• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1000702
審判番号 審判1997-20071  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-04-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-11-28 
確定日 1999-08-06 
事件の表示 昭和63年 特 許 願 第260402号「取引媒体及び取引媒体情報記録装置」拒絶査定に対する審判事件(平成2年4月19日出願公開、特開平2-107465)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、昭和63年10月18日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成7年10月30日付け、平成8年9月17日付け、平成9年8月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「1.取引媒体所有者の署名や印影等のデータ圧縮されたイメージ情報を含む固有情報を記憶し、外部装置とデータの交信を行う取引媒体において、
データ圧縮されたイメージ情報を復元する圧縮データ復元部と、
復元されたイメージ情報を表示する表示部とを設けたことを特徴とする取引媒体。」
2.引用例の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した特開昭63-230398号公報(以下、引用例1という。)、特開昭61-29595号公報(以下、引用例2という。)、特開昭59-224893号公報(以下、引用例3という。)には、下記の事項が記載されている。
【引用例1】
「この発明は、CPUおよびメモリを内蔵するとともに、ディスプレイおよび入力キーを設けてなるCPUカードに関する。」(第1頁左下欄第18行〜右下欄第1行)
「(c)従来の技術
クレジットカードやキャッシュカードではカード表面に磁気ストライプを施し、この磁気ストライプに固定情報を記憶させた磁気カードが一般的に用いられている。」(第1頁右下欄第9行〜第13行)
「この発明の目的は、CPUカードが備えたディスプレイに利用者データを含む固定情報を表示するようにし、利用者によるカードの識別および情報の確認を容易に行えるCPUカードを提供することにある。」(第2頁左上欄第15行〜第19行)
「第1図(A)および(B)は、この発明の実施例であるCPUカードのそれぞれ正面図および背面図である。
CPUカード1の表面にはディスプレイ2、太陽電池3および入力キー4が備えられている。・・・磁気ストライプ6には利用者データが記録されており、端末装置のカードリーダにより読み取られる。通信用端子7は端末装置の端子と接触し、データの遣り取りを行う。
第2図は、上記CPUカードの制御部のブロック図である。
CPU21は入力キー4からの入力データに基づいて処理動作を行い、ドライバ3に制御データ、文字データを出力する。ドライバ3はこの制御データ等に従ってディスプレイ2を駆動し、CPUカード1の表面に所定の文字を表示する。CPU21は通信用端子7を介して図外の端末装置との間でデータを送受信する。・・・このメモリ22の別のメモリエリアには利用者の名前、利用者番号および有効期限などの固定情報が記憶されている。
・・・このときCPU21はメモリ22に記憶された固定情報を読み出し、この情報をディスプレイ2に表示する。」(第2頁右上欄第20行〜第3頁左上欄第2行)
「この固定情報は利用者識別コードを含み、利用者はカードの識別および有効期限などの情報の確認を容易に行うことができる。」(第3頁右上欄第18行〜左下欄第1行)
【引用例2】
「本発明は、コンピュータ処理可能な情報記録カードによる身分証明方式に係り、とくに、銀行取引等に好適な手段に関する。」(第1頁左下欄第13行〜第15行)
「本発明は、暗誦番号等のコードデータのみならず、印影や署名、指紋、声紋、写真等のパターンデータをメモリ・カードに記録し、さらにメモリ・カード上の登録データと被験データとの自動ないしは手動照合の機能を組合せることによって、高信頼の身分証明手段を実現するものである。」(第2頁左上欄第14行〜第19行)
「音声データとしては、登録者の氏名または、事前に定めた合い言葉などの音声入力装置4から入力(109)し、音声処理装置9で切出しやスペクトル分布、データ圧縮等の処理(110)を行ない、メモリ・カード上のA5を開始アドレスとする領域に記録する。登録者の顔写真を画像入力装置2から入力(111)し、画像処理装置8でデータ圧縮(112)した後、メモリ・カード上のA6を開始アドレスとする領域に記録する。」(第2頁右下欄第14行〜第3頁左上欄第3行)
【引用例3】
「本発明はCRTディスプレイ等の表示装置を備えたデータ処理システムにおけるデータ表示方法に関し、更に詳述すれば表示すべきデータを圧縮して画像メモリに格納し、これを読出したあと元のデータを復元再生して表示するようにして、少ない記憶容量で多量の情報の表示を可能としたデータ表示方法を提案するものである。」(第1頁左下欄第19行〜右下欄第5行)
3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、前者という。)と上記引用例1記載のもの(以下、後者という。)を比較する。
後者のCPUカードは、クレジットカードやキャッシュカードに使用されるものであるから取引媒体ということができるので、両者は、いずれも取引媒体であって、後者の「固定情報」、「通信用端子7は端末装置の端子と接触し、データの遣り取りを行う」、「ディスプレイ2」は、それぞれ前者の「固有情報」、「外部装置とデータの交信を行う」、「表示部」に対応しており、
両者は、「固有情報を記憶し、外部装置とデータの交信を行う取引媒体において、
情報を表示する表示部とを設けたことを特徴とする取引媒体。」
である点で一致し、
(1)固有情報が、前者は、「取引媒体所有者の署名や印影等のデータ圧縮されたイメージ情報を含む」のに対して、
後者は、そのようなイメージ情報を含むことについては記載されていない点、
(2)前者は、「データ圧縮されたイメージ情報を復元する圧縮データ復元部」を備えるのに対して、
後者は、そのような圧縮データ復元部を備えていない点で相違している。
以下に、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
上記引用例2には、「暗誦番号等のコードデータのみならず、印影や署名、指紋、声紋、写真等のパターンデータをメモリ・カードに記録」すること、および「音声データとしては、登録者の氏名または、事前に定めた合い言葉などの音声入力装置4から入力(109)し、音声処理装置9で切出しやスペクトル分布、データ圧縮等の処理(110)を行ない、メモリ・カード上のA5を開始アドレスとする領域に記録する。登録者の顔写真を画像入力装置2から入力(111)し、画像処理装置8でデータ圧縮(112)した後、メモリ・カード上のA6を開始アドレスとする領域に記録する」ことが記載されている。この「印影や署名、指紋、声紋、写真等のパターンデータ」はイメージ情報といえ、このイメージ情報をデータ圧縮して記録することが開示されているから、上記引用例1においても、固定情報として、取引媒体所有者の署名や印影等のデータ圧縮されたイメージ情報を含むようにすることは当業者が容易に推考し得ることである。
相違点(2)について
上記引用例3には、「表示すべきデータを圧縮して画像メモリに格納し、これを読出したあと元のデータを復元再生して表示する」ことが記載されている。このように圧縮してデータを記録した場合には、それを表示しようとする時、元のデータに復元しなければならないものであるから、上記引用例1において、上記相違点(1)に記載したようにデータ圧縮されたイメージ情報を記憶している場合には、それを表示しようとする時、上記引用例3に記載された技術思想を適用して、データ圧縮されたイメージ情報を復元する圧縮データ復元部をCPUカードに設けるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-06-04 
結審通知日 1999-06-15 
審決日 1999-06-25 
出願番号 特願昭63-260402
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 靖子  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 鈴木 寛治
新井 重雄
発明の名称 取引媒体及び取引媒体情報記録装置  
代理人 鈴木 敏明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ