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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1377108
審判番号 不服2021-856  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-21 
確定日 2021-08-31 
事件の表示 特願2018-545842「偏向する内視鏡アクセサリチャネル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 8日国際公開、WO2017/151559、平成31年 3月28日国内公表、特表2019-508145、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2017年(平成29年)2月28日(パリ条約による優先権主張 2016年3月1日 米国、2016年9月1日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和元年9月18日付けで拒絶理由が通知され、同年12月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和2年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年5月29日付けで意見書が提出され、同年9月16日付けで拒絶査定(原査定)されたところ、令和3年1月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年9月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明、並びに引用文献4-7及び9に記載された技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
2.特開昭61-280849号公報
4.特開昭62-74348号公報
5.特表2015-512661号公報
6.特表2009-529390号公報
7.特開2005-152452号公報
9.特開昭62-292135号公報

第3 本願発明
審判請求時の手続補正は、請求項9が引用する請求項を「請求項1?8」から「請求項1?5」に、請求項11が引用する請求項を「請求項1?8」から「請求項1?3」に補正するものであり、請求項6?8を引用する請求項9、請求項4?8を引用する請求項11を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものであり、また、特許法第17条の2第3項及び第4項の要件に違反しているものでもない。
そうすると、本願請求項1-13に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、令和3年1月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、3、4、6はそれぞれ以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
スコープシステムであって、
長尺状チューブであって、前記長尺状チューブ内に延びるルーメンを含み、遠位端部を更に含む、長尺状チューブと、
近位端から遠位端まで延びる少なくとも1つのアクセサリチャネルであって、前記少なくとも1つのアクセサリチャネル内に延びるアクセサリルーメンを含み、少なくとも部分的に前記長尺状チューブの前記ルーメン内に可動的に配置されており、遠位観察端において終端する遠位部分を含み、直視型構成及び側視型構成を更に含む、少なくとも1つのアクセサリチャネルと
を含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は、前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に結合されており、
前記直視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に実質的に平行であり、
前記側視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に対し角度を成して配置されており、
近位端から遠位端まで延びるレールであって、第1の箇所において前記少なくとも1つのアクセサリチャネルに枢動自在に取り付けられているレールを更に含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記第1の箇所の近位側の第2の箇所において、前記長尺状チューブに対して長手方向に固定されており、
前記レールの近位方向の動きによって、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルが前記直視型構成から前記側視型構成に移行する、
スコープシステム。」

「 【請求項3】
スコープシステムであって、
長尺状チューブであって、前記長尺状チューブ内に延びるルーメンを含み、遠位端部を更に含む、長尺状チューブと、
近位端から遠位端まで延びる少なくとも1つのアクセサリチャネルであって、前記少なくとも1つのアクセサリチャネル内に延びるアクセサリルーメンを含み、少なくとも部分的に前記長尺状チューブの前記ルーメン内に可動的に配置されており、遠位観察端において終端する遠位部分を含み、直視型構成及び側視型構成を更に含む、少なくとも1つのアクセサリチャネルと
を含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は、前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に結合されており、
前記直視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に実質的に平行であり、
前記側視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に対し角度を成して配置されており、
近位端から遠位端まで延びるレールであって、第1の箇所において前記少なくとも1つのアクセサリチャネルに枢動自在に取り付けられているレールを更に含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記第1の箇所の遠位側の第2の箇所において、前記長尺状チューブに対して長手方向に固定されており、
前記レールの遠位方向の動きによって、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルが前記直視型構成から前記側視型構成に移行する、
スコープシステム。」

「 【請求項4】
スコープシステムであって、
長尺状チューブであって、前記長尺状チューブ内に延びるルーメンを含み、遠位端部を更に含む、長尺状チューブと、
近位端から遠位端まで延びる少なくとも1つのアクセサリチャネルであって、前記少なくとも1つのアクセサリチャネル内に延びるアクセサリルーメンを含み、少なくとも部分的に前記長尺状チューブの前記ルーメン内に可動的に配置されており、遠位観察端において終端する遠位部分を含み、直視型構成及び側視型構成を更に含む、少なくとも1つのアクセサリチャネルと
を含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は、前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に結合されており、
前記直視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に実質的に平行であり、
前記側視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に対し角度を成して配置されており、
前記長尺状チューブの前記遠位端部は、前記遠位端部に沿って長手方向に延びるスロットを更に含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記スロット内に摺動自在に配置されたピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に接続されており、引張り部材が前記ピンから近位に延びており、
近位方向の力を前記引張り部材に印加することで前記ピンが前記スロットに沿って近位に摺動し、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルが前記直視型構成から前記側視型構成に移行する、
スコープシステム。」

「 【請求項6】
スコープシステムであって、
長尺状チューブであって、前記長尺状チューブ内に延びるルーメンを含み、遠位端部を更に含む、長尺状チューブと、
近位端から遠位端まで延びる少なくとも1つのアクセサリチャネルであって、前記少なくとも1つのアクセサリチャネル内に延びるアクセサリルーメンを含み、少なくとも部分的に前記長尺状チューブの前記ルーメン内に可動的に配置されており、遠位観察端において終端する遠位部分を含み、直視型構成及び側視型構成を更に含む、少なくとも1つのアクセサリチャネルと
を含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は、前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に結合されており、
前記直視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に実質的に平行であり、
前記側視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に対し角度を成して配置されており、
前記長尺状チューブの前記遠位端部は、前記遠位部分に沿って長手方向に延びるスロットを更に含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記スロット内に摺動自在に配置された第1のピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に接続されており、引張り部材が前記第1のピンから近位に延びており、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは更に、前記第1のピンの遠位側に位置する第2のピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に接続されており、
近位方向の力を前記引張り部材に印加することで前記第1のピンが前記スロットに沿って近位に摺動し、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは前記側視型構成から前記直視型構成に移行する、
スコープシステム。」

なお、本願発明2、5、7-13の概要は以下の通りである。

本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明5は、本願発明4を減縮した発明である。

本願発明7は、本願発明6を減縮した発明である。

本願発明8、10、12、13は、本願発明1、3、4、6のいずれかを減縮した発明である。

本願発明9は、本願発明1、3、4のいずれかを減縮した発明である。

本願発明11は、本願発明1、3のいずれかを減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開昭61-280849号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

ア 「 第1図は体腔内超音波診断装置の全体的構成を示し、1はその体腔内超音波スキャナである。この体腔内超音波スキャナ1は操作部2および挿入部3からなり、さらに、操作部2にはユニバーサルコード4と電気ケーブル5が連結されている。ユニバーサルコード4は後述する補助装置6のライトガイド7を案内するもので、この延出先端には図示しない内視鏡用光源に連結されるコネクタ8が設けられている。また、上記挿入部3は基端側の軟性部9の先端に湾曲部11を介して先端硬質部12を連結してなり、上記湾曲部11は操作部2に設けた湾曲操作ノブ13,13を操作することにより遠隔的に湾曲させられるようになっている。
挿入部3内には補助装置6を進退自在に挿通案内する挿通チャンネル14がその長手方向に沿って形成されている。この挿通チャンネル14の先端は第4図で示すように、先端硬質部12において開口している。この先端硬質部12の背面部分には上記補助装置6の先端部分を第1図および第2図で示すように沿わせて収める収納部15が形成されている。そして、挿通チャンネル14の先端開口16はその収納部15に向けて開口されている。さらに、収納部15に補助装置6の先端部分を収めてあるとき、その全体は挿入部3より大きくならないようになっている。
また、補助装置6は可撓性のチューブ体17の内部にイメージガイド18およびライトガイド19が挿通されるとともに穿刺針誘導チャンネル21が形成されている。補助装置6の先端面には第3図で示すようにライトガイド19の先端が臨み、さらに穿刺針誘導チャンネル21の先端が開口している。また、この補助装置6の先端面には対物レンズ22が設けられており、この対物レンズ22により観察視野の光像をイメージガイド18の先端面に結像する。そして、この像はイメージガイド18を介して操作部2の接眼部23に伝送される。つまり、この対物レンズ22、イメージガイド18および接眼部23等により目視による観察光学系を構成している。
さらに、補助装置6のチューブ体17の最先端部分はリンクからなる架設部材24を介して体腔内超音波スキャナ1における先端硬質部12の最先端に連結されている。つまり、架設部材24の一端は先端硬質部12の先端に枢着され、他端はチューブ体17の先端に枢着されており、チューブ体17の先端を保持して自由に回転規制する回動部を構成している。
上記チューブ体17の基端側途中は第1図で示すように挿通チャンネル14から外部にループ状に導出しており、この導出部分を手に持って挿通チャンネル14に対して押込み引抜き操作するスライド操作部25を構成している。」(第2頁右上欄第14行-第3頁左上欄第8行)

イ 「 次に、上記体腔内超音波診断装置の作用について説明する。まず、体腔内超音波スキャナ1の挿入部3を体腔内に挿入および検査後抜去するとき、補助診断装置6は第1図や第2図で示すようスライド操作部25においてそのチューブ体17を引くことによりチューブ体17の先端部を収納部15に収める。つまり、先端開口16に引き込み架設部材24を回動させるため、その先端部は収納部15の底面、つまり、超音波探触子30の背面に密着して飛び出すことなく納まる。そして、この補助診断装置6の視野範囲Hは挿入部3の前方へ向く。
しかして、この状態で体腔内に挿入部3を挿入し、あるいは抜去する。このため、狭い管腔内でも容易に挿入および抜去を行なうことができる。
一方、挿入部3を体腔内の広い空間部分、たとえば胃35内まで挿入した後、超音波診断を行なう場合には手元側のスライド操作部25において補助装置6のチューブ体17を押し込む。これによりチューブ体17の先端は架設部材24を押しながら前進して収納部15から離れるが、そのチューブ体17の先端はその架設部材24に連結されているため、その2つの回転中心のまわりで一定の距離を保ちながら回転する。チューブ体17の先端側部分は挿通チャンネル14の先端間口16から押し出されて第4図で示すようにループ状になる。そして、この先端は反転して超音波探触子30の走査範囲Sの部位側を向く。
そして、超音波探触子30の前面を体腔壁に当てた状態で病変部36を確認する。さらに、補助装置6の目視観察によりその穿刺部位周辺を確認できる。」(第3頁右上欄第7行-同頁左下欄第20行)

(2)引用文献2の図面
引用文献2には次の図面がある。

ア 第1図


イ 第2図


ウ 第4図


(3)引用発明
ア 第2図からの看取事項
「補助診断装置6」の「視野範囲H」が「挿入部3」の前方へ向くとき、「チューブ体17」からなる「補助診断装置6」の先端部分は「先端硬質部12」に対して略平行であり、「チューブ体17」の先端部分は「先端硬質部12」に対して略平行である。

イ 第4図からの看取事項
「チューブ体17」の先端が「超音波探触子30」の「走査範囲S」の部位側を向くとき、「補助装置6」の「視野範囲H」は「挿入部3」の側方を向き、「チューブ体17」の先端部分は「先端硬質部12」に対し角度を成す。

ウ したがって、上記ア、イの事項を踏まえると、上記引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「体腔内超音波スキャナ1であって、
操作部2および挿入部3からなり、
挿入部3は基端側の軟性部9の先端に湾曲部11を介して先端硬質部12を連結してなり、
挿入部3内には補助装置6を進退自在に挿通案内する挿通チャンネル14がその長手方向に沿って形成され、挿通チャンネル14の先端は先端硬質部12において開口し、
先端硬質部12の背面部分には補助装置6の先端部分を収める収納部15が形成され、
補助装置6は可撓性のチューブ体17の内部にイメージガイド18が挿通され、補助装置6の先端面には対物レンズ22が設けられ、対物レンズ22、イメージガイド18等により目視による観察光学系を構成し、
補助装置6のチューブ体17の最先端部分はリンクからなる架設部材24を介して先端硬質部12の最先端に連結され、架設部材24はチューブ体17の先端を保持して回転規制する回動部を構成し、
チューブ体17の基端側途中は挿通チャンネル14から外部にループ状に導出し、この導出部分を手に持って挿通チャンネル14に対して押込み引抜き操作するスライド操作部25を構成し、
挿入部3を体腔内に挿入するとき、スライド操作部25においてチューブ体17を引くことによりチューブ体17の先端部を収納部15に収め、補助診断装置6の視野範囲Hは挿入部3の前方へ向き、チューブ体17の先端部分は先端硬質部12に対して略平行であり、
挿入部3を体腔内の空間部分まで挿入した後超音波診断を行なう場合には、スライド操作部25においてチューブ体17を押し込み、これによりチューブ体17の先端は収納部15から離れ、2つの回転中心のまわりで一定の距離を保ちながら回転し、超音波探触子30の走査範囲Sの部位側を向き、補助装置6の視野範囲Hは挿入部3の側方を向き、チューブ体17の先端部分は先端硬質部12に対し角度を成し、補助装置6の目視観察によりその穿刺部位周辺を確認できる、
体腔内超音波スキャナ1。」

2.引用文献6について
(1)引用文献6の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特表2009-529390号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

ア 「【0017】
図1を参照すると、体組織を処理するための装置全体が、参照符号1として示されている。装置1は、ベース構造2と、近位端部4および向き設定可能な遠位端部5を有する少なくとも1つの管状部材3を含む。遠位端部5は、例えば把持器7などの手術器具を支持するための座部6を定めている。管状部材3は、作動機構、具体的には関節フレーム8によってベース構造2に接続されている。この作動機構は、管状部材3の遠位端部5の向きを設定して特定の動作配置にするのに適しており、具体的には、ベース構造2の長手方向軸(後述する挿入チューブ10の遠位端部部分9の長手方向軸R10に一致する)に対して遠位端部5を傾斜方向または横断方向に向き設定するのに適している。作動機構8はまた、ベース構造2に接続されている。
【0018】
ベース構造2は、作動機構8および管状部材3を挿入チューブ10の外側に配列できるように、内視鏡または腹腔鏡の挿入チューブ10の遠位端部部分9に接続されるか、または適当な接続手段を介して接続されることもできる。管状部材3は、ベース構造2に対する管状部材3の作動部分11の運動によって向き設定可能な遠位端部5を上記のように向き設定するように、作動機構8に接続されている。」

イ 「【0022】
関節フレーム8は、ベース構造2の固定ヒンジ部分12に回転可能に接続された第1の端部と、固定ヒンジ部分12よりも近位側のベース構造2のガイド部分13にスライド可能、具体的には長手方向に運動可能に接続された第2の端部を有する。このように、関節フレーム8の第2の端部がガイド13に沿って運動すると、関節フレーム8が変形して、従って、この関節フレームに接続された向き設定可能な端部5の向きが設定される。」

(2)引用文献6の図面
引用文献6には次の図面がある。

ア 【図1】


(3)引用文献6に記載の技術
したがって、上記引用文献6には次の技術が記載されていると認められる。

「ベース構造2と、近位端部4および向き設定可能な遠位端部5を有する管状部材3を含む、体組織を処理するための装置1において、管状部材3を、ベース構造2の固定ヒンジ部分12に回転可能に接続された第1の端部と固定ヒンジ部分12よりも近位側のベース構造2のガイド部分13にスライド可能に接続された第2の端部を有する関節フレーム8によって、ベース構造2に接続し、ベース構造2に対する管状部材3の作動部分11の運動によって遠位端部5を向き設定可能とする技術。」

3.引用文献9について
(1)引用文献9の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献9(特開昭62-292135号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

ア 「 内視鏡の挿入部を体腔内に挿入する際にその挿入部を挿通させて案内として用いる筒状体からなる内視鏡用挿入補助具において、上記筒状体には、その先端部側壁に開口部を設け、この開口部と対向する内側に一端側が上記筒状体に固定され他端側がスライド自在に支持された屈曲自在な帯状材を設けたことを特徴とする内視鏡用挿入補助具。」(特許請求の範囲)

イ 「そこで、十二指腸用内視鏡11で十二指腸乳頭13を確認した後、挿入補助具1を押し込み、第4図に示すようにその開口部4をその内視鏡11の観察窓に合せる。ついで、上記十二指腸用内視鏡11だけを体腔から抜去したのち、その挿入補助具1に直視型の胆道検査用内視鏡12を挿入する。そして、この胆道検査用内視鏡12を湾曲操作してその先端が十二指腸乳頭13を正面視する位置にもっていく、そこで、操作摘み9を押し込むと、帯状材7の上記開口部4と対応する部分がこの開口部4の方向へ湾曲する。したがって、この状態で胆道検査用内視鏡12をさらに押し込めば、この内視鏡12の挿入部の先端部12aが上記帯状材7の湾曲部に案内されて総胆管14に挿入されることになる。」(第2頁左下欄第5行-同欄第19行)

ウ 「 第5図はこの発明の第2の実施例で、これは帯状材7を筒状体2の先端部分にだけ設け、この帯状材7の基端にチューブ状の案内シース16に挿通されたワイヤあるいはピアノ線などの線材17の先端を連結し、この線材17を押し引き操作して上記帯状材7を湾曲させるようにしたものである。」(第2頁右下欄第5行-同欄第11行)

(2)引用文献9の図面
引用文献9には次の図面がある。

ア 第4図


イ 第5図


(3)引用文献9に記載の技術
したがって、上記引用文献9には次の技術が記載されていると認められる。

「筒状体からなり、一端側が筒状体に固定され他端側がスライド自在に支持された屈曲自在な帯状材を備える内視鏡用挿入補助具において、帯状材7の基端に線材17の先端を連結し、この線材17を押し引き操作して帯状材7を湾曲させる技術。」

第5 対比・判断
1.本願発明3について
(1)対比
ア 最初に本願発明3について対比・判断を行う。本願発明3と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「体腔内超音波スキャナ1」は、「対物レンズ22、イメージガイド18等により目視による観察光学系を構成」するものであるから、本願発明3の「スコープシステム」に相当する。

(イ)引用発明において、「挿入部3」は「基端側の軟性部9の先端に湾曲部11を介して先端硬質部12を連結してなり」、「補助装置6を進退自在に挿通案内する挿通チャンネル14がその長手方向に沿って形成され」るものであり、また、「先端硬質部12の背面部分には補助装置6の先端部分を収める収納部15が形成され」る。してみると、引用発明の「挿通チャンネル14」、「先端硬質部12」は、それぞれ、本願発明3の「ルーメン」、「遠位端部」に相当し、そして、引用発明の「挿入部3」は本願発明3の「長尺状チューブであって、前記長尺状チューブ内に延びるルーメンを含み、遠位端部を更に含む、長尺状チューブ」に相当する。

(ウ)引用発明において、「チューブ体17」は「内部にイメージガイド18が挿通され」、「チューブ体17」からなる「補助装置6」は「挿通チャンネル14」において「進退自在に挿通案内」され、当該「補助装置6」の「先端面には対物レンズ22が設けられ」る。ここで、「内部にイメージガイド18が挿通され」るのだから、「チューブ体17」は「イメージガイド18」を挿通するためのルーメン含むのは明らかである。また、引用発明は、「挿入部3を体腔内に挿入するとき」、「チューブ体17」からなる「補助診断装置6の視野範囲Hは挿入部3の前方へ向き」、「挿入部3を体腔内の空間部分まで挿入した後超音波診断を行なう場合には」、「補助装置6の視野範囲Hは挿入部3の側方を向」くものである。
以上より、引用発明の「チューブ体17」の「イメージガイド18」を挿通するためのルーメン、「チューブ体17」の「対物レンズ22」が設けられる先端部分、「視野範囲H」が「挿入部3」の前方を向く状態、「視野範囲H」が「挿入部3」の側方を向く状態は、それぞれ、本願発明3の「アクセサリルーメン」、「遠位観察端」、「直視型構成」、「側視型構成」に相当し、そして、引用発明の「チューブ体17」は本願発明3の「近位端から遠位端まで延びる少なくとも1つのアクセサリチャネルであって、前記少なくとも1つのアクセサリチャネル内に延びるアクセサリルーメンを含み、少なくとも部分的に前記長尺状チューブの前記ルーメン内に可動的に配置されており、遠位観察端において終端する遠位部分を含み、直視型構成及び側視型構成を更に含む、少なくとも1つのアクセサリチャネル」に相当する。

(エ)引用発明の「チューブ体17の最先端部分はリンクからなる架設部材24を介して」「挿入部3の」「先端硬質部12の最先端に連結され、架設部材24はチューブ体17の先端を保持して回転規制する回動部を構成し」は本願発明3の「前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は、前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に結合されており」に相当する。

(オ)引用発明は「挿入部3を体腔内に挿入するとき」、「補助診断装置6の視野範囲Hは挿入部3の前方へ向き、チューブ体17の先端部分は先端硬質部12に対して略平行であ」るものである。そして、引用発明の「視野範囲H」が「挿入部3」の前方を向く状態において「チューブ体17」の先端部分は「先端硬質部12」に対して略平行である点は、本願発明3の「前記直視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に実質的に平行であり」に相当する。

(カ)引用発明は「挿入部3を体腔内の空間部分まで挿入した後超音波診断を行なう場合には」、「補助装置6の視野範囲Hは挿入部3の側方を向き、チューブ体17の先端部分は先端硬質部12に対し角度を成」すものである。そして、引用発明の「視野範囲H」が「挿入部3」の側方へ向く状態において「チューブ体17」の先端部分は「先端硬質部12」に対し角度を成す点は、本願発明3の「前記側視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に対し角度を成して配置されており」に相当する。

(キ)引用発明は「スライド操作部25においてチューブ体17を押し込」むことにより、「チューブ体17の先端」は「超音波探触子30の走査範囲Sの部位側を向」き「視野範囲H」は「挿入部3」の側方へ向くものと認められるから、引用発明は、本願発明3と「前記少なくとも1つのアクセサリチャネルが前記直視型構成から前記側視型構成に移行する」点で共通する。

イ したがって、本願発明3と引用発明との間には、次の一致点、相違点1があるといえる。

【一致点】
「スコープシステムであって、
長尺状チューブであって、前記長尺状チューブ内に延びるルーメンを含み、遠位端部を更に含む、長尺状チューブと、
近位端から遠位端まで延びる少なくとも1つのアクセサリチャネルであって、前記少なくとも1つのアクセサリチャネル内に延びるアクセサリルーメンを含み、少なくとも部分的に前記長尺状チューブの前記ルーメン内に可動的に配置されており、遠位観察端において終端する遠位部分を含み、直視型構成及び側視型構成を更に含む、少なくとも1つのアクセサリチャネルと
を含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は、前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に結合されており、
前記直視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に実質的に平行であり、
前記側視型構成において、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルの前記遠位観察端は前記長尺状チューブの前記遠位端部に対し角度を成して配置されており、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルが前記直視型構成から前記側視型構成に移行する、
スコープシステム。」

【相違点1】
「前記少なくとも1つのアクセサリチャネル」の「前記直視型構成から前記側視型構成」への「移行」が、
本願発明3では、
「近位端から遠位端まで延びるレールであって、第1の箇所において前記少なくとも1つのアクセサリチャネルに枢動自在に取り付けられているレールを更に含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記第1の箇所の遠位側の第2の箇所において、前記長尺状チューブに対して長手方向に固定されており、
前記レールの遠位方向の動きによって」移行するのに対し、
引用発明では、
「近位端から遠位端まで延びるレールであって、第1の箇所において前記少なくとも1つのアクセサリチャネルに枢動自在に取り付けられているレール」を含んでおらず、
「前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記第1の箇所の遠位側の第2の箇所において、前記長尺状チューブに対して長手方向に固定されて」おらず、
「アクセサリチャネル」を「スライド操作部25」において押し込むことによって移行するものである点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
ア まず、引用文献9記載の技術の引用発明への適用について検討する。
引用発明と引用文献9に記載の技術とは何れも内視鏡という点で技術分野が共通しており、また、部材に対して力を伝達するという点において機能ないしは作用が共通するということもできる。しかしながら、引用文献9に記載の技術は内視鏡用挿入補助具が備える帯状材7を線材17を押し引き操作して湾曲させるというものであり、内視鏡のアクセサリチャネル先端の方向を変化させるものではない。すなわち、引用発明と引用文献9に記載の技術とでは力を伝達する対象が異なる。加えて、引用文献9に記載の技術は、帯状材7の一端は筒状体に固定されておりその方向を変化させるものではない点、帯状材7は体腔内に配置される部材であって(上記「第4」「3.」「(2)」の「ア」及び「イ」より)アクセサリチャネルのように外部から体腔内に至る長尺状部材ではない点等で、引用発明とは前提とする機械的ないしは構造的構成が大きく異なる。したがって、当業者が引用文献9を参照したとしても、引用発明においてアクセサリチャネルの先端を回転させてアクセサリチャネルを直視型構成から側視型構成に移行させるための手段として引用文献9に記載の技術を採用することにはならない。

イ また、上記引用文献6記載の技術は、上記相違点1に相当するものではなく、そして、その余の引用文献4、5及び7にも上記相違点1に相当する技術は記載されていないことから、引用発明に引用文献4-7記載の技術を適用しても、本願発明3の構成とはならない。

ウ 仮に、相違点1に相当する技術があると仮定した場合でも、引用発明はアクセサリチャネル(チューブ体17)をスライド操作部25において押し込むことによって、アクセサリチャネルの先端を回転させて、アクセサリチャネルを直視型構成から側視型構成に移行させるものであり、アクセサリチャネル先端に対してアクセサリチャネル先端の方向を変化させる力をアクセサリチャネル自体により伝達するものと認められることから、このような引用発明において、アクセサリチャネル先端に対してアクセサリチャネル先端の方向を変化させる力を伝達するための手段をあえてアクセサリチャネル自体とは別に設けることとする動機付けはないものといえる。

エ したがって、本願発明3は当業者であっても引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献4-7、9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、上記「1.」「(1)」「ア」と同じことがいえる。そして、本願発明1と引用発明との間には上記「1.」「(1)」「イ」と同じ一致点があり、次の相違点2があるといえる。

【相違点2】
「前記少なくとも1つのアクセサリチャネル」の「前記直視型構成から前記側視型構成」への「移行」が、
本願発明1では、
「近位端から遠位端まで延びるレールであって、第1の箇所において前記少なくとも1つのアクセサリチャネルに枢動自在に取り付けられているレールを更に含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記第1の箇所の近位側の第2の箇所において、前記長尺状チューブに対して長手方向に固定されており、
前記レールの近位方向の動きによって」移行するのに対し、
引用発明は、
「近位端から遠位端まで延びるレールであって、第1の箇所において前記少なくとも1つのアクセサリチャネルに枢動自在に取り付けられているレール」を含んでおらず、
「前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記第1の箇所の近位側の第2の箇所において、前記長尺状チューブに対して長手方向に固定されて」おらず、
「アクセサリチャネル」を「スライド操作部25」において押し込むことによって移行するものである点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2について検討すると、上記「1.」「(2)」で検討したと同様に、当業者が引用文献9を参照したとしても引用発明においてアクセサリチャネルの先端を回転させてアクセサリチャネルを直視型構成から側視型構成に移行させるための手段として引用文献9に記載の技術を採用することにはならず、引用文献4-7には上記相違点2に相当する技術は記載されていないことから、引用発明に引用文献4-7、9記載の技術を適用しても、本願発明1の構成とはならない。
また、仮に、上記相違点2に相当する技術があると仮定した場合でも、引用発明においてアクセサリチャネル先端に対してアクセサリチャネル先端の方向を変化させる力を伝達するための手段をあえてアクセサリチャネル自体とは別に設けることとする動機付けはない。
したがって、本願発明1は当業者であっても引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献4-7、9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4について
(1)対比
本願発明4と引用発明とを対比すると、上記「1.」「(1)」「ア」と同じことがいえる。そして、本願発明4と引用発明との間には上記「1.」「(1)」「イ」と同じ一致点があり、次の相違点3があるといえる。

【相違点3】
「前記少なくとも1つのアクセサリチャネル」の「前記直視型構成から前記側視型構成」への「移行」が、
本願発明4では、
「前記長尺状チューブの前記遠位端部は、前記遠位端部に沿って長手方向に延びるスロットを更に含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記スロット内に摺動自在に配置されたピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に接続されており、引張り部材が前記ピンから近位に延びており、
近位方向の力を前記引張り部材に印加することで前記ピンが前記スロットに沿って近位に摺動し」て移行するのに対し、
引用発明は、
「前記長尺状チューブの前記遠位端部は、前記遠位端部に沿って長手方向に延びるスロット」を含んでおらず、
「前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記スロット内に摺動自在に配置されたピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に接続されており、引張り部材が前記ピンから近位に延びて」おらず、
「アクセサリチャネル」を「スライド操作部25」において押し込むことによって移行するものである点。

(2)相違点についての判断
上記相違点3について検討すると、引用文献6記載の技術はベース構造2のガイド部分13に関節フレーム8の第2の端部をスライド可能に接続するものであるが、引用文献6には当該「ガイド部分13」に関して本願発明4の「前記長尺状チューブの前記遠位端部は、前記遠位端部に沿って長手方向に延びるスロットを更に含み」に対応する構成は開示されておらず、本願発明4の「引張り部材が前記ピンから近位に延びており」に対応する構成も開示されていない。また、引用文献4、5、7、9にも上記相違点3に相当する技術は記載されていない。よって、引用発明に引用文献4-7、9記載の技術を適用しても、本願発明4の構成とはならない。
また、仮に、上記相違点3に相当する技術があると仮定した場合でも、引用発明においてアクセサリチャネル先端に対してアクセサリチャネル先端の方向を変化させる力を伝達するための手段をあえてアクセサリチャネル自体とは別に設けることとする動機付けはない。
したがって、本願発明4は当業者であっても引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献4-7、9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明6について
(1)対比
本願発明6と引用発明とを対比すると、上記「1.」「(1)」「ア」と同じことがいえる。そして、本願発明6と引用発明との間には上記「1.」「(1)」「イ」と同じ一致点があり、次の相違点4があるといえる。

【相違点4】
「前記少なくとも1つのアクセサリチャネル」の「前記直視型構成から前記側視型構成」への「移行」が、
本願発明6では、
「前記長尺状チューブの前記遠位端部は、前記遠位部分に沿って長手方向に延びるスロットを更に含み、
前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記スロット内に摺動自在に配置された第1のピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に接続されており、引張り部材が前記第1のピンから近位に延びており、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは更に、前記第1のピンの遠位側に位置する第2のピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に接続されており、
近位方向の力を前記引張り部材に印加することで前記第1のピンが前記スロットに沿って近位に摺動し」て移行するのに対し、
引用発明は、
「前記長尺状チューブの前記遠位端部は、前記遠位端部に沿って長手方向に延びるスロット」を含んでおらず、
「前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは、前記スロット内に摺動自在に配置された第1のピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に接続されており、引張り部材が前記第1のピンから近位に延びており、前記少なくとも1つのアクセサリチャネルは更に、前記第1のピンの遠位側に位置する第2のピンを介して前記長尺状チューブの前記遠位端部に回転自在に接続されて」おらず、
「アクセサリチャネル」を「スライド操作部25」において押し込むことによって移行するものである点。

(2)相違点についての判断
上記相違点4について検討すると、引用文献6に記載の技術はベース構造2の固定ヒンジ部分12に関節フレーム8の第1の端部を回転可能に接続しベース構造2のガイド部分13に関節フレーム8の第2の端部をスライド可能に接続するものであるが、引用文献6には当該「ガイド部分13」に関して本願発明6の「前記長尺状チューブの前記遠位端部は、前記遠位端部に沿って長手方向に延びるスロットを更に含み」に対応する構成は開示されておらず、本願発明6の「引張り部材が前記第1のピンから近位に延びており」に対応する構成も開示されていない。また、引用文献4、5、7、9にも上記相違点4に相当する技術は記載されていない。よって、引用発明に引用文献4-7、9記載の技術を適用しても、本願発明6の構成とはならない。
また、仮に、上記相違点4に相当する技術があると仮定した場合でも、引用発明においてアクセサリチャネル先端に対してアクセサリチャネル先端の方向を変化させる力を伝達するための手段をあえてアクセサリチャネル自体とは別に設けることとする動機付けはない。
したがって、本願発明6は当業者であっても引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献4-7、9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5.本願発明2、5、7-13について
本願発明2、5、7-13は、本願発明1、3、4、6の何れかと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1、3、4、6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献4-7、9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
上記「第5」のとおり、本願発明1-13は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献2に記載された発明、並びに引用文献4-7及び9に記載の技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-08-16 
出願番号 特願2018-545842(P2018-545842)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 井上 博之
蔵田 真彦
発明の名称 偏向する内視鏡アクセサリチャネル  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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