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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1377214
審判番号 不服2020-9716  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-10 
確定日 2021-08-18 
事件の表示 特願2017-544702「アラート機能を有する拘束装置、拘束方法、及び車両ワーニング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月22日国際公開、WO2016/148774、平成30年 4月12日国内公表、特表2018-510415〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)1月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年(平成27年)3月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年10月18日付け:拒絶理由通知書
令和2年 1月27日 :意見書及び手続補正書の提出
令和2年 2月28日付け:拒絶査定
令和2年 7月10日 :審判請求書及び手続補正書の提出


第2 令和2年7月10日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年7月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、令和2年1月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「補正前請求項1」という。)を、以下のとおりの特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正請求項1」という。)に補正することを含むものである。(なお、下線は審判請求人により付されたものである。)

(1)補正前請求項1
「【請求項1】
アラートを行う拘束装置であって:
1つ又は複数のプロセッサ;
前記1つ又は複数のプロセッサに結合される無線送信部;
拘束部;
固定コンポーネント;
前記拘束部及び1つ以上のプロセッサに結合され、前記拘束部が拘束位置にあるか否かに少なくとも部分的に基づいて拘束インジケータを提供する第1センサ;
前記固定コンポーネント及び1つ以上のプロセッサに結合され、前記固定コンポーネントが当該拘束装置を車両に結合するように係合しているか否かに少なくとも部分的に基づいて、アタッチメント・インジケータを提供する第2センサ;及び
前記拘束インジケータ及び前記アタッチメント・インジケータに少なくとも部分的に基づいて、アラート信号の無線送信を前記無線送信部に実行させるように、前記1つ以上のプロセッサにより制御されるアラート・モジュール;
を有し、前記アラート信号の無線送信は所定のモバイル・デバイスへの通知を含む、拘束装置。」

(2)本件補正請求項1
「【請求項1】
アラートを行う拘束装置であって:
1つ又は複数のプロセッサ;
前記1つ又は複数のプロセッサに結合される無線送信部;
拘束部;
固定コンポーネント;
前記拘束部及び1つ以上のプロセッサに結合され、前記拘束部が拘束位置にあるか否かに少なくとも部分的に基づいて拘束インジケータを提供する第1センサ;
前記固定コンポーネント及び1つ以上のプロセッサに結合され、前記固定コンポーネントが当該拘束装置を車両に結合するように係合しているか否かに少なくとも部分的に基づいて、アタッチメント・インジケータを提供する第2センサ;及び
前記拘束インジケータ及び前記アタッチメント・インジケータに少なくとも部分的に基づいて、アラート信号の無線送信を前記無線送信部に実行させるように、前記1つ以上のプロセッサにより制御されるアラート・モジュール;
を有し、前記アラート信号の無線送信は所定のモバイル・デバイスへの周期的な通知を含む、拘束装置。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前請求項1に記載された発明(以下「補正前発明」という。)を特定するために必要な事項である「所定のモバイル・デバイスへの通知」について、「周期的な」通知である旨の限定を付加するものであって、補正前発明と本件補正請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるあるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が同条6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2012-188035号公報(平成24年10月4日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)

(ア)「【0004】
ところで、従来の子供置き去り警報装置において、子供用シートヘの子供の着座を、特許文献1では圧力センサやゆれ感知センサ、特許文献22では赤外線センサや物体検出ユニットを用いて行う技術が紹介されているが、これらのセンサ類の検出結果の処理は煩雑であるという不都合がある。
より簡便な方法として、上述の特許文献2では、子供用シートベルトの装着状態から子供用シートヘの子供の着座の有無を判別する技術が紹介されているが、単に子供用シートベルトの装着状態から子供用シートヘの子供の着座の有無を判別して警報を行うとした場合、不必要な警報が発せられる場合があるという不都合がある。
つまり、車両に取り付ける子供用シートをベビーカーのシート等に利用できる技術(特許文献3参照。)に特許文献2の技術を応用した場合、この子供用シートをベビーカーのシート等に使用しているときに子供用シートベルトを装着状態とすると、子供用シートを車両に取り付けていないのにもかかわらず、誤った警報がなされるという不都合がある。
このため、子供用シートヘの子供の着座をより簡便な方法で検出可能とするとともに、誤った警報がなされることも抑制できる技術提案を行う。
【0005】
この発明は、複数の利用手段を備える子供用シートであっても、その利用手段を判別して特定の利用手段の場合のみに警報を実施する構成とできて、且つ、その警報を実施するための構成をより簡単なものとした子供置き去り警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、車内への子供の置き去りを警報する子供置き去り警報装置において、子供を着座させる子供用シートを備え、この子供用シートは、子供用シートに子供を保持する子供用シートベルトと、この子供用シートベルトの装着状態を検出する装着検出部を備え、前記子供用シートが車両に取り付けられていることを検出する接続検出部と、エンジンの停止操作を検出するエンジン停止操作検出部と、車内への子供の置き去りを警報する警報手段と、車両のドアの施錠状態を検出する施錠検出部とを備え、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シートが車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルトが装着状態にある場合に前記警報手段が警報を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、警報を発するための条件として、子供用シートが車両に取り付けられ、且つ、子供用シートベルトが装着状態にあることを条件としているため、複数の利用方法を備える子供用シートであっても、その子供用シートが車両に取り付けられ、子供を車内に置き去りにしてしまうおそれのある場合のみに警報を行うことができる。」

(イ)「【0010】
図1及び図2はこの発明の実施例を示すものである。
図2において、1は子供置き去り警報装置、2は車両(図示せず)の車両シート、3は子供、4は子供用シートである。
前記子供置き去り警報装置1は、車内への子供の置き去りを警報する装置である。
そして、この子供置き去り警報装置1は、図2に示す如く、前記車両シート2に接続される前記子供用シート4を備え、この子供用シート4に子供3を着座させるものである。
このとき、この子供用シート4は、車両シート2に取り付けるために、車両シート2には固定部材5を取り付ける。
追記すれば、この実施例におけるの子供用シート4は、子供用シート以外に、例えばベビーカー用のシートとしても使用できる。複数の利用手段を備える子供用シートである。このような複数の利用手段を備える子供用シート4を車両シート2に取り付ける場合には、前記固定部材5を介して車両シート2に取り付ける必要があることを想定している。
なお、本発明の子供用シート4は、固定部材5が存在しない構成、もしくは、子供用シート4と固定部材5とが一体となっている構成の子供用シートであっても良い。
また、子供用シート4と固定部材5とは、図2に示す如く、それぞれ子供用シート側コネクタ6と固定部材側コネクタ7とを備え、子供用シート4と固定部材5との接続時にそれらのコネクタ6、7を接続する構成としている。
このとき、前記子供用シート側コネクタ6と固定部材側コネクタ7との接続は、子供用シート4と固定部材5とを接続する際に、車両の所有者等が別途各々のコネクタを接続させる構成としても良いが、子供用シート4と固定部材5とを接続固定させるための構造部にこれらのコネクタ6、7を設け、子供用シート4と固定部材5とが接続する際に自動でコネクタの接続が完了する構成としても良い。
更に、前記子供用シート4は、この子供用シート4に子供3を保持する子供用シートベルト8と、この子供用シートベルト8の装着状態を検出する装着検出部9とを備えている。
この装着検出部9は、前記子供用シート側コネクタ6に子供用シートベルト8の装着状態を送信し、子供用シート側コネクタ6と前記固定部材側コネクタ7とを介して後述する制御装置(「制御部」または「制御手段」とも換言できる。)14に子供用シートベルト8の装着状態を検出して送信する。
【0011】
前記子供置き去り警報装置1は、接続検出部10と、エンジン停止操作検出部11と、警報手段12と、施錠検出部13とを備えている。
つまり、前記子供置き去り警報装置1は、図2に示す如く、各種の制御を行う制御装置14を備え、この制御装置14にタイマ15と前記警報手段12とを内蔵している。
そして、前記制御装置14に前記接続検出部10や前記エンジン停止操作検出部11、施錠検出部13を接続している。
このとき、前記接続検出部10は、前記子供用シート側コネクタ6及び固定部材側コネクタ7からなり、前記子供用シート4が車両に取り付けられていることを検出する。つまり、これらのコネクタ6、7が接続されると、前記接続検出部10が前記制御装置14にコネクタ6、7が接続状態であることを検出した検出信号を出力する。
なお、前記固定部材5を介さずに前記子供用シート4を車両シート2に固定し、車両シート2に子供用シート4が接続されていることを検出できる構成としても良い。
前記エンジン停止操作検出部11は、エンジンの停止操作を検出する。
前記警報手段12は、車内への子供3の置き去りを警報する。
前記施錠検出部13は、車両のドア(図示せず)の施錠状態を検出する。
【0012】
また、前記子供置き去り警報装置1は、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シート4が車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にある場合に前記警報手段12が警報を実施する構成とする。
詳述すれば、前記子供置き去り警報装置1は、イグニッション(「IG」とも記載する。)スイッチ(図示せず)のOFF状態によって、エンジン停止操作が行われたことを検出する。
また、前記子供置き去り警報装置1は、子供用シート4が固定部材5を利用して車両に取り付けられているか否かを、前記接続検出部10の前記子供用シート側コネクタ6及び固定部材側コネクタ7によって検出する。
更に、前記子供置き去り警報装置1は、前記子供用シートベルト8が装着状態にあるか否かを、前記装着検出部9によって検出する。
そして、前記子供置き去り警報装置1は、所定の条件が成立した際に、前記制御装置14からの制御信号が前記警報手段12に出力され、前記警報手段12が警報を実施するものである。
従って、警報を発するための条件として、子供用シート4が車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にあることを条件としているため、複数の利用方法を備える子供用シート4であっても、その子供用シート4が車両に取り付けられ、子供3を車内に置き去りにしてしまうおそれのある場合のみに警報を行うことができる。
【0013】
また、前記警報手段12は、複数の警報手段、例えば、車室内への子供3の置き去りの可能性が低い場合の第一警報手段16と、車室内への子供3の置き去りの可能性が高い場合の第二警報手段17とを備えている。
そして、前記警報手段12は、夫々所定の条件が満たされた場合にいずれかの警報の実行の指示を行う構成を有している。
つまり、前記警報手段12は、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シート4が車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にある場合に前記警報手段12は前記第一警報手段16を実施するとともに、さらに車両のドアが施錠状態、つまり「ドアロック」状態である場合に前記警報手段12が前記第二警報手段17を実施する。
従って、前記警報手段12は、車両の状況から子供3の置き去りの可能性の高さを判断し、且つ、その可能性の高さに応じた第一警報手段16または第二警報手段17を実施することができる。
【0014】
更に、前記子供置き去り警報装置1は、時間カウントを行う前記タイマ15、もしくは、車両周囲の乗員の有無を検出する乗員検知部18を備えている。
そして、前記子供置き去り警報装置1は、前記子供用シート4と前記固定部材5とが接続状態であって、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にあり、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となってから所定時間継続するか、または、前記乗員検知手段18が乗員を検知できない場合に、前記警報手段12が第二警報手段17を実施する。
従って、前記タイマ15によってドアの施錠を検出してから所定時間が経過するか、または、前記乗員検知手段18が乗員を検出できない場合に、第二警報手段17を実施することとしたので、不用意な警報の実施を防止できる。
【0015】
次に、図1の前記子供置き去り警報装置1の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0016】
この子供置き去り警報装置1の制御用プログラムがスタート(101)すると、イグニッションスイッチのON/OFF状態を検出する処理(102)に移行する。
そして、このイグニッションスイッチのON/OFF状態を検出する処理(102)の後に、イグニッションスイッチがOFF状態にあるか否かの判断(103)に移行する。
このイグニッションスイッチがOFF状態にあるか否かの判断(103)において、判断(103)がNOの場合には、この判断(103)がYESとなるまで判断(103)を繰り返し行う。
また、判断(103)がYESの場合には、前記子供用シート4と前記固定部材5とが接続されているか否か、かつ、前記子供用シートベルト8が装着されているか否かの判断(104)に移行する。
この判断(104)において、判断(104)がNOの場合には、後述する前記子供置き去り警報装置1の制御用プログラムのエンド(110)に移行する。
更に、判断(104)がYESの場合には、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となっているか否かの判断(105)に移行する。
そして、この車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となっているか否かの判断(105)において、判断(105)がNOの場合には、前記警報手段12によって前記第一警報手段16を実施する処理(106)に移行し、その後に、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となっているか否かの判断(105)を再度行うために、判断(105)に移行する。
また、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となっているか否かの判断(105)がYESの場合には、前記タイマ15による時間カウントを行う処理(107)に移行する。
そして、時間カウントを行う処理(107)の後には、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となってから所定時間経過したか否か、または、前記乗員検知手段18が乗員を検知できないか否かの判断(108)に移行する。
この車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となってから所定時間経過したか否か、または、前記乗員検知手段18が乗員を検知できないか否かの判断(108)において、判断(108)がNOの場合には、この判断(108)がYESとなるまで判断(108)を繰り返し行う。
また、判断(108)がYESの場合には、前記警報手段12によって前記第二警報手段17を実施する処理(109)に移行し、その後に、前記子供置き去り警報装置1の制御用プログラムのエンド(110)に移行する。
【0017】
補足説明すれば、上述の処理(106)では、前記第一警報手段16が実施される。このとき、第一警報手段16では、車室内に警報ブザーを鳴らすことや子供用シートベルト8の装着解除を促す表示を行う処理が行われる。
また、上述の処理(109)では、前記第二警報手段17が実施される。このとき、第二警報手段17では、車両のクラクションを鳴らすことや当該車両のキーレスエントリー用のリモコンヘの警報表示が行われる。そして、この警報表示は、子供3が車室内に置き去りにされている可能性があるといった内容である。
更に、上述の処理(106)及び処理(109)は、いずれも警報を行う点では同様であるが、警報対象が異なっている。
つまり、処理(106)の前記第一警報手段16は、主に当該車両の乗員に対して警告が行われる。これは車両のドア施錠操作が行われておらず(上述の判断(105)でNOの場合)、当該車両の車室内やその周囲に乗員がいる可能性が高い。乗員が所用のため一時的に車両を停止状態としている場合もあり、車室内への子供3の置き去りが発生する可能性は低い。そのため、主に当該車両の乗員のみに警報を行う構成としている。
これに対して、処理(109)の前記第二警報手段17は、当該東両の乗員だけでなく、外部の人間も対象にして警告が行われる。この第二警報手段17が実施されるのは、車両のドアが施錠状態となってから所定時間が経過したか、または、車両のキーレスリモコンを所持して乗員が所定距離離れ、乗員検知手段が乗員を検知できない状況となることである。つまり、乗員が車室内や車両の周囲にいないことで、子供3を車室内に置き去りにする可能性が、処理(106)の場合よりも高いと言える。この処理(109)を備えることで、車両から離れた乗員にも警報が行え、さらに外部の人間にも警報を行うことができて、子供3を車室内に置き去りにすることを防止できる。」

(ウ)「

」(図2)

上記(ア)から(ウ)の記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明」という。)

「 車内への子供の置き去りを警報する子供置き去り警報装置1であって、(【0010】)
この子供置き去り警報装置1は、車両シート2に接続される子供用シート4を備え、(【0010】)
前記子供置き去り警報装置1は、接続検出部10と、エンジン停止操作検出部11と、警報手段12と、施錠検出部13とを備え、(【0011】)
前記子供置き去り警報装置1は、各種の制御を行う制御装置14を備え、(【0011】)
前記子供置き去り警報装置1は、車両周囲の乗員の有無を検出する乗員検知部18を備え、(【0014】)
前記子供置き去り警報装置1は、所定の条件が成立した際に、前記制御装置14からの制御信号が前記警報手段12に出力され、前記警報手段12が警報を実施するものであり、(【0012】)
子供用シート4を車両シート2に取り付ける場合には、固定部材5を介して車両シート2に取り付けても、子供用シート4と固定部材5とが一体となっていてもよく、(【0010】)
子供用シート4と前記固定部材5とは、それぞれ子供用シート側コネクタ6と固定部材側コネクタ7とを備え、(【0010】)
前記子供用シート4は、子供3を保持する子供用シートベルト8と、この子供用シートベルト8の装着状態を検出する装着検出部9とを備え、(【0010】)
この装着検出部9は、子供用シート側コネクタ6と前記固定部材側コネクタ7とを介して制御装置14に子供用シートベルト8の装着状態を検出して送信し、(【0010】)
前記接続検出部10は、前記子供用シート側コネクタ6及び前記固定部材側コネクタ7からなり、前記子供用シート4が車両に取り付けられていることを検出し、前記制御装置14にコネクタ6、7が接続状態であることを検出した検出信号を出力し、(【0011】)
前記警報手段12は、車室内への子供3の置き去りの可能性が低い場合の第一警報手段16と、車室内への子供3の置き去りの可能性が高い場合の第二警報手段17とを備え、(【0013】)
前記警報手段12は、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シート4が車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にある場合に前記第一警報手段16を実施するとともに、さらに車両のドアが施錠状態である場合に前記第二警報手段17を実施し、(【0013】)
前記第二警報手段17では、車両のクラクションを鳴らすことや当該車両のキーレスエントリー用のリモコンヘの警報表示が行われ、(【0017】)
この第二警報手段17が実施されるのは、車両のキーレスリモコンを所持して乗員が所定距離離れ、乗員検知手段が乗員を検知できない状況となることである(【0017】)
子供置き去り警報装置1。」

イ 特開2006-159939号公報
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2006-159939号公報(平成18年6月22日出願公開。以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)

(ア)「【0001】
本発明は、車室内に人や物が放置されていることを通知する通知装置に関する。」

(イ)「【0016】
そして、通知装置1は、車室内に子供32が放置されていることを乗員40に通知する。ここで、車両30に近い位置にいる場合の乗員を40aとし、車両30から遠い位置にいる乗員を40bとする。車両30の近くにいる乗員40aに対しては、スピーカ24よりアラームを発生するか、ヘッドランプ34およびテールランプ35を点滅させることによって通知する。また、車両30から遠い位置にいる乗員40bに対しては、携帯電話26を通じて車室内に子供が放置されていることを通知する。
【0017】
次に、乗員40a,40bが車両から離れたとき、車室内に人や物が放置されていることを乗員に通知する上述の通知処理を図3?5のフローチャートを参照して説明する。図3?5の処理は、ドアをロックするとスタートするプログラムを制御部11で実行して行われる。」

(ウ)「【0022】
ステップS310では、ドアスイッチ22からの信号によりドアが開いたか判定を行う。ドアが開いた場合は、ステップS310は肯定判定され、図4のステップS403へ進む。ドアが開かなかった場合は、ステップS310は否定判定され、ステップS311へ進む。ステップS311では、インテリジェントキー27に対して、位置検出信号を送信する。
【0023】
次に、ステップS312では、インテリジェントキー27からの受信確認の電波信号が受信できたか判定を行う。受信できた場合は、ステップS312は肯定判定され、図4のステップS401へ進む。受信できない場合は、ステップS312は否定判定され、図5のステップS501へ進む。
【0024】
図4のステップS401では、スピーカ24からアラームを発生するか、ヘッドランプ34およびテールランプ35を点滅させるための指令信号を出力する。ステップS402では、ドアスイッチ22からの信号によりドアが開いたか判定を行う。ドアが開いた場合は、ステップS402は肯定判定され、ステップS403へ進む。ドアが開かなかった場合は、ステップS402は否定判定され、図3のステップS311へ進む。ステップS403では、ステップS401で発生したアラームやヘッドランプ34およびテールランプ35の点滅を停止する。そして、制御部11における通知処理を終了する。
【0025】
図5のステップS501では、通信部16から乗員40a,40bが携帯している携帯電話26に発呼するための発呼信号を出力する。そして、携帯電話26を介して「車室内放置発見。至急車に戻れ」などの警告メッセージを出力し、そして、引き続き「了解した場合は、電話機の♯ボタンを押せ」などの了解ボタンの操作を促すメッセージを送信する。これにより、乗員40a,40bが警告メッセージを了解した場合は、携帯電話25の所定のキーボタンを押すことになる。ステップS502では、所定の時間、待機している。
【0026】
ステップS503では、携帯電話26の所定のキーボタンが押されたことを示す信号を受信したか判定を行う。所定のキーボタンが押されたことが判定されると、ステップ503は肯定判定され、ステップS504へ進む。所定のキーボタンが押されていない場合は、ステップS503は否定判定され、ステップS501へ戻る。ステップS504では、所定の時間をタイマ14に設定し、カウントアップを開始する。ここで、所定の時間としては、一般に乗員が郊外型の店舗に買い物をしたとき、買い物を終了させてから車両に戻ってくる時間などが考えられる。たとえば、「15分」などの時間が考えられる。ステップS505では、ドアスイッチ22からの信号によりドアが開いたか判定を行う。ドアが開いた場合は、ステップS505は肯定判定され、図4のステップS403へ進む。ドアが開かなかった場合は、ステップS505は否定判定され、ステップS506へ進む。
【0027】
ステップS506では、タイマ14のカウントアップが終了したか判定を行う。カウントアップが終了した場合は、ステップS506は肯定判定され、図3のステップS311へ進む。カウントアップが終了していない場合は、ステップS506は否定判定され、ステップS505へ戻る。
【0028】
以上の実施の形態による通知装置は次のような作用効果を奏する。
(1)乗員40aが車両30の近くにいるときには、車両30に設けられたスピーカ24からアラームが発生したり、ヘッドランプ34およびテールランプ35を点滅したりすることにより、つまり、車両に設定された視覚もしくは聴覚による報知を駆動することにより乗員40aに対して、車両内に人や物が放置されていることを通知する。一方、乗員40bが、車両30から遠く離れた位置にいるとき、すなわち、アラーム音が到達しない場所、ランプの光が確認できない場所に所在するときには、車両30に設けられたスピーカ24からアラームが発生したり、ヘッドランプ34およびテールランプ35が点滅することがない。このため、乗員40a,40bが知らない間に、車両30の周りが大騒ぎになることはない。
(2)乗員40bが車両30の近くにいないときは、通知装置1は、携帯電話26などの無線手段によって直接乗員40bに連絡する。つまり、乗員40bが保持する携帯情報端末へ通知する。このため、乗員40bが車両30から遠く離れた場所まで移動していても、乗員40bに車室内に人や物が放置されていることを通知することができる。また、乗員40bの知らない間に警察や消防署に連絡が入り、乗員40bが知らない間に車両30の周りが大騒ぎになることはない。
(3)乗員40aが車両の近くにいるときは、指令信号という情報により車両30に設けられたスピーカ24からアラームが発生したり、ヘッドランプ34およびテールランプ35が点滅することによって車室内に人や物が放置されていることを通知する。一方、乗員40bが車両から離れて位置にいるときは、発呼信号という情報により携帯電話26へ出力することによって、車室内に人や物が放置されていることを通知する。このように乗員40a,40bの位置に応じて異なる情報により通知するので、適切な手段によって乗員40a,40bに通知できる。たとえば、乗員40aが車両30の近くいる場合は、車両30に設けられた聴覚もしくは視覚による報知装置からの通知を確認することにより、乗員40aはすばやく対応をとることができ、わざわざ通知に多少時間のかかる携帯電話26よって通知する必要はない。一方、乗員40bが車両30から遠い位置にいる場合は、聴覚または視覚による車両30に設けられた報知装置からの通知を確認できないので、通知に多少時間がかかっても携帯電話26で通知する必要がある。このように、本発明の実施形態による通知装置により、乗員40a,40bの位置に応じて適切な手段によって通知することができる。
(4)車両30のドアが開くまで所定の時間経過後、乗員40a,40bが了解するまで複数回発呼するので、車室内に人や物を放置していることをいったん認識して、その後うっかり忘れた場合でも、再度の電話メッセージにより車室内に人や物を放置していることを認識することができる。
(5)広く普及しているキーレスエントリシステムのリモコンに受信機能を付加した簡単な装置により乗員40a,40bが車両30の近くにいるか、遠く離れたところにいるかわかる。」

(エ)引用文献3の図3?5のフローチャート(【0017】)によれば、
(A)ステップS311を経て(【0022】)
(B)ステップS312で、インテリジェントキー27からの電波信号が受信できない場合はステップS501に進み(【0023】)
(C)ステップS501で、携帯電話26介して警告メッセージを出力し、ステップS502で所定時間待機し(【0025】)
(D)ステップS503で、携帯電話26の所定のキーボタンが押されると、ステップS504へ進み(【0026】)
(E)ステップS504で所定の時間をタイマ14に設定し、カウントアップを開始し(【0026】)
(F)ステップS505で、ドアが開かなかった場合は、ステップS506へ進み(【0026】)
(G)ステップS506で、タイマ14のカウントアップが終了した場合は、ステップS311へ進む(【0027】)、すなわち、前記(A)からの処理を繰り返す
との処理が記載されている。これら(A)?(G)の処理によれば、引用文献3に記載された「通知装置」は、特定の条件(インテリジェントキー27からの電波信号が受信できた等)が満たされない限り、所定の時間間隔で、すなわち、周期的に携帯電話26から警告メッセージを出力させる処理を行うと認められる。
前記処理は、「車室内に人や物を放置していることをいったん認識して、その後うっかり忘れた場合でも、再度の電話メッセージにより車室内に人や物を放置していることを認識することができる」ようにする(【0028】)ためのものと認められる。

(オ)上記(ア)から(エ)の記載事項から、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。(以下「文献3記載技術」という。)

「車室内に人や物が放置されていることを通知する通知装置であって、(【0001】)
車両30から遠い位置にいる乗員40bに対しては、携帯電話26を通じて車室内に子供が放置されていることを通知し、(【0016】)
車室内に人や物を放置していることをいったん認識して、その後うっかり忘れた場合でも、再度の電話メッセージにより車室内に人や物を放置していることを認識することができるようにするために、周期的に携帯電話26から警告メッセージを出力させる処理を行う(前記(エ))
通知装置。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 『アラートを行う拘束装置』について
(ア)引用発明の「子供置き去り警報装置1」は、「車内への子供の置き去りを警報する」ものであるから、アラートを行う装置である。

(イ)本件補正発明の『拘束』は、本願明細書の記載「デバイス100は、車両チャイルド・シート又は携帯用チャイルド・シートであってもよく、チャイルド・シートは、カー・シートに子供又は幼児をしっかりと保持するための拘束部114・・」(【0011】)を参照すると、子供をチャイルド・シートにしっかりと保持することを含む。
この意味で、引用発明の「子供置き去り警報装置1」は、「子供3を保持する子供用シートベルト8」を備えているから子供を子供用シートにしっかりと保持しているといえ、子供を拘束する装置であると認められる。

(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、引用発明の「子供置き去り警報装置1」は、本件補正発明の『アラートを行う拘束装置』に対応する。

イ 『無線送信部』及び『モバイル・デバイス』について
(ア)引用発明の「車両のキーレスエントリー用のリモコン」ないし「車両のキーレスリモコン」は、乗員が「所持して」「乗員検知手段が乗員を検知できない」程度まで車両から離れることが想定されており、前記「乗員検知手段」は「車両周囲の乗員の有無を検出する乗員検知部18」のことと認められるから、車両から相当離れた場所へ持ち運ぶことが想定されているといえ、「モバイル・デバイス」と称することができる。
一方、本件補正発明の『所定のモバイル・デバイス』については、本願明細書において「ケアギバーのパーソナル・モバイル・デバイス(例えば、ブルートゥース対応スマートフォン又はスマートウォッチ等)」(【0025】)と例示があるものの、引用発明の「車両のキーレスエントリー用のリモコン」までを含むものであるのかが明確でない。

(イ)引用発明の「第二警報手段17」は「車両のキーレスエントリー用のリモコンへの警報表示が行われ」るものであるから、車両から離れた乗員へ警報を行うものであり、警報を行う際に信号が前記リモコンに送信されていることは明らかである。
ここで、上記のようなキーレスエントリー用のリモコンが、無線による通信を行うことは技術常識であるから、引用発明の「第二警報手段17」は、無線によって警報のための信号を送っているといえ、本件補正発明の『無線送信部』に対応する。

ウ 『拘束部』について
前記ア(イ)で述べたとおり、引用発明は、「子供用シート4」の「子供用シートベルト8」により、子供を保持する、言い換えれば、拘束するものである。
よって、引用発明の「子供用シートベルト8」は、本件補正発明の『拘束部』に相当する。

エ 『固定コンポーネント』について
本件補正発明の『固定コンポーネント』は、本願明細書の「チャイルド・シートは、カー・シートに子供又は幼児をしっかりと保持するための拘束部114と、車両にカー・シートをしっかりと取り付けるための固定コンポーネント116とを含む。」(【0011】)との記載を参照すると、子供が保持されるカー・シートを車両にしっかりと取り付けるためのものと認められる。
引用発明の上記子供用シート4は、「固定部材5を介して車両シート2に取り付け」ても、「子供用シート4と固定部材5とが一体となって」いてもよいことに鑑みれば、「固定部材5」も、引用発明の「子供置き去り警報装置1」が備える構成要素の1つといえ、子供用シート4を車両(車両シート2)にしっかりと取り付けるためのものと認められる。
よって、引用発明の「固定部材5」は、本件補正発明の『固定コンポーネント』に相当する。

オ 『前記拘束部及び1つ以上のプロセッサに結合され、前記拘束部が拘束位置にあるか否かに少なくとも部分的に基づいて拘束インジケータを提供する第1センサ』について
本願明細書に「拘束部114は例えば5点式バックル・ハーネスであってもよい。」(【0011】)との記載及び「例えば、5点ハーネスが適切にバックルで留められている場合に、拘束インジケータは、拘束部114が拘束位置にあることを指示しても良い。」(【0013】)との記載があることに鑑みれば、本件補正発明の『拘束部が拘束位置にある』ことは拘束部114が子供を拘束するための状態にあることを意味し、本件補正発明の『拘束インジケータ』は、前記状態にあるか否かを示すものと認められる。
引用発明の「装着検出部9」は、「子供用シートベルト8の装着状態を検出して送信」するから、子供用シートベルト8が子供を拘束するための状態にあるか否かを示す信号を送信していると認められる。
そうすると、引用発明の「制御装置14に子供用シートベルト8の装着状態を検出して送信」される信号は、本件補正発明の『拘束部が拘束位置にあるか否か』を示す『拘束インジケータ』であるといえ、引用発明の「装着検出部9」は本件補正発明の『前記拘束部が拘束位置にあるか否かに少なくとも部分的に基づいて拘束インジケータを提供する第1センサ』に対応するものである。
そして、引用発明の「装着検出部9」が「子供用シートベルト8」と結合していることは明らかである。
以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、『前記拘束部に結合され、前記拘束部が拘束位置にあるか否かに少なくとも部分的に基づいて拘束インジケータを提供する第1センサ』を有する点で共通する。

カ 『前記固定コンポーネント及び1つ以上のプロセッサに結合され、前記固定コンポーネントが当該拘束装置を車両に結合するように係合しているか否かに少なくとも部分的に基づいて、アタッチメント・インジケータを提供する第2センサ』について
本願明細書の「アタッチメント・インジケータは、固定コンポーネント116がデバイス100を車両に結合するように係合していることを指示しても良い。」(【0013】)との記載によれば、本件補正発明の『アタッチメント・インジケータ』は、固定コンポーネントが拘束装置を車両に結合するように係合しているか否かを示すものであると認められる。
引用発明の「接続検出部10」は、「前記子供用シート側コネクタ6及び前記固定部材側コネクタ7からなり、前記子供用シート4が車両に取り付けられていることを検出し、前記制御装置14にコネクタ6、7が接続状態であることを検出した検出信号を出力」するものであるから、子供用シート4と一体となって固定部材5が車両に結合するように係合しているか否かを検出して、この検出した検出信号を出力するものであると認められる。
そうすると、引用発明の「検出信号」は、本件補正発明の『固定コンポーネントが当該拘束装置を車両に結合するように係合しているか否か』を示す『アタッチメント・インジケータ』に対応し、引用発明の「接続検出部10」は本件補正発明の『前記固定コンポーネントが当該拘束装置を車両に結合するように係合しているか否かに少なくとも部分的に基づいて、アタッチメント・インジケータを提供する第2センサ』に対応するものである。
そして、引用発明の「接続検出部10」と「固定部材5」とが結合していることは明らかである。
以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、『前記固定コンポーネントに結合され、前記固定コンポーネントが当該拘束装置を車両に結合するように係合しているか否かに少なくとも部分的に基づいて、アタッチメント・インジケータを提供する第2センサ』を有する点で共通する。

キ 『前記拘束インジケータ及び前記アタッチメント・インジケータに少なくとも部分的に基づいて、アラート信号の無線送信を前記無線送信部に実行させるように、前記1つ以上のプロセッサにより制御されるアラート・モジュール』について
引用発明の「警報手段12」は、「エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シート4が車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にある場合」であり、「さらに車両のドアが施錠状態である場合に」「前記第二警報手段17を実施する」ものであり、「前記子供用シートベルト8が装着状態にある」ことは前記オで述べた「制御装置14に子供用シートベルト8の装着状態を検出して送信」される信号(本件補正発明の『拘束インジケータ』に対応。)によって示され、「前記子供用シート4が車両に取り付けられ」たことは前記カで述べた制御装置14に出力される「検出信号」(本件補正発明の『アタッチメント・インジケータ』に対応。)によって示されるのだから、「警報手段12」は、「制御装置14に子供用シートベルト8の装着状態を検出して送信」される信号及び制御装置14に出力される「検出信号」に少なくとも部分的に基づいて、「第二警報手段17を実施する」ものといえる。
ここで、引用発明の「子供置き去り警報装置1は、所定の条件が成立した際に、前記制御装置14からの制御信号が前記警報手段12に出力され、前記警報手段12が警報を実施するものであ」るから、「第二警報手段17を実施すること」は「制御手段14」の制御信号に基づいて行われていると認められる。
そして、前記イ(イ)で述べたとおり、「第二警報手段17」(本件補正発明の『無線送信部』に対応。)は「車両のキーレスエントリー用のリモコン」へ警報表示を行わせるための信号を無線によって送っており、該信号は本件補正発明の『アラート信号』に対応すると認められる。
よって、引用発明の「第二警報手段17」を備える「警報手段12」は、本件補正発明の『アラート・モジュール』に対応し、本件補正発明と引用発明とは、『前記拘束インジケータ及び前記アタッチメント・インジケータに少なくとも部分的に基づいて、アラート信号の無線送信を前記無線送信部に実行させるように』『制御されるアラート・モジュール』を有する点で共通する。

ク 『前記アラート信号の無線送信は所定のモバイル・デバイスへの周期的な通知を含む』について
前記イ(イ)で述べた引用発明における無線によって送られる警報のための信号は、通知であるといえ、本件補正発明と引用発明とは、『前記アラート信号の無線送信はモバイル・デバイスへの通知を含む』点で共通している。

ケ 小括
上記アないしクによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 アラートを行う拘束装置であって:
無線送信部;
拘束部;
固定コンポーネント;
前記拘束部に結合され、前記拘束部が拘束位置にあるか否かに少なくとも部分的に基づいて拘束インジケータを提供する第1センサ;
前記固定コンポーネントに結合され、前記固定コンポーネントが当該拘束装置を車両に結合するように係合しているか否かに少なくとも部分的に基づいて、アタッチメント・インジケータを提供する第2センサ;及び
前記拘束インジケータ及び前記アタッチメント・インジケータに少なくとも部分的に基づいて、アラート信号の無線送信を前記無線送信部に実行させるように制御されるアラート・モジュール;
を有し、前記アラート信号の無線送信はモバイル・デバイスへの通知を含む、拘束装置。」

[相違点1]
本件補正発明の『拘束装置』は、『1つ又は複数のプロセッサ』を有し、該『プロセッサ』と『無線送信部』、『第1センサ』及び『第2センサ』とが『結合され』ていること、並びに、『アラート・モジュール』が該『プロセッサ』により『制御され』ていることが特定されているのに対し、引用発明の「子供置き去り警報装置1」は、そのようなプロセッサを有するか明らかでない点。

[相違点2]
本件補正発明の『無線送信部』が実行する『アラート信号の無線送信』は『所定のモバイル・デバイスへの周期的な通知を含む』のに対し、引用発明の「第二警報手段17」は「車両のキーレスエントリー用のリモコン」に警報のための信号を送っているに過ぎず、該信号を周期的に送っているとは認められない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用発明の「子供置き去り警報装置1」は、プロセッサを有するか明らかでないものの、引用発明の「制御装置14」は「各種の制御を行う」ものであり、各種の制御を行うものとしてプロセッサは常套手段であるから、引用発明における「制御手段14」をプロセッサにより構成し、「第二警報手段17」を備える「警報手段12」、「装着検出部9」及び「接続検出部10」を制御するためにこれらと結合させることは、当業者が適宜為し得る、設計的な事項にすぎない。

イ 相違点2について
引用発明は、車内への子供の置き去りを警報するため、前記(3)イで述べたように、「第二警報手段」により、車両から離れた乗員が持つ「車両のキーレスエントリー用のリモコンへの警報表示が行われる」ものである。
文献3記載技術は、前記(2)イ(オ)のとおり、車両から遠い位置にいる乗員に車室内に人が放置されていることを通知する装置である点で引用発明と技術分野が共通する。
また、文献3記載技術の「うっかり忘れた場合」に備えることは、引用発明においても当然に追求されるべき課題であると認められ、両者の課題は共通する。
なお、うっかり忘れた場合に備えて周期的に警告や通知を行うこと、警告や通知を携帯電話のようなモバイル・デバイスに送ることは、いずれも慣用されている技術である。
以上によれば、引用発明に対して文献3記載技術ないし慣用技術を適用する動機付けは存在し、「うっかり忘れた場合」に備えて周期的な通知を行うとともに、通知を携帯電話のようなモバイル・デバイスにも送信するよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び文献3記載技術ないし慣用技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び文献3記載技術ないし慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年1月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、補正前請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2012-188035号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2014/0253314号明細書

3 引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、次の記載がある。(下線は、当審で付した。また、登録商標を表す記号(丸囲いのR))は、[R]と代用表記した。)

ア 「[0102] As used herein, the term “portable electronic device” is any device having a processor, memory, and an operating system, capable of interaction with a user or other computer and which can be used for communication over a wireless communication networks, such as a cellular phone, a walkie-talkie, a personal digital assistant (PDA), a pager, a smart phone, or any combination thereof. Portable electronic devices operative in the present invention typically run a mobile software application to effect the functionality described herein.」
(当審訳:[0102] ここで使用される場合、用語“携帯電子装置”は、プロセッサ、メモリ、及びオペレーティング・システムを有し、ユーザ又は他のコンピュータとのインタラクションが可能で、無線通信ネットワーク上の通信に使用できるあらゆる装置であって、例えば、携帯電話、ウォーキートーキー、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、ページャ、スマートフォン、又はそれらの任意の組合せなどである。(後略))

イ 「[0106] In FIG. 1, a new and improved child safety seat with alarm system or alert system 10 of the present invention for monitoring the occupancy of a child safety seat and notifying the driver of the vehicle that a child is in its seat inside of the vehicle when the driver moves a distance away from the seat is illustrated and will be described. More particularly, the child safety seat with alarm system 10 has a child safety seat 12 in place on a vehicle seat 26.
[0107] In one embodiment shown in FIG. 1, the alarm system 10 has two separate components, the first being the buckle component 34 which may be secured within the buckle system 15 of the child safety seat and the second being the driver component 36 that is personal to the driver and stays with the driver. The alarm system 10 is engaged when the female end 18 of the lap buckle system 15 receives the male end buckle 14 or when the driver activates the system 10 from the driver component 36. It is envisioned that the alarm system 10 may be engaged by a pressure sensor or switch 51 (shown in FIG. 8) within the buckle system 10 or electronic circuit 60 located within female end of the buckle system 10 that activates when a corresponding circuit on the opposing male end is matched to it. The alarm system 10 is placed within the lap buckle system as the lap buckle 15 is more robust than the chest buckle of most car seats, allowing the electronic components of the system 10 to be better insulated from exterior pressure on the unit and from liquid spills. Additionally, children can more easily disengage the chest buckle, thus disengaging the alarm.
[0108] The buckle component 34 is shown in more detail in FIG. 1. As shown in FIG. 1 in one embodiment, the buckle 14 for a child safety seat is shown in a closed position. In order for the alarm system 10 to engage, the buckle 14 must latch fully. As will be discussed more fully below, once the male end is inserted in the latch of the buckle 14, a sensor 51 is activated within the female end 18 that instructs a transceiver 70 (shown in detail in FIG. 13) within the buckle component 34 to broadcast a wireless signal 101 for reception by the driver component 36. The transceiver 70 can include an antenna for radio transmission as well. The wireless communications can be based on many different wireless communication protocols. The transceiver 70 may additionally be configured with GPS technology to allow positioning of the device 10. The buckle component 34 may include one or more transceivers 70 which individually can communicate with a different driver component 36.
[0109] The driver component 36 may be a portable device 19 or a portable electronic device 100. A portable device 19 capable of receiving the wireless communication from the transceiver 70 (or vice versa) is shown in more detail in FIGS. 2-6. The transceiver 70 (shown in FIG. 13) can broadcast to a receiver 27 integrated with a microcontroller 28 and contained within the driver component 36, which can be a portable device 19 or a portable electronic device 100 (shown in FIG. 1). The portable device 19 has a housing 20 and is generally fashioned to be a small device, such as a key fob, to allow for the housing 20 to be secured to a key ring (not shown) at a connection port 16. As shown in the figures, portable device is depicted as a key fob. However, it is envisioned that the portable device can be other small personal objects, such as jewelry, purses, or wallets.」
(当審訳:[0106] 図1では、子供用安全シートが占有されていることを監視し、かつ、運転者が該シートから離れた遠方へ移動するときに子供が該車両内のシートにいることを該車両の運転者に通知する本発明の警報システム又は警告システム10を備える新規で改良された子供用安全シートが解説され、説明されるだろう。(中略)
[0107] 図1に示す一実施形態では、警報システム10は、2個の別個の構成要素を有し、第1は、子供用安全シートのバックルシステム15内に固定されうるバックル構成要素34であり、第2は、該運転者個人用の、該運転者と共にある運転者構成要素36である。(中略)
[0109] 運転者構成要素36は、携帯装置19又は携帯電子装置100であってよい。(中略)携帯装置19はハウジング20を備え、通常は例えばキーフォブのような小さな装置を形成し、ハウジング20を接続ポート16においてキーホルダー(図示せず)に固定することを可能にする。(後略))

ウ 「[0116] FIGS. 14-16 outline the communications between the components 34, 36 of the different embodiments of the system 10. As shown in FIG. 14, a block diagram of the buckle component 34 provides a transceiver 70 with a processor 54 in communicative arrangement with the buckle 15 capable of producing a short-range radio-frequency signal 101. When the buckle 15 is engaged, a switch is activated and communicates with the processor 54 to send a status code to transmit a signal 101. The signal 101 is received and read by a transceiver (not shown) and processor 56 contained within the portable device 19 driver component 36. If the portable device 19 is outside of a programmed distance range of the signal 101 being transmitted by the buckle component 34, then an alarm signal is activated by the processor by playing an auditory noise through the speaker 30 of the portable device 19. The portable device 19 can silence the alarm by activating a snooze button 58 on the device 19. Once the portable device 19 is again in range of the signal 101, the alarm deactivates. The portable device 19 additionally may alert a visual alarm through a light activation 26 on the device 19 or through a vibration alarm 106.
[0117] FIG. 15 outlines the communication between a Bluetooth-enabled buckle component 34 with a portable electronic device 100. When the buckle 15 is engaged, a switch is activated and communicates with the processor 54 and Bluetooth transmitter to transmit a signal 101. The signal 101 is received by a synced portable electronic device 100 capable of receiving Bluetooth signals. If the portable electronic device 100 is out of range of the signal 101 being transmitted by the buckle component 34, then an alarm is activated. The portable electronic device 100 is equipped with application software 102 with stored information that can be accessed by the software for alarm purposes. Within the application software 102, phone contacts and sound alerts are stored. When the alarm is activated, the speaker of the portable electronic device 100 can access pre-selected auditory noises for playback to alert that the portable electronic device 100 is out of range. The portable electronic device 100 may also vibrate 106 or transmit text messages (SMS) 105 to the portable electronic device 100 or to pre-selected contacts stored within the software 102 of the portable electronic device 100. The portable electronic device 100 may also access a wireless communications system 140, such as OnStar[R], a social media network 122, such as Facebook[R] or Twitter[R], or access an e-mail account 124 to communicate the alarm status based upon pre-set selections by the user of the portable electronic device 100. The portable electronic device 100 may additionally utilize the phone component of the portable electronic device 100 to contact emergency medical services (EMS) 126.
[0118]FIG. 16 outlines the communication between Bluetooth-enabled buckle component 34 and processor 54 with a portable electronic device 100. When the buckle 15 is engaged, a switch is activated and communicates with the processor 54 and Bluetooth transmitter to transmit a signal 101. The signal 101 is received by a synced portable electronic device 100 capable of receiving Bluetooth signals. If the portable electronic device 100 moves out of range of the signal 101 being transmitted by the buckle component 34, then an alarm is activated. The system 10 allows for the portable electronic device 100 to be out of range when the buckle is first engaged, to allow for multiple users of the device. The system requires the portable electronic device 100 to engage the alarm as well as engage the buckle. In this manner, only the portable electronic device 100 that is located near the buckle at the time of engagement will be synced to the device 10. The portable electronic device 100 and the buckle processor 54 are equipped to alert that the device 100 is out of range. Additionally, the buckle processor 54 is equipped to alert when the buckle is engaged through text message 58 to contacts stored within the device storage 60. The text message 58 can provide a message alerting the contact that the buckle is engaged along with location information accessed from the GPS 62 of the buckle 15. Additionally, the buckle processor 54 is equipped to alert EMS if the device 100 is out range. Within the application software 102, phone contacts and sound alerts are stored. When the alarm is activated, the speaker of the portable electronic device 100 can access pre-selected auditory noises for playback to alert that the portable electronic device 100 is out of range. The portable electronic device 100 may also vibrate or transmit text messages 105 to the portable electronic device 100 or to pre-selected contacts stored within the software 102 of the portable electronic device 100. The portable electronic device 100 may also access a wireless communications system 140, such as OnStar[R], a social media network 122, such as Facebook[R] or Twitter[R], or access an e-mail account 124 to communicate the alarm status based upon pre-set selections by the user of the portable electronic device 100. The portable electronic device 100 may additionally utilize the phone component of the portable electronic device 100 to contact emergency medical services (EMS) 126.」
(当審訳:[0116] (中略)携帯装置19が、バックル構成要素34が送信する信号101のプログラムされた距離範囲外にある場合、警報信号は、該プロセッサによって携帯装置19のスピーカ30から聴覚ノイズを再生する形で起動される。(中略)
[0117] (中略)携帯電子装置100が、バックル構成要素34によって送信される信号101の範囲外にある場合、警報が起動される。(中略)警報が起動されたとき、携帯電子装置100のスピーカは、携帯電子装置100が範囲外にあるとの警報を出すために再生される予め選択された聴覚ノイズにアクセスできる。(後略))

エ 上記アからウの記載事項から、引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「子供用安全シートが占有されていることを監視し、かつ、運転者が該シートから離れた遠方へ移動するときに子供が該車両内のシートにいることを該車両の運転者に通知する警報システム10を備える新規で改良された子供用安全シートであって、([0106])
警報システム10は、2個の別個の構成要素を有し、第1は、子供用安全シートのバックルシステム15内に固定されうるバックル構成要素34であり、第2は、該運転者個人用の、該運転者と共にある運転者構成要素36であり、([0107])
運転者構成要素36は、携帯装置19又は携帯電子装置100であってよく、([0109])
携帯装置19が、バックル構成要素34が送信する信号101のプログラムされた距離範囲外にある場合、警報信号は、該プロセッサによって携帯装置19のスピーカ30から聴覚ノイズを再生する形で起動され、([0116])
携帯電子装置100が、バックル構成要素34によって送信される信号101の範囲外にある場合、警報が起動され、警報が起動されたとき、携帯電子装置100のスピーカは、携帯電子装置100が範囲外にあるとの警報を出すために再生される予め選択された聴覚ノイズにアクセスでき、([0117])
携帯装置19は通常は例えばキーフォブのような小さな装置を形成し、([0109])
“携帯電子装置”は、例えば、携帯電話、スマートフォンなどである([0102])
子供用安全シート。」

前記「キーフォブ」(key fob)は、キーホルダーサイズのリモコンを意味し、携帯電話やスマートフォンはモバイル・デバイスであるから、引用文献2には、要するに、以下の技術的事項が記載されていると認められる。(以下「文献2記載技術」という。)

「子供用安全シートが占有されていることを監視し、かつ、運転者が該シートから離れた遠方へ移動するときに子供が該車両内のシートにいることを該車両の運転者に通知する警報システム10を備える子供用安全シートであって、
警報システム10は、バックル構成要素34と、キーホルダーサイズのリモコン19又はモバイル・デバイス100とを有し、
キーホルダーサイズのリモコン19が、バックル構成要素34が送信する信号101の範囲外にある場合、警報信号が起動されてリモコン19のスピーカから聴覚ノイズを再生し、
モバイル・デバイス100が、バックル構成要素34によって送信される信号101の範囲外にある場合、警報が起動されてモバイル・デバイス100のスピーカから警報として聴覚ノイズが出力される
子供用安全シート。」

4 対比
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「通知」に係る「周期的」という限定事項を削除したものである。
そうすると、前記第2の[理由]2(3)から、本願発明と引用発明とを対比すると、相違点は、以下の2点であり、その余の点で一致する。

[相違点1]
本願発明の『拘束装置』は、『1つ又は複数のプロセッサ』を有し、該『プロセッサ』と『無線送信部』、『第1センサ』及び『第2センサ』とが『結合され』ていること、並びに、『アラート・モジュール』が該『プロセッサ』により『制御され』ていることが特定されているのに対し、引用発明の「子供置き去り警報装置1」は、そのようなプロセッサを有するか明らかでない点。

[相違点2]
本願発明の『無線送信部』が実行する『アラート信号の無線送信』は『所定のモバイル・デバイスへの通知を含む』のに対し、引用発明の「第二警報手段17」は「車両のキーレスエントリー用のリモコン」に警報のための信号を送っている点。

5 判断
以下、相違点について検討する。

(1)相違点1について
前記第2の[理由]2(4)アで述べたのと同様である。

(2)相違点2について
文献2記載技術は、「子供用安全シートが占有されていることを監視し、かつ、運転者が該シートから離れた遠方へ移動するときに子供が該車両内のシートにいることを該車両の運転者に通知する警報システム10を備える子供用安全シート」であるから、引用発明と技術分野及び課題が共通し、引用発明に文献2記載技術を適用する動機付けが存在する。
そして、文献2記載技術は、遠方に移動する運転者に警報を通知するにあたり、キーホルダーサイズのリモコン19を用いることの他に、携帯電話などのモバイル・デバイス100を用いるものである。
そうすると、引用発明において、車両から遠ざかった乗員に対し、その乗員が携帯する車両のキーレスエントリー用のリモコン(キーホルダーサイズのリモコンであると認められる。)の他に、携帯電話のようなモバイル・デバイスに警報を通知するように構成することは、文献2記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

また、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び文献2記載技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-11 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2017-544702(P2017-544702)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 登  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 丸山 高政
谷岡 佳彦
発明の名称 アラート機能を有する拘束装置、拘束方法、及び車両ワーニング装置  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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