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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02B
管理番号 1377273
審判番号 不服2020-11796  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-25 
確定日 2021-08-19 
事件の表示 特願2016-137650「エンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成30年1月18日出願公開、特開2018-9474〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成28年7月12日に出願され、令和元年10月25日付けで拒絶理由(発送日:同年10月30日)が通知され、その指定期間内である令和元年12月25に意見書が提出され、令和2年1月30日付けで拒絶理由(発送日:同年2月3日)が通知され、その指定期間内である令和2年4月1日に意見書が提出され、令和2年5月20日付けで拒絶査定(発送日:同年5月26日)がされ、これに対し、令和2年8月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、当審において令和3年3月12日付けで拒絶理由(発送日:同年3月15日)が通知され、その指定期間内である令和3年5月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年5月12日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明は、以下のとおりである。

「気筒内へ空気を供給する吸気マニホールドと、
前記気筒からの排気ガスを排出する排気マニホールドと、
前記排気マニホールドからの排気ガスにより空気を圧縮する過給機と、
前記排気マニホールドの出口と前記過給機の排気出口とを接続する排気バイパス流路に設けられた排気バイパス弁と、
前記吸気マニホールドの入口と前記過給機の入口とを接続する吸気バイパス流路に設けられた吸気バイパス弁と、
前記吸気マニホールドの圧力を検出する吸気圧センサと、
エンジン負荷及びエンジン回転数を取得するエンジン制御装置であって、設定された前記吸気マニホールドの目標圧力に前記吸気圧センサの検出圧力が近づくように、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁のうち少なくとも何れかについて弁開度の指令値を出力してフィードバック制御する前記エンジン制御装置と、
を備え、
前記エンジン制御装置は、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の一方について弁開度のフィードバック制御を行うとともに、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の他方について弁開度のマップ制御、又は予め定められた数式に基づく制御を行うように構成されており、
前記エンジン制御装置は、エンジン負荷が所定値以上である場合において、前記フィードバック制御の対象である前記排気バイパス弁又は前記吸気バイパス弁に対して、前記弁開度を上限又は下限とする指令値を所定時間以上継続して出力している場合に、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁のうち何れかに異常があると判定することを特徴とするエンジン。」


第3.当審において通知した拒絶の理由2及び3について
当審において令和3年3月12日付けで通知した拒絶の理由2の概要は以下のとおりである。
理由2.(進歩性要件違反)
本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

《引用文献等一覧》
1.特開2015-230000号公報
2.特開平6-229246号公報
3.特開2016-113915号公報
4.特開2014-125992号公報

第4.当審の判断
1.引用文献の記載、引用発明等
(1)引用文献1、引用発明
当審の拒絶の理由に引用した引用文献1である特開2015-230000号公報には、「エンジン装置」の発明に関して、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。)。
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内へ空気を供給させる吸気マニホールドと、前記シリンダからの排気ガスを排気させる排気マニホールドと、前記シリンダに液体燃料を噴射して燃焼させるメイン燃料噴射弁と、前記吸気マニホールドから供給される空気に気体燃料を混合させるガスインジェクタとを備えたエンジン装置において、
前記排気マニホールドからの排気ガスにより空気を圧縮する過給機と、該過給機で圧縮された圧縮空気を冷却して前記吸気マニホールドに供給するインタークーラとを、更に備え、
前記排気マニホールド出口と前記過給機の排気出口とを結ぶ排気バイパス流路を備えるとともに、前記排気バイパス流路に排気バイパス弁を配置する一方、前記過給機のコンプレッサをバイパスする給気バイパス流路を備えるとともに、前記給気バイパス流路に給気バイパス弁を配置し、
中高負荷域において、前記排気バイパス弁及び前記給気バイパス弁それぞれを制御して、前記吸気マニホールドにおける圧力を負荷に応じた目標値とすることを特徴とするエンジン装置。
【請求項2】
前記中高負荷域において、前記排気バイパス弁に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁に対してマップ制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のエンジン装置。
【請求項3】
低負荷域において、所定負荷より低い場合に、前記排気バイパス弁を全開とすると同時に前記給気バイパス弁を全閉とし、所定負荷より高い場合に、前記排気バイパス弁に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁に対してマップ制御を行うことを特徴とする請求項2に記載のエンジン装置。」

イ.「【技術分野】
【0001】
本願発明は、天然ガス等の気体燃料と重油等の液体燃料のいずれにも対応できる多種燃料採用型のエンジン装置に関するものである。」

ウ.「【0027】
エンジン装置21は、図5に示すように、シリンダブロック25に複数の気筒36(本実施形態では6気筒)を直列に並べた構成を有している。各気筒36は、シリンダブロック25内に構成される吸気マニホールド(吸気流路)67(図20参照)と吸気ポート37を介して連通している。各気筒36は、シリンダヘッド26上方に配置される排気マニホールド(排気流路)44と排気ポート38を介して連通している。各気筒36における吸気ポート37に、ガスインジェクタ98を配置する。従って、吸気マニホールド67からの空気が、吸気ポート37を介して各気筒36に供給される一方、各気筒36からの排ガスが、排気ポート38を介して排気マニホールド44に吐出される。また、エンジン装置21をガスモードで運転している場合には、ガスインジェクタ98から燃料ガスを吸気ポート37に供給し、吸気マニホールド67からの空気に燃料ガスを混合して、各気筒35に予混合ガスを供給する。
【0028】
排気マニホールド44の排気出口側に、過給機49のタービン49aの排気入口を接続しており、吸気マニホールド67の空気入口側(新気入口側)に、インタークーラ51の空気吐出口(新気出口)を接続している。インタークーラ51の空気吸入口(新気入口)に、過給機49のコンプレッサ49bの空気吐出口(新気出口)を接続している。コンプレッサ49b及びインタークーラ51の間に、メインスロットル弁V1を配置しており、メインスロットル弁V1の弁開度を調節して、吸気マニホールド44に供給する空気流量を調整する。
【0029】
コンプレッサ49b出口から排出される空気の一部をコンプレッサ49b入口に再循環させる給気バイパス流路17が、コンプレッサ49bの空気吸入口(新気入口)側とインタークーラ51の空気吸入口側とを連結している。すなわち、給気バイパス流路17は、コンプレッサ49bの空気吸入口よりも上流側で外気に解放される一方で、インタークーラ51とメインスロットル弁V1との接続部分に接続される。この給気バイパス流路17上に、給気バイパス弁V2を配置しており、給気バイパス弁V2の弁開度を調節して、メインスロットル弁V1下流側からインタークーラ51へ流れる空気流量を調整する。
【0030】
タービン49aをバイパスさせる排気バイパス流路18が、タービン49aの排気出口側と排気マニホールド44の排気出口側とを連結している。すなわち、排気バイパス流路18は、タービン49aの排気出口よりも下流側で外気に解放される一方で、タービン49aの排気出口とタービン49aの排気入口との接続部分に接続される。この排気バイパス流路18上に、排気バイパス弁V3を配置しており、排気バイパス弁V3の弁開度を調節することで、タービン49aに流れる排ガス流量を調整して、コンプレッサ49bにおける空気圧縮量を調整する。
【0031】
エンジン装置21は、排気マニホールド44からの排気ガスにより空気を圧縮する過給機49と、過給機49で圧縮された圧縮空気を冷却して吸気マニホールド67に供給するインタークーラ51とを有している。エンジン装置21は、過給機49出口とインタークーラ51入口との接続箇所にメインスロットル弁V1を設けている。エンジン装置21は、排気マニホールド44出口と過給機49の排気出口とを結ぶ排気バイパス流路18を備えるとともに、排気バイパス流路18に排気バイパス弁V3を配置する。過給機49をディーゼルモード仕様に最適化した場合に、ガスモード時においても、エンジン負荷の変動に合わせて排気バイパス弁V3の開度を制御することで、エンジン負荷に最適な空燃比を実現できる。そのため、負荷変動時において、燃焼に必要な空気量の過不足を防止でき、エンジン装置21は、ディーゼルモードで最適化した過給機を使用した状態で、ガスモードでも最適に稼働する。
【0032】
エンジン装置21は、過給機49をバイパスする給気バイパス流路17を備え、給気バイパス流路17に給気バイパス弁V2を配置する。エンジン負荷の変動に合わせて給気バイパス弁V2の開度を制御することにより、燃料ガスの燃焼に必要な空燃比に合わせた空気をエンジンに供給できる。また、応答性の良い給気バイパス弁V2による制御動作を併用することで、ガスモードにおける負荷変動への応答速度を速めることができる。
【0033】
エンジン装置21は、インタークーラ51入口とメインスロットル弁V1との間となる位置に、給気バイパス流路17を接続し、コンプレッサ49bから吐出された圧縮空気をコンプレッサ49b入口に帰還させる。これにより、排気バイパス弁V3による流量制御の応答性を給気バイパス弁V2により補うと同時に、給気バイパス弁V2の制御幅を排気バイパス弁V3により補うことができる。従って、舶用用途での負荷変動や運転モードの切換時において、ガスモードにおける空燃比制御の追従性を良好なものとできる。
【0034】
エンジン装置21は、図6に示すように、エンジン装置21の各部を制御するエンジン制御装置73を有している。エンジン装置21は、気筒36毎に、パイロット燃料噴射弁82、燃料噴射ポンプ89、及びガスインジェクタ98を設けている。エンジン制御装置73は、パイロット燃料噴射弁82、燃料噴射ポンプ89、及びガスインジェクタ98それぞれに制御信号を与えて、パイロット燃料噴射弁82によるパイロット燃料噴射、燃料噴射ポンプ89による燃料油供給、及びガスインジェクタ98によるガス燃料供給それぞれを制御する。
【0035】
エンジン制御装置73は、メインスロットル弁V1、給気バイパス弁V2、及び排気バイパス弁V3それぞれに制御信号を与えて、それぞれ弁開度を調節し、吸気マニホールド67における空気圧力(吸気マニホールド圧力)を調整する。エンジン制御装置73は、吸気マニホールド65における空気圧力を測定する圧力センサ39より測定信号を受け、吸気マニホールド圧力を検知する。エンジン制御装置73は、ワットトランスデューサやトルクセンサなどの負荷測定器19による測定信号を受け、エンジン装置21にかかる負荷を算出する。エンジン制御装置73は、クランク軸24の回転数を測定するパルスセンサなどのエンジン回転センサ20による測定信号を受け、エンジン装置21のエンジン回転数を検知する。
【0036】
ディーゼルモードでエンジン装置21を運転する場合、エンジン制御装置73は、燃料噴射ポンプ89における制御弁を開閉制御して、各気筒36における燃焼を所定タイミングで発生させる。すなわち、各気筒36の噴射タイミングに合わせて、燃料噴射ポンプ89の制御弁を開くことで、メイン燃料噴射弁79を通じて各気筒36内に燃料油を噴射させ、気筒36内で発火させる。また、ディーゼルモードにおいて、エンジン制御装置73は、パイロット燃料及び燃料ガスの供給を停止させている。」

エ.「【0070】
エンジン制御装置73は、図17に示すように、エンジン負荷が所定負荷L1より低い場合には(STEP101でYes)、排気バイパス弁V3を全開となるよう制御する(STEP102)。エンジン制御装置73は、エンジン負荷が所定負荷L1以上となる場合には(STEP101でNo)、排気バイパス弁V3の弁開度に対してフィードバック制御(PID制御)を行う(STEP103)。このとき、エンジン制御装置73は、エンジン負荷に応じた目標圧力と圧力センサ39による測定圧力との差分値に基づき、排気バイパス弁V3の弁開度のPID制御を実行し、吸気マニホールド67の空気圧力を目標圧力に近づける。
【0071】
エンジン制御装置73は、図18に示すように、エンジン負荷が所定負荷L1より低い場合には(STEP201でYes)、給気バイパス弁V2を全閉となるよう制御する(STEP202)。エンジン制御装置73は、エンジン負荷が所定負荷L1以上となる場合には(STEP201でNo)、給気バイパス弁V2の弁開度に対してマップ制御を行う(STEP203)。このとき、エンジン制御装置73は、エンジン負荷に対する給気バイパス弁V2の弁開度を記憶するデータテーブルDT2を参照し、エンジン負荷に対応した給気バイパス弁V2の弁開度を設定する。
【0072】
図19に示すように、負荷L2より低い低負荷域においては、エンジン負荷が所定負荷L1(L1<L2)より低い場合、エンジン制御装置73は、圧力センサ39で測定された吸気マニホールド圧力に基づくフィードバック制御(PID制御)により、メインスロットル弁V1の開度を設定する。また、エンジン負荷が所定負荷L1より高い場合は、データテーブルDT1に基づくマップ制御により、メインスロットル弁V1の開度を設定する。一方、負荷L2以上となる中高負荷域においては、メインスロットル弁V1を所定開度(本実施形態では、全開)で開くとともに、給気バイパス弁V2及び排気バイパス弁V3それぞれを制御して、吸気マニホールド圧力をエンジン負荷に応じた目標値に調整する。
【0073】
過給機49をディーゼルモード仕様に最適化した場合に、ガスモード運転時において、ディーゼルモードの運転ポイントと大きく異なる中高負荷域にあっても、吸気マニホールド67の圧力制御を応答性の良好なものとできる。そのため、負荷変動時において、燃焼に必要な空気量の過不足を防止でき、ディーゼルモードで最適化した過給機49を使用したエンジン装置21であっても、ガスモードで最適に稼働できる。
【0074】
また、中高負荷域において、圧力センサ39で測定された吸気マニホールド圧力に基づくフィードバック制御(PID制御)により、排気バイパス弁V3の開度を設定すると同時に、データテーブルDT1に基づくマップ制御により、給気バイパス弁V2の開度を設定する。エンジン負荷の変動に合わせて排気バイパス弁V3の開度を制御することにより、気体燃料の燃焼に必要な空燃比に合わせた空気をエンジン装置21に供給できる。また、応答性の良い給気バイパス弁V2による制御動作を併用することで、ガスモードにおける負荷変動への応答速度を速めることができる。
【0075】
低負荷域において、エンジン負荷が所定負荷L1より高い場合に、圧力センサ39で測定された吸気マニホールド圧力に基づくフィードバック制御(PID制御)により、排気バイパス弁V3の開度を設定すると同時に、データテーブルDT2に基づくマップ制御により、給気バイパス弁V2の開度を設定する。一方、エンジン負荷が所定負荷L1より低い場合には、給気バイパス弁V2を全閉とするとともに、排気バイパス弁V3を全開とする。」

オ.「【図5】



カ.「【図6】



キ.以上を踏まえると、上記引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

《引用発明》
「気筒36内へ空気を供給させる吸気マニホールド67と、前記気筒36からの排気ガスを排気させる排気マニホールド44と、前記気筒36に液体燃料を噴射して燃焼させるメイン燃料噴射弁79と、前記吸気マニホールド67から供給される空気に気体燃料を混合させるガスインジェクタ98とを備えたエンジン装置21において、
前記排気マニホールド44からの排気ガスにより空気を圧縮する過給機49と、該過給機49で圧縮された圧縮空気を冷却して前記吸気マニホールドに供給するインタークーラ51とを、備え、
前記排気マニホールド44出口側と前記過給機49のタービン49aの排気出口側とを結ぶ排気バイパス流路18を備えるとともに、前記排気バイパス流路18に排気バイパス弁V3を配置する一方、前記過給機49のコンプレッサ49bの空気吸入口側とインタークーラ51の空気吸入口側とを連結している給気バイパス流路17を備えるとともに、前記給気バイパス流路17に給気バイパス弁V2を配置し、
吸気マニホールド67における空気圧力を測定する圧力センサ39より測定信号を受けて吸気マニホールド圧力を検知し、負荷測定器19による測定信号を受けエンジン装置21にかかる負荷を算出し、エンジン回転センサ20による測定信号を受けエンジン装置21のエンジン回転数を検知して、中高負荷域において、前記排気バイパス弁V3に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁V2に対してマップ制御を行い、低負荷域において、所定負荷より低い場合に、前記排気バイパス弁V3を全開とすると同時に前記給気バイパス弁V2を全閉とし、所定負荷より高い場合に、前記排気バイパス弁V3に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁V2に対してマップ制御を行なう、エンジン制御装置73を備える、エンジン装置21。」

(2)引用文献2、引用文献2事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献2である特開平6-229246号公報には、「過給機付エンジンの制御装置」の発明に関して、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。)。
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンに供給される吸気を過給する過給機を迂回して吸気通路の過給機上流側と過給機下流側を連通させるバイパス通路を開閉し過給機下流の吸気圧をエンジン運転状態に応じた目標圧力に制御する過給圧制御手段を備えた過給機付エンジンの制御装置であって、前記過給機下流側の吸気圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサの出力を受け、前記過給機下流側の吸気圧を前記目標圧力に収束させるよう前記過給圧制御手段の制御にフィードバック補正を加える過給圧フィードバック補正手段と、前記フィードバック補正に係る制御値が所定範囲から外れた状態が継続した時に前記過給圧制御手段を含む制御系に異常が生じたと判定する異常判定手段を設けたことを特徴とする過給機付エンジンの制御装置。」

イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は過給機付エンジンにおける過給圧制御手段の異常判定に関する。」

ウ.「【0013】また、過給圧のフィードバック制御が行われている時に、目標圧力と圧力センサ13によって検出された実際の過給圧の偏差が所定値(設定しきい値)以上となった状態が継続したかどうかによってABV7の異常が判定される。この判定は、図3に示すようにABV閉まりっぱなしの異常時には吸気管内圧力の負圧域において正常時と異常時の圧力差が出てくるし、ABV開きっぱなしの異常時には過給域において圧力差が出てくることから、ABV7が閉まりっぱなしの異常については吸気管内圧力の負圧域で判定が行われ、ABV7が開きっぱなしの異常については吸気管内圧力の過給域で判定が行われる。ただし、目標圧力と実圧力の偏差が所定値以上かどうかというだけでは吸気系のエア洩れとの区別ができないので、吸気管内圧力の負圧域において目標圧力と実圧力の偏差が所定値以上で、かつ、空燃比フィードバック補正の補正値がプラス側に張り付いていない場合にABV7が閉まりっぱなしの異常が発生したと判定し、過給域において目標圧力と実圧力の偏差が所定値以上で、かつ、空燃比フィードバック補正の補正値がマイナス側に張り付いていない場合にはABV7が開きっぱなしの異常が発生したと判定する。また、目標圧力と実圧力の偏差が所定値以上で、空燃比フィードバック補正の補正値がプラス側あるいはマイナス側に張り付いている場合は吸気系のエア洩れと判定する。
【0014】なお、この実施例では上記のように異常判定をまず目標圧力と実圧力の偏差が所定値以上かどうかによって行っているが、目標圧力と実圧力の偏差が所定値以上の場合に、実圧力が目標圧力より大きくてその差が設定しきい値以上の時には過給圧のフィードバック補正値がマイナス側のマックス値に張り付き、実圧力が目標圧力より小さくてその差が設定しきい値以上という時にはフィードバック補正値がマイナス側のマックス値に張り付くので、圧力偏差を見る代わりに過給圧のフィードバック補正値がマイナス側あるいはプラス側に張り付いたかどうかで異常判定を行うことも可能である。」

エ.以上を踏まえると、上記引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2事項」という。)が記載されていると認める。

《引用文献2事項》
「フィードバック制御対象への指令値が制御範囲の上限又は下限の値を所定時間以上継続して出力している場合に、前記制御対象に異常があると判定すること。」

(3)引用文献3
当審の拒絶の理由に引用した引用文献3である特開2016-113915号公報には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。)。
ア.「【0007】
本願発明は、シリンダ内へ空気を供給させる吸気マニホールドと、前記シリンダからの排気ガスを排気させる排気マニホールドと、前記シリンダに液体燃料を噴射して燃焼させるメイン燃料噴射弁と、前記吸気マニホールドから供給される空気に気体燃料を混合させるガスインジェクタとを備えたエンジン装置において、前記排気マニホールドからの排気ガスにより空気を圧縮する過給機と、該過給機で圧縮された圧縮空気を冷却して前記吸気マニホールドに供給するインタークーラとを、更に備え、前記過給機出口と前記インタークーラ入口との接続箇所にメインスロットル弁を設けており、前記排気マニホールド出口と前記過給機の排気出口とを結ぶ排気バイパス流路を備えるとともに、前記排気バイパス流路に排気バイパス弁を配置する一方、前記吸気マニホールド入口と前記過給機入口をバイパスする給気バイパス流路を備えるとともに、前記給気バイパス流路に給気バイパス弁を配置し、前記エンジン装置にかかる負荷が第1所定負荷より高い場合に、前記メインスロットル弁開度を全開とするとともに、前記給気バイパス弁に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記排気バイパス弁に対してマップ制御を行うことで、前記吸気マニホールドにおける圧力を負荷に応じた目標値とするというものである。」

イ.「【0030】
コンプレッサ49b出口から排出される空気の一部をコンプレッサ49b入口に再循環させる給気バイパス流路17が、コンプレッサ49bの空気吸入口(新気入口)側とインタークーラ51の空気排出口側とを連結している。すなわち、給気バイパス流路17は、コンプレッサ49bの空気吸入口よりも上流側で外気に解放される一方で、インタークーラ51と吸気マニホールド67との接続部分に接続される。この給気バイパス流路17上に、給気バイパス弁V2を配置しており、給気バイパス弁V2の弁開度を調節して、インタークーラ51下流側から吸気マニホールド67へ流れる空気流量を調整する。」

ウ.「【図5】



(4)引用文献4
当審の拒絶の理由に引用した引用文献4である特開2014-125992号公報には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。)。
ア.「【0016】
以下、過給システム及びその制御方法の一実施形態を説明する。本実施形態では、過給システムが設けられたエンジンを、ディーゼルエンジンに具体化して説明する。
図1に示すように、本実施形態のエンジン10は、直列6気筒のエンジンであって、シリンダヘッド12には、シリンダ11内に燃料を噴射するインジェクタ13が備えられている。また、シリンダヘッド12には、シリンダ11内に連通する吸気マニホールドINと、排気マニホールドEXとが連結されている。排気マニホールドEXにはEGR(Exhaust Gas Recirculation)管14が連結され、排気の一部を吸気マニホールドIN側に還流している。EGR管14の途中にはEGRバルブ14aが設けられ、EGRバルブ14aの開度を制御することで、還流量を調整している。また、EGR管14には、EGRクーラ14bが設けられている。」

イ.「【0019】
また、吸気通路16のうち、コンプレッサホイールW2よりも下流には、インタークーラCLが設けられている。吸気通路16のうち、インタークーラCLと吸気マニホールドINとの間からは、吸気再循環路20が分岐している。吸気再循環路20は、インタークーラCLの下流側とコンプレッサCNの上流側とを接続し、インタークーラCLによって冷却された吸気をコンプレッサCNの上流に還流している。吸気再循環路20には、該吸気再循環路20を流れる吸気の流量を調整する流量調整バルブ21が設けられている。」

ウ.「【図1】



2.引用発明と本願発明との対比、一致点、相違点
引用発明と本願発明とを対比する。
引用発明の「気筒36」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明の「気筒」に相当し、同様に「吸気マニホールド67」は「吸気マニホールド」に、「排気マニホールド44」は「排気マニホールド」に、「過給機49」は「過給機」に、「排気バイパス流路18」は「排気バイパス流路」に、「排気バイパス弁V3」は「排気バイパス弁」に、おのおの相当する。

引用発明の「給気バイパス流路17」、「給気バイパス弁V2」及び「過給機49のコンプレッサ49bの空気吸入口」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明の「吸気バイパス流路」、「吸気バイパス弁」及び「過給機の入口」に、おのおの相当するものであるところ、引用発明の「該過給機49で圧縮された圧縮空気を冷却して前記吸気マニホールドに供給するインタークーラ51とを、備え」、「前記過給機49のコンプレッサ49bの空気吸入口側とインタークーラ51の空気吸入口側とを連結している給気バイパス流路17を備えるとともに、前記給気バイパス流路17に給気バイパス弁V2を配置」する態様と、本願発明の「前記吸気マニホールドの入口と前記過給機の入口とを接続する吸気バイパス流路に設けられた吸気バイパス弁」を有する態様とは、「前記吸気マニホールドの入口に連なる箇所と前記過給機の入口とを接続する吸気バイパス流路に設けられた吸気バイパス弁」を有する態様の限りにおいて一致する。

引用発明の「圧力センサ39」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明の「吸気圧センサ」に相当し、引用発明の「エンジン制御装置73」は、「圧力センサ39より測定信号を受けて吸気マニホールド圧力を検知し、負荷測定器19による測定信号を受けエンジン装置21にかかる負荷を算出し、エンジン回転センサ20による測定信号を受けエンジン装置21のエンジン回転数を検知して、中高負荷域において、前記排気バイパス弁V3に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁V2に対してマップ制御を行い、低負荷域において、所定負荷より低い場合に、前記排気バイパス弁V3を全開とすると同時に前記給気バイパス弁V2を全閉とし、所定負荷より高い場合に、前記排気バイパス弁V3に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁V2に対してマップ制御を行なう」ものであることを踏まえると、
引用発明の「吸気マニホールド67における空気圧力を測定する圧力センサ39より測定信号を受けて吸気マニホールド圧力を検知し、負荷測定器19による測定信号を受けエンジン装置21にかかる負荷を算出し、エンジン回転センサ20による測定信号を受けエンジン装置21のエンジン回転数を検知して、中高負荷域において、前記排気バイパス弁V3に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁V2に対してマップ制御を行い、低負荷域において、所定負荷より低い場合に、前記排気バイパス弁V3を全開とすると同時に前記給気バイパス弁V2を全閉とし、所定負荷より高い場合に、前記排気バイパス弁V3に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁V2に対してマップ制御を行なう、エンジン制御装置73」と、
本願発明の「エンジン負荷及びエンジン回転数を取得するエンジン制御装置であって、設定された前記吸気マニホールドの目標圧力に前記吸気圧センサの検出圧力が近づくように、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁のうち少なくとも何れかについて弁開度の指令値を出力してフィードバック制御する前記エンジン制御装置と、
を備え、
前記エンジン制御装置は、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の一方について弁開度のフィードバック制御を行うとともに、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の他方について弁開度のマップ制御、又は予め定められた数式に基づく制御を行うように構成されており、
前記エンジン制御装置は、エンジン負荷が所定値以上である場合において、前記フィードバック制御の対象である前記排気バイパス弁又は前記吸気バイパス弁に対して、前記弁開度を上限又は下限とする指令値を所定時間以上継続して出力している場合に、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁のうち何れかに異常があると判定する」「エンジン制御装置」とは、
「エンジン負荷及びエンジン回転数を取得するエンジン制御装置であって、設定された前記吸気マニホールドの目標圧力に前記吸気圧センサの検出圧力が近づくように、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁のうち少なくとも何れかについて弁開度の指令値を出力してフィードバック制御する前記エンジン制御装置と、
を備え、
前記エンジン制御装置は、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の一方について弁開度のフィードバック制御を行うとともに、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の他方について弁開度のマップ制御、又は予め定められた数式に基づく制御を行うように構成されている」「エンジン制御装置」という限りにおいて一致する。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
気筒内へ空気を供給する吸気マニホールドと、
前記気筒からの排気ガスを排出する排気マニホールドと、
前記排気マニホールドからの排気ガスにより空気を圧縮する過給機と、
前記排気マニホールドの出口と前記過給機の排気出口とを接続する排気バイパス流路に設けられた排気バイパス弁と、
前記吸気マニホールドの入口に連なる箇所と前記過給機の入口とを接続する吸気バイパス流路に設けられた吸気バイパス弁と、
前記吸気マニホールドの圧力を検出する吸気圧センサと、
エンジン負荷及びエンジン回転数を取得するエンジン制御装置であって、設定された前記吸気マニホールドの目標圧力に前記吸気圧センサの検出圧力が近づくように、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁のうち少なくとも何れかについて弁開度の指令値を出力してフィードバック制御する前記エンジン制御装置と、
を備え、
前記エンジン制御装置は、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の一方について弁開度のフィードバック制御を行うとともに、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の他方について弁開度のマップ制御、又は予め定められた数式に基づく制御を行うように構成されている、エンジン。

《相違点1》
前記吸気マニホールドの入口に連なる箇所が、本願発明では「吸気マニホールドの入口」そのものであるのに対し、引用発明では「該過給機49で圧縮された圧縮空気を冷却して前記吸気マニホールドに供給する」「インタークーラ51の空気吸入口側」である点。
《相違点2》
エンジン制御装置が、本願発明では、さらに、「エンジン負荷が所定値以上である場合において、前記フィードバック制御の対象である前記排気バイパス弁又は前記吸気バイパス弁に対して、前記弁開度を上限又は下限とする指令値を所定時間以上継続して出力している場合に、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁のうち何れかに異常があると判定する」のに対し、引用発明では、そのようなことが規定されていない点。

3.相違点の判断
(1)相違点1について
過給器を備えたエンジンにおいて、吸気マニホールドの入口と前記過給機の入口とを接続する吸気バイパス流路に設けられた吸気バイパス弁を備えること、すなわち、吸気バイパス流路を吸気マニホールドの入口に接続することは、例えば、当審の拒絶の理由に引用した引用文献3である特開2016-113915号公報(特に、上記1.(3)に摘記した事項を参照。)や同じく当審の拒絶の理由に引用した引用文献4である特開2014-125992号公報(特に、上記1.(4)に摘記した事項を参照。)にも記載されているように、本願出願前の周知技術であり、その採否は当業者が適宜決定し得たことであるから、引用発明において、「給気バイパス流路17」の接続先を「インタークーラ51の空気吸入口側」から「吸気マニホールド67」の入口に変更することは、当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
まず、本願発明は「前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の一方について弁開度のフィードバック制御を行うとともに、前記排気バイパス弁及び前記吸気バイパス弁の他方について弁開度のマップ制御、又は予め定められた数式に基づく制御を行うように構成され」たもの、すなわち、フィードバック制御を、排気バイパス弁と吸気バイパス弁のいずれか一方のみに対して行うものである。
一方、過給器を備えたエンジンの制御装置に関する技術を開示する文献であって、本願発明や引用発明と技術分野を同じくする、引用文献2には、上記1.(2)で示したように、引用文献2事項、すなわち、「フィードバック制御対象への指令値が制御範囲の上限又は下限の値を所定時間以上継続して出力している場合に、前記制御対象に異常があると判定すること」が記載されている。
他方、引用発明は「中高負荷域において、前記排気バイパス弁V3に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁V2に対してマップ制御を行い、低負荷域において、所定負荷より低い場合に、前記排気バイパス弁V3を全開とすると同時に前記給気バイパス弁V2を全閉とし、所定負荷より高い場合に、前記排気バイパス弁V3に対してフィードバック制御を行うと同時に、前記給気バイパス弁V2に対してマップ制御を行なう」もの、すなわち、フィードバック制御を、2つあるバイパス弁のうち、排気バイパス弁V3のみに対して行うものである。また、制御対象の異常判定を行うことは、ごく一般的な課題であることを踏まえると、当業者であれば、引用発明において、フィードバック制御の対象である排気バイパス弁V3の異常判定を行うことは、内在する課題であると認識するのが自然である。
してみると、上記引用文献2事項に接した当業者であれば、引用発明の「エンジン制御装置73」に、フィードバック制御の対象である前記排気バイパス弁V3に対して、前記弁開度の上限又は下限を示す指令値を所定時間以上継続して出力している場合に、前記排気バイパス弁V3に異常があると判定する機能を付加することで、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、容易に想到し得たことというべきである。

(3)本願発明が奏する作用効果について
本願発明が奏する作用効果、すなわち、本願明細書の段落【0012】に記載された「これにより、排気バイパス弁及び吸気バイパス弁のうち開閉動作できなくなった弁があることを、当該弁が開いた状態であるか閉じた状態であるかにかかわらず検知することができる。その結果、例えば、空気流量制御の異常への対応をオペレータに早期に促すことができる。」や、段落【0083】に記載された「この点を考慮して、エンジン制御装置73は、フィードバック制御の結果として吸気バイパス弁V2に出力する弁開度の指令値が制御範囲の上限又は下限の値にとどまった状態を所定時間以上継続する場合は、吸気バイパス弁V2及び排気バイパス弁V3のうち少なくとも何れかが異常であると判定し、その旨を、機側操作用制御装置71が備えるディスプレイ72に表示するように構成されている。これにより、空気流量の制御の異常を適切に発見して、早期の対応を促すことができる。」等の作用効果は、引用発明、引用文献2事項及び引用文献3、4に例示される周知技術から、当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

(4)請求人の主張について
請求人は、令和3年5月12日に提出された意見書において、(a)「引用発明(引用文献1)の目的及び効果は、過給機を有するエンジン装置において、中負荷域で運転させたときに負荷変動に対して応答性よく空気流量制御を実行できるエンジン装置を提供することであるのに対し、引用文献2の目的及び効果は、過給圧制御手段の異常を確実に検知しエンジンおよび過給機の耐久性が損なわれるのを防止することであり、2つの文献は目的も効果も全く異なり、これらを組み合わせる動機付けがない」旨及び(b)「給気バイパス弁しか有しない引用文献2のエンジンの制御方法と、給気バイパス弁及び排気バイパス弁の両方を有する引用発明(引用文献1)のエンジンの制御方法とは、大きく異なっており、この構成の差異を克服して、給気バイパス弁しか有しないエンジンにおける異常検知手段を、給気バイパス弁及び排気バイパス弁の両方を有するエンジンに適用するには、新たな創意工夫が必要であり、当業者にとって相当の困難がある」旨を主張している。
しかしながら、上記(2)で示したように、上記(a)については、制御対象の異常判定を行うことは、ごく一般的な課題であることを踏まえると、当業者であれば、引用発明において、フィードバック制御の対象である排気バイパス弁V3の異常判定を行うべきことは、内在する課題であると認識するのが自然であるから、引用発明に対して、引用文献2事項を参照する動機付けがないとはいえないし、上記(b)についても、引用発明は、フィードバック制御を、2つあるバイパス弁のうち、排気バイパス弁V3のみに対して行うものであり、引用文献2事項を参照するべき対象は、排気バイパス弁V3であるから、「新たな創意工夫が必要であり、当業者にとって相当の困難がある」とは解されない。
したがって、上記(a)及び(b)の主張は、いずれも採用できない。

4.小括
以上を踏まえると、本願発明は、引用発明、引用文献2事項及び引用文献3、4に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-06-14 
結審通知日 2021-06-16 
審決日 2021-06-30 
出願番号 特願2016-137650(P2016-137650)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (F02B)
P 1 8・ 121- WZ (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 佐々木 正章
渡邊 豊英
発明の名称 エンジン  
代理人 桂川 直己  

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