• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  G08G
管理番号 1379765
異議申立番号 異議2020-700296  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-25 
確定日 2021-09-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6600344号発明「車両制御装置、車両制御方法、及び、車両制御装置の制御プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6600344号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕、10及び11について訂正することを認める。 特許第6600344号の請求項〔1、3、4、6ないし9〕、10及び11に係る特許を維持する。 特許第6600344号の請求項2及び5についての申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6600344号の請求項1ないし11に係る特許(以下、「請求項1に係る特許」ないし「請求項11に係る特許」という。)についての出願は、平成29年11月30日に出願され、令和元年10月11日にその特許権の設定登録がされ、令和元年10月30日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和2年4月25日に特許異議申立人 田中貞嗣 他1名(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年9月10日付け(発送日:令和2年9月16日)で取消理由を通知した。それに対して、特許権者は、その指定期間内である令和2年11月13日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、令和2年12月22日付け(発送日:令和3年1月5日)で申立人に通知書(訂正請求があった旨の通知)を送付し、申立人は令和3年1月29日に意見書を提出し、当審は、令和3年3月25日付け(発送日:令和3年4月1日)で取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、令和3年5月28日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、令和3年6月3日付け(発送日:令和3年6月9日)で申立人に通知書(訂正請求があった旨の通知)を送付し、申立人は令和3年6月30日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年5月28日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示すために当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記車両の走行状況に関する走行情報を取得する取得部と、」と記載されているのを、「前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得部と、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、6、7、8及び9も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記車両内の動画像及び前記走行情報に基づき、前記車両に、前記走行状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定部と、」と記載されているのを、「前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定部と、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、6、7、8及び9も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記判定部によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信する送信制御部と、」と記載されているのを、「前記判定部によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力部によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御部と、」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、6、7、8及び9も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「を備える、車両制御装置。」と記載されているのを、「を備え、前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、前記判定部は、前記取得部が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、6、7、8及び9も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の車両制御装置。」と記載されているのを、「請求項1に記載の車両制御装置。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれか一項に記載の車両制御装置。」と記載されているのを、「請求項1または3に記載の車両制御装置。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1?5のいずれか一項に記載の車両制御装置。」と記載されているのを、「請求項1、3、または4のいずれか一項に記載の車両制御装置。」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項7に、「前記取得部は、前記車両の乗客による決済情報を取得し、」と記載されているのを、「前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の乗客による決済情報を取得し、」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8及び9も同様に訂正する)。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1?8のいずれか一項に記載の車両制御装置。」と記載されているのを、「請求項1、3、4、6、7または8のいずれか一項に記載の車両制御装置。」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項10に、「前記車両の走行状況に関する走行情報を取得する取得ステップと、」と記載されているのを、「前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得ステップと、」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項10に、「前記車両内の動画像及び前記走行情報に基づき、前記車両に、前記走行状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定ステップと、」と記載されているのを、「前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定ステップと、」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項10に、「前記判定ステップによって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信する送信制御ステップ」と記載されているのを、「前記判定ステップによって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力ステップによって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御ステップ」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項10に、「含む、車両制御装置の制御方法。」と記載されているのを、「含み、前記取得ステップは、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、前記判定ステップは、前記取得ステップで取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置の制御方法。」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項11に、「前記車両の走行状況に関する走行情報を取得する取得機能と、」と記載されているのを、「前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得機能と、」に訂正する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項11に、「前記車両内の動画像及び前記走行情報に基づき、前記車両に、前記走行状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定機能と、」と記載されているのを、「前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定機能と、」に訂正する。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項11に、「前記判定機能によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信する送信制御機能と、」と記載されているのを、「前記判定機能によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力機能によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御機能と、」に訂正する。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項11に、「を実現させる、車両制御装置の制御プログラム。」と記載されているのを「を実現させ、前記取得機能は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、前記判定機能は、前記取得機能が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置の制御プログラム。」に訂正する。

(20)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし9について、請求項2ないし9はそれぞれ直接的又は間接的に請求項1を引用している。訂正事項1ないし4により、請求項3、4及び6ないし9は連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし9に対応する訂正後の請求項1ないし9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「走行情報」との記載が不明確であったため、取得部が取得する情報が不明確となっていたものを、願書に添付した明細書の段落【0024】等を根拠に、当該取得部が取得する情報を明確にするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、当該訂正により、訂正前の請求項1に記載された発明の対象、目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0024】に記載された、「車両の走行状況に関する走行情報とは、車両200が置かれた状況に関する情報であって、例えば、車速、走行位置、停車位置、車内及び車外の動画像、乗客数、運賃、車両内の温度、出入口ドアの開閉状態等に関する情報を含む。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「走行情報」との記載が不明確であったため、判定部による判定が不明確であったものを、願書に添付した明細書の段落【0024】及び【0025】等を根拠に、当該判定部による判定を明確にするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、当該訂正により、訂正前の請求項1に記載された発明の対象、目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0024】の「車両の走行状況に関する走行情報とは、車両200が置かれた状況に関する情報であって、例えば、車速、走行位置、停車位置、車内及び車外の動画像、乗客数、運賃、車両内の温度、出入口ドアの開閉状態等に関する情報を含む。」との記載、及び段落【0025】の「判定部113は、車両内の動画像及び走行情報に基づき、車両に所定の条件が成立するか否かを判定する。ここで、所定の条件とは、車両内で危険が生じる際の状況に関する条件であったり、車両内で異常事態が発生したと考えられる状況に関する条件である。」(下線は当審が付与した。以下同様。)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載された発明における送信制御部について、訂正前の請求項2、願書に添付した明細書の段落【0040】及び【0041】並びに図6等を根拠に、「前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力部によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する」との事項を付加するものであるから、訂正前の請求項1の特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、当該訂正により、訂正前の請求項1に記載された発明の対象、目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項3は、訂正前の請求項2の「前記送信制御部は、前記車両の管理装置における所定の操作情報を前記管理装置から受信した場合、前記出力部によって出力される表示情報を、前記管理装置へ送信する」との記載、願書に添付した明細書の段落【0041】の「所定の条件が成立する(すなわち、車両200で異常が発生している)と判定された場合(ステップS14でYes)は、判定結果を管理装置300へ送信する(ステップS15)。その後、判定部113によって、管理装置300から所定の操作情報が受信されたか否かが判定される(ステップS16)。」との記載及び図6に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項1に記載された発明における「取得部」及び「判定部」について、訂正前の請求項5及び願書に添付した明細書の段落【0024】等を根拠に、「前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、前記判定部は、前記取得部が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、」との事項を付加するものであるから、訂正前の請求項1の特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、当該訂正により訂正前の請求項1に記載された発明の対象、目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項4のうち、「前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、」については、訂正前の請求項5の「前記取得部は、前記走行情報として、前記車両の位置情報を取得し、」との記載、及び願書に添付した明細書の段落【0024】の「取得部112は、車両の走行状況に関する走行情報を、車両200に設けられた外部装置から取得する。車両の走行状況に関する走行情報とは、車両200が置かれた状況に関する情報であって、例えば、車速、走行位置、停車位置、車内及び車外の動画像、乗客数、運賃、車両内の温度、出入口ドアの開閉状態等に関する情報を含む。」との記載に基づくものである。
訂正事項4のうち、「前記判定部は、前記取得部が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、」については、訂正前の請求項5には「前記取得部は、前記走行情報として、前記車両の位置情報を取得し、前記判定部は、前記車両が当該車両の停留所以外の位置にあり、・・・」との記載があり、願書に添付した明細書の段落【0024】には「取得部112は、車両の走行状況に関する走行情報を、車両200に設けられた外部装置から取得する。車両の走行状況に関する走行情報とは、車両200が置かれた状況に関する情報であって、例えば、車速、走行位置、停車位置、車内及び車外の動画像、乗客数、運賃、車両内の温度、出入口ドアの開閉状態等に関する情報を含む。これらの情報は、車両200に設けられた図示しない速度センサ、GPSの受信アンテナ、上述した撮影部210、決済部240等から得られる。」との記載があり、段落【0025】には、「判定部113は、車両内の動画像及び走行情報に基づき、車両に所定の条件が成立するか否かを判定する。ここで、所定の条件とは、車両内で危険が生じる際の状況に関する条件であったり、車両内で異常事態が発生したと考えられる状況に関する条件である。所定の条件としては、例えば、「時速○km/h以上で車両走行中の、乗客の立ち上がり」、「乗客の転倒」、「運賃の不正」、「停留所以外の場所での乗客の立ち上がり」等を判別可能な条件である。」との記載がある。
ここで、「停留所以外の場所での乗客の立ち上がり」における「停留所以外の場所」であることの判別は、訂正前の請求項5の上記記載及び段落【0024】の上記記載からみて、「走行情報」の「車両の位置情報」から判別することは明らかである。また、「乗客の立ち上がり」を車両内の動画像から判別することも、段落【0025】の上記記載からみて明らかである。
よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は訂正前の請求項2の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2を引用するものであったのを、請求項2の削除に伴い、請求項2を引用しないものとし、請求項1のみを引用するものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1?3のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2の削除に伴い、請求項2を引用しないものとし、請求項1または3を引用するものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は訂正前の請求項5の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1?5のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2及び5の削除に伴い、請求項2及び5を引用しないものとし、請求項1、3、または4のいずれか一項を引用するものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(10)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正前の請求項7において、「決済情報」に関する記載が不明確なため「判定部」による判定が不明確であったものを、願書に添付した明細書の段落【0024】等を根拠に、明確にするものである。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項10は、訂正前の請求項7に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、当該訂正により、訂正前の請求項7に記載された発明の対象、目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項10は、願書に添付した明細書の段落【0024】に記載された、「車両の走行状況に関する走行情報とは、車両200が置かれた状況に関する情報であって、例えば、車速、走行位置、停車位置、車内及び車外の動画像、乗客数、運賃、車両内の温度、出入口ドアの開閉状態等に関する情報を含む。これらの情報は、車両200に設けられた図示しない速度センサ、GPSの受信アンテナ、上述した撮影部210、決済部240等から得られる。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(11)訂正事項11
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1?8のいずれか一項を引用するものであったのを、請求項2及び5の削除に伴い、請求項2及び5を引用しないものとし、請求項1、3、4、6、7または8のいずれか一項を引用するものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(12)訂正事項12及び13
ア 訂正の目的について
訂正事項12及び13は、それぞれ、実質的に訂正事項1及び2と同じ訂正であるから、上記(1)及び(2)のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項12及び13は、それぞれ、実質的に訂正事項1及び2と同じ訂正であるから、上記(1)及び(2)のとおり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項12及び13は、それぞれ、実質的に訂正事項1及び2と同じ訂正であるから、上記(1)及び(2)のとおり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(13)訂正事項14及び15
ア 訂正の目的について
訂正事項14及び15は、それぞれ、実質的に訂正事項3及び4と同じ訂正であるから、上記(3)及び(4)のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項14及び15は、それぞれ、実質的に訂正事項3及び4と同じ訂正であるから、上記(3)及び(4)のとおり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項14及び15は、それぞれ、実質的に訂正事項3及び4と同じ訂正であるから、上記(3)及び(4)のとおり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(14)訂正事項16及び17
ア 訂正の目的について
訂正事項16及び17は、それぞれ、実質的に訂正事項1及び2と同じ訂正であるから、上記(1)及び(2)のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項16及び17は、それぞれ、実質的に訂正事項1及び2と同じ訂正であるから、上記(1)及び(2)のとおり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項16及び17は、それぞれ、実質的に訂正事項1及び2と同じ訂正であるから、上記(1)及び(2)のとおり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(15)訂正事項18及び19
ア 訂正の目的について
訂正事項18及び19は、それぞれ、実質的に訂正事項3及び4と同じ訂正であるから、上記(3)及び(4)のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項18及び19は、それぞれ、実質的に訂正事項3及び4と同じ訂正であるから、上記(3)及び(4)のとおり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無について
訂正事項18及び19は、それぞれ、実質的に訂正事項3及び4と同じ訂正であるから、上記(3)及び(4)のとおり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕、10及び11について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし11に係る発明(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
車両の管理装置とネットワークを介して接続された車両制御装置であって、
前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記車両に設置された撮影部によって撮影された前記車両内の動画像を、前記車両の管理装置の所定の表示部において表示させる表示情報を出力する出力部と、
前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得部と、
前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力部によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御部と、
を備え、
前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、
前記判定部は、前記取得部が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記走行制御部は、前記判定部によって前記所定の条件が成立すると判定された場合、前記車両の走行を停止させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記所定の操作情報は、前記車両の管理装置において、前記車両内の情報を表示させる画面への遷移を指示する情報である、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記判定部によって前記所定の条件が成立すると判定された場合、前記車両に設けられた警告部に所定の警告情報を出力させる警告制御部をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1、3または4のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の乗客による決済情報を取得し、
前記判定部は、前記車両内の動画像及び前記決済情報に基づき、当該乗客による決済が正当であるか否かを判定し、
前記警告制御部は、前記判定部によって前記乗客による決済が正当でないと判定された場合、前記警告情報を出力させる、
ことを特徴とする請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記走行制御部は、さらに、車両の出入口の開閉を制御し、
前記走行制御部は、前記判定部によって、前記乗客による決済が正当でないと判定された場合、前記車両の出入口を開口させない、
ことを特徴とする請求項7に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記所定の条件は、前記車両の走行環境に応じて異なり、
前記取得部は、前記車両の走行環境に関する環境情報をさらに取得し、
前記判定部は、前記取得部によって取得された環境情報に基づく所定の条件について、成立するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1、3、4、6、7または8のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項10】
車両の管理装置とネットワークを介して接続された車両制御装置の制御方法であって、
前記車両の走行を制御する走行ステップと、
前記車両に設置された撮影部によって撮影された前記車両内の動画像を、前記車両の管理装置の所定の表示部に表示させる表示情報を出力する出力ステップと、
前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得ステップと、
前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力ステップによって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御ステップとを含み、
前記取得ステップは、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、
前記判定ステップは、前記取得ステップで取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置の制御方法。
【請求項11】
車両の管理装置とネットワークを介して接続された車両制御装置の制御プログラムであって、
車両制御装置に、
前記車両の走行を制御する走行制御機能と、
前記車両に設置された撮影部によって撮影された前記車両内の動画像を、前記車両の管理装置の所定の表示部に表示させる表示情報を出力する出力機能と、
前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得機能と、
前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定機能と、
前記判定機能によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力機能によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御機能と、
を実現させ、
前記取得機能は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、
前記判定機能は、前記取得機能が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置の制御プログラム。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
令和2年11月13の訂正請求により訂正された請求項1及び3ないし11に係る特許に対して、当審が令和3年3月25日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

(進歩性)本件特許の請求項1及び3ないし11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び3ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



<引用文献等一覧>
1.特開2016-62414号公報(甲第1号証)
2.特開2015-200933号公報(甲第3号証)
3.特開2005-277660号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2008-264482号公報(周知技術を示す文献)

第5 当審の判断
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1(甲第1号証)
取消理由(決定の予告)において引用された特開2016-62414号公報(申立人が提出した甲第1号証。以下、「引用文献1」という。)には「車内監視装置及び車内監視システム」に関して、次の記載がある。

ア 「【0011】
(車両制御装置)
以下、図面を参照して本発明の車内監視装置の実施の形態を説明する。
図1Aから図1Dは、本発明の実施形態1に係る車内監視装置1の構成要素を示すブロック図である。図2は、図1に示す車内監視装置1の各構成を実現する車両100の具体的な構成の一例を示すブロック図である。本発明において車両100の種類は特に限定はされないが、本実施形態では、一般的な乗合バスを例に挙げて説明する。
【0012】
本実施形態の車内監視装置1は、例えば、バス、電車、新交通システム等、多数の乗客の輸送を目的とする公共旅客輸送用の車両100に搭載される。車内監視装置1は、車両100内の乗客の乗車状態を把握する乗車状態把握手段11と、車両100の走行状態を把握する走行状態把握手段12と、前記の乗車状態及び走行状態に基づいて車両100を前記乗客の安全に関する報知を行う報知手段13と、を備える。
【0013】
車内監視装置1は、図1Bに示すように、前記の乗車状態及び走行状態に基づいて車両100を制御する車両制御手段14を備えてもよい。また、車内監視装置1は、図1C及び図1Dに示すように、乗客の乗車状態及び車両100の走行状態に基づいて乗客が転倒する危険度を判定する危険度判定手段15をさらに備えてもよい。また、図1A及び図1Bに示すように、危険度判定手段15を省略し、報知手段13又は車両制御手段14が前記の危険度を判定するようにしてもよい。いずれの場合にも、報知手段13は、判定された危険度に応じて乗客の安全に関する報知を行い、車両制御手段14は、判定された危険度に応じて車両100を制御する。以下では、報知手段13及び車両制御手段14と危険度判定手段15とを別の手段として説明する。」

イ 「【0019】
また、図2に示すように、本実施形態の車両100は、例えば、撮像装置である車内カメラ105及び車外カメラ106と、各種のセンサを含む車内センサ107及び車両センサ108を備えている。また、車両100は、車両100内の乗客や手荷物などを検出する車内センサ107と、車両100の三次元の速度、加速度及び角速度等を計測可能な車両センサ108とを備えている。」

ウ 「【0032】
本実施形態の車内監視装置1は、図1Aから図1Dに示すように構成要素の一つとして乗車状態把握手段11を備えている。乗車状態把握手段11は、例えば、前記した車内カメラ105、車内センサ107、演算制御部109、及び情報記憶部110を備えている。乗車状態把握手段11は、車内カメラ105から得られた画像、及び車内センサ107から得られた情報を、演算制御部109によって処理すると共に、演算制御部109によって必要な情報を情報記憶部110から読み出し、又は情報記憶部110に記憶させる。これにより、乗車状態把握手段11は、乗客Pの乗車状態を把握する。ここで、乗客Pの乗車状態には、車両100内の乗客Pの立ち居振舞いすなわち起居動作及び属性を含んでもよく、例えば、乗客Pの乗車率、乗客Pの年齢、性別及び身長、乗客Pの車両100内での位置及び着席又は起立の状態を含む姿勢、並びに、車内での移動の有無等を含むことができる。」

エ 「【0036】
さらに、乗車状態把握手段11は、演算制御部109によって情報記憶部110に記憶されたプログラムを実行し、所定の時間間隔で連続的に撮影された車内カメラ105の画像に基づいて、乗客Pや手荷物Lの車両100内での移動の有無を認識する。ここで、乗客Pや手荷物Lの車両100内での移動の有無は、例えば、ブロックマッチング法又は勾配法によるオプティカルフロー方式等、公知の画像処理によって認識することが可能である。」

オ 「【0043】
本実施形態の車内監視装置1は、図1Aから図1Dに示すように、構成要素の一つとして走行状態把握手段12を備えている。走行状態把握手段12は、図2に示す車両100の速度又は加速度を計測する車両センサ108と、この車両センサ108を制御する演算制御部109と、演算制御部109を介して車両センサ108の計測結果を記憶する情報記憶部110と、を備えている。また、走行状態把握手段12は、車両センサ108に代えて、又は車両センサ108と共に、車両100外の画像を撮影する車外カメラ106を備えてもよい。本実施形態の走行状態把握手段12は、車両センサ108と共に車外カメラ106を備えている。」

カ 「【0046】
以上のように、走行状態把握手段12は、演算制御部109によって車両センサ108又は車外カメラ106から得られた情報又は画像を処理し、必要な情報を情報記憶部110から読み出し又は情報記憶部110に記憶させる。これにより、走行状態把握手段12は、自車両100の3軸方向の速度、加速度、角速度、前方車両との車間距離及び相対速度、前方の障害物との距離及び相対速度、後方車両との距離及び相対速度の少なくとも一つを含む走行状態を把握する。
【0047】
本実施形態の車内監視装置1は、図1C及び図1Dに示すように、構成要素の一つとして危険度判定手段15を備えている。危険度判定手段15は、図2に示す車両100の乗車状態及び走行状態を記憶する情報記憶部110と、乗車状態及び走行状態に基づいて乗客が転倒する危険度を判定する演算制御部109とを備えている。また、情報記憶部110には、乗車状態及び走行状態に基づいて危険度を判定するためのプログラムが記憶されている。
【0048】
図8は、乗客が転倒する危険度を判定する判定基準の一例を示す表である。危険度判定手段15は、演算制御部109によって情報記憶部110に記憶されたプログラム、乗客Pの乗車状態及び車両100の走行状態を読み出し、例えば図8に示す判定基準に従って、乗客が転倒する危険度を判定する。具体的には、危険度判定手段15は、演算制御部109によって情報記憶部110から、例えば、乗客Pの車両100内での位置と姿勢及び60歳以上の高齢者の乗車率を、乗客Pの乗車状態として読み出す。
【0049】
また、危険度判定手段15は、演算制御部109によって情報記憶部110から、例えば、車両100の前後方向、左右方向、及び上下方向の3軸方向の速度、加速度、角速度を車両100の走行状態として読み出す。
【0050】
図9は、車両100の進行方向の速度と加速度の一例を示すグラフである。グラフ中、実線が速度を示し、破線が加速度を示している。車両100が停車した状態から発進し、速度が増加して定速走行に移行するまでの間に、比較的大きな加速度が生じる。また、車両100が定速走行から減速して停車するまでの間に、逆方向の比較的大きな加速度が生じる。また、低速走行時に前方車両との車間を確保するために減速した場合や、前方車両との車間を詰めるために加速した場合にも加速度が生じる。さらに、図示は省略するが、転回中、急勾配走行中、又は、急カーブ走行中には、車両100の前後方向だけでなく、左右方向や上下方向の加速度が生じる場合がある。
【0051】
危険度判定手段15は、演算制御部109によって情報記憶部110に記憶されたプログラムを実行し、速度、加速度、角速度、路線地図、走行経路等の情報に基づいて、自車両100の走行状態が、例えば、停車から発進までの間、走行中、転回中、急勾配走行中、又は、急カーブ走行中のいずれかにあることを判定する。さらに、演算制御部109は、情報記憶部110から必要な情報を読み出して、乗客Pの車両100内での位置と姿勢、60歳以上の高齢者の乗車率、及び自車両100の走行状態に基づいて危険度を判定して情報記憶部110に記憶する。
【0052】
具体的には、例えば、乗客P全員が着席し、高齢者の乗車率が0%であり、車両100が停車から発進までの間である場合には、危険度を最も低いレベル1と判定し、情報記憶部110に記憶する。また、乗客P全員が着席し、高齢者の乗車率が20%以下であり、車両100が走行中である場合には、危険度を2番目に低いレベル2と判定し、情報記憶部110に記憶する。また、通路に立っている乗客P全員が吊革又は手すりに掴まっており、高齢者の乗車率が0%であり、車両100が停車から発進までの間にある場合には、危険度を3番目に低いレベル3と判定し、情報記憶部110に記憶する。
【0053】
また、通路に立っている乗客P全員が吊革又は手すりに掴まっており、高齢者の乗車率が40%以下であり、車両100が転回中である場合には、危険度を3番目に高いレベル4と判定し、情報記憶部110に記憶する。また、乗車定員を超えて通路に立っている乗客Pが密集し、高齢者の乗車率が10%以下であり、車両100が急こう配を走行中の場合には、危険度を2番目に高いレベル5と判定し、情報記憶部110に記憶する。また、乗車定員を超えて通路に立っている乗客Pが密集し、高齢者の乗車率が40%以下であり、車両100が急カーブを走行中の場合には、危険度を最も高いレベル6と判定し、情報記憶部110に記憶する。
【0054】
以上の危険度の判定基準は、あくまでも一例であり、他の様々な情報を加味して危険度を判定することができる。例えば、車外カメラ106の画像から、先行車両との車間距離と相対速度が所定の閾値を超え、自車両100を減速させなければ先行車両との衝突の危険がある場合には、危険度を高く設定することができる。また、車外カメラ106の画像から、後方車両の追突の危険が判定された場合に、危険度を高くしてもよい。
【0055】
実際には、立っている乗客Pの乗車状態、すなわち、位置、人数、属性等を、運転士が正確に把握している場合には、危険度を低くすることができる。しかし、例えば、運転士が着席していると認識していた乗客Pが、運転士の気付かないうちに起立し、運転士の認識している乗客Pの乗車状態と実際の乗客Pの乗車状態とにずれが生じた場合には、乗客Pの転倒等の危険性が高くなる。したがって、乗客Pの乗車状態に変化が生じた場合に、運転士がその変化を認識するまでの間は、危険度を高くすることが好ましい。運転士が乗車状態の変化、例えば着席した状態の乗客Pが起立したことを認識したか否かは、例えば、運転士が乗車状態の変化を認識してタッチパネル等を操作することによる確認操作の有無によって判定することができる。
【0056】
前記の例では、主に乗客Pが図5Aに示す車両100内の座席Sや通路Aにどの程度存在するかを検知することを目的としていたが、さらに乗客Pの安全性を確保するために、顔認識システムと乗客Pの追跡とを組み合わせて危険度を判定してもよい。例えば、危険度判定手段15は、乗客Pの乗車時に、演算制御部109を用い、顔認識用カメラ105aの画像に基づいて、乗客Pの年齢や性別を識別し、高齢者や年少者などの危険度を高く設定する。そして、危険度判定手段15は、演算制御部109と車内カメラ105等を用い、画像処理を行って危険度が高い乗客Pの追跡処理を行い、最終的に乗客Pの乗車状態が確定した位置及び時点を特定する。その後、危険度判定手段15は、例えば、車両100の走行中に乗客Pが起立したり、通路A上を移動したりするなどの乗車状態を検知した場合には、危険度を高くする。
【0057】
以上のように、危険度判定手段15は、情報記憶部110に記憶されたプログラム、乗車状態及び走行状態に基づいて、演算制御部109によって乗客Pが転倒する危険度を判定して情報記憶部110に記憶する。なお、危険度判定手段15は、報知手段13又は車両制御手段14に含めてもよい。
【0058】
本実施形態の車内監視装置1は、図1Aから図1Dに示すように、構成要素の一つとして報知手段13を備えている。報知手段13は、図2に示す車両100の乗車状態及び走行状態を記憶する情報記憶部110と、乗車状態及び走行状態に基づいてモニタ103及びスピーカ104等を制御する演算制御部109とを備えている。より具体的には、情報記憶部110は、乗車状態及び走行状態に基づく危険度を記憶し、演算制御部109は、危険度に基づいて車両100のモニタ103及びスピーカ104等を制御する。
【0059】
また、報知手段13は、演算制御部109によって情報記憶部110に記憶された現在の乗客Pの乗車状態と車両100の走行状態を読み出し、モニタ103に各乗客Pの乗車状態を表示する。報知手段13は、演算制御部109によって情報記憶部110から危険度を読み出し、モニタ103に危険度を表示するようにしてもよい。すなわち、報知手段13は、乗車状態と危険度の少なくとも一方を表示装置としてのモニタ103に表示させ、乗客Pの安全に関する報知を行う。危険度が高くなった場合の警告手段としては、運転士の前方への注意や集中を極力妨げない観点から、音声アラームなどでの警告が望ましい。
【0060】
図10は、モニタ103に表示された各乗客Pの乗車状態の一例を示す画像図である。報知手段13は、演算制御部109によって情報記憶部110に記憶された車内カメラ105の画像を俯瞰画像に変換し、モニタ103に表示させる。ここで、乗客Pの乗車状態の表示方法としては、例えば、着席中の乗客Pを丸印で表示し、通路Aに立っている乗客Pを四角印で表示し、長時間移動していない乗客Pを三角印で表示することができる。また、例えば、高齢者、通路に立った状態で吊革又は手すりに掴まっていない乗客P又は手荷物Lを、異なる形状の印や異なる色で区別して表示するようにしてもよい。
【0061】
図11は、モニタ103に表示された各乗客Pの乗車状態と危険度の一例を示す画像図である。報知手段13は、演算制御部109によって情報記憶部110に記憶された車内カメラ105の画像を俯瞰画像に変換し、モニタ103に表示させると共に、例えば、乗客Pの移動の有無、危険度、全体の乗車率、高齢者と子供の乗車率、女性の乗車率などをモニタ103に表示させる。
【0062】
また、報知手段13は、演算制御部109によって情報記憶部110から読み出した危険度が低い場合には、演算制御部109によって情報記憶部110に記憶された乗客Pの属性情報及び広告情報を読み出し、乗客用のモニタ103に乗客Pの年齢層に応じた広告情報を表示させるようにしてもよい。
【0063】
また、報知手段13は、演算制御部109によって、情報記憶部110に記憶された乗客Pの現在の乗車状態と車両100の現在の危険度を読み出し、その危険度が所定の危険度よりも高い場合に、スピーカ104に乗客Pの現在の乗車状態と危険度の少なくとも一方を出力させる。また、報知手段13は、演算制御部109によって、乗車状態又は危険度に応じた警告をスピーカ104に音声で出力させてもよい。なお、報知手段13は、スピーカ104に代えて、又はスピーカ104と併用して、音声案内装置としてのイヤホンに音声を出力させるようにしてもよい。このように、報知手段13は、スピーカ104等の音声案内装置によって、運転士又は乗客Pに対して乗客Pの安全に関する報知を行う。
【0064】
なお、報知手段13は、乗客Pの安全に関する報知を、車両100の走行中に行い、車両100の停車中に行わないようにしてもよい。具体的には、報知手段13は、スピードメーターの情報、又は、情報記憶部110に記憶された車両100の現在の走行状態を読み出す。そして、演算制御部109によって車両100が走行中か否かを判定し、車両100が停車中である場合に、前記した危険度に応じた報知を行う。また、報知手段13は、単に、通路Aなどに立っている乗客Pがいないかを判定し、立っている乗客Pがいる場合に、運転士にその旨、すなわち乗客の安全に関する報知をするようにしてもよい。
【0065】
本実施形態の車内監視装置1は、図1B及び図1Dに示すように、構成要素の一つとして車両制御手段14を備えている。車両制御手段14は、図2に示す車両100の乗車状態及び走行状態を記憶する情報記憶部110と、乗車状態及び走行状態に基づいて車両100の電子制御スロットル101及びブレーキ装置102等を制御する演算制御部109とを備えている。より具体的には、情報記憶部110は、乗車状態及び走行状態に基づく危険度を記憶し、演算制御部109は、危険度に基づいて車両100の電子制御スロットル101及びブレーキ装置102等を制御する。
【0066】
車両制御手段14は、演算制御部109によって、情報記憶部110に記憶された車両100の現在の危険度を読み出し、その危険度が所定の危険度よりも高い場合に、電子制御スロットル101を制御して車両100の加速を制限する。より具体的には、例えば、危険度がレベル4以上の場合に、運転士のアクセルペダルの操作によらず、車両100が加速しないように電子制御スロットル101を制御する。すなわち、車両制御手段14は、危険度に応じて加速制御装置としての電子制御スロットル101を制御して車両100の速度を制御する。
【0067】
また、車両制御手段14は、演算制御部109によって、情報記憶部110に記憶された車両100の現在の危険度を読み出し、その危険度が所定の危険度よりも高い場合に、ブレーキ装置102を制御して車両100を減速させる。より具体的には、例えば、危険度がレベル5以上の場合に、運転士のブレーキペダルの操作によらず、車両100が所定の速度以下になるようにブレーキ装置102を制御して車両100を減速させ、危険度を低下させる。すなわち、車両制御手段14は、危険度に応じてブレーキ装置102を制御して車両100の速度を制御する。」

キ 「【0082】
(車内監視システム)
次に、本発明の実施形態に係る車内監視システム1Aについて、図3から図11を援用し、図12Aから図16を用いて説明する。本実施形態の車内監視システム1Aは、乗客Pの乗車状態、車両100の走行状態、及び危険度に基づいて安全管理を行う安全管理手段16をさらに備える点で、実施形態1の車内監視装置1と異なっている。本実施形態の車内監視システム1Aのその他の点は、実施形態1の車内監視装置1と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0083】
図12Aから図12Dは、本実施形態に係る車内監視システム1Aの構成要素を示すブロック図である。車内監視システム1Aは、乗車状態把握手段11と、走行状態把握手段12と、報知手段13に加えて、安全管理手段16を備えている。実施形態1と同様に、車内監視システム1Aは、図12B及び図12Dに示す車両制御手段14、並びに、図12C及び図12Dに示す危険度判定手段15をさらに備えてもよいが、図12Bに示すように、危険度判定手段15を省略し、車両制御手段14が前記の危険度を判定するようにしてもよい。
【0084】
図13は、図12に示す車内監視システム1Aの各構成を実現する車両100Aと運行管理部200の具体的な構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の車両100Aは、情報通信部111を備えることを除いて、実施形態1の車両100と同様の構成を有している。車両100Aの情報通信部111は、演算制御部109の制御の下、情報記憶部110に記憶された情報を、例えば無線、インターネット回線等を介して、以下に説明する運行管理部200の情報通信部201と相互にデータ通信可能に設けられている。
【0085】
運行管理部200は、例えば、複数の車両100Aの安全管理を行うための設備である。運行管理部200は、車両100Aの情報通信部111と相互にデータ通信可能な情報通信部201と、複数の車両100Aの安全管理に必要な情報を入力するための情報入力部202と、車両100Aから送られた情報及び情報入力部202から入力された情報を処理する演算制御部203と、演算制御部203を介して情報が記憶される情報記憶部204とを有している。また、運行管理部200は、演算制御部203の制御の下で車両100Aの走行訓練を行うシミュレータ205と、演算制御部203の制御の下で情報を表示するモニタ206とを備えている。
【0086】
本実施形態の車内監視システム1Aの構成要素の一つである安全管理手段16は、運行管理部200の各構成と、車両100Aの情報通信部111とによって構成されている。すなわち、安全管理手段16は、乗車状態、走行状態、及び危険度を含む情報を複数の車両100Aとの間で通信する情報通信部201を備えている。また、安全管理手段16は、演算制御部109の制御の下、各車両100Aの乗車状態、走行状態、及び危険度を記憶する手段として、運行管理部200の情報記憶部204を備えている。
【0087】
また、安全管理手段16は、情報記憶部204に記憶された各車両100Aの乗車状態、走行状態、及び危険度に基づいて車両100Aの走行訓練を行うシミュレータ205を備えている。さらに、安全管理手段16は、演算制御部203の制御の下、各車両100Aの乗客Pの乗車状態、各車両100Aの走行状態、及び各車両100Aの危険度を表示する情報表示部として運行管理部のモニタ206を備えている。
【0088】
図14は、運行管理部200のモニタに表示される情報の一例を示す画像図である。安全管理手段16は、情報入力部202を介して入力した各車両100Aの運転士名、路線名、運行時間帯等を、演算制御部109の制御の下、情報記憶部110に記憶する。また、安全管理手段16は、複数の車両100Aの情報通信部111と運行管理部200の情報通信部201との間で通信を行って、各車両100Aの乗客Pの乗車状態、各車両100Aの走行状態、及び各車両100Aの危険度を受信し、演算制御部203の制御の下、情報記憶部204に記憶する。ここで、各車両100Aの走行状態には、位置情報、アクセルペダル及びブレーキペダルの操作量、速度、加速度、角速度を含む。
【0089】
運行管理部200の演算制御部203は、情報記憶部204に記憶された情報に基づいて、モニタ206に、例えば、運転士名、路線名、時間帯、乗車率、危険地点情報等の情報を表示する。ここで、危険地点情報には、例えば、車両100Aの危険度が所定のレベルよりも高くなった位置情報及び車外カメラ106の映像が含まれる。
【0090】
図15は、運行管理部200のモニタ206に表示される情報の一例を示す画像図である。安全管理手段16は、演算制御部203によって、モニタ206に路線地図Mを表示させる。また、安全管理手段16は、情報通信部201を介して情報記憶部204に記憶された複数の車両100Aの乗車状態、走行状態、危険度と、各車両100Aの位置情報とに基づいて、演算制御部203によって車両100Aの危険度が所定のレベルよりも高くなった危険位置Dの情報を抽出して路線地図M上に表示させる。なお、運行管理部200のモニタ206には、各車両100Aのモニタ103に表示された画像を表示させてもよい。
【0091】
図16は、各車両100Aのモニタ103に表示される情報の一例を示す画像図である。運行管理部200は、例えば、危険位置Dの情報を路線地図M上に表示させた地図情報を、情報通信部201を介して各車両100Aの情報通信部111に送信することができる。各車両100Aは、情報通信部111によって受信した地図情報を、演算制御部109の制御の下でモニタ103に表示させることができる。このとき、各車両100Aの路線情報と位置情報に基づいて、注意喚起情報Nを路線地図Mに重畳させてモニタ103に表示させるようにしてもよい。また、車両100Aが危険位置Dに近付いた時に、スピーカ104やモニタ103を介して運転士に報知するようにしてもよい。これにより、運転士の注意を喚起して乗客Pの転倒を防止することができる。
【0092】
次に、本実施形態の車内監視システム1Aの作用について説明する。本実施形態の車内監視システム1Aは、車両100Aの乗車状態、走行状態、及び危険度に基づいて安全管理を行う安全管理手段16を備えている。これにより、安全管理手段16によって複数の車両100Aの乗車状態、走行状態、及び危険度の情報を管理して乗客Pの転倒の危険性が高い場所を特定することができる。また、安全管理手段16によって各運転士の運行履歴を管理して、運転士の運転技術の向上に役立てることができる。
【0093】
また、安全管理手段16は、乗車状態、走行状態、及び危険度を表示する情報表示部として、運行管理部200のモニタ206を備えている。これにより、運行管理部200において、各車両100Aの乗車状態、走行状態、危険度を逐次把握し、運行管理部200から各車両100Aに指示を与えて乗客Pの転倒を未然に防止することができる。
【0094】
また、安全管理手段16は、各車両100Aの乗車状態、走行状態、及び危険度を記憶する情報記憶部110を備えている。これにより、複数の車両100Aの乗車状態、走行状態、及び危険度の情報を蓄積して、それぞれ分析することが可能になり、各車両100Aの乗客Pの転倒の防止に寄与することが可能になる。
【0095】
また、安全管理手段16は、情報記憶部110に記憶された乗車状態、走行状態、及び危険度に基づいて車両100Aの走行訓練を行うシミュレータ205を備えている。これにより、各車両100Aで危険度が高くなった乗車状態、走行状態をシミュレータ205上で再現し、例えば、所定の危険度以下で走行できるように訓練することで、運転士の安全運転技術の向上に役立てることができる。なお、プライバシー保護の観点から、シミュレータ205に用いる画像からは、他の車両のナンバープレートや車両情報など、個人が特定される情報を取り除くことが好ましい。
【0096】
ここで、乗車状態には、乗客Pの乗車率を含む。これにより、路線毎の混雑状況を運転士が事前に把握することができ、運転士の安全運転を喚起して、乗客Pの転倒を抑制することができる。なお、乗車率は、年齢や性別で分類してグラフ化してもよい。また、各車両100Aの走行状態には、位置情報、アクセルペダル及びブレーキペダルの操作量、及び速度、加速度、角速度を含む。これにより、各車両100Aが急ブレーキをかけた位置、状況等を分析して、事故防止に役立てることができる。
【0097】
また、安全管理手段16は、乗車状態、走行状態、及び危険度を含む情報を車両100Aとの間で通信する情報通信部111,201を備えている。これにより、情報通信部111,201を介して複数の車両100Aの情報を受信し、各車両100Aに情報を送信することが可能になる。」

ク 上記カ(特に、段落【0049】及び【0059】)及び上記キ(特に、段落【0090】)から、「演算制御部109」は、運行管理部200の所定のモニタ206において表示させる情報を出力するものといえる。

上記記載事項、認定事項及び図面(特に、図2、8及び13を参照。)の図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「車両100Aの運行管理部200とインターネット回線を介して接続された車内監視システム1Aであって、
前記車両100Aの走行を制御する車両制御手段14と、
前記車両100Aに設置された車内カメラ105によって撮影された前記車両内の画像を俯瞰画像に変換した画像図を、前記車両100Aの運行管理部200の所定のモニタ206において表示させる情報を出力する演算制御部109と、
所定の時間間隔で連続的に撮影された前記車内カメラ105の画像に基づいて乗車状態を把握する乗車状態把握手段11及び走行状態を把握する走行状態把握手段12と、
前記乗車状態及び前記走行状態に基づき危険度を判定する危険度判定手段15と、
危険度を運行管理部200へ送信する情報通信部11と、
前記走行状態には、位置情報が含まれる、車内監視システム1A。」

(2)引用文献2(甲第3号証)
取消理由(決定の予告)において引用された特開2015-200933号公報(申立人が提出した甲第3号証。以下、「引用文献2」という。)には「自律走行車両」に関して、次の事項が記載されている。

ア 「【0036】
ステップS12では、CPU11は、車両を停止する。具体的には、CPU11は、車両制御システム17へ車両の停止を指示する。車両制御システム17は、カメラシステム25、レーザシステム27により車両の周囲の安全を確認し、ブレーキシステム18等をコントロールして安全な場所に車両を停止する。
【0037】
ステップS13では、CPU11は、乗車料金の精算を行う。すなわち、表示部13に乗車料金を表示し、音声入出力部14より乗員に対して乗車料金の精算を促すメッセージを音声で出力する。乗員は入力部15よりカード情報などを入力して乗車料金の精算を行う。乗車料金の精算が完了するまで次のステップS14へ進まず、車両のドアは閉めたままであるので、乗車料金の踏み倒しを防げる。乗車料金の精算が完了するとステップS14へ進む。
【0038】
ステップS14では、CPU11は、ドアを開く。具体的には、CPU11は、車両制御システム17へドアの開放を指示する。車両制御システム17は、ドア開閉システム22によりドアを開放する。
【0039】
ステップS15では、CPU11は、乗員の降車が完了したかを判別する。具体的には、CPU11は、カメラシステム25による車外の画像と車内の画像を取得し、乗員全員が車外に出たかを画像を解析することにより判別する。乗員全員の降車が完了していない場合は、完了するまで待機する。乗員の降車が完了したと判別された場合はステップS16へ進む。」

上記記載事項及び図面(特に、図3を参照。)の図示内容からみて、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献2記載事項〕
「乗車料金の精算が完了するまでは、車両のドアを閉めたままにして、乗車料金の踏み倒しを防ぐこと。」

(3)引用文献3
取消理由(決定の予告)において引用された特開2005-277660号公報(以下、「引用文献3」という。)には「監視カメラシステム」に関して、次の事項が記載されている。

ア 「【0006】
本発明に係るカメラ監視カメラシステムは、複数台のカメラにより得た映像の中から映像を選択してセンタに設けられたモニタに表示を行う監視カメラシステムにおいて、カメラにより得られた映像を前記センタへ送る事象発生を検出し、事象発生検出情報を前記センタへ送信する事象発生検出手段と、前記事象発生検出手段による事象発生検出を受けて、定められた複数のカメラからの映像の送信を要求する映像要求手段と、カメラ毎に設けられ、前記映像要求手段による要求を受けると、該当カメラにより得られた映像をセンタへ送信する送信制御手段とを具備し、前記送信制御手段は、前記事象発生検出手段による事象発生検出を受けて、前記事象発生検出手段による事象発生検出情報と共に該当カメラにより得られた静止画映像をセンタへ送信することを特徴とする。」

イ 「【0018】
以上のように構成された監視カメラシステムの動作を図5、図6に示すフローチャートを参照して説明する。ここでは、図示せぬ監視部2-iにおいて所定事象発生が検出されるものとして説明を行う。各監視部2-1?2-nにおいて、常時順次に取得される映像データが時刻情報に対応付けられて映像蓄積部26に蓄積されている。そして画像処理部25は、所定事象発生(停止車両検出等)であるか映像要求の到来を検出している(S1)。所定事象発生があると、事象発生情報を制御部20と伝送部21へ送出する(S2)。制御部20は、静止画出力部27へ指示を与えて、その時に映像蓄積部26へ映像符号化部24から送られている1画面分の静止画の映像データを時刻情報と共に取り出させ、伝送部21へ送出させる(S3)。
【0019】
伝送部21では、画像処理部25から到来した事象発生情報と静止画出力部27から到来した静止画の映像データ及び時刻情報とについてカメラ番号を付加しパケット化し、宛先としてセンタ1のアドレスをセットし、発アドレスを当該監視部2-iのアドレスとして送信する(S4)。
【0020】
上記に対し、センタ1では、伝送部11がデータの到来を待っており(S11)、データが到来すると、事象発生情報が付加されているかを検出し(S12)、事象発生情報が付加されている場合には、カメラ番号、事象発生情報、時刻情報を分離し、カメラ選択処理部14へ送り、映像データ及び時刻情報とカメラ番号を予め定められた映像復号化部(例えば、一定の順で映像データが到来する毎に、切換を行って)12へ送る(S13)。映像復号化部はディジタル映像データをモニタ13に表示可能に復号化すると共に、カメラ番号と時刻を映像に含めた映像信号としてモニタ13へ送り、映像を表示する(S14)。
【0021】
カメラ選択処理部14では、カメラ番号i、事象発生情報、時刻情報を受けて、カメラ番号iの前後のカメラ番号(i-1)と(i+1)を得て、カメラ番号(i-1)と(i+1)に対応する宛先アドレスを予め備えているテーブルから求め、それぞれ映像(静止画)要求のパケットの宛先アドレスにセットし、発生時刻情報を含めて順次送信する(S15)。
【0022】
更に、当該カメラ番号iの監視部へ動画を要求する情報を、カメラ選択処理部14を構成するパーソナルコンピュータの表示部に表示する(S16)。例えば、「事象発生時の前後5分の動画を要求」のように表示し、訂正(場合によっては停止)とOKの操作を受ける(S17)。訂正では、映像の時間幅、映像を静止画とするか動画とするかなどを変更可能であり、訂正された結果はステップS16において表示される。OKがステップS17において確認されると、当該映像要求の情報が送られる(S18)。発アドレスは、例えば、上記テーブルから得るか、到来したパケットの発アドレスを宛先アドレスとしてセットすることにより設定可能である。
【0023】
上記により静止画の映像要求が送られたカメラ番号(i-1)、(i+1)の監視部においては、制御部20が映像要求の到来をステップS1において検出しステップS5へ進む。ステップS5においては、要求された映像の種類を検出し、静止画であるから静止画出力部27へ映像要求から取り出した時刻を送り当該時刻の静止画を映像蓄積部26に蓄積された映像データから読み出して送らせる(S6)。これにより、当初において事象発生が検出されたカメラと一列に並ぶカメラであって、前後のカメラによる静止画がセンタ1へ送られることになる。この場合にも、時刻情報とカメラ番号は付加されて送信されるものである。
【0024】
また、動画の映像要求が送られたカメラ番号iの監視部においては、制御部20が映像要求の到来をステップS1において検出しステップS5へ進む。ステップS5においては、要求された映像の種類を検出し、動画であるから映像出力部28へ映像要求から取り出した時刻と時間幅(前後5分)を送り当該時刻の動画の映像データを映像蓄積部26に蓄積された映像データから読み出して送らせる(S7)。これにより、当初において事象発生が検出されたカメラによって撮像されていた事象発生前後に係る動画がセンタ1へ送られることになる。この場合にも、時刻情報とカメラ番号は付加されて送信されるものである。
【0025】
上記に対し、センタ1では、伝送部11がデータの到来を待っており(S11)、データが到来すると、事象発生情報が付加されているかを検出し(S12)、事象発生情報が付加されていない場合には、映像データ及び時刻情報とカメラ番号を予め定められた映像復号化部(例えば、一定の順で映像データが到来する毎に、切換を行って)12へ送る(S19)。映像復号化部はディジタル映像データをモニタ13に表示可能に復号化すると共に、カメラ番号と時刻を映像に含めた映像信号としてモニタ13へ送り、映像を表示する(S20)。
【0026】
以上の処理の結果、図4に示されるように、例えば、カメラiの時刻12:00:00に事象発生が検出された場合には、カメラiの時刻12:00:00における静止画映像と、カメラiに前後して配置されているカメラ(i-1)とカメラ(i+1)の時刻12:00:00における静止画映像と、カメラiの時刻12:00:00の前後5分(時刻11:55:00から時刻12:05:00における動画映像とを得て表示がなされ、通常では必要十分と思える監視映像を自動的に得ることが可能である。」

上記記載事項及び図面(特に、図1ないし6を参照。)の図示内容から、引用文献3には次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献3記載事項〕
「監視カメラシステムにおいて、所定事象発生があると、事象発生情報をセンタ1へ送信し、事象発生情報の送信後、センタ1から動画を要求する操作があると、動画を送信し、該動画をセンタ1のモニタ13に表示させること。」

(4)引用文献4
取消理由(決定の予告)において引用された特開2005-277660号公報(以下、「引用文献4」という。)には「分散型監視カメラシステム」に関して、次の事項が記載されている。

ア 「【0021】
また、請求項6記載の分散型監視カメラシステムは、前記画像記憶手段が、前記監視カメラが前回撮像した所定撮像データを記憶するとともに、今回撮像した所定撮像データを記憶し、前記管理制御手段が、前回撮像した所定撮像データと今回撮像した所定撮像データを比較し、所定の差異の有無を判定する画像判定手段を備える構成とすることができる。
このような構成とすることにより、前回撮像した所定撮像データと今回撮像した所定撮像データを比較し、所定の差異の有無を判定する画像判定手段を備えることで、監視対象の撮像領域における状態の変化を検出することできる。
【0022】
これにより、例えば監視対象を遊技機とした場合には、遊技者の滞在の有無や、遊技盤の遊技領域内における球詰まり等の有無を検出することができる。
また、画像判定手段により差異が判定された場合のみ、通信手段が、遊技機管理装置に撮像データを送信してもよい。
また、差異が判定された場合に、通信手段が、画像判定内容を含む文字情報や判定された撮像データの一部である静止画像などの比較的に容量の小さい差異情報を遊技機管理装置に送信し、遊技機管理装置からの送信要求に基づき、該当する動画像を含む比較的容量の大きい撮像データを送信することもできる。
これにより、管理制御手段と遊技機管理装置の双方の負担を軽減することができる。」

イ 「【0082】
そして、このように撮像制御手段33fにおいて撮像され、記憶された静止画像は、撮像された時刻、撮像した監視カメラ、撮像した遊技機、撮像の契機となった撮像要求信号の情報とともに、前述した遊技機管理装置通信手段33b-3により、遊技機管理装置10に送信されるようになっている。
そして、一方の撮像制御手段33fにおいて撮像され、記憶された動画像は、遊技機管理装置通信手段33b-3により、遊技機管理装置10から送信要求が受信された場合に、静止画像に対応する動画像を送信するようになっている。
これは、例えば、遊技機管理装置10に送信された静止画像を遊技場の管理者が確認し、さらに動画像が必要ならば、監視制御装置33に送信要求することで実現される。
これにより、確認の必要のない画像(撮像データ)の送信に伴う制御処理は行われず、その分の処理能力を他の処理に費やすことができ、監視制御装置33と遊技機管理装置10の処理の効率化を図ることができる。」

ウ 「【0085】
次に、画像判定手段33gは、撮像制御手段33fにおいて撮像され、静止画像33h-1の記憶領域に記憶された静止画像を、当該領域が上書き更新される毎に、前回の静止画像(ベース画像を含む)と今回の静止画像を比較・判定を行う手段である。
具体的には、画像判定手段33gは、監視制御装置33に備える画像処理のためのハードウェア(キャプチャーボード)を備え、前回の静止画像と今回の静止画像の画像データ間に色の違い及び濃度の違い等の差異があるか否かを比較する制御処理を実行し、差異がある場合には、当該差異がある部分の画像を人物画像等として特定するようになっている。
【0086】
例えば、撮像制御手段33fにおいて、今回「撮像要求信号(非稼動)」の受信により記憶された静止画像の場合には、「撮像要求信号(非稼動)」に対応する前述の初期設定時(遊技者等が不在の遊技場の営業開始前)の静止画像(ベース画像)と比較することで、該当する非稼動状態の遊技機における滞留遊技者の有無やタバコ等の放置による遊技機の占有を判定することができる。
【0087】
また、今回「撮像要求信号(台枠開)」,「撮像要求信号(ガラス開)」の受信により記憶された静止画像の場合には、各撮像要求信号に対応するベース画像(遊技枠、ガラス枠ともに閉じた画像)や前回各撮像要求信号の受信により記憶された静止画像(遊技枠、ガラス枠ともに開閉不明な画像)と比較することで、該当する遊技機における遊技枠,ガラス枠の開閉の状況等を判定することができる。
【0088】
また、今回「撮像要求信号(ベース異常)」,「撮像要求信号(スタート異常)」の受信により記憶された静止画像の場合には、各撮像要求信号に対応するベース画像(非稼動時の遊技盤の画像)と比較することで、遊技盤内における球詰まりや釘曲げ等を判定することができる。
【0089】
また、今回「撮像要求信号(入金)」,「撮像要求信号(磁気/電波)」の受信により記憶された静止画像の場合には、前回各撮像要求信号の受信により記憶された静止画像と比較することで、現金の挿入に伴う遊技者の動作や、遊技者の遊技盤に対する手の動作等の変化から不審動作(不正行為)を判定することができる。
【0090】
そして、これらの判定により、差異を特定した場合は、差異が特定された静止画像を、判定結果を含む情報、撮像した時刻、撮像した監視カメラ、撮像した遊技機、撮像の契機となった撮像要求信号の情報とともに、前述した遊技機管理装置通信手段33b-3により、遊技機管理装置10に送信することができる。
この送信後、遊技機管理装置10から送信要求が受信された場合に、差異が特定された静止画像に対応する動画像を送信することもできる。」

エ 「【0094】
さらに、送信されたこれらの情報と静止画像は、遊技機管理装置10に備えるモニタ10aにより確認することができるようになっている。
図11は、本発明の一実施形態に係る分散型監視カメラシステムにおける遊技機管理装置に備えるモニタの画像例を示す図である。
同図に示す例では、遊技台番号14の遊技機を撮像した監視カメラの撮像来歴10bと、撮像の契機となった撮像要求信号(入金)に対応する静止画像が表示された表示領域10cを示している。
撮像来歴10bは、マウス等の入力手段を用いて、確認したい撮像来歴を選択する選択欄になっており、所望する撮像来歴の欄にカーソル101を移動して選択することで、選択された撮像来歴に該当する静止画像を表示領域10cに表示することができるようになっている。
【0095】
同図の静止画像は、前述したような監視カメラ31の有するスーパーインポーズ機能により、撮像条件が撮像データの下部に一体に合成されている例を示している。これにより、撮像データに合成されている撮像条件と撮像来歴10bの情報(時刻、撮像要求信号の種別)との照合ができるようになっている。
そして、さらに当該撮像来歴を選択すると、送信要求が遊技機管理装置10から監視制御装置33に送信され、監視制御装置33から当該静止画像に対応する動画像が遊技機管理装置10に送信されるとともに、表示領域10cに表示されるようになっている。
このように、必要に応じて動画像を要求すれば足り、静止画像の確認のみで十分であれば、すべての動画像を確認する必要がなくなり、遊技機管理装置と監視制御装置間における送受信処理の効率化を図ることができる。」

上記記載事項及び図面(特に、図1、3及び11を参照。)の図示内容から、引用文献4には次の事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献4記載事項〕
「監視カメラシステムにおいて、前回撮像した所定撮像データと今回撮像した所定撮像データを比較し、所定の差異の有無を判定し、差異が判定された場合に判定情報を送信し、判定情報の送信後、遊技機管理装置10から動画の送信要求があると、動画を送信し、動画を遊技機管理装置10の表示領域10cに表示させること。」


2 対比及び判断
(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「車両100A」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件訂正発明1の「車両」に相当し、以下同様に、「運行管理部200」は「管理装置」に、「インターネット回線」は「ネットワーク」に、「車内監視システム1A」は「車両制御装置」に、「車両制御手段14」は「走行制御部」に、「車内カメラ105」は「撮影部」に、「モニタ206」は「表示部」に、「情報」は「表示情報」に、「演算制御部109」は「出力部」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「画像を俯瞰画像に変換した画像図」と本件訂正発明1の「動画像」とは、「画像」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「所定の時間間隔で連続的に撮影された前記車内カメラ105の画像に基づいて乗車状態を把握する乗車状態把握手段11及び走行状態を把握する走行状態把握手段12」と「車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得部」とは、「前記車両の状況に関する情報を取得する取得部」という限りにおいて一致しており、「前記乗車状態及び前記走行状態に基づき危険度を判定する危険度判定手段15」と「前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定部」とは、「車両に関する状況に基づき判定を行う判定部」という限りにおいて一致しており、「危険度を運行管理部200へ送信する情報通信部11」と「前記判定部によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力部によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御部」とは、「前記判定部による判定結果を、車両の管理装置へ送信する送信制御部」という限りにおいて一致している。
また、引用発明における「前記走行状態には、位置情報が含まれる」に関して、「走行状態」は走行状態把握手段12により把握されるものであり、引用発明の「走行状態」は本件訂正発明の「車両の状況に関する情報」に相当するから、引用発明の「前記走行状態には、位置情報が含まれる」は、本件訂正発明1の「前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得」する態様に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点がある。

〔一致点〕
「車両の管理装置とネットワークを介して接続された車両制御装置であって、
前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記車両に設置された撮影部によって撮影された前記車両内の画像を、所定の表示部において表示させる表示情報を出力する出力部と、
前記車両の状況に関する情報を取得する取得部と、
車両に関する状況に基づき判定を行う判定部と、
前記判定部による判定結果を、車両の管理装置へ送信する送信制御部と、
を備え、
前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得する、車両制御装置。」

〔相違点1〕
本件訂正発明1においては、車両内の「動画像を、前記車両の管理装置の所定の表示部において表示させる」のに対して、引用発明においては、車両内の画像を俯瞰画像に変換した画像図を、前記運行管理部200の所定のモニタ206において表示させるものである点。

〔相違点2〕
「前記車両の状況に関する情報を取得する取得部」に関して、本件訂正発明1は、「車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得部」であるのに対して、引用発明は、所定の時間間隔で連続的に撮影された車内カメラ105の画像に基づいて乗車状態を把握する乗車状態把握手段11及び走行状態を把握する走行状態把握手段12である点。

〔相違点3〕
「車両に関する状況に基づき判定を行う判定部」に関して、本件訂正発明1は、「前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定部」であるのに対して、引用発明は、乗車状態及び走行状態に基づき危険度を判定する危険度判定手段15である点。

〔相違点4〕
「前記判定部による判定結果を、車両の管理装置へ送信する送信制御部」に関して、本件訂正発明1は、「前記判定部によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力部によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御部」であるのに対して、引用発明は、危険度を運行管理部200へ送信する情報通信部11である点。

〔相違点5〕
本件訂正発明1においては、「判定部は、前記取得部が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する」のに対して、引用発明においては、かかる事項を備えるか不明な点。

事案に鑑み、上記相違点5について検討する。
引用文献1の段落【0056】には、「・・・車両の走行中に乗客Pが起立したり、通路A上を移動したりするなどの乗車状態を検知した場合には、危険度を高くする。」との記載がある。
ここで、引用文献1においては、「車両」としてはバスも想定されており(段落【0012】)、一般的に、バスが「走行中」とは、信号等で停車していないで走行している時を意味すると解されるから、「停留場以外の位置にある」とは、同じ意味ではない。そうすると、引用文献1の当該記載事項は、「車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し」、車両が「停留場以外の位置にある」ときに「乗客Pが起立」した場合に危険度を高くすることまで、示唆するものではない。
よって、引用発明において、引用文献1の当該記載事項を参酌し、上記相違点5に係る本件訂正発明1の発明特定事項である「車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する」ことは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
引用文献2ないし4記載事項は、上記1 (2)ないし(4)のとおりであって、上記相違点5に係る本件訂正発明1の発明特定事項を開示ない示唆するものではない。
また、申立人が甲第2号証として提出した特開2003-141686号公報は、上記相違点5に係る本件発明の発明特定事項を開示ないし示唆するものではなく、他に、上記相違点5に係る本件訂正発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到できたとする証拠や根拠はない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明、引用文献2ないし4記載事項及び甲第2号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明3、4、6ないし9について
本件訂正発明3、4、6ないし9は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)で述べたものと同様の理由により、引用発明、引用文献2ないし4記載事項及び甲第2号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件訂正発明10及び11について
本件訂正発明10及び11は、本件訂正発明1を、それぞれ「車両制御装置の制御方法」及び「車両制御装置の制御のプログラム」の発明としたものであって、その実質的な内容は本件訂正発明1と同じであるから、上記(1)で述べたものと同様の理由により、引用発明、引用文献2ないし4記載事項及び甲第2号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 令和2年9月10日付け取消理由通知の取消理由について
令和2年9月10日付け取消理由通知で指摘した特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)についての取消理由は、本件訂正請求による特許請求の範囲の訂正により解消した。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について
(1)申立理由の概要
申立人が主張する特許法第29条第1項第3号(新規性)の理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許発明1、6、9ないし11は、甲第1号証に記載された発明である。

(2)当審の判断
上記第5 2 (1)で述べたとおり、本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明との間には、相違点が存在し、これらの相違点は実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
本件訂正発明1の発明特定事項を全て含む本件訂正発明6及び9についても同様である。
また、本件訂正発明1を、それぞれ、「車両制御装置の制御方法」及び「車両制御装置の制御プログラム」の発明としたものに相当し、その実質的な内容が本件訂正発明1と同じである本件訂正発明10及び11についても同様である。

2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)について
(1)申立理由の概要
申立人が主張する特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)の理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許発明の解決しようとする課題は、「乗客を安全に運ぶ車両を提供可能」とすること(本件明細書段落0006参照)であり、当該課題を解決するためには、例えば、「所定の条件が成立すると判定された場合、車両200の走行を停止させる」(同段落0027)、又は、「所定の条件が成立すると判定された場合、車両200内の警告手段(ディスプレイ230、スピーカ220)に、所定の警告情報を出力させる」(同段落0029)等の手段が必要となるところ、本件特許発明1では、「所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、車両の管理装置へ送信する」に止まり、車両に対しての制御等は何ら行われておらず、請求項1には、課題を解決するための手段が反映されているとはいえないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、請求項4?5、請求項7?9に係る発明、請求項1に記載の装置の発明に対応する方法の発明である請求項10に係る発明、及び、請求項1に記載の装置の発明に対応する制御プログラムの発明である請求項11に係る発明についても同様。)

(2)当審の判断
本件訂正発明1は、「判定部によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信」する、という発明特定事項を備えている。そして、「判定結果」が「管理装置へ送信」されることにより、管理装置側で安全のための対応が可能となることは技術常識(例えば、特開昭64-65698号公報の4ページ左下欄6ないし12行を参照。)であるから、車両に対しての制御等が行われなくとも、「乗客を安全に運ぶ車両を提供可能」であるといえる。
したがって、本件訂正発明1は、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるから、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
本件訂正発明1を直接又は間接的に引用する本件訂正発明3、4、6ないし9並びに実質的に本件訂正発明1を制御方法の発明としたものに相当する本件訂正発明10及び本件訂正発明1を制御プログラムの発明としたものに相当する本件訂正発明11についても同様である。

3 特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)について
(1)申立理由の概要
申立人が主張する特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)の理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許請求の範囲の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項9には、「前記取得部は、前記車両の走行環境に関する環境情報をさらに取得し、前記判定部は、前記取得部によって取得された環境情報に基づく所定の条件について、成立するか否かを判定する」と記載されている。当該記載を通常の意味で解釈すると、請求項9に記載の「走行環境に関する環境情報」と請求項1に記載の「走行情報」とは、互いに異なる情報であると解釈される。
一方、本件明細書を参酌すると、「走行情報とは、車両200が置かれた状況に関する情報であって、例えば、…(略)…走行位置、停車位置…(略)…を含む。」(段落0024)と記載されており(段落0024)、また、「所定の条件は、車両200の走行環境に応じて異なってもよい。例えば、車両200が走行している場所(住宅地、ビル街の別)…(略)…に応じて、異なる判定条件が設定されてもよい。」(段落0046)と記載されている。そうすると、「走行位置」又は「停車位置」等の情報である場合の「走行情報」と、走行環境が「車両が走行している場所」である場合の「走行環境に関する環境情報」とは、両者の区別が判然とせず、両情報が互いに異なる情報であるか否かが明確でない。
したがって、請求項9が引用する請求項1に記載された「走行情報」と請求項9に記載の「走行環境」の関係が明確でないため、本件特許発明9は明確でない。

(2)当審の判断
発明の詳細な説明(願書に添付した明細書)段落【0024】の「走行情報とは、車両200が置かれた状況に関する情報であって、例えば、…(略)…走行位置、停車位置…(略)…を含む。」における「走行情報」の例示、及び、段落【0046】の「所定の条件は、車両200の走行環境に応じて異なってもよい。例えば、車両200が走行している場所(住宅地、ビル街の別)…(略)…に応じて、異なる判定条件が設定されてもよい。」における「走行環境」の例示、並びに「環境」の通常の意味(「めぐり囲む区域」、「四囲の外界。周囲の事物」(広辞苑第5版))から、本件訂正発明1の「走行情報」と本件訂正発明9の「走行環境」の関係は理解できる。
したがって、本件訂正発明9は明確である。

4 まとめ
よって、申立人の主張する上記1 ないし3 の理由はいずれも採用できない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、3、4及び6ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3、4及び6ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項2及び5に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除された。これにより、本件請求項2及び5に係る特許に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の管理装置とネットワークを介して接続された車両制御装置であって、
前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記車両に設置された撮影部によって撮影された前記車両内の動画像を、前記車両の管理装置の所定の表示部において表示させる表示情報を出力する出力部と、
前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得部と、
前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に開する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力部によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御部と、
を備え、
前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、
前記判定部は、前記取得部が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記走行制御部は、前記判定部によって前記所定の条件が成立すると判定された場合、前記車両の走行を停止させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記所定の操作情報は、前記車両の管理装置において、前記車両内の情報を表示させる画面への遷移を指示する情報である、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記判定部によって前記所定の条件が成立すると判定された場合、前記車両に設けられた警告部に所定の警告情報を出力させる警告制御部をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1、3または4のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の乗客による決済情報を取得し、
前記判定部は、前記車両内の動画像及び前記決済情報に基づき、当該乗客による決済が正当であるか否かを判定し、
前記警告制御部は、前記判定部によって前記乗客による決済が正当でないと判定された場合、前記警告情報を出力させる、
ことを特徴とする請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記走行制御部は、さらに、車両の出入口の開閉を制御し、
前記走行制御部は、前記判定部によって、前記乗客による決済が正当でないと判定された場合、前記車両の出入口を開口させない、
ことを特徴とする請求項7に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記所定の条件は、前記車両の走行環境に応じて異なり、
前記取得部は、前記車両の走行環境に関する環境情報をさらに取得し、
前記判定部は、前記取得部によって取得された環境情報に基づく所定の条件について、成立するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1、3、4、6、7または8のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項10】
車両の管理装置とネットワークを介して接続された車両制御装置の制御方法であって、
前記車両の走行を制御する走行ステップと、
前記車両に設置された撮影部によって撮影された前記車両内の動画像を、前記車両の管理装置の所定の表示部に表示させる表示情報を出力する出力ステップと、
前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得ステップと、
前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力ステップによって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御ステップとを含み、
前記取得ステップは、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、
前記判定ステップは、前記取得ステップで取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置の制御方法。
【請求項11】
車両の管理装置とネットワークを介して接続された車両制御装置の制御プログラムであって、
車両制御装置に、
前記車両の走行を制御する走行制御機能と、
前記車両に設置された撮影部によって撮影された前記車両内の動画像を、前記車両の管理装置の所定の表示部に表示させる表示情報を出力する出力機能と、
前記車両内の動画像を少なくとも含む前記車両の状況に関する情報を取得する取得機能と、
前記車両内の動画像及び前記車両内の動画像以外の前記車両の状況に関する情報に基づき、前記車両に、前記車両の状況に応じて設定される所定の条件が成立するか否かを判定する判定機能と、
前記判定機能によって所定の条件が成立すると判定された場合、判定結果を、前記車両の管理装置へ送信し、前記判定結果の送信後、前記管理装置から送信された前記車両の管理装置における所定の操作情報に応じて、前記出力機能によって出力される表示情報を前記管理装置へ送信する送信制御機能と、
を実現させ、
前記取得機能は、前記車両の状況に関する情報として、前記車両の位置情報を取得し、
前記判定機能は、前記取得機能が取得した前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が当該車両の停留所の位置にあるか否かを判定し、前記停留場以外の位置にあり、かつ、前記動画像において前記車両内で乗客の立ち上がりがある場合に、前記所定の条件が成立すると判定する、車両制御装置の制御プログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-24 
出願番号 特願2017-231293(P2017-231293)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G08G)
P 1 651・ 121- YAA (G08G)
P 1 651・ 536- YAA (G08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩田 玲彦  
特許庁審判長 佐々木 正章
特許庁審判官 鈴木 充
金澤 俊郎
登録日 2019-10-11 
登録番号 特許第6600344号(P6600344)
権利者 BOLDLY株式会社
発明の名称 車両制御装置、車両制御方法、及び、車両制御装置の制御プログラム  
代理人 特許業務法人白坂  
代理人 特許業務法人白坂  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ