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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1379112 |
審判番号 | 不服2021-1463 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-02-02 |
確定日 | 2021-11-08 |
事件の表示 | 特願2018-113081「アンロック入力に基づいてユーザインタフェースを操作するためのデバイス、方法、及びグラフィカルユーザインタフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月 6日出願公開、特開2018-195316、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)9月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年9月9日 米国、2014年9月8日 米国)を国際出願日とする出願である特願2016-540927号の一部を平成30年6月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 7月 9日 :手続補正書の提出 平成31年 3月29日付け:拒絶理由通知書 令和 元年 7月 3日 :意見書、手続補正書の提出 平成 元年12月26日付け:拒絶理由(最後)通知書 令和 2年 4月 6日 :意見書の提出 令和 2年 9月24日付け:拒絶査定 令和 3年 2月 2日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年9月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1?3,7?14に係る発明は、以下の引用文献1?3に基いて、本願請求項4?6に係る発明は、以下の引用文献1?5に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1: 澤村 徹,緊急提言 個人情報は直ちに一元管理すべし,PCfan,日本,(株)毎日コミュニケーションズ,2004年6月15日,第11巻第11号通巻240号,pp. 20-21 引用文献2: 特開2012-164070号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3: 特開2007-226293号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4: 米国特許出願公開第2009/0083847号明細書 引用文献5: 栗原 亮,知っておきたいOS Xのトリセツ,Mac Fan,日本,株式会社マイナビ,2013年6月1日,第21巻第6号,pp. 170-173 第3 本願発明 本願請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明14」という。)は、令和3年2月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ひとつ以上のプロセッサとメモリと生体センサとを備える電子デバイスにおいて、 ひとつ以上のクレデンシャルの集合を保持することと、 複数のフィールドを伴うフォームを表示することと、 前記複数のフィールドのうちの少なくともひとつのフィールドがひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちのひとつ以上のクレデンシャルに対応するか否か判定することと、 前記少なくともひとつのフィールドがひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルに対応するという判定にしたがって、ひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルを、自動的に前記フォームに記入するための入力を要求するプロンプトを表示することと、 ひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルを、自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることと、 自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることに応じて、 自動的に前記フォームに記入するための前記入力に基づいて取得された生体入力がひとつ以上のクレデンシャルの前記集合の使用を承認されているユーザに関連付けられた生体情報の集合を含むという判定に従って、前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入し、 自動的に前記フォームに記入するための前記入力に基づいて取得された前記生体入力がひとつ以上のクレデンシャルの前記集合の使用を承認されているユーザに関連付けられていない生体情報の集合を含むという判定に従って、 前記ひとつ以上のクレデンシャルを自動的に前記フォームに記入するための前記入力が拒否されたことを示すプロンプトを表示することと、 前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入するのを止めることと、を含む方法。」 また、本願発明2?14は、本願発明1を減縮した発明である。 第4 引用文献、引用発明、周知技術 1 引用文献1、引用発明 (1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。 ア 「パソコンユーザーにとって、個人情報漏洩はもはや他人事ではない。 ・・・(中略)・・・ そんな面倒なことは御免というにオススメしたいのかシマンテック「ノートン・パスワードマネージャ」だ。このソフトはパスワードの一元管理に加え、ウェブフォームの自動入力が可能。」(270頁冒頭の「日々増殖するパスワード一元管理で乗り切ろう」の欄) イ 「住所などの情報をウェブフォームに自動入力してくれる オンラインショッピンクや会員登録ページの個人情報入力、この手間を省いてくれるのがウェブフォーム自動入力機能だ。あらかじめ住所、氏名、クレジットカード番号などを登録しておくと(F/G)、ウェプ上に入力フォームが表示された際に個別の入力を省ける(H)。住所とクレジットカードは複数の情報が登録可能。自動入力時にどのパターンを入力するか選択できる。」(271頁の「ポイント3」の欄) ウ (F?Hの図) 「 」 (2)上記(1)の記載について、以下のことがいえる。 ア 上記(1)アによれば、「ノートン・パスワードマネージャ」を導入したパソコンでは、ウェブフォームの自動入力が可能である。 イ Hの図から、「簡易入力」のウィンドウに、「下に示す利用可能なプロファイルデータで自動的にフォームを入力します。Webサイトのフォーマットによっては、手入力による修正が必要となることがあります。」との記載があること、「名前」、「住所」、「電話」等の欄に、それらの具体的な情報が提示されていること、並びに、「入力」及び「無視」の各ボタンがあることが見て取れる。 そして、これらの点について、上記(1)イの特に「オンラインショッピンクや会員登録ページの個人情報入力、この手間を省いてくれるのがウェブフォーム自動入力機能だ。あらかじめ住所、氏名、クレジットカード番号などを登録しておくと(F/G)、ウェプ上に入力フォームが表示された際に個別の入力を省ける(H)。」との記載に照らすと、入力フォームは、住所、氏名等にそれぞれ対応する複数のフィールドを伴うものであり、ウェブフォーム自動入力機能は、当該入力フォームが表示された際に、それらの各フィールドが、あらかじめプロファイルデータとして登録しておいた住所、氏名等に対応するか否か(各フィールドが住所や氏名の入力用のものであるか否か等)を判定し、各フィールドが住所、氏名等に対応するとの判定に従って、具体的な住所、氏名等を提示するとともにそれらを自動的に入力フォームに記入するための「入力」ボタンへの入力(マウスクリック操作等)を要求する、「簡易入力」のウィンドウを表示することが明らかである。 また、「入力」ボタンへの入力がなされた場合に、住所、氏名等を入力フォームに記入すること、及び、「無視」ボタンへの入力がなされた場合に、住所、氏名等を入力フォームに記入するのを止めることも明らかである。 (3)上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「「ノートン・パスワードマネージャ」を導入したパソコンにおいて、 あらかじめ住所、氏名、クレジットカード番号などを登録しておき、 複数のフィールドを伴う入力フォームが表示された際に、それらの各フィールドが、あらかじめ登録しておいた住所、氏名等に対応するか否かを判定し、各フィールドが住所、氏名等に対応するとの判定に従って、具体的な住所、氏名等を提示するとともにそれらを自動的に入力フォームに記入するための「入力」ボタンへの入力を要求する、「簡易入力」のウィンドウを表示し、 「入力」ボタンへの入力がなされた場合に、住所、氏名等を入力フォームに記入し、 「無視」ボタンへの入力がなされた場合に、住所、氏名等を入力フォームに記入するのを止める、 方法。」 2 周知技術 (1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0183】 ここで、Webページ200上のテキストボックスTbに入力されるテキストが秘匿性の高い情報(例えばパスワード)である場合に、リモコン画面上で入力されたテキストを、リモコン画面上でのみ確認できるようにしてもよい。尚、パスワードのように、秘匿すべき情報を、ここでは、秘匿情報と呼ぶ。」 「【0185】 図12(E)に示すように、リモコン画面上でパスワードとなるテキストが入力されたとする。このときテキストボックスTbx内には、入力されたパスワードがそのまま表示されることで、ユーザが入力したパスワードを確認できるようになっている。」 「【0187】 さらにCPU130は、入力されたテキスト(すなわちパスワード)を示す入力テキスト情報を、TV受像機101に送信する。」 「【0189】 TV受像機100のCPU110は、図12(H)に示すように、パスワード入力用のテキストボックスTb内に、入力テキスト情報に示されたパスワードを確認できない状態で表示させる。」 「【0196】 パスワード入力時に、リモコン101のCPU130が、リモコン画面に、枠を表示させ、この枠内をタッチさせることでユーザの指紋を取得し、この指紋からユーザを特定して、このユーザのパスワードを自動入力するなどしてもよい。」 「【図12】 」 (2)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0030】 まず、CPU11は、表示部20に、例えば、「指紋を入力して下さい。」と表示させる(ステップS1)。また、CPU11は、CPU31に対して指紋認証を行うよう指示する(ステップS2)。この指示に従い、ユーザは、指紋入力部35に指を置く。 【0031】 次に、CPU31は、指紋入力部35にユーザの指紋を読み取らせ指紋データを入力させる(ステップS3)。 【0032】 次に、CPU31は、不揮発性メモリ36に記憶された指紋データの中に入力された指紋データと一致する指紋データが存在するか否かを判断し指紋認証を行う(ステップS4)。」 「【0034】 次に、CPU11は、指紋認証モジュール30から送信されてきた指紋認証結果が成功か否かを判断する(ステップS6)。認証成功であれば(ステップS6;Yes)、CPU11は、複数の候補が抽出されたか否かを判断する(ステップS7)。認証失敗であれば(ステップS6;No)、ステップS13に進む。 【0035】 ステップS7において、複数の候補が抽出されたと判断すると(ステップS7;Yes)、CPU11は、当該複数の候補のそれぞれの候補のデータに付加されてきた登録番号に対応するログインIDを不揮発性メモリ18から読み出し、例えば、図3に示すように、ログインIDの候補として一致度の高い順に表示部20に表示する。これにより、ユーザにログインIDの選択入力を促す(ステップS8)。一致度の高い順に表示することで、ユーザに選択される確率の高い候補が先頭近くに表示されることになるので、ユーザが選択候補を候補の中から容易に見つけることができる。また、候補の数が多い場合に、上位何個あるいは上位何%のデータに限定して表示すると、ユーザに選択される確率の高い候補に絞って表示されるので、ユーザが選択候補を候補の中から容易に見つけることができる。 【0036】 複数の候補が抽出されなかったと判断すると(ステップS7;No)、ステップS10に進む。 【0037】 ステップS8の表示に従いユーザが、操作部19により、表示部20に表示されたログインIDの候補から1つを選択入力すると、CPU11に、選択されたログインIDの選択情報が入力される(ステップS9)。 【0038】 ステップS10において、CPU11は、選択されたログインIDに対応するパスワード(ステップS9からの場合)、あるいは登録番号に対応するログインID及びパスワード(ステップS7;Noからの場合)を不揮発性メモリ18からRAM14に読み出す。 【0039】 次に、CPU11は、表示部20に、ステップS7で読み出したログインID及びパスワードの一部を入力表示したログイン画面を表示し、ユーザにパスワードの補完入力を促す(ステップS11)。例えば、図4に示すように、パスワードが8文字であれば、先頭から6文字分のパスワード入力を自動的に行い6個の*を表示するとともに、末尾の*の後に2文字分のアンダーバーを表示する。この表示に従い、ユーザは、操作部19によりパスワードの補完入力を行う。図4の例の場合、ユーザはアンダーバーの表示されている部分に残りの2文字の補完入力を行う。入力されるべき文字数をアンダーバー等で表示することにより、例えば長い文字数のパスワードが表示されている場合であっても、ユーザは何文字の入力をしたらよいのかがすぐに認識できる。」 「【図3】 」 「【図4】 」 (3)上記(1)、(2)から、「指紋センサへの入力に基づいて取得された指紋が、クレデンシャルの使用を承認されているユーザに関連付けられているとの判定に従って、前記クレデンシャルをフォームに自動的に記入すること」は、本願優先日前において周知技術であるといえる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「パソコン」は、本願発明1の「電子デバイス」に含まれる。また、通常、パソコンは「ひとつ以上のプロセッサとメモリ」を備えている。 したがって、引用発明の「「ノートン・パスワードマネージャ」を導入したパソコン」と、本願発明1の「ひとつ以上のプロセッサとメモリと生体センサとを備える電子デバイス」とは、「ひとつ以上のプロセッサとメモリとを備える電子デバイス」である点で共通している。 (イ)引用発明の「あらかじめ住所、氏名、クレジットカード番号などを登録」することにおいて、「住所、氏名、クレジットカード番号」は、いずれもクレデンシャルであり、それらの全体は「集合」であるといえる。また、「登録」によって、それらが「保持」されることが明らかである。 そうすると、引用発明の「あらかじめ住所、氏名、クレジットカード番号などを登録」することは、本願発明1の「ひとつ以上のクレデンシャルの集合を保持すること」に相当する。 (ウ)引用発明は、複数のフィールドを伴う入力フォームが表示された際に、それらの各フィールドが、あらかじめ登録しておいた住所、氏名等に対応するか否かを判定し、各フィールドが住所、氏名等に対応するとの判定に従って」、「具体的な住所、氏名等」を「自動的に入力フォームに記入するための「入力」ボタンへの入力を要求する、「簡易入力」のウィンドウを表示」するとの構成を備えている。 ここで、「入力フォーム」、「「簡易入力」のウィンドウ」は、それぞれ、本願発明1の「フォーム」、「プロンプト」に相当する。 この点について上記(イ)も踏まえると、引用発明は、本願発明1の 「複数のフィールドを伴うフォームを表示することと、 前記複数のフィールドのうちの少なくともひとつのフィールドがひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちのひとつ以上のクレデンシャルに対応するか否か判定することと、 前記少なくともひとつのフィールドがひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルに対応するという判定にしたがって、ひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルを、自動的に前記フォームに記入するための入力を要求するプロンプトを表示すること」 に相当する構成を有している。 (エ)引用発明は、上記(ウ)で述べた構成とともに、 「「入力」ボタンへの入力がなされた場合に、住所、氏名等を入力フォームに記入し、 「無視」ボタンへの入力がなされた場合に、住所、氏名等を入力フォームに記入するのを止める」 との構成を備えている。 ここで、「具体的な住所、氏名等」を「自動的に入力フォームに記入するための「入力」ボタン」への「入力がなされ」ることは、本願発明1の「自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受ける」ことに含まれる。 そして、「「入力」ボタンへの入力がなされた場合」と、本願発明1の「自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることに応じて、自動的に前記フォームに記入するための前記入力に基づいて取得された生体入力がひとつ以上のクレデンシャルの前記集合の使用を承認されているユーザに関連付けられた生体情報の集合を含むという判定」がなされた状態とは、「自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けた場合」である点で共通している。 また、「「無視」ボタンへの入力がなされた場合」と、本願発明1の「自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることに応じて」、「自動的に前記フォームに記入するための前記入力に基づいて取得された前記生体入力がひとつ以上のクレデンシャルの前記集合の使用を承認されているユーザに関連付けられていない生体情報の集合を含むという判定」がなされた状態とは、「所定の条件が成立した場合」である点で共通している。 以上の点について、上記(イ)、及び上記(ウ)で更に検討した点も踏まえると、本願発明1の 「ひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルを、自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることと、 自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることに応じて、 自動的に前記フォームに記入するための前記入力に基づいて取得された生体入力がひとつ以上のクレデンシャルの前記集合の使用を承認されているユーザに関連付けられた生体情報の集合を含むという判定に従って、前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入し、 自動的に前記フォームに記入するための前記入力に基づいて取得された前記生体入力がひとつ以上のクレデンシャルの前記集合の使用を承認されているユーザに関連付けられていない生体情報の集合を含むという判定に従って、 前記ひとつ以上のクレデンシャルを自動的に前記フォームに記入するための前記入力が拒否されたことを示すプロンプトを表示することと、 前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入するのを止めること」 との構成に関して、引用発明と本願発明1とは、 「ひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルを、自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることと、 自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けた場合に、 前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入し、 所定の条件が成立した場合に、 前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入するのを止めること」 を有する点で共通している。 イ 上記アから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「ひとつ以上のプロセッサとメモリとを備える電子デバイスにおいて、 ひとつ以上のクレデンシャルの集合を保持することと、 複数のフィールドを伴うフォームを表示することと、 前記複数のフィールドのうちの少なくともひとつのフィールドがひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちのひとつ以上のクレデンシャルに対応するか否か判定することと、 前記少なくともひとつのフィールドがひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルに対応するという判定にしたがって、ひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルを、自動的に前記フォームに記入するための入力を要求するプロンプトを表示することと、 ひとつ以上のクレデンシャルの前記集合のうちの前記ひとつ以上のクレデンシャルを、自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることと、 自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けた場合に、 前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入し、 所定の条件が成立した場合に、 前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入するのを止めることと、を含む方法。」 (相違点1) 本願発明1の「電子デバイス」は、「生体センサ」を備えるのに対し、引用発明の「パソコン」は、「生体センサ」を備えるとは特定されない点。 (相違点2) 本願発明1では、「前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入」することが、「自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることに応じて、自動的に前記フォームに記入するための前記入力に基づいて取得された生体入力がひとつ以上のクレデンシャルの前記集合の使用を承認されているユーザに関連付けられた生体情報の集合を含むという判定に従って」行われるのに対し、引用発明では、「住所、氏名等を入力フォームに記入」することが、「「入力」ボタンがへの入力がなされた場合に」行われる、つまり、「「入力」ボタンへの入力」に基づいて生体入力が取得されるものではなく、当該生体入力に対する判定がなされるものでもなく、「「入力」ボタンへの入力がなされ」ると直ちに「住所、氏名等を入力フォームに記入」する点。 (相違点3) 本願発明1では、「前記ひとつ以上のクレデンシャルを前記フォームに記入するのを止める」ことが、「前記ひとつ以上のクレデンシャルを自動的に前記フォームに記入するための前記入力が拒否されたことを示すプロンプトを表示すること」とともに、「自動的に前記フォームに記入するための前記入力を受けることに応じて」、「自動的に前記フォームに記入するための前記入力に基づいて取得された前記生体入力がひとつ以上のクレデンシャルの前記集合の使用を承認されているユーザに関連付けられていない生体情報の集合を含むという判定に従って」、行われるのに対し、引用発明では、「住所、氏名等を入力フォームに記入するのを止める」ことが、単独で、「「無視」ボタンへの入力がなされた場合」に行われる点。 (2)判断 本願発明1において、「生体入力」は「生体センサ」から取得されるものと解されることから、相違点1,2について、まとめて検討する。 上記第4の2の(3)で述べたように、「指紋センサへの入力に基づいて取得された指紋が、クレデンシャルの使用を承認されているユーザに関連付けられているとの判定に従って、前記クレデンシャルをフォームに自動的に記入すること」は、本願優先日前における周知技術である。 そこで、当業者にとって、引用発明に当該周知技術を適用する動機付けがあると認められるか否かについて検討する。 引用発明の「「入力」ボタンへの入力を要求する、「簡易入力」のウィンドウ」は、「具体的な住所、氏名等を提示する」ものであるから、「「簡易入力」のウィンドウ」を見るユーザは、既にそれらの「住所、氏名等」を使用することについて承認済みであるといえる。 そうすると、「具体的な住所、氏名等を提示する」「「簡易入力」のウィンドウ」を表示した後において、ユーザはそれらを使用するための承認を受ける必要はないから、当業者は、引用発明の「「入力」ボタン」に関して当該周知技術を適用して、指紋センサを別途設けた上で、「「入力」ボタン」への入力がなされ」ることに代えて当該指紋センサが入力を受けることに応じて、当該入力に基づいて取得された指紋が、登録しておいた住所、氏名等の使用を承認されているユーザに関連付けられているとの判定に従って、前記住所、氏名等を入力フォームに自動的に記入するものとすることについて、動機付けられるとはいえない。 また、本願発明1の相違点1,2に係る構成については、引用文献4,5のいずれにも記載されていない。 したがって、本願発明1の相違点1,2に係る構成は、当業者が容易に想到したものとはいえない。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1?5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2?14について 本願発明2?14は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1?5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1?14は、当業者が引用文献1?5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-10-20 |
出願番号 | 特願2018-113081(P2018-113081) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 原 秀人 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 林 毅 |
発明の名称 | アンロック入力に基づいてユーザインタフェースを操作するためのデバイス、方法、及びグラフィカルユーザインタフェース |
代理人 | 特許業務法人大塚国際特許事務所 |