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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B |
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管理番号 | 1377553 |
審判番号 | 不服2021-5610 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-04-30 |
確定日 | 2021-09-30 |
事件の表示 | 特願2017-550689「超音波トランスデューサのアクティブ熱管理に対するシステム、方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日国際公開、WO2016/162855、平成30年 7月 5日国内公表、特表2018-517439、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」と記す。)は、2016年(平成28年)4月9日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年4月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年3月14日に審査請求がなされると共に手続補正書が提出され、令和2年1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年7月28日に意見書が提出され、同年11月20日付けで拒絶査定(原査定)がなされたところ、令和3年4月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に提出された手続補正書により手続補正がなされたものである。 第2 令和2年11月20日付けの原査定の概要 原査定(令和2年11月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願の請求項1ないし15に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明と周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2015/029637号 2.特開2008-284003号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2008- 86362号公報(周知技術を示す文献) 第3 審判請求時の補正(令和3年4月30日提出の手続補正書による手続補正)について 審判請求時の補正(令和3年4月30日提出の手続補正書による手続補性)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、平成31年3月14日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲である補正前の請求項1、6及び10を、補正後の請求項1、6及び10に補正するものである。なお、請求項2ないし5,7ないし9,及び11ないし15については、補正前と補正後でその記載に変更はない。 1.請求項1についての補正 請求項1についての補正は、補正前の請求項1に係る発明における超音波プローブを「前記中空の内部の中に配置され、前記流体チャンバの前記中空の内部の中の前記流体冷却材を循環するように構成された循環装置」を有するものに限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、補正後の請求項1の発明特定事項のうち、上記審判請求時の補正により限定された事項は、出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「出願当初明細書等」という。)の段落【0032】及び【図3】に開示されているから、審判請求時の補正により限定された事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。 2.請求項2ないし5,及び7ないし9についての補正 請求項2ないし5,及び7ないし9についての補正は、請求項2ないし5,及び7ないし9が引用する請求項1が補正されたことによるものであり、上記「1.」と同様の理由で、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項を追加するものではないといえる。 3.請求項6についての補正 請求項6についての補正は、補正前の請求項6における「前記中空の内部の中に配置され、前記流体チャンバの前記中空の内部の中の前記流体冷却材を循環するように構成された循環装置」という発明特定事項が、補正後の請求項1に組み込まれることにより記載が変更されたものであり、請求項6は補正前も補正後も請求項1を引用するものであるから、請求項6に係る発明の発明特定事項は、補正前と補正後で何ら変更はない。 4.請求項10についての補正 請求項10についての補正は、補正前の請求項10に係る発明における超音波プローブに対するアクティブ熱管理システムの流体チャンバの中空の内部を「前記流体チャンバが、前記中空の内部の中に前記流体冷却材を受け、密閉するように構成される」ものに限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、補正後の請求項10の発明特定事項のうち、上記審判請求時の補正により限定された事項は、出願当初明細書等の段落【0017】ないし【0021】,【0031】及び【図1】に開示されているから、審判請求時の補正により限定された事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。 5.請求項11ないし15についての補正 請求項11ないし15についての補正は、請求項11ないし15が引用する請求項10が補正されたことによるものであり、上記「3.」と同様の理由で、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項を追加するものではないといえる。 6.請求項1ないし15の独立特許要件について そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし15に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1ないし15に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は、令和3年4月30日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び10は以下のとおりである。(下線は補正箇所を表す。) 「【請求項1】 トランスデューサを含むトランスデューサアセンブリと、 前記トランスデューサアセンブリに結合され、前記トランスデューサアセンブリから熱を放散するように構成された流体チャンバであって、 前記トランスデューサアセンブリに対して近位である第1の面及び前記トランスデューサアセンブリに対して遠位である第2の面を持つ外側シェル、及び 流体冷却材を含むように構成された中空の内部であって、前記流体チャンバが、前記中空の内部の中に前記流体冷却材を受け、密閉するように構成される、当該中空の内部、 を有する、当該流体チャンバと、 前記中空の内部の中に配置され、前記流体チャンバの前記中空の内部の中の前記流体冷却材を循環するように構成された循環装置とを有する超音波プローブ。」 「【請求項10】 超音波プローブに対するアクティブ熱管理システムにおいて、 前記超音波プローブのトランスデューサアセンブリに結合されるように構成され、前記トランスデューサアセンブリから熱を放散するように構成された流体チャンバであって、 前記トランスデューサアセンブリに対して近位である第1の面及び前記トランスデューサアセンブリに対して遠位である第2の面を持つ外側シェルと、 流体冷却材を含むように構成された中空の内部であって、前記流体チャンバが、前記中空の内部の中に前記流体冷却材を受け、密閉するように構成される、中空の内部と、 前記中空の内部の中に配置され、前記中空の内部の中の前記流体冷却材を循環するように構成された循環装置と、 前記循環装置に対する電源の電気的結合を可能にするように構成され、前記中空の内部の中に前記流体冷却材を密閉するように構成された、前記外側シェルを通る密閉ポートと、 を有する、当該流体チャンバ、 を有するアクティブ熱管理システム。」 なお、本願発明2ないし9及び11ないし15の概要は以下のとおりである。 本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明11ないし15は、本願発明10を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。) (1)「[0001] 本発明は、超音波探触子及び装置本体で構成される超音波診断装置に関する。」 (2)「[0018] 本発明は、超音波探触子の内部で発生した熱を効率的に探触子の外部表面に輸送し、放熱することを目的とする。」 (3)「[0020] 本発明によれば、超音波探触子の表面における対流効果が増進され、超音波探触子の放熱・冷却性能が向上する。従来方式では、探触子内部で発生する熱のために制限されていた探触子の内部に搭載された回路の性能の向上や超音波の送信エネルギーの増加が可能となる。これにより、超音波画像性能の向上、様々な測定値の精度向上、より長い動作時間が実現する。上記した以外の、課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。」 (4)「[0032] 図7に、本実施例に係る超音波探触子100の構造例を示す。図の左側が、音響放射および受信面である。なお、以下の説明では、図の左側を、超音波探触子100の前面又は前面側ともいう。超音波探触子100の筐体内には、図の左側より順に、音響レンズ20、音響整合層21、超音波振動子22、インターポーザー23、探触子内搭載回路(集積回路IC)24、背面材(バッキング材)25が配置される。これらの構造は一例であり、インターポーザー23を使わない場合や、探触子内搭載回路24が別の位置に存在する場合もある。図7の場合、超音波振動子22や探触子内搭載回路24などの熱源は、超音波探触子100の前面側に配置されている。 [0033] 超音波探触子100の全体は、筒状の探触子ケース26で覆われている。ここでの探触子ケース26が、前述した超音波探触子100の筐体に相当する。探触子ケース26の内周面には熱伝導材27が配置される。熱伝導材27は、熱源で発生した熱を高効率で筐体全体や超音波探触子後方に伝達するために配置される。熱伝導材27は、探触子外部への放熱性の観点から探触子ケース26と極力大きな接触面積を持つことが望ましい。探触子ケース26は、後述する探触子ケーブルブーツ35と共に探触子の全体を密閉する。なお、ワイヤレス型探触子の場合、探触子ケース26だけで探触子の全体が密閉される。 [0034] 超音波探触子100の後面(背面)には開口が形成されており、当該開口を通じ、信号線用のケーブル36の一端が探触子内部の各種電気電子デバイスと接続される。なお、ワイヤレス型探触子の場合には、探触子ケース26内の無線通信デバイス(インタフェース)と探触子内部の各種電気電子デバイスが接続される。探触子ケーブルブーツ35は、ケーブル36の外表面部及び探触子ケース26の後面開口部と密着し、探触子内部を密閉する。また、探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35とは互いに密着し、密閉構造を形成する。これにより、探触子の外部から内部への液体や気体の侵入が防止される。」 (5)「[0048] [実施例2] 図19に、実施例2に係る超音波振動子の構成例を示す。前述の実施例1では、気流発生機34を密閉された探触子の外部に設置した。実施例2では、気流発生機34を密閉された探触子の内部に配置する。多くの場合、熱源は、超音波振動子22及び探触子内に搭載される電気電子回路である。このような熱源は局所的に存在する。実施例1では、高効率熱輸送材28を用いて効率的に探触子ケース26に伝熱させる措置を取っている。しかし、材料の熱伝達率には限界がある。また実用上の制約から、探触子のサイズはある一定のサイズに制限されるため、熱の伝搬に使用できる面積にも限界がある。この場合、放熱能力は、熱伝導性能の限界から決まってしまう。 [0049] 本実施例では、この課題を克服するため、気流発生機34を探触子の内部に設置すると共に、空気の循環経路を形成するために2枚の整流板38を設置する。気流発生機34は、2枚の整流板38の間に配置される。これにより、空気は、2枚の整流板38の間を前面側から後面側に流れ、その後、整流板38の後端部に形成された隙間を通じて探触子の側面に沿って後方から前方に流れる。なお、前方に送られた空気は、整流板38の前端部に形成された隙間を通じ、再び、探触子の内部を後方に流れる。すなわち、本実施例の場合、探触子の内側に、循環する気流を発生させることができる。 [0050] 本実施例の構造を採用すれば、発熱源に近い位置からの熱を空気の対流効果で奪い、奪われた熱が循環する空気によって、相対的に温度が低いケース全体と対流することで探触子内部を高効率に均熱化させることができる。均熱化することで、局所的な温度上昇を抑えることが可能となり、またより広い面積での放熱効果が得られるようになる。」 (6)「[図19] 」 上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「超音波探触子の内部で発生した熱を効率的に探触子の外部表面に輸送し、放熱する超音波探触子及び装置本体で構成される超音波診断装置において、 超音波探触子100の筐体内には、左側より順に、音響レンズ20、音響整合層21、超音波振動子22、インターポーザー23、探触子内搭載回路(集積回路IC)24、背面材(バッキング材)25が配置され、 超音波探触子100の全体は、超音波探触子100の筐体に相当する筒状の探触子ケース26で覆われており、 探触子ケース26は、後述する探触子ケーブルブーツ35と共に探触子の全体を密閉し、 探触子ケーブルブーツ35は、ケーブル36の外表面部及び探触子ケース26の後面開口部と密着し、探触子内部を密閉し、 探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35とは互いに密着し、密閉構造を形成することにより、探触子の外部から内部への液体や気体の侵入が防止され、 気流発生機34を密閉された探触子の内部に配置すると共に、空気の循環経路を形成するために2枚の整流板38を設置し、気流発生機34は、2枚の整流板38の間に配置され、探触子の内側に、循環する気流を発生させることができる、 超音波探触子及び装置本体で構成される超音波診断装置。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0021】 図2は、図1に示す超音波プローブのAA´断面図である。図1のAA´部分において、超音波プローブは、図2に示すように略方形状の断面を備えている。つまり、略四角柱状の内殻14の内部に電子回路30が収容されており、さらに、内殻14を取り囲むように略四角柱状の外殻16が設けられている。内殻14と外殻16は、互いに複数のフィン15によって接続されている。 【0022】 電子回路30や振動子(図1の符号12)で発生した熱は、熱伝導率の高い材料(例えば、金属、グラファイト、ヒートパイプなど)によって形成された熱伝導路を通って内殻14に伝えられる。内殻14はヒートシンクとして機能し、内殻14も熱伝導率の高い材料で形成される。そして、内殻14に伝えられた熱が、内殻14と外殻16の間を流通する空気によって冷却されて放熱が行われる。放熱の際には、フィン15が放熱面積を大きくする役割も担っている。」 (2)「【図2】 」 上記引用文献2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、 「放熱の際には、フィン15が放熱面積を大きくする役割も担っている、超音波プローブ。」(以下「引用発明2」という。) が記載されていると認められるから、引用文献2には 「超音波プローブでの放熱の際にフィンにより放熱面積を大きくする技術。」(以下「引用文献2開示技術」という。)が開示されているといえる。 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0015】 そこで、上記の点に鑑み、本発明は、医療用の超音波診断装置において用いられる超音波用探触子において、超音波トランスデューサによって送信又は受信される超音波の減衰を招くことなく、超音波トランスデューサの背後に放出される超音波を十分に吸収しながら、超音波トランスデューサを冷却することを目的とする。」 (2)「【0020】 以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。 図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の外観及び内部の一部を示す斜視図である。この超音波用探触子1は、被検体に当接して体腔外走査を行う際に用いられる。図1に示すように、超音波用探触子1のヘッド部は、筐体10と、複数の超音波トランスデューサ(振動子)11を含む超音波トランスデューサアレイ12と、第1の音響整合層13と、音響レンズ14と、第2の音響整合層15と、複数の超音波トランスデューサ11を冷却する冷却機構としてのマイクロ流路16と、第3の音響整合層17と、バッキング材18と、複数の超音波トランスデューサ11の共通電極に接続されたフレキシブルプリント基板(flexible printed circuit:FPC)19と、複数の超音波トランスデューサ11の信号電極に接続されたFPC20とを有している。 【0021】 本実施形態においては、複数の超音波トランスデューサ11を冷却するために、超音波トランスデューサアレイ12の背面において、第2の音響整合層15と第3の音響整合層17との間にマイクロ流路16が形成されており、マイクロ流路16を流れる熱伝達物質(熱伝達媒体)が、超音波トランスデューサアレイ12を冷却する。ここで、第2の音響整合層15及び第3の音響整合層17は、超音波トランスデューサアレイ12からマイクロ流路16を介してバッキング材18に至る超音波の伝達経路における音響インピーダンスのマッチングを図るために設けられている。これにより、超音波トランスデューサ11の背後に放出される超音波が、バッキング材18によって十分に吸収される。」 (3)「【0025】 図2は、図1に示す超音波用探触子と超音波診断装置本体とが接続された状態を示す図である。図2に示すように、超音波用探触子1から延びる循環チューブ3a及び3bが、熱伝達物質用コネクタ21を介して超音波診断装置本体2に接続されている。超音波診断装置本体2において、循環ポンプ付き冷却器29が、熱伝達物質を冷却し、冷却された熱伝達物質を、熱伝達用媒体循環用チューブ3aを介してマイクロ流路16(図1)に供給すると共に、マイクロ流路16を通過した熱伝達物質を、熱伝達用媒体循環用チューブ3bを介して回収する。これにより、超音波用探触子1と超音波診断装置本体2との間で熱伝達物質が循環する。」 (4)「【0027】 超音波診断装置本体2は、超音波用探触子1及び超音波診断装置本体2を含むシステム全体の動作を制御する制御部23と、駆動信号生成部24と、送受信切換部25と、受信信号処理部26と、画像生成部27と、表示部28と、循環ポンプ付き冷却器29とを含んでいる。駆動信号生成部24は、例えば、複数の駆動回路(パルサー等)を含み、複数の超音波トランスデューサをそれぞれ駆動するために用いられる複数の駆動信号を生成する。送受信切換部25は、超音波用探触子1への駆動信号の出力と、超音波用探触子1からの受信信号の入力とを切り換える。」 (5)「【0059】 次に、本発明の第4の実施形態に係る超音波用探触子について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、本発明の第4の実施形態に係る超音波用探触子の内部を示す平面図であり、図9は、図8に示す超音波用探触子と超音波診断装置本体とが接続された状態を示す図である。 【0060】 図8に示すように、本実施形態に係る超音波用探触子1aは、図1及び図3に示す超音波用探触子1に対して、超音波用探触子内の温度を感知する温度センサ93をさらに備えたものである。その他の構成については、図1及び図3に示す超音波用探触子1と同様である。 【0061】 温度センサ93は、サーミスタ又は熱電対等を含んでおり、FPC20の表面に取り付けられている。あるいは、温度センサ93を、バッキング材の中又は上に配置しても良い。いずれにしても、温度センサ93を、なるべくマイクロ流路(図3の16若しくは図5の46)又は超音波トランスデューサ11の近傍に配置することが望ましい。温度センサ93は、リード線94によって超音波診断装置本体2b(図9)に電気的に接続されている。 【0062】 図9に示すように、本実施形態において用いられる超音波診断装置本体2bは、温度制御部95を有している。超音波診断装置本体2bのその他の構成については、図2に示す超音波診断装置本体2と同様である。 【0063】 温度制御部95は、リード線94を介して入力される温度センサ93の感知結果に基づいて熱伝達物質の温度に関する値を求め、その値に基づいて、ヘッド部4内の温度が所望の範囲に入るように、循環ポンプ付き冷却器29の動作を制御する。例えば、温度制御部95は、ヘッド部4内の温度に関する値が所定の値を超えた場合に、冷却器の設定温度を低下させたり、循環ポンプの圧力を高くする。あるいは、ヘッド部4内の温度に関する値が所定の値を超えた場合にのみ、循環ポンプ付き冷却器29を動作させるようにしても良い。 【0064】 本実施形態によれば、超音波用探触子1aのヘッド部内の温度に基づいて、循環ポンプ付き冷却器の動作をフィードバック制御するので、ヘッド部内の温度をより精度良く制御できると共に、循環ポンプ付き冷却器の運転コストを低減することが可能となる。なお、本実施形態においても、温度制御部95の替わりに、温度センサ93の感知結果に基づいてヘッド部内の温度に関する値を算出する算出部を設け、その算出結果に基づいて、制御部23が循環ポンプ付き冷却器29を制御するようにしても良い。」 (6)「【図8】 」 (7)「【図9】 」 上記引用文献3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、 「超音波用探触子1及び超音波診断装置本体2を含むシステムにおいて、 超音波用探触子1のヘッド部は、筐体10と、複数の超音波トランスデューサ(振動子)11を含む超音波トランスデューサアレイ12と、第1の音響整合層13と、音響レンズ14と、第2の音響整合層15と、複数の超音波トランスデューサ11を冷却する冷却機構としてのマイクロ流路16と、第3の音響整合層17と、バッキング材18と、複数の超音波トランスデューサ11の共通電極に接続されたフレキシブルプリント基板(flexible printed circuit:FPC)19と、複数の超音波トランスデューサ11の信号電極に接続されたFPC20とを有しており、 複数の超音波トランスデューサ11を冷却するために、超音波トランスデューサアレイ12の背面において、第2の音響整合層15と第3の音響整合層17との間にマイクロ流路16が形成されており、マイクロ流路16を流れる熱伝達物質(熱伝達媒体)が、超音波トランスデューサアレイ12を冷却し、 超音波用探触子1から延びる循環チューブ3a及び3bが、熱伝達物質用コネクタ21を介して超音波診断装置本体2に接続され、超音波診断装置本体2において、循環ポンプ付き冷却器29が、熱伝達物質を冷却し、冷却された熱伝達物質を、熱伝達用媒体循環用チューブ3aを介してマイクロ流路16に供給すると共に、マイクロ流路16を通過した熱伝達物質を、熱伝達用媒体循環用チューブ3bを介して回収し、これにより、超音波用探触子1と超音波診断装置本体2との間で熱伝達物質が循環し、 超音波診断装置本体2は、超音波用探触子1及び超音波診断装置本体2を含むシステム全体の動作を制御する制御部23と、駆動信号生成部24と、送受信切換部25と、受信信号処理部26と、画像生成部27と、表示部28と、循環ポンプ付き冷却器29とを含み、 超音波用探触子1に対して、超音波用探触子内の温度を感知する温度センサ93をさらに備え、温度センサ93は、リード線94によって超音波診断装置本体2bに電気的に接続され、 超音波診断装置本体2bは、温度制御部95を有し、温度制御部95は、リード線94を介して入力される温度センサ93の感知結果に基づいて熱伝達物質の温度に関する値を求め、その値に基づいて、ヘッド部4内の温度が所望の範囲に入るように、循環ポンプ付き冷却器29の動作をフィードバック制御する、 超音波用探触子1及び超音波診断装置本体2を含むシステム」 (以下「引用発明3」という。) が記載されていると認められるから、引用文献3には 「超音波用探触子での放熱の際に超音波用探触子内の温度センサの感知結果に基づいて、超音波用探触子のマイクロ流路に熱伝達物質を循環させる超音波診断装置本体の循環ポンプ付き冷却器29の動作をフィードバック制御する技術。」(以下「引用文献3開示技術」という。)が開示されているといえる。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1を、引用発明1と比較する。 ア 引用発明1の「超音波振動子22」は、本願発明1における「トランスデューサ」に相当する。 イ 引用発明1の「超音波探触子100の筐体内」の「音響レンズ20、音響整合層21、超音波振動子22、インターポーザー23、探触子内搭載回路(集積回路IC)24、背面材(バッキング材)25」は、本願発明1における「トランスデューサアセンブリ」に相当する。 ウ 引用発明1の「探触子の内側」で「循環する気流」である「空気」は、本願発明1における「流体冷却材」に相当する。 エ 引用発明1では、「超音波探触子100の全体は、超音波探触子100の筐体に相当する筒状の探触子ケース26で覆われており、探触子ケース26は、後述する探触子ケーブルブーツ35と共に探触子の全体を密閉し、探触子ケーブルブーツ35は、ケーブル36の外表面部及び探触子ケース26の後面開口部と密着し、探触子内部を密閉し、探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35とは互いに密着し、密閉構造を形成することにより、探触子の外部から内部への液体や気体の侵入が防止され、」「気流発生機34を密閉された探触子の内部に配置すると共に、空気の循環経路を形成するために2枚の整流板38を設置し、気流発生機34は、2枚の整流板38の間に配置され、探触子の内側に、循環する気流を発生させることができる」ことから、引用発明1における「超音波探触子100」は、本願発明1における「超音波プローブ」に相当し、引用発明1における「探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35」とが「互いに密着し」て「密閉構造を形成」した「密閉された探触子の内部」は、本願発明1における「流体冷却材を含むように構成された中空の内部であって、」「前記中空の内部の中に前記流体冷却材を受け、密閉するように構成される、当該中空の内部」に相当し、引用発明1における「密閉された探触子の内部に配置」され「探触子の内側に、循環する気流を発生させることができる」「気流発生機34」は、本願発明1における「前記中空の内部の中に配置され、」「前記中空の内部の中の前記流体冷却材を循環するように構成された循環装置」に相当する。 すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。 <一致点> 「トランスデューサを含むトランスデューサアセンブリと、 流体冷却材を含むように構成された中空の内部であって、前記中空の内部の中に前記流体冷却材を受け、密閉するように構成される、当該中空の内部と、 前記中空の内部の中に配置され、前記中空の内部の中の前記流体冷却材を循環するように構成された循環装置と を有する超音波プローブ。」 一方で、両者は、次の点で相違する。 <相違点1> 本願発明1は、「前記トランスデューサアセンブリに結合され、前記トランスデューサアセンブリから熱を放散するように構成され」、「前記トランスデューサアセンブリに対して近位である第1の面及び前記トランスデューサアセンブリに対して遠位である第2の面を持つ外側シェル、」と中空の内部を備えた「流体チャンバ」を備えるのに対し、引用発明1は、「探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35」とが「互いに密着し」て「密閉構造を形成」した「密閉された探触子の内部」が中空の内部を形成し、探触子ケース26内にトランスデューサアセンブリに相当する「音響レンズ20、音響整合層21、超音波振動子22、インターポーザー23、探触子内搭載回路(集積回路IC)24、背面材(バッキング材)25が配置され」ている点。 (2)判断 上記「(1)」で記載した相違点1について判断する。 ア 本願発明1では、流体チャンバは、「トランスデューサアセンブリに対して近位である第1の面及び」「トランスデューサアセンブリに対して遠位である第2の面を持つ外側シェル」を備え、「トランスデューサアセンブリから熱を放散するように」「トランスデューサアセンブリに結合され」ている。ゆえに、流体チャンバとトランスデューサアセンブリは別体構造であり、流体チャンバの外側シェルの第1の面とトランスデューサアセンブリが結合して、トランスデューサアセンブリから熱を放散するものである。 イ 一方、引用発明1では、探触子ケース26内に音響レンズ20、音響整合層21、超音波振動子22、インターポーザー23、探触子内搭載回路(集積回路IC)24、背面材(バッキング材)25が配置され、かつ、探触子ケース26内に気流発生機34と循環する気流を配置している。すなわち、超音波振動子22を含む超音波発生機構と冷却用の循環する気流とは1つの探触子ケース26内に配置されて、探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35により密閉構造を形成している。 ウ 引用発明1の、探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35により密閉構造を形成しているものを、本願発明1の流体チャンバと見なした場合、本願発明1のトランスデューサアセンブリに相当する超音波振動子22を含む超音波発生機構は、流体チャンバの内部に存在するか又は流体チャンバの一部を形成することとなり、流体チャンバがトランスデューサアセンブリを包含して一体化しているから、流体チャンバとトランスデューサアセンブリは別体構造ではない。したがって、引用発明1は、本願発明1の「トランスデューサアセンブリに対して近位である第1の面及び」「トランスデューサアセンブリに対して遠位である第2の面を持つ外側シェル」を備え、別体の「トランスデューサアセンブリに結合」する流体チャンバの構成を備えてはいない。 エ 上記「ア」ないし「ウ」で検討した本願発明1と引用発明1の相違点に相当する構造を備えた流体チャンバについては、引用発明2ないし3にも開示されておらず、本願の優先日前において周知の技術であるとも認められない。 オ 以上のことから、上記相違点1に係る発明特定事項を引用発明1ないし3及び周知技術から当業者が導き出すことはできない。 (3)小括 したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1ないし3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2ないし9について 本願発明2ないし9も、本願発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明10について (1)対比 本願発明10を、引用発明1と比較する。 ア 引用発明1の「超音波振動子22」は、本願発明10における「トランスデューサ」に相当する。 イ 引用発明1の「超音波探触子100の筐体内」の「音響レンズ20、音響整合層21、超音波振動子22、インターポーザー23、探触子内搭載回路(集積回路IC)24、背面材(バッキング材)25」は、本願発明10における「トランスデューサアセンブリ」に相当する。 ウ 引用発明1の「探触子の内側」で「循環する気流」である「空気」は、本願発明10における「流体冷却材」に相当する。 エ 引用発明1では、「超音波探触子100の全体は、超音波探触子100の筐体に相当する筒状の探触子ケース26で覆われており、探触子ケース26は、後述する探触子ケーブルブーツ35と共に探触子の全体を密閉し、探触子ケーブルブーツ35は、ケーブル36の外表面部及び探触子ケース26の後面開口部と密着し、探触子内部を密閉し、探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35とは互いに密着し、密閉構造を形成することにより、探触子の外部から内部への液体や気体の侵入が防止され、」「気流発生機34を密閉された探触子の内部に配置すると共に、空気の循環経路を形成するために2枚の整流板38を設置し、気流発生機34は、2枚の整流板38の間に配置され、探触子の内側に、循環する気流を発生させることができる」ことから、引用発明1における「超音波探触子100」は、本願発明10における「超音波プローブ」に相当し、引用発明1における「探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35」とが「互いに密着し」て「密閉構造を形成」した「密閉された探触子の内部」は、本願発明10における「流体冷却材を含むように構成された中空の内部であって、」「前記中空の内部の中に前記流体冷却材を受け、密閉するように構成される、当該中空の内部」に相当し、引用発明1における「密閉された探触子の内部に配置」され「探触子の内側に、循環する気流を発生させることができる」「気流発生機34」は、本願発明10における「前記中空の内部の中に配置され、」「前記中空の内部の中の前記流体冷却材を循環するように構成された循環装置」に相当する。 オ 引用発明1の「超音波探触子の内部で発生した熱を効率的に探触子の外部表面に輸送し、放熱する超音波探触子及び装置本体で構成される超音波診断装置」は、本願発明10における「超音波プローブに対するアクティブ熱管理システム」に相当する。 すると、本願発明10と、引用発明1とは、次の点で一致する。 <一致点> 「超音波プローブに対するアクティブ熱管理システムにおいて、 流体冷却材を含むように構成された中空の内部であって、前記中空の内部の中に前記流体冷却材を受け、密閉するように構成される、当該中空の内部と、 前記中空の内部の中に配置され、前記中空の内部の中の前記流体冷却材を循環するように構成された循環装置と を有するアクティブ熱管理システム。」 一方で、両者は、次の点で相違する。 <相違点2> 本願発明10は、「前記超音波プローブのトランスデューサアセンブリに結合されるように構成され、前記トランスデューサアセンブリから熱を放散するように構成された流体チャンバであって、」「前記トランスデューサアセンブリに対して近位である第1の面及び前記トランスデューサアセンブリに対して遠位である第2の面を持つ外側シェルと、」「前記循環装置に対する電源の電気的結合を可能にするように構成され、前記中空の内部の中に前記流体冷却材を密閉するように構成された、前記外側シェルを通る密閉ポート」を備えた「流体チャンバ」を備えるのに対し、引用発明1は、「探触子ケース26と探触子ケーブルブーツ35」とが「互いに密着し」て「密閉構造を形成」した「密閉された探触子の内部」が中空の内部を形成し、探触子ケース26内に「音響レンズ20、音響整合層21、超音波振動子22、インターポーザー23、探触子内搭載回路(集積回路IC)24、背面材(バッキング材)25が配置され」ている点。 (2)判断 上記「(1)」で記載した相違点2について判断する。 上記相違点2は、上記「1.(2)」で判断した相違点1の構成を全て含み、さらに流体チャンバが「前記循環装置に対する電源の電気的結合を可能にするように構成され、前記中空の内部の中に前記流体冷却材を密閉するように構成された、前記外側シェルを通る密閉ポート」を備える点を含むものである。ゆえに、上記「1.(2)」での判断と同様の理由により、本願発明10は、上記相違点2に係る発明特定事項を引用発明1ないし3及び周知技術から当業者が導き出すことはできない。 (3)小括 したがって、本願発明10は、当業者であっても、引用発明1ないし3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明11ないし15について 本願発明11ないし15も、本願発明10の上記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明10と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 上記「第6」で検討したように、本願発明1は、引用発明1ではないし、本願発明1ないし15は、引用発明1ないし3から当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本願発明1は拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明ではないし、本願発明1ないし15は拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-13 |
出願番号 | 特願2017-550689(P2017-550689) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 森口 正治 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
蔵田 真彦 伊藤 幸仙 |
発明の名称 | 超音波トランスデューサのアクティブ熱管理に対するシステム、方法及び装置 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 五十嵐 貴裕 |