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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F01D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F01D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F01D
管理番号 1377758
異議申立番号 異議2020-700632  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-24 
確定日 2021-07-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6655467号発明「廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6655467号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-11〕について訂正することを認める。 特許第6655467号の請求項1、5、6、11に係る特許を維持する。 特許第6655467号の請求項2-4、7-10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6655467号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成28年5月12日に出願され、令和2年2月5日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年8月24日に特許異議申立人中谷 浩美(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年11月24日付け(発送日:令和2年12月4日)で取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和3年1月29日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、当審は令和3年4月8日付け(発送日:令和3年4月14日)で異議申立人に期間を指定して意見書の提出を求めたが、異議申立人は、意見書の提出をしなかった。

第2 訂正の適否について
本件訂正請求は、特許第6655467号の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-11〕について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。

1 請求項1ないし5に係る訂正について
(1)訂正の内容
ア 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と 、前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサへ伝える圧縮動力生成工程と、前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御工程と、を含む廃棄物処理設備の操炉方法。」とあるのを、
「汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と、前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサへ伝える圧縮動力生成工程と、前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいで、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程と、を含み、前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、前記流量調整工程は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む、廃棄物処理設備の操炉方法。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。(下線は、訂正箇所を示すため当審で付した。)

イ 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除する。

エ 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。

オ 訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、
「前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する再予熱工程を含み、前記制御工程は、前記流量調整工程による燃焼用空気の温度変動を、前記再予熱工程での熱交換量を調整することにより補償する請求項2から4の何れかに記載の廃棄物処理設備の操炉方法。」
とあるのを、
「前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する再予熱工程を含み、前記制御工程は、前記流量調整工程による燃焼用空気の温度変動を、前記再予熱工程での熱交換量を調整することにより補償する請求項1記載の廃棄物処理設備の操炉方法。」に訂正する。

カ 訂正事項6
訂正前の特許明細書の段落【0013】に、
「上述の目的を達成するため、本発明による廃棄物処理設備の操炉方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガズの保有熱により予熱する予熱工程と、前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサヘ伝える圧縮動力生成工程と、前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御工程と、を含む点にある。」とあるのを、
「上述の目的を達成するため、本発明による廃棄物処理設備の操炉方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と、前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサヘ伝える圧縮動力生成工程と、前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程と、を含み、前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、前記流量調整工程は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む点にある。」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許明細書の段落【0015】を削除する。

ク 訂正事項8
訂正前の特許明細書の段落【0016】に、
「上述した第一の特徴構成となる制御工程にバイノタス送風工程と流量調整工程が含まれる。圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部が予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給されるバイパス送風工程が実行されると、タービンに入力されるエネ片ギーが低下してコンプレッサによる燃焼用空気の圧力比が低下する。その結果、過給機の運転ポイントがサージ領域に入ることなく燃焼用空気量を絞ることができる。このときコンプレッサから出力された燃焼用空気のうち流量調整工程によって調整された供給量の燃焼用空気が予熱工程へ供給され、その余の燃焼用空気がバイパス送風工程によって圧縮動力生成工程にバイパスされる。」とあるのを、
「圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部が予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給されるバイパス送風工程が実行されると、タービンに入力されるエネルギーが低下してコンプレッサによる燃焼用空気の圧力比が低下する。その結果、過給機の運転ポイントがサージ領域に入ることなく燃焼用空気量を絞ることができる。このときコンプレッサから出力された燃焼用空気のうち流量調整工程によって調整された供給量の燃焼用空気が予熱工程へ供給され、その余の燃焼用空気がバイパス送風工程によって圧縮動力生成工程にバイパスされる。」に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許明細書の段落【0017】を削除する。

コ 訂正事項10
特許明細書の段落【0018】を削除する。

サ 訂正事項11
特許明細書の段落【0019】を削除する。

シ 訂正事項12
訂正前の特許明細書の段落【0020】に、
「上述した第二の特徴構成となる流量調整工程に、バイパス風量調整工程及び/または予熱空気量調整工程が含まれる。過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、バイパス風量調整工程によって予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量が調整され、予熱空気量調整工程によって予熱工程への燃焼用空気の供給量が調整され、何れか一方または双方が調整される。」とあるのを、
「過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、バイパス風量調整工程によって予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量が調整され、予熱空気量調整工程によづて予熱工程への燃焼用空気の供給量が調整され、何れか一方または双方が調整される。」に訂正する。

ス 訂正事項13
訂正前の特許明細書の段落【0021】に
「同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第二から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する再予熱工程を含み、前記制御工程は、前記流量調整工程による燃焼用空気の温度変動を、前記再予熱工程での熱交換量を調整することにより補償する点にある。」とあるのを、
「同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する再予熱工程を含み、前記制御工程は、前記流量調整工程による燃焼用空気の温度変動を、前記再予熱工程での熱交換量を調整することにより補償する点にある。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1の、請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1における「制御工程」が「前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含」むことを、訂正前の請求項2の記載に基づいて限定し、さらに、前記「流量調整工程」が、「前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む」ことを、訂正前の請求項4の記載、訂正前の明細書の段落【0045】の「押込み送風機30により予備圧縮された燃焼用空気が過給機40のコンプレッサ40cに供給されるので、コンプレッサ40cのみならず押込み送風機30によっても圧縮された空気が、第1熱交換器5で予熱されるようになる。」との記載及び段落【0067】の「そして、流量調整機構は、第1ダンパ機構51D及び/または第2ダンパ機構52Dと、燃焼用空気を予備圧縮してコンプレッサ40cに供給する押込み送風機30とで構成されている。」との記載に基づいて限定するとともに、訂正前の請求項1における「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または、目標温度に調整する制御工程」を「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程」との記載に訂正することで記載の明瞭化を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2の、請求項2に係る訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項3の、請求項3に係る訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項4の、請求項4に係る訂正は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項5の、請求項5に係る訂正は、引用する請求項の記載を請求項1のみに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項6ないし13の、明細書の段落【0013】、【0015】ないし【0021】に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載と、明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正前の請求項1ないし5は、請求項2ないし5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正事項6ないし13に係る訂正は、請求項1ないし5に係る訂正に関連するものであるから、訂正事項1ないし13による訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
本件訂正の請求における訂正事項1ないし13による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。

2 請求項6ないし11に係る訂正について
(1)訂正の内容
ア 訂正事項14
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タ-ビンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御機構と、を備えている廃棄物処理設備。」とあるのを、
「汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タ-ビンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構と、を備え、前記制御機構は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含み、前記流量調整機構は、前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出口ポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている、廃棄物処理設備。」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11も同様に訂正する)。

イ 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

ウ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

エ 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

オ 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

カ 訂正事項19
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に、
「前記タービンかち排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する第2熱交換器を備え、前記制御部は、前記流量調整機構による燃焼用空気の温度変動を、前記第2熱交換器での熱交換量を調整することにより補償する請求項7から10の何れかに記載の廃棄物処理設備。」とあるのを、
「前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する第2熱交換器を備え、前記制御部は、前記流量調整機構による燃焼用空気の温度変動を、前記第2熱交換器での熱交換量を調整することにより補償する請求項6記載の廃棄物処理設備。」に訂正する。

キ 訂正事項20
訂正前の特許明細書の段落【0023】に、
「本発明による廃棄物処理設備の第一の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、前記熱処理炉で熱処理ざれる前詑廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御機構と、を備えている点にある。」とあるのを、
「本発明による廃棄物処理設備の第一の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、前記熱処理炉で熱処理、される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構と、を備え、前記制御機構は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含み、前記流量調整機構は、前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出ロポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている点にある。」に訂正する。

ク 訂正事項21
特許明細書の段落【0025】を削除する。

ケ 訂正事項22
特許明細書の段落【0027】を削除する。

コ 訂正事項23
特許明細書の段落【0028】を削除する。

サ 訂正事項24
特許明細書の段落【0029】を削除する。

シ 訂正事項25
特許明細書の段落【0031】を削除する。

ス 訂正事項26
訂正前の特許明細書の段落【0033】に、
「同第六の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第二から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する第2熱交換器を備え、前記制御部は、前記流量調整機構による燃焼用空気の温度変動を、前記第2熱交換器での熱交換量を調整することにより補償する点にある。」とあるのを、
「同第二の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第六の特徴構成に加えて、前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する第2熱交換器を備え、前記制御部は、前記流量調整機構による燃焼用空気の温度変動を、前記第2熱交換器での熱交換量を調整することにより補償する点にある。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項14の、請求項6に係る訂正は、訂正前の請求項6における前記「制御機構」が「前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含」むことを、訂正前の請求項7の記載に基づいて限定し、さらに、前記「流量調整機構」が、「前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出ロポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている」ことを、訂正前の請求項9の記載、訂正前の明細書の段落【0045】の「押込み送風機30により予備圧縮された燃焼用空気が過給機40のコンプレッサ40cに供給されるので、コンプレッサ40cのみならず押込み送風機30によっても圧縮された空気が、第1熱交換器5で予熱されるようになる。」との記載及び段落【0067】の「そして、流量調整機構は、第1ダンパ機構51D及び/または第2ダンパ機構52Dと、燃焼用空気を予備圧縮してコンプレッサ40cに供給する押込み送風機30とで構成されている。」との記載に基づいて限定するとともに、訂正前の請求項6における「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御機構」を、「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構」との記載に訂正することで記載の明瞭化を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項15の、請求項7に係る訂正は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項16の、請求項8に係る訂正は、請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項17の、請求項9に係る訂正は、請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項18の、請求項10に係る訂正は、請求項10を削除するものであるから、発明特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項19の、請求項11に係る訂正は、引用する請求項の記載を請求項6のみに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項20ないし26の、明細書の段落【0023】、【0025】、【0027】ないし【0029】、【0031】及び【0033】に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正前の請求項6ないし11は、請求項7ないし11が、訂正の請求の対象である請求項6の記載を引用する関係にあり、訂正事項20ないし26は、請求項6ないし11に関連するものであるから、訂正事項14ないし26による訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
本件訂正の請求における訂正事項14ないし26による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-11〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、
燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と、
前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサへ伝える圧縮動力生成工程と、
前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、
前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程と、を含み、
前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、
前記流量調整工程は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む、廃棄物処理設備の操炉方法。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する再予熱工程を含み、
前記制御工程は、前記流量調整工程による燃焼用空気の温度変動を、前記再予熱工程での熱交換量を調整することにより補償する請求項1記載の廃棄物処理設備の操炉方法。
【請求項6】
汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、
前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンど、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、
前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タ-ビンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構と、
を備え、
前記制御機構は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含み、
前記流量調整機構は、前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出口ポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている、廃棄物処理設備。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】
前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する第2熱交換器を備え、
前記制御部は、前記流量調整機構による燃焼用空気の温度変動を、前記第2熱交換器での熱交換量を調整することにより補償する請求項6記載の廃棄物処理設備。」

第4 当審の判断
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし11に係る特許に対して、当審が令和2年11月24日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、以下、訂正前の請求項1ないし11に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明11」といい、訂正前の請求項1ないし11に係る特許を「本件発明1に係る特許」ないし「本件発明11に係る特許」という。
また、異議申立人が申し立てた特許異議の申立理由は全て通知した。

(1)取消理由1
本件発明1ないし11は、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:特開2015-145733号公報
甲第2号証:特開昭62-195492号公報
甲第3号証:特開2013-79586号公報
甲第4号証:特開2011-137576号公報
甲第5号証:特開2005-9371号公報
甲第6号証:特開2005-28251号公報
甲第7号証:特開昭57-102525号公報
甲第8号証:特開昭63-183313号公報
甲第9号証:特開2015-227747号公報
甲第10号証:特開2006-2945号公報
甲第11号証:特開平7-91635号公報

(2)取消理由2
本件発明1ないし11は明確でない。
よって、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(3)取消理由3
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1ないし11を当業者が実施できるように記載されていない。
よって、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(4)取消理由4
本件発明1ないし11は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の範囲を超えて特許を請求するものである。
よって、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

2 当審の判断
(1)取消理由1について
ア 引用文献
(ア)甲第1号証:特開2015-145733号公報
甲第1号証には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付した。

a 「【0001】
本発明は、廃棄物処理設備に関し、特には、過給機を備える廃棄物処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物処理の分野においては、空気などの酸素含有気体を供給して廃棄物を焼却する際に要する電力の削減および低コスト化が求められている。そこで、過給機を使用し、廃棄物を焼却した際に生じる排ガスから回収した熱を利用して廃棄物の焼却に必要な空気を供給することにより、焼却炉への空気供給用のブロア等を不要として電力の削減および低コスト化を達成する技術が提案されている。
【0003】
具体的には、過給機を使用した廃棄物処理設備としては、図5に示すような、廃棄物を焼却する焼却炉210と、回転軸223を介して接続されたコンプレッサー221およびタービン222を有する過給機220と、焼却炉210から排出される排ガスと過給機220のコンプレッサー221から供給される空気との間で熱交換する熱交換器230とを備える廃棄物処理設備200が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来の廃棄物処理設備200では、定常運転時に、コンプレッサー221から熱交換器230を介して供給される空気によりタービン222が回転させられると共にタービン222を回転させた後の空気が焼却炉210に送られ、更にタービン222の回転によってコンプレッサー221が駆動されて熱交換器230に供給する空気を送風するので、ブロア等を不要として電力の削減および低コスト化を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-170703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常、焼却炉で焼却処理される廃棄物の量および性状は経時変化するため、廃棄物処理設備では、廃棄物の焼却時に供給すべき酸素含有気体としての空気の量も経時変化する。しかしながら、上記従来の過給機を用いた廃棄物処理設備では、コンプレッサーから吸引されて焼却炉に供給される空気の量は、コンプレッサーの駆動に用いられる回転軸およびタービンの回転数に依存する。そして、過給機の回転軸およびタービンの回転数は、慣性力などの影響を大きく受けるため、廃棄物の量および性状が経時変化した場合であっても、急激には変化しない。それゆえ、従来の過給機を用いた廃棄物処理設備には、例えば廃棄物の量や性状に変動が生じた場合に、回転軸およびタービンの回転数、並びに、コンプレッサーから吸引される空気の量が当該変動に応じて適時に変化せず、焼却炉に送られる空気の量が不足したり、過剰になったりする虞があった。特に、焼却炉に投入される廃棄物に対して供給される空気の量が不足する場合には、不安定な燃焼状態となり、可燃ガスや有害ガスの発生等の不所望な事態をもたらすという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、過給機を用いた廃棄物処理設備であって、焼却炉で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に応じて、焼却炉に供給すべき酸素含有気体の量を適切に制御することができる廃棄物処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却する焼却炉と、回転軸を介して接続されたコンプレッサーおよびタービンを有する過給機と、前記焼却炉から排出される排ガスと前記過給機から供給される酸素含有気体との間で熱交換する熱交換器とを備え、前記コンプレッサーは、前記回転軸を介して伝達される動力を利用して吸引した酸素含有気体を前記熱交換器に供給可能に構成され、前記タービンは、前記熱交換器を通った前記酸素含有気体のエネルギーを利用して前記回転軸を回転させると共にエネルギーを利用した後の酸素含有気体を前記焼却炉に供給可能に構成された、廃棄物処理設備であって、前記焼却炉での廃棄物の焼却に必要な前記酸素含有気体量の過不足を検出する検出機構と、前記検出機構の検出結果に基づき、前記過不足が解消されるように前記回転軸の回転数を制御して前記焼却炉に供給される前記酸素含有気体量を補正する制御機構と、を更に備えることを特徴とする。
このように、焼却炉での廃棄物の焼却に必要な酸素含有気体量の過不足を検出する検出機構と、該検出機構の検出結果に基づいて過給機の回転軸の回転数を過不足が解消されるように制御する制御機構とを設ければ、焼却炉で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に応じて、焼却炉に供給すべき酸素含有気体の量を適切に制御することが可能となる。
【0008】
また、本発明の廃棄物処理設備では、前記検出機構が、前記焼却炉で発生する排ガスの温度を測定する温度センサと、前記排ガスの温度に基づき前記酸素含有気体量の過不足を判断する過不足判断部とを備えるのが好ましい。前記焼却炉で発生する排ガスの温度は、温度センサにより容易に測定することができるからである。また、前記焼却炉で発生する排ガスの温度は、焼却炉で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に対する追随性が高いので、前記検出機構が、前記焼却炉で発生する排ガスの温度を測定する温度センサと、前記焼却炉で発生する排ガスの温度に基づき前記酸素含有気体量の過不足を判断する過不足判断部を備えれば、焼却炉で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に対する迅速な応答性をもって酸素含有気体量の過不足が解消されるように前記酸素含有気体量を補正することができ、焼却炉に供給すべき酸素含有気体の量をよりタイムリーに制御することが可能となるからである。」

b 「【0012】
さらに、本発明の廃棄物処理設備では、前記検出機構が、前記焼却炉へ投入される廃棄物の量および含水率の少なくとも一方を測定するセンサと、前記量および含水率の少なくとも一方に基づき前記酸素含有気体量の過不足を判断する過不足判断部とを備えるのも好ましい。前記焼却炉への廃棄物の投入量および廃棄物の含水率は、容易に測定することができるからである。また、前記焼却炉への廃棄物の投入量および廃棄物の含水率は、焼却炉で焼却処理される廃棄物の燃焼状態に大きな影響を与えるパラメータでもあるので、前記検出機構が、前記焼却炉への廃棄物の投入量および廃棄物の含水率の少なくとも一方を測定するセンサと、前記投入量および含水率の少なくとも一方に基づき前記酸素含有気体量の過不足を判断する過不足判断部とを備えれば、焼却炉で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に対するより迅速な応答性をもって酸素含有気体量の過不足が解消されるように前記酸素含有気体量を補正することができ、焼却炉に供給すべき酸素含有気体の量をよりタイムリーに制御することが可能となるからである。」

c 「【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
本発明の廃棄物処理設備は、例えば流動床式の焼却炉を用いて、脱水汚泥などの廃棄物を焼却処理する設備である。なお、本発明の廃棄物処理設備で焼却処理する廃棄物は、脱水汚泥に限定されるものではない。」

d 「【0017】
(第1実施形態)
<廃棄物処理設備の構成>
ここで、図1に、本発明の廃棄物処理設備の一例の実施形態の概略構成を示す。図1に示す廃棄物処理設備100は、廃棄物移送ライン1を介して投入される廃棄物を焼却する流動床式の焼却炉10と、回転軸23を介して接続されたコンプレッサー21およびタービン22を有して焼却炉10に酸素含有気体としての空気を供給する過給機20と、焼却炉10から排出される排ガスと過給機20のコンプレッサー21を介して吸引された空気との間で熱交換する熱交換器30とを備えている。また、廃棄物処理設備100は、熱交換器30を通過した排ガスから焼却灰などの固形分を分離して除去する気固分離装置としての集塵機50と、集塵機50を通過した排ガスを洗浄して外部に放出する排ガス処理装置としてのスクラバー60と、スクラバー60で洗浄された排ガスの一部を誘引ガスとして誘引することにより焼却炉10からスクラバー60側へと排ガスを導く誘引装置としての誘引ファン70とを備えている。
なお、過給機20のコンプレッサー21は、回転軸23を介して伝達される動力を利用して吸引した空気を熱交換器30に供給可能に構成されている。また、過給機20のタービン22は、熱交換器30を通った空気のエネルギーを利用して回転軸23を回転させると共にエネルギーを利用した後の空気を焼却炉10に供給可能に構成されている。」

e 「【0022】
<廃棄物処理設備の動作>
ここで、上述した廃棄物処理設備100では、熱交換器30において、焼却炉10から排出された高温の排ガスと、コンプレッサー21を介して吸引した空気との間で熱交換が行われ、焼却灰などを除去する前の排ガスから廃熱が有効に回収される。
また、集塵機50において、廃熱が回収されて温度が低下した排ガスから焼却灰などが除去された後、更に、スクラバー60において、排ガス中に含まれているSO_(X)などの有害成分が除去されて、清浄な排ガスがスクラバー60の煙突部61から排出される。なお、スクラバー60で処理された排ガスの一部は、誘引ファン70に誘引された後、返送ライン85を介してスクラバー60の煙突部61へと返送されて外部に放出される。
【0023】
また、この廃棄物処理設備100では、過給機20を利用して空気を焼却炉10へと供給する際に、熱交換器30における熱交換と、任意に過熱器40における加熱とにより加熱された空気のエネルギーを利用してタービン22および回転軸23を回転させ、当該回転軸23の回転を利用してコンプレッサー21および発電機24を駆動する。従って、廃棄物処理設備100の運転中に空気供給用のエネルギー(電力など)を常時供給しなくても、排ガスの廃熱を利用し、コンプレッサー21を駆動して空気を焼却炉10へと供給することができる。また、発電機24を駆動し、排ガスの廃熱を電力として回収することもできる。
なお、廃棄物処理設備100の起動時など、回転軸23の回転によりコンプレッサー21を十分に駆動することができない場合におけるタービン22への空気の供給は、任意の手段を用いて行うことができる。具体的には、空気の供給は、図示しない起動用ブロアを用いて行ってもよい。また、空気の供給は、インバーター25などを利用しつつ外部から電力を供給して回転軸23を回転させ、コンプレッサー21を駆動させることにより行ってもよい。更に、空気の供給は、過熱器40に補助燃料を供給し、補助燃料を燃焼させることによって行ってもよい。
【0024】
更に、廃棄物処理設備100では、コンプレッサー21を介して吸引した空気の量が焼却炉10における廃棄物の焼却に必要な空気量以上の場合に、タービン22を回転させた後の空気のうち過剰分の空気がスクラバー60の煙突部61に供給されて、白煙の発生防止に使用される。具体的には、廃棄物処理設備100では、過剰分の空気が保有している熱エネルギーを熱源として有効に利用することにより、スクラバー60を通過した排ガス中に含まれている水蒸気の凝結による白煙の発生を、低消費電力および低コストで防止する。」

f 「【0025】
<廃棄物処理設備の制御>
ここで、通常、焼却炉10で焼却処理される廃棄物の量および性状は、経時変化する。そのため、廃棄物の焼却時に供給すべき空気量も、かかる廃棄物の量および性状の経時変化に伴って変化する。従って、廃棄物処理設備100では、焼却炉10で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に応じて、焼却炉10に供給すべき空気の量を適切に制御する必要がある。しかしここで、廃棄物処理設備100では、回転軸23の回転を利用してコンプレッサー21を駆動するため、コンプレッサー21で吸引する空気の量は、回転軸23およびタービン22の回転数の影響を大きく受ける。一方、焼却炉10で焼却処理される廃棄物の量および性状などが変化して排ガス温度や必要空気流量が変動した場合であっても、慣性力などの影響を受け、タービン22および回転軸23の回転数は急激には変化しない。そのため、流量の調整を実施しない場合には、焼却炉10に送る空気の量が不足したり、過剰になったりする虞がある。そこで、本実施形態に係る廃棄物処理設備100では、温度センサ81A、入力装置91、判断装置92及び制御装置93を使用し、インバーター25を介して回転軸23の回転数を制御することにより、焼却炉10に送る空気の量を適切に制御する。
以下、焼却炉10に供給すべき空気の量を適切に制御する方法について、特に温度センサ81A、入力装置91、判断装置92及び制御装置93の関係性に着目して、具体的に説明する。
【0026】
はじめに、入力装置91を介して排ガス温度の設定値を判断装置92に入力する。ここで、前記排ガス温度の設定値は、例えば、燃焼炉10における廃棄物が不完全燃焼を起こさない温度の下限値或いは該下限値に安全率をかけた値であり、実験的または理論的に求めることができる。次に、廃棄物処理設備100の運転中に、判断装置92は、温度センサ81Aで測定した排ガス温度の測定値と、入力装置91を介して入力された排ガス温度の設定値とに基づいて、焼却炉10への空気の供給量が過剰か不足かを判断する。そして、判断装置92は、その判断結果の信号を制御装置93に送る。ここで、前記判断装置92においては、温度センサ81Aで測定した排ガス温度が入力装置91を介して入力した設定値よりも高い場合には、空気の供給量が不足していると判断し、また、温度センサ81Aで測定した温度が入力装置91を介して入力した設定値よりも低い場合には、空気の供給量が過剰であるとの判断がなされる。そして、前記判断結果の信号を受けた制御装置93は、過給機20のインバーター25を介して回転軸23の回転数を制御し、空気量の過不足が解消されるようにする。ここで、前記制御装置93は、判断装置92により空気の供給量が過剰であると判断された場合には、インバーター25に対し、回転軸23の回転数を下げるように指示を与え、コンプレッサー21からの吸引空気量を減少させることにより、空気の供給量を設定値まで減少させる。一方、前記制御装置93は、判断装置92により空気の供給量が不足していると判断された場合には、インバーター25に対し、回転軸23の回転数を上げるように指示を与え、コンプレッサー21からの吸引空気量を増加させることにより、空気の供給量を設定値まで増加させる。このようにして、廃棄物処理設備100では、温度センサ81A、入力装置91および判断装置92が、「焼却炉での廃棄物の焼却に必要な酸素含有気体量の過不足を検出する検出機構」として機能し、制御装置93およびインバーター25が、「酸素含有気体量の過不足が解消されるように焼却炉10に供給される酸素含有気体量を補正する制御機構」として機能する。
【0027】
かかる方法によれば、焼却炉10で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に応じて回転軸23の回転数を変更させることで、コンプレッサー21から吸引される空気の量を制御し、焼却炉10に供給すべき空気の量をタイムリーに制御することができる。特に、上記実施形態において測定される排ガスの温度は、熱電対や測温抵抗体等の温度センサにより容易に測定することができる上、焼却炉で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に対する追随性が高い(即ち、焼却炉内での燃焼状態が反映され易い因子である)ことから、焼却炉に供給される空気の量を適時に補正するために用いる指標として好適である。この場合、排ガスの温度を測定するための温度センサ81Aは、焼却炉で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に対する迅速な応答を達成するため、可能な限り焼却炉10に近接した位置に設けられるのが好ましく、排ガスが排出される焼却炉10の頭頂部に設けられるのがより好ましい。
なお、上記実施形態では、1つの設定値を判断装置92に入力して制御を行ったが、本発明の廃棄物処理設備では、一定の幅を有する温度許容範囲の上限値および下限値を判断装置92に入力し、温度センサ81Aで測定した温度が温度許容範囲の下限値よりも低い場合には空気の供給量が過剰であると判断して回転軸23の回転数を下げ、温度センサ81Aで測定した温度が温度許容範囲の上限値よりも高い場合には空気の供給量が不足していると判断して回転軸23の回転数を増加させ、温度センサ81Aで測定した温度が温度許容範囲内の場合にはインバーター25を介した回転軸23の制御を行わないようにしてもよい。
【0028】
ここで、焼却炉10が流動床式焼却炉である場合には、焼却炉10の排ガスの温度を測定する温度センサ81Aを設ける代わりに、図2に示す通り、焼却炉10における流動媒体の温度を測定する温度センサ10Aを設け、温度センサ81Aで測定した排ガス温度の代わりに温度センサ10Aで測定した流動媒体の温度を用いて空気の量を適切に制御してもよい。前記流動媒体の温度は、熱電対や測温抵抗体等の温度センサにより容易に測定することができる上、焼却炉10における燃焼状態を直接的に指し示すパラメータでもあるので、焼却炉に供給される空気の量を適時に補正するために用いる指標として好適である。なお、流動媒体の温度を用いた制御は、排ガス温度の代わりに流動媒体の温度を用いる以外は、前記第1実施形態と同様にして行うことができる。」

g 上記dの段落【0017】において「なお、過給機20のコンプレッサー21は、回転軸23を介して伝達される動力を利用して吸引した空気を熱交換器30に供給可能に構成されている。」と記載されている。ここで、コンプレッサー21は圧縮機であるから、過給機20のコンプレッサー21で空気が圧縮されることは技術常識である。

h 上記fの段落【0025】の「通常、焼却炉10で焼却処理される廃棄物の量および性状は、経時変化する。そのため、廃棄物の焼却時に供給すべき空気量も、かかる廃棄物の量および性状の経時変化に伴って変化する。従って、廃棄物処理設備100では、焼却炉10で焼却処理される廃棄物の量および性状の経時変化に応じて、焼却炉10に供給すべき空気の量を適切に制御する必要がある。・・・本実施形態に係る廃棄物処理設備100では、温度センサ81A、入力装置91、判断装置92及び制御装置93を使用し、インバーター25を介して回転軸23の回転数を制御することにより、焼却炉10に送る空気の量を適切に制御する。」という記載から、甲第1号証には、廃棄物の量および性状の経時変化に応じて、焼却炉10に供給すべき空気の量を適切に制御することが記載されているといえる。

i 上記fの段落【0026】の「廃棄物処理設備100の運転中に、判断装置92は、温度センサ81Aで測定した排ガス温度の測定値と、入力装置91を介して入力された排ガス温度の設定値とに基づいて、焼却炉10への空気の供給量が過剰か不足かを判断する。そして、判断装置92は、その判断結果の信号を制御装置93に送る。ここで、前記判断装置92においては、温度センサ81Aで測定した排ガス温度が入力装置91を介して入力した設定値よりも高い場合には、空気の供給量が不足していると判断し、また、温度センサ81Aで測定した温度が入力装置91を介して入力した設定値よりも低い場合には、空気の供給量が過剰であるとの判断がなされる。」という記載から、甲第1号証には、排ガス温度が設定温度になるように制御することによって、焼却炉10への空気の供給量を適量に制御することも記載されているといえる。

j 上記fの段落【0026】の「このようにして、廃棄物処理設備100では、温度センサ81A、入力装置91および判断装置92が、「焼却炉での廃棄物の焼却に必要な酸素含有気体量の過不足を検出する検出機構」として機能し、制御装置93およびインバーター25が、「酸素含有気体量の過不足が解消されるように焼却炉10に供給される酸素含有気体量を補正する制御機構」として機能する。」という記載から、温度センサ81A、入力装置91、判断装置92、制御装置93及びインバーター25が、制御機構を構成していることが分かる。

上記aないしjの記載及び図1ないし4の図示内容からみて、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。

〔甲1発明1〕
「脱水汚泥などの廃棄物を焼却処理する焼却炉10を備えている廃棄物処理設備の制御方法であって、
空気を過給機20のコンプレッサー21で圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮行程で圧縮された空気を、前記焼却炉10から排出される排ガスと熱交換する熱交換工程と、
前記熱交換工程で加熱された空気で前記過給機20のタービン22を回転させて前記コンプレッサー21を駆動する駆動工程と、
前記駆動工程で前記タービン22から供給された空気を前記焼却炉10に供給する空気供給工程と、
前記焼却炉10で焼却処理される前記廃棄物の量及び性状に基づいて、前記空気の供給量及び温度を、設定流量及び設定温度に制御する制御工程と、
を含む廃棄物処理設備の制御方法。」

〔甲1発明2〕
「脱水汚泥などの廃棄物を焼却処理する焼却炉10を備えている廃棄物処理設備であって、
前記焼却炉10から排出される排ガスと空気との間で熱交換する熱交換器30と、
前記熱交換器30で熱交換された空気により回転するタービン22と、前記タービン22の回転により前記熱交換器30に空気を供給するコンプレッサー21とを含む過給機20と、
前記焼却炉10で焼却処理される前記廃棄物の量および性状に基づいて、前記空気の供給量及び温度を、設定流量及び設定温度に制御する制御機構と、
を備えている廃棄物処理設備。」

また、上記aないしjの記載及び図1ないし4の図示内容からみて、甲第1号証には、以下の事項が記載されていると認められる。

〔甲1記載事項〕
「焼却炉10で焼却処理される廃棄物の量及び性状に基づいて、空気の供給量及び温度を、設定流量及び設定温度に制御すること。」

(イ)甲第2号証:特開昭62-195492号公報
甲第2号証の1ページ右下欄8行ないし2ページ左上欄6行、2ページ左下欄15行ないし18行及び3ページ左下欄下から9行目ないし右下欄下から9行目並びに図5の記載からみて、甲第2号証には次の事項(以下、「甲2記載事項1」及び「甲2記載事項2」という。)が記載されていると認められる。

〔甲2記載事項1〕
「ターボ圧縮機において、サージングなどを生じる不安定作動域に入らないように監視制御すること。」

〔甲2記載事項2〕
「ターボ圧縮機において、放風弁制御装置15により放風弁10を開放し、サージング領域への突入を阻止すること。」

(ウ)甲第3号証:特開2013-79586号公報
甲第3号証の段落【0005】及び【0011】の記載からみて、甲第3号証には以下の事項(以下、「甲3記載事項1」及び「甲3記載事項2」という。)が記載されている。

〔甲3記載事項1〕
「圧縮機動作点がサージ防止ラインを超えないように圧縮機を制御すること。」

〔甲3記載事項2〕
「サージ防止ラインを超えた場合は速やかに放風制御又はバイパス制御して、圧縮機がサージング状態に陥らないようにすること。」

(エ)甲第4号証:特開2011-137576号公報
甲第4号証の特許請求の範囲の請求項1、段落【0032】、【0033】及び【0040】及び【0041】並びに図4の記載からみて、甲第4号証には次の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。

〔甲4記載事項〕
「加圧流動焼却炉1の運転時に、排ガスバイパス弁31及び/又は加圧空気弁28を制御し、過給機2のコンプレッサ2bにサージングが発生することを防止すること。」

(オ)甲第5号証:特開2005-9371号公報
甲第5号証の特許請求の範囲の請求項1及び段落【0043】並びに図3の記載からみて、甲第5号証には次の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されている。

〔甲5記載事項〕
「ガスタービンエンジン1のタービン11の流路を流れる流体の流量を制御することにより、サージングが発生することを防止すること。」

(カ)甲第6号証:特開2005-28251号公報
甲第6号証の特許請求の範囲の請求項1、段落【0034】及び【0044】の記載からみて、甲第6号証には次の事項(以下、「甲6記載事項」という。)が記載されている。

〔甲6記載事項〕
「汚泥を燃料として燃焼させる汚泥処理システムにおいて、燃焼ガスバルブ10の開口度を制御することにより、タービン5aに流入する燃焼ガスX4の流量を減少させ、サージ回避をすること。」

(キ)甲第7号証:特開昭57-102525号公報
甲第7号証の特許請求の範囲、第4ページ右上欄7行ないし17行の記載及び図2ないし4の図示内容からみて、甲第7号証には次の事項(以下、「甲7記載事項1」ないし「甲7記載事項3」という。)が記載されている。

〔甲7記載事項1〕
「タービン4の入口ポートと圧縮機3の出口ポートの間に接続されたバイパス送風路に設けられた空気バイパス弁11bを開放して圧縮機吐出空気を熱交換器9を介さずに直接タービン4に送出し、タービン入口温度を低下させて、タービン4の回転数を低下させること。」

〔甲7記載事項2〕
「タービン4の入口ポートと圧縮機3の出口ポートの間に接続されたバイパス送風路に空気バイパス弁11bが設けられ、該空気バイパス弁11bが、タービン4及び圧縮機3の回転軸に設けられた回転数計10に接続されており、空気バイパス弁11bを制御することによりタービン回転数の制御を行うこと。」

〔甲7記載事項3〕
「タービン4の排気A4は高温用熱交換器91でさらに加熱されて工業炉6に供給されること。」

(ク)甲第8号証:特開昭63-183313号公報
甲第8号証の2ページ左上欄1行ないし左下欄4行、2ページ右下欄13行ないし3ページ左上欄2行、3ページ右上欄14行ないし左下欄3行並びに第1図ないし第4図の記載からみて、甲第8号証には次の事項(以下、「甲8記載事項1」及び「甲8記載事項2」という。)が記載されている。

〔甲8記載事項1〕(2ページ右下欄13行ないし3ページ左上欄2行、3ページ右上欄14行ないし左下欄3行及び第1、2図を参照。)
「加熱給気装置において、空気をコンプレッサー11で昇圧した後、熱交換器5で加熱し、過給機10のタービン14を駆動すること。」

〔甲8記載事項2〕(2ページ左上欄1行ないし左下欄4行及び第4図を参照。)
「加熱給気装置において、補助ブロアkからの給気を過給機mのコンプレッサーnに供給し、コンプレッサーnにサージングが発生する場合には、バイパス流路wのバイパス弁vを調整してタービンrへの流量を調整すること。」

(ケ)甲第9号証:特開2015-227747号公報
甲第9号証の段落【0002】、【0016】ないし【0026】、【0032】、【0037】、【0040】ないし【0042】及び【0046】並びに図1、3及び4の記載からみて、甲第9号証には次の発明(以下、「甲9発明1」及び「甲9発明2」という。)が記載されている。

〔甲9発明1〕
「汚泥などの廃棄物を焼却処理する焼却炉11を備えている廃棄物処理設備1の制御方法であって、
燃焼空気を過給機12のコンプレッサ部12aで圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で圧縮された燃焼空気を、焼却炉11から排出される燃焼排ガスの熱量により加熱する予熱工程と、
前記予熱工程で加熱された燃焼空気で前記過給機12のタービン部12bを回転させて動力を前記コンプレッサ部12aへ伝える過給機駆動工程と、
前記過給機駆動工程で前記タービン部12bから供給された燃焼空気を焼却炉11に供給する燃焼空気供給工程と、
を含む廃棄物処理設備1の制御方法。」

〔甲9発明2〕
「汚泥などの廃棄物を焼却処理する焼却炉11を備えている廃棄物処理設備1であって、
焼却炉11から排出される燃焼排ガスの熱量により燃焼空気を加熱する空気予熱器14と、
前記空気予熱器14で加熱された燃焼空気により回転するタービン部12bと、
前記タービン部12bの回転により前記空気予熱器14に燃焼空気を供給するコンプレッサ部12aとを含む過給機12と、
を備える廃棄物処理設備1。」

(コ)甲第10号証:特開2006-2945号公報
甲第10号証の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3、段落【0041】及び【0042】の記載からみて、甲第10号証には次の事項(以下、「甲10記載事項」という。)が記載されている。

〔甲10記載事項〕
「汚泥焼却装置16において、脱水ケーキの発熱量に基づいて、脱水ケーキの投入量及び流動空気の供給量をフィードフォワード制御すること。」

(サ)甲第11号証:特開平7-91635号公報
甲第11号証の特許請求の範囲の請求項1及び段落【0006】の記載からみて、甲第11号証には次の事項(以下、「甲11記載事項」という。)が記載されている。

〔甲11記載事項〕
「都市ごみ及び産業廃棄物等の原料を流動床焼却炉において燃焼するに際し、炉内への原料投入量の変動を検出し、該検出量により安定な燃焼を継続させるための給じん機回転数、押込空気量及び2次空気量の制御を行うこと。」

イ 対比、判断
イ-1 甲1発明1又は甲1発明2を基本引例とする場合の対比、判断
(ア)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲1発明1とを対比すると、後者の「脱水汚泥など」は、その技術的意義からみて、前者の「汚泥等」に相当し、以下同様に、「焼却炉10」は「熱処理炉」に、「制御方法」は「操炉方法」に、「空気」は「燃焼用空気」に、「過給機20」は「過給機」に、「コンプレッサー21」は「コンプレッサ」に、「加熱」は「予熱」に、それぞれ相当する。
また、後者の「前記焼却炉10から排出される排ガスと熱交換する熱交換工程」及び「熱交換工程」は、その技術的意義からみて、前者の「前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程」及び「予熱工程」に相当する。
また、後者の「前記過給機20のタービン22を回転させて前記コンプレッサー21を駆動する駆動工程」は、その技術的意義からみて、前者の「前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサー21へ伝える圧縮動力生成工程」に相当し、同様に「駆動工程」は「圧縮動力生成工程」に相当する。
また、後者の「前記タービン22から供給された空気を前記焼却炉10に供給する空気供給工程」は、その技術的意義からみて、前者の「前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程」に相当する。
また、後者の「廃棄物の量及び性状」は、その技術的意義からみて、前者の「廃棄物の性状または処理量」に相当する。
また、後者の「前記空気の供給量及び温度を設定流量及び設定温度に制御する制御工程」と、前者の「前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程」とは、「前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程」という限りにおいて一致する。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明1とは、以下の〔一致点〕で一致し、〔相違点〕で相違する。

〔一致点〕
「汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、
燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と、
前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサへ伝える圧縮動力生成工程と、
前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、
前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程と、
を含む廃棄物処理設備の操炉方法。」

〔相違点〕
「前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程」について、本件訂正発明1は「前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で」調整し、「前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、前記流量調整工程は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む」のに対し、甲1発明1はそのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

上記相違点1について検討する。
圧縮機を用いる技術分野において、運転ポイントがサージ領域に入らないように調整することは、本件特許の出願前の周知技術(以下「周知技術1」という。例えば、甲2記載事項1、甲3記載事項1、甲4記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項を参照。)である。
しかしながら、甲第1号証ないし甲第6号証には、「前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、前記流量調整工程は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む」ようにすることは、甲1記載事項、甲2記載事項1及び2、甲3記載事項1及び2、甲4記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項を参照しても、記載も示唆もされていない。
また、甲第7号証ないし甲第11号証についても、甲7記載事項1ないし3、甲8記載事項1及び2、甲9記載事項1及び2、甲10記載事項及び甲11記載事項を参照しても、上記相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。
してみれば、本件訂正発明1は、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定したものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明6について
本件訂正発明6と甲1発明2とを対比すると、後者の「脱水汚泥など」は、その技術的意義からみて、前者の「汚泥等」に相当し、以下同様に、「焼却炉10」は「熱処理炉」に、「熱交換する」は「予熱する」に、「熱交換器30」は「第1熱交換器」に、「空気」は「燃焼用空気」に、「タービン22」は「タービン」に、「コンプレッサー21」は「コンプレッサ」に、「過給機20」は「過給機」に、「焼却処理」は「焼却処理」又は「熱処理」に、それぞれ相当する。
また、後者の「焼却炉10から排出される排ガスと空気との間で熱交換する」ことは、その技術的意義からみて、前者の「熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する」ことに相当する。
また、後者の「焼却炉10で焼却処理される前記廃棄物の量および性状に基づいて、前記空気の供給量及び温度を設定流量及び設定温度に制御する」ことと、前者の「熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する」こととは、「熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する」という限りにおいて一致する。

そうすると、本件訂正発明6と甲1発明2とは、以下の〔一致点〕で一致し、〔相違点〕で相違する。

〔一致点〕
「汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、
前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、
前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構と、
を備えている廃棄物処理設備。」

〔相違点〕
「前記タ-ビンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構」について、本件訂正発明6は「前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で」調整し、「前記制御機構は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含み、前記流量調整機構は、前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出口ポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている」ものであるのに対し、本件訂正発明6は、そのように特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

上記相違点2について検討する。
圧縮機を用いる技術分野において、運転ポイントがサージ領域に入らないように調整することは、上記のように、本件特許の出願前の周知技術(周知技術1)である。
しかしながら、甲第1号証ないし甲第6号証には、「前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、前記流量調整工程は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む」ようにすることは、甲1記載事項、甲2記載事項1及び2、甲3記載事項1及び2、甲4記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項を参照しても記載も示唆もされていない。
また、甲第7号証ないし甲第11号証についても、甲7記載事項1ないし3、甲8記載事項1及び2、甲9記載事項1及び2、甲10記載事項及び甲11記載事項を参照しても、上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項が記載も示唆もされていない。
してみれば、本件訂正発明6は、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)本件訂正発明11について
本件訂正発明11は、本件訂正発明6の発明特定事項を全て備え、さらに限定したものであるから、本件訂正発明6と同様に、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ-2 甲9発明1又は甲9発明2を基本引例とする場合の対比、判断
(ア)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲9発明1とを対比すると、後者の「汚泥など」は、その技術的意義からみて、前者の「汚泥等」に相当し、以下同様に、「焼却炉11」は「熱処理炉」に、「廃棄物処理設備1」は「廃棄物処理設備」に、「制御方法」は「操炉方法」に、「燃焼空気」は「燃焼用空気」に、「過給機12」は「過給機」に、「コンプレッサ部12a」は「コンプレッサ」に、「加熱」は「予熱」に、「タービン部12b」は「タービン」に、「過給機駆動工程」は「圧縮動力生成工程」に、それぞれ相当する。
また、後者の「焼却炉11から排出される燃焼排ガスの熱量」は、その技術的意義からみて、前者の「前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲9発明1とは、以下の〔一致点〕で一致し、〔相違点〕で相違する。

〔一致点〕
「汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、
燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と、
前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサへ伝える圧縮動力生成工程と、
前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、
を含む廃棄物処理設備の操炉方法。」

〔相違点〕
本件訂正発明1は「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程」を含み、「前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、前記流量調整工程は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む」ものであるのに対し、甲9発明1はそのような制御工程を含んでいない点(以下、「相違点3」という。)。

上記相違点3について検討する。
甲第9号証の段落【0023】には、「過給機12は、供給された空気の一部を、焼却炉11における廃棄物の焼却に必要な燃焼空気として、焼却炉11に供給する。」と記載され、過給機12により、焼却炉11における廃棄物の焼却に必要な燃焼空気が供給されることが示されている。また、廃棄物の量に応じて燃焼用空気を調整することは技術常識(甲1記載事項、甲10記載事項及び甲11記載事項を参照。)といえる。
また、甲第9号証の段落【0040】には、「その後、ステップST7に移行して、制御部15によって、補助送風機13からの空気の送出流量が、設定流量以上になるか否かの判定が行われる。そして、補助送風機13からの空気の送出流量が設定流量未満になっている間(ステップST7:No)、ステップST3?ST7を繰り返し実行する。なお、設定流量は、過給機12の断熱性能曲線(コンプレッサマップ)の作動領域内における流量範囲内からあらかじめ設定された流量である。」と記載され、過給機のコンプレッサ部12aに流入する空気の量を過給機12の断熱性能曲線(コンプレッサマップ)の作動領域内における流量範囲内とすることが示されている。
そして、圧縮機を用いる技術分野において、運転ポイントがサージ領域に入らないように調整することは、本件特許の出願前の周知技術(周知技術1)であるから、甲第9号証に記載された「断熱性能曲線(コンプレッサマップ)の作動領域」は、サージ領域に入らない領域であると理解できる。
しかしながら、甲9発明1において、上記技術常識及び周知技術を適用しても、「前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、前記流量調整工程は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む」ものとはならない。
すなわち、甲9発明1において、技術常識及び周知技術1を適用したとしても、上記相違点3に係る本件訂正発明1の発明特定事項とすることはできない。
また、甲第1号証ないし甲第11号証には、甲1発明1及び2、甲1記載事項、甲2記載事項1及び2、甲3記載事項1及び2、甲4記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項、甲7記載事項1ないし3、甲8記載事項1及び2、甲10記載事項並びに甲11記載事項を参照しても、上記相違点3に係る本件訂正発明1の発明特定事項が記載も示唆もされていない。
してみれば、本件訂正発明1は、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定したものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明6について
本件訂正発明6と甲9発明2とを対比すると、後者の「汚泥など」は、その技術的意義からみて、前者の「汚泥等」に相当し、以下同様に、「焼却炉11」は「熱処理炉」に、「廃棄物処理設備1」は「廃棄物処理設備」に、「燃焼空気」は「燃焼用空気」に、「空気予熱器14」は「第1熱交換器」に、「タービン部12b」は「タービン」に、「コンプレッサ部12a」は「コンプレッサ」に、「備える」は「備えている」に、それぞれ相当する。
また、後者の「焼却炉11から排出される燃焼排ガスの熱量」は、その技術的意義からみて、前者の「前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱」に相当する。
そうすると、本件訂正発明6と甲9発明2とは、以下の〔一致点〕で一致し、〔相違点〕で相違する。

〔一致点〕
「汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、
前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、
を備えている廃棄物処理設備。」

〔相違点〕
本件発明6は「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タ-ビンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構と、を備え、前記制御機構は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含み、前記流量調整機構は、前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出口ポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている」のに対し、甲9発明2はそのような制御機構を備えていない点(以下、「相違点4」という。)。

上記相違点4について検討する。
甲第9号証には、「過給機12は、供給された空気の一部を、焼却炉11における廃棄物の焼却に必要な燃焼空気として、焼却炉11に供給する。」(段落【0023】)と記載され、過給機12により、焼却炉11における廃棄物の焼却に必要な燃焼空気が供給されることが示されている。また、廃棄物の量に応じて燃焼用空気を調整することは技術常識(甲1記載事項、甲10記載事項及び甲11記載事項を参照。)といえる。
また、甲第9号証には、「なお、設定流量は、過給機12の断熱性能曲線(コンプレッサマップ)の作動領域内における流量範囲内からあらかじめ設定された流量である。」(段落【0040】)と記載され、過給機のコンプレッサ部12aに流入する空気の量が過給機12の断熱性能曲線(コンプレッサマップ)の作動領域内における流量範囲内とすることが読み取れる。
そして、圧縮機を用いる技術分野において、運転ポイントがサージ領域に入らないように調整することは、本件特許の出願前の周知技術(周知技術1)であるから、甲第9号証に記載された「断熱性能曲線(コンプレッサマップ)の作動領域」は、サージ領域に入らない領域であると理解できる。
しかしながら、甲9発明2において、上記技術常識及び周知技術を適用しても、「前記制御機構は、前記タービンの入ロポートと前記コンプレッサの出ロポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含み、前記流量調整機構は、前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出口ポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている」ものとはならない。
すなわち、甲9発明2において、技術常識及び周知技術1を適用したとしても、上記相違点4に係る本件訂正発明6の発明特定事項とすることはできない。
また、甲第1号証ないし甲第11号証には、甲1発明1及び2、甲1記載事項、甲2記載事項1及び2、甲3記載事項1及び2、甲4記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項、甲7記載事項1ないし3、甲8記載事項1及び2、甲10記載事項並びに甲11記載事項を参照しても、上記相違点4に係る本件訂正発明6の発明特定事項が、記載も示唆もされていない。
してみれば、本件訂正発明6は、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)本件発明11について
本件訂正発明11は、本件訂正発明6の発明特定事項を全て備え、さらに限定したものであるから、本件訂正発明6と同様に、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 結論
以上のように、本件訂正発明1、5、6及び11は、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)取消理由2について
本件発明1の「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御工程」との発明特定事項は、本件訂正請求により、「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程」と訂正された。
これにより、本件訂正発明1及び本件訂正発明5は明確になり、特許法第36条第6項第2号の取消理由は解消した。
また、本件発明6の「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御機構」との発明特定事項は、本件訂正請求により、「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構」と訂正された。
これにより、本件訂正発明6及び本件訂正発明11は明確になり、特許法第36条第6項第2号の取消理由は解消した。

(3)取消理由3について
本件発明1の「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御工程」との発明特定事項は、本件訂正請求により、「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程」と訂正された。
これにより、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び本件訂正発明5を当業者が実施できるものとなり、特許法第36条第4項第1号の取消理由は解消した。
また、本件発明6の「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御機構」との発明特定事項は、本件訂正請求により、「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構」と訂正された。
これにより、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明6及び本件訂正発明11を当業者が実施できるものとなり、特許法第36条第4項第1号の取消理由は解消した。

(4)取消理由4について
本件発明1の「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御工程」との発明特定事項は、本件訂正請求により、「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程」と訂正された。
これにより、本件訂正発明1及び本件訂正発明5は本件特許明細書の発明の詳細な説明の範囲を超えて特許を請求するものではなくなり、特許法第36条第6項第1号の取消理由は解消した。
また、本件発明6の「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御機構」との発明特定事項は、本件訂正請求により、「前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構」と訂正された。
これにより、本件訂正発明6及び本件訂正発明11は本件特許明細書の発明の詳細な説明の範囲を超えて特許を請求するものではなくなり、特許法第36条第6項第1号の取消理由は解消した。

第5 むすび
上記第4のとおりであるから、令和元年12月23日付け取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件訂正後の請求項1、5、6及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1、5、6及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項2ないし4及び7ないし10は、本件訂正請求により削除されたため、本件特許の請求項2ないし4及び7ないし10に係る特許に対して異議申立人がした特許異議の申立てについては、その対象となる請求項が存在しない。よって、本件特許の請求項2ないし4及び7ないし10についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
したがって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な汚水が微生物を用いた生物処理により浄化された後に河川等に放流され、或いは再利用されている。このような生物処理によって発生する大量の汚泥は脱水処理された後に最終処分場に埋め立てられ、または焼却処理若しくは溶融処理されている。
【0003】
特許文献1には、廃棄物焼却設備における流動焼却炉の排ガスとガスタービン発生装置におけるガスタービンの高熱の排気を熱源として相互に有効利用する複合設備が開示されている。
【0004】
当該複合設備は、流動焼却炉と白煙防止用熱交換器と排ガス・排煙処理設備及び圧縮機と燃焼器と再生器を有するガスタービン発電装置を備えており、流動焼却炉の排ガスを再生器に送って、ガスタービン用圧縮空気の熱源として使用した後、白煙防止用熱交換器に送入するように構成するとともに、ガスタービンの排気を流動焼却炉に燃焼用空気として送入するように構成されている。
【0005】
また、特許文献2には、常圧式の焼却炉及び加圧式の焼却炉に適用でき、燃焼用圧縮空気や白煙防止用圧縮空気を生成して予熱器に供給するブロアを必要としないエネルギー効率に優れた廃棄物処理設備が開示されている。
【0006】
当該廃棄物処理設備は、流動床式焼却炉と、流動床式焼却炉からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行う第1の予熱器と、第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第1の過給機と、前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させる第1の始動用空気供給装置とを、備えることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開2003-56363号公報
【特許文献2】 特許第4831309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過給機にはサージングと呼ばれる異常現象が発生する場合がある。サージングとは、圧縮機への流量を絞ったときに圧縮機が失速して流量や圧力が周期的に大きく変動し、圧縮機と配管からなる系を流れる気体全体が流れの方向に激しく振動する現象である。
【0009】
サージングが発生すると、圧縮機を含む系全体が振動して不安定状態に陥り圧縮機や配管系が破損する虞があるため、サージングを起こさない領域で運転する必要がある。そのため、上述の特許文献に記載された複合設備や廃棄物処理設備に用いられる過給機は、サージングを起こさない領域で運転可能な特性を備える必要がある。
【0010】
しかし、任意の特性を有する過給機を設計及び製作することが困難であり、いくつかある既存の機種から流動焼却炉等の熱処理炉を備えた設備に最も適合する特性の機種を選定して組み込む必要があった。そのため、設備を構築した後に温度や流量の設計値とのずれが生じると、サージングを起こさない領域で安定した状態で運転することが困難になる虞があった。
【0011】
また、汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備では、熱処理炉で処理される廃棄物の含水率や保有熱量等といった性状、また処理量によって燃焼用空気の供給量を変更する必要があり、そのような場合にサージングを起こさない領域で安定した状態で運転することが困難になる虞もあった。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、サージングを起こさない領域で安定した状態で過給機を運転することができる廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による廃棄物処理設備の操炉方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と、前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサへ伝える圧縮動力生成工程と、前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程と、を含み、前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、前記流量調整工程は、前記タービンの入口ポートと前記コンプレッサの出口ポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む点にある。
【0014】
熱処理炉で熱処理される廃棄物の性状または処理量に従って適切に熱処理するために、制御工程では熱処理炉で熱処理される廃棄物の性状または処理量に基づいて、タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度が目標流量及び/または目標温度に調整される。例えば、含水率が低く燃えやすい廃棄物を熱処理する低負荷運転や、定格処理量よりも少ない量の廃棄物を熱処理する部分負荷運転を行なう場合に燃焼用空気の流量を減少させ、或いは含水率が高く燃えにくい廃棄物を熱処理する高負荷運転を行なう場合に燃焼用空気の温度を上昇させる必要がある場合等には、当該制御工程で過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度が調整される。その結果、サージングを起こさない領域で安定した状態で過給機を運転することができるようになる。
【0015】
(削除)
【0016】
圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部が予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給されるバイパス送風工程が実行されると、タービンに入力されるエネルギーが低下してコンプレッサによる燃焼用空気の圧力比が低下する。その結果、過給機の運転ポイントがサージ領域に入ることなく燃焼用空気量を絞ることができる。このときコンプレッサから出力された燃焼用空気のうち流量調整工程によって調整された供給量の燃焼用空気が予熱工程へ供給され、その余の燃焼用空気がバイパス送風工程によって圧縮動力生成工程にバイパスされる。
【0017】
(削除)
【0018】
(削除)
【0019】
(削除)
【0020】
過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、バイパス風量調整工程によって予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量が調整され、予熱空気量調整工程によって予熱工程への燃焼用空気の供給量が調整され、何れか一方または双方が調整される。
【0021】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する再予熱工程を含み、前記制御工程は、前記流量調整工程による燃焼用空気の温度変動を、前記再予熱工程での熱交換量を調整することにより補償する点にある。
【0022】
流量調整工程によって過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように調整された結果、タービンから出力される燃焼用空気の温度が目標温度よりも低下した場合でも、再予熱工程での熱交換量を調整することによって、目標温度の燃焼用空気を熱処理炉に供給することができるようになる。
【0023】
本発明による廃棄物処理設備の第一の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構と、を備え、前記制御機構は、前記タービンの入口ポートと前記コンプレッサの出口ポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含み、前記流量調整機構は、前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出口ポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている点にある。
【0024】
熱処理炉で熱処理される廃棄物の性状または処理量に従って適切に熱処理するために制御機構が設けられる。当該制御機構では、熱処理炉で熱処理される廃棄物の性状または処理量に基づいて、タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度が目標流量及び/または目標温度に調整される。その結果、サージングを起こさない領域で安定した状態で過給機が運転されるようになる。
【0025】
(削除)
【0026】
制御機構はバイパス送風路と流量調整機構と制御部を備えている。制御部によって、過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように流量調整機構が調整されながら、タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度が目標流量及び/または目標温度に調整される。
【0027】
(削除)
【0028】
(削除)
【0029】
(削除)
【0030】
第1ダンパ機構の開度調整により燃焼用空気のバイパス流量が調整され、第2ダンパ機構の開度が調整されることにより第1熱交換器への燃焼用空気の供給量が調整される。
【0031】
(削除)
【0032】
第1ダンパ機構の開度調整により燃焼用空気のバイパス流量が調整され、押込み送風機による送風量により第1熱交換器への燃焼用空気の供給量が調整される。
【0033】
同第二の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第六の特徴構成に加えて、前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する第2熱交換器を備え、前記制御部は、前記流量調整機構による燃焼用空気の温度変動を、前記第2熱交換器での熱交換量を調整することにより補償する点にある。
【0034】
流量調整機構によって過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように調整された結果、タービンから出力される燃焼用空気の温度が目標温度よりも低下した場合でも、第2熱交換器での熱交換量を調整することによって、目標温度の燃焼用空気を熱処理炉に供給することができるようになる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明した通り、本発明によれば、サージングを起こさない領域で安定した状態で過給機を運転することができる廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備の説明図
【図2】コンプレッサマップの説明図
【図3】コンプレッサマップに基づいた廃棄物処理設備の操炉方法の説明図
【図4】別実施形態を示す廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備の説明図
【図5】別実施形態を示す廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備の説明図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明による廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備の操炉方法の実施形態を説明する。
【0038】
図1には、汚泥等の廃棄物を焼却処理する廃棄物処理設備100が示されている。廃棄物処理設備100は、被焼却物である汚泥が貯留された汚泥貯留槽1と、汚泥投入機構11と、熱処理炉の一例である流動床式焼却炉2と、排ガス処理設備等を備えている。
【0039】
流動床式焼却炉2は、空気供給機構3から供給される高温空気によって形成される流動床に汚泥投入機構11から供給される汚泥を投入して加熱し、ガス化された汚泥を流動床の上方空間に形成されるフリーボード部20で燃焼させる熱処理炉である。フリーボード部20の下方には立上げ時に炉内を加熱する昇温バーナ21が配置され、炉が昇温した後に汚泥の燃焼に必要な熱量を補う補助バーナ22が設けられている。
【0040】
流動床式焼却炉2の煙道10に沿って順に、排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器5、煤塵を捕集する集塵装置6、アルカリ剤を噴霧して排ガス中の酸性ガス成分を中和する排煙処理塔7等が配置されている。
【0041】
排煙処理塔7の下流側には煙道10の排ガスを誘引して炉内を負圧に維持する誘引送風機8が設けられ、誘引送風機8によって誘引された排ガスが各排ガス処理設備で浄化された後に煙突9から排気される。
【0042】
空気供給機構3は、押込み送風機30と、過給機40と、第1熱交換器5とを備えて構成されている。押込み送風機30により1?19kPaに予備圧縮された燃焼用空気が送風路31を介して過給機40を構成するコンプレッサ40cの給気口に供給され、コンプレッサ40cで0.1?0.3MPaに圧縮された空気が第1熱交換器5で予熱された後にタービン40tに供給され、タービン40tから排気された圧縮空気が流動床式焼却炉2の底部に形成された給気機構23に供給される。
【0043】
コンプレッサ40cで圧縮された空気は、第1熱交換器5で800?1000℃の排ガスと熱交換されて500?750℃に予熱された後にタービン40tに供給される。
【0044】
第1熱交換器5で予熱された圧縮空気がタービン40tに供給されることによってタービン40tが回転駆動され、さらに駆動軸40sでタービン40tと連結されたコンプレッサ40cが駆動されるようになる。タービン40tから排出された400?650℃,0.02?0.04MPaの圧縮空気は流動用空気つまり燃焼用空気として流動床式焼却炉2に供給されて流動床が形成される。尚、本明細書で説明する圧力はゲージ圧である。
【0045】
押込み送風機30により予備圧縮された燃焼用空気が過給機40のコンプレッサ40cに供給されるので、コンプレッサ40cのみならず押込み送風機30によっても圧縮された空気が、第1熱交換器5で予熱されるようになる。これにより、タービン40tの膨張仕事量が、コンプレッサ40cの圧縮仕事量以上になり、流動床式焼却炉2に流動床を形成する際の通気圧損より高い圧力で燃焼用空気を供給することができるようになる。
【0046】
流動床式焼却炉2の立上げ時には専ら押込み送風機30のみで流動床を形成する必要があるが、過給機40の通風抵抗は小さく、立ち上げにより昇温されるに伴い過給機40の稼働による動力コストの低減効果が得られ、押込み送風機30に要する消費電力を大幅に低減させることができる。
【0047】
タービン40tの入口ポートとコンプレッサ40cの出口ポートとの間に第1熱交換器5をバイパスするバイパス送風路51が設けられ、バイパス送風路51に第1ダンパ機構51Dが設けられている。また、コンプレッサ40cの出口ポートと第1熱交換器5とを接続する送風路52のうち、バイパス送風路51の入口より下流側に第2ダンパ機構52Dを備えている。
【0048】
送風路31には燃焼用空気流量を計測する流量計Qsが設置され、コンプレッサ40cの入口ポートには入口圧力を計測する圧力計Pisが設置され、コンプレッサ40cの出口ポートには出口圧力を計測する圧力計Posが設置されている。
【0049】
また、フリーボード部20の出口部に排ガスに含まれる酸素ガス濃度を計測する酸素ガスセンサSgが設置され、タービン40tの入口空気温度、給気機構23の入口空気温度、フリーボード部20の温度、炉出口温度等を計測する複数の温度センサが配置されている。
【0050】
上述した廃棄物処理設備を制御するための制御部53が設けられている。制御部53は、各種のセンサ信号等を入力する入力部と、入力部から入力された信号に基づいて所定の制御演算を実行する演算部と、演算結果に基づいて各種のアクチュエータに制御信号を出力する出力部と、制御データ等を記憶する記憶部等を備えたコンピュータで構成されている。
【0051】
処理対象である汚泥の性状、目標処理量(t/日)、煙道10に流出する排ガスに含まれる酸素濃度、押込み送風機30から供給される燃焼用空気の流量Q、コンプレッサ40cの入口ポート圧力Pi、出口ポート圧力Po等の複数の信号が入力部に入力され、それらの入力信号に基づいて演算部で制御演算が行なわれ、演算結果に基づいて出力部から押込み送風機30による送風量、流量調整機構51D,52Dの開度、汚泥投入機構11を介した汚泥投入量等を制御する制御信号が出力される。当該記憶部は、演算部による制御演算用のワーキングエリアとして利用されるとともに、制御部53で実行される制御プログラムや、後述のコンプレッサマップ等の記憶領域としても利用される。
【0052】
目標処理量は入力部に備えた操作パネルから手動入力するように構成され、汚泥の性状は操作パネルからの手動入力や、制御部53による制御演算等により把握される。例えば汚泥の保有熱量は、制御部53によって炉内への汚泥の投入量と燃焼用空気量と炉内温度に基づいて演算され、汚泥の含水率は操作パネルから手動入力によって得られる。
【0053】
制御部53は、酸素ガスセンサSgにより検出される排ガスの酸素濃度や炉内温度に基づいて、汚泥の投入量や押込み送風機30の回転数をフィードバック制御することにより、流動床式焼却炉2を適切な燃焼状態に維持するように構成されている。
【0054】
例えば、制御部53は、酸素ガスセンサSgにより検出される排ガスの酸素濃度と目標酸素濃度との偏差に基づいて例えばPID演算を行なうことにより、炉内に供給されるべき目標空気量を算出する。入力部から入力された汚泥の目標処理量に応じて予め想定される理論空気量に基づいて完全燃焼に要する燃焼用空気量を算出し、流量計Qsの値が算出した燃焼用空気量となるように押込み送風機30の駆動回路であるインバータ30aを制御する。
【0055】
図2には、過給機40の動作特性を示すコンプレッサマップの一例が示されている。コンプレッサマップは、横軸を流量Q、縦軸を圧力比Po/Piとする二次元座標系に、過給機40の運転ポイント及びその運転ポイントに対する過給機40の効率を表した特性図であり、中央部ほど効率が高くなり放射状に分布する等効率曲線L1,L2,L3,・・・(図中、破線で表される)が描かれ、等効率曲線の左側端部に斜めに延びる一点鎖線の境界線Mよりも左側の領域が、サージングが発生するサージ領域となる。
【0056】
対象となる流動床式焼却炉2に供給される標準的な燃焼用空気の流量及び標準的な予熱量に対応した効率の良い動作点で運転できるように過給機40が選定され、選定された過給機40のコンプレッサマップデータが制御部53に備えたメモリに記憶されている。
【0057】
流動床式焼却炉2で定格の目標処理量(t/日)を標準の燃焼用空気量及び予熱温度で運転する場合の動作点Pが設定され、流量Qの変動に伴って実線で示す過給機動作線A上を動作点Pが移動するように設計される。
【0058】
しかし、第1熱交換器5の伝熱係数が設計値よりも高い場合には、過給機動作線が上方にシフトして過給機動作線A1上を動作点P1が移動し、第1熱交換器5の伝熱係数が設計値よりも低い場合には、過給機動作線が下方にシフトして過給機動作線A2上を動作点P2が移動するようになる。
【0059】
過給機動作線A上を動作点Pが移動する場合に、焼却対象である汚泥の性状(含水率や熱量)が変動し、或いは目標処理量(t/日)が変動すると、それに伴って燃焼用空気量の必要量がQ1からQ2に変動し、動作点Pは過給機動作線A上を移動する。
【0060】
例えば、目標処理量(t/日)が定格の80%に低下する部分負荷運転になると、燃焼用空気量の必要量が低下して、過給機動作線A上を左方に移動する。このとき、動作点P’が境界線Mよりも左側に移動するとサージングが発生する。
【0061】
図3に示すように、そのような場合に、第1熱交換器5の熱交換量を低下させると、過給機動作線Aが過給機動作線A’’にシフトして、同一流量に対応する動作点がP’からP’’にシフトするのでサージングの発生を回避することができる。図3の太い矢線で示すように、第1熱交換器5の熱交換量を次第に低下させることにより、サージングの発生を回避しながら流量を絞ることができるようになる。
【0062】
同様に、図2で過給機動作線AがA1に移動している場合に、動作点P1から流量Qを低下させると、サージ領域に突入する可能性が高く、流量Qが一定であっても第1熱交換器5での熱交換量を増加させると動作点P1が上方に移動してサージ領域に突入する可能性が高くなる。
【0063】
そのような場合であっても、第1熱交換器5の熱交換量を低下させると、過給機動作線A1が過給機動作線Aにシフトして、同一流量に対応する動作点がP1からPにシフトするのでサージングの発生を回避することができる。
【0064】
第1熱交換器5の熱交換量を調整するために、第1ダンパ機構51D及び/または第2ダンパ機構52Dの開度が調整される。
【0065】
つまり、熱処理炉で熱処理される廃棄物の性状または処理量に基づいて、過給機40の運転ポイントがサージ領域に入らないように、タービン40tに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御機構50が設けられている。
【0066】
即ち、制御機構50は、バイパス送風路51と、第1熱交換器5に供給する空気量及び/またはバイパス送風路51に供給する空気量を調整する流量調整機構と、流量調整機構を制御する制御部53で構成されている。
【0067】
そして、流量調整機構は、第1ダンパ機構51D及び/または第2ダンパ機構52Dと、燃焼用空気を予備圧縮してコンプレッサ40cに供給する押込み送風機30とで構成されている。
【0068】
制御部53は、過給機40のコンプレッサマップを記憶する記憶部を備え、コンプレッサ40cの入口側の圧力Piに対する出口側の圧力Poの比である圧力比Po/Piと燃焼用空気の流量Qを指標にして、過給機40の運転ポイントがコンプレッサマップに示されるサージ領域に入らないように、流量調整機構を制御するように構成された制御プログラムを実行するように構成されている。
【0069】
以上説明したように、上述の制御部53によって制御される廃棄物処理設備で、本発明の操炉方法が実行される。
【0070】
即ち、燃焼用空気を過給機40のコンプレッサ40cで圧縮する圧縮工程と、圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、熱処理炉2の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と、予熱工程で予熱された燃焼用空気で過給機40のタービン40tを回転させて動力をコンプレッサ40cへ伝える圧縮動力生成工程と、圧縮動力生成工程でタービン40tから排気された燃焼用空気を熱処理炉2に供給する燃焼用空気供給工程と、熱処理炉2で熱処理される廃棄物の性状または処理量に基づいて、過給機40の運転ポイントがサージ領域に入らないように、タービン40tに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度を目標流量及び/または目標温度に調整する制御工程と、を含む廃棄物処理設備の操炉方法が実行される。
【0071】
制御工程では熱処理炉2で熱処理される廃棄物の性状または処理量に基づいて、タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度が目標流量及び/または目標温度に調整される。例えば、含水率が低く燃えやすい廃棄物を熱処理する低負荷運転や、定格処理量よりも少ない量の廃棄物を熱処理する部分負荷運転を行なう場合に燃焼用空気の流量を減少させ、或いは含水率が高く燃えにくい廃棄物を熱処理する高負荷運転を行なう場合に燃焼用空気の温度を上昇させる必要がある場合等には、当該制御工程で過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、タービンに流入する燃焼用空気の流量及び/または温度が調整される。その結果、サージングを起こさない領域で安定した状態で過給機を運転することができるようになる。
【0072】
そして、制御工程では、圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程とが実行される。
【0073】
圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部が予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給されるバイパス送風工程が実行されると、タービン40tに入力されるエネルギーが低下してコンプレッサ40cによる燃焼用空気の圧力比が低下する。その結果、過給機40の運転ポイントがサージ領域に入ることなく燃焼用空気量を絞ることができる。このときコンプレッサ40cから出力された燃焼用空気のうち流量調整工程によって調整された供給量の燃焼用空気が予熱工程へ供給され、その余の燃焼用空気がバイパス送風工程によって圧縮動力生成工程にバイパスされる。
【0074】
さらに、制御工程では、コンプレッサ40cの入口側の圧力Piに対する出口側の圧力Poの比である圧力比Po/Piと燃焼用空気の流量Qを指標にして、過給機40の運転ポイントが過給機40のコンプレッサマップに示されるサージ領域に入らないように、流量調整工程が実行される。
【0075】
また、流量調整工程では、タービン40tの入口ポートとコンプレッサ40cの出口ポートとの間に接続され、予熱工程をバイパスするバイパス送風路51において、予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程及び/または、コンプレッサ40cから予熱工程への送風路52でバイパス送風路の入口より下流側において、予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程が実行される。
【0076】
上述の流量調整工程に、バイパス風量調整工程及び/または予熱空気量調整工程が含まれる。過給機の運転ポイントがサージ領域に入らないように、バイパス風量調整工程によって予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量が調整され、予熱空気量調整工程によって予熱工程への燃焼用空気の供給量が調整され、何れか一方または双方が調整される。
【0077】
さらに別の実施形態を説明する。
図4には、タービン40tから排気された燃焼用空気をさらに予熱して流動床式焼却炉2に供給する第2熱交換器4を備え、制御部53は、流量調整機構による燃焼用空気の温度変動を、第2熱交換器4での熱交換量を調整することにより補償するように構成されていることが好ましい。
【0078】
即ち、タービン40tから排気された燃焼用空気をさらに予熱して熱処理炉2に供給する再予熱工程を含み、制御工程は、流量調整工程による燃焼用空気の温度変動を、再予熱工程での熱交換量を調整することにより補償する。
【0079】
流量調整機構によって過給機40の運転ポイントがサージ領域に入らないように調整された結果、タービン40tから出力される燃焼用空気の温度が目標温度よりも低下した場合でも、第2熱交換器4での熱交換量を調整することによって、目標温度の燃焼用空気を熱処理炉に供給することができるようになる。
【0080】
図5に示すように、バイパス送風路51に熱風炉54を設けると、熱風炉54により流動床式焼却炉2の立上げを速やかに行なうことが可能となる。
【0081】
先ず、第2ダンパ機構52Dを閉じるとともに第1ダンパ機構51Dを開放して、押込み送風機30からの燃焼用空気を熱風炉で加熱してタービン40tに供給する。
【0082】
炉内の昇温の程度に応じて第2ダンパ機構52Dの開度を次第に大きく、第1ダンパ機構51Dの開度を次第に小さく調整することにより、第1熱交換器5への空気分配量を増し、定常運転時には熱風炉54を停止して燃料消費量を抑制するのである。
【0083】
流動床式焼却炉2の立上げ時には炉の廃熱を利用することができず、また送風路や熱交換器の通風による圧力損失も生じる。しかし、流動床式焼却炉2の立上げ時に第2ダンパ機構52Dを閉じるとともに第1ダンパ機構51Dを開放して、第1熱交換器5をバイパスすれば送風経路を短縮することができる。さらに、熱風炉54を設けて燃焼用空気を加熱することにより、タービン40tへの熱供給と流動床式焼却炉2の昇温が可能になる。
【0084】
バイパス送風路51に熱風炉54を設けることなく、流動床式焼却炉2の立上げ時に第2ダンパ機構52Dを閉じるとともに第1ダンパ機構51Dを開放して、第1熱交換器5をバイパスするだけでもよい。
【0085】
上述した実施形態では、第1熱交換器5が煙道10の上流側に設けられた構成を説明したが、熱処理炉の炉内燃焼熱により燃焼用空気を予熱するように、第1熱交換器5をフリーボード部20に設置してもよい。
【0086】
上述した実施形態は、熱処理炉として流動床式焼却炉2を採用した場合について説明したが、本発明が適用される焼却炉は流動床式焼却炉2に限らず、流動床式焼却炉2と同様に通気圧損が大きいシャフト炉等の他の形式の工業炉にも適用可能である。例えば、底部にコークスベッドが形成され、当該コークスベッドに燃焼用空気を供給する羽口が形成されたシャフト炉の上方から汚泥を投入して溶融するような熱処理炉やスクラップを投入して溶解するキュポラ等であっても、本発明が適用可能である。
【0087】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1:汚泥貯留槽
2:流動床式焼却炉
5:第1熱交換器
30:押込み送風機
40:過給機
40t:タービン
40c:コンプレッサ
51:バイパス送風路
51D:第1ダンパ機構
52:送風路
52D:第2ダンパ機構
53:制御部
100:廃棄物処理設備
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備の操炉方法であって、
燃焼用空気を過給機のコンプレッサで圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気を、前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により予熱する予熱工程と、
前記予熱工程で予熱された燃焼用空気で前記過給機のタービンを回転させて動力を前記コンプレッサへ伝える圧縮動力生成工程と、
前記圧縮動力生成工程で前記タービンから排気された燃焼用空気を前記熱処理炉に供給する燃焼用空気供給工程と、
前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御工程と、
を含み、
前記制御工程は、前記圧縮工程で圧縮された燃焼用空気の一部を、前記予熱工程を経ずに前記圧縮動力生成工程へ供給するバイパス送風工程と、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する流量調整工程と、を含み、
前記流量調整工程は、前記タービンの入口ポートと前記コンプレッサの出口ポートとの間に接続され、前記予熱工程をバイパスするバイパス送風路において、前記予熱工程を経ずに圧縮動力生成工程へ供給するバイパス風量を調整するバイパス風量調整工程、前記コンプレッサから前記予熱工程への送風路でバイパス送風路の入口より下流側において、前記予熱工程への燃焼用空気の供給量を調整する予熱空気量調整工程、及び燃焼用空気を押込み送風機で予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風工程と、を含む、廃棄物処理設備の操炉方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する再予熱工程を含み、
前記制御工程は、前記流量調整工程による燃焼用空気の温度変動を、前記再予熱工程での熱交換量を調整することにより補償する請求項1記載の廃棄物処理設備の操炉方法。
【請求項6】
汚泥等の廃棄物を焼却処理する熱処理炉を備えている廃棄物処理設備であって、
前記熱処理炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で予熱された燃焼用空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に燃焼用空気を供給するコンプレッサとを含む過給機と、
前記熱処理炉で熱処理される前記廃棄物の性状または処理量に基づいて、前記過給機の運転ポイントがサージ領域に入らない範囲で、前記タービンに流入する燃焼用空気の流量及び温度を目標流量及び目標温度に調整する制御機構と、
を備え、
前記制御機構は、前記タービンの入口ポートと前記コンプレッサの出口ポートとの間に接続され、前記第1熱交換器をバイパスするバイパス送風路と、前記第1熱交換器に供給する空気量及び/または前記バイパス送風路に供給する空気量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御部と、を含み、
前記流量調整機構は、前記バイパス送風路に備えた第1ダンパ機構と、前記コンプレッサの出口ポートと前記第1熱交換器との送風路で前記バイパス送風路の入口より下流側に備えた第2ダンパ機構と、燃焼用空気を予備圧縮して前記コンプレッサに供給する押込み送風機と、を備えて構成されている、廃棄物処理設備。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
前記タービンから排気された燃焼用空気をさらに予熱して前記熱処理炉に供給する第2熱交換器を備え、
前記制御部は、前記流量調整機構による燃焼用空気の温度変動を、前記第2熱交換器での熱交換量を調整することにより補償する請求項6記載の廃棄物処理設備。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-30 
出願番号 特願2016-96296(P2016-96296)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (F01D)
P 1 651・ 121- YAA (F01D)
P 1 651・ 536- YAA (F01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金田 直之  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 金澤 俊郎
佐々木 正章
登録日 2020-02-05 
登録番号 特許第6655467号(P6655467)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 廃棄物処理設備の操炉方法及び廃棄物処理設備  
代理人 橋本 薫  
代理人 橋本 薫  

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