素子(2)で反射して空間へ放射するステップ(14)と、
e)エネルギーの一部を前記複数の無給電素子(2)で受け取るステップ(15)と、
f)エネルギーの一部を前記複数の無給電素子(2)から前記送信アンテナ(1)へ戻し反射するステップ(16)と、
を含んでおり、
前記送信アンテナ(1)の放射特性は、前記ステップ(14)で前記複数の無給電素子(2)から放射されたエネルギーによって影響を受け、前記ステップ(12)で前記送信アンテナ(1)から放射されたエネルギーは、前記ステップ(14)で前記複数の無給電素子(2)から放射されたエネルギーと重畳する、
方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-17 
出願番号 特願2017-528474(P2017-528474)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H01Q)
P 1 651・ 537- YAA (H01Q)
P 1 651・ 121- YAA (H01Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 当秀  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 吉田 隆之
衣鳩 文彦
登録日 2019-10-11 
登録番号 特許第6600686号(P6600686)
権利者 アスティックス ゲーエムベーハー
発明の名称 レーダセンサ、およびレーダアンテナの放射特性に影響を与えることに適した方法  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  
代理人 特許業務法人信栄特許事務所  
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