• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1378359
審判番号 不服2020-12173  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-31 
確定日 2021-09-24 
事件の表示 特願2016- 31296「画像形成装置および制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-151165〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月22日の出願であって、令和1年10月2日付けで拒絶理由が通知され、同年11月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月9日付けで拒絶理由(最後)が通知され、令和2年2月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月1日付けで同年2月7日付けの手続補正書が却下されるとともに拒絶査定がなされたのに対し、同年8月31日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和2年8月31日付けで提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年8月31日付けで提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和1年11月21日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至13を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至13へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
用紙搬送路を備え、当該用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送部と、
前記用紙搬送路上の前記用紙を検知する用紙検知部と、
前記用紙に関する印刷ジョブを取得するジョブ取得部と、
前記用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて前記用紙を搬送する第1の用紙搬送と、前記用紙情報には基づかずに前記用紙検知部の検知結果に基づいて前記用紙を搬送し、外部に排出する第2の用紙搬送と、のいずれかの搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記用紙搬送路に対して複数の搬送区間を割り付け、前記複数の搬送区間の各々について、当該搬送区間と、当該搬送区間から前記外部に至る経路にあるすべての搬送区間とを加えた排出経路を設定し、
前記用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合、
前記用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路においてのみ前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記用紙搬送路上の用紙ジャムに起因して前記第1の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送が再開される場合、
前記用紙搬送に障害となる残留用紙がユーザーによって除去された後、前記用紙搬送に障害とならない残留用紙について前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の用紙搬送が実施されている間、あるいは前記用紙搬送路上の用紙ジャムに起因して前記第1の用紙搬送が中断されて用紙搬送が停止している間に前記画像形成装置の電源がオフされて前記画像形成装置が停止した後、前記電源がオンされて前記画像形成装置が起動し前記用紙搬送路の用紙搬送が再開される場合、
前記用紙搬送に障害となる残留用紙がユーザーによって除去された後、前記用紙搬送に障害とならない残留用紙について前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2の用紙搬送が実施されている間、前記用紙搬送路を搬送される各々の前記残留用紙について、前記残留用紙が前記用紙搬送路上の第1の位置に滞留している滞留時間と、前記残留用紙が第1の位置から当該第1の位置よりも用紙搬送方向の下流に位置する第2の位置に搬送されるまでの到達時間に基づいて、前記残留用紙が正常に搬送されているか否かを判断する、請求項1?3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記用紙検知部は、
前記第1および第2の位置にそれぞれ配置された第1および第2の検知センサーを含む複数の検知センサーを備え、
前記制御部は、
前記用紙搬送路を搬送される前記残留用紙が前記第1の検知センサーの検知範囲に存在している時間を計測することにより前記滞留時間を取得し、前記残留用紙が前記第1の検知センサーによって検知されてから前記第2の検知センサーによって検知されるまでの時間を計測することにより前記到達時間を取得する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記用紙搬送路を搬送される前記残留用紙の速度、前記残留用紙の搬送方向の長さ、前記滞留時間および前記到達時間に基づいて、前記残留用紙が正常に搬送されているか否かを判断する、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記滞留時間が所定の滞留時間以下である場合に前記残留用紙が正常に搬送されていると判断する、請求項4?6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記到達時間が所定の到達時間以下である場合に前記残留用紙が正常に搬送されていると判断する、請求項4?7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記所定の滞留時間は、
前記残留用紙のうち用紙搬送方向に最大の長さを有する用紙が、2枚連続して前記第1の位置を通過する場合に要する時間に基づいて設定される、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記所定の滞留時間は、
前記用紙搬送路を搬送可能な用紙のうち用紙搬送方向に最大の長さを有する用紙が、2枚連続して前記第1の位置の通過する場合に要する時間に基づいて設定される、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2の用紙搬送において、
前記残留用紙の各々について前記用紙搬送路上における搬送異常を監視し、
すべての前記残留用紙について搬送異常の監視が完了した場合に前記すべての残留用紙の排出が完了したと判断する、請求項1?10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第2の用紙搬送において、
前記複数の搬送区間の各々について優先順位を設定し、当該優先順位に従って、前記残留用紙を外部に排出するように前記用紙搬送部を制御する、請求項1?11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
画像形成装置の用紙搬送路に対して複数の搬送区間を割り付け、前記複数の搬送区間の各々について、当該搬送区間と、当該搬送区間から前記画像形成装置の外部に至る経路にあるすべての搬送区間とを加えた排出経路を設定する手順と、
印刷処理を開始し、印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて、前記画像形成装置の用紙搬送路に沿って用紙を搬送する手順と、
前記用紙搬送路上でジャムが発生したか否かを判断する手順と、
前記用紙搬送路上でジャムが発生した場合、前記印刷処理を中断し、前記用紙搬送路上の用紙搬送を中断する手順と、
前記用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合、前記用紙搬送路上の用紙を検知する用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路においてのみ前記残留用紙を搬送し、前記外部に排出する手順と、を前記画像形成装置に実行させるための制御プログラム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
用紙搬送路を備え、当該用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送部と、
前記用紙搬送路上の前記用紙を検知する用紙検知部と、
前記用紙に関する印刷ジョブを取得するジョブ取得部と、
前記用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて前記用紙を搬送する第1の用紙搬送と、前記用紙情報には基づかずに前記用紙検知部の検知結果に基づいて前記用紙を搬送し、外部に排出する第2の用紙搬送と、のいずれかの搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記用紙搬送路に対して複数の搬送区間を割り付け、前記複数の搬送区間の各々について、当該搬送区間と、当該搬送区間から前記外部に至る経路にあるすべての搬送区間とを加えた排出経路を設定し、
前記用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合、
前記用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路において前記第2の用紙搬送を実施した後、未起動の搬送区間に対し、前記搬送区間の搬送を所定の駆動時間行い、前記搬送区間において残留用紙が検知された場合、前記搬送区間に対する排出経路に対して前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記用紙搬送路上の用紙ジャムに起因して前記第1の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送が再開される場合、
前記用紙搬送に障害となる残留用紙がユーザーによって除去された後、前記用紙搬送に障害とならない残留用紙について前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の用紙搬送が実施されている間、あるいは前記用紙搬送路上の用紙ジャムに起因して前記第1の用紙搬送が中断されて用紙搬送が停止している間に前記画像形成装置の電源がオフされて前記画像形成装置が停止した後、前記電源がオンされて前記画像形成装置が起動し前記用紙搬送路の用紙搬送が再開される場合、
前記用紙搬送に障害となる残留用紙がユーザーによって除去された後、前記用紙搬送に障害とならない残留用紙について前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2の用紙搬送が実施されている間、前記用紙搬送路を搬送される各々の前記残留用紙について、前記残留用紙が前記用紙搬送路上の第1の位置に滞留している滞留時間と、前記残留用紙が第1の位置から当該第1の位置よりも用紙搬送方向の下流に位置する第2の位置に搬送されるまでの到達時間に基づいて、前記残留用紙が正常に搬送されているか否かを判断する、請求項1?3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記用紙検知部は、
前記第1および第2の位置にそれぞれ配置された第1および第2の検知センサーを含む複数の検知センサーを備え、
前記制御部は、
前記用紙搬送路を搬送される前記残留用紙が前記第1の検知センサーの検知範囲に存在している時間を計測することにより前記滞留時間を取得し、前記残留用紙が前記第1の検知センサーによって検知されてから前記第2の検知センサーによって検知されるまでの時間を計測することにより前記到達時間を取得する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記用紙搬送路を搬送される前記残留用紙の速度、前記残留用紙の搬送方向の長さ、前記滞留時間および前記到達時間に基づいて、前記残留用紙が正常に搬送されているか否かを判断する、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記滞留時間が所定の滞留時間以下である場合に前記残留用紙が正常に搬送されていると判断する、請求項4?6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記到達時間が所定の到達時間以下である場合に前記残留用紙が正常に搬送されていると判断する、請求項4?7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記所定の滞留時間は、
前記残留用紙のうち用紙搬送方向に最大の長さを有する用紙が、2枚連続して前記第1の位置を通過する場合に要する時間に基づいて設定される、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記所定の滞留時間は、
前記用紙搬送路を搬送可能な用紙のうち用紙搬送方向に最大の長さを有する用紙が、2枚連続して前記第1の位置の通過する場合に要する時間に基づいて設定される、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2の用紙搬送において、
前記残留用紙の各々について前記用紙搬送路上における搬送異常を監視し、
すべての前記残留用紙について搬送異常の監視が完了した場合に前記すべての残留用紙の排出が完了したと判断する、請求項1?10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第2の用紙搬送において、
前記複数の搬送区間の各々について優先順位を設定し、当該優先順位に従って、前記残留用紙を外部に排出するように前記用紙搬送部を制御する、請求項1?11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
画像形成装置の用紙搬送路に対して複数の搬送区間を割り付け、前記複数の搬送区間の各々について、当該搬送区間と、当該搬送区間から前記画像形成装置の外部に至る経路にあるすべての搬送区間とを加えた排出経路を設定する手順と、
印刷処理を開始し、印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて、前記画像形成装置の用紙搬送路に沿って用紙を搬送する手順と、
前記用紙搬送路上でジャムが発生したか否かを判断する手順と、
前記用紙搬送路上でジャムが発生した場合、前記印刷処理を中断し、前記用紙搬送路上の用紙搬送を中断する手順と、
前記用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合、前記用紙搬送路上の用紙を検知する用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路において前記残留用紙を搬送し、前記外部に排出した後、未起動の搬送区間に対し、前記搬送区間の搬送を所定の駆動時間行い、前記搬送区間において残留用紙が検知された場合、前記搬送区間に対する排出経路おいて前記残留用紙を搬送し、前記外部に排出する手順と、を前記画像形成装置に実行させるための制御プログラム。」

2 本件補正について
(1)補正目的について
特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明瞭でない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
そこで、本件補正について、以下、検討する。
本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路においてのみ前記第2の用紙搬送を実施する」との特定事項が「前記用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路において前記第2の用紙搬送を実施した後、未起動の搬送区間に対し、前記搬送区間の搬送を所定の駆動時間行い、前記搬送区間において残留用紙が検知された場合、前記搬送区間に対する排出経路に対して前記第2の用紙搬送を実施する」と補正された(以下「補正事項1」という。)。
上記補正事項1により、第2の用紙搬送を実施する排出経路が、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1においては、「残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路においてのみ」であったところ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1においては、「残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路」に加え、「第2の用紙搬送を実施した後、未起動の搬送区間に対し、前記搬送区間の搬送を所定の駆動時間行い、前記搬送区間において残留用紙が検知された場合、前記搬送区間に対する排出経路」、へと変更することとなるのであるから、上記補正事項1は、発明の対象を変更するものであり、また、本件補正前の請求項1において特定されている発明特定事項をさらに特定するものには該当しないから、上記補正事項1は、同項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、上記補正事項1が、同項第1、3、4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。

本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項13に対しても、上記補正事項1と同様の補正(以下「補正事項2」という。)がなされた。
そうすると、補正事項2も、上記補正事項1と同様に、特許法第17条の2第5項第1?4号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。

(2)小括
よって、上記補正事項1及び2を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものではない。
なお、審判請求人は、審判請求書において、上記補正事項1及び2は、令和1年12月9日付けの拒絶理由(最後)における記載不備及び新規事項の追加の拒絶理由を解消するものであると主張するが、「のみ」が明確でないとの拒絶理由(最後)の指摘に対応した補正事項かについては、「のみ」を削除したことは、拒絶理由(最後)の指摘に対応したものといえるが、「のみ」以外の追加の特定事項は、「のみ」の内容を明瞭とするものではないから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものとはいえない。
そして、仮に明瞭でない記載の釈明に該当するとしても、下記のとおり、特許を受けることができないものであるから、結論に影響しない。

3 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正前の請求項1及び13に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないが、念のため、本件補正前の請求項1に係る補正が限定的減縮であると仮定して、本件補正後の請求項1に係る発明(令和2年8月31日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由において引用された特開昭62-85261号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「「産業上の利用分野」
本発明は裁断された用紙にコピーを行う複写機に係わり、特に複写機内部で発生した紙詰りを処理した後に搬送路にまだ用紙が存在する場合に、この用紙を排出させるための排出制御方法に関する。」(1頁右欄10?15行)
イ 「そこで本発明の目的は、ジャムの生じた用紙の除去後に開始される残存用紙の自動排出処理を支障なく行わせることのできる用紙の排出制御方法を提供することにある。」(2頁右下欄6?9行)
ウ 「この複写機は複写機本体11の内部に3段の供給トレイ12?14を配置している。これらの供給トレイ12?14は、収容されている用紙15が使用されるのに従いそれらの底板が上方に持ち上げられるようになっており、一番上の用紙はそれぞれ常に所定の位置(高さ)に設定されるようになっている。
3段の供給トレイ12?14のそれぞれわずか上方には、フィードベルト16?18がそれぞれ配置されている。用紙供給のために例えば上段供給トレイ12が選択されると、対応する上段フィードベルト16内のエアーが吸引され、用紙15が1枚だけこの上段フィードベルト16に吸引される。
上段フィードベルト16は所定のタイミングで回転を開始するので、吸引された用紙15は第2の用紙検知センサ(以下この明細書では用紙検知センサを単にセンサと略称する。)S2によって検知された後、バーチカル・トランスポート21の方向に搬送される。バーチカル・トランスポート21に到達した用紙15は、このトランスポートによって下方に搬送され、レジ・トランスポート22に到達する。レジ・トランスポート22ではレジストレーションロール23によって搬送タイミングの調整が行われる。この結果、所定のタイミングで搬送を開始された用紙15は、第5のセンサS5を経た後、感光体ベルト24と転写器25の間を通過し、このときトナー像の転写が行われる。
ところで、感光体ベルト24は無端ベルトであり、メインモータ27の駆動力を伝達されたドライブロール28によって矢印29方向に定速回転されるようになっている。感光体ベルト24と近接して配置されている帯電器31はこのベルト表面を均一に帯電する。露光ステーション32は、プラテン33にセットされた原稿(図示せず)を内蔵のフラッシュランプで露光し、光像をこの帯電後の感光体ベルト24に照射する。このようにして静電潜像の形成が行われる。この後、静電潜像は現像器34で現像され、トナー像が形成される。このトナー像が前記した用紙15に転写されることになる。
トナー像転写後の用紙15は、ブリフューザ・トランスポート36によって今度は上方に搬送される。ブリフューザ・トランスポート36には、用紙の通過を検知するための第6のセンサS6が配置されている。プリフューザ・トランスポート36を通過した用紙15は、定着ロール37を通過してここで熱定着される。定着後の用紙15はボストフューザ・トランスポート38によって更に上方まで搬送される。
ボストフューザ・トランスポート38には用紙検出のための第7?第10のセンサS7?S10と、搬送路切り換え用の3つのゲート41?43、並びに用紙15の表裏を反転するためのインバータユニット45が配置されている。このうち、第7のセンサS7は定着ローラ37の近傍に、また第8のセンサS8は第1のゲート41の手前にそれぞれ配置されている。
第1のゲート41は用紙をインバータ45に送り込むか否かの切り換えを行う。インバータ45に送り込まれて表裏の反転した用紙およびインバータ45方向に送りこまれなかった用紙は、第2のゲート42の配置されている場所まで搬送される。第2のゲート42は、この用紙を複写機本体11の上面に設けられた排出トレイ46に向けて排出するか、更に後段の搬送路に受け渡すかを選択するゲートである。排出トレイ46の近傍には第9のセンサS9が設けられており、用紙が排出されるかどうかの検出を行うようになっている。
第2のゲート42によって排出トレイ46方向に排出されなかった用紙は、第3のゲート43に到達する。この第3のゲート43によって、用紙はホリゾンタル・トランスポート48を経て図示しないパージ・トレイに向けて排出されるか、デュプレックス・トレイ49に排出されるかが選択される。第10のセンサS10はこの第3のゲートの近傍に配置されている。」(3頁左上欄13行?4頁左上欄10行)
エ 「なお、この複写機でメインモータ27は用紙15の撤送駆動源となるので、このモータの回転に同期して各種タイミングを制御する必要がある。」(4頁右上3?5行)
オ 「第2図は以上のような構成の複写機におけるスタートボタン(図示せず)を押した場合の制御動作の概略を表わしたものである。この複写機の図示しないコンソールにはプリントの開始等を指示するためのスタートボタンが配置されている。このスタートボタンを押すとメインモータ27が駆動を開始される(ステップ○1(当審注:丸数字を「○数字」と表記する。以下同様。))。図示しないCPU(中央処理装置)は、この状態で、同じく図示しないRAM(ランダム・アクセス・メモリ)の所定の領域を読み出し、これによって複写機がパージ制御を行わなければならない状態であるかどうかを判断する(ステップ○2)。
ここでパージ制御とは、複写機で発生したジャムを除去した後、搬送路内にまだ残っている用紙を排出するための自動排出処理モード上での制御である。ジャムが発生し、該当する用紙が搬送路から除去されると、前記したRAMの所定領域にパージ制御を行わせるためのデータが書き込まれるようになっており、CPUはこれを基にパージ制御の必要の有無を判別することになる。
パージ制御による用紙の排出が必要な場合には(Y)、その制御が行われ(ステップ○3)、こ後(当審注:「この後」の誤記と認める。)コピー作業が行われる(ステップ○4)。これに対して、パージ制御による用紙の排出が必要でない場合には(ステップ○2;N)、直ちにコピー作業が開始される(ステップ○4)ことになる。 コピー作業が終了したら、メインモータ27の駆動が停止され(ステップ○5)、複写機の制御が終了する(エンド)。」(4頁右上欄末行?右下欄8行)
カ 「第3図は、パージ制御の詳細として用紙の自動排出について用紙のまだ排出動作の行われない段階の作業、すなわち始動ルーチンの部分を表わしたものである。パージ制御が行われる場合には、この第3図においてまずオン・センサ・カウンタ(OSカウンタ)の内容がクリアされる(ステップ○1)。ここでオン・センサ・カウンタとは、ジャム除去後の撒送路上に用紙が何枚存在するかをカウントするカウンタである。オン・センサ・カウンタの計数結果は、前記したRAMの所定の領域に書き込まれ、逐次更新される。
オン・センサ・カウンタがクリアされたら、CPUは次に各センサS1?S10に対応して設けられたオン用多重カウンタ(OMカウンタ)の内容をすべて零にする(ステップ○2)。オン用多重カウンタは、パージ期間の所定時間内に各センサS1?S10がカウントする用紙の枚数を記録するカウンタである。このオン用多重カウンタの計数値も前記したRAMの他の所定領域に書き込まれ、適宜その内容が更新されることになる。
以上の作業が終了したら、CPUはRAMの他の領域に割り振られたセンサバッファ(Sバッファ)に第1のセンサS1をセットする(ステップ○3)。これにより、CPUはまず第1のセンサS1について用紙が存在するかどうかの判別作業を開始することになる。
…このようにして、第10のセンサS10までの現時点での用紙検知の有無がチェックされ、用紙が存在しないセンサに対してはオン変化検知要求がセットされることになる。
これに対して、第2のセンサS2について用紙の検知が行われたとする(ステップ○4;Y)。この場合、センサバッファで示されるセンサは第2のセンサS2なので(ステップ○10、○11;N)、センサバッファで指示される次のセンサ用のオン用多重カウンタを1だけ加算する(ステップ○12)。ここでセンサバッファで指示される次のセンサとは、次の第1表に示すようなものである。
(以下余白)

すなわち、センサバッファで示されている現在のセンサは第2のセンサS2なので、第5のセンサS5についてのオン用多重カウンタが+1されることになる。これは、第1図で了解されるように、第2のセンサS2で検出された用紙は、仮にジャムを発生させないで搬送されるとすれば、バーチカル・トランスポート21を経てレジ・トランスポート22に到達し、ここに配置されている第5のセンサS5によってその先端が検知されるはずだからである。
このようにして加算された第5のセンサS5のカウント値が+1であれば(ステップ○13;Y)、この第5のセンサS5についてのオン変化検知要求をセットする(ステップ〇14)。これは、第5のセンサS5で用紙の先端検知を行うためである。この後、センサバッファで示されるセンサすなわち第2のセンサS2から指示された第5のセンサS5へ向かう用紙に対するオン・ジャムタイマがセットされる(ステップ〇15)。これは、第5のセンサS5で用紙の先端が検知されるまでの最大時間をセットして、この時間内に用紙の先端が検知されないときには、ジャムが発生したと判断しようとするものである。
なお、ステップ○13でオン用多重カウンタの内容が+1でなければ(N)、第2のセンサS2から第5のセンサS5に至るオン・ジャムタイマが直接セットされる(ステップ○15)。これは、例えば第1のセンサS1について用紙の検知が行われてしたと(当審注:「行われていたと」の誤記と認める。)すると、この段階で第5のセンサS5についてオン変化検知要求のセットが行われる(ステップ○14)ので、新たに行う必要がないからである。
オン・ジャムタイマがセットされたら、センサバッファで示されるセンサすなわち第2のセンサS2についてオフ変化検知要求がセットされる(ステップ○16)。これは現在検知の行われている第2のセンサS2が用紙の後端を検知できるかどうかを調べるためである。このため、第2のセンサS2が用紙の後端を検知するまでの最大時間をオフ・ジャムタイマでセットする(ステップ○17)。この後、オン・センサ・カウンタが1だけ加算される(ステップ○18)。これは、第2のセンサS2で用紙が1枚検知されたことをカウントするためである。
以上のようにして第2のセンサS2についての作業が終了したらセンサバッファの内容が更新され(ステップ○9)、第3のセンサS3について同様の作業が行われる。このようにして、第7のセンサS7まで、用紙を検知している場合のジャム検知作業の設定が行われる。」(4頁右下欄9行?6頁左下欄18行)
キ 「このようにして第10のセンサS10まですべてのセンサのチェックが行われたら(ステップ○8;N)、CPUはオン・センサ・カウンタが零であるかどうかを判断する(ステップ○28)。オン・センサ・カウンタが零であれば(Y)、用紙はそれぞれのセンサによって検知されていないことになる。そこでこの場合には、1番長い距離のセンサ間に用紙が存在することも考慮にいれてパージタイマ(Pタイマ)を2秒にセットし、オール・オフ・フラグ(ALL OFF FLAG)をセットする(ステップ〇29)。このオール・オフ・フラグは、すべてのセンサS1?S10が用紙を初期的に検出していないことを示すものである。
これに対して、オン・センサ・カウンタが零でない場合には(ステップ○28;N)、パージタイマを5秒にセットし、オール・オフ・フラグをリセットする(ステップ○30)。
ここで5秒のパージ時間は、第1のセンサS1に用紙があったとしても、第9または第10のセンサS9またはS10を通過してこれが機外に出るまでに十分な時間をいう。
以上のようにして、自動排出始動ルーチンが終了する。この後、第2図で示したメインモータ27の駆動が開始され(第2図ステップ○1)、パージ制御が行われることになる(第2図ステップ○3)。」(7頁右上欄10行?左下欄15行)
ク 「第5図は、このパージ制御における自動排出ラン(RUN)中の各センサのオン処理を表わしたものである。この各センサS1?S10のオン処理においては、オン変化要求を行ったセンサについてオン変化(用紙の先端検知)が行われたとき、これを処理するものである。
この処理では、まずセンサバッファによって示されたオン・ジャムタイマをリセットする(ステップ○1)。このとき、多重にタイマがセットさている場合には、最初にタイムアウトするタイマのみがセットされる。
さて、センサバッファによって示されるオン変化したセンサが第8のセンサS8であったとすると(ステップ○2;Y)、第3図で示したルーチンと同様に複写機本体11にパージトレイがついているかどうかが判断される(ステップ○3)。パージトレイがついている場合には(Y)、第10のセンサS10のオン用多重カウンタが1だけ加算される(ステップ○4)。
この結果、第10のセンサS10のオン用多重カウンタのカウント値が+1であれば(ステップ○5;Y)、第10のセンサS10まで用紙の先端が到達することを検知するために第10のセンサS10についてオン変化検知要求がセットされる(ステップ○6)。この後、このセンサS10についてオン・ジャムタイマがセットされることになる(ステップ○7)。
これに対して第10のセンサS10のオン用多重カウンタのカウント値が+1でなければ(ステップ○5;N)、このセンサS10についてのオン・ジャムタイマが直接セットされることになる。
この後、オン変化が検知された第8のセンサS8について、用紙の後端を検知するためにオフ変化検知要求がセットされる(ステップ○8)。そしてこの第8のセンサS8についてオフ・ジャムタイマがセットされることになる(ステップ○9)。
CPUは次に、先のルーチンで説明したオール・オフ・フラグがリセットされているかどうかを判別する(ステップ○10)。オール・オフ・フラグがリセットされていない場合、すなわちメインモータ27の始動前にすべてのセンサS1?S10で用紙の検知が行われていなかった場合には(N)用紙が新たに検知されたことになる。従ってこの場合には、オール・オフ・フラグがリセットされ(ステップ○11)、パージタイマの2秒間の設定がキャンセルされ、4秒間に再設定される(ステップ○12)。すなわち、これで最大6秒間のパージ期間が設定され、用紙の排出処理が行われることになる。
パージタイマが再設定されたら、センサバッファで示されるセンサすなわち第8のセンサS8についてのオン用多重カウンタが1だけカウントダウンされる(ステップ○13)。これは先にオン用多重カウンタを1だけ加算していたのに対応させたものである。この結果として、この第8のセンサS8についてのオン用多重カウンタのカウント値が零にならなければ(ステップ○14;N)、再度このセンサS8のオン変化検知要求をセットする(ステップ○15)。
これに対して、このセンサS8のオン用多重カウンタが零になれば、用紙の先端検知を行う必要がないので、オン変化検知要求をセットすることなく、このルーチンが終了する。
ステップ○3に戻って複写機本体11にパージトレイがついていなかった場合には(N)、第9のセンサS9のオン用多重カウンタが1だけ加算される(ステップ(○16)。この結果としてこのオン用多重カウンタのカウント値が+1となれば(ステップ○17;Y)、第9のセンサS9について用紙の先端検知のためのオン変化検知要求がセットされる(ステップ○18)。そしてこの第9のセンサS9についてオン・ジャムタイマがセットされる(ステップ○19)。この後、センサバッファで示されるセンサすなわち第8のセンサS8についてのオフ変化検知要求がセットされ(ステップ○8)、このセンサS8についてのジャムタイマがセットされる(ステップ○10)。以下同様である(ステップ○11?○15)。
次にセンサバッファで示されるオン変化したセンサが第1から第7のセンサであったとする(ステップ○2、○20:N)。この場合にはセンサバッファで指示されるセンサの次のセンサ用オン用多重カウンタが1だけ加算される(ステップ○21)。ここでセンサバッファで指示されるセンサの次のセンサとは、先の第1表に示す内容と同一である。例えばセンサバッファで示されるオン変化したセンサが第2のセンサS2であれば、第5のセンサS5についてのオン用多重カウンタが+1されることになる。これは第3図の自動排出始動ルーチンで説明したと同様に、第2のセンサS2が用紙の先端を検知した後には、第5のセンサS5へと用紙が搬送されるはずだからである。
この+1されたオン用多重カウンタのカウント値がこの結果+1となれば(ステップ○22;Y)、このセンサで用紙の先端を検知するためのオン変化検知要求がセットされる(ステップ○23)。この後、センサバッファで示されるセンサから、指示された次のセンサへのオン・ジャムタイマがセットされる(ステップ○24)。先の例では、第2のセンサS2から第5のセンサS5へ向かう用紙に対するオン・ジャムタイマがセットされることになる。なお、ステップ○22でオン用多重カウンタの内容が+1でなければ(N)、オン変化要求をセットすることなく、オン・ジャムタイマがセットされることになる。これは、すでにオン変化検知要求がセットされているからである。
センサバッファで示されるオン変化したセンサから、指示された次のセンサへのオン・ジャムタイマがセットされた(ステップ○24)後は、このオン変化したセンサについてのオフ変化検知のための要求がセットされる(ステップ○8)。以下、前記したと同様の動作が行われる(ステップ○9?○15)。
最後に、センサバッファで示されるオン変化したセンサが第9または第10のセンサS9、S10である場合にはくステップ○20;Y)、これらは搬送路の最後に配置されたセンサなのでオフ変化検知要求のみがセットされる(ステップ○8)。以下、前記したと同様の動作が行われる(ステップ○9?○15)。
以上で、自動排出ラン中の各センサS1?S10のオン処理ルーチンの説明を終了する。」(7頁右下欄7行?9頁左上欄16行)
ケ 「



コ 「



サ 「



シ 「




ス 「



セ 上記ウ、エ及び第1図より、メインモータを用紙の撤送駆動源とした複写機は、内部に3段の供給トレイを配置し、3段の供給トレイのそれぞれわずか上方には、フィードベルトがそれぞれ配置され、用紙供給のために供給トレイが選択されると、対応するフィードベルト内のエアーが吸引され、用紙が1枚だけこのフィードベルトに吸引され、吸引された用紙は第2の用紙検知センサによって検知された後、搬送され、第5のセンサを経た後、感光体ベルトと転写器の間を通過し、このときトナー像の転写が行われ、トナー像転写後の用紙は、搬送され、定着ロールを通過してここで熱定着され、定着後の用紙は搬送され、第2のゲートの配置されている場所まで搬送され、第2のゲートは、この用紙を複写機本体の上面に設けられ第9のセンサが設けられた排出トレイに向けて排出するか、近傍に第10のセンサが配置された第3のゲートに受け渡すかを選択し、第2のゲートによって排出トレイ方向に排出されなかった用紙は、第3のゲートに到達し、この第3のゲートによって、用紙はホリゾンタル・トランスポートを経てパージ・トレイに向けて排出されるか、デュプレックス・トレイに排出されるかが選択されるものであると認められる。
ソ 上記オ及び第2図より、複写機は、スタートボタンが押されると、用紙の撤送駆動源となるメインモータが駆動を開始し、パージ制御の必要の有無が判別され、パージ制御による用紙の排出が必要な場合には、複写機で発生したジャムが除去された後、搬送路内にまだ残っている用紙を排出し、この後コピー作業を行い、パージ制御による用紙の排出が必要でない場合には、直ちにコピー作業を開始し、コピー作業が終了したら、メインモータの駆動を停止する、ものであって、ジャムが発生し、該当する用紙が搬送路から除去されると、RAMの所定領域にパージ制御を行わせるためのデータが書き込まれるようになっており、CPUはこれを基にパージ制御の必要の有無を判別し、前記複写機の動作は、CPU(中央処理装置)が制御しているものと認められる。
タ 上記カ及びキ並びに第3図(1/2)及び(2/2)より、パージ制御の始動ルーチンは、ジャム除去後の撒送路上に用紙が何枚存在するかをカウントするカウンタであるオン・センサ・カウンタ(OSカウンタ)の内容がクリアされ、次に各センサに対応して設けられ、パージ期間の所定時間内に各センサがカウントする用紙の枚数を記録するカウンタであるオン用多重カウンタ(OMカウンタ)の内容がすべて零にされ、まず第1のセンサについて用紙が存在するかどうかの判別作業が開始され、このようにして、第10のセンサまでの現時点での用紙検知の有無がチェックされ、用紙が存在しないセンサに対してはオン変化検知要求がセットされ、これに対して、あるセンサについて用紙の検知が行われたとすると、次のセンサ用のオン用多重カウンタが1だけ加算され、オン変化検知要求がセットされ、この後、センサバッファで示されるセンサから指示された次のセンサへ向かう用紙に対して、次のセンサで用紙の先端が検知されるまでの最大時間であって、この時間内に用紙の先端が検知されないときには、ジャムが発生したと判断するオン・ジャムタイマがセットされ、このようにして第10のセンサまですべてのセンサのチェックが行われ、CPUはオン・センサ・カウンタが零であるかどうかが判断され、オン・センサ・カウンタが零であれば(Y)、用紙はそれぞれのセンサによって検知されていないことになり、この場合には、1番長い距離のセンサ間に用紙が存在することも考慮にいれてパージタイマ(Pタイマ)が2秒にセットされ、すべてのセンサが用紙を初期的に検出していないことを示すものであるオール・オフ・フラグ(ALL OFF FLAG)がセットされ、これに対して、オン・センサ・カウンタが零でない場合には、パージタイマを、第1のセンサに用紙があったとしても、第9または第10のセンサを通過してこれが機外に出るまでに十分な時間である5秒にセットされ、オール・オフ・フラグがリセットされることにより、自動排出始動ルーチンが終了し、この後、メインモータの駆動が開始され、パージ制御が行われることになるものと認められる。
チ 上記ク及び第5図より、パージ制御における自動排出ラン(RUN)中であって、オン変化要求を行ったセンサについてオン変化(用紙の先端検知)が行われたとき、これを処理するものである各センサのオン処理は、センサバッファによって示されるオン変化したセンサが第8のセンサであったとすると、複写機本体にパージトレイがついているかどうかが判断され、パージトレイがついている場合には、第10のセンサのオン用多重カウンタが1だけ加算され、第10のセンサについてオン変化検知要求がセットされ、オン・ジャムタイマがセットされ、オール・オフ・フラグがリセットされているかどうかが判別され、オール・オフ・フラグがリセットされていない場合、すなわちメインモータの始動前にすべてのセンサで用紙の検知が行われていなかった場合には、用紙が新たに検知されたことになり、この場合には、オール・オフ・フラグがリセットされ、用紙の排出処理が行われ、次にセンサバッファで示されるオン変化したセンサが第1から第7のセンサであったとすると、この場合にはセンサバッファで指示されるセンサの次のセンサ用オン用多重カウンタが1だけ加算され、この+1されたオン用多重カウンタのカウント値がこの結果+1となれば、このセンサで用紙の先端を検知するためのオン変化検知要求がセットされ、この後、センサバッファで示されるセンサから、指示された次のセンサへのオン・ジャムタイマがセットされ、センサバッファで示されるオン変化したセンサが第9または第10のセンサである場合には、オフ変化検知要求のみがセットされ、自動排出ラン中の各センサのオン処理ルーチンが終了するものであると認められる。

そうすると、上記ア乃至チの記載事項及び上記サの認定事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「メインモータを用紙の撤送駆動源とした複写機は、内部に3段の供給トレイを配置し、3段の供給トレイのそれぞれわずか上方には、フィードベルトがそれぞれ配置され、用紙供給のために供給トレイが選択されると、対応するフィードベルト内のエアーが吸引され、用紙が1枚だけこのフィードベルトに吸引され、吸引された用紙は第2の用紙検知センサによって検知された後、搬送され、第5のセンサを経た後、感光体ベルトと転写器の間を通過し、このときトナー像の転写が行われ、トナー像転写後の用紙は、搬送され、定着ロールを通過してここで熱定着され、定着後の用紙は搬送され、第2のゲートの配置されている場所まで搬送され、第2のゲートは、この用紙を複写機本体の上面に設けられ第9のセンサが設けられた排出トレイに向けて排出するか、近傍に第10のセンサが配置された第3のゲートに受け渡すかを選択し、第2のゲートによって排出トレイ方向に排出されなかった用紙は、第3のゲートに到達し、この第3のゲートによって、用紙はホリゾンタル・トランスポートを経てパージ・トレイに向けて排出されるか、デュプレックス・トレイに排出されるかが選択されるものである複写機であって、
スタートボタンが押されると、用紙の撤送駆動源となるメインモータが駆動を開始し、パージ制御の必要の有無が判別され、パージ制御による用紙の排出が必要な場合には、複写機で発生したジャムが除去された後、搬送路内にまだ残っている用紙を排出し、この後コピー作業を行い、パージ制御による用紙の排出が必要でない場合には、直ちにコピー作業を開始し、コピー作業が終了したら、メインモータの駆動を停止する、ものであって、ジャムが発生し、該当する用紙が搬送路から除去されると、RAMの所定領域にパージ制御を行わせるためのデータが書き込まれるようになっており、CPUによりこれを基にパージ制御の必要の有無が判別され、前記複写機の動作は、CPU(中央処理装置)が制御しているものであり、
パージ制御の始動ルーチンは、ジャム除去後の撒送路上に用紙が何枚存在するかをカウントするカウンタであるオン・センサ・カウンタ(OSカウンタ)の内容がクリアされ、次に各センサに対応して設けられ、パージ期間の所定時間内に各センサがカウントする用紙の枚数を記録するカウンタであるオン用多重カウンタ(OMカウンタ)の内容がすべて零にされ、まず第1のセンサについて用紙が存在するかどうかの判別作業が開始され、このようにして、第10のセンサまでの現時点での用紙検知の有無がチェックされ、用紙が存在しないセンサに対してはオン変化検知要求がセットされ、これに対して、あるセンサについて用紙の検知が行われたとすると、次のセンサ用のオン用多重カウンタが1だけ加算され、オン変化検知要求がセットされ、この後、センサバッファで示されるセンサから指示された次のセンサへ向かう用紙に対して、次のセンサで用紙の先端が検知されるまでの最大時間であって、この時間内に用紙の先端が検知されないときには、ジャムが発生したと判断するオン・ジャムタイマがセットされ、このようにして第10のセンサまですべてのセンサのチェックが行われ、CPUによりオン・センサ・カウンタが零であるかどうかが判断され、オン・センサ・カウンタが零であれば(Y)、用紙はそれぞれのセンサによって検知されていないことになり、この場合には、1番長い距離のセンサ間に用紙が存在することも考慮にいれてパージタイマ(Pタイマ)が2秒にセットされ、すべてのセンサが用紙を初期的に検出していないことを示すものであるオール・オフ・フラグ(ALL OFF FLAG)がセットされ、これに対して、オン・センサ・カウンタが零でない場合には、パージタイマを、第1のセンサに用紙があったとしても、第9または第10のセンサを通過してこれが機外に出るまでに十分な時間である5秒にセットされ、オール・オフ・フラグがリセットされることにより、自動排出始動ルーチンが終了し、この後、メインモータの駆動が開始され、パージ制御が行われることになり、
パージ制御における自動排出ラン(RUN)中であって、オン変化要求を行ったセンサについてオン変化(用紙の先端検知)が行われたとき、これを処理するものである各センサのオン処理は、センサバッファによって示されるオン変化したセンサが第8のセンサであったとすると、複写機本体にパージトレイがついているかどうかが判断され、パージトレイがついている場合には、第10のセンサのオン用多重カウンタが1だけ加算され、第10のセンサについてオン変化検知要求がセットされ、オン・ジャムタイマがセットされ、オール・オフ・フラグがリセットされているかどうかが判別され、オール・オフ・フラグがリセットされていない場合、すなわちメインモータの始動前にすべてのセンサで用紙の検知が行われていなかった場合には、用紙が新たに検知されたことになり、この場合には、オール・オフ・フラグがリセットされ、用紙の排出処理が行われ、次にセンサバッファで示されるオン変化したセンサが第1から第7のセンサであったとすると、この場合にはセンサバッファで指示されるセンサの次のセンサ用オン用多重カウンタが1だけ加算され、この+1されたオン用多重カウンタのカウント値がこの結果+1となれば、このセンサで用紙の先端を検知するためのオン変化検知要求がセットされ、この後、センサバッファで示されるセンサから、指示された次のセンサへのオン・ジャムタイマがセットされ、センサバッファで示されるオン変化したセンサが第9または第10のセンサである場合には、オフ変化検知要求のみがセットされ、自動排出ラン中の各センサのオン処理ルーチンが終了するものである、
複写機。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア 後者の「搬送路」、「用紙」、「用紙の撤送駆動源となるメインモータ」、「搬送路に設けられたセンサ」、「複写機で発生したジャムを除去した後」は、それぞれ、前者の「用紙搬送路」、「用紙」、「用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送部」、「用紙搬送路上の用紙を検知する用紙検知部」、「用紙搬送路の用紙搬送が中断された後」に相当する。
イ 後者の「複写機」の「コピー作業」は、「スタートボタンが押されると」、「用紙供給のために、供給トレイが選択され、用紙が吸引され、所定のタイミングで搬送を開始され、トナー像の転写が行われ、複写機本体の上面に設けられた排出トレイに向けて排出」され、これらの動作は、CPU(中央処理装置)が制御しているものであるところ、供給トレイが選択され、該供給トレイの用紙が搬送されるとは、印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて供給トレイが選択され、メインモータの駆動が制御されていることであることは、画像形成装置における印刷ジョブの処理における技術常識といえる事項であるから、前者の「画像形成装置」と後者の「複写機」とは、実質的に「用紙に関する印刷ジョブを取得するジョブ取得部と、前記用紙に画像を形成する画像形成部と、前記印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて前記用紙を搬送する第1の用紙搬送を実施するように用紙搬送部を制御する制御部と、を有」する点で共通する。
ウ 後者の「搬送路」には、「第1から第10のセンサ」が設けられているのであるから、後者の「センサ」と「センサ」との間は、前者の「搬送区間」に相当し、そして、後者の「用紙」は、「トナー像の転写が行われ、複写機本体の上面に設けられた排出トレイに向けて排出」されるのであるから、前者の「用紙搬送路」と後者の「搬送路」とは、「搬送区間と、当該搬送区間から外部に至る経路にあるすべての搬送区間とを加えた排出経路を設定」したものとの概念で一致する。
エ 後者の「複写機」は、「スタートボタンが押されると、用紙の撤送駆動源となるメインモータが駆動を開始し、パージ制御の必要の有無が判別され」るところ、「パージ制御の必要の有無の判別」は、「ジャムが発生し、該当する用紙が搬送路から除去されると、RAMの所定領域にパージ制御を行わせるためのデータが書き込まれるようになっており、CPUはこれを基にパージ制御の必要の有無を判別」しているのであって、「スタートボタンが押される」前に「ジャムが発生し、該当する用紙が搬送路から除去され」ていることは明らかであるから、後者の「スタートボタンが押されると」とは、前者の「用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合」に相当する。
オ 後者の「パージ制御における自動排出」における「オン処理」は、「オン変化要求を行ったセンサについてオン変化(用紙の先端検知)が行われたとき、実行されるものであって、「第8のセンサ」について実行され、次に、「第1から第7のセンサ」について実行されるものであり、この「オン処理」は、「用紙の排出処理」を行うものであるところ、「第8のセンサ」について「オン変化(用紙先端の検知)」が行われると、「用紙の排出処理」が行われるのであるから、後者の「パージ制御における自動排出」における「第8のセンサ」について「オン変化」が行われたときの「オン処理」は、前者の「用紙情報には基づかずに」「用紙検知部の検知結果に基づいて」「用紙を搬送し、外部に排出する第2の用紙搬送」及び「用紙検知部の検知結果に基づいて」、「用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路において」実施される「第2の用紙搬送」に相当する。
カ 後者の「パージ制御における自動排出」における「第1から第7のセンサ」の「オン処理」は、「第8のセンサ」の「オン処理」の、次に、実行されるものである点で、前者の「第2の用紙搬送を実施した後」に相当し、「第1から第7のセンサ」が配置されているそれぞれの「搬送路」は、「第8のセンサ」の「オン処理」が実行された直後は、未だ搬送が実施されていない点で、前者の「未起動の搬送区間」に相当する。そして、「第1から第7のセンサ」についてのオン処理において「オン変化した」とは、当該センサが配置されている搬送路において用紙の搬送が行われた結果センサにより用紙の先端が検知されることであるから、前者の「前記搬送区間の搬送を所定の駆動時間行い、前記搬送区間において残留用紙が検知された場合」に相当する。そして、「第1から第7のセンサ」についても、「用紙の排出処理」が行われることは明らかであるから、後者の「パージ制御における自動排出」における「第1から第7のセンサ」の「オン処理」は、前者の「搬送区間に対する排出経路に対して第2の用紙搬送を実施する」ことに相当する。

したがって、両者は、
「用紙搬送路を備え、当該用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送部と、
前記用紙搬送路上の前記用紙を検知する用紙検知部と、
前記用紙に関する印刷ジョブを取得するジョブ取得部と、
前記用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて前記用紙を搬送する第1の用紙搬送と、前記用紙情報には基づかずに前記用紙検知部の検知結果に基づいて前記用紙を搬送し、外部に排出する第2の用紙搬送と、のいずれかの搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記用紙搬送路に対して複数の搬送区間を割り付け、前記複数の搬送区間の各々について、当該搬送区間と、当該搬送区間から前記外部に至る経路にあるすべての搬送区間とを加えた排出経路を設定し、
前記用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合、
前記用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路において前記第2の用紙搬送を実施した後、未起動の搬送区間に対し、前記搬送区間の搬送を所定の駆動時間行い、前記搬送区間において残留用紙が検知された場合、前記搬送区間に対する排出経路に対して前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、画像形成装置。」
の点で一致し、本願補正発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているから、本願補正発明と、引用発明とに差異はない。

請求人は、「引用文献1には、用紙検知センサで紙詰りの発生の有無を監視しながら排出を行わせる自動排出について開示されているものの、残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路において自動排出を実施することは開示されておりません。」と主張する。
しかし、引用発明は、メインモータの駆動が開始され、パージ制御が行われるものであるところ、搬送路のすべてが駆動されるのであるから、残留用紙が存在する搬送区間の搬送経路において、自動排出が実施されることは明らかであるから、上記請求人の主張は何ら採用できるものではない。

また、請求人は、「引用文献1の発明は、紙検知センサ全部を自動排出処理モードの開始時から所定時間だけ検出動作状態にすることで、紙検知センサにより検出された残留紙について、紙詰まりの発生の有無の監視を、搬送路全体にわたり一度に行うことを想定しております。また、引用文献1の発明では、そもそも排出経路が設定されていないので、起動済み/未起動の搬送区間の区別が無く、本願発明の上記構成を想定することはできないものと思料します。」と主張する。
しかし、引用発明の「パージ制御における自動排出」の「オン処理」は、最終的には、すべてのセンサに対して「「パージ制御」を行うことになるものの、「第8のセンサ」の「オン処理」が行われ、次に、「第1から第7のセンサ」の「オン処理」が行われるのであるから、「第8のセンサ」の「オン処理」が実施された直後は、「第1から第7のセンサ」の前後の「搬送路」については、「未起動の搬送区間」に相当することになるのだから、用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合における搬送制御において、相違するものではなく、上記請求人の主張は何ら採用できるものではない。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であって、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ないものであるから、本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してされたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年11月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
用紙搬送路を備え、当該用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送部と、
前記用紙搬送路上の前記用紙を検知する用紙検知部と、
前記用紙に関する印刷ジョブを取得するジョブ取得部と、
前記用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて前記用紙を搬送する第1の用紙搬送と、前記用紙情報には基づかずに前記用紙検知部の検知結果に基づいて前記用紙を搬送し、外部に排出する第2の用紙搬送と、のいずれかの搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記用紙搬送路に対して複数の搬送区間を割り付け、前記複数の搬送区間の各々について、当該搬送区間と、当該搬送区間から前記外部に至る経路にあるすべての搬送区間とを加えた排出経路を設定し、
前記用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合、
前記用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路においてのみ前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、画像形成装置。」(以下「本願発明」という。)

2 引用例
令和1年12月9日付けの拒絶理由通知に引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 3 (3)対比」での検討を勘案すると、両者は、
「用紙搬送路を備え、当該用紙搬送路に沿って用紙を搬送する用紙搬送部と、
前記用紙搬送路上の前記用紙を検知する用紙検知部と、
前記用紙に関する印刷ジョブを取得するジョブ取得部と、
前記用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記印刷ジョブに含まれる用紙情報に基づいて前記用紙を搬送する第1の用紙搬送と、前記用紙情報には基づかずに前記用紙検知部の検知結果に基づいて前記用紙を搬送し、外部に排出する第2の用紙搬送と、のいずれかの搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記用紙搬送路に対して複数の搬送区間を割り付け、前記複数の搬送区間の各々について、当該搬送区間と、当該搬送区間から前記外部に至る経路にあるすべての搬送区間とを加えた排出経路を設定し、
前記用紙搬送路の用紙搬送が中断された後に前記用紙搬送路の用紙搬送を再開する場合、
前記用紙検知部の検知結果に基づいて、前記用紙搬送路に残留した残留用紙の存否を判定し、当該残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路において前記第2の用紙搬送を実施するように前記用紙搬送部を制御する、画像形成装置。」
の点で一致する。
そして、引用発明は、第1から第8のセンサについて、「オン変化」しないということは、残留用紙がないことであって、その場合には、用紙の搬送及び排出はしないのであるから、本願発明と引用発明とは、残留用紙が存在する搬送区間に設定した排出経路において「のみ」第2の用紙搬送を実施するものである点で一致する。
よって、本願発明と引用発明とは、相違するところはない。

したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-22 
結審通知日 2021-06-29 
審決日 2021-08-03 
出願番号 特願2016-31296(P2016-31296)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡▲崎▼ 輝雄佐藤 孝幸  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 畑井 順一
藤本 義仁
発明の名称 画像形成装置および制御プログラム  
代理人 八田国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ