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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1000674
審判番号 審判1997-17592  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-05-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-10-16 
確定日 1999-08-02 
事件の表示 平成2年 特 許 願 第254512号「半導体作製方法」拒絶査定に対する審判事件(平成4年5月7日出願公開、特開平 4-133313)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年9月25日の出願であって、その発明は、平成9年11月13日付手続補正書によって補正された平成8年3月5日付全文補正明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された「半導体作製方
法」にあるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「第1発明」という)は、次のとおりのものである。
「体積比が20%以上の水素を含有した不活性気体雰囲気中における基板上へのマグネトロン型RFスパッタ法による非単結晶半導体膜の成膜工程と、
前記マグネトロン型RFスパッタ法によって得た非単結晶半導体膜を600℃以下の温度で熱再結晶化させる工程を有することを特徴とする半導体作製方法。」
2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平2-194620号公報(公開公報発行日:平成2年8月1日。以下、「引用例1」という)には、
「非晶質絶縁基板上に、少なくとも水素ガスを含む雰囲気ガス中でのスパッタ法により非晶質半導体薄膜を堆積させる第1の工程と、該非晶質半導体薄膜を大気中に取り出すことなく前記堆積時と同一反応炉内で連続して300℃〜450℃の熱
処理を行なうことにより、前記非晶質半導体薄膜を緻密化させる第2の工程と、500℃〜700℃の低温熱処理により前記緻密化された非晶質半導体薄膜を固相成長させる第3の工程とを少なくとも有することを特徴とする半導体薄膜の結晶成
長方法。」(特許請求の範囲)、「結晶シリコンをターゲット(カソード)とし、10-3〜10-1Torr程度の不活性ガス圧下で高電界を印加し、放電させる・・・前記不活性ガスに水素を混合しておくと水素化非晶質シリコン薄膜(a-Si:H)が得られる。このような方法を反応性スパッタ法(Reactive Sputtering法)と言う。これには13.56MHzの高周波電界を用いた高周波スパッタ法、直流電界を用いた直流スパッタ法、あるいはイオンビームスパッタ法などが知られている。前記不活性ガスとしては通常アルゴンが用いられ、この
スパッタ雰囲気中の水素分圧PHが膜特性に大きな影響を与える。・・・酸素などのような結晶成長を妨げるような不純物を少なくするために水素分圧PHは1〜10mTorr程度に設定する。」 (第2頁左下欄第13行〜右下欄第15)、
「600℃以下の低温プロセスでも作製が可能なので、価格が安くて耐熱温度が低いガラス基板を用いることができる。」(第4頁右下欄第1〜3行)、
「従来に比べて、薄膜トランジスタのON電流は増大しOFF電流は小さくなる。またスレッシュホルド電圧も小さくなりトランジスタ特性が大きく改善される。」 (第4頁右下欄第8〜11行)
と記載されている。
したがって、上記各記載から、引用例1には、11〜10mTorr程度の分圧に設定された水素を含有した、1〜100mTorr程度の不活性ガス圧下における基板上へのスパッタ法による非晶質半導体薄膜の成膜工程と、前記スパッタ法
によって得た非晶質半導体薄膜を500℃〜600℃の温度で固相成長させる工程を有することを特徴とする半導体作製方法。」が記載されているものと認められる。
同じく原審の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開昭64-31466号公報(以下、「引用例2」という)には、
「11〜50モル%程度の水素ガスを添加した一種もしくは複数種を混合した不活性ガス中で放電することによりイオンを発生させる工程と、該イオンをシリコン、もしくは不純物を含んだシリコンから成るターゲットの表面に衝突させて放出されたシリコン原子を基板上に堆積させシリコン薄膜を形成する工程と、該シリコン薄膜に加熱時間10秒以下の短時間のアニール処理を施す工程とを含むことを特徴とする薄膜トランジスタ用シリコン薄膜の形成方法。」 (特許請求の範囲第1項)、「上記水素ガスの添加量により薄膜トランジスタの閾値電圧を変化させることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の薄膜トランジスタ用シリコン薄膜の形成方法。」(特許請求の範囲第3項)、「高いキャリア移動度を有し、しかも閾値電圧が低く制御できるシリコン薄膜トランジスタを提供した。」 (第3頁右上欄第6〜8行)、「スパツタ時の不活性ガスに少量の水素ガスを混合するだけの簡単な方法により、キャリア移動度を損なうことなく、閾値電圧を変化させ得ることを見いだすことができた。」 (第3頁右下欄第11〜14行)、「第1図に示すように、閾値電圧は1モル%以上の混合率では水素ガス混合率と共に小さくなり、水素ガス混合率を変えることにより、その閾値電圧は明らかに希望の値に制御できていることが分かる。さらに、これらの場合のキャリア移動度はいずれも150cm2/V・s以上であり、従来の高々100cm2/V・sに比して、充分に優れたシリコン薄膜トランジスタが得られている。」(第4頁左上欄第1〜8行)が、第1図と共に記載されている。
3.対比
本願第1発明と引用例1記載の発明を対比すると、両者は、「水素を含有した不活性気体雰囲気中における基板上へのスパッタ法による非単結晶半導体膜の成膜工程と、前記スパッタ法によって得た非単結晶半導体膜を600℃以下の温度で熱
再結晶化させる工程を有することを特徴とする半導体作製方法。」である点で一致し、本願第1発明では水素の含有が体積比で20%以上と規定されているのに対して、引用例1に記載された発明では含有量の下限値が特に明示されていない点
(相違点1)、本願第1発明のスパッタ法がマグネトロン型RFスパッタ法であるのに対し、引用例1ではマグネトロン型RFスパッタ法の使用についてふれるところがない点(相違点2)において相違する。
4.当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例1に記載された発明と引用例2の請求項3に記載された発明は、いずれも水素を含有した不活性気体雰囲気中における基板上へのスパッタ法による非単結晶半導体膜の成膜工程と、前記スパッタ法によって得た非単結晶半導体膜を熱再結
晶化させる工程を有することを特徴とする半導体作製方法に関するものである点で共通する。
そして、引用例2の第1図には、閾値電圧が水素ガスの混合率の増大と共に小さくなり、その閾値電圧が水素ガスの混合率を変えることにより希望の値に制御できることが示されている。
してみれば、スパッタ雰囲気中の水素分圧が膜特性に大きな影響を与えるという認識を有する引用例1に記載された発明において、該水素分圧の設定にあたり、引用例2に開示された閾値電圧と水素ガスの混合率の相関関係を考慮して、水素の
含有量を体積比で20%以上とすることは、当業者が必要とされる膜特性に応じて、適宜なし得たことであると認められる。また、水素の含有量の下限値を体積比で20%以上と規定したことによる効果も当業者が予測し得た程度のものにすぎない。
(相違点2について)
マグネトロン型RFスパッタ法は半導体の作製に使用されるスパッタ法として本件の出願時において周知である。そして、引用例1には、スパッタ法として高周波スパッタ法、直流スパッタ法、イオンビームスパッタ法などが広く適用可能である旨示唆されているのであるから、スパッタ法としてマグネトロン型RFスパッタ法を採用することは当業者が適宜なし得たことであると認められる。また、体積比が20%以上の水素を含有した不活性気体雰囲気中における基板上へのスパッタ法による非単結晶半導体膜の成膜工程と前記スパッタ法によって得た非単結晶半導体膜を600℃以下の温度で熱再結晶化させる工程を有することを特徴とする半導体作製方法におけるスパッタ法として、マグネトロン型RFスパッタ法を採用したことによる格別の効果も認められない。
したがって、上記各相違点は当業者が容易に想到し得たことと認められる。
なお、審判請求人は審判理由補充書において、マグネトロン型RFスパッタ法を利用することにより、高密度の水素プラズマを発生させ、非晶質半導体膜中のマイクロ構造の発生を防止し、熱再結晶化を容易とするという効果を主張する。しか
しながら、スパッタ法により成膜された非晶質半導体膜中のマイクロ構造、すなわち原子の存在の偏りが、ターゲットと基板の距離、圧力、不活性ガスの種類、周波数、RF出力、成膜温度等の種々の要素によって影響を受けることは明らかであ
る。してみれば、スパッタ法によって成膜された非晶質半導体膜中のマイクロ構造が、スパッタ法がマグネトロン型RFスパッタ法であるというだけで、一概に引用例1に例示されるような他のスパッタ法によって成膜された非晶質半導体膜中のマイクロ構造に比べて顕著に少ないということはできない。また、マグネトロン型RFスパッタ法によって成膜された非晶質半導体膜中のマイクロ構造が他のスパッタ法によって成膜された非晶質半導体薄膜中のマイクロ構造より少ないことを示
す実験データも示されていない。したがって、上記審判請求人の主張は採用できない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-04-15 
結審通知日 1999-05-14 
審決日 1999-05-24 
出願番号 特願平2-254512
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 智子池渕 立粟野 正明  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 加藤 浩一
橋本 武
発明の名称 半導体作製方法  

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