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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 一部申し立て 特29条の2  C08L
管理番号 1377775
異議申立番号 異議2020-700523  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-28 
確定日 2021-07-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6639738号発明「繊維補強ポリプロピレン複合材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6639738号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 特許第6639738号の請求項1、5、7?14に係る特許を維持する。 特許第6639738号の請求項4に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6639738号(請求項の数14。以下、「本件特許」という。)は、平成29年10月16日(優先権主張:平成28年10月17日)を国際出願日とする特許出願(特願2019-515323号)であって、令和2年1月7日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年2月5日である。)。
その後、令和2年7月28日に、本件特許の請求項1、4、5、7?14に係る特許に対して、特許異議申立人である東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 7月28日 特許異議申立書
同年11月 2日付け 取消理由通知書
令和3年 1月26日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 2月25日 通知書(申立人あて)
なお、申立人からは通知書に対する意見書は提出されなかった。

申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・甲第1号証 国際公開第2014/098103号
・甲第2号証 国際公開第2017/073482号
・甲第3号証 国際公開第2017/073483号
・甲第4号証 特開2016-132759号公報
・甲第5号証 特開2013-1723号公報
・甲第6号証 特開2012-167250号公報
・甲第7号証 特開2005-290021号公報
・甲第8号証 特開2009-149823号公報
・甲第9号証 特開2015-52102号公報
(以下、「甲第1号証」?「甲第9号証」を「甲1」?「甲9」という。)
なお、特許異議申立書の第87頁における「5 証拠方法」には、
「(2)甲第2号証:特願2015-214362号(国際公開第2017/073482号)
(3)甲第3号証:特願2015-214363号(国際公開第2017/073483号)」と記載しているが、申立人が提出した甲2は国際公開第2017/073482号であり、甲3は国際公開第2017/073483号であるから、申立人が提出した証拠方法は、上記のように記載した。

第2 訂正の適否についての判断
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和3年1月26日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?14について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。また、本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件明細書等」という。)。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に「複合材料であって、以下のもの
a)複合材料の総重量に基づいて50.0?91.0重量%の、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材であって、ここで前記ポリプロピレン基材が、
i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);または
ii)プロピレンホモポリマー(hPP)であり;および」とあるのを、
「複合材料であって、以下のもの
a)複合材料の総重量に基づいて50.0?88.0重量%の、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材であって、ここで前記ポリプロピレン基材が、
i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);および」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項5に「請求項1?4のいずれか一項に記載の複合材料。」とあるのを、「請求項1?3のいずれか一項に記載の複合材料。」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項に記載の複合材料。」とあるのを、「請求項1?3、5のいずれか一項に記載の複合材料。」に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項7に「請求項1?6のいずれか一項に記載の複合材料。」とあるのを、「請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の複合材料。」に訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の請求項8に「請求項1?7のいずれか一項に記載の複合材料。」とあるのを、「請求項1?3、5?7のいずれか一項に記載の複合材料。」に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の請求項9に「請求項1?8のいずれか一項に記載の複合材料。」とあるのを、「請求項1?3、5?8のいずれか一項に記載の複合材料。」に訂正する。

(8)訂正事項8
訂正前の請求項10に「請求項1?9のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法であって、以下のステップ:
a)請求項1?4のいずれか一項に記載のポリプロピレン基材を提供するステップ、」とあるのを、「請求項1?3、5?9のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法であって、以下のステップ:
a)請求項1?3のいずれか一項に記載のポリプロピレン基材を提供するステップ、」に訂正する。

(9)訂正事項9
訂正前の請求項13に「請求項1?12のいずれか一項に記載の複合材料を含む、成形品。」とあるのを、「請求項1?3、5?12のいずれか一項に記載の複合材料を含む、成形品。」に訂正する。

(10)一群の請求項
訂正事項1?9に係る訂正前の請求項1?14について、請求項2?14はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、
(ア)訂正前の請求項1における複合材料に含まれるポリプロピレン基材の配合割合を、複合材料の総重量に基づいて「50.0?91.0重量%」から「50.0?88.0重量%」とする訂正(以下「訂正事項1(ア)」という。)、及び
(イ)訂正前の請求項1における複合材料に含まれるポリプロピレン基材が、「i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);またはii)プロピレンホモポリマー(hPP)であり」を「i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)」とする訂正(以下「訂正事項1(イ)」という。)である。

ア 訂正の目的
訂正事項1(ア)による訂正は、下記「第4 1(2)」で示す取消理由通知の取消理由2(明確性)に対して、ポリプロピレン基材の配合割合を「50.0?88.0重量%」と訂正することで不明瞭であった記載を明確とする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
訂正事項1(イ)による訂正は、複合材料に含まれるポリプロピレン基材が、「i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);またはii)プロピレンホモポリマー(hPP)であり」から、ii)プロピレンホモポリマー(hPP)を削除し「i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)」と減縮する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1(ア)による訂正は、本件明細書等の【0034】にはポリプロピレン基材の配合割合が、複合材料の総重量に基づいて「・・・?88.0重量%」と記載されているから、本件明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、訂正事項1(イ)による訂正は、複合材料に含まれるポリプロピレン基材の選択肢を削除することで減縮する訂正であるから、本件明細書等の記載した事項の範囲内であるといえる。
さらに、訂正事項1(ア)及び(イ)とも、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項4を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2による訂正は、本件明細書等の記載した事項の範囲内であり、また、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは明らかである。

(4)訂正事項3?9について
ア 訂正の目的
訂正事項3?9による訂正は、訂正事項2によって訂正前の請求項4が削除されたため、引用する請求項から請求項4を削除したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項3?9による訂正は、本件明細書等の記載した事項の範囲内であり、また、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは明らかである。

(5)本件訂正後の発明の独立特許要件について
ア 上記「第1」で述べたように、本件特許異議の申立は、本件請求項1?14に係る特許のうち請求項1、4、5、7?14に係る特許に対して申立てられたものであるから、請求項2、3、6に係る特許に対しては申立てられていない。
そして、本件訂正前の請求項1に対する訂正である訂正事項1は、上記(1)で述べたように特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものであるので、請求項1を引用する請求項2、3及び6も、同様に特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされたといえる。そこで、本件訂正後の請求項2、3及び6に係る発明の独立特許要件について検討する。
下記「第5」で述べるように、本件訂正後の請求項1に係る発明には取消理由がなく、請求項1に係る発明につき、特許を受けることができないとすべき理由があるものではないのであって、それを引用する本件訂正後の請求項2、3及び6に係る発明も、特許を受けることができないとすべき理由があるものではないから、本件訂正後の請求項2、3及び6に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。

イ 小括
本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第7項の規定の満たす訂正である。

(6)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1?9による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5?7項の規定に適合するから、訂正後の請求項[1?14]について訂正することを認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6639738号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?14に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1?14に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明14」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)

「【請求項1】
複合材料であって、以下のもの
a)複合材料の総重量に基づいて50.0?88.0重量%の、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材であって、ここで前記ポリプロピレン基材が、
i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);および
b)複合材料の総重量に基づいて8.6?45.0重量%のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF);および
c)複合材料の総重量に基づいて2.5?20.0重量%の、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF);および
d)複合材料の総重量に基づいて0.1?7.0重量%の無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである接着促進剤(AP)、
を含み、
ここで前記ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である、
前記複合材料。
【請求項2】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)が
a)5.0?120.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)、および/または
b)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて15.0?50.0重量%のキシレン低温可溶性(XCS)画分(25℃)、および/または
c)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)に基づいて30.0mol%以下のコモノマー含有量
を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)が
a)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の前記非晶質画分(AM)に基づいて30.0?60.0mol%の範囲内のコモノマー含有量、および/または
b)1.8?4.0dl/gの範囲内の固有粘度(IV)
を有する、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
削除
【請求項5】
前記ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)が5?30μmの範囲内の繊維平均直径および/または0.1?20mmの平均繊維長を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記ガラス繊維(GF)がサイジング剤を含む、請求項1?3、5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記ポリマーベースの繊維(PF)がポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリアミド(PA)繊維およびそれらの混合物から選択される、請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記ポリマーベースの繊維(PF)が
i)0.1?20mmの平均繊維長、および/または
ii)5?30μmの範囲内の繊維平均直径、および/または
iii)3.0cN/dtex?17cN/dtexの引張強さ
を有する、請求項1?3、5?7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記ポリマーベースの繊維(PF)のISO 11357-3による溶融温度Tmが、前記ポリプロピレン基材のISO 11357-3による溶融温度Tmよりも40℃以上高い、請求項1?3、5?8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
請求項1?3、5?9のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法であって、以下のステップ:
a)請求項1?3のいずれか一項に記載のポリプロピレン基材を提供するステップ、
b)請求項1または5または6のいずれか一項に記載のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
c)請求項1または7?9のいずれか一項に記載のポリマーベースの繊維(PF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
d)ステップb)の前記繊維にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングして繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
e)ステップc)の前記ポリマーベースの繊維(PF)にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングしてポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、ならびに
f)任意に、ステップd)の前記繊維補強ポリプロピレン基材およびステップe)の得られた前記ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材をブレンドすることによって得られる組成物を射出成形するステップ
を含み、
ここでプロセスステップd)およびe)を同時に、または任意の順序で別々に行う、
前記方法。
【請求項11】
プロセスステップd)およびe)を引抜成形によって実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プロセスステップd)およびe)を別々に実施し、ステップd)の前記繊維補強ポリプロピレン基材およびステップe)の前記ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材をドライブレンドし、その後任意にステップf)を実施する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1?3、5?12のいずれか一項に記載の複合材料を含む、成形品。
【請求項14】
自動車用物品である、請求項13に記載の成形品。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)取消理由1(進歩性)
本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲1に記載された発明に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

甲1:国際公開第2014/098103号

(2)取消理由2(明確性)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、4、5、7?14の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件の請求項1、4、5、7?14に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1に係る発明は、概略、配合割合が特定される成分a)?d)を含む複合材料に係る発明である。
本件訂正前の請求項1に係る発明で特定される配合割合について検討すると、成分a)を88.8重量%を超え91.0重量%を含む場合、他の成分b)?d)を最小の割合で配合しても、合計で100重量%を超えてしまうことになるから、成分a)の配合割合が上記の範囲の場合は発明が不明確である。

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書でした申立の理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1
本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明は、本件優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲1:国際公開第2014/098103号

(2)申立理由2
本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明は、本件優先日前に頒布された下記の甲1に記載された発明及び甲6?9に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(取消理由1と同旨である。)

甲1:国際公開第2014/098103号
甲6:特開2012-167250号公報
甲7:特開2005-290021号公報
甲8:特開2009-149823号公報
甲9:特開2015-52102号公報

(3)申立理由3
本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明は、本件優先日前の特許出願であって、この特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13の規定において読み替えて準用する特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。(同法第184条の15第2項で読み替える同法第41条第3項参照)
よって、本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明の特許は、同法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲2:国際公開第2017/073482号
甲3:国際公開第2017/073483号
なお、申立人は、甲2及び甲3を特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲または図面の代替物として提出している。

(4)申立理由4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、4、5、7?14の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件明細書等には、ポリプロピレン基材として異相プロピレンコポリマー(HECO)を使用した実施例が記載されておらず、化学物質である複合材料の発明においては実際に製造し評価しなければ特性を把握することができないから、化学物質であるポリプロピレン基材として異相プロピレンコポリマー(HECO)を使用した複合材料が、発明の課題を解決できると認識できない。

(5)申立理由5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、4、5、7?14の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件訂正前の請求項1、4、5、7?14に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
そして、その内容は、取消理由2と同旨である。

第5 当審の判断
当審は、請求項4に係る特許については、特許異議申立を却下することとし、また、当審が通知した取消理由1及び2及び申立人がした申立理由1?5によっては、いずれも、本件発明1、5、7?14に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりであるが、申立理由2は取消理由1と同旨であり、また、申立理由1は取消理由1と同様に、甲1を主引用例とする理由であるから、申立理由1及び2は、取消理由1とまとめて検討する。さらに、申立理由5は、取消理由2と同旨であるので、まとめて検討する。

1 申立ての却下
上記第2及び第3で示したとおり、請求項4は、本件訂正により削除されているので、請求項4についての申立てを却下する。

2 取消理由について
(1)取消理由1(申立理由1及び2)について
ア 各甲号証の記載事項について
(ア)甲1
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1a)「[請求項1]
炭素繊維(A)、有機繊維(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5?45重量部、有機繊維(B)を1?45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20?94重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、
繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(L_(A))が0.3?1.5mmであり、かつ、炭素繊維(A)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(D_(A))と平均繊維長(L_(A))が下記式[1]を満たし、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(L_(B))が1.5?4mmであり、かつ、有機繊維(B)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(D_(B))と平均繊維長(L_(B))が下記式[2]を満たす繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
0.9×L_(A)≦D_(A)≦L_(A) [1]
0.1×L_(B)≦D_(B)≦0.9×L_(B) [2]
・・・
[請求項7]
炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5?45重量部、有機繊維(B)を1?45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20?93重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1?20重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
・・・
[請求項10]
炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5?45重量部、熱可塑性樹脂(C)を94?35重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1?20重量部含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(G)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(G)より低い化合物(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1?45重量部、熱可塑性樹脂(G)を94?35重量部、化合物(H)を1?20重量部含む有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」

(1b)「[0002] 強化繊維と熱可塑性樹脂を含む成形品は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途などに広く用いられている。これらの強化繊維には、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、シリコンカーバイド繊維、炭素繊維などの無機繊維、アラミド繊維やポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維などの有機繊維などが使用されているが、比強度、比剛性および軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好適であり、その中でもポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が好適に用いられる。
[0003] 炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の力学特性を高める手段としては、例えば、炭素繊維の含有量を増やす方法が挙げられるが、炭素繊維含有量を増やすと、炭素繊維が炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の中で、不均一に存在しやすくなるため、衝撃強度の低下を引き起こすことが多い。そこで、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の力学特性を高める別の手段として、例えば、炭素繊維に加え、柔軟性と優れた破断伸度を持つ有機繊維を加える方法が挙げられる。
[0004] 有機繊維と無機繊維を含む、高い剛性および高い耐衝撃性を有する成型体を得ることができる複合繊維強化熱可塑性樹脂ペレットとして、例えば、有機繊維/無機繊維=1/1?1/10であり、熱可塑性樹脂/強化繊維=95/5?60/40であり、強化繊維がペレットの長手方向に略整列状態で、拠られた状態で熱可塑性樹脂と共に存在している複合繊維強化熱可塑性樹脂ペレットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、機械的強度に優れ、導電性を付与した長繊維強化複合樹脂組成物として、オレフィン系樹脂、有機長繊維、炭素繊維を含有してなる長繊維強化複合樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これら技術を用いて得られる成形品は、衝撃強度や低温衝撃強度がなお不十分である課題があった。
[0005] 一方で、燃料バリア性と耐衝撃性との両立を図る樹脂組成物として、熱可塑性樹脂に、該熱可塑性樹脂よりも融点の高い又は不融性の長さ4?20mmの繊維が混合された樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、かかる技術を用いて得られる成形品は、力学特性、特に衝撃強度および低温衝撃強度が不十分である課題があった。
[0006] このように、従来技術では熱可塑性樹脂をマトリックスとした繊維強化熱可塑性樹脂成形品において、簡便な手法により、力学特性、特に衝撃強度および低温衝撃強度に優れ、高い衝撃特性を発現できる繊維強化熱可塑性樹脂成形品の開発が望まれていた。
・・・
[0008] 本発明は従来技術の有する上記課題に鑑み、力学特性、特に衝撃強度および低温衝撃強度に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品を提供することを目的とする。
・・・
発明の効果
[0012] 本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、成形品中の炭素繊維および有機繊維が前記特定の繊維長を満たすため、補強効果が高く、導電性、力学特性、特に衝撃強度、低温衝撃強度に優れる。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、筐体および自動車の部品などに極めて有用である。」

(1c)「[0024] 炭素繊維(A)の平均繊維径は特に限定されないが、成形品の力学特性と表面外観の観点から、1?20μmが好ましく、3?15μmがより好ましい。強化繊維束とした場合の単糸数には、特に制限はないが、100?350,000本が好ましく、生産性の観点から、20,000?100,000本がより好ましい。
・・・
[0033] ここで、本発明の成形品における、炭素繊維(A)の平均繊維長(L_(A))は、0.3?1.5mmである。・・・」

(1d)「[0039] ・・・
有機繊維(B)は、成形品の力学特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリーレンスルフィド、液晶ポリエステル等の樹脂を紡糸して得られる繊維を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。これらの有機繊維(B)の中から、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂(C)との組み合わせにより適宜選択して用いることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂(C)の成形温度(溶融温度)に対して、有機繊維(B)の溶融温度が30℃?150℃高いことが好ましく、50℃?100℃高いことがより好ましい。あるいは、熱可塑性樹脂(C)と非相溶性である樹脂を用いてなる有機繊維(B)は、成形品内に繊維状態を保ったまま存在するため、成形品の衝撃強度、低温衝撃強度をより向上できるため好ましい。溶融温度の高い有機繊維(B)として、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、フッ素樹脂繊維などが挙げられ、本発明においては、有機繊維(B)としてこれらからなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維を用いることが好ましい。」

(1e)「[0045] 本発明において熱可塑性樹脂(C)は、成形温度(溶融温度)が200?450℃であるものが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイドスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、これらはいずれも、電気絶縁体に相当する。これらを2種以上用いることもできる。
[0046] 前記熱可塑性樹脂(C)の中でも、軽量、かつ、力学特性や成形性のバランスに優れるポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂がより好ましく、耐薬品性や吸湿性にも優れることから、ポリプロピレン樹脂がさらに好ましい。
[0047] ここで言うポリプロピレン樹脂とは、無変性のものも、変性されたものも含まれる。無変性のポリプロピレン樹脂は、具体的には、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと少なくとも1種のα-オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどとの共重合体である。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、1-ノネン、1-オクテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2?12のα-オレフィンなどが挙げられる。共役ジエン、非共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。無変性ポリプロピレン樹脂の骨格構造としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと前記その他の単量体のランダムあるいはブロック共重合体、またはプロピレンと他の熱可塑性単量体とのランダムあるいはブロック共重合体等を挙げることができる。例えば、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。プロピレンの単独重合体は成形品の剛性をより向上させる観点から好ましく、プロピレンと前記その他の単量体のランダムあるいはブロック共重合体は成形品の衝撃強度をより向上させる観点から好ましい。」

(1f)「[0054] ここで、成形品の力学特性、特に曲げ強度および引張強度を向上させるため、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂を共に用いることが好ましく、特に難燃性や力学特性のバランスの観点から、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂の重量比が95/5?75/25となるように用いることが好ましい。より好ましくは95/5?80/20、さらに好ましくは90/10?80/20である。」

(1g)「[0090] 次に、本発明の成形品を得るために適した、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(「成形材料」という場合がある)について説明する。本発明においては、(1)炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5?45重量部、有機繊維(B)を1?45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20?93重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1?20重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである成形材料(以下、「第一の態様の成形材料」という場合がある)や、(2)炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5?45重量部、熱可塑性樹脂(C)を94?35重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1?20重量部含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(G)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(G)より低い化合物(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1?45重量部、熱可塑性樹脂(G)を94?35重量部、化合物(H)を1?20重量部含む有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む成形材料(以下、「第二の態様の成形材料」という場合がある)を、本発明の成形品を得るための成形材料として好適に用いることができる。」

(1h)「[0099] 本発明の第一の態様の成形材料は、繊維束(E)の長さと成形材料の長さが実質的に同じであることが好ましい。繊維束(E)の長さが成形材料の長さと実質的に同じであることにより、成形品における炭素繊維(A)と有機繊維(B)の繊維長を長くすることができるため、より優れた力学特性を得ることができる。なお、成形材料の長さとは、成形材料中の繊維束(E)配向方向の長さである。また、「実質的に同じ長さ」とは、成形材料内部で繊維束(E)が意図的に切断されていたり、成形材料全長よりも有意に短い繊維束(E)が実質的に含まれたりしないことである。特に、成形材料全長よりも短い繊維束(E)の量について限定するわけではないが、成形材料全長の50%以下の長さの繊維束(E)の含有量が、全繊維束(E)中30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。成形材料は、長手方向にほぼ同一の断面形状を保ち連続であることが好ましい。
[0100] 第一の態様の成形材料の長さは、通常3mm?15mmの範囲である。」

(1i)「[0114] 第二の態様の成形材料の各構成要素(A)?(D)としては、本発明の成形品について先に説明した(A)?(D)を用いることができる。また、(G)および(H)としては、それぞれ本発明の成形品について先に説明した(C)および(D)を用いることができる。さらに、本発明の成形品について他の成分として例示したものを含有することもできる。」

(1j)「[0117] 本発明の第二の態様の成形材料における、炭素繊維強化成形材料(X)は、例えば、次の方法により得ることができる。まず、炭素繊維(A)のロービングを繊維長手方向にし、次いで、溶融させた化合物(D)を炭素繊維束に含浸させて複合体(F)を作製し、さらに、溶融した熱可塑性樹脂(C)で満たした含浸ダイに複合体(F)を導き、熱可塑性樹脂(C)を複合体(F)の外側に被覆させ、ノズルを通して引き抜く。冷却固化後に所定の長さにペレタイズして、成形材料を得る方法である。熱可塑性樹脂(C)は、複合体(F)の外側に含まれていれば、炭素繊維束中に含浸されていてもよい。また、本発明の第二の成形材料における、有機繊維強化成形材料(Y)は、例えば、前述した炭素繊維強化成形材料(X)と同様の方法により製造されるが、その他の方法として、例えば次の方法により得ることができる。まず、溶融させた化合物(H)を有機繊維束に含浸させて複合体(I)を作製し、複合体(I)を、熱可塑性樹脂(G)と共に単軸または二軸押出機内にて、溶融混練し、ダイ先端から吐出されるストランドを冷却固化後に所定の長さにペレタイズして、成形材料を得る方法である。
[0118] 本発明の第二の態様の成形材料における、炭素繊維強化成形材料(X)および有機繊維強化成形材料(Y)をドライブレンドにて混合し、成形することにより、炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性に優れ、衝撃強度および低温衝撃強度に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得ることができる。炭素繊維強化成形材料(X)と有機繊維強化成形材料(Y)の混合比としては、炭素繊維強化成形材料(X)と有機繊維強化成形材料(Y)の合計100重量部に対して、炭素繊維強化成形材料(X)を50?80重量部、有機繊維強化成形材料(Y)を20?50重量部含有することが好ましい。さらに、溶融混練により製造した有機繊維強化成形材料(Y)を用いることで、より生産性よく繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得ることができる。成形方法としては、金型を用いた成形方法が好ましく、射出成形、押出成形、プレス成形など、種々の公知の手法を用いることができる。特に射出成形機を用いた成形方法により、連続的に安定した成形品を得ることができる。」

(1k)「[0119] 本発明の成形品は、落錘衝撃強度、衝撃強度および低温衝撃強度に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品であり、本発明の成形品の用途としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール等の自動車部品に好適である。また、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、“レーザーディスク(登録商標)”、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品も挙げられる。また、パーソナルコンピューター、携帯電話などに使用される筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持するキーボード支持体に代表される電気・電子機器用部材なども挙げられる。」

(1l)「[0124] ・・・
(参考例1)炭素繊維(A)の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm^(3)、表面酸素濃度比[O/C]0.2の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4,880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。続いて、多官能性化合物としてポリグリセロールポリグリシジルエーテルを2重量%になるように水に溶解させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。こうして得られた炭素繊維のサイジング剤付着量は1.0重量%であった。
(参考例2)有機繊維(B)
ポリフェニレンサルファイド繊維(東レ(株)製“トルコン”(登録商標)400T-100-190、単糸繊度4.0dtex、融点285℃)を用いた。該繊維の破断伸度を上記(3)に記載した方法により測定した結果、30%であった。
・・・
[0126] ・・・
(参考例3)熱可塑性樹脂(C)及び(G)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いた。200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、50Pa・sであった。」

(1m)「[0128] ・・・
(製造例1)炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X-1)
上記に示した炭素繊維(A)束に、表1に示す割合で化合物(D)を含浸させて得られた複合体(F)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、表1に示した熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、複合体(F)の周囲を被覆するように連続的に配置した。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-1)とした。この時、(A)、(C)及び(D)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が30重量部となるように、炭素繊維(A)束の引取速度を調整した。(製造例2)炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X-2)上記に示した炭素繊維(A)束を、表1に示す割合で(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、表1に示した熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、炭素繊維(A)束の周囲を被覆するように連続的に配置した。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-2)とした。この時、(A)及び(C)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が40重量部となるように、炭素繊維(A)束の引取速度を調整した。
(製造例3)有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y-1)
上記に示した有機繊維(B)束に、表1に示す割合で化合物(H)を含浸させた複合体(I)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、表1に示した熱可塑性樹脂(G)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(G)を吐出し、複合体(I)の周囲を被覆するように連続的に配置した。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-1)とした。この時、(B)、(G)及び(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)が30重量部となるように、有機繊維(B)束の引取速度を調整した。
(製造例4)有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y-2)
上記に示した、製造例3と同様にして長繊維ペレット(Y-2)を作製した。この時、(B)、(G)及び(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)が40重量部となるように、有機繊維(B)束の引取速度を調整した。
・・・
(実施例1)
(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を220℃に設定し、表2に示した熱可塑性樹脂(C)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。200℃にて加熱溶融させた化合物(D)を、(A)?(C)の合計100重量部に対し、8重量部となるように吐出量を調整し、溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維(A)および有機繊維(B)からなる繊維束(E)の周囲を被覆するように連続的に配置した。この時の繊維束(E)内部断面は、炭素繊維(A)及び有機繊維(B)が偏在していた。偏在状態は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)のそれぞれ少なくとも一部が、熱可塑性樹脂(C)に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした。この時、(A)?(C)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が20重量部、有機繊維(B)が10重量部となるように、引取速度を調整した。
[0129] こうして得られた長繊維ペレットを、(株)日本製鋼所製射出成形機J110ADを用いて、射出時間5秒、背圧5MPa、保圧力20MPa、保圧時間10秒、シリンダー温度230℃、金型温度60℃の条件で射出成形することにより、成形品としてのISO型ダンベル試験片および80mm×80mm×2mmの試験片を作製した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた試験片(成形品)を、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置後に特性評価に供した。前述の方法により評価した評価結果をまとめて表2に示した。
・・・
(実施例19)
製造例1により得られた長繊維ペレット(X-1)と製造例3により得られた長繊維ペレット(Y-1)を、(X-1)および(Y-1)の合計100重量部に対して、(X-1)が67重量部、(Y-1)が33重量部となるようにドライブレンドして成形材料を作製した。得られた成形材料について、前述の方法により評価した評価結果をまとめて表5に示した。
・・・
(実施例22)
製造例2により得られた長繊維ペレット(X-2)および製造例4により得られた長繊維ペレット(Y-2)を、(X-2)および(Y-2)の合計100重量部に対して、(X-2)が75重量部、(Y-2)が25重量部となるようにドライブレンドした以外は、実施例19と同様にして成形材料を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表5に示した。」

(1n)「[0136]
[表1]



(1o)「[0137] [表2]



(1p)「[0140]
[表5]



イ 甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
(5a)「【請求項1】
ポリプロピレン40?60重量%、ポリ乳酸15?40重量%およびスチレン系エラストマー15?35重量%を含む樹脂分100重量部に対して、脂肪酸アミド0.1?1.0重量部を含むことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。」

(5b)「【0014】
(ポリプロピレン)
本発明の樹脂組成物の主たる成分であるポリプロピレンとしては、共重合体に比べて剛性および表面硬度に優れたホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)が好ましく、特に曲げ弾性率(ISO178:1993)が2000MPa以上のものが好ましく用いられる。曲げ弾性率が2000MPa未満であると、ポリ乳酸を含んだポリプロピレン樹脂組成物の曲げ弾性率が低下する傾向にあり、また耐スクラッチ性にも影響を与える。230℃、2.16kgfで測定したメルトフロー値(MFR)(JIS K7210)は20g/10分以上が好ましく、より好ましくは30g/10分以上のものが用いられる。」

(5c)「【0033】
(実施例1)
基本樹脂組成として、ポリプロピレン(プライムポリプロ『J137M』((株)プライムポリマー製; 結晶核剤を約0.1%の割合で含むホモポリプロピレン;MFR=30g/10分、曲げ弾性率=2300MPa、シャルピー衝撃強さ(23℃)=1.0kJ/m^(2))」

ウ 参考文献1(特開2010-27279号公報)
当審が職権調査により発見した参考文献1には、以下の事項が記載されている。
(参1a)「【0049】
(実施例5)
実施例1において使用した無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂〔三菱化学(株)製、商品名モディックAP P604V、メルトフローレート3.2g/10min〕の代わりに、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂〔三井化学(株)製、商品名アドマーQE840、メルトフローレート9.2g/10min〕を使用したこと以外は、・・・」

エ 参考文献2(特開2011-57906号公報)
当審が職権調査により発見した参考文献2には、以下の事項が記載されている。
(参2a)「【0011】
・・・
無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂としては、具体的には例えば、アドマーQE510、アドマーQF500、アドマーQE800、アドマーQE810、アドマーQE840(いずれも商品名、三井化学(株)製)、アドテックスER313E(商品名、日本ポリエチレン(株)製)等が挙げられる。」

オ 参考文献3(特表2015-513578号公報)
当審が職権調査により発見した参考文献3には、以下の事項が記載されている。
(参3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリプロピレン組成物(PP-C)の全重量に対して少なくとも80wt%のポリプロピレン(L-PP)ホモ又はコポリマーであって、ISO1133(230℃/2.16kg)に準拠する0.1g/10minから20g/10minの範囲内のメルトフローレート及び5wt%までのコモノマー含量を有し、前記コモノマーが、エチレン及び/又はC_(4)?C_(10)α-オレフィンから選択される、上記ポリプロピレン(L-PP)ホモ又はコポリマー、及び
b)ポリプロピレン組成物(PP-C)の全重量に対して2wt%から20wt%の間のポリプロピレン(H-PP)ホモ又はコポリマーであって、ISO1133(230℃/2.16kg)に準拠する200g/10minから2,500g/10minの範囲内のメルトフローレート及び5wt%までのコモノマー含量を有し、前記コモノマーが、エチレン及び/又はC_(4)?C_(10)α-オレフィンから選択される、上記ポリプロピレン(H-PP)ホモ又はコポリマー を含み、ISO1133(230℃/2.16kg)に準拠する10g/10minから60g/10minの範囲内のメルトフローレート及び任意に4.0以下の多分散指数(PI)を有する、ポリプロピレン組成物(PP-C)。
【請求項2】
ポリプロピレン(L-PP)が、
a)ISO1133(230℃/2.16kg)に準拠する0.5g/10minから20g/10minの範囲内のメルトフローレート、
及び/又は
b)ISO11357-3に従って測定される少なくとも150℃の溶融温度Tm、
及び/又は
c)ISO6427(23℃)に従って測定される3.5wt%以下の低温キシレン可溶性成分含量(XCS)
を有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物(PP-C)。」

イ 甲1に記載された発明
(ア)甲1には、その特許請求の範囲の請求項7に、「炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5?45重量部、有機繊維(B)を1?45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20?93重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1?20重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」が記載されている(摘記(1a))。
また、その具体例として、実施例1に、長繊維ペレットとして、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を220℃に設定し、表2に示した熱可塑性樹脂(C)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。200℃にて加熱溶融させた化合物(D)を、(A)?(C)の合計100重量部に対し、8重量部となるように吐出量を調整し、溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維(A)および有機繊維(B)からなる繊維束(E)の周囲を被覆するように連続的に配置した。この時の繊維束(E)内部断面は、炭素繊維(A)及び有機繊維(B)が偏在していた。偏在状態は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)のそれぞれ少なくとも一部が、熱可塑性樹脂(C)に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした。この時、(A)?(C)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が20重量部、有機繊維(B)が10重量部となるように、引取速度を調整したことが記載されている(摘記(1m))。
表2には、実施例1で使用された有機樹脂の種類が「PPS」であること、熱可塑性樹脂(C)の種類が「PP」であり、配合量が70重量部であること、化合物(D)の種類が「テルペン」であり、配合量が8重量部であることが記載されている(摘記(1o))。
甲1には、実施例1で使用された熱可塑性樹脂(C)は、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いたことが記載されている(摘記(1l))。

そうすると、甲1には、実施例1の長繊維ペレットを構成する成分に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「炭素繊維(A)を20重量部、PPSである有機繊維(B)を10重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を70重量部、テルペン(D)を8重量部からなる繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」(以下「甲1発明1」という。」)

(イ)甲1には、その特許請求の範囲の請求項10に、「炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5?45重量部、熱可塑性樹脂(C)を94?35重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1?20重量部含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(G)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(G)より低い化合物(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1?45重量部、熱可塑性樹脂(G)を94?35重量部、化合物(H)を1?20重量部含む有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」が記載されている(摘記(1a))。

a 甲1には、特許請求の範囲の請求項10の具体例として、実施例19に、製造例1により得られた長繊維ペレット(X-1)と製造例3により得られた長繊維ペレット(Y-1)を、(X-1)および(Y-1)の合計100重量部に対して、(X-1)が67重量部、(Y-1)が33重量部となるようにドライブレンドして成形材料を作製したことが記載され(摘記(1m))、長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)束に、表1に示す割合で化合物(D)を含浸させて得られた複合体(F)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、表1に示した熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、複合体(F)の周囲を被覆するように連続的に配置した。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-1)とした。この時、(A)、(C)及び(D)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が30重量部となるように、炭素繊維(A)束の引取速度を調整したことにより製造されることが記載され(摘記(1m))、長繊維ペレット(Y-1)は、有機繊維(B)束に、表1に示す割合で化合物(H)を含浸させた複合体(I)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、表1に示した熱可塑性樹脂(G)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(G)を吐出し、複合体(I)の周囲を被覆するように連続的に配置した。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-1)とした。この時、(B)、(G)及び(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)が30重量部となるように、有機繊維(B)束の引取速度を調整したことにより製造されることが記載されている(摘記(1m))。

ここで、上記した甲1の実施例19における成分についてみてみると、長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)を30重量部、熱可塑性樹脂(C)を62重量部、テルペン(D)を8重量部からなり、長繊維ペレット(Y-1)は、PPSである有機繊維(B)を30重量部、熱可塑性樹脂(G)を62重量部、テルペン(H)を8重量部からなるといえる(摘記(1n)を参照)。
甲1には、熱可塑性樹脂(C)及び(G)は、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いたことが記載されている(摘記1l)。

そうすると、甲1には、実施例19に着目し、また、長繊維ペレット(X-1)と長繊維ペレット(Y-1)の成分とその製造方法について着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「長繊維ペレット(X-1)と長繊維ペレット(Y-1)を、(X-1)および(Y-1)の合計100重量部に対して、(X-1)が67重量部、(Y-1)が33重量部となるようにドライブレンドした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法であって、
長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を62重量部、テルペン(D)を8重量部からなり、長繊維ペレット(Y-1)は、PPSである有機繊維(B)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(G)を62重量部、テルペン(H)を8重量部とからなり、
長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)束に、化合物(D)を含浸させて得られた複合体(F)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、複合体(F)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-1)とし、長繊維ペレット(Y-1)は、有機繊維(B)束に、化合物(H)を含浸させた複合体(I)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(G)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(G)を吐出し、複合体(I)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-1)とした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」(以下「甲1発明3」という。」)

b また、甲1には、特許請求の範囲の請求項10の具体例として、実施例22に、製造例2により得られた長繊維ペレット(X-2)および製造例4により得られた長繊維ペレット(Y-2)を、(X-2)および(Y-2)の合計100重量部に対して、(X-2)が75重量部、(Y-2)が25重量部となるようにドライブレンドした以外は、実施例19と同様にして成形材料を作製したことが記載され(摘記(1m))、長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)束を、表1に示す割合で(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、表1に示した熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、炭素繊維(A)束の周囲を被覆するように連続的に配置した。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-2)とした。この時、(A)及び(C)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が40重量部となるように、炭素繊維(A)束の引取速度を調整したことにより製造されることが記載され(摘記(1m))、長繊維ペレット(Y-2)は、製造例3と同様にして長繊維ペレット(Y-2)を作製した。この時、(B)、(G)及び(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)が40重量部となるように、有機繊維(B)束の引取速度を調整したことにより製造されることが記載され(摘記(1m))、製造例3として、有機繊維(B)束に、表1に示す割合で化合物(H)を含浸させた複合体(I)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、表1に示した熱可塑性樹脂(G)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(G)を吐出し、複合体(I)の周囲を被覆するように連続的に配置した。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-1)としたことが記載されている(摘記(1m))。

ここで、上記した甲1の実施例22における成分についてみてみると、長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)を40重量部、熱可塑性樹脂(C)を50重量部、テルペン(D)を10重量部からなり、長繊維ペレット(Y-2)は、PPSである有機繊維(B)を40重量部、熱可塑性樹脂(G)を50重量部、テルペン(H)を10重量部からなるといえる(摘記(1n)を参照)。
甲1には、熱可塑性樹脂(C)及び(G)は、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いたことが記載されている(摘記1l)。

そうすると、甲1には、実施例22に着目し、また、長繊維ペレット(X-2)と長繊維ペレット(Y-2)の成分とその製造方法について着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「長繊維ペレット(X-2)と長繊維ペレット(Y-2)を、(X-2)および(Y-2)の合計100重量部に対して、(X-2)が75重量部、(Y-2)が25重量部となるようにドライブレンドした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法であって、
長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を50重量部、テルペン(D)を10重量部からなり、長繊維ペレット(Y-2)は、PPSである有機繊維(B)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(G)を50重量部、テルペン(H)を10重量部からなり、
長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)束を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、表1に示した熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、炭素繊維(A)束の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-2)とし、長繊維ペレット(Y-2)は、有機繊維(B)束に、化合物(H)を含浸させた複合体(I)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(G)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(G)を吐出し、複合体(I)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-2)とした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」(以下「甲1発明4」という。」)

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
(a)まず、材料中の成分について検討する。
甲1発明1の「熱可塑性樹脂(C)」に含まれる「ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」は、本件発明1の「ポリプロピレン基材」である限りにおいて一致する。
甲1発明1の「炭素繊維(A)」は、本件発明1の「炭素繊維(CF)」に相当する。
甲1発明1の「PPSである有機繊維(B)」は、融点が285℃であると記載されている(摘記(1l))から、本件発明1の「210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)」に相当する。
甲1発明1の「熱可塑性樹脂(C)」に含まれる「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)」は、本件発明1の「無水マレイン酸官能化ポリプロピレン」と、「官能化ポリプロピレン」である限りにおいて一致する。

(b)次に、成分の配合割合について検討する。
甲1発明1の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」は、炭素繊維(A)を20重量部、PPSである有機繊維(B)を10重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を70重量部、テルペン(D)を8重量部からなるから、合計は108重量部である。
甲1発明1の「ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」は、熱可塑性樹脂(C)の70重量部のうち、重量比で85%含むから、その配合割合は、55.1(=70×0.85÷108×100)重量%と算出され、本件発明1の「50?88.0重量%」と一致する。
甲1発明1の「炭素繊維(A)」の配合割合は、18.5(=20÷108×100)重量%と算出され、本件発明1の「8.6?45.0重量%」と一致する。
甲1発明1の「PPSである有機繊維(B)」の配合割合は、9.3(=10÷108×100)重量%と算出され、本件発明1の「2.5?20.0重量%」と一致する。
甲1発明1の「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)」は、熱可塑性樹脂(C)の70重量部のうち、重量比で15%含むから、その配合割合は、9.7(=70×0.15÷108×100)重量%と算出される。
そして、甲1発明1の「PPSである有機繊維(B)」は10重量部であり、「炭素繊維(A)」は20重量部であるから、重量比[(CF)/(PF)]は2であり、これは、本件発明1の「ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である」と一致する。

(c)最後に、甲1発明1の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」は、炭素繊維を含む複数の成分を含む材料であるから、本件発明1の「複合材料」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明1とでは、
「複合材料であって、以下のもの
a)複合材料の総重量に基づいて50.0?88.0重量%のポリプロピレン基材であり;および
b)複合材料の総重量に基づいて8.6?45.0重量%のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF);および
c)複合材料の総重量に基づいて2.5?20.0重量%の、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF);および
d)官能化ポリプロピレンを含み、
ここで前記ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である、
前記複合材料。」で一致し、次の点で相違する。

(相違点1-1)ポリプロピレン基材が、本件発明1では、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するとしているのに対し、甲1発明1では明らかでない点

(相違点2-1)官能化ポリプロピレンが、本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンであるのに対し、甲1発明1ではマレイン酸官能化ポリプロピレンである点

(相違点3-1)本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである接着促進剤(AP)を0.1?7.0重量%含むとしているのに対し、甲2発明及び甲3発明ではマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を9.7重量%含むことが特定され、そして、これが接着促進剤であることが明らかでない点

(相違点4-1)ポリプロピレン基材が、本件発明1では、半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)であるのに対して、甲1発明1では、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)である点

b 判断
事案に鑑み、相違点4-1から検討する。
まず、相違点4-1について検討する。
複合材料に、本件発明1では「半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)」を含むものであり、一方、甲1発明1では、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)を含むものであり、甲5には、プライムポリプロ『J137M』はホモポリプロピレンであることが記載されている(摘記(5c))から、相違点4-1は実質的な相違点であるといえる。
そうすると、相違点1-1?3-1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。

次に、相違点4-1の容易想到性について検討する。
甲1には、炭素繊維が好適とされる強化繊維と熱可塑性樹脂を含む成形品が、軽量で優れた力学特性を有するところ、さらに衝撃強度を向上させるため、柔軟性と優れた破断伸度を持つ有機繊維を加えたが、衝撃強度や低温衝撃強度が不十分であるという課題が記載され(摘記(1b))、この課題を解決するため、その請求の範囲の請求項1に、炭素繊維を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品が記載され、また、同請求項7に該成形品の原料である炭素繊維を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料が記載されている(摘記(1b))。ここで、甲1には、上記した熱可塑性樹脂として、具体的な樹脂が複数種類例示されており、ポリプロピレン樹脂が更に好ましいことが記載されている(摘記(1e))。ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンとα-オレフィン等とのランダムあるいはブロック共重合体が記載され、共重合体として、ランダムあるいはブロック共重合体が例示され、好適なものとして、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体が例示されている。しかしながら、相違点4-1に係る半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)は例示すらない。

上記したとおり、甲1に、強化繊維として炭素繊維が好適としている背景技術の下で、請求の範囲に炭素繊維を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料が記載されており、また、甲1には熱可塑性樹脂として本件発明1で特定される半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)の例示すらないことからすれば、甲1の記載をみた当業者であっても、甲1発明1において、ポリプロピレンに代えて、半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)に代える動機づけがあるとはいえない。
そうすると、相違点1-1?3-1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明1及び甲1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)本件発明5、7?9、13及び14について
本件発明5、7?9、13及び14は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明5、7?9、13及び14は、上記「(ア)」で示した理由と同じ理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本件発明10について
a 甲1発明3との対比
(a)対比
i まず、材料中の成分について検討する。
甲1発明3の熱可塑性樹脂(C)及び(G)に含まれる「ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「ポリプロピレン基材」である限りにおいて一致する。
甲1発明3の長繊維ペレット(X-1)に含まれる「炭素繊維(A)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「炭素繊維(CF)」に相当する。
甲1発明3の長繊維ペレット(Y-1)に含まれる「PPSである有機繊維」は、融点が285℃であると記載されている(摘記(1l))から、本件発明10が引用する本件発明1の「210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)」に相当する。
甲1発明3の熱可塑性樹脂(C)及び(G)に含まれる「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「無水マレイン酸官能化ポリプロピレン」と、「官能化ポリプロピレン」である限りにおいて一致する。

ii 次に、成分の配合割合について検討する。
甲1発明3の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」は、長繊維ペレット(X-1)を67重量部と長繊維ペレット(Y-1)を33重量部からなるものであり、長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を62重量部、テルペン(D)を8重量部からなり、長繊維ペレット(Y-1)は、PPSである有機繊維(B)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(G)を62重量部、テルペン(D)を8重量部からなる。
そして、上記(ア)a(b)で述べた手順に従うと、甲1発明3の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の各成分の配合割合は以下のとおりに算出される。
ポリプロピレンの配合割合は、52.7(=67×0.85×62÷100+33×0.85×62÷100)重量%となり、これは、本件発明10が引用する本件発明1の50?88.0重量%と一致する。
炭素繊維(CF)の配合割合は、20.1(=67×30÷100)重量%となり、本件発明10が引用する本件発明1の8.6?45.0重量%と一致する。
ポリマーベース繊維(PF)の配合割合は、9.9(=33×30/100)重量%となり、本件発明10が引用する本件発明1の2.5?20.0重量%と一致する。
マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の配合割合は、9.3(=67×0.15×62÷100+33×0.15×62÷100)重量%となる。
そして、甲1発明3のポリマーベースの繊維は9.9重量%含み、炭素繊維は20.1重量%含むから、重量比[(CF)/(PF)]は2であり、これは、本件発明10が引用する本件発明1の「ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である」と一致する。

iii さらに、製造方法における各ステップについて検討する。
甲1発明3では、長繊維ペレット(X-1)及び長繊維ペレット(Y-1)を得る際に、ポリプロピレンを含む熱可塑性樹脂(C)及び(G)をメインホッパーから供給しているおり、これは、本件発明10における「a)・・・ポリプロピレン基材を提供するステップ」に相当する。
甲1発明3では、長繊維ペレット(X-1)を得る際に、「炭素繊維の束」を「2軸押出機の先端に設置された」「コーティングダイ中に通し」ているおり、これは、本件発明10における「b)・・・炭素繊維(CF)を連続繊維の形態で提供するステップ」に相当する。
甲1発明3では、長繊維ペレット(Y-1)を得る際に、「有機繊維の束」を「2軸押出機の先端に設置された」「コーティングダイ中に通し」ているおり、これは、本件発明10における「c)・・・ポリマーベースの繊維(PF)を連続繊維の形態で提供するステップ」に相当する。
甲1発明3では、ステップb)の繊維に、「熱可塑性樹脂(C)を」「供給し」「2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、」炭素繊維(A)の束を含む「複合体(F)の周囲を被覆するように連続的に配置し」ており、複合体(F)の周囲を被覆すれば、当然含浸するといえ、また、熱可塑性樹脂(C)には、ポリプロピレンが含まれ、さらに、炭素繊維を含むポリプロピレンは、繊維補強ポリプロピレンであるといえるから、これは、本件発明10における「d)ステップb)の前記繊維にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングして繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ」に相当する。
甲1発明3では、ステップc)の繊維に、「熱可塑性樹脂(G)を」「供給し」「2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(G)を吐出し、」有機繊維(B)の束を含む「複合体(I)の周囲を被覆するように連続的に配置し」ており、複合体(I)の周囲を被覆すれば、当然含浸するといえ、また、熱可塑性樹脂(G)には、ポリプロピレンが含まれ、さらに、有機繊維を含むポリプロピレンは、ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレンであるといえるから、これは、本件発明10における「e)ステップc)の前記ポリマーベースの繊維(PF)にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングしてポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ」に相当する。
甲1発明3では、ステップd)及びステップe)を別々に行っており、これは、本件発明10の「ここでプロセスステップd)およびe)を同時に、または任意の順序で別々に行う」に相当する。

iv 最後に、甲1発明3の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」は、炭素繊維を含む複数の成分を含む材料の製造方法であるから、本件発明10の「複合材料の製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明10と甲1発明3とでは、
「複合材料の製造方法であって、以下のステップ:
a)ポリプロピレン基材を提供するステップ、
b)請求項1または5または6のいずれか一項に記載のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
c)請求項1または7?9のいずれか一項に記載のポリマーベースの繊維(PF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
d)ステップb)の前記繊維にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングして繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
e)ステップc)の前記ポリマーベースの繊維(PF)にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングしてポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
を含み、
ここでプロセスステップd)およびe)を同時に、または任意の順序で別々に行う、
前記方法。」で一致し、そして、次の点で相違する。

v 複合材料について、両者は以下の点で相違する。
(相違点1-2)ポリプロピレン基材が、本件発明10が引用する本件発明1では、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するとしているのに対し、甲1発明3では明らかでない点

(相違点2-2)官能化ポリプロピレンが、本件発明10が引用する本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンであるのに対し、甲1発明3ではマレイン酸官能化ポリプロピレンである点

(相違点3-2)本件発明10が引用する本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである接着促進剤(AP)を0.1?7.0重量%含むとしているのに対し、甲1発明3ではマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を9.3重量%含むことが特定され、そして、これが接着促進剤であることが明らかでない点

(相違点4-2)ポリプロピレン基材が、本件発明10が引用する本件発明1では、半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)であるのに対して、甲1発明3では、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)である点

vi 複合材料の製造方法について、両者は以下の点で相違する。
(相違点5-2)本件発明10では、f)任意に、ステップd)の前記繊維補強ポリプロピレン基材およびステップe)の得られた前記ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材をブレンドすることによって得られる組成物を射出成形するステップを含むのに対して、甲1発明3では明らかでない点

(b)判断
事案に鑑み、相違点4-2から検討する。
相違点4-2は、上記「(ア)a」で述べた相違点4-1と同じであるところ、同一性及び容易性については、上記「(ア)b」で述べた理由と同じ理由により、相違点4-2は実質的な相違点であるといえ、また、当業者であっても動機づけられるとはいえない。
よって、相違点1-2?3-2、5-2について検討するまでもなく、本件発明10は甲1に記載された発明ではなく、また、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 甲1発明4との対比
(a)対比
i まず、材料中の成分について検討する。
甲1発明4の熱可塑性樹脂(C)及び(G)に含まれる「ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「ポリプロピレン基材」である限りにおいて一致する。
甲1発明4の長繊維ペレット(X-2)に含まれる「炭素繊維(A)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「炭素繊維(CF)」に相当する。
甲1発明4の長繊維ペレット(Y-2)に含まれる「PPSである有機繊維」は、融点が285℃であると記載されている(摘記(1l))から、本件発明10が引用する本件発明1の「210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)」に相当する。
甲1発明4の熱可塑性樹脂(C)及び(G)に含まれる「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「無水マレイン酸官能化ポリプロピレン」と、「官能化ポリプロピレン」である限りにおいて一致する。

ii 次に、成分の配合割合について検討する。
甲1発明4の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、長繊維ペレット(X-2)を75重量部と長繊維ペレット(Y-2)を25重量部からなるものであり、長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を50重量部、テルペン(D)を10重量部からなり、長繊維ペレット(Y-2)は、PPSである有機繊維(B)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(G)を50重量部、テルペン(H)を10重量部からなる。
そして、上記(ア)a(b)で述べた手順に従うと、甲1発明4の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の各成分の配合割合は以下のとおりに算出される。
ポリプロピレンの配合割合は、42.5(=75×0.85×50÷100+25×0.85×50÷100)重量%となる。
炭素繊維(CF)の配合割合は、30.0(=75×40÷100)重量%となり、本件発明10が引用する本件発明1の8.6?45.0重量%と一致する。
ポリマーベース繊維(PF)の配合割合は、10.0(=25×40/100)重量%となり、本件発明10が引用する本件発明1の2.5?20.0重量%と一致する。
マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の配合割合は、7.5(=75×0.15×50÷100+25×0.15×50÷100)重量%となる。
そして、甲1発明4のポリマーベースの繊維は9.9重量%含み、炭素繊維は30.0重量%含むから、重量比[(CF)/(PF)]は3であり、これは、本件発明10が引用する本件発明1の「ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である」と一致する。

iii さらに、製造方法における各ステップについて検討する。
甲1発明4の製造方法は、甲1発明3の製造方法と同じであるから、上記a(a)iiiで述べた点で甲1発明4は、本件発明10と一致する。

iv 最後に、甲1発明4の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」は、炭素繊維を含む複数の成分を含む材料の製造方法であるから、本件発明10の「複合材料の製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明10と甲1発明4とでは、
「複合材料の製造方法であって、以下のステップ:
a)ポリプロピレン基材を提供するステップ、
b)請求項1または5または6のいずれか一項に記載のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
c)請求項1または7?9のいずれか一項に記載のポリマーベースの繊維(PF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
d)ステップb)の前記繊維にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングして繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
e)ステップc)の前記ポリマーベースの繊維(PF)にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングしてポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、を含み
ここでプロセスステップd)およびe)を同時に、または任意の順序で別々に行う、
前記方法。」で一致し、そして、次の点で相違する。

v 複合材料について、両者は以下の点で相違する。
(相違点1-3)ポリプロピレン基材が、本件発明10が引用する本件発明1では、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するとしているのに対し、甲1発明4では明らかでない点

(相違点2-3)官能化ポリプロピレンが、本件発明10が引用する本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンであるのに対し、甲1発明4ではマレイン酸官能化ポリプロピレンである点

(相違点3-3)本件発明10が引用する本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである接着促進剤(AP)を0.1?7.0重量%含むとしているのに対し、甲1発明4ではマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を7.5重量%含むことが特定され、そして、これが接着促進剤であることが明らかでない点

(相違点4-3)ポリプロピレン基材が、本件発明10が引用する本件発明1では、半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)であるのに対して、甲1発明4では、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)である点

(相違点5-3)ポリプロピレンの配合割合が、本件発明10が引用する本件発明1では、50.0?88.0重量%であるのに対し、甲1発明4では、42.5重量%である点

vi 複合材料の製造方法について、両者は以下の点で相違する。
(相違点6-3)本件発明10では、f)任意に、ステップd)の前記繊維補強ポリプロピレン基材およびステップe)の得られた前記ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材をブレンドすることによって得られる組成物を射出成形するステップを含むのに対して、甲1発明4では明らかでない点

(b)判断
事案に鑑み、相違点4-3から検討する。
相違点4-3は、上記「(ア)a」で述べた相違点4-1と同じであるところ、同一性及び容易性については、上記「(ア)b」で述べた理由と同じ理由により、相違点4-3は実質的な相違点であるといえ、また、当業者であっても動機づけられるとはいえない。
よって、相違点1-3?3-3、5-3?6-3について検討するまでもなく、本件発明10は甲1に記載された発明ではなく、また、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 小括
よって、本件発明10は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)本件発明11及び12について
本件発明11及び12は、本件発明10を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明11及び12は、上記「(ウ)」で示した理由と同じ理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(オ)まとめ
以上のとおりであるから、取消理由1並びに申立理由1及び2によっては、本件発明1、5、7?14に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2(申立理由5)について
取消理由2は、上記「第4 1(2)」で述べたとおり、本件訂正前の請求項1に係る発明は、概略、配合割合が特定される成分a)?d)を含む複合材料に係る発明であるところ、本件訂正前の請求項1に係る発明で特定される配合割合について検討すると、成分a)を88.8重量%を超え91.0重量%を含む場合、他の成分b)?d)を最小の割合で配合しても、合計で100重量%を超えてしまうことになるから、成分a)の配合割合が上記の範囲の場合は発明が不明確である、というものである。

この点に関し、本件訂正により、成分a)の配合割合が50.0?88.0重量%と訂正された。これにより、合計で100重量%を超えることはなくなり、上述の不明確な理由は解消された。

よって、取消理由2(申立理由5)によっては、本件発明1、5、7?14に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について
(1)申立理由3について
上記「第4 2(3)」で示したとおり、申立人は、甲2及び甲3を特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲または図面の代替物として提出している。ここでは、甲2及び甲3の記載事項から、特許出願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲または図面に記載された発明を認定する。
ア 各甲号証の記載事項及び記載された発明について
(ア)甲2
甲2の記載(請求の範囲の請求項6、段落[0002]?[0005]、[0007]、[0167]、[0170]、[0181]?[0182]、[0207])によれば、特に実施例1の長繊維ペレットを構成する成分に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「炭素繊維(A)を20重量部、PET2である有機繊維(B)を10重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を70重量部、テルペン(D)を8重量部からなる繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」(以下「甲2発明1」という。」)

また、上記した甲2の記載に加え、段落[0138]?[0139]、[0173]?[0176]、[0190]、[0190]、[0206]及び[0209]の記載によれば、実施例9の長繊維ペレット(X-1)と長繊維ペレット(Y-1)の成分とその製造方法について着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「長繊維ペレット(X-1)と長繊維ペレット(Y-1)を、(X-1)および(Y-1)の合計100重量部に対して、(X-1)が67重量部、(Y-1)が33重量部となるようにドライブレンドした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法であって、長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を62重量部、テルペン(D)を8重量部からなり、長繊維ペレット(Y-1)は、PET2である有機繊維(B)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(H)を62重量部、テルペン(I)を8重量部とからなり、
長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)束に、化合物(D)を含浸させて得られた複合体(G)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、複合体(G)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-1)とし、
長繊維ペレット(Y-1)は、有機繊維(B)束に、化合物(I)を含浸させた複合体(J)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(H)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(H)を吐出し、複合体(J)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-1)とした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」(以下「甲2発明2」という。」)

さらに、上記した甲2の記載に加え、段落[0192]の記載によれば、実施例11の長繊維ペレット(X-2)と長繊維ペレット(Y-2)の成分とその製造方法について着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「長繊維ペレット(X-2)と長繊維ペレット(Y-2)を、(X-2)および(Y-2)の合計100重量部に対して、(X-2)が75重量部、(Y-2)が25重量部となるようにドライブレンドした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法であって、長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を50重量部、テルペン(D)を10重量部からなり、長繊維ペレット(Y-2)は、PET2である有機繊維(B)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(H)を50重量部、テルペン(I)を10重量部とからなり、
長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)束に、化合物(D)を含浸させて得られた複合体(G)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、複合体(G)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-2)とし、
長繊維ペレット(Y-2)は、有機繊維(B)束に、化合物(I)を含浸させた複合体(J)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(H)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(H)を吐出し、複合体(J)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-2)とした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」(以下「甲2発明3」という。」)

(イ)甲3
甲3の記載(請求の範囲の請求項6、段落[0002]?[0004]、[0006]、[0170]、[0174]、[0183]?[0184]、[0210])によれば、特に実施例1の長繊維ペレットを構成する成分に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「炭素繊維(A)を20重量部、PET3である有機繊維(B)を10重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を70重量部、テルペン(D)を8重量部からなる繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」(以下「甲3発明1」という。」)

また、上記した甲3の記載に加え、段落[0140]?[0141]、[0171]、[0177]?[0180]、[0193]、[0209]及び[0212]の記載によれば、実施例10の長繊維ペレット(X-1)と長繊維ペレット(Y-1)の成分とその製造方法について着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「長繊維ペレット(X-1)と長繊維ペレット(Y-1)を、(X-1)および(Y-1)の合計100重量部に対して、(X-1)が67重量部、(Y-1)が33重量部となるようにドライブレンドした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法であって、長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を62重量部、テルペン(D)を8重量部からなり、長繊維ペレット(Y-1)は、PET4である有機繊維(B)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(H)を62重量部、テルペン(I)を8重量部とからなり、
長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)束に、化合物(D)を含浸させて得られた複合体(G)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、複合体(G)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-1)とし、
長繊維ペレット(Y-1)は、有機繊維(B)束に、化合物(I)を含浸させた複合体(J)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(H)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(H)を吐出し、複合体(J)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-1)とした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」(以下「甲3発明2」という。」)

さらに、上記した甲3の記載に加え、段落[0195]の記載によれば、実施例12の長繊維ペレット(X-2)と長繊維ペレット(Y-2)の成分とその製造方法について着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。

「長繊維ペレット(X-2)と長繊維ペレット(Y-2)を、(X-2)および(Y-2)の合計100重量部に対して、(X-2)が75重量部、(Y-2)が25重量部となるようにドライブレンドした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法であって、長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を50重量部、テルペン(D)を10重量部からなり、長繊維ペレット(Y-2)は、PET4である有機繊維(B)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(H)を50重量部、テルペン(I)を10重量部とからなり、
長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)束に、化合物(D)を含浸させて得られた複合体(G)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(C)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、複合体(G)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、炭素繊維(A)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(X-2)とし、
長繊維ペレット(Y-2)は、有機繊維(B)束に、化合物(I)を含浸させた複合体(J)を、(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、熱可塑性樹脂(H)をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し、2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(H)を吐出し、複合体(J)の周囲を被覆するように連続的に配置し、得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断して、有機繊維(B)束の長さと成形材料の長さが実質的に同じである長繊維ペレット(Y-2)とした繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」(以下「甲3発明3」という。」)

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
ここでは、本件発明1と甲2発明1及び甲3発明1とを併せて対比する。
(a)まず、材料中の成分について検討する。
甲2発明1及び甲3発明1の「熱可塑性樹脂(C)」に含まれる「ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」は、本件発明1の「ポリプロピレン基材」である限りにおいて一致する。
甲2発明1及び甲3発明1の「炭素繊維(A)」は、本件発明1の「炭素繊維(CF)」に相当する。
甲2発明1の「PET2である有機繊維(B)」は、融点が260℃であると記載されている([0167])。また、甲3発明1の「PET3である有機繊維(B)」は、融点が260℃であると記載されている([0170])。よって、甲2発明1及び甲3発明1の上記「有機繊維(B)」は、本件発明1の「210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)」に相当する。
甲2発明1及び甲3発明1の「熱可塑性樹脂(C)」に含まれる「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)」は、本件発明1の「無水マレイン酸官能化ポリプロピレン」と、「官能化ポリプロピレン」である限りにおいて一致する。

(b)次に、成分の配合割合について検討する。
甲2発明1の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」は、炭素繊維(A)を20重量部、PET2である有機繊維(B)を10重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を70重量部、テルペン(D)を8重量部からなるから、合計は108重量部である。
甲3発明1の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」は、炭素繊維(A)を20重量部、PET3である有機繊維(B)を10重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を70重量部、テルペン(D)を8重量部からなるから、合計は108重量部である。
甲2発明1及び甲3発明1の「ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」は、熱可塑性樹脂(C)の70重量部のうち、重量比で85%含むから、その配合割合は、55.1(=70×0.85÷108×100)重量%と算出され、本件発明1の「50?88.0重量%」と一致する。
甲2発明1及び甲3発明1の「炭素繊維(A)」の配合割合は、18.5(=20÷108×100)重量%と算出され、本件発明1の「8.6?45.0重量%」と一致する。
甲2発明1の「PET2である有機繊維(B)」の配合割合及び甲3発明1の「PET3である有機繊維(B)」の配合割合は、9.3(=10÷108×100)重量%と算出され、本件発明1の「2.5?20.0重量%」と一致する。
甲2発明1及び甲3発明1の「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)」は、熱可塑性樹脂(C)の70重量部のうち、重量比で15%含むから、その配合割合は、9.7(=70×0.15÷108×100)重量%と算出される。
そして、甲2発明1の「PET2である有機繊維(B)」は10重量部であり、「炭素繊維(A)」は20重量部であり、また、甲3発明1の「PET3である有機繊維(B)」は10重量部であり、「炭素繊維(A)」は20重量部であるから、重量比[(CF)/(PF)]は2であり、これは、本件発明1の「ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である」と一致する。

(c)最後に、甲2発明1及び甲3発明1の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」は、炭素繊維を含む複数の成分を含む材料であるから、本件発明1の「複合材料」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明1及び甲3発明1とでは、
「複合材料であって、以下のもの
a)複合材料の総重量に基づいて50.0?88.0重量%のポリプロピレン基材であり、;および
b)複合材料の総重量に基づいて8.6?45.0重量%のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF);および
c)複合材料の総重量に基づいて2.5?20.0重量%の、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF);および
d)官能化ポリプロピレンを含み、
ここで前記ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である、
前記複合材料。」で一致し、次の点で相違する。

(相違点1-4)ポリプロピレン基材が、本件発明1では、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するとしているのに対し、甲2発明1及び甲3発明1では明らかでない点

(相違点2-4)官能化ポリプロピレンが、本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンであるのに対し、甲2発明1及び甲3発明1ではマレイン酸官能化ポリプロピレンである点

(相違点3-4)本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである接着促進剤(AP)を0.1?7.0重量%含むとしているのに対し、甲2発明1及び甲3発明1ではマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を9.7重量%含むことが特定され、そして、これが接着促進剤であることが明らかでない点

(相違点4-4)ポリプロピレン基材が、本件発明1では、半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)であるのに対して、甲2発明1及び甲3発明1では、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)である点

b 判断
事案に鑑み、相違点4-4から検討する。
複合材料に、本件発明1では「半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)」を含むものであり、一方、甲2発明1及び甲3発明1では、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)を含むものであり、甲5には、プライムポリプロ『J137M』はホモポリプロピレンであることが記載されている(摘記(5c))から、相違点4-4は実質的な相違点であるといえる。そして、甲2及び3には、熱可塑性樹脂の具体例として半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)は記載されていないから、この相違点が課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。
そうすると、相違点1-4?3-4について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明1及び甲3発明1と同一であるとはいえない。

(イ)本件発明5、7?9、13及び14について
本件発明5、7?9、13及び14は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明5、7?9、13及び14は、上記「(ア)」で示した理由と同じ理由により、甲2発明1及び甲3発明1と同一であるとはいえない。

(ウ)本件発明10について
a 甲2発明2及び甲3発明2との対比
(a)対比
i まず、材料中の成分について検討する。
甲2発明2及び甲3発明2の熱可塑性樹脂(C)及び(H)に含まれる「ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「ポリプロピレン基材」である限りにおいて一致する。
甲2発明2及び甲3発明2の長繊維ペレット(X-1)に含まれる「炭素繊維(A)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「炭素繊維(CF)」に相当する。
甲2発明2の長繊維ペレット(Y-1)に含まれる「PET2である有機繊維」は融点260℃と記載され(段落[0167])及び甲3発明2の長繊維ペレット(Y-1)に含まれる「PET4である有機繊維」は融点が260℃であると記載されている(段落[0171])から、本件発明10が引用する本件発明1の「210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)」に相当する。
甲2発明2及び甲3発明2の熱可塑性樹脂(C)及び(H)に含まれる「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「無水マレイン酸官能化ポリプロピレン」と、「官能化ポリプロピレン」である限りにおいて一致する。

ii 次に、成分の配合割合について検討する。
甲2発明2及び甲3発明2は、長繊維ペレット(X-1)を67重量部と長繊維ペレット(Y-1)を33重量部からなるものであり、甲2発明2及び甲3発明2における長繊維ペレット(X-1)は、炭素繊維(A)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を62重量部、テルペン(D)を8重量部からなり、甲2発明2における長繊維ペレット(Y-1)は、PET2である有機繊維(B)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(H)を62重量部、テルペン(I)を8重量部からなる。また、甲3発明2における長繊維ペレット(Y-1)は、PET4である有機繊維(B)を30重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(H)を62重量部、テルペン(I)を8重量部からなる。

そして、上記(ア)a(b)で述べた手順に従うと、甲2発明2及び甲3発明2の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の各成分の配合割合は以下のとおりに算出される。
ポリプロピレンの配合割合は、52.7(=67×0.85×62÷100+33×0.85×62÷100)重量%となり、これは、本件発明10が引用する本件発明1の50?88.0重量%と一致する。
炭素繊維(CF)の配合割合は、20.1(=67×30÷100)重量%となり、本件発明10が引用する本件発明1の8.6?45.0重量%と一致する。
ポリマーベース繊維(PF)の配合割合は、9.9(=33×30/100)重量%となり、本件発明10が引用する本件発明1の2.5?20.0重量%と一致する。
マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の配合割合は、9.3(=67×0.15×62÷100+33×0.15×62÷100)重量%となる。
そして、甲2発明2及び甲3発明2のポリマーベースの繊維は9.9重量%含み、炭素繊維は20.1重量%含むから、重量比[(CF)/(PF)]は2であり、これは、本件発明10が引用する本件発明1の「ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である」と一致する。

iii さらに、製造方法における各ステップについて検討する。
甲2発明2及び甲3発明2では、長繊維ペレット(X-1)及び長繊維ペレット(Y-1)を得る際に、ポリプロピレンを含む熱可塑性樹脂(C)及び(H)をメインホッパーから供給しているおり、これは、本件発明10における「a)・・・ポリプロピレン基材を提供するステップ」に相当する。
甲2発明2及び甲3発明2では、長繊維ペレット(X-1)を得る際に、「炭素繊維の束」を「2軸押出機の先端に設置された」「コーティングダイ中に通し」ているおり、これは、本件発明10における「b)・・・炭素繊維(CF)を連続繊維の形態で提供するステップ」に相当する。
甲2発明2及び甲3発明2では、長繊維ペレット(Y-1)を得る際に、「有機繊維の束」を「2軸押出機の先端に設置された」「コーティングダイ中に通し」ているおり、これは、本件発明10における「c)・・・ポリマーベースの繊維(PF)を連続繊維の形態で提供するステップ」に相当する。
甲2発明2及び甲3発明2では、ステップb)の繊維に、「熱可塑性樹脂(C)を」「供給し」「2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(C)を吐出し、」炭素繊維(A)の束を含む「複合体(F)の周囲を被覆するように連続的に配置し」ており、複合体(F)の周囲を被覆すれば、当然含浸するといえ、また、熱可塑性樹脂(C)には、ポリプロピレンが含まれ、さらに、炭素繊維を含むポリプロピレンは、繊維補強ポリプロピレンであるといえるから、これは、本件発明10における「d)ステップb)の前記繊維にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングして繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ」に相当する。
甲2発明2及び甲3発明2では、ステップc)の繊維に、「熱可塑性樹脂(H)を」「供給し」「2軸押出機からダイ内に溶融した熱可塑性樹脂(H)を吐出し、」有機繊維(B)の束を含む「複合体(I)の周囲を被覆するように連続的に配置し」ており、複合体(I)の周囲を被覆すれば、当然含浸するといえ、また、熱可塑性樹脂(H)には、ポリプロピレンが含まれ、さらに、有機繊維を含むポリプロピレンは、ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレンであるといえるから、これは、本件発明10における「e)ステップc)の前記ポリマーベースの繊維(PF)にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングしてポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ」に相当する。
甲2発明2及び甲3発明2では、ステップd)及びステップe)を別々に行っており、これは、本件発明10の「ここでプロセスステップd)およびe)を同時に、または任意の順序で別々に行う」に相当する。

iv 最後に、甲2発明2及び甲3発明2の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」は、炭素繊維を含む複数の成分を含む材料の製造方法であるから、本件発明10の「複合材料の製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明10と甲2発明2及び甲3発明2とでは、
「複合材料の製造方法であって、以下のステップ:
a)ポリプロピレン基材を提供するステップ、
b)請求項1または5または6のいずれか一項に記載のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
c)請求項1または7?9のいずれか一項に記載のポリマーベースの繊維(PF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
d)ステップb)の前記繊維にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングして繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
e)ステップc)の前記ポリマーベースの繊維(PF)にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングしてポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
を含み、
ここでプロセスステップd)およびe)を同時に、または任意の順序で別々に行う、
前記方法。」で一致し、そして、次の点で相違する。

v 複合材料について、両者は以下の点で相違する。
(相違点1-5)ポリプロピレン基材が、本件発明10が引用する本件発明1では、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するとしているのに対し、甲2発明2及び甲3発明2では明らかでない点

(相違点2-5)官能化ポリプロピレンが、本件発明10が引用する本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンであるのに対し、甲2発明2及び甲3発明2ではマレイン酸官能化ポリプロピレンである点

(相違点3-5)本件発明10が引用する本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである接着促進剤(AP)を0.1?7.0重量%含むとしているのに対し、甲2発明及び甲3発明ではマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を9.3重量%含むことが特定され、そして、これが接着促進剤であることが明らかでない点

(相違点4-5)ポリプロピレン基材が、本件発明10が引用する本件発明1では、半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)であるのに対して、甲2発明2及び甲3発明2では、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)である点

vi 複合材料の製造方法について、両者は以下の点で相違する。
(相違点5-5)本件発明10では、f)任意に、ステップd)の前記繊維補強ポリプロピレン基材およびステップe)の得られた前記ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材をブレンドすることによって得られる組成物を射出成形するステップを含むのに対して、甲2発明2及び甲3発明2では明らかでない点

(b)判断
事案に鑑み、相違点4-5から検討する。
相違点4-5は、上記「(ア)a」で述べた相違点4-4と同じであるところ、上記「(ア)b」で述べた理由と同じ理由により相違点4-5は実質的な相違点であり、また、課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。
そうすると、相違点1-5?3-5及び5-5ついて検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明2及び甲3発明2と同一であるとはいえない。

b 甲2発明3及び甲3発明3との対比
(a)対比
i まず、材料中の成分について検討する。
甲2発明3及び甲3発明3の熱可塑性樹脂(C)及び(H)に含まれる「ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「ポリプロピレン基材」である限りにおいて一致する。
甲2発明3及び甲3発明3の長繊維ペレット(X-2)に含まれる「炭素繊維(A)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「炭素繊維(CF)」に相当する。
甲2発明3の長繊維ペレット(Y-2)に含まれる「PET2である有機繊維」は融点260℃と記載され(段落[0167])及び甲3発明2の長繊維ペレット(Y-2)に含まれる「PET4である有機繊維」は融点が260℃であると記載されている(段落[0171])から、本件発明10が引用する本件発明1の「210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)」に相当する。
甲2発明3及び甲3発明3の熱可塑性樹脂(C)及び(H)に含まれる「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)」は、本件発明10が引用する本件発明1の「無水マレイン酸官能化ポリプロピレン」と、「官能化ポリプロピレン」である限りにおいて一致する。

ii 次に、成分の配合割合について検討する。
甲2発明3及び甲3発明3の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、長繊維ペレット(X-2)を75重量部と長繊維ペレット(Y-2)を25重量部からなるものであり、長繊維ペレット(X-2)は、炭素繊維(A)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(C)を50重量部、テルペン(D)を10重量部からなり、長繊維ペレット(Y-2)は、PPSである有機繊維(B)を40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)(PP)を重量比85/15で有する熱可塑性樹脂(G)を50重量部、テルペン(I)を10重量部からなる。
そして、上記(ア)a(b)で述べた手順に従うと、甲2発明3及び甲3発明3の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の各成分の配合割合は以下のとおりに算出される。
ポリプロピレンの配合割合は、42.5(=75×0.85×50÷100+25×0.85×50÷100)重量%となる。
炭素繊維(CF)の配合割合は、30.0(=75×40÷100)重量%となり、本件発明10が引用する本件発明1の8.6?45.0重量%と一致する。
ポリマーベース繊維(PF)の配合割合は、10.0(=25×40/100)重量%となり、本件発明10が引用する本件発明1の2.5?20.0重量%と一致する。
マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の配合割合は、7.5(=75×0.15×50÷100+25×0.15×50÷100)重量%となる。
そして、甲2発明3及び甲3発明3のポリマーベースの繊維は10.0重量%含み、炭素繊維は30.0重量%含むから、重量比[(CF)/(PF)]は3であり、これは、本件発明10が引用する本件発明1の「ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である」と一致する。

iii さらに、製造方法における各ステップについて検討する。
甲2発明3及び甲3発明3の製造方法は、甲2発明2及び甲3発明2の製造方法と同じであるから、上記a(a)iiiで述べた点で甲2発明3及び甲3発明3は、本件発明10と一致する。

iv 最後に、甲2発明3及び甲3発明3の「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法」は、炭素繊維を含む複数の成分を含む材料の製造方法であるから、本件発明10の「複合材料の製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明10と甲2発明3及び甲3発明3とでは、
「複合材料の製造方法であって、以下のステップ:
a)ポリプロピレン基材を提供するステップ、
b)請求項1または5または6のいずれか一項に記載のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
c)請求項1または7?9のいずれか一項に記載のポリマーベースの繊維(PF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
d)ステップb)の前記繊維にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングして繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
e)ステップc)の前記ポリマーベースの繊維(PF)にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングしてポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
を含み、
ここでプロセスステップd)およびe)を同時に、または任意の順序で別々に行う、
前記方法。」で一致し、そして、次の点で相違する。

v 複合材料について、両者は以下の点で相違する。
(相違点1-6)ポリプロピレン基材が、本件発明10が引用する本件発明1では、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するとしているのに対し、甲2発明3及び甲3発明3では明らかでない点

(相違点2-6)官能化ポリプロピレンが、本件発明10が引用する本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンであるのに対し、甲2発明3及び甲3発明3ではマレイン酸官能化ポリプロピレンである点

(相違点3-6)本件発明10が引用する本件発明1では、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである接着促進剤(AP)を0.1?7.0重量%含むとしているのに対し、甲2発明及び甲3発明ではマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を9.3重量%含むことが特定され、そして、これが接着促進剤であることが明らかでない点

(相違点4-6)ポリプロピレン基材が、本件発明10が引用する本件発明1では、半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO)であるのに対して、甲2発明3及び甲3発明3では、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)である点

(相違点6-6)ポリプロピレンの配合割合が、本件発明10が引用する本件発明1では、50.0?88.0重量%であるのに対し、甲2発明3及び甲3発明3では、42.5重量%である点

vi 複合材料の製造方法について、両者は以下の点で相違する。
(相違点5-6)本件発明10では、f)任意に、ステップd)の前記繊維補強ポリプロピレン基材およびステップe)の得られた前記ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材をブレンドすることによって得られる組成物を射出成形するステップを含むのに対して、甲2発明3及び甲3発明3では明らかでない点

(b)判断
事案に鑑み、相違点4-6から検討する。
相違点4-6は、上記「(ア)a」で述べた相違点4-4と同じであるところ、上記「(ア)b」で述べた理由と同じ理由により相違点4-6は実質的な相違点であり、また、課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。
そうすると、相違点1-6?3-6、5-6及び6-6ついて検討するまでもなく、本件発明10は甲2発明3及び甲3発明3と同一であるとはいえない。

(エ)本件発明11及び12について
本件発明11及び12は、本件発明10を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明11及び12は、上記「(ウ)」で示した理由と同じ理由により、本件発明11及び12は甲2発明3及び甲3発明3と同一であるとはいえない。

(オ)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3によっては、本件発明1、5、7?14に係る特許を取り消すことはできない。

(2)申立理由4について
申立理由4は、上記「第4 2(4)」で述べたとおり、本件明細書等には、ポリプロピレン基材として異相プロピレンコポリマー(HECO)を使用した実施例が記載されておらず、複合材料の発明においては実際に製造し評価しなければ特性を把握することができないから、ポリプロピレン基材として異相プロピレンコポリマー(HECO)を使用した複合材料が、発明の課題を解決できると認識できない、というものである。
そこで、この申立理由について検討する。

ア 特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

イ 特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は、上記「第3」に記載したとおりであり、特に、複合材料に含まれるポリプロピレン基材としては、「i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);または
ii)プロピレンホモポリマー(hPP)であり;」と記載されている。

ウ 発明の詳細な説明の記載
本件明細書等の発明の詳細な説明の段落【0002】には、ガラス繊維補強ポリプロピレンは高い剛性および強度を必要とする用途のために確立された材料であるが、中程度ないし乏しい衝撃強さ、および主に脆性破壊機構が欠点である旨の記載がされ、同【0003】には、靱性と剛性との間の改善された衝撃強度を有する複合材料が必要とされる旨の記載がされ、同【0004】には、「複合材料の総重量に基づいて25?92.5重量%のポリプロピレン基材であって、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有し、ここで当該ポリプロピレン基材がi)(半結晶性)ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);またはii)プロピレンホモポリマー(hPP)である前記ポリプロピレン基材;および複合材料の総重量に基づいて5?50重量%のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF);および複合材料の総重量に基づいて2.5?25重量%のポリマーベースの繊維(PF)を含む複合材料を提供することにある。」ことが記載されている。
また、同【0043】?【0047】には、ポリプロピレン基材が、プロピレンホモポリマー(hPP)である場合と、異相プロピレンコポリマー(HECO)である場合に分けて、複合材料における、23℃におけるシャルピー切り欠き衝撃強度の値の範囲、引張係数対シャルピー切り欠き衝撃強度の相関関係の値の範囲が記載され、同【0048】?【0049】には、複合材料がガラス繊維又は炭素繊維を含む場合の引張弾性率対シャルピー切り欠き衝撃強度の相関関係の値の範囲が記載されている。
さらに、同【0272】?【0302】に記載された実施例では、特にIE4又はIE5において、ポリプロピレン基材としてプロピレンホモポリマー(hPP)を65.3重量%又は68.5重量%、炭素繊維(CF)を20.3重量%、ポリマーベースの繊維(PF)としてPET繊維を9.43重量%又は6.23重量%、並びに、接着促進剤として、無水マレイン酸で官能化されたエチレンポリプロピレンコポリマーを5.06重量%の量で含む複合材料が記載され、複合材料の物性として、引張係数、引張強度、降伏点引張伸び、破断点引張伸び、及び、NIS(切り欠き衝撃強度、23℃)の値が記載されている。

エ 本件発明の課題について
本件発明の課題は、発明の詳細な説明の段落【0003】及び本件明細書等の全体の記載からみて、衝撃強度が改善された複合材料を提供することであると認める。

オ 判断
本件明細書等の発明の詳細な説明には、複合材料のポリプロピレン基材として、プロピレンホモポリマー(hPP)及び異相プロピレンコポリマー(HECO)が具体的に記載され、異相プロピレンコポリマー(HECO)を用いた複合材料におけるシャルピー切り欠き衝撃強度(23℃)の値の範囲が具体的に記載されている。そして、複合材料に含まれるポリプロピレン基材として、プロピレンホモポリマー(hPP)、異相プロピレンコポリマー(HECO)のいずれの場合であっても、複合材料における23℃におけるシャルピー切り欠き衝撃強度の値の範囲、引張係数対シャルピー切り欠き衝撃強度の相関関係の値の範囲は同じ範囲であることが記載されており(【0043】?【0047】)、また、複合材料にガラス繊維又は炭素繊維のいずれかを含む場合であっても、引張弾性率対シャルピー切り欠き衝撃強度の相関関係の値の範囲は同じであることが記載されている。さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO)の方がエラストマー性に優れることは公知であるとしても、プロピレンホモポリマー(hPP)及び異相プロピレンコポリマー(HECO)は、両者ともポリプロピレンを有しており、同様の剛性や靱性を有する重合体であるといえる。そして、実施例においては、ポリプロピレン基材としてプロピレンホモポリマー(hPP)を使用すると、23℃における切り欠き衝撃強度が優れた複合材料が得られることが具体的なデータとともに記載されている。

そうすると、本件明細書等の発明の詳細な説明における上記した記載をみれば、ポリプロピレン基材として異相プロピレンコポリマー(HECO)を用いた場合であっても、当業者であれば本件発明の課題を解決できると認識できるということができる。
これに対して、申立人は、実験データ等を提出して申立理由4の主張をしている訳でもない。

カ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲の記載が、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえず、申立理由4によっては、本件発明1、5、7?14に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
特許第6639738号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?14]について訂正することを認める。
請求項4に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項4に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、特許法第120条の8第1項で準用する135条により却下する。
当審が通知した取消理由及び特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明1、5、7?14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、5、7?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、以下のもの
a)複合材料の総重量に基づいて50.0?88.0重量%の、ISO 1133に従って測定して3.0?140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材であって、ここで前記ポリプロピレン基材が、
i)半結晶性ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);および
b)複合材料の総重量に基づいて8.6?45.0重量%のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF);および
c)複合材料の総重量に基づいて2.5?20.0重量%の、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF);および
d)複合材料の総重量に基づいて0.1?7.0重量%の無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである接着促進剤(AP)、
を含み、
ここで前記ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)の前記ポリマーベースの繊維(PF)に対する重量比[(GF)または(CF)/(PF)]が少なくとも2である、
前記複合材料。
【請求項2】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)が
a)5.0?120.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR_(2)(230℃、2.16kg)、および/または
b)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて15.0?50.0重量%のキシレン低温可溶性(XCS)画分(25℃)、および/または
c)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)に基づいて30.0mol%以下のコモノマー含有量
を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)が
a)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の前記非晶質画分(AM)に基づいて30.0?60.0mol%の範囲内のコモノマー含有量、および/または
b)1.8?4.0dl/gの範囲内の固有粘度(IV)
を有する、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
削除
【請求項5】
前記ガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)が5?30μmの範囲内の繊維平均直径および/または0.1?20mmの平均繊維長を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記ガラス繊維(GF)がサイジング剤を含む、請求項1?3、5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記ポリマーベースの繊維(PF)がポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリアミド(PA)繊維およびそれらの混合物から選択される、請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記ポリマーベースの繊維(PF)が
i)0.1?20mmの平均繊維長、および/または
ii)5?30μmの範囲内の繊維平均直径、および/または
iii)3.0cN/dtex?17cN/dtexの引張強さ
を有する、請求項1?3、5?7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記ポリマーベースの繊維(PF)のISO 11357-3による溶融温度Tmが、前記ポリプロピレン基材のISO 11357-3による溶融温度Tmよりも40℃以上高い、請求項1?3、5?8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
請求項1?3、5?9のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法であって、以下のステップ:
a)請求項1?3のいずれか一項に記載のポリプロピレン基材を提供するステップ、
b)請求項1または5または6のいずれか一項に記載のガラス繊維(GF)または炭素繊維(CF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
c)請求項1または7?9のいずれか一項に記載のポリマーベースの繊維(PF)を連続繊維の形態で提供するステップ、
d)ステップb)の前記繊維にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングして繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、
e)ステップc)の前記ポリマーベースの繊維(PF)にステップa)の前記ポリプロピレン基材を含浸およびコーティングしてポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材を得るステップ、ならびに
f)任意に、ステップd)の前記繊維補強ポリプロピレン基材およびステップe)の得られた前記ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材をブレンドすることによって得られる組成物を射出成形するステップ
を含み、
ここでプロセスステップd)およびe)を同時に、または任意の順序で別々に行う、
前記方法。
【請求項11】
プロセスステップd)およびe)を引抜成形によって実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プロセスステップd)およびe)を別々に実施し、ステップd)の前記繊維補強ポリプロピレン基材およびステップe)の前記ポリマーベースの繊維補強ポリプロピレン基材をドライブレンドし、その後任意にステップf)を実施する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1?3、5?12のいずれか一項に記載の複合材料を含む、成形品。
【請求項14】
自動車用物品である、請求項13に記載の成形品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-28 
出願番号 特願2019-515323(P2019-515323)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (C08L)
P 1 652・ 113- YAA (C08L)
P 1 652・ 16- YAA (C08L)
P 1 652・ 121- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中西 聡  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 佐藤 健史
橋本 栄和
登録日 2020-01-07 
登録番号 特許第6639738号(P6639738)
権利者 ボレアリス エージー
発明の名称 繊維補強ポリプロピレン複合材料  
代理人 芝 哲央  
代理人 岩池 満  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 林 一好  
代理人 岩池 満  
代理人 林 一好  
代理人 芝 哲央  

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