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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1000654
審判番号 審判1997-17234  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-10-09 
確定日 1999-08-25 
事件の表示 平成 7年 特 許 願 第253443号「チップ形半導体発光素子」拒絶査定に対する審判事件(平成 8年11月22日出願公開、特開平 8-306960)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願は、出願日が昭和60年5月24日である実願昭60-106321号を平成7年9月4日に特許出願(特願昭7-248363号)に変更し、さらに、その特許出願の一部を平成7年9月29日に新たな特許出願としたものであって、その発明(以下「本願発明」という。)の要旨は、平成10年9月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】透光性樹脂を略直方体にモールド形成させてなる発光部と、この発光部の対向する側面のそれぞれから一端が突出するリードと、このリードにボンディングされかつ前記発光部内に位置するダイオードチップとを備え、回路基板に面実装されるチップ型半導体発光素子において、
前記略直方体の発光部は、その上面を実装用ノズルにより吸着保持可能な面とし、該上面の略中央部に形成された凹部及びこの凹部内に形成された略半円球状の凸レンズ部を有し、該凸レンズ部は、その頂点が、前記発光部の上面に実装用ノズルを当接して吸着保持したときに、該ノズルに接触しないような位置に設けられており、前記発光部の下面側を回路基板に対する実装面とすることを特徴とするチップ型半導体発光素子。」
本願発明は、上記構成を採用したことにより、放出する光の輝度を高める凸レンズ部を発光部上面に凹設した凹部底面に突設したので、実装作業に際して、内径がレンズ径より小さい吸着ノズルに吸着した状態においてかかるチップ型半導体発光素子が傾いたり、前記凸レンズ部に傷が付くといった不具合を確実に防止できるとともに、歩留まりが低下する心配がなく自動装着機による確実な装着が得られるという効果を奏するものである。
2.引用刊行物に記載された発明
これに対して、当審の拒絶理由通知書において引用した実願昭58-22603号(実開昭59-128753号)の願書に添付した明細書及び図面を撮影したマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、<実施例の説明>の順において、
「第1図(A)、(B)はこの考案に係る面発光装置の一例を示すものである。同図において、11は反射材でない透光性樹脂で構成された反射皿であり、この反射皿11は略円形に形成されたベース12とこのベース12の主面に一体に形成された周壁13とからなり、周壁13の内面13aは先端側末広がり状に形成されている。14は凸状のレンズ部であり、上記ベース12の主面における周壁13で囲まれた部位に一体に形成されている。
151、152は発光ダイオードのような発光素子、161、162は上記各発光素子151、152に対応する素子設定用のフレーム片、171、172は上記各発光素子151、152に対応するリード線接続用のフレーム片であり、一方の素子設定用のフレーム片161と他方のリード線接続用のフレーム片172とは上記発光素子151、152を互に直列接続させるために一体形成されている。上記一方の発光素子151とリード線接続用のフレーム片171とはワイヤ181で、また他方の発光素子152とり一ド線接続用のフレーム片172とはワイヤ182でそれぞれ接続されている。上記反射皿11は上記ボンディング加工後にワイヤ181、182の断線等を防止するため低圧で形成され、これにより上記各フレーム161、162、171、172は各発光素子151、152の設定部分を残して反射皿11に植設される。
19は上記反射皿11における周壁内面13aに形成された反射膜である。これはA1ないしはAg等の金属を蒸着して得られたものであるが、たとえば白色の塗料をコーティングして形成したものであってもよい。20は上記反射皿11内にポッティング等により充填されて硬化された透光性物質、たとえばエポキシ樹脂である。
上記構成において、発光素子、151、152に通電すれば、これら発光素子151,152からの光はレンズ部14および透光性物質20を通って直接外部に放射される一方、残りの光は反射膜19で反対されて外部に放射されることになる。
ここで、上記反射皿11を反射材でない透光性樹脂で形成し、反射膜19を設ける構成のため、上記反射皿11について材料選択に煩わされることなく容易に成形でき、しかも上記レンズ作用を受けた光を反射膜19が効果的に外部に放射させるため、反射皿11の材質に関係なく高い反射効率が確保されて良好な面発光を得ることができる。
ところで、上記発光素子151、152からの光で均等的な照度をもたせたい場合には、第2図のようにレンズ部14に顔料等の光散乱材21を含有させればよい。
また、第3図に示すように反射皿11内にレンズ部14と屈折率が同じ透光性物質22を充する場合には、この透光性物質22に上記光散乱材21を含有させれば、レンズ効果が滅失されるが、光が散乱して照度分布が一定となる。」と記載されている。
すなわち、上記刊行物1には、
透光性樹脂を略円形状にモールド形成させてなる発光部と、この発光部の対向する側面のそれぞれから一端が突出するリードと、このリードにボンディングされかつ前記発光部内に位置するダイオードチップとを備え、回路基板に実装されるチップ型半導体発光素子において、
前記略円形状の発光部は、上面の略中央部に形成された凹部及びこの凹部内に形成された略半円球状の凸レンズ部を有し、前記発光部の下面側を回路基板に対する実装面とするチップ型半導体発光素子が記載されていると認められる。
同じく実願昭58-101839号(実開昭60-11459号)の願書に添付した明細書及び図面を撮影したマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、「考案の詳細な説明」の冒頭に、
「本考案はアノードリード端子及びカソードリード端子をもつ発光及び受光ダイオードに関す
る。
従来、ダブルエンド型の例えば発光ダイオードはカメラやキースイッチ等の機能表示のために使用されるので超小型のものが多い。実装方法はプリント基板にリード端子を直接半田付けするか又はリード端子の途中からその板厚方向に機械的に曲げた状態で、プリント基板面に垂直方向に発光経路をもたせて取り付けられている。」
と記載されており、従来例とされる第1図、第2図及び第4図を合わせて考慮すると、上記刊行物2には、回路基板に面実装される略直方体の発光ダイオードチップが記載されていると認められる。
3.比較及び検討
そこで、本願発明(以下「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下「後者」という。)とを比較すると、両者は、透光性樹脂をモールド形成させてなる発光部と、この発光部の対向する側面のそれぞれから一端が突出するリードと、このリードにボンディングされかつ前記発光部内に位置するダイオードチップとを備えた回路基板に実装されるチップ型半導体発光素子において、前記発光部は、上面の略中央部に形成された凹部及びこの凹部内に形成された略半円球状の凸レンズ部を有し、前記発光部の下面側を回路基板に対する実装面とするチップ型半導体発光素子である点において一致し、以下の点において相違する。
▲1▼前者においては、発光体が略直方体であるのに対し、後者においては略円形である点。
▲2▲前者においては、チップが回路基板に面実装されるのに対し、後者においては、どのような実装法であるか記載されていない点。
▲3▼前者においては、発光部の上面を実装用ノズルにより吸着保持可能な面としているのに対し、後者においては、どのような上面としているのか記載されていない点。
▲4▼前者に置いては、凸レンズ部は、その頂点が、発光部の上面に実装用ノズルを当接して吸着保持したときに、該ノズルに接触しないような位置に設けられているのに対し、後者においては、凸レンズ部の頂点がどのような位置になるかは記載されていない点。
上記相違点について検討する。
▲1▼の点について
上記刊行物2においても示されているように、発光体の形状を略直方体とすることはよく知られており、本願発明において発光体の形状を直方体とすることについて明細書には何らその目的及び作用が記載されておらず、格別の意味があるとは認められないので、上記刊行物1の発光体の形状を略直方体とすることは当業者が容易になし得たことである。
▲2▼の点について
上記刊行物2においても示されているように、発光体チップを回路基板に面実装することはよく知られているので、この実装法を刊行物1記載の発光体チップに応用することは当業者が容易になし得たことである。
▲3▼の点について
半導体チップを真空吸着して移送することは周知であり(例えば、実開昭59-3540号公報参照)、上記刊行物1には、文章としては上面の形状についての記載はないが、第1図(A)、(B)及び第2図には、発光体の上面端部が平坦になっ
ているものが示されており、この構造は、本件発明の特許請求の範囲における「発光部の上面を実装用ノズルにより吸着保持可能な面とし、」という構成に包含されるものである。したがって、上記刊行物1には、実質的に発光部の上面を実装用ノズルにより吸着保持可能な面が記載されているものと認められる。
▲4▼の点について
上記刊行物1には、文章としては、凸レンズ部の頂点がどのような位置になるかについての記載はないが、第1図及び第2図には、凸レンズ部の頂点が発光部の上面よりも低い位置に設けられているものが示されている。したがって、上記刊行物1には、実質的に「凸レンズ部は、その頂点が、発光部の上面に実装用ノズルを当接して吸着保持したときに、該ノズルに接触しないような位置に設けられる」という構成が記載されているものと認められる。
そして、本願発明の奏する、放出する光の輝度を高める凸レンズ部を発光部上面に凹設した凹部底面に突設したので、実装作業に際して、内径がレンズ径より小さい吸着ノズルに吸着した状態においてかかるチップ型半導体発光素子が傾いたり、前記凸レンズ部に傷が付くといった不具合を確実に防止できるとともに、歩留まりが低下する心配がなく自動装着機による確実な装着が得られるという効果も上記刊行物1及び2記載の発明から当業者が容易に想到できるものである。
上記の点に関し、請求人は、平成11年2月15日付意見書において、本願発明は以下の効果を奏すると主張する。
(イ)発光部の上面を実装用ノズルにより吸着保持可能な面とし、放出する光の輝度を高める略半球状の凸レンズ部を、発光部上面に凹設した凹部底面に突設するとともに、発光部を略直方体に形成したので、実装作業に際して、内径がレンズ径より小さい吸着ノズルに吸着した状態においてかかるチップ型半導体発光素子が傾いて吸着されることを確実に防止できる。
(口)該凸レンズ部の頂点が、前記発光部の上面に実装用ノズルを当接して吸着保持したとき
に、該ノズル部に傷が付くといった不具合を確実に防止できる。
(ハ)発光部の上面に前記凹部及び前記凸レンズを形成し、下面を回路基板に対する実装面としたので、上面側を吸着ノズルにより吸着保持しそのまま下面側を回路基板上に設置すればよく、自動実装による確実な吸着が実現できる。
しかしながら、本願発明は、あくまでも発光素子という物の発明であり、吸着ノズルにより吸着され得る構造であればよく、上記刊行物1記載の発明においても吸着ノズルにより吸着され得る構造とされているのであるからその点に物としての差異はない。
4.むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、上記刊行物1乃至2に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たことと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-05-27 
結審通知日 1999-06-08 
審決日 1999-06-14 
出願番号 特願平7-253443
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛関口 鶴彦  
特許庁審判長 小林 邦雄
特許庁審判官 河口 雅英
橋本 武
発明の名称 チップ型半導体発光素子  

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