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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1377526
審判番号 不服2020-17760  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-25 
確定日 2021-09-02 
事件の表示 特願2018-552404「監視システム、サーバ、端末装置、監視方法、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月31日国際公開、WO2018/096727〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年7月26日(優先権主張 2016年11月24日 日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 6月17日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 8月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 9月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年12月25日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年12月25日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
蓄電システムに関する検出値が条件を満たすことを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出に応じて、前記蓄電システムに生じた不具合の種類を特定する特定手段と、
不具合の種類に基づき、不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続可能時間の長さを決定する決定手段と、
不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続時間の長さが、前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超えないか監視し、超えた場合に前記蓄電システムの動作を停止する停止指令を出力し、前記蓄電システムの運転継続時間の長さが前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超える前にメンテナンスの実施を示す入力を受付けた場合、前記監視を停止する監視手段と、
を有する監視システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和2年8月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
蓄電システムに関する検出値が条件を満たすことを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出に応じて、前記蓄電システムに生じた不具合の種類を特定する特定手段と、
不具合の種類に基づき、不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続可能時間の長さを決定する決定手段と、
を有する監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続時間が前記運転継続可能時間を超えないか監視し、超えた場合に前記蓄電システムの動作を停止する停止指令を出力する監視手段をさらに有する監視システム。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1を削除し、本件補正前の請求項2を独立形式とした発明に「前記蓄電システムの運転継続時間の長さが前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超える前にメンテナンスの実施を示す入力を受付けた場合、前記監視を停止する」と限定を付加した上で、新たに本件補正後の請求項1に係る発明とする補正事項を含むものであって、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献、引用発明
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開2013/042517号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「[0014] 図1に、本発明の実施形態に係る電池システム1の概略的な全体構成図を示す。電池システム1は、図1に示される部位の全て又は一部を含んで形成される。例えば、電池システム1は、符号11?14によって参照される各部位を備え、更に、符号15?17によって参照される各部位の全部又は一部を備えうる。
[0015] 主制御部11は、マイクロコンピュータ等から成り、電池ユニット12の充放電制御、スイッチング回路13のスイッチング制御、ブレーカ部14の動作制御などを成す。」

「[0024] スイッチング回路13は、AC/DCコンバータ16と電池ユニット12(及び電池部21)との間に直列に介在する充電スイッチ31と、DC/ACインバータ17と電池ユニット12(及び電池部21)との間に直列に介在する放電スイッチ32とを備える。充電スイッチ31及び放電スイッチ32の夫々は、任意の種類の半導体スイッチング素子又は機械式スイッチング素子である。例えば、金属酸化膜型電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)又は絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いて、充電スイッチ31及び放電スイッチ32を形成することができる。充電スイッチ31及び放電スイッチ32はスイッチング回路13の入力端子34及び出力端子35間に直列接続されており、接続点33は充電スイッチ31及び放電スイッチ32間の接続点である。充電スイッチ31は入力端子34及び接続点33間に介在し、放電スイッチ32は接続点33及び出力端子35間に介在する。」

「[0028] 図3に示す如く、充電スイッチ31の両端子間電圧、即ち入力端子34及び接続点33間の電圧を測定して測定電圧値V_(31)を表す信号を出力する電圧測定器36、及び、放電スイッチ32の両端子間電圧、即ち接続点33及び出力端子35間の電圧を測定して測定電圧値V_(32)を表す信号を出力する電圧測定器37をスイッチング回路13に設けておくことができ、電圧測定器36及び37の出力信号をスイッチング状態情報に含めておくことが可能である。また、スイッチング回路13内の電流(例えば、入力端子34、接続点33又は出力端子35を介して流れる電流)を測定して測定電流値を表す信号を出力する電流測定器(不図示)をスイッチング回路13に設けておくこともでき、その電流測定器の出力信号をスイッチング状態情報に含めておくことも可能である。
[0029] 上述したように、主制御部11は、スイッチング回路13にスイッチング指令信号を出力することで、スイッチング回路13における切り替え状態(スイッチ31及び32のオン又はオフの切り替え状態)を制御する。この際、スイッチング状態情報に含まれる電圧測定器36及び37の出力信号に基づき、即ち測定電圧値V_(31)及びV_(32)に基づき、主制御部11は、上記切り替え状態の制御における異常を検出することができる。
[0030] 例えば、主制御部11が第1オン指令信号を充電スイッチ31に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31A)以上であって充電スイッチ31がオフしていると推測される場合、或いは、主制御部11が第1オフ指令信号を充電スイッチ31に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31B)以下であって充電スイッチ31がオンしていると推測される場合、主制御部11は、充電スイッチ31に切り替え異常が発生していると判断する(TH_(31A)>TH_(31B))。同様に、例えば、主制御部11が第2オン指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32A)以上であって放電スイッチ32がオフしていると推測される場合、或いは、主制御部11が第2オフ指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32B)以下であって放電スイッチ32がオンしていると推測される場合、主制御部11は、放電スイッチ32に切り替え異常が発生していると判断する(TH_(32A)>TH_(32B))。スイッチ31及び32の切り替え異常は、スイッチング回路13の異常(即ち、スイッチング回路13の切り替え状態の制御異常)に属する(図4参照)。」

「[0031] ブレーカ部14は、電池部21及びスイッチング回路13間に直列に介在するセルフコントロールプロテクター(SCP)、機械式リレー又はヒューズ等から成り、必要なときにオフとされる。ブレーカ部14がオンのとき、電池部21及びスイッチング回路13間は接続され、ブレーカ部14がオフのとき、電池部21及びスイッチング回路13間は遮断される。より具体的には、正側端子24と接続点33がブレーカ部14を介して接続されているため、ブレーカ部14がオンのとき、正側端子24及び接続点33間が接続され、ブレーカ部14がオフのとき、正側端子24及び接続点33間が遮断される。
[0032] ブレーカ部14は原則としてオンとされており、本実施形態において、特に記述なき限り、ブレーカ部14はオンに維持されているものとする。主制御部11は、必要なときにブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力することができ、ブレーカオフ指令信号を受けたブレーカ部14は直ちにオフとなって電池部21及びスイッチング回路13間を遮断する。ブレーカ部14は、自身の状態がオン及びオフのどちらであるのかを示す信号を主制御部11に伝達することができる。
[0033] ブレーカ部14がオフされた後、電池システム1のユーザ(例えば、電池システム1を組み込んだ家屋の居住者)がブレーカ部14をオンに戻すことができるような電池システム1を構成しても構わないが、本実施形態では、電池システム1のユーザがブレーカ部14をオンに戻すことが困難であることを想定する。ひとたびブレーカ部14がオフになると、専用技術を有する保守管理者しかブレーカ部14をオンに戻すことができない。故に、ブレーカ部14がオフになると、保守管理者が電池システム1の設置場所まで訪問する必要があり、復旧が成されるまで電池システム1は停止する。」

「[0039] 主制御部11は、電池システム1内で何らかの異常が発生した際、発生異常の種類によって発生異常を致命的異常又は非致命的異常に分類する。この分類を行う異常分類部(不図示)が主制御部11に内包されていると考えても構わない。
[0040] 発生異常が致命的異常であるとき、主制御部11は、異常の発生後、後述するような猶予期間を設けることなく直ちにブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力し、これによって電池部21及びスイッチング回路13間を直ちに遮断する(換言すれば、ブレーカ部14に電池部21及びスイッチング回路13間を直ちに遮断させる)。例えば、電池部21の異常発熱、過充電、過放電及び過電流の内、少なくとも1つが致命的異常に分類される。発生異常が致命的異常であるときの速やかなる遮断により、安全性が確保される。
[0041] 一方、発生異常が非致命的異常であるとき、主制御部11は、異常の発生時点から始まる猶予期間を設定し、猶予期間中には電池部21及びスイッチング回路13間の接続をブレーカ部14に維持させる。そして、猶予期間が終了しても非致命的異常が解消されないときに初めて、主制御部11は、ブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力し、これによってブレーカ部14に電池部21及びスイッチング回路13間を遮断させる。猶予期間の終了前に非致命的異常が解消された場合、電池システム1の運転は、異常発生前の通常運転に戻る。通常運転とは、ブレーカ部14が常時オンにされた状態の運転である。例えば、第1及び第2通信異常を非致命的異常に分類することができる。また、充電スイッチ31及び放電スイッチ32の切り替え異常をも非致命的異常に分類してもよい。」

「[0042] 以下、非致命的異常の発生時における電池システム1の動作具体例又はそれに関連する事項を、第1?第10実施例において説明する。矛盾なき限り、第1?第10実施例の内、複数の実施例を組み合わせることも可能である。」

「[0043] <<第1実施例>>
第1実施例を説明する。図6は、第1実施例に係る電池システム1の動作フローチャートである。第1実施例では、電池システム1が通常運転を行っている最中のタイミングT_(A)において、非致命的異常が発生して主制御部11が非致命的異常の発生を認識した場合を想定する。
[0044] 主制御部11が非致命的異常の発生を認識すると、まずステップS11において、主制御部11は充電スイッチ31及び放電スイッチ32の双方をオフさせるため、第1及び第2オフ指令信号を出力する。この第1及び第2オフ指令信号の出力は、後述の猶予期間中においても継続される。
[0045] ステップS11に続くステップS12において、主制御部11は、タイミングT_(A)’における電池部21の残容量を取得する。ここで取得されるタイミングT_(A)’における電池部21の残容量を、記号RC[T_(A)’]で表す。タイミングT_(A)’とは、タイミングT_(A)を基準としたタイミングであり、微小な所定時間だけタイミングT_(A)よりも前のタイミング(T_(A)-Δ)、又は、微小な所定時間だけタイミングT_(A)よりも後のタイミング(T_(A)+Δ)である。但し、タイミングT_(A)’はタイミングT_(A)と一致していても良い。以下に述べる残容量とは、特に記述なき限り、電池部21の残容量を指す。
[0046] 具体的には例えば、ステップS12において、主制御部11は、タイミングT_(A)の直前のタイミング(T_(A)-Δ)における残容量を、RC[T_(A)’]として記憶部15から読み出す。或いは例えば、第1通信異常が発生していない場合には、主制御部11は、タイミングT_(A)における残容量又はタイミングT_(A)の直後のタイミング(T_(A)+Δ)における残容量を、残容量RC[T_(A)’]として、通信により電池ユニット12から取得しても良い。
[0047] 残容量RC[T_(A)’]の取得後、ステップS13において、主制御部11は、下記不等式(1)の成否を判定する。式(1)における2つの不等号“≦”の内、少なくとも一方を不等号“<”に置き換えることもできる。 “0<RC_(THA)<RC_(THB)<1”を満たす範囲内において、下限値RC_(THA)及び上限値RC_(THB)が予め設定されている(例えば、RC_(THA)=0.1、RC_(THB)=0.9)。尚、上述したように満充電容量を1にて正規化している。
RC_(THA)≦RC[T_(A)’]≦RC_(THB) …(1)
[0048] ステップS13において式(1)が成立しない場合、即ち残容量RC[T_(A)’]が所定の容量範囲を逸脱する場合には、主制御部11は直ちにブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力し、ブレーカ部14をオフにする(ステップS17)。一方、主制御部11は、式(1)が成立するとき、ステップS13からステップS14への移行を許可して、ステップS14の処理及びそれに続く処理を実行する。ステップS14において、主制御部11は、残容量RC[T_(A)’]に応じた時間長さLTを有する猶予期間を設定する。猶予期間の開始タイミングはタイミングT_(A)又はタイミングT_(A)’である。図7は、残容量RC[T_(A)’]と時間長さLTとの関係図である。RC[T_(A)’]が、予め定められた基準容量RC_(REF)と一致するとき時間長さLTは最大時間となり、それらの差分の絶対値|RC[T_(A)’]-RC_(REF)|が増大するにつれて、時間長さLTは最大時間より短くなる。“RC_(THA)<RC_(REF)<RC_(THB)”、である。
[0049] ステップS14にて猶予期間を設定した後、ステップS15及びS16において、主制御部11は、非致命的異常が解消したか否か監視しつつタイマ(不図示)を用いて猶予期間が終了したか否かも監視する。非致命的異常が第1通信異常である場合、主制御部11による電池状態情報の受信が復帰したならば非致命的異常が解消したと判断され、非致命的異常が第2通信異常である場合、主制御部11によるスイッチング状態情報の受信が復帰したならば非致命的異常が解消したと判断される。非致命的異常がスイッチ31又は32の切り替え異常である場合、主制御部11は、測定電圧値V_(31)又はV_(32)(図3参照)に基づき、スイッチ31又は32の切り替え異常が解消したか否かを判断することができる。
[0050] 猶予期間が終了するまでに非致命的異常が解消した場合には(ステップS15のY)、電池システム1の運転は通常運転に戻るが(ステップS18)、非致命的異常が解消することなく猶予期間が終了した場合には(ステップS16のY)、ステップS17において、主制御部11はブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力してブレーカ部14をオフにする。」

「[0062] <<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第4実施例においても、第1又は第2実施例を基準とした変形技術を説明する。
[0063] 第1実施例において、充電スイッチ31がオン且つ放電スイッチ32がオフであるときに非致命的異常が発生した場合、非致命的異常の種類にもよるが、ステップS11の処理を行うことなく充電スイッチ31がオン且つ放電スイッチ32がオフを維持し、第1実施例で述べたステップS12及びステップS12以降の処理を行うようにしてもよい。この際、第1実施例において下記式(1a)を上記式(1)の代わりに用いると共に、RC_(THB)を基準容量と捉え、基準容量RC_(THB)から見て残容量RC[T_(A)’]が少ないほど時間長さLTを長く設定しても良い(基準容量RC_(THB)から見て残容量RC[T_(A)’]が少ないほど時間長さLTを長く設定する方法を、便宜上、方法α1と呼ぶ)。残容量RC[T_(A)’]が少ないほど過充電に至るまでの余裕度が大きいからである。
RC[T_(A)’]≦RC_(THB) …(1a)
[0064] 第1実施例において、充電スイッチ31がオフ且つ放電スイッチ32がオンであるときに非致命的異常が発生した場合、非致命的異常の種類にもよるが、ステップS11の処理を行うことなく充電スイッチ31がオフ且つ放電スイッチ32がオンを維持し、第1実施例で述べたステップS12及びステップS12以降の処理を行うようにしてもよい。この際、第1実施例において下記式(1b)を上記式(1)の代わりに用いると共に、RC_(THA)を基準容量と捉え、基準容量RC_(THA)から見て残容量RC[T_(A)’]が多いほど時間長さLTを長く設定しても良い(基準容量RC_(THA)から見て残容量RC[T_(A)’]が多いほど時間長さLTを長く設定する方法を、便宜上、方法α2と呼ぶ)。残容量RC[T_(A)’]が多いほど過放電に至るまでの余裕度が大きいからである。
RC_(THA)≦RC[T_(A)’] …(1b)」

「[0068] <<第5実施例>>
第5実施例を説明する。第5実施例においても、第1又は第2実施例を基準とした変形技術を説明する。但し、第5実施例では、上述の方法α1?α4の何れかが利用される。
[0069] 非致命的異常の種類が或る程度はっきりしており、過充電の危険性が殆どないといえる状況下においては、過放電の回避を重点的に考慮すれば足ると言える。例えば、放電スイッチ32に異常が発生しているが充電スイッチ31が正常であることが分かっている場合や、電池部21の充電を行わない放電モードにおいて第1通信異常(主制御部11及び電池ユニット12間の通信異常)が発生した場合などが、この状況に当たる。
[0070] 逆に、非致命的異常の種類が或る程度はっきりしており、過放電の危険性が殆どないといえる状況下においては、過充電の回避を重点的に考慮すれば足ると言える。例えば、充電スイッチ31に異常が発生しているが放電スイッチ32が正常であることが分かっている場合や、電池部21の放電を行わない充電モードにおいて第1通信異常(主制御部11及び電池ユニット12間の通信異常)が発生した場合などが、この状況に当たる。
[0071] このように、非致命的異常の種類にもよるが、非致命的異常の種類が或る程度はっきりしている場合には、上述の方法α1?α4の如く、充電又は放電にのみ注目して基準容量又は基準電圧値を設定することが有益である。
[0072] 即ち、非致命的異常の発生時において、非致命的異常の種類にもよるが、非致命的異常の種類が或る程度はっきりしている場合には、非致命的異常の種類に応じ方法α1又はα2を用いて時間長さLTを設定しても良い、或いは、非致命的異常の種類に応じ方法α3又はα4を用いて時間長さLTを設定しても良い。この際、ステップS11の処理(第1及び第2オフ指令信号の出力処理)を行うことなくステップS12及びステップS12以降の処理を行うことが可能であり、それに対応する具体的動作例が第4実施例に示されている。」

「符号の説明
[0089] 1 電池システム
11 主制御部
12 電池ユニット
13 スイッチング回路
14 ブレーカ部
21 電池部
22 電圧検出器
23 電流検出器
26 温度測定器
27 電池異常検出部
28 残容量算出部
31 充電スイッチ
32 放電スイッチ」

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 段落[0014][0089]及び図1によれば、主制御部11と電池ユニット12とスイッチング回路13とブレーカ部14を備える電池システム1が記載されている。

b 段落[0024]及び[0028]によれば、スイッチング回路13は、充電スイッチ31と放電スイッチ32と、充電スイッチ31の両端子間電圧を測定して測定電圧値V_(31)を表す信号を出力する電圧測定器36と、放電スイッチ32の両端子間電圧を測定して測定電圧値V_(32)を表す信号を出力する電圧測定器37を備える。

c 段落[0029]及び[0030]によれば、主制御部11は、オン指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31A)以上となる場合と、オフ指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31B)以下となる場合に、充電スイッチ31に切り替え異常が発生していると判断し、オン指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32A)以上である場合と、オフ指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32B)以下である場合に、放電スイッチ32に切り替え異常が発生していると判断する。

d 段落[0039]によれば、主制御部11は、電池システム1内で何らかの異常が発生した際、発生異常の種類によって発生異常を致命的異常又は非致命的異常に分類する。

e 段落[0041]によれば、主制御部11は、発生異常が非致命的異常であるとき、異常の発生時点から始まる猶予期間を設定し、猶予期間中は、電池部21及びスイッチング回路13間の接続をブレーカ部14に維持させる。また、段落[0041][0049][0050]によれば、主制御部11は、猶予期間を設定した後、非致命的異常が解消したか否か監視しつつタイマを用いて猶予期間が終了したか否かも監視し、猶予期間が終了するまでに非致命的異常が解消した場合には、電池システム1の運転を通常運転に戻し、非致命的異常が解消することなく猶予期間が終了した場合には、ブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力してブレーカ部14をオフにする。そして、段落[0033]によれば、ブレーカ部14がオフになると、電池システム1は停止する。

f 段落[0045][0048]には、主制御部11が、電池部21の残容量に応じた時間長さLTを有する猶予期間を設定することが記載されている。
また、段落[0063][0064]によれば、猶予期間の長さLTの設定方法には、電池部21の残容量が少ないほど時間長さLTを長く設定する方法α1と、電池部21の残容量が多いほど時間長さLTを長く設定する方法α2がある。
そして、段落[0069]ないし[0072]によれば、第5実施例として、非致命的異常の種類が、放電スイッチ32の異常か、充電スイッチ31の異常にか応じて方法α1またはα2を用いて猶予期間の時間長さLTを設定することが読み取れる。

g 段落[0044][0072]から、第5実施例では、主制御部11が非致命的異常の発生を認識した場合に、充電スイッチ31と放電スイッチ32をオフとする処理を行わないことが読み取れる。

(ウ)引用文献1の第5実施例に着目すると、上記aないしgから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「主制御部11と電池ユニット12とスイッチング回路13とブレーカ14と、を備えた電池システム1であって、
スイッチング回路13は、充電スイッチ31と放電スイッチ32と、充電スイッチ31の両端子間電圧を測定して測定電圧値V_(31)を表す信号を出力する電圧測定器36と、放電スイッチ32の両端子間電圧を測定して測定電圧値V_(32)を表す信号を出力する電圧測定器37を備え、
主制御部11は、
オン指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31A)以上となる場合と、オフ指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31B)以下となる場合に、充電スイッチ31に切り替え異常が発生していると判断し、オン指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32A)以上である場合と、オフ指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32B)以下である場合に、放電スイッチ32に切り替え異常が発生していると判断し、
電池システム1内で何らかの異常が発生した際、発生異常の種類によって発生異常を致命的異常又は非致命的異常に分類し、
発生異常が非致命的異常であるとき、充電スイッチ31と放電スイッチ32をオフとする処理を行うことなく、異常の発生時点から始まる猶予期間を設定し、猶予期間中は、電池部21及びスイッチング回路13間の接続をブレーカ部14に維持させ、
猶予期間を設定した後、非致命的異常が解消したか否か監視しつつタイマを用いて猶予期間が終了したか否かも監視し、猶予期間が終了するまでに非致命的異常が解消した場合には、電池システム1の運転を通常運転に戻し、非致命的異常が解消することなく猶予期間が終了した場合には、ブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力してブレーカ部14をオフにして電池システム1を停止し、
猶予期間の長さLTの設定方法には、電池部21の残容量が少ないほど時間長さLTを長く設定する方法α1と、電池部21の残容量が多いほど時間長さLTを長く設定する方法α2があり、
非致命的異常の種類が、放電スイッチ32の異常か、充電スイッチ31の異常かに応じて方法α1またはα2を用いて猶予期間の時間長さLTを設定する、
電池システム1。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「電池システム1」は、本件補正発明の「蓄電システム」に相当する。
(イ)引用発明の「電池システム1」は「スイッチング回路13」を備えており、「スイッチング回路13」は「充電スイッチ31」と「放電スイッチ32」を備えるから、「充電スイッチ31」と「放電スイッチ32」は「電池システム1」の構成要素である。よって、引用発明の「充電スイッチ31の両端子間電圧を測定」した「測定電圧値V_(31)」と、「放電スイッチ32の両端子間電圧を測定」した「測定電圧値V_(32)」は、電池システム1に関する検出値である。したがって、引用発明の「測定電圧値V_(31)」と「測定電圧値V_(32)」は、本件補正発明の「蓄電システムに関する検出値」に相当する。
(ウ)引用発明の「主制御部11」は、「オン指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31)A以上となる場合と、オフ指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31B)以下となる場合に、充電スイッチ31に切り替え異常が発生していると判断し、オン指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32A)以上である場合と、オフ指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32B)以下である場合に、放電スイッチ32に切り替え異常が発生していると判断」するから、「測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31A)以上となる」こと、「測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31B)以下となる」こと、「測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32A)以上である」こと、及び、「測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32B)以下である」こと、をそれぞれ検出していることは明らかである。よって、引用発明の「主制御部11」は、電池システムに関する検出値が条件を満たすことを検出する検出手段を有しているといえる。
また、引用発明の「主制御部11」は、「オン指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31A)以上となる場合と、オフ指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31B)以下となる場合に、充電スイッチ31に切り替え異常が発生していると判断」し、「オン指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32A)以上である場合と、オフ指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32B)以下である場合に、放電スイッチ32に切り替え異常が発生していると判断」するから、上記の電池システムに関する検出値が条件を満たすことの検出に応じて、「充電スイッチ31」の「切り替え異常」あるいは「放電スイッチ32」の「切り換え異常」という電池システムに発生する異常の種類、即ち不具合の種類を特定する特定手段を有しているといえる。
よって、引用発明の「主制御部11」が「オン指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31A)以上となる場合と、主制御部11がオフ指令信号を充電スイッチ31に出力している状態で、測定電圧値V_(31)が所定の基準電圧値TH_(31B)以下となる場合に、充電スイッチ31に切り替え異常が発生していると判断し、オン指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32A)以上である場合と、オフ指令信号を放電スイッチ32に出力しているにも関わらず、測定電圧値V_(32)が所定の基準電圧値TH_(32B)以下である場合に、放電スイッチ32に切り替え異常が発生していると判断」する手段を備えていることは、本件補正発明の「蓄電システムに関する検出値が条件を満たすことを検出する検出手段と、前記検出手段の検出に応じて、前記蓄電システムに生じた不具合の種類を特定する特定手段」を有することに相当する。
(エ)引用発明の「主制御部11」は「発生異常が非致命的異常であるとき、充電スイッチ31と放電スイッチ32をオフとする処理を行うことなく、異常の発生時点から始まる猶予期間を設定し、猶予期間中は、電池部21及びスイッチング回路13間の接続をブレーカ部14に維持させ」、「猶予期間が終了した場合には」「電池システム1を停止」するから、「猶予期間」とは、異常発生後に電池システム1の運転を継続可能な期間を意味する。よって、引用発明の「猶予期間」は、本件補正発明の「運転継続可能時間」に相当する。
そして、引用発明の「猶予期間の長さLTの設定方法」には「電池部21の残容量が少ないほど時間長さLTを長く設定する方法α1」と「電池部21の残容量が多いほど時間長さLTを長く設定する方法α2」があり、「主制御部11」は「非致命的異常の種類が、放電スイッチ32の異常か、充電スイッチ31の異常かに応じて方法α1またはα2を用いて猶予期間の時間長さLTを設定する」から、非致命的異常の種類に基づいて猶予期間の長さLTを決定している。
よって、引用発明の「主制御部11」が「非致命的異常の種類が、放電スイッチ32の異常か、充電スイッチ31の異常かに応じて方法α1またはα2を用いて猶予期間の時間長さLTを設定する」手段を備えていることは、本件補正発明の「不具合の種類に基づき、不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続可能時間の長さを決定する決定手段」を有することに相当する。
(オ)引用発明の「ブレーカオフ指令信号」は「ブレーカ部14をオフにして電池システム1を停止」するために用いられる信号であるから、本件補正発明の「前記蓄電システムの動作を停止する停止指令」に相当する。
よって、引用発明の「主制御部11」が「猶予期間を設定した後」「タイマを用いて猶予期間が終了したか否かも監視し」、「猶予期間が終了した場合には、ブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力」する手段を備えていることは、本件補正発明の「不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続時間の長さが、前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超えないか監視し、超えた場合に前記蓄電システムの動作を停止する停止指令を出力」する「監視手段」を有することに相当する。
また、引用発明の「主制御部11」は「猶予期間が終了するまでに非致命的異常が解消した場合には、電池システム1の運転を通常運転に戻し」ている。ここで、通常運転においては「猶予期間が終了したか否かの監視」を行っていないことは明らかであるから、引用発明の「主制御部11」は、猶予期間が終了するまでに非致命的異常が解消した場合には、監視を停止するものである。
ここで、「メンテナンス」は不具合を解消するために行われるものであるから、本件補正発明の「メンテナンスの実施を示す入力を受付けた場合」とは、蓄電システムに生じた不具合が解消された場合であるといえる。
してみると、引用発明の「主制御部11」が「猶予期間を設定した後、非致命的異常が解消したか否か監視しつつタイマを用いて猶予期間が終了したか否かも監視し、猶予期間が終了するまでに非致命的異常が解消した場合には、電池システム1の運転を通常運転に戻し、非致命的異常が解消することなく猶予期間が終了した場合には、ブレーカオフ指令信号をブレーカ部14に出力してブレーカ部14をオフにして電池システム1を停止」する手段を有することと、本件補正発明とは、「不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続時間の長さが、前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超えないか監視し、超えた場合に前記蓄電システムの動作を停止する停止指令を出力し、前記蓄電システムの運転継続時間の長さが前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超える前に『不具合が解消した場合』、前記監視を停止する監視手段」を有する点で共通する。
ただし、「不具合が解消した場合」が、本件補正発明では「メンテナンスの実施を示す入力を受付けた場合」であるのに対して、引用発明には、その旨の特定がない点で相違する。

(カ)上記(ア)ないし(オ)における検討を踏まえると、引用発明の「電池システム」は、「検出手段」「特定手段」「決定手段」及び「監視手段」を有するシステムといえるから、本件補正発明の「監視システム」に相当する。

イ したがって、上記(ア)ないし(カ)によれば、本件補正発明と引用発明は、次の(一致点)及び(相違点)を有する。

(一致点)
「蓄電システムに関する検出値が条件を満たすことを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出に応じて、前記蓄電システムに生じた不具合の種類を特定する特定手段と、
不具合の種類に基づき、不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続可能時間の長さを決定する決定手段と、
不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続時間の長さが、前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超えないか監視し、超えた場合に前記蓄電システムの動作を停止する停止指令を出力し、前記蓄電システムの運転継続時間の長さが前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超える前に『不具合が解消した場合』、前記監視を停止する監視手段と、
を有する監視システム。」

(相違点)
「不具合が解消した場合」が、本件補正発明では「メンテナンスの実施を示す入力を受付けた場合」であるのに対して、引用発明には、その旨の特定がない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明は「猶予期間が終了するまでに非致命的異常が解消した場合には、電池システム1の運転を通常運転に戻」すものである。
ここで、異常を解消するためにメンテナンスを実施することは通常行われていることである。そして、例えば、特開2014-239630号公報(特に、段落【0069】ないし【0072】、【0078】を参照)に、「縮退運転が開始してから停止するまでの所定の時間内にメンテナンス作業が行われた場合(蓄電池モジュール11の異常が解消された場合)に、通常運転が行われるようにしてもよい。」と記載されているように、メンテナンス作業が行われた場合を異常が解消された場合として、通常運転に戻すことは周知技術である。さらに、メンテナンス作業が実施されたことをシステムにおいて認識可能とするために、システムに対してメンテナンスの実施を示す入力を行う必要があることも自明である。
してみると、引用発明において、上記周知技術に基づいて、非致命的異常が解消した場合として、メンテナンスの実施の入力を受け付けた場合を採用し、猶予期間が終了するまでにメンテナンスの実施の入力を受付けた場合に電池システムの運転を通常運転に戻す、すなわち、監視を停止するよう構成して、上記相違点に係る構成をなすことは当業者が容易になし得たことである。

イ そして、上記相違点を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年12月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし19に係る発明は、令和2年8月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1-5、9、11、18、19
・引用文献等 1

●理由2(進歩性)について
・請求項 6-8
・引用文献等 1、2

・請求項 10
・引用文献等 1、3

・請求項 12
・引用文献等 1、4

・請求項 13-17
・引用文献等 1
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2013/042517号
2.実願平3-30119号(実開平4-124836号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
3.特開2008-305164号公報(周知技術を示す文献)
4.特表2013-509669号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項、及び引用発明は、前記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明から、「不具合の種類を特定後の前記蓄電システムの運転継続時間の長さが、前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超えないか監視し、超えた場合に前記蓄電システムの動作を停止する停止指令を出力し、前記蓄電システムの運転継続時間の長さが前記決定手段により決定された運転継続可能時間を超える前にメンテナンスの実施を示す入力を受付けた場合、前記監視を停止する監視手段」を有するとの限定事項を省いたもの、即ち、上記「第2[理由]2(3)」で認定した上記(相違点)を含む構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項は、上記「第2[理由]2(3)」において検討したとおり、引用発明と全て一致し相違するところがないから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-25 
結審通知日 2021-06-29 
審決日 2021-07-13 
出願番号 特願2018-552404(P2018-552404)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 113- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 聡生  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 山本 章裕
永井 啓司
発明の名称 監視システム、サーバ、端末装置、監視方法、及び、プログラム  
代理人 速水 進治  

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