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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1376745
異議申立番号 異議2019-701041  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-19 
確定日 2021-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6533001号発明「高リコピンケチャップの製造方法、高リコピンケチャップ、及びリコピンの高濃度化と粘度の適正化を両立する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6533001号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕、〔6?11〕、12、13について訂正することを認める。 特許第6533001号の請求項2?5、7?13に係る特許を維持する。 特許第6533001号の請求項1、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6533001号の請求項1?13に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年12月7日(優先権主張 平成30年6月15日 日本国)に特許出願されたものであって、令和1年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月19日にその特許公報が発行され、その後、令和1年12月19日に特許異議申立人加藤 純子(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 7月13日付け:取消理由通知
同年 9月16日 :意見書の提出(特許権者)
同年10月13日 :上申書の提出(特許異議申立人)
同年12月18日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和3年 2月12日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 4月 7日 :上申書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の適否についての判断
令和3年2月12日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

1 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について「請求項1の製造方法であって、前記ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。」を、「リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップの製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
前記調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と前記調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
前記ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。」に訂正する(下線は、訂正箇所を示す。以下、同様である。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3について「請求項1又は2のケチャップの製造方法であって」を、「請求項2のケチャップの製造方法であって」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4について「請求項1?3の何れかのケチャップの製造方法であって」を、「請求項2又は3のケチャップの製造方法であって」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5について「請求項1?4の何れかのケチャップの製造方法であって」を、「請求項2?4の何れかのケチャップの製造方法であって」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7について「請求項6のケチャップであって、当該ケチャップをB型粘度計で測定したときの粘度は、15,000?20,000mPa・sである。」を、「リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップであって、
含有するのは、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
当該ケチャップが含有するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と当該ケチャップが含有するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップをB型粘度計で測定したときの粘度は、15,000?20,000mPa・sである。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8について「請求項6又は7のケチャップであって」を、「請求項7のケチャップであって」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9について「請求項6?8の何れかのケチャップであって」を、「請求項7又は8のケチャップであって」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10について「請求項6?9の何れかのケチャップであって」を、「請求項7?9の何れかのケチャップであって」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11について「請求項6?10の何れかのケチャップであって」を、「請求項7?10の何れかのケチャップであって」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12について「ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化を両立する方法であって、
・・・・・・・
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量である。」を、「ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化を両立する方法であって、
・・・・・・・
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13について「ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化、及び離しょうの増大抑制をあわせて可能にする方法であって、
・・・・・・・
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量である。」を、「ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化、及び離しょうの増大抑制をあわせて可能にする方法であって、
・・・・・・・
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。」に訂正する。

なお、訂正前の請求項1?5について、請求項2?5は請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?5に対応する訂正後の請求項1?5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
同様に、訂正前の請求項6?11について、請求項7?11は請求項6を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項6によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項6?11に対応する訂正後の請求項6?11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正後の請求項3と訂正後の請求項3の記載を引用する訂正後の請求項4及び5、並びに、訂正後の請求項8と訂正後の請求項8の記載を引用する訂正後の請求項9乃至11については、当該訂正が認められる場合、それぞれ、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであり、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1を引用しないものとし、訂正前の請求項1を引用する請求項2について、独立形式請求項へ改めるための訂正をするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 新規事項について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを独立形式請求項へ改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項2は、上記アで示したとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、発明のカテゴリーや対象などを変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3?5について
ア 訂正の目的について
訂正事項3?5は、訂正前の請求項3?5が引用するそれぞれ「請求項1又は2の」、「請求項1?3の何れかの」及び「請求項1?4の何れかの」から請求項1を削除し、「請求項2の」、「請求項2又は3の」及び「請求項2?4の何れかの」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
訂正事項3?5は、引用する請求項をそれぞれ「請求項2の」、「請求項2又は3の」及び「請求項2?4の何れかの」に限定する訂正であり、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項3?5は、引用する請求項をそれぞれ「請求項2の」、「請求項2又は3の」及び「請求項2?4の何れかの」に限定する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
訂正事項6は、請求項6を削除するものであり、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項6は、請求項6を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項7が訂正前の請求項6を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項6を引用しないものとし、訂正前の請求項6を引用する請求項7について、独立形式請求項へ改めるための訂正をするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 新規事項について
訂正事項7は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項6を引用する記載であったものを独立形式請求項へ改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項7は、上記アで示したとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、発明のカテゴリーや対象などを変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項8?11について
ア 訂正の目的について
訂正事項8?11は、訂正前の請求項8?11が引用するそれぞれ「請求項6又は7の」、「請求項6?8の何れかの」、「請求項6?9の何れかの」及び「請求項6?10の何れかの」から請求項6を削除し、「請求項7の」、「請求項7又は8の」、「請求項7?9の何れかの」及び「請求項7?10の何れかの」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
訂正事項8?11は、引用する請求項をそれぞれ「請求項7の」、「請求項7又は8の」、「請求項7?9の何れかの」及び「請求項7?10の何れかの」に限定する訂正であり、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項3?5は、引用する請求項をそれぞれ「請求項7の」、「請求項7又は8の」、「請求項7?9の何れかの」及び「請求項7?10の何れかの」に限定する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項12及び13について
訂正事項12及び13は、本件訂正前の請求項12及び13に係る発明の発明特定事項に、さらに「当該ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである」ことを限定するものであるから、それぞれ特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項について
訂正事項12及び13は、願書に添付した本件特許明細書段落【0042】の粘度の記載、段落【0046】?【0067】の実施例における評価時のケチャップの粘度として「15,000?20,000mPa・sである」ことが示されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記アで示したとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、発明のカテゴリーや対象などを変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、訂正後の請求項〔1?5〕、〔6?11〕、12、13について訂正することを認める。

第3 特許請求の範囲の記載
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項2?5、7?13に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項2?5、7?13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明2」?「本件発明5」、「本件発明7」?「本件発明13」といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップの製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
前記調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と前記調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
前記ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。
【請求項3】
請求項2のケチャップの製造方法であって、
当該ケチャップに調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と当該ケチャップに調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
300≦[A]+[B]≦500
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量である。
【請求項4】
請求項2又は3のケチャップの製造方法であって、
当該ケチャップに調合されるコールドブレイクトマト加工品に含まれる1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。
【請求項5】
請求項2?4の何れかのケチャップの製造方法であって、
当該ケチャップに調合されるホットブレイクトマト加工品に含まれる1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップであって、
含有するのは、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
当該ケチャップが含有するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と当該ケチャップが含有するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップをB型粘度計で測定したときの粘度は、15,000?20,000mPa・sである。
【請求項8】
請求項7のケチャップであって、
当該ケチャップが含有するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と当該ケチャップが含有するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
300≦[A]+[B]≦500
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量である。
【請求項9】
請求項7又は8のケチャップであって、
当該ケチャップに調合されるコールドブレイクトマト加工品に含まれる1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。
【請求項10】
請求項7?9の何れかのケチャップであって、
当該ケチャップに調合されるホットブレイクトマト加工品に含まれる1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。
【請求項11】
請求項7?10の何れかのケチャップであって、
当該ケチャップは、トマト加工品品質表示基準により規定される、トマトケチャップである。
【請求項12】
ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化を両立する方法であって、
それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
前記調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と前記調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。
【請求項13】
ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化、及び離しょうの増大抑制をあわせて可能にする方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、前記調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と前記調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.806
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。」

第4 当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由
以下に示す当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由の対象となる本件発明は、上記第3の訂正後の本件発明に整理し直したものである。

1 当審が令和2年7月13日付け及び令和2年12月18日付けで通知した取消理由
理由1(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由1」という。)。

特許請求の範囲における、本件発明2、7、12及び13に記載された「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」という用語は、その定義における「コールドブレイク処理」及び「ホットブレイク処理」が不明確であって、本件特許の特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、明確性要件を満たさない。
前記本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、前記本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様に、明確性要件を満たさない。

理由2(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記のア?エの点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由2」という。)。

ア 本件発明2、7、12及び13には、単に「コールドブレイクトマト加工品」、「ホットブレイクトマト加工品」と特定するのみで、これらの「コールドブレイクトマト加工品」、「ホットブレイクトマト加工品」のトマトの種類や加工条件を何ら特定しておらず、当業者は、本件特許明細書の実施例に記載された市販の「コールドブレイクトマト加工品」、「ホットブレイクトマト加工品」以外の「コールドブレイクトマト加工品」、「ホットブレイクトマト加工品」と呼ばれるあらゆるトマト加工品についてまで、本件特許の発明が解決しようとする課題を、当業者が解決できると認識することはできず、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる根拠を見いだすこともできない。
したがって、本件発明2、7、12及び13は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
また、本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様である。

イ 本件発明3及び8は、トマト加工品の配合量だけでなく配合割合も全体の粘度について影響を与えるものであるから、本件発明3及び8で特定している「300≦[A]+[B]≦500」のすべての範囲について、発明の課題を解決できると認識することはできず、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる根拠を見いだすこともできない。
したがって、本件発明3及び8は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本件発明3及び8を直接あるいは間接的に引用する本件発明4?5、本件発明9?11についても同様である。

ウ 本件発明2?5、7?13では、トマト加工品以外の配合成分について、何ら記載されておらず、発明の課題を解決できると認識することはできず、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる根拠を見いだすこともできない。
したがって、本件発明2?5、7?13は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

エ 本件発明2、7、12に規定する0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946の範囲には、本件特許明細書の実施例1?3の範囲に含まれない値を包含していることから、発明の課題を解決できないと認識することはできず、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる根拠を見いだすこともできない。
したがって、本件発明2、7、12は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
また、本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様である。

なお、令和2年12月18日付けで通知した取消理由(審決の予告)は、取消理由2(サポート要件)のみである。

2 特許異議申立人が申し立てた理由
理由1(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。(以下、「申立理由1」という)。

特許請求の範囲における、本件発明2、7、12及び13に記載された「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」という用語は、その定義における「コールドブレイク処理」及び「ホットブレイク処理」が不明確であって、本件特許の特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、明確性要件を満たさない。
前記本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、前記本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様に、明確性要件を満たさない。

理由2(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記のア?エの点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。(以下、「申立理由2」という)。

ア 本件発明2、7、12及び13には、単に「コールドブレイクトマト加工品」、「ホットブレイクトマト加工品」と特定するのみで、これらの「コールドブレイクトマト加工品」、「ホットブレイクトマト加工品」のトマトの種類や加工条件を何ら特定しておらず、当業者は、本件特許明細書の実施例に記載された市販の「コールドブレイクトマト加工品」、「ホットブレイクトマト加工品」以外の「コールドブレイクトマト加工品」、「ホットブレイクトマト加工品」と呼ばれるあらゆるトマト加工品についてまで、本件特許の発明が解決しようとする課題を、当業者が解決できると認識することはできず、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる根拠を見いだすこともできない。
したがって、本件発明2、7、12及び13は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
また、本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様である。

イ 本件発明3及び8は、トマト加工品の配合量だけでなく配合割合も全体の粘度について影響を与えるものであるから、本件発明3及び8で特定している「300≦[A]+[B]≦500」のすべての範囲について、発明の課題を解決できると認識することはできず、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる根拠を見いだすこともできない。
したがって、本件発明3及び8は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本件発明3及び8を直接あるいは間接的に引用する本件発明4?5、本件発明9?11についても同様である。

ウ 本件発明2?5、7?13では、トマト加工品以外の配合成分について、何ら記載されておらず、発明の課題を解決できると認識することはできず、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる根拠を見いだすこともできない。
したがって、本件発明2?5、7?13は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

エ 本件発明2、7、12に規定する0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946の範囲には、本件特許明細書の実施例1?3の範囲に含まれない値を包含していることから、発明の課題を解決できないと認識することはできず、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる根拠を見いだすこともできない。
したがって、本件発明2、7、12は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
また、本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様である。

理由3(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、下記のア?イの点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。(以下、「申立理由3」という)。

ア 本件発明には、「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」に関する規定が不明確であり、第三者においてこれらの構成を充足するか否かを判断することは不可能というほかないから、第三者において過度の試行錯誤を要することなく本件発明を実施できないことは明らかであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとは到底認められない。

イ 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落【0053】において市販のホットブレイク処理されたトマトペーストと市販のコールドブレイク処理されたトマトペーストについて、Brix値、リコピン濃度、Brix1.0あたりのリコピン濃度がそれぞれ記載されているのみで、具体的にどのようなトマトで、どのような加熱条件ないし粉砕条件で処理されたものを用いるのか、全く明らかにされておらず、当業者といえども、本件発明の実施に過度の試行錯誤を要することは明らかである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとは到底認められない。

理由4(進歩性)本件発明2?5、7?13は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された刊行物である甲第1号証を主引例として、甲第2?3、9?12号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2?5、7?13は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである(以下、「申立理由4」という。)。

<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2015-146800号公報
甲第2号証:米国特許公開公報第2006/0110523号明細書
甲第3号証:米国特許第5902616号明細書
甲第9号証:特開平7-51020号公報
甲第10号証:特開2018-74975号公報
甲第11号証:トマト加工品の日本農林規格、最終改正平成16年10月29日農水告1968号
甲第12号証:特表平11-511331号公報

なお、上記1の取消理由1(明確性)及び取消理由2(サポート要件)は、上記2の申立理由1(明確性)及び申立理由2(サポート要件)と同趣旨である。

第5 当審の判断
1 当審が令和2年7月13日付け及び令和2年12月18日付けで通知した取消理由について
(1)取消理由1についての判断
ア 本件特許の本件発明2、7、12及び13に記載された「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」という用語について、本件特許明細書の段落【0020】?【0021】には、以下の記載がある。

「【0020】
<ホットブレイク処理とコールドブレイク処理>
トマト加工品を製造する上で、トマトを破砕した後、搾汁前に、予熱工程を経る。その目的は、トマト組織を破壊軟化させ、搾汁を容易にするためである。この工程には、ホットブレイク処理とコールドブレイク処理がある。ホットブレイク処理は破砕後、予熱工程において70℃以上に加熱するか、トマトそのままを加熱後破砕することによって、トマト細胞破壊と同時に働くペクチナーゼによる、トマト中ペクチンの分解を抑制するため、酵素失活を行う方法である。コールドブレイク処理は、破砕後加熱しないか、しても70℃未満の比較的低温で行なう方法であって、トマト中のペクチナーゼが働き、ペクチンが分解される。上記作用により、ホットブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が高く、離しょうが少ないという特徴がある。一方、コールドブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が低く、離しょうが多いという特徴がある。
【0021】
本明細書において、ホットブレイク処理工程を経て製造されたトマト加工品のことを、「ホットブレイクトマト加工品」、又は「HBトマト加工品」という。同様に、コールドブレイク処理工程を経て製造されたトマト加工品のことを、「コールドブレイクトマト加工品」、又は「CBトマト加工品」という。前記「トマト加工品」の部分を「トマト搾汁」、「トマト濃縮汁」、「トマトペースト」、「トマトピューレ」、又は「トマトパルプ」と置き換えて表現した場合も同様の意味とする。」

イ 上記本件特許明細書の段落【0021】には、「ホットブレイク処理工程を経て製造されたトマト加工品のことを、「ホットブレイクトマト加工品」、又は「HBトマト加工品」という。同様に、コールドブレイク処理工程を経て製造されたトマト加工品のことを、「コールドブレイクトマト加工品」、又は「CBトマト加工品」という。」とそれぞれ定義している。
また、本件特許明細書の段落【0020】には、「トマト加工品を製造する上で、トマトを破砕した後、搾汁前に、予熱工程を経る。その目的は、トマト組織を破壊軟化させ、搾汁を容易にするためである。この工程には、ホットブレイク処理とコールドブレイク処理がある」と記載され、「ホットブレイク処理」は、「破砕後、予熱工程において70℃以上に加熱するか、トマトそのままを加熱後破砕すること」であり、その処理による作用として「トマト細胞破壊と同時に働くペクチナーゼによる、トマト中ペクチンの分解を抑制するため、酵素失活を行う」ことであり、「コールドブレイク処理」は、「破砕後加熱しないか、しても70℃未満の比較的低温で行なう」ことであり、その処理による作用として「トマト中のペクチナーゼが働き、ペクチンが分解される」ことであることが記載されている。そして、これらの作用により、「ホットブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が高く、離しょうが少ないという特徴がある」こと、「コールドブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が低く、離しょうが多いという特徴がある」ことがそれぞれ記載されている。

ウ 他方、当該技術分野では、上記の「ホットブレイク処理」及び「コールドブレイク処理」に関して、例えば、甲第6号証(FENCO Food Machinery s.r.lのホームページ、「トマトペースト製造装置」の欄、検索日2019年12月17日(著作権2015年FENCO Food Machinery s.r.l)、<URL,https://www.fenco.it/tomato-processing-lines/equipment-for-tomato-paste-production/>)(なお、訳文は当審による。)には、「果肉は、コールドブレイク処理向けには65-75℃に、ホットブレイク処理向けには85-95℃に予熱される」ことが、甲第7号証("TOMATO PRODUCTION, PROCESSING AND QUALITY EVALUATION", THE AVI PUBLISHING COMPANY, INC., 1974, p.164)には、「ホットブレイク手順では、トマトに与えられた予熱により酵素が完全に破壊され、トマトの成分(特にペクチン)が酵素変化から保護される。空気の混入を最小限に抑えた状態でトマトは粉砕され、220°F(104.4℃に相当)まで急速に加熱される」(164頁下から二段落目の第一?二文)こと、「コールドブレイク手順では、トマトは150°F(65.5℃に相当)以下の温度で破砕される」(164頁最終段落の第一文前半部分)ことが、それぞれ記載され、ホットブレイク処理は、トマト中に含まれる酵素を失活させる処理であると理解することができる。
また、例えば、甲第5号証("Thermal Inactivation of Pectin Methylesterase in Tomato Homogenate", VIII International Symposium on the Processing Tomato, 2003, International Society for Horticultural Science, pp.385-390)(なお、訳文は当審による。)には、図1にRoma品種由来のトマトPME(ペクチンメチルエステラーゼ)の熱不活性化について記載されており、そこには、71.8℃、73.8℃、75.8でその酵素活性の失活度合いは大きく異なり、また、69.8℃で7?13分加熱処理した場合、71.8℃で1?3分加熱処理した場合よりも、ペクチンメチルエステラーゼの失活度合いが大きいことが示されており、このことは、70℃前後の温度とその処理時間が、トマトに含まれるペクチナーゼ活性に影響を及ぼしていると理解することができる。
加えて、乙第1号証(「最新 果汁・果実飲料事典」、株式会社朝倉書店、1997年10月1日発行、238頁?241頁)には、「トマトペーストには大きく分類するとコールドブレイク(CB)とホットブレイク(HB)の2種類がある.CBは,性状としては表面が粗く,外観は赤味が強いが粘度は低くトマトソースやスープなどの調理食品に主に用いられる.HBは表面がなめらかで粘度が高く,ペクチン含量が多くトマトケチャップの主原料となっている.」こと、CBが「破砕後、65?75℃の温度で加熱された後搾汁され,真空濃縮機で所定の濃度まで濃縮される.ペクチナーゼが一部作用するため粘度は低く,トマトペーストの外観は滑らかさに欠ける.」こと、HBが「従来は破砕後の加熱温度は90?95℃が主に採用されていたが,最近ではスーパーホットブレイクと呼ばれ100℃以上の加熱が可能な装置も登場している.」こと、乙第2号証(「トマトの荷受けから加工まで」、農業機械学会誌、1980年、第41巻、第4号、671頁?678頁)には、「この工程には,ホットブレーク法とコールドブレーク法があり,前者は,破砕後直ちに80℃程度に加熱するか,まるのまゝのトマトを加熱後破砕することによって,トマト中のペクチンが,トマト細胞破壊と同時に働らくペクチナーゼによって分解されないように酵素失活を行う方法である。後者は,破砕後加熱しないか,しても60℃程度の比較的低温で行ない,熱によるリコピンの分解を少なくする方法がある」こと、乙第3号証(特表2009-538895号公報)には、「【0015】・・・・・トマトペーストは「ホットブレイク」法よりも「コールドブレイク」法によって製造されたものであるのが好ましい。「ホットブレイク」および「コールドブレイク」という用語はトマト加工の分野ではよく知られており、商業的に入手可能なトマトペーストは一般にホットブレイクペーストかコールドブレイクペーストのどちらかとして売られている。コールドブレイクペーストは、トマトのホモジネーションに続いてトマトが約60℃を越えない温度まで加熱される熱処理工程を含む方法によって調製することができ、対照的に、ホットブレイクペーストはホモジナイズされたトマトが約95℃の温度で熱処理される(例えばAnthon et al., J. Agric. Food Chem. 2002, 50, 6153-6159を参照)。」こと、がそれぞれ記載されている。
これらを総合すると、「ホットブレイク処理」及び「コールドブレイク処理」は、その処理方法や得られたトマトペーストの性状等を含めて当業者によく知られた技術的事項といえるものである。特に、「ホットブレイク処理」及び「コールドブレイク処理」の差は、トマトに含まれるペクチナーゼの酵素活性を有するか、失活させるであり、その際、当該ペクチナーゼの酵素活性は65?75℃等の70℃前後の温度範囲で変化すること、また、当然の前提として、ペクチナーゼの酵素活性を考慮して処理する時間を制御することも含めて、上記のとおり当業者によく知られた技術的事項といえる。

エ そうすると、上記イでは、70℃を境に「ホットブレイク処理」及び「コールドブレイク処理」の違いを説明しているが、上記ウで示したように当該技術分野において「ホットブレイク処理」及び「コールドブレイク処理」が当業者によく知られた技術的事項であり、上記イの記載と、上記ウに示した技術的事項は矛盾していない。
そして、前記特許請求の範囲における、本件発明2、7、12及び13に記載された「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」という用語は、トマトを「ホットブレイク処理」及び「コールドブレイク処理」したトマトの加工品であると当業者は理解でき、本件特許の特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえないから、明確であるといえる。
また、前記本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、前記本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様に、明確であるといえる。

オ 特許異議申立人は、令和2年10月13日付け上申書において、ホットブレイクとコールドブレイクは温度のみで区別することができず、加熱時間がペクチナーゼの活性に影響を及ぼしていることは明らかであるから、ホットブレイクとコールドブレイクを明確に識別することができないから、「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」という用語は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であると主張している。
しかしながら、上記イ?エにおいて検討したとおり、「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」という用語は、明確であるから、上記特許異議申立人の主張は、採用することができない。

カ まとめ
したがって、本件発明2?5、7?13は、明確に記載されたものであり、取消理由1によっては、本件発明2?5、7?13に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2についての判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
(ア)発明が解決しようとする課題について
発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明、特に、段落【0005】?【0007】の記載、発明を実施するための形態及び実施例等の記載から、リコピンの高濃度化と粘度適正化の両立する、本件発明2?5に記載のケチャップの製造方法、本件発明7?11に記載のケチャップ、本件発明12に記載のケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化を両立する方法、及び本件発明13に記載のケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化、及び離しょうの増大抑制をあわせて可能にする方法を、それぞれ提供することにあると認められる。

(イ)発明を実施するための形態について
a トマト加工品について
本件特許明細書の段落【0016】?【0019】には、以下の記載がある。
「【0016】
<トマト加工品>
本発明の実施に係るケチャップ(以下、「本ケチャップ」という。)の製造において、トマト加工品とは、加工されたトマトであり、例示すると、ダイストマト、トマト搾汁、トマト濃縮汁、トマトパルプ等である。
【0017】
トマト搾汁とは、トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁、及び、これを濃縮したトマト濃縮汁を希釈還元したものを意味する。トマト搾汁は、トマト加工品品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)で指定されたトマトジュースを含む概念であり、トマト濃縮汁は、トマト加工品品質表示基準で指定されたトマトピューレ、トマトペースト及び濃縮トマト等を含む概念である。これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。
【0018】
また、本明細書において、トマト搾汁、及びトマト濃縮汁とは、除パルプトマト汁を含む概念であり、除パルプトマト汁とは、トマト搾汁に含まれる水不溶性固形分(トマトパルプ)の一部又は全部を除去したもの、及びこれを濃縮したもの、並びに、トマト濃縮汁に含まれる水不溶性固形分(トマトパルプ)の一部又は全部を除去したもの、及びこれらを濃縮又は希釈還元したものである。
【0019】
本明細書において、トマトパルプとは、トマト搾汁、又はトマト濃縮汁から、固液分離を行う方法により、水溶性成分の一部又は全部を除去することで得られたものである。当該固液分離の方法は、既知の方法で構わないが、遠心分離による方法であることが好ましい。」

b ホットブレイク処理とコールドブレイク処理について
本件特許明細書の段落【0020】?【0021】には、以下の記載がある。
「【0020】
<ホットブレイク処理とコールドブレイク処理>
トマト加工品を製造する上で、トマトを破砕した後、搾汁前に、予熱工程を経る。その目的は、トマト組織を破壊軟化させ、搾汁を容易にするためである。この工程には、ホットブレイク処理とコールドブレイク処理がある。ホットブレイク処理は破砕後、予熱工程において70℃以上に加熱するか、トマトそのままを加熱後破砕することによって、トマト細胞破壊と同時に働くペクチナーゼによる、トマト中ペクチンの分解を抑制するため、酵素失活を行う方法である。コールドブレイク処理は、破砕後加熱しないか、しても70℃未満の比較的低温で行なう方法であって、トマト中のペクチナーゼが働き、ペクチンが分解される。上記作用により、ホットブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が高く、離しょうが少ないという特徴がある。一方、コールドブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が低く、離しょうが多いという特徴がある。
【0021】
本明細書において、ホットブレイク処理工程を経て製造されたトマト加工品のことを、「ホットブレイクトマト加工品」、又は「HBトマト加工品」という。同様に、コールドブレイク処理工程を経て製造されたトマト加工品のことを、「コールドブレイクトマト加工品」、又は「CBトマト加工品」という。前記「トマト加工品」の部分を「トマト搾汁」、「トマト濃縮汁」、「トマトペースト」、「トマトピューレ」、又は「トマトパルプ」と置き換えて表現した場合も同様の意味とする。」

c トマト量について
本件特許明細書の段落【0023】?【0026】には、以下の記載がある。
「【0023】
<トマト量>
本発明の実施の形態に係るトマト量とは、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合における、トマト加工品の重量である。具体的には、100LのケチャップにおいてBrix27.0のトマト加工品が10kg使用されていた場合、10kg×27.0/4.5=60kgより、トマト量で60kgが100Lのケチャップに含まれることとする。
【0024】
ケチャップに含まれるコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)、及びケチャップに含まれるホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)は特に限定されないが、[A]と[B]の関係が300≦[A]+[B]≦500であることが好ましい。より好ましくは、350≦[A]+[B]≦400、さらに好ましくは、360≦[A]+[B]≦380である。[A]+[B]の値が300より小さい場合、リコピン量が25mg%以下となり得る。また、[A]+[B]の値が大きくなりすぎると、粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0025】
また、[A]と[B]の関係が0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946であることが好ましい。[A]/([A]+[B])は、ケチャップに含まれる全トマト量の内の、コールドブレイクトマト加工品のトマト量を表し、この値が0.473より小さい場合、粘度が高くなりすぎる傾向にあり、0.946より大きい場合、粘度が低くなりすぎる、又は離しょうが大きくなる傾向にある。[A]と[B]のより好ましい関係は、0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.806であり、さらに好ましくは、0.492≦[B]/([A]+[B])≦0.696である。
【0026】
さらに、離しょう抑制の観点からは、[A]/([A]+[B])≦0.806であることが好ましい。より好ましくは、[A]/([A]+[B])≦0.696、さらに好ましくは、[A]/([A]+[B])≦0.541である。」

d 本ケチャップの製造方法について
本件特許明細書の段落【0033】?【0037】には、以下の記載がある。
「【0033】
<本ケチャップの製造方法>
本ケチャップの製造方法(以下、「本製法」という。)を主に構成するのは、調合工程、均質化工程、殺菌工程、充填工程、密封工程、冷却工程である。これらの工程の一般的な説明のために本願明細書が取り込むのは、「地域資源活用食品加工総覧 第7巻 加工品編(社団法人 農山漁村文化協会 発行)」の内容である。
【0034】
<調整>
・・・・・・
【0035】
<調合>
調合工程は、複数の原材料を調合することで、ケチャップの基となる混合物質を製造する工程である。本ケチャップ製造における調合工程では、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品が調合される。コールドブレイクトマト加工品を調合する目的は、ケチャップのリコピン濃度の高濃度化と粘度の適正化である。より好ましくは、上記コールドブレイクトマト加工品に加えて、ホットブレイクトマト加工品も調合する。ホットブレイクトマト加工品を調合する目的は、ケチャップの粘度適正化と離しょう抑制である。上記に加え、必要に応じて調合される原材料は、野菜加工品、調味料、香辛料である。
【0036】
<均質化>
・・・・・・
【0037】
<殺菌、充填、冷却>
・・・・・・」

e 本実施の形態に係るケチャップの概要について
本件特許明細書の段落【0038】?【0045】には、以下の記載がある。
「【0038】
<本実施の形態に係るケチャップの概要>
本実施の形態に係るケチャップ(以下、「本ケチャップ」という。)が実現するのは、リコピンの高濃度化と粘度の適正化である。さらには、好ましくは離しょう増大の抑制である。その具体的な方法は、コールドブレイクトマト加工品を調合することである。好ましくは、コールドブレイクトマト加工品と、ホットブレイクトマト加工品を調合することである。
【0039】
<ケチャップ>
・・・・・・
【0040】
<糖度(Brix)>
本ケチャップのBrixは、特に限定されないが、好ましくは、30.0以上40.0以下である。また、Brixの測定方法は、公知の方法でよい。測定手段を例示すると、光学屈折率計(NAR-3T ATAGO社製)である。
【0041】
<リコピン濃度>
本発明の実施の形態に係る、リコピンとは、化学式C40H50で表されるカロテノイドの一種である。自然界には、トマトやスイカ、ニンジン等に多く含まれている。リコピンを工業的に濃縮や精製したリコピン製剤も市場において販売されている。一般的なケチャップにおいては、リコピンは10mg/100gから20mg/100g程度含まれている。本実施の形態におけるケチャップにおいて、リコピン濃度は25mg/100g以上50mg/100gであることが好ましい。より好ましくは30mg/100g以上40mg/100g以下である。食品添加物不使用の観点から、本実施の形態におけるケチャップは、食品添加物としてリコピンを使用しないことが好ましい。
【0042】
<粘度>
本ケチャップの粘度は、10,000?20,000mPa・sであることが好ましい。これより粘度が低いと、調味料としての保形性が悪くなり、これより粘度が高いと、重たい呈味となる。一般に市場にトマトソース、トマトケチャップとして販売されているケチャップの粘度もこの程度である。より好ましくは15,000?20,000mPa・sに調整されていることが好ましい。B型粘度の測定方法は、公知の方法で良い。測定手段を例示すると、TVB-10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、20℃、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件である。
【0043】
<離しょう>
ケチャップは調味料であるために一定期間保管することが考えられるが、保管中の経時変化によって、「離しょう」が生じる。離しょうとは、固形分から分離した漿液のことであるが、見た目や、使用に影響を与える。そのため、「離しょう」はケチャップを作る上で留意すべき事項である。
【0044】
本発明の実施の形態に係る、離しょうとは、ケチャップの固形分からの分離した漿液のことである。本実施の形態において、固形分からの漿液分離を量化する方法として、ブロッター試験紙を使った漿液分離評価法を参照した。(Gould W.A.他,1992,Tomato Production Processing & Technology,第3版, CTI Publications)。ブロッター試験紙の中心に5.0gのケチャップを秤量した。10分後、ケチャップの外周部分から、試験紙に水が滲み出した外周部分までの距離(cm)を測定した。低い値は漿液分離の程度が低いことを示す。
【0045】
本発明の実施の形態に係るケチャップの離しょうは、7.0cm以下であることが好ましい。より好ましくは、5.0cm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、3.0cm以下であることが好ましい。」

f 実施例について
本件特許明細書の段落【0046】?【0067】には、以下の記載がある。
「【実施例】
【0046】
本発明に係るケチャップを具現化したのは、実施例1乃至3である。これらの実施例によって、本発明に係る特許請求の範囲が限定されるものではない。
・・・・・・
【0053】
<比較例1>
比較例1では、調合工程において、市販のホットブレイク処理されたトマトペースト(Brix28.6、リコピン濃度61.2mg/100g、Brix1.0あたりのリコピン濃度2.14mg/100g)、食塩、砂糖、醸造酢、ニンニク、香辛料を、表1に示す分量で調合した。その後、ホモジナイザーを用いて、80kgf/uにて均質化処理を行った。
【0054】
<実施例1>
実施例1では、市販のコールドブレイク処理されたトマトペースト(Brix29.0、リコピン濃度62.0mg/100g、Brix1.0あたりのリコピン濃度2.14mg/100g)、及び比較例1で用いた原材料と同様のものを用いて、表1に示す分量で調合した。その後、ホモジナイザー(三丸機械工業株式会社製、ECONIZER LABO-01)を用いて、80kgf/uにて均質化処理を行った。
【0055】
<実施例2>
実施例2では、実施例1で用いた原材料と同様のものを用いて、表1に示す分量で調合した。その後、ホモジナイザー(三丸機械工業株式会社製、ECONIZER LABO-01)を用いて、80kgf/uにて均質化処理を行った。
【0056】
<実施例3>
実施例3では、実施例1で用いた原材料と同様のものを用いて、表1に示す分量で調合した。その後、その後、ホモジナイザー(三丸機械工業株式会社製、ECONIZER LABO-01)を用いて、80kgf/uにて均質化処理を行った。
【0057】
<比較例2>
比較例2では、調合工程において、実施例1?3で使用したものと同様の市販のCB処理されたトマトペースト(Brix29.0、リコピン濃度62.0mg/100g、Brix1.0あたりのリコピン濃度2.14mg/100g)、食塩、砂糖、醸造酢、ニンニク、香辛料を、表1に示す分量で調合した。その後、ホモジナイザー(三丸機械工業株式会社製、ECONIZER LABO-01)を用いて、80kgf/uにて均質化処理を行った。
【0058】
<参考例1>
参考として、市販のトマトケチャップ(カゴメ株式会社製、品名:トマトケチャップ)のリコピン濃度、及びB型粘度を測定した。
【0059】
<参考例2>
参考として、市販のトマトケチャップ(日本デルモンテ株式会社販売、名称:トマトケチャップ)のリコピン濃度、及びB型粘度を測定した。
【0060】
<参考例3>
参考として、市販のトマトケチャップ(ハインツ日本株式会社販売、名称:トマトケチャップ)のリコピン濃度、及びB型粘度を測定した。
【0061】
<参考例4>
参考として、市販のトマトケチャップ(株式会社ナガノトマト製、JAS規格に指定されたトマトケチャップ)のリコピン濃度、及びB型粘度を測定した。
【0062】
<評価方法>
本試験において、B型粘度が15,000mPa・s以上、20,000mPa・s以下となる区分の評価を、粘度に関して「○」とした。それ以外の値については粘度に関して「×」とした。また、離しょうが7.0cm以下となる区分の評価を、離しょうに関して「○」とした。それ以外の値については、離しょうに関して「×」とした。
【0063】
【表1】

【0064】
<近似式を基にした本発明の範囲>
図1、及び2が示すのは、それぞれ、本試験の結果により算出された、B型粘度と[A]/([A]+[B])との関係、及び離しょうと[A]/([A]+[B])との関係であり、各関係の近似式を併せて示した。また、表2が示すのは、本試験に関して、B型粘度が15,000?20,000mPa・sのときの[A]/([A]+[B])である。表3が示すのは、離しょう3.0?7.0cmのときの[A]/([A]+[B])である。各数値は、近似式により算出した値を用いた。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
<まとめ>
以上の試験結果を考慮した結果、HB処理トマト加工品、及びCB処理トマト加工品を用いることで、高リコピン濃度で、適切な粘度のケチャップを作製することができることがわかった。また、好ましくは、0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946であることが好ましいことがわかった。さらには、当該方法により、CBペーストを使用することによる、離しょうの増大を抑制する効果があることもわかった。離しょう抑制の観点からは、[A]/([A]+[B])が0.806以下、好ましくは、0.696以下、さらに好ましくは、0.541以下であることがわかった。」

g 図について
本件特許明細書には、以下の図1及び図2が添付されている。
「【図1】

【図2】



イ 取消理由2のアについて
(ア)上記ア(イ)fの段落【0053】?【0057】の実施例1?3及び比較例1?2では、「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」として、市販のコールドブレイク処理されたトマトペースト(Brix29.0、リコピン濃度62.0mg/100g、Brix1.0あたりのリコピン濃度2.14mg/100g)及び市販のホットブレイク処理されたトマトペースト(Brix28.6、リコピン濃度61.2mg/100g、Brix1.0あたりのリコピン濃度2.14mg/100g)、さらに、食塩、砂糖、醸造酢、ニンニク、香辛料を、段落【0063】の【表1】に示す分量で調合し、その後、ホモジナイザーを用いて均質化処理を行い、得られたトマトケチャップのBrix、リコピン濃度、B型粘度、離しょうの各値を測定し、粘度評価、離しょう評価及び、コールドブレイクトマトペースト由来のトマト換算量[A]、ホットブレイクトマトペースト由来のトマト換算量[B]、および[A]/([A]+[B])の各値が記載されている。
そして、上記ア(イ)fの段落【0064】には、前記【表1】における実施例1?3及び比較例1?2の[A]/([A]+[B])の値をX軸、B型粘度の値をY軸にとり、上記ア(イ)gの図1を作成し、そこからB型粘度と[A]/([A]+[B])の関係の近似式を求めたことが記載されている。
さらに、上記ア(イ)gの図1から、B型粘度が15,000?20,000mPa・sのときの[A]/([A]+[B])の値を段落【0065】の【表2】として記載している。

(イ)上記(ア)の記載は、市販のコールドブレイク処理されたトマトペーストと市販のホットブレイク処理されたトマトペーストを用いた場合の[A]/([A]+[B])とその得られた粘度範囲との関係を求めたものであり、上記(ア)に記載された[A]/([A]+[B])の関係の近似式において、B型粘度計で測定したケチャップの粘度が15,000?20,000mPa・sのとき、[A]/([A]+[B])の値が0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946である関係式を満たすことは、上記(ア)に記載された実施例1?3及び比較例1?2の条件において成り立ち得るものであり、当業者は、この関係式を満たすとき、上記ア(ア)における本件発明2、7、12及び13が解決しようとする課題を解決できると認識できるものであるといえる。
したがって、本件発明2、7、12及び13は、サポート要件を満たしている。
また、本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様にサポート要件を満たしている。

ウ 取消理由2のイについて
本件発明3は、本件発明2を引用し、さらに、[A]と[B]との関係が「300≦[A]+[B]≦500」の範囲であることを特定するものである。
また、本件発明8は、本件発明7を引用し、さらに、[A]と[B]との関係が「300≦[A]+[B]≦500」の範囲であることを特定するものである。
そして、上記イで検討したとおり、本件発明2及び7は、B型粘度計で測定したケチャップの粘度が15,000?20,000mPa・sのときの[A]と[B]との関係が
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
の範囲であることを特定している「リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップの製造方法」、「リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップ」に関するものであり、本件発明3及び8についても、当業者は、ケチャップの粘度が15,000?20,000mPa・sのとき、[A]と[B]との関係が所定の関係式を満たす場合において、[A]と[B]との関係が「300≦[A]+[B]≦500」の範囲においても、同様に、本件発明3及び8が解決しようとする課題を解決できると認識できるものであるといえる。
したがって、本件発明3及び8は、サポート要件を満たしている。
また、本件発明3を直接あるいは間接的に引用している本件発明4?5、本件発明8を直接あるいは間接的に引用している本件発明9?11についても、同様にサポート要件を満たしている。

エ 取消理由2のウについて
上記イで検討したとおり、本件発明2、7、12及び13は、サポート要件を満たしており、特に、トマト加工品以外の配合成分が特定されていないとしても、ケチャップの粘度が15,000?20,000mPa・sの範囲であれば、ケチャップにトマト加工品以外の配合成分が含まれていたとしても、その影響は粘度に反映されていると、当業者は理解できるから、この点においても、本件発明2、7、12及び13が解決しようとする課題を解決できると認識できるものであるといえる。
したがって、本件発明2、7、12及び13は、サポート要件を満たしている。
また、本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様にサポート要件を満たしている。

オ 取消理由2のエについて
本件発明2、7及び12に規定する関係式「0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946」は、上記イで検討したとおり、B型粘度計で測定したケチャップの粘度が15,000?20,000mPa・sのとき、[A]/([A]+[B])の値が0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946である関係式を満たすことは、上記イ(ア)で示した実施例1?3及び比較例1?2の条件から求められた近似式において成り立ち得るものであり、当業者は、この関係式を満たすとき、上記ア(ア)における本件発明2、7及び12が解決しようとする課題を解決できると認識できるものであるといえる。
確かに、実施例1は、測定されるB型粘度の値が19,800であり、[A]/([A]+[B])の値が0.403であり、上記関係式「0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946」の範囲に、含まれないものとなっている。
しかしながら、本件発明2、7及び12は、上記したとおり、実施例1?3及び比較例1?2の条件から求められた近似式において、B型粘度計で測定したケチャップの粘度が15,000?20,000mPa・sのとき、[A]/([A]+[B])の値が0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946である関係式を満たすものであり、実測値である実施例1の値が含まれないものであったとしても、それは近似式を求めた結果であり、実施例1?3及び比較例1?2の条件から求められた近似式において成り立ち得るものであることに変わりはなく、サポート要件を満たさないとするほどの瑕疵があるとは認められない。
したがって、本件発明2、7及び12は、サポート要件を満たしている。
また、本件発明2を直接あるいは間接的に引用している本件発明3?5、本件発明7を直接あるいは間接的に引用している本件発明8?11についても、同様にサポート要件を満たしている。

カ 特許異議申立人の令和3年4月7日付けの上申書について
特許異議申立人は、上記上申書において、取消理由2のア?エの取消理由が解消しておらず、本件発明2?5、7?13は、依然としてサポート要件を満たしていないと主張している。
しかしながら、本件発明2?5、7?13がサポート要件を満たしていることは、上記イ?オで検討したとおりであるから、上記特許異議申立人の主張は採用することができない。

キ まとめ
したがって、本件発明2?5、7?13は、サポート要件を満たすものであり、取消理由2によっては、本件発明2?5、7?13に係る特許を取り消すことはできない。

2 当審が通知した取消理由に採用しなかった特許異議申立人が申し立てた理由について
(1)申立理由3についての判断
ア 申立理由3のアについて
上記1(1)の「取消理由1においての判断」で検討したとおり、本件発明の「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」は、明確であるといえるから、当該申立理由3のアは、その申立ての前提において誤りがある。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記1(2)ア(イ)a?gにおいて「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」について記載されており、それらを用いた実施例1?3及び比較例1?2も記載されていることから、これらの記載に基づけば、当業者は過度の試行錯誤を強いられることなく本件発明を実施することができるといえる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしている。

イ 申立理由3のイについて
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記1(2)ア(イ)a?gにおいて示したように、「コールドブレイクトマト加工品」及び「ホットブレイクトマト加工品」について記載されており、それらを用いた実施例1?3及び比較例1?2も記載されていることから、これらの記載に基づけば、当業者は過度の試行錯誤を強いられることなく本件発明を実施することができるといえる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしている。

ウ まとめ
上記のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たすものであり、申立理由3によっては、本件発明2?5、7?13に係る特許を取り消すことはできない。

(2)申立理由4についての判断
ア 各甲号証に記載された事項
(ア)甲第1号証(特開2015-146800号公報)
(ア1)「【請求項1】
リコピンと、エステル類および/またはアルコール類とを含有するケチャップであって、
該リコピンの含有量が、25mg/100g以上である、
高リコピン含有ケチャップ。
・・・・・・・
【請求項7】
前記リコピンが、生トマト、トマトピューレ、トマトペーストからなる群から選択された1種又は2種以上を由来とするリコピンである、請求項1?6のいずれか1項に記載の高リコピン含有ケチャップ。
【請求項8】
日本農林規格(JAS)に適合したケチャップである、請求項1?7のいずれか1項に記載の高リコピン含有ケチャップ。」

(ア2)「【0001】
本発明は、リコピンを高濃度で含有するケチャップに関し、特に、リコピンを高濃度で含有しながら、香味の良好なケチャップに関する。」

(ア3)「【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の高リコピン含有ケチャップは、リコピンと、香気成分であるエステル類および/またはアルコール類とを含有し、リコピンを25mg/100g含有するものである。
【0012】
本発明の実施形態において、ケチャップとは、トマトを主原料とし、これに糖質、食酢、食塩を加え必要により加水して味を調えた調味料であって、必要に応じて、玉ねぎ、香辛料を加えても良く、また他の野菜または果物の加工品、着色料、着香料、アミノ酸類、核酸類、微生物発酵物等を加えてもよい。またケチャップの中でもトマトケチャップは、日本農林規格(JAS)の定める規格に適合したものを指し、本実施形態のケチャップにも含まれる。」

(ア4)「【0023】
本実施形態の高リコピン含有ケチャップを得るには、従来のケチャップにリコピン製剤を必要量添加するか、生トマトやトマトピューレ、トマトペーストなどのトマトの加工品を目的のリコピン濃度になるように原料として配合し、常法に従ってケチャップを調製する。その際に、香気成分であるエステル類および/またはイソアミルアルコールを必要量添加するか、香気成分のエステル類および/またはイソアミルアルコールを含有する食品を原材として配合する。これらの香気成分を一定量含む高リコピン含有ケチャップは、リコピンが25mg/100g以上と豊富に含まれていながら、リコピン由来の油っぽい特有のムレ臭や焦げ臭が軽減または解消し、従来よりも濃厚で、コクがあり、トマト本来の自然なトマト感が強調された、嗜好性が高く、商品としての適性の高い高リコピン含有ケチャップが提供される。また、食塩濃度も従来の3%前後よりも低い濃度(0.5?2.5%)に低下させても嗜好性を失わず商品としての適性が維持された高リコピン含有ケチャップが提供される。
【0024】
この時、リコピン製剤や酸味料以外の野菜または果実または穀類等の搾汁液や破砕物、発酵物(醸造酢を除く)を添加する場合は、日本農林規格(JAS)のトマトケチャップではなくなる。なお、JASのトマトケチャップとは、1.濃縮トマトに食塩、香辛料、食酢、砂糖類及びたまねぎ又はにんにくを加えて調味したもので可溶性固形分が25%以
上のもの、および、2.1に酸味料(かんきつ類の果汁を含む。)、調味料(アミノ酸等)、糊料等(たまねぎ及びにんにく以外の農畜水産物並びに着色料を除く。)を加えたもので可溶性固形分が25%以上のもの、と規定されている。本実施形態の高リコピン含有ケチャップは、トマト本来の風味の観点から、日本農林規格(JAS)に適合したトマトケチャップであることが好ましい。そのため、日本農林規格(JAS)に適合したトマトケチャップとするために、リコピンは生トマトやトマトピューレ、トマトペーストなどのトマトの加工品を目的のリコピン濃度になるように原料として配合することが好ましく、また、発酵物は醸造酢を配合することが好ましい。」

(イ)甲第2号証(米国特許公開公報第2006/0110523号明細書)
なお、原文は英語であり、翻訳は当審による。
(イ1)「発明の分野
[0001]本発明は、加工トマト製品およびトマト製品の調製方法に関する。
発明の背景
[0002]ソース、ケチャップ、スープ、トッピングなどの最終製品にトマトを加工する業界では、通常、一次加工と二次加工の2つの段階に分類される。通常、一次加工では、トマトの少なくとも高温または低温のいずれかの破砕と濃縮ステップが含まれる。濃厚なペーストを得るために、濃縮ステップでトマトパルプから水が除去される。水の除去はさまざまな方法で行うことができるが、水分の蒸発による除去(加熱による)が一般的な方法である。このようにして得られた増粘ペーストまたはピューレは、保存するか、パスタ用トマトソース、トマトケチャップなどのさまざまな最終製品に直接さらに加工することができる。
[0003]そのような最終製品は、一般に、高品質の製品として評価されるために一定程度の粘性を必要とする(次に、良い色、風味など)。これを達成するために、製品が(所定の割合の可溶性固形物で)高い粘度を有することが好ましい。」

(イ2)「[0049]従来のトマトは、通常、コールドブレイクプロセスまたはホットブレイクプロセスを使用してペーストに加工される。ホットブレイクプロセスでは、約80℃以上に加熱してトマトを粉砕(破砕)するが、コールドブレイクプロセスでは、約80℃以下に加熱してトマトを粉砕(破砕)する。ホットブレイクプロセスには、エキソガラクタナーゼやポリガラクツロナーゼなどのペクチン分解酵素を含む内因性酵素が迅速に不活性化されるという利点がある。かなりの量の長いペクチン鎖を持つそのような製品(例えば、ペースト)は、良好な粘度を持っているかもしれない。欠点は、加熱すると風味が損なわれる可能性があることである。調理済みまたは焦げた香りが発生し、揮発性物質やフルーティーな風味が失われる可能性がある。コールドブレイクプロセスは、ペクチン分解酵素が急速に非活性化されないため、ペクチンの分解が発生し、粘度の低いペーストが生成される可能性がある。一方、風味は通常、コールドブレイク製品の方が優れている。これらの理由により、コールドブレイク製品とホットブレイク製品の混合物を使用できる。」

(ウ)甲第3号証(米国特許第5902616号明細書)
なお、原文は英語であり、翻訳は当審による。
(ウ1)「ソースを調製する際に、サイの目に切ったトマトや他の粉砕されたトマトに加えて、新鮮なトマトピューレを使用することが望ましい場合、容器に加える前にピューレを加熱することが望ましい場合がある。必要に応じて、本発明から逸脱しない範囲で、サイの目に切ったトマトは、依然として本発明が解決を提供する問題となるゲル生成を誘導する活性酵素を含有するので、酵素を不活性化するのに十分高い温度で実施することができる。」(第4欄6行?14行)

(ウ2)「実施例1
実施例1は、製品の安定性または安全性を損なうことなくソースの新鮮さを保持するために最適な温度で加工されたフレッシュパックトマトソースの製造におけるゲル防止の好ましい方法を例示する。
トマト製品は、以下の式に従って調製される。
????????????????????????????????
成分 重量%
????????????????????????????????
水 29.05
新鮮なトマトピューレ 30.00
サイの目に切った生トマト 30.00
甘味料 6.00
生タマネギ 1.00
生ニンニク .50
ペクチナーゼ^(*) .05
その他調味料及び微量の成分 3.40

総量 100.0
????????????????????????????????
^(*)生トマトによって.005?.20まで変化する。
^(*)ペクチナーゼの実際の量は、酵素の活性にも依存する。

新鮮な生のトマトは、サイの目に切り、ペクチナーゼ、固結塩、および水を待っているケトルに直接搬送される。混合物は、周囲温度で5?10分間混合する。新鮮なタマネギ及びニンニクは、必要に応じ、ソテー(すなわち、湯通し)され、混合物に加えた。新鮮なトマトピューレは、濃縮器からケトルに注入され、残りの新鮮な成分(バジル)、調味料および他の少量成分を添加する。新鮮さを保つためにソースを華氏110度で1時間まで保持する。このバッチは、直ちに熱交換器を介して華氏195度に加熱し、ジャーに充填し、最小時間(約10分間)保持する。生成物は、少なくとも最小の商業的な滅菌条件に曝された後に、直ちに周囲温度まで冷却される。ペクチナーゼまたはペクチナーゼ含有酵素混合物を使用せずにこのプロセスを続けると、ソースは冷却時にゲル化する。10?40%の生トマトで製造されたソースは、ペクチナーゼまたはペクチナーゼ含有酵素をこの方法で使用した場合にゲル化しない。バッチは、華氏110度で保持する代わりに、室温で、または華氏110度まで、または華氏150?175度で1時間まで保持してもよい。より低い温度が好ましい。」(第6欄10行?55行)

(エ)甲第9号証(特開平7-51020号公報)
(エ1)「【0002】トマトケチャップ等の粘稠性の高いトマト製品を製造する場合、原料としては生トマトまたは、トマトピューレ、トマトペースト等のトマト濃縮物が一般的に用いられている。そして、トマト濃縮物を使用する場合、その粘稠度は直接に最終製品の粘稠度へ影響するため、トマトの一次加工の時点で、出来る限り高粘稠度を与える加工法を選択することが望ましい。また、このトマト濃縮物としては、離漿が少ないことも重要である。
【0003】
【従来の技術】従来粘稠度の高いトマト濃縮物を得る方法としては、トマトを破砕後直ちにロータリーコイルタンクで加熱する方法;トマトをロータリーコイル中で加熱し、その装置内で破砕する方法;トマトの破砕物を循環式チューブヒーターで瞬間的に高温度に昇温する方法等、いわゆるトマトのホットブレイク法が専ら採用されていた。」

(オ)甲第10号証(特開2018-74975号公報)
(オ1)「【0021】
<トマト加工原料>
トマト加工原料を列挙すると、トマトの搾汁(ストレート果汁)、濃縮トマト(トマトピューレ及びトマトペースト)及び濃縮トマトの還元汁、並びにそれらの加工汁である。トマトの搾汁(ストレート果汁)及び濃縮トマトの定義を説明するため、本明細書に取り込まれるのは、トマト加工品の日本農林規格(最終改正平成21年5月19日農林水産省告示第669号)である。また、トマトペーストのうち、ホットブレイクトマトペーストとは、ホットブレイクされたものをいい、コールドブレイクトマトペーストとは、コールドブレイクされたものをいう。ホットブレイクとは、加熱によりペクチナーゼ活性を抑制し、トマトペーストの粘度を高める方法である。他方、コールドブレイクとは、加熱によるペクチナーゼ活性の抑制を行わない、又はホットブレイクよりも弱い加熱を行う方法であり、ホットブレイクされたトマトペーストに比べ、粘度が低くなる。また、搾汁及び濃縮の詳細な説明のため、本明細書に取り込まれるのは、最新果汁・果実飲料辞典(社団法人日本果汁協会監修)の内容である。当該加工汁を例示すると、除パルプ汁や脱酸トマト汁である。除パルプ汁とは、トマトの搾汁又は濃縮トマトの還元汁であって、その不溶性固形分の一部又は全部が取り除かれたものである。脱酸トマト汁とは、先に述べたとおりである。」

(カ)甲第11号証(トマト加工品の日本農林規格、最終改正平成16年10月29日農水告1968号)
「(適用の範囲)
第1条 この規格は、トマトジュース、トマトミックスジュース、トマトピューレー、トマトペースト、トマトケチャップ、トマトソース、チリソース及び固形トマトに適用する。
・・・・・・・
(トマトピューレー及びトマトペーストの規格)
第5条 トマトピューレー及びトマトペーストの規格は、次のとおりとする。
・・・(表は省略)・・・
2 使用する原材料のトマト(濃縮トマトを使用して製造する場合は濃縮トマト)のリコピン量は、有機溶媒で抽出した後吸光光度法により測定して7mg%以上(濃縮トマトにあつては無塩可溶性固形分4.5%に換算して7mg%以上)のものであることとする。」(第1頁?第6頁)

(キ)甲第12号証(特表平11-511331号公報)
(キ1)「【特許請求の範囲】
1.ペクチン含有水性素材の漿液分離を減らす方法であって、次の段階:
a)ペクチン解重合酵素を実質的に含まない水性素材を提供し、
b)有効量のペクチンエステラーゼを添加し、そして
c)前記素材を二価カチオンの存在下でインキュベートする
を含んで成る方法。」(第2頁)

(キ2)「ブロッター試験結果から、ペクチンエステラーゼの濃度を調節することにより、離液または漿液分離を制御できることが明らかにわかる。驚くことではないが、粘度も酵素濃度に依存する。離液の減少と粘度増加の両方を同時に得ることができることに注目すべきである。」(第9頁表Iの下1行?4行)

なお、以下、「甲第1?3号証、甲第9?12号証」を、「甲1?甲3、甲9?甲12」という。

イ 引用発明
甲1には、上記(ア1)?(ア4)の記載から、以下の「トマトケチャップの製造方法」の発明と「トマトケチャップ」のそれぞれが記載されているといえる。

<トマトケチャップの製造方法>の発明
以下、当該発明を「甲1発明1」という。
「リコピンの含有量が、25mg/100g以上であり、日本農林規格(JAS)に適合したトマトケチャップの製造方法であって、トマトペーストなどのトマトの加工品を目的のリコピン濃度になるように原料として配合する工程を含む、トマトケチャップの製造方法。」

<トマトケチャップ>の発明
以下、当該発明を「甲1発明2」という。
「リコピンの含有量が、25mg/100g以上であり、日本農林規格(JAS)に適合したトマトケチャップであって、トマトペーストなどのトマトの加工品を目的のリコピン濃度になるように原料として配合されていることを特徴とするトマトケチャップ。」

ウ 本件発明2と甲1発明1との対比・判断
(ア)本件発明2と甲1発明1とを対比すると
甲1発明1の「リコピンの含有量が、25mg/100g以上であり、日本農林規格(JAS)に適合したトマトケチャップの製造方法」は、本件発明2の「リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップの製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明2と甲1発明1は、「リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップの製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:製造方法を構成する工程について、本件発明2は、
「調合:ここで調合されるのは、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
前記調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と前記調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
前記ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。」と特定しているのに対して、甲1発明1は、「トマトペーストなどのトマトの加工品を目的のリコピン濃度になるように原料として配合する工程を含む」と特定している点

(イ)相違点1について
甲9の上記(エ1)及び甲10の上記(オ1)には、トマトペーストはホットブレイクトマトペーストとコールドブレイクトマトペーストに分類されること、ホットブレイクトマトペーストは加熱によりペクチナーゼ活性を抑制し、トマトペーストの粘度を高める方法であること、他方、コールドブレイクトマトペーストは加熱によるペクチナーゼ活性の抑制を行わないか、又はホットブレイクよりも弱い加熱を行う方法であり、ホットブレイクされたトマトペーストに比べ、粘度が低くなることが、それぞれ記載されている。
また、甲2には、上記(イ2)にホットブレイクプロセスは、加熱によりペクチン分解酵素が不活性化され、良好な粘度を有するが、風味が損なわれる欠点があること、一方、コールドブレイク製品は、粘度の低いペーストが生成され、風味はホットブレイクプロセスより優れており、これらの理由によりコールドブレイク製品とホットブレイク製品の混合物を使用できることが記載されている。
同様に、甲3には、上記(ウ2)に新鮮なトマトピューレとサイの目に切った生トマトを混合してトマトソースを作る際に、サイの目に切ったトマトに含まれるペクチナーゼによって、トマトソースのゲル化を防止することが記載されている。
加えて、甲11は、単に、トマト加工品の日本農林規格が記載されているに過ぎない。
しかしながら、甲2、甲3、甲9?甲11には、トマトケチャップの粘度が15,000?20,000mPa・sの範囲であることや、ホットブレイクトマト加工品及びコールドブレイクトマト加工品の添加割合を0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946の範囲にすることについては、何ら記載も示唆もなく、甲1に記載された発明とこれら甲2、甲3、甲9?甲11に記載された技術的事項のいずれとも組み合わせる動機付けが認められない。

(ウ)本件発明2の効果について
そして、本件発明2は、上記相違点1における点を特定することによって、本件特許明細書に記載されたリコピンの高濃度化と粘度適正化が両立するトマトケチャップの製造方法を提供することができるといえる。

(エ)小括
したがって、本件発明2は、主引用例である甲1に記載された発明ならびに甲2、甲3、甲9?甲11に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。

エ 本件発明3?5について
本件発明3は、本件発明2を引用し、さらに、コールドブレイクトマト加工品及びホットブレイクトマト加工品のトマト量の関係を所定の範囲に特定したものである。
本件発明4は、本件発明2を引用し、粘度の範囲を特定したものである。
本件発明5は、本件発明2を引用し、ホットブレイクトマト加工品に含まれるリコピン濃度を所定の範囲に特定したものである。
本件発明3?5は、本件発明2の特定を全て含んだ上で、さらに、特定しているものであるから、上記ウと同様に、本件発明3?5は、主引用例である甲1に記載された発明ならびに甲2、甲3、甲9?甲11に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。

オ 本件発明7と甲1発明2との対比・判断
(ア)本件発明7と甲1発明2とを対比すると
甲1発明2の「リコピンの含有量が、25mg/100g以上であり、日本農林規格(JAS)に適合したトマトケチャップ」は、本件発明7の「リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップ」に相当する。

そうすると、本件発明7と甲1発明2は、「リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップの製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:本件発明7は、
「含有するのは、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
当該ケチャップが含有するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と当該ケチャップが含有するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップをB型粘度計で測定したときの粘度は、15,000?20,000mPa・sである」と特定しているのに対して、甲1発明2は、「トマトペーストなどのトマトの加工品を目的のリコピン濃度になるように原料として配合されていること」と特定している点

(イ)相違点2について
上記相違点2は、実質的には、上記ウ(ア)の相違点1と同様であり、この点は、上記ウ(イ)で検討したとおりであり、その効果も上記ウ(ウ)で示したとおりである。

(ウ)小括
したがって、本件発明7は、主引用例である甲1に記載された発明ならびに甲2、甲3、甲9?甲11に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。

カ 本件発明8?11について
本件発明8は、本件発明7を引用し、さらに、コールドブレイクトマト加工品及びホットブレイクトマト加工品のトマト量の関係を所定の範囲に特定したものである。
本件発明9、10は、本件発明8を引用し、コールドブレイクトマト加工品又はホットブレイクトマト加工品に含まれるリコピン濃度を所定の範囲に特定したものである。
本件発明11は、本件発明2を引用し、トマト加工品品質表示基準により規定されることを特定したものである。
本件発明8?11は、本件発明7の特定を全て含んだ上で、さらに、特定しているものであるから、上記ウと同様に、本件発明3?5は、主引用例である甲1に記載された発明ならびに甲2、甲3、甲9?甲11に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。

キ 本件発明12及び13について
本件発明12及び本件発明13と甲1発明1とを比較すると、いずれも、まず、相違点1が上げられ、この点は、上記ウで検討したとおりである。
そうすると、本件発明12及び本件発明13における他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、主引用例である甲1に記載された発明ならびに甲2、甲3、甲9?甲11に記載された技術的事項に基いて、本件発明13は、さらに甲12を加えた、主引用例である甲1に記載された発明ならびに甲2、甲3、甲9?甲12に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。

ク まとめ
上記のとおり、本件発明2?5、7?13は、主引用例である甲1に記載された発明ならびに甲2、甲3、甲9?甲12に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、申立理由4によっては、本件発明2?5、7?13に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件発明2?5、7?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明2?5、7?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件発明1、6に係る特許は、訂正により削除され、特許異議の申立ての対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップの製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
前記調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と前記調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
前記ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。
【請求項3】
請求項2のケチャップの製造方法であって、
当該ケチャップに調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と当該ケチャップに調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
300≦[A]+[B]≦500
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量である。
【請求項4】
請求項2又は3のケチャップの製造方法であって、
当該ケチャップに調合されるコールドブレイクトマト加工品に含まれる1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。
【請求項5】
請求項2?4の何れかのケチャップの製造方法であって、
当該ケチャップに調合されるホットブレイクトマト加工品に含まれる1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップであって、
含有するのは、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
当該ケチャップが含有するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と当該ケチャップが含有するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップをB型粘度計で測定したときの粘度は、15,000?20,000mPa・sである。
【請求項8】
請求項7のケチャップであって、
当該ケチャップが含有するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と当該ケチャップが含有するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
300≦[A]+[B]≦500
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量である。
【請求項9】
請求項7又は8のケチャップであって、
当該ケチャップに調合されるコールドブレイクトマト加工品に含まれる1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。
【請求項10】
請求項7?9の何れかのケチャップであって、
当該ケチャップに調合されるホットブレイクトマト加工品に含まれる1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。
【請求項11】
請求項7?10の何れかのケチャップであって、
当該ケチャップは、トマト加工品品質表示基準により規定される、トマトケチャップである。
【請求項12】
ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化を両立する方法であって、
それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
前記調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と前記調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.946
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。
【請求項13】
ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度適正化、及び離しょうの増大抑制をあわせて可能にする方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品、及びホットブレイクトマト加工品であり、
前記調合するコールドブレイクトマト加工品のトマト量[A](kg/100L)と前記調合するホットブレイクトマト加工品のトマト量[B](kg/100L)との関係は、
0.473≦[A]/([A]+[B])≦0.806
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合におけるトマト加工品の重量であり、
当該ケチャップの粘度は15,000?20,000mPa・sである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-25 
出願番号 特願2018-229495(P2018-229495)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福澤 洋光  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 佐々木 秀次
大熊 幸治
登録日 2019-05-31 
登録番号 特許第6533001号(P6533001)
権利者 カゴメ株式会社
発明の名称 高リコピンケチャップの製造方法、高リコピンケチャップ、及びリコピンの高濃度化と粘度の適正化を両立する方法  
代理人 塚副 成  
代理人 塚副 成  
代理人 宮下 洋明  
代理人 宮下 洋明  
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