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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1377528
審判番号 不服2021-4648  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-09 
確定日 2021-09-02 
事件の表示 特願2019-569043号「LEDバックライト用フィルム、LEDバックライト」拒絶査定不服審判事件〔令和1年8月8日国際公開、WO2019/151073〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)1月23日(優先権主張2018年2月2日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 9月 9日付け:手続補正書の提出
令和 2年 9月28日付け:拒絶理由通知書
令和 2年11月 5日付け:意見書及び手続補正書の提出
令和 2年11月24日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 2年12月22日付け:意見書の提出
令和 3年 1月 6日付け:拒絶査定
令和 3年 4月 9日付け:審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は、令和2年11月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の粘着剤層と、低屈折率層と、基材と、第2の粘着剤層とをこの順に備え、
該低屈折率層の屈折率が、1.25以下であり、
該低屈折率層が、粒子同士が化学的に結合して構成される多孔体である、
LEDバックライト用フィルム。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、令和2年11月24日付け拒絶理由通知書に示された、
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:特開2017-64954号公報
引用文献2:特開2012-59645号公報
引用文献3:特開2011-207751号公報

第4 引用文献の記載等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項(下線は当審が付与。以下同様。)
「【請求項 1】
積層フィルムの製造方法であって、
前記積層フィルムは、屈折率が1.25以下である低屈折率層上に粘接着層が積層され、前記粘接着層上に、さらに、前記低屈折率層および前記粘接着層以外の他の層が積層された積層フィルムであり、
前記製造方法は、前記他の層上に前記粘接着層が積層された粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を前記低屈折率層に貼り合わせる、貼り合わせ工程を含むことを特徴とする製造方法。」

「【請求項 3】
製造される前記積層フィルムは、さらに、基材を含み、
前記基材上に前記低屈折率層が積層され、
さらに、前記低屈折率層上に前記粘接着層および前記他の層が積層されている請求項1または2記載の製造方法。」

「【請求項 9】
積層フィルムを含む画像表示装置の製造方法であって、
前記積層フィルムを、請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法により製造することを特徴とする製造方法。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの製造方法および画像表示装置の製造方法に関する。」

「【背景技術】
【0002】
2つの基板を一定の間隔をあけて配置すると、両基板の間の空隙が空気層となる。このように、前記基板間に形成された空気層は、例えば、光を全反射する低屈折率層として機能する。このため、例えば、光学フィルムであれば、プリズム、偏光フィルムおよび偏光板等の部材を、一定の距離を持って配置することにより、前記部材間に、低屈折率層となる空気層を設けている。しかし、このように、空気層を形成するには、各部材を一定の距離を持って配置しなければならないため、部材を、順に積層していくことができず、製造に手間がかかる。」

「【0025】
本発明の積層フィルムの製造方法は、さらに、前記貼り合わせ工程後に、前記低屈折率層から前記基材を剥離する基材剥離工程を含んでいても良い。」

「【0040】
前述のとおり、本発明の積層フィルムは、さらに、基材を含み、前記基材上に前記低屈折率層が積層されていても良い。本発明の低屈折率層は、例えば、前記基材上に、直接積層されてもよいし、他の層を介して積層されてもよい。前記基材としては、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムである。前記樹脂フィルムは、特に制限されず、前記樹脂の種類は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の、透明性に優れた熱可塑性樹脂等が挙げられ、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。」

「【0086】
[2.低屈折率層の製造方法]
本発明の低屈折率層の製造方法は、例えば、微細孔粒子を含む液を作製する工程、基材(樹脂フィルム)上に前記液を塗工する工程、および塗工された液を乾燥する工程を含むことが好ましいが、これには限定されない。前記微細孔粒子を含む液(以下「微細孔粒子含有液」という場合がある。)は、特に限定されないが、例えば、前記微細孔粒子を含む懸濁液である。なお、以下において、主に、前記微細孔粒子が、ゲル状化合物の粉砕物であり、前記低屈折率層がゲル状化合物の粉砕物を含む多孔体(好ましくはシリコーン多孔体)である場合について説明する。ただし、本発明は、前記微細孔粒子が、ゲル状化合物の粉砕物以外である場合も、同様に実施することができる。また、本発明の低屈折率層の形成材料は、前述のとおり、微細孔粒子に限定されない。本発明の積層フィルムの製造方法において、前記低屈折率層は、例えば、微細孔粒子同士が化学的に結合している多孔体であり、前記低屈折率層形成工程において、例えば、前記微細孔粒子同士を化学的に結合させる。前記微細孔粒子が、例えば、ケイ素化合物の微細孔粒子であり、前記多孔体が、シリコーン多孔体である。前記ケイ素化合物の微細孔粒子が、例えば、ゲル状シリカ化合物の粉砕体を含む。また、前記低屈折率層の別形態として、ナノファイバー等の繊維状物質からなり、前記繊維状物質が絡まり合い空隙を含む形で層を形成している空隙層がある。前記繊維状物質により形成された空隙層の製造方法は、例えば、前記微細孔粒子により形成された空隙層と同様である。さらに他にも、中空ナノ粒子やナノクレイを用いた空隙層、中空ナノバルーンやフッ化マグネシウムを用いて形成した空隙層も含まれる。また、それらの低屈折率層は単一の構成物質からなる空隙層であってもよいし、また複数の構成物質からなる空隙層であってもよい。空隙層の形態も単一の前記形態であってもよいし、複数の前記形態からなる空隙層であってもよい。以下においては、主に、前記微細孔粒子同士が化学的に結合している多孔体の空隙層について説明する。」

「【0131】
まず、図1の断面図に、本発明の積層フィルムの製造方法における工程の一例を、模式的に示す。まず、図示のとおり、低屈折率層および粘接着層以外の他の層30上に粘接着層40が積層され、さらに粘接着層40が保護層(セパレータ)50で被覆された粘接着層付き積層体を準備する。他の層30は、特に限定されず、例えば、前述のとおり、偏光板、プリズムシート、位相差フィルム等であっても良い。つぎに、保護層50を粘接着層40から剥離する保護層剥離工程(A)を行う。これにより、他の層30上に粘接着層40が積層され、保護層が無くて粘着剤が露出した粘接着層付き積層体を得ることができる。なお、本発明において、保護層剥離工程(A)は必須ではなく、最初から、他の層30上に粘接着層40が積層され、保護層が無くて粘着剤が露出した粘接着層付き積層体を準備しても良い。一方、図示のとおり、基材10上に低屈折率層20が積層された基材付き低屈折率層を準備する。そして、他の層30上に粘接着層40が積層された粘接着層付き積層体の粘接着層40側を、低屈折率層20に貼り合わせる、貼り合わせ工程(B)を行う。このようにして、本発明の積層フィルム1Aを得ることができる。図示のとおり、積層フィルム1Aは、基材10上に、低屈折率層20、粘接着層40および他の層30が、前記順序で積層されている。さらに、図示のとおり、積層フィルム1Aから基材10を剥離する基材剥離工程(C)を行い、本発明の積層フィルム1Bを得ても良い。積層フィルム1Bは、図示のとおり、低屈折率層20上に、粘接着層40および他の層30が、前記順序で積層されている。」

「【0156】
[実施例1]
以下のようにして、長尺状の基材(樹脂フィルム)上に本発明の低屈折率層が積層された本発明の積層フィルムロールを製造した。
【0157】
まず、参考例1で得られたゾル液(塗工液)を、バーコート法により、ポリエチレンテレフタレート(PET)製樹脂フィルム(100m長)の表面に塗布(塗工)して、塗工膜を形成した。この時の前記塗工膜のWet厚み(乾燥させる前の厚み)は、約27μmであった。前記塗工膜を、温度100℃で1分処理して乾燥し、基材(前記PET製樹脂フィルム)上に本発明の低屈折率層が形成された基材付き低屈折率層を得た。
【0158】
一方、他の層(日東電工株式会社製、商品名:輝度向上フィルム付偏光板)上に粘着剤(綜研化学株式会社製、商品名SKダイン)をDry厚み(乾燥厚み)12μmで塗布して粘接着層を形成し、粘接着層付き積層体を得た。前記粘接着層は、後述の貼り合わせ工程直前まで、保護層(セパレータ、三菱樹脂株式会社製樹脂フィルム、商品名:ダイアフォイルMRF38)により被覆して保護した。
【0159】
そして、前記粘接着層付き積層体から前記保護層を剥離し(保護層剥離工程)、前記粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を、前記基材付き低屈折率層における前記低屈折率層に貼り合わせた(貼り合わせ工程)。このようにして、本実施例の積層フィルムロールを得た。この積層フィルムロールは、図1の積層フィルム1Aと同様に、基材上に、低屈折率層、粘接着層および他の層が、前記順序で積層されていた。
【0160】
[実施例2]
参考例1で得られたゾル液0.75gに対し、さらに、光塩基発生剤(和光純薬工業株式会社:商品名WPBG266)の1.5%濃度MEK(メチルエチルケトン)溶液を0.062g、ビス(トリメトキシシリル)エタンの5%濃度MEK溶液を0.036gの比率で添加し、塗工液を得た。この塗工液を、実施例1と同様に塗工し乾燥させた。さらに、乾燥後の塗工膜に、波長360nmの光を用いて300mJ/cm2の光照射量(エネルギー)でUV照射し、基材(前記PET製樹脂フィルム)上に本発明の低屈折率層が形成された基材付き低屈折率層を得た。この基材付き低屈折率層を、実施例1で用いた基材付き低屈折率層に代えて用いたこと以外は実施例1と同様にして、本実施例の積層フィルムロールを得た。」

「【産業上の利用可能性】
【0164】
以上、説明したとおり、本発明の積層フィルムの製造方法によれば、前記他の層上に前記粘接着層が積層された粘接着層付き積層体の前記粘接着層側を前記低屈折率層に貼り合わせる。このため、前記粘接着層上に前記粘接着層を塗付する工程、および、前記低屈折率層上から保護層を剥がす工程を必要としないので、これらの工程により低屈折率層が破壊されることが無い。このため、本発明の積層フィルムの製造方法および本発明の画像表示装置の製造方法によれば、低屈折率層を破壊することなく、前記低屈折率層と他の層とを粘接着層を介して積層させることが可能である。本発明の積層フィルムは、本発明の低屈折率層を含むことにより、例えば、空気層に代わる低屈折率層として用いることができる。さらに、本発明によれば、前記低屈折率層上に前記他の層(例えば、偏光板、プリズムシート、位相差フィルム等)を積層させるので、本発明の低屈折率層に、前記他の層が有する機能を付与することができる。本発明の積層フィルムは、例えば、画像表示装置用等の光学部材として用いることができるが、その用途は、特に限定されない。」

また、以下の図面が示されている。
【図1】


(2)引用文献1からの認定事項
引用文献1には、上記(1)の記載事項から、次のことが認定できる。
ア 請求項1の下線部の記載(符号については段落【0131】等を参照。)から、積層フィルム1Aは、屈折率が1.25以下である低屈折率層20上に粘接着層40が積層され、前記粘接着層40上に、さらに、前記低屈折率層20および前記粘接着層以外の他の層30が積層されていること。
さらに、請求項1を引用する請求項3の下線部の記載から、前記積層フィルム1Aは、さらに、基材10を含み、前記基材10上に前記低屈折率層20が積層され、さらに、前記低屈折率層20上に前記粘接着層40および前記他の層30が積層されていること。

イ 請求項9の下線部の記載及び段落【0165】の「本発明の積層フィルムは、例えば、画像表示装置用等の光学部材として用いることができるが、その用途は、特に限定されない。」との記載から、積層フィルム1Aは、画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム1Aであること。


ウ 段落【0086】の「本発明の積層フィルムの製造方法において、前記低屈折率層は、例えば、微細孔粒子同士が化学的に結合している多孔体であり、前記低屈折率層形成工程において、例えば、前記微細孔粒子同士を化学的に結合させる。」との記載から、低屈折率層20は、微細孔粒子同士が化学的に結合している多孔体であること。

エ 段落【0040】の「前記基材としては、・・・透明性に優れた熱可塑性樹脂等が挙げられ」との記載から、基材10は透明性に優れた熱可塑性樹脂であること。

(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載事項及び(2)の認定事項から、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載さていると認められる。
「屈折率が1.25以下である低屈折率層20上に粘接着層40が積層され、前記粘接着層40上に、さらに、前記低屈折率層20および前記粘接着層40以外の他の層30が積層された画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム1Aであって、
前記積層フィルム1Aは、さらに、基材10を含み、前記基材10上に前記低屈折率層20が積層され、さらに、前記低屈折率層20上に前記粘接着層40および前記他の層30が積層されており、
前記低屈折率層20は、微細孔粒子同士が化学的に結合している多孔体であり、
前記基材10は透明性に優れた熱可塑性樹脂である、
画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム1A。」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
「【請求項 1】
光源と、
前記光源からの光が導入されて面方向に導かれるシート状の導光体と、
前記導光体の一方または他方の面に形成され、前記導光体より屈折率が低い低屈折率層と、備え、
前記低屈折率層は、前記導光体の一部領域にのみ形成されており、
前記低屈折率層が形成されていない前記導光体の領域は、少なくとも一部が、前記低屈折率層の形成領域に比べて前記光源から離れた位置にあり、
前記低屈折率層が形成されていない領域の導光体と、前記低屈折率層の前記導光体側とは反対の面には、前記導入光を散乱させて出射させる光取出部が形成されていることを特徴とする面状発光装置。」

「【0064】
形成領域A1の低屈折率層104の下面104a(導光体3側とは反対の面)および非形成領域A2の導光体3の下面3aには、入射光を散乱させて導光体3の上面3b(他方の面)側(図20の矢印参照)に取り出す(出射させる)光取出部105を形成することができる。
図20および図21では、光取出部105は形成領域A1の下面104aおよび非形成領域A2の下面3aの全領域に形成されているが、光取出部105は下面3a、104aの一部領域に形成してもよい。光取出部105は、例えば印刷により下面3a、104aの一部領域に形成された複数の微小ドット状のインク層とすることができる。各微小ドット状のインク層の平面視形状は円形、楕円形、多角形(矩形等)など任意としてよい。光取出部105は第1および第2実施形態の光取出部4と同様の構成としてもよい。
【0065】
図22に示すように、タッチパッド20は、入力センサ21と、その上に形成されたレジスト層22(被覆樹脂層)とを備えている。図示例では、入力センサ21は静電容量式の入力センサであって、基板23の上面23bに配線層24が設けられた構成である。
導光体3の上面3bには、例えばフッ素樹脂からなる保護層50を設けることができる。保護層50によって、導光体3の上面3bが傷ついたり汚れが付着するのを防止できる。
【0066】
面状発光装置101と反射シート30とは、面状発光装置101の周縁部(低屈折率層104の下面104aおよび導光体3の下面3aの周縁部)に形成された粘着層106によって互いに接着されている。
反射シート30とタッチパッド20とは、反射シート30の下面30aに形成された粘着層107によって互いに接着されている。
粘着層106、107は、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム系粘着材、合成ゴム系粘着材などの粘着材を用いることができる。粘着層106、107としては、シート状基材の両面に、粘着材料を塗布した粘着材層が形成された、いわゆる両面テープ状とされたものも使用可能である。」

また、以下の図面が示されている。
【図20】

(2)引用文献2からの認定事項
上記(1)の記載事項から、次のことが認定できる。
ア 請求項1の「光源と、前記光源からの光が導入されて面方向に導かれるシート状の導光体と、前記導光体の一方または他方の面に形成され、前記導光体より屈折率が低い低屈折率層と、備える面状発光装置」は、【図20】を参照すると、積層体からなること。

イ 段落【0064】の「形成領域A1の低屈折率層104の下面104a(導光体3側とは反対の面)および非形成領域A2の導光体3の下面3aには、入射光を散乱させて導光体3の上面3b(他方の面)側(図20の矢印参照)に取り出す(出射させる)光取出部105を形成することができる。」との記載、及び段落【0066】の「面状発光装置101と反射シート30とは、面状発光装置101の周縁部(低屈折率層104の下面104aおよび導光体3の下面3aの周縁部)に形成された粘着層106によって互いに接着されている。反射シート30とタッチパッド20とは、反射シート30の下面30aに形成された粘着層107によって互いに接着されている。」との記載、並びに【図20】を参照すると、導光体3の下面3aに、低屈折率層104と、光取出部105と、粘着層106と、反射シート30と、粘着層107と、タッチパッド20とをこの順に備えること。

(3)引用文献2に記載された事項
上記(1)の記載事項及び(2)の認定事項から、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載さていると認められる。
「光源2と、
前記光源2からの光が導入されて面方向に導かれるシート状の導光体3と、
前記導光体3の一方または他方の面に形成され、前記導光体3より屈折率が低い低屈折率層104と、備える積層体からなる面状発光装置101において、
前記導光体3の下面3aに、前記低屈折率層104と、光取出部105と、粘着層106と、反射シート30と、粘着層107と、タッチパッド20とをこの順に備えること。」

3 引用文献3
(1)引用文献3の記載事項
「【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜等の光学フィルター等に有用なシリカ系多孔質膜の製造方法に係り、特に、スプレーコート法により、良好な多孔質構造を有し、膜欠陥や膜表面荒れといった外観上の問題がなく、低屈折率といった機能性に優れ、耐久性にも優れたシリカ系多孔質膜を安定に製造する方法に関する。
本発明はまた、このシリカ系多孔質膜の製造方法に用いられるシリカ系組成物に関する。」

「【0143】
また、シリカ系多孔質膜が太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス、無機エレクトロルミネッセンス、LEDなどの光デバイスに適用される場合、用いる透光基材の片側、若しくは両面に電極が形成されていてもよい。電極は直接又は他の層を介して透光基材に設けることができる。」

「【0155】
シリカ系多孔質膜を用いた太陽電池受光面側の部分構成の一例を図1?図5に示す。 該太陽電池では、通常は一対の電極1及び3を設け、当該電極1及び3の間に半導体層2が位置するように構成する。また、例えば図1、3、4、及び5に示すように、透光基材5と電極3との間に中間層4があってもよく、図4や図5に示すように、ガスバリア層7があってもよい。また、例えば図3や図5に示すように、透光基材5やシリカ系多孔質膜6が、複数層形成されてもよい。なお、通常、シリカ系多孔質膜6が、最も受光面側となるように構成される。
また、中間層4は、複数層の積層構造であっても良く、封止層、耐熱層、ガスバリア層、紫外線劣化防止層、光線波長変換層、酸素ゲッター層、水分ゲッター層、粘着層等を含んでいることが好ましい。」

また、以下の図面が示されている。
【図1】

(2)引用文献3からの認定事項
引用文献3には、上記(1)の記載事項から、次のことが認定できる。
ア 引用文献3には、特に【図1】を参照すると、「シリカ系多孔質膜を含む積層体」について記載されていること。

イ 段落【0155】の「シリカ系多孔質膜を用いた太陽電池受光面側の部分構成の一例を図1?図5に示す。 該太陽電池では、通常は一対の電極1及び3を設け、当該電極1及び3の間に半導体層2が位置するように構成する。また、例えば図1、3、4、及び5に示すように、透光基材5と電極3との間に中間層4があってもよく、・・・また、中間層4は、複数層の積層構造であっても良く、封止層、耐熱層、ガスバリア層、紫外線劣化防止層、光線波長変換層、酸素ゲッター層、水分ゲッター層、粘着層等を含んでいることが好ましい。」との記載及び【図1】を参照すると、シリカ系多孔質膜を含む積層体において、シリカ系多孔質膜と、透光基材5と、粘着層を含んでいる中間層4と、電極3と、半導体層2と、電極1とをこの順に備えた積層体が記載されていること。

ウ 段落【0001】の下線部の記載から、シリカ系多孔質膜は、低屈折率であること。

(3)引用文献3に記載された事項
上記(1)の記載事項と上記(2)の認定事項から、次の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載さていると認められる。
「シリカ系多孔質膜を含む積層体において、
低屈折率のシリカ系多孔質膜と、透光基材5と、粘着層を含んでいる中間層4と、電極3と、半導体層2と、電極1とをこの順に備えること。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
1 後者の「粘接着層40」、「低屈折率層20」、及び「基材10」は、前者の「第1の粘着剤層」、「低屈折率層」、及び「基材」に相当し、後者の「前記基材10上に前記低屈折率層20が積層され、さらに、前記低屈折率層20上に前記粘接着層40および前記他の層30が積層されて」ることは、引用文献1の【図1】の「積層フィルム1A」の積層順をも参照すると、前者の「第1の粘着剤層と、低屈折率層と、基材と、第2の粘着剤層とをこの順に備え」ることとは、「第1の粘着剤層と、低屈折率層と、基材とをこの順に備え」の点で共通する。

2 後者の「低屈折率層20」の「屈折率が1.25以下である」ことは、前者の「該低屈折率層の屈折率が、1.25以下であ」ることに相当する。

3 後者の「前記低屈折率層20は、微細孔粒子同士が化学的に結合している多孔体である」ことは、前者の「該低屈折率層が、粒子同士が化学的に結合して構成される多孔体である」ことに相当する。

4 前者の「LEDバックライト用フィルム」は、「第1の粘着剤層と、低屈折率層と、基材と、第2の粘着剤層とをこの順に備え」るものであること、及び[図1]等から積層フィルムといえるものであり、また「LEDバックライト」は「光学部材」といえるものであるから、後者の「画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム1A」と、前者の「LEDバックライト用フィルム」とは「光学部材として用いられる積層フィルム」の点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致する。
「第1の粘着剤層と、低屈折率層と、基材とをこの順に備え、
該低屈折率層の屈折率が、1.25以下であり、
該低屈折率層が、粒子同士が化学的に結合して構成される多孔体である、
光学部材として用いられる積層フィルム。」

本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
[相違点]
「光学部材として用いられる積層フィルム」について、
本願発明は、「LEDバックライト用フィルム」であって「第1の粘着剤層と、低屈折率層と、基材と、第2の粘着剤層とをこの順に備え」るのに対し、
引用発明は、「画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム1A」であって、「前記基材10上に前記低屈折率層20が積層され、さらに、前記低屈折率層20上に前記粘接着層40および前記他の層30が積層されて」いるが、基材10下に第2の粘着剤層を備えることが特定されていない点。

第6 判断
1 上記相違点について検討する。
(1)LEDバックライト用フィルムについて
引用発明は「画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム1A」であるところ、「画像表示装置」の「光学部材」としてLEDバックライトが含まれることは、技術常識として知られており、また、引用文献1の段落【0002】の「光を全反射する低屈折率層」との記載から、光を全反射しながら伝搬する導光体への適用が示唆されているといえるから、引用発明の「画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム」はLEDバックライト用として想定できるものである。仮に想定できないとしても、例えば、引用文献2の屈折率が低い低屈折率層を導光体に適用することを参照すれば、引用発明の「画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム1A」をLEDバックライト用とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。

(2)第2の粘着剤層について
引用文献2には、上記第4 2(3)で述べたとおり、次の事項が記載されている。
「光源2と、
前記光源2からの光が導入されて面方向に導かれるシート状の導光体3と、
前記導光体3の一方または他方の面に形成され、前記導光体3より屈折率が低い低屈折率層104と、備える積層体からなる面状発光装置101において、
前記導光体3の下面3aに、前記低屈折率層104と、光取出部105と、粘着層106と、反射シート30と、粘着層107と、タッチパッド20とをこの順に備えること。」
引用文献3には、上記第4 3(3)で述べたとおり、次の事項が記載されている。
「シリカ系多孔質膜を含む積層体において、
低屈折率のシリカ系多孔質膜と、透光基材5と、粘着層を含んでいる中間層4と、電極3と、半導体層2と、電極1とをこの順に備えること。」

上記引用文献2、3に記載された事項はいずれも光学部材として用いられる積層フィルムに関するものといえるところ、引用文献2に記載された事項によれば、「粘着層106」により「光取出部105」と「反射シート30」を接着し、「粘着層107」により「反射シート30」と「タッチパッド20」を接着していることが、引用文献3に記載された事項によれば、「粘着層を含んでいる中間層4」により「透光基材5」と「電極3」とを接着していることが理解できるように、積層体を形成する層間、若しくは層と部材間に、粘着層を設けることは従来周知の技術といえるものであって、引用発明が「粘接着層40上に、さらに、」「他の層30が積層され」ていることをも考慮すると、他の機能層を増やしたり、他の部材を取り付けるために、粘着層を適所に備えることは、通常行われていることといえる。さらに、引用文献3に記載された事項によれば、引用発明の「透明性に優れた熱可塑性樹脂であ」る「基材10」と「透明性」という点で共通する「透光基材5」下に「粘着層を含んでいる中間層4」を備えることが理解できるから、引用発明の「画像表示装置用の光学部材として用いることができる積層フィルム」において、他の機能層を増やしたり、積層フィルム1Aに他の部材を取り付けるために基材10下に粘着層を備える程度のことは、当業者であれば適宜なし得ることである。

(3)上記(1)及び(2)から、上記相違点に係る本願発明の構成にすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

2 本願発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

3 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書の3.(2)(ii)において、
「令和2年12月22日付意見書でも申し述べたとおり、引用文献1において、基材10は剥離を想定して配置されており、剥離対象物である基材上にさらに粘着剤層を配置することはあり得ません。」と主張する。

(2)検討
引用文献1の請求項1を引用する請求項3では、基材を剥離する工程は特定されていない。また、引用文献1の段落【0156】?段落【0160】に記載されている[実施例1]及び[実施例2]においても、基材を剥離する工程は記載されていない。【請求項5】に「さらに、前記貼り合わせ工程後に、前記低屈折率層から前記基材を剥離する基材剥離工程を含む請求項3または4記載の製造方法。」と記載され、【0025】に「本発明の積層フィルムの製造方法は、さらに、前記貼り合わせ工程後に、前記低屈折率層から前記基材を剥離する基材剥離工程を含んでいても良い。」と記載されているが、引用文献1に基づいて発明を認定する際に、基材を剥離する工程を必須のものと捉える必要はないというべきである。
そうすると、基材を剥離する工程を必須のものとすることを前提としている請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び引用文献2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-17 
結審通知日 2021-06-22 
審決日 2021-07-13 
出願番号 特願2019-569043(P2019-569043)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 島田 信一
畔津 圭介
発明の名称 LEDバックライト用フィルム、LEDバックライト  
代理人 籾井 孝文  

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