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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1377478
審判番号 不服2020-13058  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-17 
確定日 2021-09-21 
事件の表示 特願2016- 55020「情報処理装置,制御方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日出願公開,特開2017-168031,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年3月18日の出願であって,令和1年12月24日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年2月26日に手続補正がされるとともに意見書が提出され,令和2年6月16日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。これに対し,令和2年9月17日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和3年5月7日付けで当審より拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,令和3年7月9日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1-9に係る発明は,以下の引用文献A-Bに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
A.特開2014-170271号公報
B.特開2008-276755号公報


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1(明確性)本件出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2(新規性)本願の請求項1,2,6-9に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
3(進歩性)本願の請求項1-9に係る発明は,以下の引用文献1-2に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2014-170271号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2008-276755号公報(拒絶査定時の引用文献A)


第4 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は,令和3年7月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ブートローダを保存する起動デバイスと接続された第1拡張カードを含む複数の拡張カードを実装する情報処理装置であって、
前記複数の拡張カードが初期化された後、前記ブートローダの格納場所を示すブートエントリと、前記第1拡張カードの識別情報を示し、ブートエントリ変数名によって前記ブートエントリと紐付けされたブートエントリ補助情報を取得する取得手段と、
前記ブートエントリ補助情報に基づいて前記複数の拡張カードの中から前記第1拡張カードを特定し、前記ブートエントリを用いて前記起動デバイスの前記ブートローダを実行する制御手段と、を備え、
前記取得手段が前記ブートエントリ補助情報を取得し、取得した前記ブートエントリ補助情報に基づいて、前記制御手段が前記起動デバイスと接続された前記第1拡張カードを特定し、特定された前記第1拡張カードの接続先である前記起動デバイスを前記制御手段が初期化した後に、前記取得手段が前記ブートエントリを取得する
ことを特徴とする、情報処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、特定された前記第1拡張カードに接続された前記起動デバイスを最先で初期化する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ブートエントリ補助情報は、前記第1拡張カードのBUS番号、デバイス番号、ファンクション番号である、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記起動デバイスの前記ブートローダを実行する前に、前記第1拡張カードの識別情報と、前記ブートエントリ変数名を取得し、前記ブートエントリ補助情報として不揮発性メモリに登録する、
請求項1から3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ブートエントリは、オペレーティングシステムによって前記起動デバイスに登録される、
請求項1から4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
ブートローダを保存する起動デバイスと接続された第1拡張カードを含む複数の拡張カードを実装する情報処理装置の制御方法であって、
前記複数の拡張カードが初期化された後、前記ブートローダの格納場所を示すブートエントリと、前記第1拡張カードの識別情報を示し、ブートエントリ変数名によって前記ブートエントリと紐付けされたブートエントリ補助情報を取得し、
前記ブートエントリ補助情報に基づいて前記複数の拡張カードの中から前記第1拡張カードを特定し、
前記ブートエントリを用いて前記起動デバイスの前記ブートローダを実行する制御方法であって、
前記ブートエントリ補助情報を取得し、取得した前記ブートエントリ補助情報に基づいて前記起動デバイスと接続された前記第1拡張カードを特定し、特定された前記第1拡張カードの接続先である前記起動デバイスを初期化した後に、前記ブートエントリを取得する
ことを特徴とする、制御方法。
【請求項7】
特定された前記第1拡張カードに接続された前記起動デバイスを最先で初期化する、
請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
ブートローダを保存する起動デバイスと接続された第1拡張カードを含む複数の拡張カードを実装する情報処理装置を制御するプログラムであって、
前記複数の拡張カードが初期化された後、前記ブートローダの格納場所を示すブートエントリと、前記第1拡張カードの識別情報を示し、ブートエントリ変数名によって前記ブートエントリと紐付けされたブートエントリ補助情報を取得し、
前記ブートエントリ補助情報に基づいて前記複数の拡張カードの中から前記第1拡張カードを特定し、
前記ブートエントリを用いて前記起動デバイスの前記ブートローダを実行することをコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記ブートエントリ補助情報を取得し、取得した前記ブートエントリ補助情報に基づいて前記起動デバイスと接続された前記第1拡張カードを特定し、特定された前記第1拡張カードの接続先である前記起動デバイスを初期化した後に、前記ブートエントリを取得する
ことを特徴とする、プログラム。
【請求項9】
特定された前記第1拡張カードに接続された前記起動デバイスを最先で初期化する、
請求項8に記載のプログラム。」


第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献Aと同一であって,当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

A 「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による情報処理装置100のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態に係る情報処理装置100は、不揮発メモリ110、CPU120、メモリ130、ルートポート140、複数の拡張カード150-1?150-N(以降、拡張カード150-1?150-Nを総称する場合、拡張カード150という)を備える。
【0015】
不揮発メモリ110は、情報処理装置100のBIOS(Basic Input/Output System)(プログラム)、自動起動を行うOS(Operating System:オペレーティングシステム)を示す自動起動情報、及びOSごとのブートパスを記憶する。つまり、不揮発メモリ110は、ブートパスを記憶するブートパス記憶部の一例である。なお、ブートパスとは、OSの起動に用いる拡張カード150の所在を示す情報である。つまり、OSは、拡張カード150に接続された外部記憶媒体(ストレージやディスク)に格納される。
CPU120は、不揮発メモリ110が記憶するBIOSを実行し、拡張カード150を初期化してOSを起動する。
メモリ130は、CPU120が実行する処理の用に供する情報を記憶する。 ルートポート140は、複数の拡張カード150とCPU120との接続を仲介し、配下の拡張カード150とCPU120とを論理的に接続する(Enable)か、切断する(Disable)かを拡張カード150ごとに記憶するリンクレジスタを備える。
拡張カード150は、情報処理装置100の機能を拡張するカードであって、自身のPOST(Power On Self Test)(初期化)に用いる初期化プログラムを記憶するオプションROM151を備える。なお、拡張カード150としては、例えばPCIカードが用いられる。
【0016】
次に、本実施形態に係るBIOSについて説明する。
図2は、BIOSを実行したときのCPU120のソフトウェア構成を示す概略ブロック図である。
CPU120は、不揮発メモリ110が記憶するBIOSを実行すると、I/O部121(Input/Output)、自動起動判定部122、ブートパス解析部123、リンクレジスタ設定部124、POST実行部125を備える。
【0017】
I/O部121は、不揮発メモリ110から情報を読み出す。また、I/O部121は、不揮発メモリ110に情報を書き込む。なお、I/O部121は、不揮発メモリ110から自動起動を行うOSのブートパスを取得するブートパス取得部の一例である。
自動起動判定部122は、I/O部121が不揮発メモリ110から読み出した自動起動情報に基づいて、自動起動するOSがあるか否かを判定する。
ブートパス解析部123は、I/O部121が不揮発メモリ110から読み出したブートパスを解析し、OSの起動に用いる拡張カード150を特定する。
リンクレジスタ設定部124は、ルートポート140のリンクレジスタを書き換える。なお、リンクレジスタ設定部124は、ブートパスが示す拡張カード150以外の拡張カード150との接続を論理的に切断する切断部、及び拡張カード150の初期化後に論理的に切断された拡張カード150を論理的に接続する接続部の一例である。
POST実行部125は、ルートポート140のリンクレジスタの値がEnableを示す拡張カード150に対してPOSTを実行する。つまり、POST実行部125は、ブートパスが示す拡張カード150を初期化する初期化部の一例である。
【0018】
次に、本実施形態に係る情報処理装置100の起動方法について説明する。
図3は、情報処理装置100の起動方法を示すフローチャートである。
まず、情報処理装置100のCPU120は、不揮発メモリ110からBIOSを読み出し、バスリソースの割り当て及び拡張カード150とのリンク接続を行うことで、BIOSを立ち上げる(ステップS1)。なお、本ステップの処理は、ミリ秒オーダーで実行されるため、拡張カード150の搭載枚数による立ち上げ時間への影響は軽微である。
【0019】
CPU120がBIOSを立ち上げると、CPU120のI/O部121は、不揮発メモリ110から自動起動情報を読み出す(ステップS2)。次に、自動起動判定部122は、I/O部121が読み出した自動起動情報が有効な値を示すか否かを判定する(ステップS3)。
【0020】
自動起動判定部122が、自動起動情報が有効な値を示すと判定した場合、すなわち自動起動情報が自動起動を行うOSの情報を示す場合(ステップS3:YES)、I/O部121は、不揮発メモリ110から自動起動情報が示すOSに関連付けられたブートパスを読み出す(ステップS4)。
【0021】
次に、ブートパス解析部123は、I/O部121が読み出したブートパスを解析し、OSの起動に用いる拡張カード150を特定する(ステップS5)。具体的には、I/O部121が取得したブートパスは、以下に示すようなフォーマットで記載されている。
【0022】
AcpiEx(PNP0A08,PNP0A03,0x0)/Pci(0x1,0x0)/Pci(0x0,0x0)/SAS(0x5000C5003AB04F4D,0x0,0x1,NoTopology,0,0,0,0x0)/HD(1,GPT,5748ED94-27A6-11E1-8000-D6217B60E588,0x40,0xF9FC0)
【0023】
ここで、AcpiEx(PNP0A08,PNP0A03,0x0)はUIDが0(0x0)のルートポート140(PNP0A08)を示している。また、PCI(0x1,0x0)はデバイス番号1(0x1)、ファンクション番号0(0x0)に該当するPCIカード34n(拡張カード150)を示している。
【0024】
ブートパス解析部123は、このブートパスにて示されたUIDのルートポート140配下に接続され、デバイス番号、ファンクション番号が一致する位置に搭載された拡張カード150を、OSの起動に用いる拡張カード150として特定する。
【0025】
ブートパス解析部123がOSの起動に用いる拡張カード150を特定すると、リンクレジスタ設定部124は、ルートポート140のリンクレジスタが記憶する、ブートパス解析部123が特定した拡張カード150以外の拡張カード150の接続情報を、すべてDisableに書き換える。つまり、リンクレジスタ設定部124は、ブートパス解析部123が特定した拡張カード150以外の拡張カード150を論理的に切断する(ステップS6)。なお、リンクレジスタ設定部124による拡張カード150の論理的切断は、例えば拡張カード150がPCIカードである場合、PCI Hot Delete等の処理を行うことで実願できる。これにより、OSの起動に用いるブートパスに該当しない拡張カード150のオプションROM151による拡張カード150の初期化処理は、行われなくなる。
【0026】
次に、POST実行部125は、ルートポート140のリンクレジスタが記憶する接続情報がEnableを示す(論理的に接続されている)拡張カード150からオプションROM151を読み出し、当該オプションROM151に格納された初期化プログラムを順次実行する(ステップS7)。このとき、POST実行部125は、初期化対象の拡張カード150に接続された外部記憶媒体のスキャン処理を行う。なお、本ステップの処理は、数秒から数十秒のオーダーで実行されるため、拡張カード150の搭載枚数による立ち上げ時間への影響が大きい。
【0027】
POST実行部125が、ルートポート140のリンクレジスタが記憶する接続情報がEnableを示す拡張カード150の全てについて初期化を完了すると、リンクレジスタ設定部124は、ステップS6で接続情報をDisableに書き換えた拡張カード150の接続情報を、Enableに書き換える。つまり、リンクレジスタ設定部124は、ブートパス解析部123が特定した拡張カード150以外の拡張カード150を論理的に接続する(ステップS8)。なお、リンクレジスタ設定部124による拡張カード150の論理的接続は、例えば拡張カード150がPCIカードである場合、PCI Hot Add等の処理を行うことで実願できる。これにより、情報処理装置100の運用中に、当該拡張カード150を使用することができるようになる。そして、CPU120は、拡張カード150に接続された外部記憶媒体からOSを読み出し、当該OSを起動する(ステップS9)。
【0028】
他方、ステップS3で自動起動判定部122が、自動起動情報が無効な値(例えばNULL値や、自動起動を行わないことを示す所定の値)を示すと判定した場合(ステップS3:NO)、POST実行部125は、ルートポート140のリンクレジスタが記憶する接続情報がEnableを示す(論理的に接続されている)拡張カード150からオプションROM151を読み出し、当該オプションROM151に格納された初期化プログラムを順次実行する(ステップS10)。そして、CPU120は、拡張カード150に接続された外部記憶媒体からOSを読み出し、当該OSを起動する(ステップS9)。」

B 「【図1】



C 「【図2】



D 「【図3】



E 上記Aの段落【0014】には,“不揮発メモリ110,CPU120,メモリ130,ルートポート140,複数の拡張カード150-1?150-Nを備える情報処理装置100”が記載されている。

F 上記Aの段落【0015】には,“不揮発メモリ110は,情報処理装置100のBIOS(Basic Input/Output System)(プログラム),自動起動を行うOS(Operating System:オペレーティングシステム)を示す自動起動情報,及びOSごとのOSの起動に用いる拡張カード150の所在を示す情報であるブートパスを記憶するものであ”ることが記載されている。

G 上記Aの段落【0021】及び【0022】には,“ブートパスは,AcpiEx(PNP0A08,PNP0A03,0x0)/Pci(0x1,0x0)/Pci(0x0,0x0)/SAS(0x5000C5003AB04F4D,0x0,0x1,NoTopology,0,0,0,0x0)/HD(1,GPT,5748ED94-27A6-11E1-8000-D6217B60E588,0x40,0xF9FC0)であ”ることが,さらに,段落【0023】には,“ここで,PCI(0x1,0x0)はデバイス番号1(0x1),ファンクション番号0(0x0)に該当するPCIカード34n(拡張カード150)を示して”いることが記載されている。

H 上記Aの段落【0016】には,「CPU120は、不揮発メモリ110が記憶するBIOSを実行すると、I/O部121(Input/Output)、自動起動判定部122、ブートパス解析部123、リンクレジスタ設定部124、POST実行部125を備える」ことが記載されている。

I 上記Aの段落【0018】ないし【0027】には,“情報処理装置100を起動する際には,まず,CPU120が,不揮発メモリ110からBIOSを読み出し,バスリソースの割り当て及び拡張カード150とのリンク接続を行うことで,BIOSを立ち上げ,次に,I/O部121が,不揮発メモリ110から自動起動情報が示すOSに関連付けられたブートパスを読み出し,ブートパス解析部123が、I/O部121が読み出したブートパスを解析し,OSの起動に用いる拡張カード150を特定し,次に,CPU120が,拡張カード150に接続された外部記憶媒体からOSを読み出し,当該OSを起動する”ことが記載されている。

(2)上記AないしIの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「不揮発メモリ110,CPU120,メモリ130,ルートポート140,複数の拡張カード150-1?150-Nを備える情報処理装置100において,
不揮発メモリ110は,情報処理装置100のBIOS(Basic Input/Output System)(プログラム),自動起動を行うOS(Operating System:オペレーティングシステム)を示す自動起動情報,及びOSごとのOSの起動に用いる拡張カード150の所在を示す情報であるブートパスを記憶するものであって,
ブートパスは,AcpiEx(PNP0A08,PNP0A03,0x0)/Pci(0x1,0x0)/Pci(0x0,0x0)/SAS(0x5000C5003AB04F4D,0x0,0x1,NoTopology,0,0,0,0x0)/HD(1,GPT,5748ED94-27A6-11E1-8000-D6217B60E588,0x40,0xF9FC0)であって,ここで,PCI(0x1,0x0)はデバイス番号1(0x1),ファンクション番号0(0x0)に該当するPCIカード34n(拡張カード150)を示しており,
CPU120は,不揮発メモリ110が記憶するBIOSを実行すると,I/O部121(Input/Output),自動起動判定部122,ブートパス解析部123,リンクレジスタ設定部124,POST実行部125を備えるものであり,
情報処理装置100を起動する際には,まず,CPU120が,不揮発メモリ110からBIOSを読み出し,バスリソースの割り当て及び拡張カード150とのリンク接続を行うことで,BIOSを立ち上げ,次に,I/O部121が、不揮発メモリ110から自動起動情報が示すOSに関連付けられたブートパスを読み出し,ブートパス解析部123が,I/O部121が読み出したブートパスを解析し,OSの起動に用いる拡張カード150を特定し,次に,CPU120が,拡張カード150に接続された外部記憶媒体からOSを読み出し,当該OSを起動する,
情報処理装置100。」

2 引用文献2について
引用文献Bと同一であって,当審拒絶理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

A 「【0020】
接続ケーブル40?41は、ファイバチャネルケーブル、またはEthernet(登録商標)ケーブルを使用する。
【0021】
ホストバスアダプタ30?31は、内部に不揮発性メモリ32?33を持ち、それぞれオペレーティングシステムをどの接続ポート、どのディスクユニットから起動するかを示す接続パスを指定するOS起動情報34?35を持つ。
【0022】
冗長化構成のシステムでは,1つの接続パスで障害が発生した場合,別の接続パスからOS起動できるように,OS起動情報34?35に複数の接続パスを設定する。
【0023】
システムメモリ22内のディスク認識テーブル23には、オペレーティングシステムをどのホストバスアダプタ、どの接続ポートを経由して、どのディスクユニットにインストールするかを示す接続パス情報が1つだけ登録される。
【0024】
図2は、不揮発性メモリ32?33内のOS起動情報34?35の構造を示したものである。
【0025】
OS起動情報34、35は,接続ポートのWorld Wide Name及びディスクユニットのLogical Unit番号を格納するWorld Wide Name/Logical Unit番号(WWN/LU#)格納テーブル63、前記WWN/LU#格納テーブル63内の格納番号を示すテーブルエントリ番号64、World Wide Name/Logical Unit番号格納テーブル63の有効/無効化を制御するWorld Wide Name/Logical Unit番号有効フラグ62、当該ホストアダプタからオペレーティングシステムの起動を行うことを示すOS起動有効フラグ61から構成される。
【0026】
図3は、システムメモリ22内のディスク認識テーブル23の構造を示したものである。
【0027】
ディスク認識テーブル23は、ホストアダプタ30?31のPCIバス番号、デバイス番号、ファンクション番号(PCI番号)、およびOS起動情報34?35のテーブルエントリ番号64、ディスクアレイ装置50の接続ポート54?55のWorld Wide NameおよびディスクユニットのLogical Unit番号を格納する領域を持つ。」

B 「【図3】




第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「複数の拡張カード150-1?150-N」は,本願発明1の「複数の拡張カード」に相当する。
また,引用発明の「情報処理装置100」は,「複数の拡張カード150-1?150-Nを備える」ものであって,さらに,「拡張カード150に接続された外部記憶媒体からOSを読み出し,当該OSを起動する」ものである。ここで,「外部記憶媒体からOSを読み出し,当該OSを起動する」ために,OSが読み出される「外部記憶媒体」にいわゆるブートローダが保存されていることは技術常識である。
してみると,引用発明の「OS」が読み出される「外部記憶媒体」は,本願発明1の「ブートローダを保存する起動デバイス」に相当し,引用発明のこの「外部記憶媒体」に接続される「拡張カード150」は,本願発明1の「ブートローダを保存する起動デバイスと接続された第1拡張カード」に相当し,そして,引用発明1の「情報処理装置100」は,本願発明1の「ブートローダを保存する起動デバイスと接続された第1拡張カードを含む複数の拡張カードを実装する情報処理装置」に相当する。

イ 引用発明の「ブートパス」は,「OSごとのOSの起動に用いる拡張カード150の所在を示す情報であ」って,さらに,具体的には「ブートパス」は,「AcpiEx(PNP0A08,PNP0A03,0x0)/Pci(0x1,0x0)/Pci(0x0,0x0)/SAS(0x5000C5003AB04F4D,0x0,0x1,NoTopology,0,0,0,0x0)/HD(1,GPT,5748ED94-27A6-11E1-8000-D6217B60E588,0x40,0xF9FC0)」である。そして,引用発明における「ブートパス」の「PCI(0x1,0x0)」は,「PCIカード34n(拡張カード150)を示しており」,また,「ブートパス」の「HD(1,GPT,5748ED94-27A6-11E1-8000-D6217B60E588,0x40,0xF9FC0)」の部分が,HDDである「外部記憶媒体」を示していることは技術常識である。
してみると,引用文献1の「ブートパス」のうちHDDを示している「HD(1,GPT,5748ED94-27A6-11E1-8000-D6217B60E588,0x40,0xF9FC0)」の部分は,請求項1の「前記ブートローダの格納場所を示すブートエントリ」に相当する。また,引用発明の「ブートパス」のうちPCIカードを示している「PCI(0x1,0x0)」の部分と,本願発明1の「前記第1拡張カードの識別情報を示し、ブートエントリ変数名によって前記ブートエントリと紐付けされたブートエントリ補助情報」とは,後記の点で相違するものの,“前記第1拡張カードの識別情報を示すブートエントリ補助情報”の点では共通する。
ここで,本願の段落【0032】には,「BIOSは、CPU110、メモリコントローラ120、メモリ130、メモリ131とチップセット140の初期化を実施する。その後、BIOSは、内蔵SAS PCIeカード160、NIC PCIeカード161、外付けSAS PCIeカード162にリソースを割当て(ステップS11)、PCIe仕様の初期化を行う。」と記載され,また,審判請求人は令和3年7月9日付け意見書の「3.3.1 ア.「初期化」について」において,該記載を引用して,「拡張カード」の「初期化」は,拡張カードにリソースを割り当てることであり,拡張カードに対する最初に行われる処理である旨を主張していることから,本願発明1における「前記複数の拡張カードが初期化」は,「前記複数の拡張カード」にリソースを割り当てなどの拡張カードに対する最初に行われる処理であると認められる。
一方,引用発明において「情報処理装置100」は,「バスリソースの割り当て及び拡張カード150とのリンク接続を行」った後に,「I/O部121」が、「不揮発メモリ110から自動起動情報が示すOSに関連付けられたブートパスを読み出し」いる。
してみると,引用発明の「バスリソースの割り当て及び拡張カード150とのリンク接続を行」うことは,本願発明1の「前記複数の拡張カードが初期化され」ることに相当する。
そして,引用発明の「情報処理装置100の起動する際に」,「まず,CPU120が,不揮発メモリ110からBIOSを読み出し,バスリソースの割り当て及び拡張カード150とのリンク接続を行うことで,BIOSを立ち上げ」た後に「不揮発メモリ110から自動起動情報が示すOSに関連付けられたブートパスを読み出」す「I/O部121」と,本願発明1の「前記複数の拡張カードが初期化された後、前記ブートローダの格納場所を示すブートエントリと、前記第1拡張カードの識別情報を示し、ブートエントリ変数名によって前記ブートエントリと紐付けされたブートエントリ補助情報を取得する取得手段」とは,後記の点で相違するものの“前記複数の拡張カードが初期化された後,前記ブートローダの格納場所を示すブートエントリと,前記第1拡張カードの識別情報を示すブートエントリ補助情報を取得する取得手段”の点では共通する。

ウ 引用発明は「CPU120」の「ブートパス解析部123が、I/O部121が読み出したブートパスを解析し,OSの起動に用いる拡張カード150を特定し,次に,CPU120は、拡張カード150に接続された外部記憶媒体からOSを読み出し、当該OSを起動する」ものである。
したがって,引用発明の「CPU120」は,本願発明1の「前記ブートエントリ補助情報に基づいて前記複数の拡張カードの中から前記第1拡張カードを特定し、前記ブートエントリを用いて前記起動デバイスの前記ブートローダを実行する制御手段」に相当する。

エ さらに,引用発明は「I/O部121が、不揮発メモリ110から自動起動情報が示すOSに関連付けられたブートパスを読み出し,ブートパス解析部123が、I/O部121が読み出したブートパスを解析し,OSの起動に用いる拡張カード150を特定し,次に,CPU120が,拡張カード150に接続された外部記憶媒体からOSを読み出し,当該OSを起動する」ものであって,また,通常、「外部記憶媒体」は駆動時に何らかの初期化がなされることは技術常識であるから,引用発明の「OS」が読み出される「拡張カード150に接続された外部記憶媒体」は,「特定」がされた後の,「OS」が読み出される前の間に初期化がなされているものと認められる。
してみると,引用発明の「I/O部121が、不揮発メモリ110から自動起動情報が示すOSに関連付けられたブートパスを読み出し,ブートパス解析部123が、I/O部121が読み出したブートパスを解析し,OSの起動に用いる拡張カード150を特定し,次に,CPU120が,拡張カード150に接続された外部記憶媒体からOSを読み出し,当該OSを起動する」ことと,本願発明1の「前記取得手段が前記ブートエントリ補助情報を取得し,取得した前記ブートエントリ補助情報に基づいて,前記制御手段が前記起動デバイスと接続された前記第1拡張カードを特定し,特定された前記第1拡張カードの接続先である前記起動デバイスを前記制御手段が初期化した後に,前記取得手段が前記ブートエントリを取得する」こととは,後記の点で相違するものの“前記取得手段が前記ブートエントリ補助情報を取得し,取得した前記ブートエントリ補助情報に基づいて,前記制御手段が前記起動デバイスと接続された前記第1拡張カードを特定し,特定された前記第1拡張カードの接続先である前記起動デバイスを前記制御手段が初期化する”点では共通する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。

〈一致点〉
「ブートローダを保存する起動デバイスと接続された第1拡張カードを含む複数の拡張カードを実装する情報処理装置であって,
前記複数の拡張カードが初期化された後,前記ブートローダの格納場所を示すブートエントリと,前記第1拡張カードの識別情報を示すブートエントリ補助情報を取得する取得手段と,
前記ブートエントリ補助情報に基づいて前記複数の拡張カードの中から前記第1拡張カードを特定し,前記ブートエントリを用いて前記起動デバイスの前記ブートローダを実行する制御手段と,を備え,
前記取得手段が前記ブートエントリ補助情報を取得し,取得した前記ブートエントリ補助情報に基づいて,前記制御手段が前記起動デバイスと接続された前記第1拡張カードを特定し,特定された前記第1拡張カードの接続先である前記起動デバイスを前記制御手段が初期化する,
情報処理装置。」

〈相違点1〉
本願発明1では,「ブートエントリ補助情報」が,「ブートエントリ変数名」により,「ブートエントリ」に「紐付けされ」ているのに対し,引用発明では,そのような変数による紐付けがなされていない点。

〈相違点2〉
「取得手段」の「ブートエントリ」の「取得」が,本願発明1では,「前記制御手段が前記起動デバイスと接続された前記第1拡張カードを特定し、特定された前記第1拡張カードの接続先である前記起動デバイスを前記制御手段が初期化した後」であるのに対して,引用発明では,「バスリソースの割り当て及び拡張カード150とのリンク接続」の後であって,「OSの起動に用いる拡張カード150を特定」する前である点。

(2)相違点についての判断
上記〈相違点1〉,〈相違点2〉について検討する。
引用発明では,本願発明1の「ブートエントリ」及び「ブートエントリ補助情報」に対応する情報は,1つの情報である「ブートパス」であって,この1つの情報である「ブートパス」を,「ブートエントリ」に対応する部分と「ブートエントリ補助情報」に対応する部分に分け,そして,「ブートエントリ」に対応する部分のみを,起動デバイスを前記制御手段が初期化した後に取得するようにする理由が存在しない。さらに,「ブートエントリ補助情報」に対応する部分における「ブートエントリ」に対応する部分の「紐付け」を,「ブートエントリ変数名」とする理由も存在しない。
また,引用文献2には,複数のPCIバスを想定し,BUS番号,デバイス番号,ファンクション番号でOSをロードするための拡張カードを指定することは記載されているが,ブートローダの格納場所に関する情報を2つの情報に分け,別々に取得することは記載されておらず,また,本願出願日前における周知技術とも認められない。
したがって,本願発明1は,引用発明ではなく,また,当業者であっても引用発明,及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1を更に限定したものであるので,同様に,引用発明ではなく,また,当業者であっても引用発明,及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明3ないし5について
本願発明3なしい5は,本願発明1を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明,及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明6について
本願発明6は,本願発明1の「情報処理装置」を「制御方法」の観点から記載したに過ぎないことから,同様に,引用発明ではなく,また,当業者であっても引用発明,及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明7について
本願発明7は,本願発明6を更に限定したものであるので,同様に,引用発明ではなく,また,当業者であっても引用発明,及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明8について
本願発明8は,本願発明1の「情報処理装置」を「プログラム」の観点から記載したに過ぎないことから,同様に,引用発明ではなく,また,当業者であっても引用発明,及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

7 本願発明9について
本願発明9は,本願発明8を更に限定したものであるので,同様に,引用発明ではなく,また,当業者であっても引用発明,及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第7 当審拒絶理由の理由1について
当審では、審判請求時の補正における請求項1(及び請求項2-9)に記載の「前記制御手段は、前記複数の拡張カードのうち、特定された前記第1拡張カード以外の拡張カードに接続されたデバイスをブートパスの検索対象から除外する」に関して,「前記ブートエントリ補助情報に基づいて前記複数の拡張カードの中から前記第1拡張カードを特定し、前記ブートエントリを用いて前記起動デバイスの前記ブートローダを実行する」との関係,該記載における「ブートパス」の技術的な意味,及び請求項2との関係が不明確である,という旨の拒絶の理由を通知しているが,令和3年7月9日付けの手続補正において,審判請求時の補正における請求項1の「前記制御手段は、前記複数の拡張カードのうち、特定された前記第1拡張カード以外の拡張カードに接続されたデバイスをブートパスの検索対象から除外する」という構成は削除さたので,この理由は解消された。
また,審判請求時の補正における請求項1(及び請求項2-9)に記載の「前記複数の拡張カードが初期化された後」に関して,「初期化」の技術的な意味が理解できず不明確である,という旨の拒絶の理由を通知しているが,令和3年7月9日付けの意見書において,『これに対し、明細書の段落0032の「BIOSは、CPU110、メモリコントローラ120、メモリ130、メモリ131とチップセット140の初期化を実施する。その後、BIOSは、内蔵SAS PCIeカード160、NIC PCIeカード161、外付けSAS PCIeカード162にリソースを割当て(ステップS11)、PCIe仕様の初期化を行う。」の記載に基づいて、「拡張カード」の「初期化」は、拡張カードにリソースを割り当てることであり、拒絶理由通知の、●理由2,及び理由3ついて/・請求項 1/(相違点)の部分における審判官殿のご認識の通り、「拡張カードに対して最初に行われる処理」、すなわち拡張カードに対する一般的な初期化の処理であります。』と釈明された結果,この拒絶理由は解消した。


第8 原査定についての判断
令和3年7月9日付けの補正により,補正後の請求項1は,「前記取得手段が前記ブートエントリ補助情報を取得し、取得した前記ブートエントリ補助情報に基づいて、前記制御手段が前記起動デバイスと接続された前記第1拡張カードを特定し、特定された前記第1拡張カードの接続先である前記起動デバイスを前記制御手段が初期化した後に、前記取得手段が前記ブートエントリを取得する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術事項は,原査定における引用文献A-Bには記載されておらず,本願出願日前における周知技術でもないので,本願発明1-9は,当業者であっても,原査定における引用文献A-Bに基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。


第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-31 
出願番号 特願2016-55020(P2016-55020)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三坂 敏夫  
特許庁審判長 篠原 功一
特許庁審判官 山澤 宏
塚田 肇
発明の名称 情報処理装置、制御方法およびプログラム  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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