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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G08B
管理番号 1376780
異議申立番号 異議2021-700540  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-02 
確定日 2021-08-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第6794339号発明「火災時現場対応支援システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6794339号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由
第1 手続の経緯

特許第6794339号の請求項1に係る特許についての出願は,平成29年12月27日に出願され,令和2年11月13日にその特許権の設定登録がされ,令和2年12月2日に特許公報が発行された。その後,その特許に対し,令和3年6月2日に特許異議申立人 相川 和信が,特許異議の申立てを行った。


第2 本件発明

特許第6794339号の請求項1の特許に係る発明は,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「建物内に設置された火災検出センサの感知情報から,当該火災検出センサの設置位置近傍における火災の有無を検出する火災状況判定装置と,
前記建物の平面図の画像を表示画面に表示し,前記平面図の画像において前記建物内の複数の防火区画の境界を他の線とは異なる態様の線で示し,前記火災状況判定装置により前記火災検出センサの感知情報から火災が検出された場合に,当該火災検出センサの設置位置に応じて,前記火災が発生している防火区画の名称と火災が発生している部屋又は区画とを前記表示画面に表示する情報伝達装置と,
を有することを特徴とする火災時現場対応支援システム。」(以下,「本件発明」という。)


第3 申立ての理由の概要

特許異議申立人 相川 和信(以下,「申立人」という。)は,以下の甲第1号証乃至甲第7号証を証拠として提出し,申立ての理由として,以下の申立理由を主張している。
甲第1号証:特開昭62-276693号公報
甲第2号証:特許第3927862号公報
甲第3号証:特開2001-52271号公報
甲第4号証:特開2000-331259号公報
甲第5号証:特開2005-107954号公報
甲第6号証:実公平1-38715号公報
甲第7号証:特開昭56-140489号公報

申立理由

本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて,あるいは,甲第1号証,甲第3?7号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,本件特許の請求項1に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第113条第2号に該当するから,取り消されるべきものである。


第4 甲第1号証乃至甲第7号証の記載

1.甲1発明

甲第1号証(下線は当審が付与。)には,

「(産業上の利用分野)
本発明は,CRTディスプレイ装置に警戒区域の平面図をセンサ,防災機器等の設置位置を示すシンボルマークと共に表示するようにした火災報知設備の表示装置に関する。」(1頁右下欄9?13行)

「(実施例)
第1図は本発明の一実施例を示したブロック図である。
まず構成を説明すると,1は監視室等に設置されたCRTディスプレイ装置でおり,CRTコントローラ2による表示制御を受け,CRTコントローラ2はグラフィックメモリ3に予め記憶されている表示データを読出してCRTディスプレイ装置1に表示するようになる。こグラフィックメモリ3に記憶される表示データとしては,火災報知設備の監視対象となる警戒区域の平面図,例えばビル等にあっては階別毎に分けられた警戒区域の平面図がグラフィックデータとして記憶されており,更に警戒区域に設置している温度センサや煙濃度センサ等のアナログ火災センサの設置位置を示すセンサマーク,更に警戒区域に設置されている防火戸や防火シャッター,排煙口,垂れ壁等の防災機器の設置位置を表示するためのシンボルマーク,表示データが併せて記憶されている。」(2頁右下欄8行?3頁左上欄8行)

「第2図は第1図のCRTディスプレイ装置1に表示される警戒区域平面図の一例を示した説明図である。
第2図において,表示画面1aにはライトペン4の入力操作で選択された警戒区域平面図6が表示されており,この警戒区域平面図6の中には煙濃度センサの設置位置を示す煙センサマーク7,温度センサの設置位置を示す温度センサマーク8,防火戸の設置位置を示す防火戸マーク9,避難誘導灯の設置位置を示す誘導灯マーク10等が固有のシンボルマークによって表示されている。」(3頁右上欄7?17行)

「再び第1図を参照するに,CRTコントローラ2に対しては確認信号ラッチ回路12を介して警戒地区に設置した煙濃度センサ及び温度センサからの検出信号,更には防火戸や防火シャッター等の防災機器の制御状態を示す信号が入力している。具体的にはセンサデータについては,図示しない火災受信盤のデータメモリに記憶されているセンサデータが順次読出されて与えられており,このセンサデータについては所定レベルを超えるセンデータが得られた時,確認信号ラッチ回路12にセンサデータが与えられてラッチされるようになる。また,防災機器については,例えば防火戸の制御を例にとると,防火戸の起動により閉鎖状態となった時の起動完了信号が与えられる。確認信号ラッチ回路12でラッチされたセンサ検出信号及び防災機器の作動信号,例えば防火戸の起動完了信号は,CRTコントローラ2に対しオペレータによる確認操作を促すためのシンボルマークの点滅制御を指令するようになる。例えば,第2図の表示画面を例にとると,煙濃度センサによる検出煙濃度が所定レベルを超えると,対応する煙センサマーク7が点滅表示されるようになる。」(3頁左下欄10行?右下欄13行)

「第4図は本発明の表示装置が適用されるアナログ火災報知設備のシステム構成を示した説明図である。
第4図において、21は火災受信盤であり、火災受信盤21からは警戒区域に向けて信号線22a、22b、…22nが引き出されており、各信号線22a?22nには煙濃度センサ23及び温度センサ24が並列的に接続され、煙濃度センサ23及び温度センサ24のそれぞれは火災受信盤21からのポーリングによる呼出制御を受けて煙濃度及び温度のアナログ検出信号を送出するようになる。火災受信盤21はポーリングによりセンサから得られたデータを所定の火災判断レベルと比較し、火災判断レベルを超えるセンサデータが得られた時に、火災と判断して地区ベルの鳴動や火災表示灯の点灯等により火災警報を出すようになる。また、火災受信盤21にはポーリングによる呼出しで得られた煙濃度センサ23及び温度センサ24からのセンサデータを記憶するデータメモリが設けられており、このデータメモリの記憶データを第1図に示した本発明の表示装置に送って各種の表示制御を行なわせる。
第4図のシステム溝成において、第1図に示した本発明の表示制御は、制御装置25のプログラム制御により実行され、この制御装置25に対しては火災受信盤21よりセンサデータ及び火災判断信号が与えられる。制御装置25には外部記憶装置として磁気ディスク26及びフロッピディスク27が接続され、これらの外部記憶装置は第1図に示したグラフィックメモリ3としての機能を持ち、第2図に示したような警戒区域平面図を表示するためのグラフィックデータが固定的に記憶されている。また、制御装置25にはCRTコントローラ2を介してCRTディスプレイ装置1及びライトペン4が接続されており、更にセンサデータ及び外部制御機器の制御データ等を打出すためのプリンタ29が接続されている。」(4頁右下欄5行?5頁右上欄5行)

「【第1図】



「【第2図】



「【第4図】



の記載があるから,甲第1号証には,

「アナログ火災報知設備であって、
前記アナログ火災報知設備は、火災受信盤21、制御装置25、CRTコントローラ2を介したCRTディスプレイ装置1を備えており、
ビル等にあっては階別毎に分けられた警戒区域の平面図と,警戒区域に設置している温度センサや煙濃度センサ等のアナログ火災センサの設置位置を示すセンサマーク,更に警戒区域に設置されている防火戸や防火シャッター,排煙口,垂れ壁等の防災機器の設置位置を表示するためのシンボルマーク,表示データが併せて記憶されているグラフィックメモリ3の表示データを読み出して,CRTディスプレイ装置1に表示し,
センサデータについては所定レベルを超えるセンデータが得られた時,確認信号ラッチ回路12にセンサデータが与えられてラッチされ,確認信号ラッチ回路12でラッチされたセンサ検出信号は,CRTコントローラ2に対しオペレータによる確認操作を促すためのシンボルマークの点滅制御を指令して,煙濃度センサによる検出煙濃度が所定レベルを超えると,対応する煙センサマーク7が点滅表示され,
火災受信盤21はポーリングによりセンサから得られたデータを所定の火災判断レベルと比較し、火災判断レベルを超えるセンサデータが得られた時に、火災と判断して地区ベルの鳴動や火災表示灯の点灯等により火災警報を出すようになる,
火災報知設備。」(以下,「甲1発明」という。)

の発明が記載されている。

2.甲2発明

甲第2号証(下線は当審が付与。)には,

「【0019】
【発明の実施の形態】
以下,この発明の実施の形態について,図面を参照しながら説明する。
図1は,本発明の一例としての防災表示装置を備える防災システムを示している。防災システム1は,複数の建物から構成される防火区域に設けられ,火災やガス漏れの監視や火災報知等行うもので,防災受信機2や防災表示装置10などから構成される。」

「【0025】
CRT11は,防災システム1の現在の状況や警報を表示するとともに,履歴記憶部23の履歴情報に基づいて過去のイベントを表示する表示手段である。以下,CRT11における表示動作について説明していく。
図3は,通常の監視状態における表示を示す通常表示画面30である。通常表示画面30には,主に各フロアを平面図で示す主画面31と,フロア表示部31の右側に設けられた操作ボタン群32とから構成される。
【0026】
図3に限らず,CRT11では,各フロアを表示する場合,フロアの概要とともに前述の火災感知器5や防排煙端末6の一例としての端末機器がそれぞれ固有のシンボルで,設置されている実際の場所に対応するように表示される。
例えば,「S」は煙感知器,「H」は熱感知器のシンボルである。煙感知器,熱感知器を含めて,各地区ごとに一連番号が付され,シンボルマークの傍に表示されている。符号Tは非常電話を,符号Wは消火栓を,符号Eは排煙口を示すシンボルである。また,符号D1?E5はそれぞれ防火戸を示す。さらに,符号An(A1,A2など)は,1フロアの中の1地区を示すシンボルで,「A1」であれば第1地区となる。また,CRT11はカラー表示可能であって,本実施の形態では,主画面31の背景色は暗青色であって,フロアそのものはベージュ色,フロアの中の端末機器や地区の境界線は青色で表示されている。」

「【0030】
防災システム1内で火災が発生すると,火災を検出した感知器は火災信号を防災受信機2に送信する。これを受けて防災受信機2は,イベント情報を防災表示装置10に出力する。防災表示装置10はこのイベント情報に対応して,CRT11の表示を強制的に図4に示す火災報知画面(イベント報知画面)60に切り替える。
火災報知画面60は,主画面61と,操作ボタン群62と,イベント表示部63とから構成される。
イベント表示部63には,発生したイベント(火災)に関する詳細事項が表示される。ここの表示から,8階の第3地区の煙感知器からのイベント情報であることが分かる。イベント表示部63の上部に表示されている,「火災001」,「ガス漏れ000」,「防排煙000」という表示はイベントの件数を表し,火災が1件発生したが,ガス漏れや防排煙機器の作動はないことを示す。ガス漏れが検出されたり,防排煙機器が作動すれば,それぞれ「000」から「001」に表示が替わる。
【0031】
主画面61には,火災を発報したフロア図が表示され,そのうち,火災を報知した煙感知器S1のシンボルマークと,煙感知器S1が設置されている第3地区のシンボルマークである「A3」と,第3地区の外形線L1が赤色に表示される。
また,操作ボタン群32のフロア表示部32dには現在表示されているフロアである「8階」が他の階とは異なる背景色で表示され,棟選択ボタン32eには該当するフロアを含む棟が表示されている。これら主画面61や操作ボタン群32の表示により,視覚的に防災システム1内のどの場所で火災が発生したのか把握することができる。
出火階ボタン34fは,火災が発生していることを示すべく,他のボタンとは違う背景色(例えば赤色)で表示されている。赤く点灯しているボタン34fを操作すると出火しているフロア名のリストを表示した出火階選択ウインドウ(図示せず)を表示する。ウインドウに表示されたリストからフロア名を選択すると該当画面に切り替わる。
火災報知画面60であっても,フロア表示部32dで異なるフロアを選択したり,直上階ボタン34d,直下階ボタン34eを操作することで,主画面61に異なるフロアを表示することも可能である。この状態で,出火階ボタン34fを操作することで再び出火階のフロアを表示する。
【0032】
操作ボタン群32の強調表示ボタン(表示状態選択手段)35を操作すると、図5に示す強調表示画面70が表示される。強調表示画面70は、火災報知画面60と同様に、主画面71と、操作ボタン群72と、イベント表示部73とから構成される。
強調表示画面70の主画面71では、煙感知器S1のシンボルマークと、第3地区のシンボルマークである「A3」と、外形線L1の赤色表示が、火災報知画面60における赤色表示よりも明度を上げコントラストを高く表示される。加えて、それ以外の箇所、つまり火災発報とは無関係の青色で表示されている端末機器の青色やフロアのベージュ色、背景色の暗青色のコントラストを下げて表示する。このようにコントラストに差をつけ強調することで、火災が発生した箇所がより明確に表示される。強調表示ボタン35をもう一度操作すると、火災報知画面60に戻る。
このような強調表示は、シンボルがフロアや地区に密集している場合や、1フロアの地区が細かく区切られている場合や、1フロアの大きさに対して表示画面が小さい場合などの、1地区を比較的大きく表示できないような場合に特に有用である。
強調表示画面70及び火災報知画面60のいずれが表示されていても、前記煙感知器S1が復旧し、全ての端末機器が正常になった時点で、CRT11の表示は前記通常表示画面30に戻るとともに、出火階ボタン34fの背景色も赤色から元に戻る。」

「【図4】

なお、図4によれば,火災報知画面には,実線と二重線の2種類の態様の線で記載されているフロアが表示され,防火戸D5は,二重線で囲まれた領域の内側に存在している。」

「【0036】
なお、図3などで一画面戻りボタン34cとして表示されているボタンはここでは、リプレイボタン34ccとして表示されている。
主画面41において一覧のうちの1つのイベントを指定した状態(図6の白抜き表示)で、リプレイボタン34ccをクリックすると、例えば図7に示すように、そのイベントを発生したフロアのその時の様子が再現表示される。この画面はリプレイ表示画面(履歴再現画面)50という。すなわち、リプレイボタン34ccが本発明の選択手段となる。リプレイ表示画面50は、主画面51と、操作ボタン群52と、関連履歴表示部55とから主に構成される。
【0037】
メッセージエリアである関連履歴表示部55の一番上には、図6の履歴一覧画面40で選択した項目が表示されている。ここでは、白抜きで「定温式熱感知器の火災報」に関するイベントx1が選択されている様子が表示されている。その下には、現在選択されている項目と関連のある項目が表示されている。ここでは、イベントx1と時系列的に近いイベントが表示されている。
【0038】
主画面51には、イベントx1に対応したフロア図がイベント発生時の状態と同じ状態で表示される。ここでは、「第6地区」の区画の外形線L2と、この地区内に設置されている「熱感知器2」H2と、第6地区であることを示す「A6」が、図4の表示と同様の状態で、つまり、赤色で表示される。この表示により、履歴表示におけるイベントx1が、「第6地区の熱感知器H2」の発報によるものであることが視覚的に理解できる。
さらに、リプレイ表示画面50においても強調表示ボタン35は有効であることから、図7の表示状態で強調表示ボタン35を操作することで、図5同様の強調表示に切り替えることもできる。
なお、リプレイ表示画面50及び図8の連動リプレイ表示画面80で表示される符号39は一覧ボタンであり、該一覧ボタン39を操作すると図6の履歴一覧画面40に戻る。」

「【図7】

なお、図7によれば,「第6地区」は防火戸D3で区切られているが,「第5地区」との間には防火戸が存在していない。」

「【第8図】



の記載があるから,甲第2号証には,

「CRT11は,主画面61と,操作ボタン群62と,イベント表示部63とから構成される火災報知画面(イベント報知画面)60を表示し,
主画面61には,火災を発報したフロア図が表示され,そのうち,火災を報知した煙感知器S1のシンボルマークと,煙感知器S1が設置されている第3地区のシンボルマークである「A3」と,第3地区の外形線L1が赤色に表示され,
イベントx1が、「第6地区の熱感知器H2」の発報によるものである場合,「第6地区」の区画の外形線L2と、この地区内に設置されている「熱感知器2」H2と、第6地区であることを示す「A6」が、赤色で表示され,
防火戸D5は二重線で囲まれた領域の内側に存在し,「第5地区」と「第6地区」の間には防火戸は存在していない,
防災表示装置を備えるシステム」(以下,「甲2発明」という。)

の発明が記載されている。

3.甲3発明

甲第3号証(下線は当審が付与。)には,

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は火災信号等の防災情報を受けて画像表示装置のCRT画面上に建物の平面又は断面と各種の防災表示を映出する防災表示装置,特に画像表示装置のCRT画面の内容をハードコピーするようにしたものに関するものである。」

「【0004】本発明は,このような問題点を解決するためになされたものであり,画像表示装置のCRT画面上で防災シンボル又は防災シンボルを表示している警戒区域全体あるいは境界線が点滅している状態でハードコピーのプリントアウトを実行しても,ハードコピーには防災シンボル又は警戒区域全体あるいは境界線が点灯状態でプリントアウトされるようにした防災表示装置を得ることを目的とする。」

「【0008】4aは画像表示装置4のCRT画面,4bはCRT画面4aの画面中央部において,例えば建物の所望の階の平面の一部又は全体を表示するグラフィックエリア,4cはCRT画面4aの画面上部左側において,例えば「本館2階の平面図」等のタイトル及び火災感知器が火災を感知したことを代表的に表示するタイトル表示部,4dは画面上部真中側において,例えば「ガイダンス」,「シンボル凡例」,「取り扱い」等を表示するメニューバー,4eは画面上部右側において,例えば「時刻」を表示する時計表示部,4fは画面中央右側において,例えば「メニュー」「前ページ」,「音響停止」,「ハードコピー」等の表示釦を表示する操作表示部,4gは画面下部下側において,例えば「12時45分 火災感知器 発報 本館2階レストラン」等のイベントを表示するイベントリスト表示部,4hは画面下部右側寄りにおいて,例えば「システム状態 火災表示中」等を表示するシステムメッセージ表示部,4iは画面下部右側において,例えば本館2階の全体の平面図を表示するキープラン表示部である。」

「【0011】この状態で,例えば建物の2階の2-1と2-3と2-5の警戒区域で火災が発生し,それらの警戒区域のオン・オフ型火災感知器FDが火災を感知すると,それらの火災感知器FDの火災信号を防災受信機1に出力し,防災受信機1ではそれらの火災感知器FDの火災信号から何階のどの警戒区域に火災が発生したかが分かる。そこで,防災受信機1は何階のどの警戒区域の火災感知器がFDが火災を発報したかを示す火災表示指令を表示制御部3に出力する。
【0012】そうすると,表示制御部3では,今までグラフィックエリア4bに表示されている建物の2階の平面図の表示画面又は「平常監視中」の表示画面から,防災受信機1からの火災表示指令に基づき図2の(a)に示すように2階の2-1,2-3,2-5の警戒区域の防災シンボルの一種である火災シンボルSを白抜き表示から赤色点滅表示に切り替える。従って,画像表示装置4のCRT画面4aのグラフィックエリア4bに赤色点滅表示されている火災シンボルSを見ることにより,何階の警戒区域で火災が発生したのか,または何階のどの辺で火災が発生したかを的確に確認できる。」

「【0017】また,点滅している火災シンボル又は防災シンボルに限らず,その火災シンボル又は防災シンボルを表示している警戒区域全体あるいは警戒区域の境界線が火災シンボル又は防災シンボルと同様に点滅表示している場合には,その警戒区域の表示画面をハードコピーする時に,警戒区域全体あるいはその境界線を点滅表示から点灯表示に切り替えて警戒区域全体あるいは境界線が表示されている状態で印刷される。なお,上記の本発明の実施の形態では,CRT画面のハードコピーの起動手段はCRT画面上の操作表示部にある表示釦で説明したが,起動手段はCRT画面上に限らず,CRT画面外に設けてもよく,表示制御部にハードコピーを起動させる入力手段(例えばキーボードからの入力,一例としてはCOPYキー)を設け,その入力手段から入力があった時に,ハードコピーを行うようにしてもよい。」

の記載があるから,甲第3号証には,

「建物の2階の2-1と2-3と2-5の警戒区域で火災が発生し,それらの警戒区域のオン・オフ型火災感知器FDが火災を感知すると,それらの火災感知器FDの火災信号を防災受信機1に出力し,防災受信機1ではそれらの火災感知器FDの火災信号から何階のどの警戒区域に火災が発生したかが分かり,防災受信機1は何階のどの警戒区域の火災感知器がFDが火災を発報したかを示す火災表示指令を表示制御部3に出力し,
表示制御部3では,今までグラフィックエリア4bに表示されている建物の2階の平面図の表示画面又は「平常監視中」の表示画面から,防災受信機1からの火災表示指令に基づき2階の2-1,2-3,2-5の警戒区域の防災シンボルの一種である火災シンボルSを白抜き表示から赤色点滅表示に切り替えることにより,
画像表示装置4のCRT画面4aのグラフィックエリア4bに赤色点滅表示されている火災シンボルSを見ることにより,何階の警戒区域で火災が発生したのか,または何階のどの辺で火災が発生したかを的確に確認でき,
画面下部下側において,「12時45分 火災感知器 発報 本館2階レストラン」等のイベントをイベントリスト表示部4gに表示し,
点滅している火災シンボル又は防災シンボルに限らず,その火災シンボル又は防災シンボルを表示している警戒区域全体あるいは警戒区域の境界線が火災シンボル又は防災シンボルと同様に点滅表示している場合もある,
防災表示装置。」(以下,「甲3発明」という。)

の発明が記載されている。

4.甲4発明

甲第4号証(下線は当審が付与。)には,

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は火災信号等の防災情報を受けてCRT等の画像表示装置上に防災シンボルを表示する防災表示装置に関する。」

「【0017】図2はCRT21の画面のレイアウトを示し,21aは画面中央部において,例えば建物Bの所望の階の平面図の一部又は全体を表示するグラフィックエリア,21bは画面上部左側において例えば「本館2階の平面図」等のタイトル及び火災感知器が火災を感知したことを代表的に表示する火災代表を表示するタイトル表示部,21cは画面上部真中側において例えば「ガイダンス」,「シンボル凡例」,「取り扱い」等を表示するメニューバー,21dは画面上部右側において例えば「時刻」を表示する時計表示部,21eは画面中央右側において例えば「メニュー」,「前ページ」,「拡大表示」,「縮小表示」等の操作ボタンを表示する操作表示部,21fは画面下部左側において例えば「12時45分 火災感知器 発報 本館2階レストラン」等のイベントを表示するイベントリスト表示部である。」

「【0023】この状態で,例えば建物Bの2階の2-Bの警戒区域で火災が発生し,その警戒区域のオン・オフ型火災感知器FDが火災を感知すると,その火災感知器FDの火災信号を防災受信機10に出力し,防災受信機10ではその火災感知器FDの火災信号から何階のどの警戒区域に火災が発生したか分かる。そこで,防災受信機10は何階のどの警戒区域の火災感知器FDが火災を発報したかを示す火災表示指令を表示制御部20に出力する。そうすると,表示制御部20では,今まで図3に示すようにグラフィックエリア21aに表示されている建物Bの2階の平面図をデフォルト位置で表示する表示画面または「平常監視中」の表示画面或いは系統図の表示画面から,防災受信機10からの火災表示指令に基づき図4に示すように2階の2-Bの警戒区域の火災シンボルSをグラフィックエリア21aの中心点(真ん中)にしたその周辺の表示に切り替える。
【0024】このとき,グラフィックエリア21a及びキープラン表示部21hの火災発生箇所では,火災シンボルSが白抜き表示から赤色点滅表示に切り替わると共に,タイトル表示部21b内の火災代表表示を行う箇所で火災シンボルS(図示せず)が赤色点滅表示する。さらに,CRT21のキープラン表示部21hでは赤色点滅表示する火災シンボルS上にクロス点Xが生じるようにクロスバーが表示される。従って,CRT21のグラフィックエリア21aとキープラン表示部21hに赤色表示されている火災シンボルS及びクロス点Xを見ることにより,何階のどの警戒区域で火災が発生したのか,または何階のどの辺で火災が発生したかを的確に確認できる。」

「【0040】なお,グラフィックエリアの真ん中に表示する場所は火災シンボルまたは火災感知器シンボルの位置に限定されず,火災が感知されている時,感知されていない時に関わらず,キープラン表示部に表示されている全体平面図上においてマウスでクリックした場所としてもよい。この場合,クリックした場所がキープラン表示部でクロス点Xが表示される場所となる。また,火災表示はグラフィックエリアの火災シンボルまたは火災感知器シンボルの赤色点滅表示で説明したが,点灯表示でもよい。さらに,火災表示は,火災シンボルまたは火災感知器シンボルの他に,タイトル表示部の火災代表表示の火災シンボル,または火災感知器が設置されている警戒区域の外周を火災シンボルまたは火災感知器シンボルと同じような表示方法で表示してもよい。また,本発明の実施の形態では防災受信機と,表示制御部,CRT,マウス等のセットとを1対1として説明したが,LANを介して防災受信機に複数の表示制御部,CRT,マウス等のセットを接続してもよい。」

の記載があるから,甲第4号証には,

「建物Bの2階の2-Bの警戒区域で火災が発生し,その警戒区域のオン・オフ型火災感知器FDが火災を感知すると,その火災感知器FDの火災信号を防災受信機10に出力し,防災受信機10ではその火災感知器FDの火災信号から何階のどの警戒区域に火災が発生したか分かり,防災受信機10は何階のどの警戒区域の火災感知器FDが火災を発報したかを示す火災表示指令を表示制御部20に出力し,表示制御部20では,今までグラフィックエリア21aに表示されている建物Bの2階の平面図をデフォルト位置で表示する表示画面または「平常監視中」の表示画面或いは系統図の表示画面から,防災受信機10からの火災表示指令に基づき2階の2-Bの警戒区域の火災シンボルSをグラフィックエリア21aの中心点(真ん中)にしたその周辺の表示に切り替え,
グラフィックエリア21a及びキープラン表示部21hの火災発生箇所では,火災シンボルSが白抜き表示から赤色点滅表示に切り替わると共に,タイトル表示部21b内の火災代表表示を行う箇所で火災シンボルSが赤色点滅表示し,CRT21のキープラン表示部21hでは赤色点滅表示する火災シンボルS上にクロス点Xが生じるようにクロスバーが表示され,CRT21のグラフィックエリア21aとキープラン表示部21hに赤色表示されている火災シンボルS及びクロス点Xを見ることにより,何階のどの警戒区域で火災が発生したのか,または何階のどの辺で火災が発生したかを的確に確認でき,
「12時45分 火災感知器 発報 本館2階レストラン」等のイベントをイベントリスト表示部4fに表示し,
火災シンボルまたは火災感知器シンボルの他に,タイトル表示部の火災代表表示の火災シンボル,または火災感知器が設置されている警戒区域の外周を火災シンボルまたは火災感知器シンボルと同じような表示方法で表示してもよい,
防災表示装置。」(以下,「甲4発明」という。)

の発明が記載されている。

5.甲5発明

甲第5号証(下線は当審が付与。)には,

「【0015】
実施形態1
図1はこの発明の第1の実施形態にかかる火災報知設備の概略的なシステム構成図である。図1において,火災受信機10と,この火災受信機10に伝送線L1を通じて接続された試験機能付き中継器20と,同様に伝送線L1に接続された自動試験機能を備えたアドレス付き火災感知器50(以下,R-AT感知器という)と,試験機能付き中継器20に感知器回線L2を通じて接続された複数の自動試験機能を備えたオンオフ型火災感知器30(以下,P-AT感知器という)とが示されており,また,火災受信機10に移報信号線L3を介して接続される表示装置40が示されている。なお,この火災受信機10には,伝送線L1を介してその他の端末機器が図示しないが火災報知設備として必要に応じて接続されている。」

「【0017】
そして,R-AT感知器50は,伝送線L1に接続されるとともに,アドレスが付与されて端末機器として個別に火災受信機10と信号伝送を行うものであり,この信号伝送によって火災信号や試験情報が火災受信機10との間で送受信される。
【0018】
さらに,図1において,中継器20は,制御部21と,送受信部22と,信号検出部23と,信号送出部24とから構成されている。それぞれ詳細には説明しないが,この制御部21は,CPUやタイマ等を含む。また,送受信部24は,伝送線L1を介して火災受信機10と信号伝送するための伝送回路を含む。そして,信号検出部23および信号送出部24は,感知器回線L2を介して複数のP-AT感知器30に接続されている。
【0019】
そして,P-AT感知器30は,感知器回線L2に対して一般的なオンオフ型感知器と同様の火災信号を出力するものであり,さらにP-AT感知器30は,試験情報送出のためパルスを利用したコード信号を用いる信号伝送を行う。そして,P-AT感知器30からの火災信号(いわゆるスイッチング動作による感知器回線L2の低インピーダンス状態)および信号伝送のパルスは,中継器20の信号検出部23で検出され,また,P-AT感知器30への信号伝送のパルスは,中継器20の信号送出部から送出される。」

「【0039】
このようにして,火災受信機10は,R-AT感知器50からの火災信号または異常信号については,伝送線L1上の信号伝送によりアドレスによって個別に収集することができ,また,P-AT感知器30からの火災信号については,感知器回線L2ごとに試験機能付き中継器20により検出されて,伝送線L1上の信号伝送によりアドレスによって感知器回線L2ごとに収集され,P-AT感知器30からの異常信号(無応答も同様に)については,感知器回線L2ごとの枝番ごとに試験機能付き中継器20により検出されて伝送線L1上の信号伝送によりアドレスおよび枝番によってP-AT感知器30ごとの個別に収集することができる。」

「【0043】
図6は,CRT表示部44における表示画面の基本構成の内,グラフィックエリアに表示される平面図の一例を示す。ここで,詳細に説明しないが,表示画面の基本構成は,平面図等の表示領域としてのグラフィックエリアを中心に,操作項目を示すメニューバー,時刻表示エリア,平面図等の表示操作項目を示す共通操作エリア,火災情報等の発報表示領域としてのイベントリストエリア,および設備全体の状態に係わる状態表示領域としてのシステムメッセージエリア等が配置されている。
【0044】
図6において,平面図に対する地区および火災感知器のシンボル表示として,感知器回線L2に基づく地区が丸数字で1から3まで,そして,R-AT感知器50に該当する火災感知器のシンボルに,丸数字で使われている番号に連続する通し番号が付与されて4から12まで,それぞれ配置されている。ここで,通し番号5は熱感知器(四角内にHのシンボル)を示し,その他の火災感知器は煙感知器(四角内にSのシンボル)である。その他,ここに用いられていないが炎感知器や光電式分離型感知器等,各種センサ種別を区別できるシンボルが用意されている。」

「【0050】
図8は,図6の平面図において,火災が発生した場合の異なる平面図であり,倉庫Aで火災が発生した場合を示している。
【0051】
このとき,倉庫Aを含む通し番号3の地区が火災として表示され,通常青色で表示している地区の丸数字および境界線の内,境界線を赤色で点滅表示するとともに,火災発生を示す炎マークを該当丸数字の近傍に添えて赤色に表示する。これによって表示画面内において,火災を検知したP-AT感知器30が接続された感知器回線L2に基づいて火災の位置が概略で把握できるとともに,上記と同様,炎マークを添えることにより,表示関係について熟知しない者が見ても,火災発生であろうことが予測できる。」

の記載があるから,甲第5号証には,

「表示画面の基本構成は,平面図等の表示領域としてのグラフィックエリアを中心に,操作項目を示すメニューバー,時刻表示エリア,平面図等の表示操作項目を示す共通操作エリア,火災情報等の発報表示領域としてのイベントリストエリア,および設備全体の状態に係わる状態表示領域としてのシステムメッセージエリア等が配置され,
R-AT感知器50は,伝送線L1に接続されるとともに,アドレスが付与されて端末機器として個別に火災受信機10と信号伝送を行うものであり,
P-AT感知器30は,感知器回線L2に対して一般的なオンオフ型感知器と同様の火災信号を出力するものであり,
R-AT感知器50からの火災信号または異常信号については,伝送線L1上の信号伝送によりアドレスによって個別に収集することができ,また,P-AT感知器30からの火災信号については,感知器回線L2ごとに試験機能付き中継器20により検出されて,伝送線L1上の信号伝送によりアドレスによって感知器回線L2ごとに収集され,
平面図に対する地区および火災感知器のシンボル表示として,感知器回線L2に基づく地区が丸数字で1から3まで,そして,R-AT感知器50に該当する火災感知器のシンボルに,丸数字で使われている番号に連続する通し番号が付与されて4から12まで,それぞれ配置され,通し番号5は熱感知器(四角内にHのシンボル)を示し,その他の火災感知器は煙感知器(四角内にSのシンボル)であり,ここに用いられていないが炎感知器や光電式分離型感知器等,各種センサ種別を区別できるシンボルが用意されており,
倉庫Aで火災が発生した場合,倉庫Aを含む通し番号3の地区が火災として表示され,通常青色で表示している地区の丸数字および境界線の内,境界線を赤色で点滅表示するとともに,火災発生を示す炎マークを該当丸数字の近傍に添えて赤色に表示することにより,表示画面内において,火災を検知したP-AT感知器30が接続された感知器回線L2に基づいて火災の位置が概略で把握できるとともに,炎マークを添えることにより,表示関係について熟知しない者が見ても,火災発生であろうことが予測できる,
火災報知設備。」(以下,「甲5発明」という。)

の発明が記載されている。

6.甲第6号証の記載

甲第6号証(下線は当審が付与。)には,

「従来,火災感知器等の検出器にスピーカ等の音響変換器を設け,火災検出時に検出器のスピーカより警報音を出力するようにした装置としては,例えば特開昭54-5698号公開記載の自動火災報知装置がある。
この自動火災報知装置では,受信機よりの線路間に接続された感知器の各々にスピーカを設け,受信機が火災検出信号を受信したときには,線路間に可聴周波信号を出力して重畳させ,火災を検出している感知器のスピーカにより警報音を出力させるようにしている。
ところで,火災警報設備では,一般に防火区画で仕切られた警戒区域毎に回線を布設して複数の感知器を設置し,この防火区画内で間仕切りにより分けられている各部屋毎に感知器を設置している。」(1欄27行?2欄14行)

の記載があるから,甲第6号証には,

「火災報知装置では,防火区画で仕切られた警戒区域毎に回線を布設して複数の感知器を設置し,この防火区画内で間仕切りにより分けられている各部屋毎に感知器を設置している」(以下,「甲6記載技術」という。)

ことが記載されている。

7.甲第7号証の記載

甲第7号証(下線は当審が付与。)には,

「特許請求の範囲
(1) 火災報知用感知器の作動により火災報知を行わせるとともに防排煙用感知器の作動により防排煙機器を作動させる如くして防災システムを形成し,火災報知用感知器が作動したとき警戒区域および警戒区域番号を表示する如くし,防排煙用感知器が作動したとき警戒区域番号および防排煙機器シンボルを表示する如くして成ることを特徴とする防災システムの表示装置。」

の記載があるから,甲第7号証には,

「火災報知用感知器が作動したとき警戒区域および警戒区域番号を表示する防災システム」(以下,「甲7記載技術」という。)

ことが記載されている。


第5 当審の判断

1.本件発明と甲1発明の対比

本件発明と甲1発明を対比する。

(1)甲1発明において「警戒区域」は,「ビル等にあっては階別毎に分けられた」区域であるから,「警戒区域に設置している温度センサや煙濃度センサ等のアナログ火災センサ」は,本件発明の「建物内に設置された火災検出センサ」であるといえる。
甲1発明の「火災受信盤21」は,「ポーリングによりセンサから得られたデータを所定の火災判断レベルと比較し、火災判断レベルを超えるセンサデータが得られた時に、火災と判断」しているから,「火災検出センサの感知情報から,当該火災検出センサの設置位置近傍における火災の有無を検出する火災状況判断装置」であるといえる。

(2)甲1発明は,「ビル等にあっては階別毎に分けられた警戒区域の平面図」を含むグラフィックメモリ3の表示データを読み出して,CRTディスプレイ装置1に表示し」ているから,「前記建物の平面図の画像を表示画面に表示し」ているといえる。

(3)上記(1)で記載したことをふまえると,甲1発明の「センサデータについては所定レベルを超えるセンデータが得られた時」は「前記火災状況判定装置により前記火災検出センサの感知情報から火災が検出された場合」である。

(4)したがって,本件発明と甲1発明とは,

「建物内に設置された火災検出センサの感知情報から,当該火災検出センサの設置位置近傍における火災の有無を検出する火災状況判定装置と,
前記建物の平面図の画像を表示画面に表示し,前記火災状況判定装置により前記火災検出センサの感知情報から火災が検出された場合に,当該火災検出センサの設置位置に応じて,所定の表示をする情報伝達装置と,
を有することを特徴とする火災時現場対応支援システム。」

で一致し,下記の点で相違する。

(相異点1)
本件発明は「前記平面図の画像において前記建物内の複数の防火区画の境界を他の線とは異なる態様の線で示し」ているのに対し,甲1発明は防火区画に関する記載がない点。

(相異点2)
前記火災状況判定装置により前記火災検出センサの感知情報から火災が検出された場合に,本件発明は「当該火災検出センサの設置位置に応じて,前記火災が発生している防火区画の名称と火災が発生している部屋又は区画とを前記表示画面に表示する」のに対し,甲1発明は「対応する煙センサマーク7が点滅表示」される点。

2.相異点の検討

相違点について以下検討する。

(1)相異点1について

(1-1)甲2発明について

甲2発明の「地区」について検討すると,第3地区に設置されている煙感知器S1が火災を発報すると,第3地区の外形線L1が赤色に表示されるものであり,甲第2号証の図4を参照すれば二重線が地区の外形線であると理解するのが自然である。
一方,防火戸で防火区画が区切られることが技術常識であることをふまえれば,甲2発明は,防火戸D5が二重線で囲まれた図形の内側に存在しており,第5地区と第6地区の間には防火戸は存在していないから,二重線は防火区画とは異なる区画を示していることが明らかである。
つまり,甲2発明の「地区」は防火区画とは異なる区画であるから,甲2発明は「複数の防火区画の境界を他の線とは異なる態様の線で示し」てはいない。

(1-2)甲3-5発明,甲6記載技術,甲7記載技術について

甲3発明は「その火災シンボル又は防災シンボルを表示している警戒区域全体あるいは警戒区域の境界線が火災シンボル又は防災シンボルと同様に点滅表示」するものの,「警戒区域の境界を他の線とは異なる態様の線で示す」ことは記載されていない。
また,甲4発明は,「火災感知器が設置されている警戒区域の外周を火災シンボルまたは火災感知器シンボルと同じような表示方法で表示してもよい」ものの,「警戒区域の境界を他の線とは異なる態様の線で示す」ことは記載されていない。
したがって,甲6記載技術をふまえて,「警戒区域」が「防火区画で仕切られた」ものであることが一般的であることを考慮しても,「警戒区域」は「防火区画で仕切られ」るものであって,「防火区画」と同じではないから,「複数の防火区画の境界を他の線とは異なる態様の線で示し」ていることは甲3発明,甲4発明には記載されていない。

一方,甲5発明は,「感知器回線L2に基づく地区が丸数字で1から3まで」付与されて,「倉庫Aで火災が発生した場合,倉庫Aを含む通し番号3の地区が火災として表示され,通常青色で表示している地区の丸数字および境界線の内,境界線を赤色で点滅表示する」ことは記載されており,地区の境界線は,他の線とは識別可能に表示されている。
しかし,「感知器回線L2」は「P-AT感知器30」が接続されている回線であって,アドレスによって個別に収集する「R-AT感知器50」と異なり,「感知器回線L2ごとに試験機能付き中継器20により検出され」るものであり,「R-AT感知器50」については,「R-AT感知器50に該当する火災感知器のシンボルに,丸数字で使われている番号に連続する通し番号が付与され」るものであって,「感知器回線L2」と「R-AT感知器50」に連続した通し番号が付与されているから,甲5発明の「地区」の境界線は,火災の検出単位を示していると解するのが自然である。
したがって,甲6記載技術をふまえて,「防火区画で仕切られた警戒区域毎に回線を布設して複数の感知器を設置」することが一般的であることを考慮しても,「感知器回線L2」の境界線が「防火区画」の境界線であるとは解されないから,甲5発明,甲7記載技術を考慮しても,「複数の防火区画の境界を他の線とは異なる態様の線で示す」ことは記載されていない。

(1-3)甲1発明に,甲2発明あるいは甲3-5発明を適用することについて

甲1発明は,「警戒区域に設置されている防火戸や防火シャッター,排煙口,垂れ壁等の防災機器の設置位置を表示するためのシンボルマーク」を表示し,「所定レベルを越えるセンサ信号入力があったときに対応するセンサマークを点滅してオペレータに確認を促」すものであって,警戒区域を所定のエリアに区分することは考慮されておらず,甲1発明において,「オペレータに確認を促」すために,所定のエリアに区分する必要性も,2種類の態様の線を用いる必要もない。
したがって,甲1発明において,甲2発明あるいは甲3-5発明を適用しようとする動機付けが存在しない。

(1-4)小括

(1-3)に記載したように,甲1発明において甲2発明あるいは甲3-5発明を適用しようとする動機付けが存在しないし,そもそも,甲2発明,甲3-5発明のいずれにも「複数の防火区画の境界を他の線とは異なる態様の線で示す」ことは記載されていないから,「前記平面図の画像において前記建物内の複数の防火区画の境界を他の線とは異なる態様の線で示」すことについて,当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。

(2)相異点2について

上記「(1)相異点1について」で検討したように,甲2-5発明,甲6記載技術,甲7記載技術には,いずれも「防火区画」に関する記載はないから,「防火区画の名称」を表示することも当然に記載されていない。

3.申立人の主張について

申立人は,特許異議申立書の26頁において「警戒区域と防火区画」について「互いに一致するように設定することは,例えば甲第6号証に記載されている。」と主張しているが,甲第6号証には「防火区画で仕切られた警戒区域毎に回線を布設して複数の感知器を設置」と記載されている。ここで「防火区画で仕切られた警戒区域」であるから,「警戒区域」が「防火区画で仕切られ」ること,すなわち「防火区画」は「警戒区域」を仕切ったものであることが記載されているだけであって,警戒区域と防火区画が一致することが記載されているとはいえない。

上記は,甲第1号証においても,「火災報知設備の監視対象となる警戒区域」や「例えばビル等にあっては階別毎に分けられた警戒区域」および「警戒区域に設置されている防火戸や防火シャッター,排煙口,垂れ壁等の防災機器」と記載されているから,「火災報知設備の監視対象」が「警戒区域」であって,警戒区域内に「防火戸」や「防火シャッター」等の防災機器が設置されているから,「警戒区域」を「警戒区域内に設置されている防火戸」によって仕切ったものが「防火区画」であると理解される。


第6 まとめ

以上のとおりであるから,特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって,本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-07-30 
出願番号 特願2017-252613(P2017-252613)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G08B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西巻 正臣  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 吉田 隆之
衣鳩 文彦
登録日 2020-11-13 
登録番号 特許第6794339号(P6794339)
権利者 清水建設株式会社 ホーチキ株式会社
発明の名称 火災時現場対応支援システム  
代理人 川渕 健一  
代理人 松沼 泰史  
代理人 川渕 健一  
代理人 西澤 和純  
代理人 松沼 泰史  
代理人 西澤 和純  

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