ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G |
---|---|
管理番号 | 1000596 |
審判番号 | 審判1997-12947 |
総通号数 | 2 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-03-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-07-31 |
確定日 | 1999-08-18 |
事件の表示 | 平成3年特 許 願 第242308号「電気二重層コンデンサおよびその製造方法」拒絶査定に対する審判事件(平成5年3月5日出願公開、特開平5-55086)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明の要旨 本願は、平成3年8月29日の出願であって、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成8年3月19日付け手続補正書および平成9年7月31日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、 「固体活性炭よりなりセパレー夕を介して同心内状に配置された一対の分極性電極と、各分極性電極の一方の端面に設けられた集電極と、前記分極性電極に含浸させる電解液とが円筒形の容器に密閉されていることを特徴とする電気二重層コンデンサ。」 にあるものと認める。 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された実公昭63-3150号公報(以下、「引用例1」と言う。)には、 「本考案は、電気二重層コンデンサの構造の改良に関するものである。 従来、電気二重層コンデンサの構造としては、第1図および第2図に示すような構造のものが一般的であった。図中、1は導電体、2は活性炭と電解質からなるペースト電極、3は非電子伝導性で電解質イオン透過性の多孔性セパレー夕、4は非導電体である。」(第1頁左欄第8〜15行目)、 「第4図は本考案に係る電気二重層コンデンサの実施例の斜視図である。図中で、符号11a,11b,11c,11dは同心円状に配設した円筒状の導電体、12a,12b,12c,12d,12e,12fは上記各円筒状導電体11に外接して配設された活性炭と電解質からなる円筒状のペースト電極、13a,13b,13cは、各円筒状ペースト電極12a,12c,12eに外接し、かつ各円筒状ペースト電極12b,12d,12fに内接する非電子伝導性の円筒状の多孔性セパレー夕である。15a,15bはリード端子で、中心軸に平行に各々円筒状導電体11a,11dと接続して外部に導出させている。 本実施例では、リード端子15aと接続した円筒状の導電体11aの外側に円筒状のペースト電極12aを配置し、その外側を円筒状の多孔性セパレータ13aで被覆する。さらに、その外側に円筒状のペースト電極12bを配置し、その外側を円筒状の導電体11bで囲む。即ち、導電体11a,ペースト電極12a,多孔性セパレータ13a,ペースト電極12b、および導電体11bで1つの円筒状電気二重層コンデンサを形成する。この内側層に設けた1つの円筒状電気二重層コンデンサが、従来の基本セル構造の電気二重層コンデンサ(第1図参照)の基本セル1枚に相当し、また巻回型構造(第2図参照)の電気二重層コンデンサの1個に相当する。従って、本考案に係る電気二重層コンデンサにおいては、耐電圧を高くするために、上述した1つの円筒状電気二重層コンデンサ構造を同心円筒状に繰り返し配して形成する。 即ち、第4図は、3個の円筒状電気二重層コンデンサを直列に配置した場合を示し、第1図の基本セル構造例における電気二重層コンデンサ、第2図の巻回型構造例における電気二重層コンデンサを3個直列に接続したものと同じ効果を具現する構造の例である。」(第1頁右欄第13行〜第2頁左欄第21行目) と記載されている。 次に同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-84915号公報(平成3年4月10日発行)(以下、「引用例2」と言う。)には、 「活性炭を分極性電極とする電気二重層コンデンサの基本構成は、活性炭層と集電極を片側分極性電極とし、この分極性電極1対の間に電解質溶液を含浸し、セパレー夕で電子的短絡を防止したものである。従来、電気二重層コンデンサの分極性電極としては、活性炭粉末もしくは活性炭繊維が用いられてきた。」(第1頁左下欄第16行〜同頁右上欄第4行目)、 「これら活性炭粉末、活性炭繊維は分極性電極として用いた場合、活性炭粉末どうしまたは活性炭繊維どうしの接触抵抗が大きいため電気二重層コンデンサの等価直列抵抗が大きくなるといった欠点があった。そのため、固体状の活性炭が作成されれば、活性炭粉末どうしまたは活性炭繊維どうしの接触抵抗が低減されることが期待される。さらに、固体状の活性炭には自立性があるため、圧力をかけることにより分極性電極と集電極の間の電気的接続を行わなくてすむため封止が簡便になるという利点と製造プロセスが簡便になるという利点が期待されてきた。」(第1頁右下欄第10行〜第2頁左上欄第2行目)、 「近年、カーボン材料の開発の進歩は著しく、・・・・多孔性のブロック状カーボン・・・・が開発されている。」(第2頁右上欄第7〜10行目)、 「上述した従来の電気二重層コンデンサは分極性電極材料に活性炭粉末もしくは活性炭繊維を用いていたため、・・・・活性炭粉末、活性炭繊維どうしの接触抵抗のために等価直列抵抗の低減を図ることができないといった問題点があった。」(第2頁右上欄第14〜20行目)、 「本発明の目的は、分極性電極材料としてブロック状活性炭多孔体を用い、分極性電極および電解液を無加圧で容器に収納することにより大容量で等価直列抵抗を低減した小型で軽量な電気二重層コンデンサを提供することにある。 (問題点を解決するための手段) ブロック状活性炭多孔体を分極性電極材料に用い、分極性電極および電解液を無加圧で容器に収納することを特徴とする。 以下実施例をもとに本発明を説明する。 (実施例1) まず本発明による電気二重層コンデンサを第1図に示す。・・・・ブロック状活性炭多孔体を・・・・成形し、厚さ方向に垂直に・・・・真鍮ネジ2を差込み、集電極1とした。分極電極となるブロック状活性炭に・・・・真鍮ネジ2を差し込んだ後、電解液・・・・に浸漬し、真空含浸により電解液を活性炭内部の細孔へ導入した。これらを12枚作製し、第1図に示すような形に配置した。」(第2頁左下欄第4行〜同頁右下欄第5行目)と記載されている。 3.対比 そこで、本願発明と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、上記引用例1のものの「同心円状に配設した円筒状の導電体」は、本願発明における「集電極」に相当するので、両者は共に、活性炭よりなりセパレータを介して同心円状に配置された一対の電極と、各電極に設けられた集電極と、電解液とからなる電気二重層コンデンサである点では同じである。 ただ、▲1▼本願発明においては、電極を構成している活性炭は固体活性炭であり、それが分極性電極となっており、該分極性電極には電解液が含浸されているのに対して、引用例1の発明においては、電極は活性炭と電解質からなるペースト電極であり、また、該電極が分極性電極となっているとの記載は存在しない点、および、▲2▼本願発明においては、集電極は各分極性電極の一方の端面に設けられており、また、一対の分極性電極と、集電極と、電解液とが円筒形の容器に密閉されているのに対して、引用例1の発明においては、集電極は円筒状に形成されており、また、容器についての記載は存在せず、さらに、耐電圧を高圧化するために、3個の電気二重層コンデンサが直列に接続された形となっている点、で両者は相違している。 4.当審の判断 よって上記各相違点について検討すると、▲1▼については、電解コンデンサの電極材料として固体活性炭を用い、該固体活性炭に電解液を含浸させ、分極性電極として用いることは、上記引用例2に、ブロック状活性炭に電解液を含浸して電気二重層コンデンサの分極性電極として用いたものが記載されており、また、そこには、活性炭を粉末もしくは繊維で用いるのと比べて、固体で用いれば、接触抵抗の低減を図ることができ、等価直列抵抗を低減した電気二重層コンデンサを得ることができることも記載されているので、電解コンデンサの電極材料として固体活性炭を用い、該固体活性炭に電解液を含浸させ、分極性電極として用いることは、上記引用例2の記載から明らかなように、当業者にとって公知の事項にすぎないものと認められるので、上記第1の引用例の電解コンデンサのおいて、その電極材料として、上記第2の引用例に記載された、固体活性炭に電解液を含浸させ、分極性電極としたものを適用して、本願発明のようにすることは、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 つぎに、▲2▼については、集電極は、例えば、引用例1の発明においては、同心円状に配設した円筒状の導電体が用いられており、また、引用例2の発明においては、ブロック状活性炭電極の厚さ方向に真鍮ネジを差し込んだものが用いられているように、一般的に言って、集電極の形状として、それぞれのコンデンサの形状に応じた最適な形状のものを採用し、それを最適な場所に配置にすることは、当業者が必要に応じて適宜選択実施できた程度の設計的事項にすぎないものと認められるので、引用例1の発明において、集電極を各分極性電極の一方の端面に設けて本願発明のようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なしえた程度のことにすぎないものと認められる。 つぎに、分極性電極,集電極,セパレー夕,電解液からなるコンデンサ基本セルを円筒状の容器に密閉したコンデンサ素子というものは、コンデンサ素子の形状としては一般的な形状にすぎず、また、引用例1の発明においては、耐電圧を高圧化するために、3個のコンデンサ基本セルを同心円状に配置し、それらを直列に接続しているのであって、1つのコンデンサ基本セルのみを見れば、セパレー夕を介して同心円状に配置された一対の電極と、集電極と、電解液とからなっている電気二重層コンデンサであることは、本願発明と同じであるので、上記引用例1の発明のコンデンサ基本セルのみを用いて、本願発明のようにすることは、当業者にとって容易に発明をすることができたできたものと認められる。 したがって、相違点▲2▼についても当業者にとって格別の相違点であるものとは認められない。 そして、本願発明の有している効果というものも、上記引用例1,2の発明がそれぞれ有している効果にとどまり、本願発明が、上記引用例1,2の発明にはない格別の効果を有しているものとは認められない。 したがって、本願発明と上記引用例1の発明との相違点は、当業者にとって格別の相違点であるものと認めることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるので、本願発明は、上記引用例1の発明に引用例2の発明を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-06-07 |
結審通知日 | 1999-06-22 |
審決日 | 1999-07-06 |
出願番号 | 特願平3-242308 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01G)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 桑原 清 |
特許庁審判長 |
川名 幹夫 |
特許庁審判官 |
磯崎 洋子 橋本 正弘 |
発明の名称 | 電気二重層コンデンサおよびその製造方法 |
代理人 | 京本 直樹 |