• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1000631
審判番号 審判1998-19892  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-09-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-12-17 
確定日 1999-08-27 
事件の表示 昭和63年 特 許 願 第 61158号「仮名漢字変換装置」拒絶査定に対する審判事件(平成1年9月19日出願公開、特開平 1-233657)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、昭和63年3月15日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成11年1月18日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの
「入力仮名文字列を仮名漢字混じり文に変換する仮名漢字変換装置であって、
単語を送り仮名基準で分類し、該分類を示す分類コードを単語単位に持たせて記憶した単語辞書と、
あらかじめ送り仮名の基準を指定する送り仮名基準指定手段と、
入力したかな文字列を前記単語辞書を参照して仮名漢字変換し、文節候補を作成する文節分かち書き手段と、
該作成された文節候補を、送り仮名による優先度順に並び換える優先度順並び換え手段と、
前記指定された送り仮名基準に合致する単語を含む文節候補を、それ以外の文節とは異なる表示態様で表示する文節候補表示手段と
を備えた仮名漢字変換装置。」
にあるものと認める。
また、明細書および図面の記載からみて、本願発明の効果は、仮名漢字混じり文の入力時に所定の送り仮名の基準を指定し、これが優先的に表示されるため、送り仮名が統一された形式で入力できること、および指定された送り仮名の形式に合致するものを異なる表示態様で表示するから、使用者からみれば、合致するものとそうでないものが明確に区別可能となり、意識しながら他の送り仮名形式の文節候補を選択できることであると認められる。
2.引用例
原査定における拒絶の理由に引用された特開昭58-123124号公報(以下「引用例」という。)には、「文章処理装置」に関する以下の記載がある。
「入力装置1は鍵盤装置や音声認識装置、仮名文字読取り認識装置等からなり、これによって入力される読みを表わす第1の文字列を、例えば仮名文字コードに変換して辞書検索部2に与えるものである。上記読みを表わす第1の文字列は、例えば平仮名、片仮名、ローマ字等として示されるものである。しかして上記辞書検索部2は、入力された文字コード列を変換辞書3に予め登録された文字列との間で照合検索を行い、上記入力された第1の文字列に該当する漢字混りの表記文字からなる第2の文字列を求めている。」(引用例第2頁左下欄第13行〜右下欄第4行)
「一方、選択指示レジスタ6には、選択指示スイッチ7の操作により与えられる表記パターン選択指示データがセットされている。このデータは前記出力制御部4に与えられるもので、これによって1つの読みの第1文字列に対して存在する複数の表記パターンの第2の文字列のうちの1つが選択されるようになっている。即ち、読みを同じくするものと、これを漢字混り文字列に変換した場合、送り仮名のつけ方によってその表記文字列のパターンが変化するものがある。例えば「とりあつかい」なる文字列によって示される文章(単語)を仮名漢字変換する場合「取り扱い]、「取扱い」、「取り扱」、「取扱」なる4種のパターンに変換することが可能であり、そのいずれを採用するかは文章の使用分野や文書作成者の意志によって決定される。このような表示パターンの形式を選択指示するものが、前記レジスタ6にセットされたデータである。」(引用例第3頁左上欄第7行〜右上欄第5行)
「また表示されたデータに従って表示パターンの出力優先順位を設定し、オペレータに送り仮名パターンの選択を行わせるようにすることも可能である。」(引用例第3頁右下欄第6行〜第9行)
以上の記載から、引用例には、「読みを表す第1の文字列」を「漢字混りの表記文字からなる第2の文字列」に変換する「文章作成装置」であって、「単語」の送り仮名の「表示パターンの形式」に基づき「複数の表記パターンの第2の文字列」を記憶した「変換辞書3」と、あらかじめ送り仮名の「表示パターンの形式」を指定する「選択指示スイッチ7」および「選択指示レジスタ6」と、「読みを表す第1の文字列」を前記「変換辞書3」を参照して仮名漢字変換し、「表示パターン」を作成する手段と、該作成された「表示パターン」の、送り仮名による「出力優先順位」を設定する手段と、「出力優先順位」に基づいて「表示パターン」を表示する手段とを備えた「文章作成装置」が開示されている。
3.対比
そこで、本願発明(以下「前者」と言う。)と引用例に開示された発明(以下「後者」と言う。)とを対比する。
後者の「読みを表す第1の文字列」、「漢字混りの表記文字からなる第2の文字列」、「文章作成装置」、「単語」、「表示パターンの形式]は、それぞれ前者の「入力仮名文字列」、「仮名漢字混じり文」、「仮名漢字変換装置」、「単語」、「基準」に相当するものと認められる。また、後者の「選択指示スイッチ7」および「選択指示レジスタ6」は、前者の「送り仮名基準指定手段」に相当するものと認められる。さらに、後者の『送り仮名による「出力優先順位」を設定する手段』は、前者における「送り仮名による優先度順に並び換える優先度順並び換え手段」に相当するものと認められる。そして、後者における「変換辞書3」は、単語に対する複数の送り仮名パターンを記憶する点で、前者の「単語辞書」と一致しており、後者の「表示パターン」は、複数の送り仮名パターンを有する変換候補である点で、前者の「文節候補」と一致しており、後者の「表示パターン」を作成する手段は、複数の送り仮名パターンを有する変換候補を作成する手段である点で、前者の「文節分かち書き手段」と一致しており、後者の「表示パターン」を表示する手段は、複数の送り仮名パターンを有する変換候補を表示する手段である点で、前者の「文節候補表示手段」と一致している。
以上の点を考慮すると、本願発明と引用例に開示された発明は以下の点で一致する。
「入力仮名文字列を仮名漢字混じり文に変換する仮名漢字変換装置であって、
単語に対する複数の送り仮名パターンを記憶する単語辞書と、
あらかじめ送り仮名の基準を指定する送り仮名基準指定手段と、
入力したかな文字列を前記単語辞書を参照して仮名漢字変換し、複数の送り仮名パターンを有する変換候補を作成する手段と、
該作成された複数の送り仮名パターンを有する変換候補を、送り仮名による優先度順に並び換える優先度順並び換え手段と、
複数の送り仮名パターンを有する変換候補を表示する手段と
を備えた仮名漢字変換装置。」
そして、以下の点で両者は相違するものと認められる。
(1)単語辞書に関して、前者では、送り仮名基準の分類を示す分類コードを単語単位に持たせて記憶しているのに対して、後者では、このような分類コードを単語単位に持たせておらず、複数の形式の表示パターンを一つの単語としてまとめて記憶している点。
(2)前者では、仮名漢字変換の際、文節分かち書きにより文節候補を作成しているのに対して、後者では、文節分かち書きによる変換をしているか否かは不明であり、単語単位の変換を行っている点。
(3)表示する手段に関して、前者では、指定された送り仮名基準に合致する単語を含む文節候補を、それ以外の文節とは異なる表示態様で表示するのに対して、後者では、異なる表示態様では表示していない点。
4.当審の判断
(イ)相違点(1)について
仮名漢字変換における変換辞書において、送り仮名に関する複数のパターンを別々の単語として変換辞書に記憶することは、周知の技術である(例えば、特開昭62-98455号公報、特開昭62-75761号公報参照)。
また、後者においては、単語の送り仮名に関する複数のパターンを「表示パターンの形式」として分類して把握し認識している。
そして、分類対象の分類を認識し、識別するために、分類の対象に分類を付して記憶することは周知の技術である(例えば、特開昭62-93764号公報では、各単語に対して品詞に関する分類を付して辞書に記憶している。)
したがって、後者に、上記周知の技術を適用し、送り仮名に関する複数のパターンを別々の単語として変換辞書3に記憶するようにし、その際に、表示パターンの形式を分類コードとして個々の単語に付して、変換辞書3に記憶せしめ、本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
(ロ)相違点(2)について
仮名漢字変換の際、文節分かち書きにより文節候補を作成することは、例を示すまでもなく、当業者に周知の技術であったから、後者において、文節分かち書きにより文節候補を作成し、本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
(ハ)相違点(3)について
複数の選択候補を表示し、オペレータに選択を促す際に、表示態様を異ならせることは周知の技術であるから(例えば特開昭53-56926号公報参照)、後者において、指定された表示パターン形式に合致する表示パターンを、それ以外の表示パターンとは異なる表示態様で表示し、本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
(ニ)効果に関して
前記本願発明の効果についても、引用例に開示された発明から容易に予測し得る程度のものであって、格別のものとは認めることができない。
5.請求人の主張について
審判請求人は、審判請求理由補充書において、引用例の構成では、「予め設定した一つのパターンの表記が出力されるだけであり、使用者が異なる送り仮名を選択しようとすると、いちいち選択表示スイッチを操作してから、再度仮名漢字変換を行わなくてはならない」(第7頁第6行〜8行)
旨主張するが、引用例には、「また表示されたデータに従って表示パターンの出力優先順位を設定し、オペレータに送り仮名パターンの選択を行わせるようにすることも可能である。」(引用例第3頁右下欄第6行〜第9行)と記載されており、請求人の上記主張を採用することはできない。
また、審判請求人は、本願発明のように異なる送り仮名の単語を、仮名漢字変換上は異なる単語として扱うことにより、単語の学習や新規の単語登録が可能となる旨の主張を行っている。しかし、逆に引用例に開示された発明のように、複数の形式の表示パターンを一つの単語としてまとめて記憶すれば、本願発明と比較して、変換辞書3の容量を節約できるという別異の効果を有するものであり、先に述べたように送り仮名に関する複数のパターンを別々の単語として変換辞書に記憶することは、周知の技術であるから、結局のところ当業者は、設計段階において、単語の学習や新規の単語登録を可能とすることを重要視するか、辞書の容量の増加を抑止することを重要視するかに応じて、必然的に何れの構成を採用するかを選択するものと言わざるを得ず、請求人の上記主張を採用することはできない。
6.結び
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に開示された発明および上記周知の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 1999-06-30 
結審通知日 1999-07-13 
審決日 1999-07-15 
出願番号 特願昭63-61158
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一成瀬 博之久保 正典  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 鶴谷 裕二
久保田 健
発明の名称 仮名漢字変換装置  
代理人 下出 隆史  
代理人 五十嵐 孝雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ