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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1377187
審判番号 不服2020-14769  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-22 
確定日 2021-09-06 
事件の表示 特願2018-247278「無線ネットワークにおけるアップリンク制御情報送/受信」拒絶査定不服審判事件〔令和元年5月30日出願公開、特開2019- 83539、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)1月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年1月10日 米国、2013年1月25日 米国、2013年7月29日 米国、2014年1月8日 米国)を国際出願日とする特願2015-552584号の一部を平成30年12月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年10月21日付け :拒絶理由通知書
令和2年 2月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 6月10日付け :拒絶査定
令和2年10月22日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和2年12月24日 :上申書
令和3年 3月17日 :上申書

第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由1(新規性):この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性):この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由4(サポート要件):この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
理由1、理由2:
・請求項1、4ないし7、10ないし12に対して、引用文献1
・請求項1、5ないし7、11ないし12に対して、引用文献2

理由4:
請求項1、7の「プライマリセルのアップリンクチャンネル伝送とセカンダリーセルのアップリンクチャンネル伝送が同一の優先順位を有する場合、前記プライマリセルのアップリンクチャンネル伝送が、前記セカンダリーセルのアップリンクチャンネル伝送より高い優先順位を有するものとみなして処理する」なる記載、請求項2、8の「プライマリCAグループ(PCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送とセカンダリCAグループ(SCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が前記SCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送より高い優先順位を有するものとみなして処理する」なる記載、及び、請求項3、9の「プライマリCAグループ(PCG)内の物理的アップリンク制御チャンネル(PUCCH)伝送とセカンダリCAグループ(SCG)内のPUCCH伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGのプライマリセル内のPUCCH伝送が前記SCGのプライマリセル内のPUCCH伝送より高い優先順位を有するものとみなして処理する」なる記載は、明細書に記載されてなく、発明の詳細な説明に記載したものでない。

引用文献等一覧
1.LG Electronics,Further details on UL power control methods in LTE-Advanced[online],3GPP TSG-RAN WG1#60 R1-101349,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60/Docs/R1-101349.zip>,2010年2月16日アップロード(以下、「引用文献1」という。)
2.CATT,Further considerations on LTE-A uplink power control[online],3GPP TSG-RAN WG1#60 R1-100880,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60/Docs/R1-100880.zip>,2010年2月16日アップロード(以下、「引用文献2」という。)

第3 本願発明
本願請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、令和2年10月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
無線通信ネットワークにおけるユーザー端末(UE)であって、
信号を送信又は受信するように構成される送受信器と、
前記送受信器と結合され、前記UEがキャリアアグリゲーション(CA)で通信するように動作し、アップリンクチャンネル伝送のための線形値の総電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位順序によってアップリンクチャンネル伝送に電力を割り当てるように構成されるプロセッサと、を含み、
ここで、前記優先順位順序は、
ハイブリッド自動反復受信確認信号(HARQ-ACK)を有するPUCCH伝送がチャンネル状態情報(CSI)を有するPUCCH伝送より高い優先順位を有し、
前記プロセッサは、
前記優先順位順序に基づいて、PUCCH伝送が同一の優先順位を有すると判断される場合、プライマリセルが、セカンダリーセルより優先して電力が割り当てられるように処理する
ことを特徴とするユーザー端末。
【請求項2】
プライマリCAグループ(PCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送とセカンダリCAグループ(SCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が前記SCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送より優先して電力が割り当てられるように処理する
ことを特徴とする請求項1に記載のユーザー端末。
【請求項3】
プライマリCAグループ(PCG)内の物理的アップリンク制御チャンネル(PUCCH)伝送とセカンダリCAグループ(SCG)内のPUCCH伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGのプライマリセル内のPUCCH伝送が前記SCGのプライマリセル内のPUCCH伝送より優先して電力が割り当てられるように処理する
ことを特徴とする請求項1に記載のユーザー端末。
【請求項4】
前記優先順位順序は、
HARQ-ACK及び/又はスケジューリング要請(SR)を有するアップリンクチャンネル伝送がHARQ-ACK/SRでない他のアップリンク制御情報を有するアップリンクチャンネル伝送より高い優先順位を有するように定義される
ことを特徴とする請求項1に記載のユーザー端末。
【請求項5】
前記プロセッサは、より高い優先順位順序を有するアップリンクチャンネル伝送に伝送電力を割り当てて、残りのアップリンクチャンネル伝送に残りの電力を割り当てるように構成される請求項1に記載のユーザー端末。
【請求項6】
無線通信ネットワークにおけるユーザー端末(UE)を動作させる方法であって、
前記UEがキャリアアグリゲーション(CA)で通信するように動作し、アップリンクチャンネル伝送のための線形値の総電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位順序によってアップリンクチャンネル伝送に電力を割り当てるステップと、
前記割り当てられた電力によって前記アップリンクチャンネル伝送の信号を伝送するステップと、を含み、
ここで、前記優先順位順序は、
ハイブリッド自動反復受信確認信号(HARQ-ACK)を有するPUCCH(Physical Uplink Control Channel)伝送がチャンネル状態情報(CSI)を有するPUCCH伝送より高い優先順位を有し、
前記方法は、
前記優先順位に基づいて、PUCCH伝送が同一の優先順位を有すると判断される場合、プライマリセルが、セカンダリーセルより優先して電力が割り当てられる
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
プライマリCAグループ(PCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送とセカンダリCAグループ(SCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が前記SCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送より優先して電力が割り当てられるように処理する
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プライマリCAグループ(PCG)内の物理的アップリンク制御チャンネル(PUCCH)伝送とセカンダリCAグループ(SCG)内のPUCCH伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGのプライマリセル内のPUCCH伝送が前記SCGのプライマリセル内のPUCCH伝送より優先して電力が割り当てられるように処理する
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記優先順位順序は、
HARQ-ACK及び/又はスケジューリング要請(SR)を有するアップリンクチャンネル伝送がHARQ-ACK/SRでない他のアップリンク制御情報を有するアップリンクチャンネル伝送より高い優先順位を有するように定義される
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記電力を割り当てるステップは、
より高い優先順位順序を有するアップリンクチャンネル伝送に伝送電力を割り当てて、残りのアップリンクチャンネル伝送に残りの電力を割り当てるステップを含む
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、LG Electronics,Further details on UL power control methods in LTE-Advanced(当審訳:LTE-AdvancedにおけるULパワー制御方式のさらなる詳細)[online],3GPP TSG-RAN WG1#60 R1-101349,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60/Docs/R1-101349.zip>,2010年2月16日アップロードには、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「3-2. Prioritization of UL physical channel transmission in case of TxP reduction
We should decide further details on how to prioritize the UL TxP of multiple physical channels within each UL CC in case of TxP reduction to satisfy the CC-specific maximum TxP limitation. Within each UL CC, TxP of the multiple physical channels can be prioritized depending on the physical channel type, for example.
-PUCCH is prioritized over PUSCH.
-More detailed prioritization may be beneficial for coincident transmission of different multiple PUCCH types. For example, ACK/NACK PUCCH > SR PUCCH > CSI PUCCH > PUSCH」(2ページ28行目ないし3ページ4行目)

(当審訳:
3.2 TxP削減時のUL物理チャネル伝送の優先順位付け
CC固有の最大TxP制限を満たすようにTxPを削減する場合に、各UL CC内において、複数の物理チャネルのUL TxPにどのように優先順位をつけるかについて、さらに詳細を決定する必要がある。例えば、各UL CC内において、複数の物理チャネルのTxPは、物理チャネルの種類に応じて優先順位を付けることができる
-PUCCHはPUSCHよりも優先される。
-より詳細な優先順位付けは、異なる複数のPUCCHタイプを同時に送信する際に有益である。例えば、ACK/NACK PUCCH > SR PUCCH > CSI PUCCH > PUSCH)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

(1)引用文献1には、そのタイトルにあるとおり「LTE-AdvancedにおけるULパワー制御方式」について記載されており、ULを行うのがユーザー端末であることは技術常識であるから、ユーザー端末が上記「LTE-AdvancedにおけるULパワー制御」を行うのは自明のことである。
(2)上記「3.2 TxP削減時のUL物理チャネル伝送の優先順位付け」には、「CC固有の最大TxP制限を満たすようにTxPを削減する場合に、各UL CC内において、複数の物理チャネルのUL TxPにどのように優先順位をつけるかについて、さらに詳細を決定する必要がある。例えば、各UL CC内において、複数の物理チャネルのTxPは、物理チャネルの種類に応じて優先順位を付けることができる。」と記載されているから、引用文献1には、CC固有の最大TxP制限を満たすようにTxPを削減する場合に、各UL CC内において、複数の物理チャネルのTxPは、物理チャネルの種類に応じて優先順位を付けられることが記載されている。
(3)さらに、上記「より詳細な優先順位付けは、異なる複数のPUCCHタイプを同時に送信する際に有益である。例えば、ACK/NACK PUCCH > SR PUCCH > CSI PUCCH > PUSCH」という記載によれば、ACK/NACK PUCCHがCSI PUCCHに優先されることが記載されている。

以上を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。

「LTE-AdvancedにおけるULパワー制御を行うユーザー端末であって、
CC固有の最大TxP制限を満たすようにTxPを削減する場合に、各UL CC内において、複数の物理チャネルのTxPは、物理チャネルの種類に応じて優先順位を付けられ、
ACK/NACK PUCCHがCSI PUCCHに優先される、
ユーザー端末。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された、CATT,Further considerations on LTE-A uplink power control(当審訳:LTE-Aのアップリンク・パワー・コントロールに関するさらなる考察)[online],3GPP TSG-RAN WG1#60 R1-100880,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60/Docs/R1-100880.zip>,2010年2月26日アップロードには、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「2.4 Power scaling strategy in case of power limitation
(中略)
For continuous carrier aggregation, one PA may be used to transmit signals on multiple CCs. When a UE’s maximum transmission power is reached, there are several options to handle power limitation, such as to reduce the power of each PUSCH with an equal quantity [1]-[2], or to reduce the transmission power with different power scaling weights according to a predefined carrier priority or channel priority [6], or to define the power scaling weight for each PUSCH with its spectral efficiency, e.g. different MCS levels [7]. As it is agreed in RAN1 #59bis meeting to prioritize on PUCCH, the power of PUSCH transmission shall be reduced first when the maximum transmit power is reached. With the LS in [8], the response from RAN2 can impact the detailed design of power scaling strategy in case of power limitation. In general, we prefer the following prioritization of different UL signals, from highest priority to low priority:
- UL ACK/NAK on PUCCH
- PUSCH transmission with ACK/NAK embedded in PUSCH PRBs
- Scheduling request indictor on PUCCH
- CQI on PUCCH
- PUSCH transmission with CQI embedded in PUSCH PRBs
- PUSCH only transmission
」(3ページ20行目ないし3ページ39行目)

(当審訳:
2.4 電力制限があった場合のパワースケーリング戦略
(中略)
連続的なキャリア・アグリゲーションでは、1つのPAが複数のCCで信号を送信することができる。UEの最大送信電力に達した場合、電力制限に対処するためのオプションがいくつかある。例えば、各PUSCHの電力を等しく削減する方法[1]-[2]、事前に定義されたキャリアの優先度またはチャネルの優先度に応じて異なるパワースケーリング・ウェイトを使用して送信電力を削減する方法[6]、または各PUSCHの電力スケーリング・ウェイトをそのスペクトラム効率で定義する方法(例:異なるMCSレベル)[7]などがある。RAN1#59bisミーティングでは、PUCCHに優先順位をつけることが合意されているため、最大送信電力に達した場合、PUSCHの送信電力を最初に削減する必要がある。[8]のLSにより、RAN2からの応答は、電力制限の場合の電力スケーリング戦略の詳細設計に影響を与える可能性がある。一般的には、異なるUL信号の優先順位を、優先度の高いものから低いものへと以下のように設定することが望ましいと考える。
- PUCCHでのUL ACK/NAK
- PUSCH PRBにACK/NAKを埋め込んだPUSCH送信
- PUCCH上のスケジューリング要求インディクタ
- PUCCH上のCQI
- PUSCHのPRBにCQIを埋め込んだPUSCH送信
- PUSCHのみの送信)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

(1)引用文献2は、そのタイトルにあるとおり「LTE-Aのアップリンク・パワー・コントロールに関するさらなる考察」についてのものであって、UEのUL送信の優先度によって、送信電力の割り当てを行うことについて記載されており、ULを行うのは、ユーザー端末(UE)であることは技術常識であるから、引用文献2には「LTE-Aのアップリンク・パワー・コントロールをおこなうユーザー端末(UE)」が記載されているといえる。
(2)引用文献2は、タイトルにもあるとおり「LTE-Aのアップリンク・パワー・コントロールに関するさらなる考察」について記載されているものである。そして「キャリア・アグリゲーションでは、1つのPAが複数のCCで信号を送信することができる。UEの最大送信電力に達した場合、電力制限に対処するためのオプションがいくつかある。」こと、「PUCCHに優先順位をつけることが合意されているため、最大送信電力に達した場合、PUSCHの送信電力を最初に削減する必要がある。」こと、「一般的には、異なるUL信号の優先順位を、優先度の高いものから低いものへと以下のように設定する」ものであって、「優先度は、PUCCHでのUL ACK/NAKの優先度がPUCCH上のCQIよりも高」い旨記載されている。ここで、上記摘記部には、最大送信電力に達した場合、優先度が一番低いPUSCHの送信電力を最初に削減することが記載されており、優先度の高いPUCCHは最初に送信電力を削減する対象にはならないことが読み取れるから、UEが最大送信電力に達した場合は、優先度の低いチャネルから送信電力が削減される、すなわち、UEが最大送信電力に達した場合には、UL送信の優先度によって、送信電力が割り当てられるものであるといえる。
そうすると、引用文献2には、「UEがキャリア・アグリゲーションで複数のCCで信号を送信するものであり、UEの最大送信電力に達した場合、電力制限を行うものであって、UL送信の優先度によって、送信電力が割り当てられ、優先度はPUCCHでのUL ACK/NAKの優先度がPUCCH上のCQIよりも高い」ことが記載されている。

以上を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。

「LTE-Aのアップリンク・パワー・コントロールをおこなうユーザー端末(UE)であって、
UEがキャリア・アグリゲーションで複数のCCで信号を送信するものであり、UEの最大送信電力に達した場合、電力制限を行うものであって、UL送信の優先度によって、送信電力が割り当てられ、優先度はPUCCHでのUL ACK/NAKの優先度がPUCCH上のCQIよりも高い、ユーザー端末。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1-1とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明1-1の「ユーザー端末」は、本願発明1の「ユーザー端末」に相当する。そして、引用発明のユーザー端末はLTE-Advancedで動作するユーザー端末であり、LTE-Advancedは無線通信システムであることは技術常識であるから、引用発明1-1のユーザー端末は「無線通信システムにおけるユーザー端末」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1は、「無線通信システムにおけるユーザー端末(UE)」である点で一致する。

イ 引用発明1-1の「TxP」は、Txが送信することを表し、Pが電力を表すものであることは、技術常識であるから、引用発明1-1の「TxP」は送信電力を表すことは自明である。そして、最大TxP、は最大送信電力を表し、送信は伝送することであるから、最大送信電力は最大伝送電力に相当する。
また、引用発明1-1の「CC固有の最大TxP制限を満たすようにTxPを削減する」というのは、CC固有の最大TxP制限を超過する場合に、CC固有の最大TxP制限を満たすようにTxPを削減することに他ならず、引用発明1-1の「物理チャネル」とは、ULに用いられるものであるから、アップリンクチャネルであるといえる。
そうすると、引用発明1-1の「CC固有の最大TxP制限を満たすようにTxPを削減する場合に、各UL CC内において、複数の物理チャネルのTxPは、物理チャネルの種類に応じて優先順位を付けられ」ることと、本願発明1の「アップリンクチャンネル伝送のための線形値の総電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位順序によってアップリンクチャンネル伝送に電力を割り当てる」ことは、「アップリンクチャネル伝送のための電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位によってアップリンクチャネル伝送に電力を割り当てる」点で共通する。
そして、上記優先順位に関して、引用発明1-1の「ACK/NACK PUCCHがCSI PUCCHに優先される」ことは、本願発明1の「ハイブリッド自動反復受信確認信号(HARQ-ACK)を有するPUCCH伝送がチャンネル状態情報(CSI)を有するPUCCH伝送より高い優先順位を有」することに相当する。
また、引用発明1-1のユーザー端末においても、信号を送信又は受信するように構成される送受信器を有すること、アップリンクチャネル伝送のための電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位によって、アップリンクチャネル伝送に電力を割り当てる処理を行うように構成されたプロセッサに相当するものを有すること、送受信器はプロセッサと結合され制御されることは自明である。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1は、「信号を送信または受信するように構成される送受信器と、前記送受信器と結合され、前記UEが通信するように動作し、アップリンクチャネル伝送のための電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位順序によってアップリンクチャンネル伝送に電力を割り当てるように構成されるプロセッサと、を含み、ここで、前記優先順位順序は、ハイブリッド自動反復受信確認信号(HARQ-ACK)を有するPDCCH伝送がチャネル状態情報(CSI)を有するPUCCH伝送より高い優先順位を有する」点で共通する。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明1-1とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 無線通信システムにおけるユーザー端末(UE)であって、
信号を送信または受信するように構成される送受信器と、
前記送受信器と結合され、前記UEが通信するように動作し、アップリンクチャネル伝送のための電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位順序によってアップリンクチャンネル伝送に電力を割り当てるように構成されるプロセッサと、を含み、
ここで、前記優先順位順序は、
ハイブリッド自動反復受信確認信号(HARQ-ACK)を有するPDCCH伝送がチャネル状態情報(CSI)を有するPUCCH伝送より高い優先順位を有する、
ユーザー端末。」

(相違点1)
UEの通信の動作について、本願発明1は、「キャリアアグリゲーション」で動作するものであるのに対し、引用発明1-1においては、その旨が特定されていない点。

(相違点2)
「アップリンクチャネル伝送のための最大伝送電力の超過する場合」におけるの「アップリンクチャネル伝送のための電力」について、本願発明1においては、「線形値の総電力」であるのに対し、引用発明1-1においては、その旨が特定されていない点。

(相違点3)
アップリンクチャネル伝送に電力を割り当てる際の優先順位順序について、本願発明1においては、「前記優先順位順序に基づいて、PUCCH伝送が同一の優先順位を有すると判断される場合、プライマリセルが、セカンダリーセルより優先して電力が割り当てられるように処理する」のに対し、引用発明1-1において、その旨の特定がなされていない点。

また、本願発明1と引用発明1-2とを対比すると、以下のことがいえる。

ウ 引用発明1-2の「ユーザー端末(UE)」は、本願発明1の「ユーザー端末(UE)」に相当する。そして、引用発明のユーザー端末はLTE-Aのアップリンク・パワー・コントロールを行うユーザー端末であり、LTE-AはLTE-Advancedの略称であって、LTE-Advancedは無線通信システムであることは技術常識であるから、引用発明1-2のユーザー端末は「無線通信システムにおけるユーザー端末(UE)」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1-2は、「無線通信システムにおけるユーザー端末(UE)」である点で一致する。

エ 引用発明1-2は、UEがキャリア・アグリゲーションで複数のCCで信号を送信するものであるから、UEがキャリア・アグリゲーションで通信するように動作するものであるといえる。そして引用発明1-2は、UEの最大送信電力に達した場合、電力制限を行うものであって、UL送信の優先度によって送信電力が割り当てられ、優先度はPUCCHでのUL ACK/NAKの優先度がPUCCH上のCQIよりも高いものである。ここで、送信は伝送することであるから、最大送信電力は最大伝送電力に相当し、UL送信は、PUCCH等の伝送を意味することであること、PUCCH等を伝送するとはアップリンクチャネル伝送することを意味することは自明であるから、UL送信の優先度によって送信電力が割り当てられるとは、アップリンクチャンネル伝送の優先度、すなわち優先順位順序によってアップリンクチャンネル伝送に電力を割り当てるものであるといえる。
また、優先順位順序はPUCCHでのUL ACK/NAKがPUCCH上のCQIよりも高い優先順位を有するものであり、最大送信電力に達するとは、最大送信電力を超過することに相当する。そして、UEの最大送信電力に達した場合の電力制限をUL送信の優先度によって送信電力の割り当てを行うのは、UEであって、UEが電力割り当ての処理を行うプロセッサや送受信を行うための信号を送信又は受信するように構成される送受信器を有すること、送受信器はプロセッサで処理された電力割り当ての優先順位順序にしたがって送受信を行うものであるから、送受信器はプロセッサと結合されているものであるといえることは自明である。
そうすると、本願発明1と引用発明1-2は、「信号を送信又は受信するように構成される送受信器と、前記送受信器と結合され、UEがキャリアアグリゲーション(CA)で通信するように動作し、アップリンクチャネル伝送のための電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位順序によって、アップリンクチャンネル伝送に電力を割り当てるように構成されるプロセッサと、を含み、前記優先順位順序は、ハイブリッド自動反復受信確認信号(HARQ-ACK)を有するPDCCH伝送がチャネル状態情報(CSI)を有するPUCCH伝送より高い優先順位を有する」点で共通する。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明1-2とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 無線通信システムにおけるユーザー端末(UE)であって、
信号を送信又は受信するように構成される送受信器と、
前記送受信器と結合され、UEがキャリアアグリゲーション(CA)で通信するように動作し、アップリンクチャネル伝送のための電力が最大伝送電力を超過する場合に、優先順位順序によって、アップリンクチャンネル伝送に電力を割り当てるように構成されるプロセッサと、を含み、
前記優先順位順序は、
ハイブリッド自動反復受信確認信号(HARQ-ACK)を有するPDCCH伝送がチャネル状態情報(CSI)を有するPUCCH伝送より高い優先順位を有する、
ユーザー端末(UE)。」

(相違点4)
「アップリンクチャネル伝送のための最大伝送電力の超過する場合」における「アップリンクチャネル伝送のための電力」について、本願発明1においては、「線形値の総電力」であるのに対し、引用発明1-2においては、その旨が特定されていない点。

(相違点5)
アップリンクチャネル伝送に電力を割り当てる際の優先順位順序について、本願発明1においては、「前記優先順位順序に基づいて、PUCCH伝送が同一の優先順位を有すると判断される場合、プライマリセルが、セカンダリーセルより優先して電力が割り当てられるように処理する」のに対し、引用発明1-2において、その旨の特定がなされていない点。

(2)新規性(特許法第29条第1項第3号)についての判断
本願発明1と引用発明1-1は、上記「(1)」で説示した相違点1ないし3で相違するから、本願発明1は引用発明1-1であるとはいえない。また、本願発明1と引用発明1-2は、上記「(1)」で説示した相違点4及び相違点5で相違するから、本願発明1は引用発明1-2であるとはいえない。

(3)進歩性(特許法第29条第2項)についての判断
事案に鑑み、引用発明1-1との相違点3及び引用発明1-2との相違点5についてまず検討すると、引用発明1-1との相違点3及び引用発明1-2との相違点5に係る本願発明1の「前記優先順位順序に基づいて、PUCCH伝送が同一の優先順位を有すると判断される場合、プライマリセルが、セカンダリーセルより優先して電力が割り当てられるように処理する」ものとする発明特定事項は、引用文献1又は引用文献2に記載も示唆もされていない。また、本願優先日2013年1月10日前の当該技術分野において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1-1又は引用発明1-2に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、本願発明1は引用発明1-1又は引用発明1-2であるとはいえず、当業者であっても、引用発明1-1又は引用文献1-2に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明6について
本願発明6は、本願発明1のユーザ端末(UE)を動作させる方法として記載したものであって、上記1.で説示した相違点に係る本願発明1の発明特定事項と同様の発明特定事項を少なくとも備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明1-1又は引用発明1-2であるとはいえず、引用発明1-1又は引用文献1-2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明7ないし10について
本願発明7ないし10は、本願発明6の発明特定事項を全て含むから、本願発明6と同じ理由により、引用発明1-1又は引用発明1-2であるとはいえず、当業者であっても、引用発明1-1又は引用文献1-2に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1.理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし10は「前記優先順位順序に基づいて、PUCCH伝送が同一の優先順位を有すると判断される場合、プライマリセルが、セカンダリーセルより優先して電力が割り当てられるように処理する」という発明特定事項を備えるものであるから、拒絶査定において引用された引用文献1又は引用文献2に記載された発明ではなく、また、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1又は引用文献2に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由1及び2を維持することはできない。

2.理由4(特許法第36条第6項第1号)について
審判請求時の補正により、補正前の請求項1ないし3は補正後の請求項1ないし3に、また補正前の請求項7ないし9は補正後の請求項6ないし8に対応するものであり、審判請求時の補正により、請求項1、6において「プライマリセルのアップリンクチャンネル伝送とセカンダリーセルのアップリンクチャンネル伝送が同一の優先順位を有する場合、前記プライマリセルのアップリンクチャンネル伝送が、前記セカンダリーセルのアップリンクチャンネル伝送より高い優先順位を有するものとみなして処理する」なる記載は削除された。
また、請求項2、7の「プライマリCAグループ(PCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送とセカンダリCAグループ(SCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が前記SCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送より高い優先順位を有するものとみなして処理する」なる記載は、アップリンクチャンネル伝送のPUCCHにおいては、上記のとおり段落115及び段落117に記載されており、アップリンクチャンネル伝送のPUSCHにおいては、段落162及び段落164に記載される「UCIを有するすべてのPUSCHが同一の優先順位のUCIを搬送する場合、電力制限ケース代替方法は、」、「PCGで伝送されるPUSCHが優先され、SCGで伝送されるPUSCHは残りの電力が割り当てられ、あるいはその伝送がUEにより一時中止される。」との記載から、プライマリCAグループ(PCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送とセカンダリCAグループ(SCG)に関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送が前記SCGに関連したセル内のアップリンクチャンネル伝送より高い優先順位を有するものとみなして処理するものであるといえるから、発明の詳細な説明に記載されているものといえる。
さらに、請求項3、8の「プライマリCAグループ(PCG)内の物理的アップリンク制御チャンネル(PUCCH)伝送とセカンダリCAグループ(SCG)内のPUCCH伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGのプライマリセル内のPUCCH伝送が前記SCGのプライマリセル内のPUCCH伝送より高い優先順位を有するものとみなして処理する」との記載は、段落115の「2個のPUCCHが同一の優先順位を有する場合に発生できる。すると、UEがサブフレームで伝送するPUCCHを決定するためにタイブレーキング規則が必要である。」との記載、段落117の「PCG及びSCGが構成される場合、PCGは、SCGに優先し、PCGでスケジューリングされるPUCCHのみが伝送される」、段落120の「PCG及びSCGが設定される場合、PCGは、SCGに対して優先され、PCGでスケジューリングされるPUCCHのみが伝送される」との記載から、プライマリCAグループ(PCG)内の物理的アップリンク制御チャンネル(PUCCH)伝送とセカンダリCAグループ(SCG)内のPUCCH伝送が同一の優先順位を有する場合、前記PCGのプライマリセル内のPUCCH伝送が前記SCGのプライマリセル内のPUCCH伝送より高い優先順位を有するものとみなして処理するものであるといえるから、発明の詳細な説明に記載されているものといえる。
したがって、請求項1ないし3、6ないし8は、発明の詳細な説明に記載されているものといえるものである。
よって、原査定の理由4を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-17 
出願番号 特願2018-247278(P2018-247278)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三枝 保裕  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 中木 努
本郷 彰
発明の名称 無線ネットワークにおけるアップリンク制御情報送/受信  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 崔 允辰  

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