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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C22B |
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管理番号 | 1001118 |
異議申立番号 | 異議1998-75844 |
総通号数 | 2 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1990-03-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-12-02 |
確定日 | 1999-08-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2761643号「冶金の制御方法」の請求項1、6ないし8、10ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2761643号の請求項1、6ないし8、10ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件特許第2761643号(昭和63年8月17日出願、平成10年3月27日設定登録)の請求項1,6,7,8,10及び11に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,6,7,8,10及び11に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】吸熱及び発熱溶融冶金プロセス、特に乾式精錬プロセスの、光学分光測定法による監視及び制御のための方法であって、先ず各吸熱及び発熱溶融冶金プロセス及び/又はプロセス段階に対して一つの波長区間において同時に特徴的な光の発光又は吸収を測定し、発光/吸収の原子又は分子起源を同定し、連続するプロセスの間じゅうの特徴的な発光/吸収の変化を時々刻々記録し、少なくとも2つの放射する生成物の光の強度と/又は放射する生成物の、少なくとも2つの相違する波長での光の強度の間の比を計算してこの比の変化をプロセスおよびプロセス用の装置の状態に関係づけ、そしてこれに関してまたそれによってプロセスを制御する限界値を決定することを特徴とする監視及び制御のための方法。 【請求項6】溶融冶金プロセス、特に鉄、銅精錬プロセスの温度を監視し制御するためにいろいろな波長で原子又は分子の放射強度の間の比を測定することを特徴とする請求の範囲第1項記載の方法。 【請求項7】鉄及び鋼の生産において、好ましくは区間200〜800nmの、放射する炭素化合物及び/又は遊離原子、たとえばFe,Mn,K及び/又はNaの強度を記録し比較することを特徴とする請求の範囲第1項記載の方法。 【請求項8】合金金属及び/又は炭素の添加を監視及び制御するために、鉄の溶融物、たとえば鉄の合金を作る金属に関する元素組成を測定することを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載の方法。 【請求項10】測定が溶融物上で直ちに分光光度法で行なうことを特徴とする請求の範囲第1項記載の方法。 【請求項11】ファイバーオプティックスを備え溶融物中へ導入されたランスを通して分光光度法で測定することを特徴とする請求項第1項記載の方法。」 2.特許異議申立理由の概要 特許異議申立人は、甲第1〜6号証を提出して、本件請求項1,6,7,8,10及び11に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1,6,7,8,10及び11に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである、と主張している。 3.甲号証に記載された発明 特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭62-67430号公報)には、 「(1)溶鉄表面に酸素または酸素を含む混合ガスを吹きつけた時に形成される火点から発生する発光スペクトルを分光することを特徴とする溶鉄成分の分光分析方法。」(特許請求の範囲第1項)が記載され、また、 「金属の精錬、製鋼プロセスなどの操業の管理には、可能な限り迅速に成分を分析して成分含有率を把握し、その結果によって対応処理をとる必要がある・・・・」(第1頁右下欄10から13行) 「また、他の目的としては、鉄鋼の精錬、製鋼のプロセスにおいてオンラインで分析することを目指している。」(第2頁左下欄5〜7行) 「本発明は酸素または酸素を含む混合ガスを溶融状態の鉄の表面に吹きつけた際に形成される火点を分析対象とし、非接触で溶鉄の成分を発光分光分析する実用的な分析法を提供するものであり、・・・」(第2頁左下欄9〜13行) 「火点からの発光スペクトルを分光することにより、溶鉄成分を分光分析することを見い出し、・・・」(第2頁右下欄9〜11行) 「吹錬時の転炉内、などでも溶鉄成分を直接にオンライン・リアルタイムで分光分析できる。」(第3頁左上欄1〜3行) 「溶鉄中の目的とする元素を測定する際に、溶鉄からの赤外輻射による発光強度を同時に測定して、バックグランド発光の強度を規格化してやることにより、火点の温度変化の影響を補正し、精度のよい分光分析が可能となる。」(第3頁右上欄18行〜左下欄3行) 「各元素の発光スペクトル強度はそのまま用いてもよいが、溶鋼の場合には、その主成分であるFeの発光スペクトル強度と分析対象元素の発光スペクトル強度の比を用いる方が定量精度が向上する。」(第4頁右上欄13〜17行) 「光ファイバー3を挿入した酸素吹きつけ用ランス2を溶鋼1の表面上の所定の位置に取り付けた。」(第4頁右上欄20行〜左下欄2行) 「吹き出し口7の直下に形成される火点9からの発光スペクトルを光ファイバー3により焦点距離75cmの分光器10に伝送して測定した。」(第4頁左下欄15〜18行) 「第2図に、本発明方法を用いて測定した、溶鋼1の火点9から発生したFeおよびMnの発光スペクトルを示した。Feの385.9nmの原子線およびMnの403.4nmの原子線をそれぞれ測定した。」(第4頁右下欄1〜4行) 「第3図に本発明方法を実施して得られたMn濃度と、その時に採取した溶鋼サンプルの化学分析によるMn濃度との比較を示した。本発明によるMnの分析値と化学分析によるMnの分析値は非常によく一致し、本発明方法が溶鋼中のMn含有率の分析に充分使用できることが確認された。」(第4頁右下欄8〜13行) 「溶鋼の成分を直接にオンライン・リアルタイムで分析することができ、金属の精錬や製鋼プロセス等の操業管理に極めて有効なものである。」(第5頁左上欄5〜7行) とそれぞれ記載されている。 同じく提出した甲第2号証(特開昭58-38841号公報)には、 「1.分析管体の先端に電極棒と光ファイバーを設け、該光ファイバーを分光分析器に接続し、溶鉄・溶鋼等の表面と電極棒との間で放電を行なわせることにより発光を励起させ、これを光ファイバーで上記分光分析器に伝送して、溶鉄・溶鋼等の分析を行なうようにしたことを特徴とする鉄・鋼等の分析法。」(特許請求の範囲) が記載され、また、 「一般に、銑鉄または鋼の精錬及び鋳造工程等にあっては、溶鉄又は溶鋼成分情報に基くコントロールを適宜行なって精錬的中率の向上、歩留の向上、全製鋼時間の短縮等を図るようにしている。」(第1頁左下欄19行〜右下欄2行) 「16は上記分光分析器11で得られたデータを基準にして転炉吹錬作業全体の工程管理を行なうコンピュータである。」 (第2頁左下欄11〜13行) 「分光分析器11は上記発光のスペクトルより元素の種類及び量並びに温度等を検知し、これを表示器15に表示させると共に、吹錬作業の全工程管理を行なうコンピュータ16に送って、予じめ設定された目標値との比較を行ない、目標値に到達しておれば吹錬作業の完了となし、また目標値以下であれば目標値までの残りの吹錬作業を支持する。」(第3頁左上欄2〜9行) 「上記実施例は転炉吹錬の場合であるが、本発明の方法が上記具体的な設備に限定されるものでなく、また取鍋精錬や鋳造工程時等の溶鋼又は溶鉄等の分析にも適用可能であることは言うまでもない。」(第3頁右上欄6〜10行) とそれぞれ記載されている。 同じく提出した甲第3号証(特開昭60-42644号公報)には、精錬容器内溶湯の成分連続分析法に関し、 「箱5内のレーザー発振部から発射されたレーザーはノズル3を通り溶鋼内のA点に当りレーザーのエネルギーにより溶鋼を発光させる。発光した光はノズル3内を通りレーザーと逆方向に進み、箱5内の受光部で受光され、分光器を通る。ここでレーザー光は溶鋼中各成分の濃度に対応した各成分に固有の波長の光の強度が増減するので、これを電流信号またはデジタル信号に変換しケーブル7により計算機6に導く。計算機6では、予め作成された検量線に基づき得られた光強度の信号を成分濃度に変換し必要な補正を施した後ディスプレイに表示する。以上の操作は自動的にかつ連続的に行われるので、転炉の運転者は単に表示された成分分析値を操業に反映させるべく、各種操業要因を変更し、目標通りの吹錬を行うだけでよい。さらに、人間の行う操作を経由せず、連続的に得られる分析値を転炉自体やその周辺機器を制御している主計算機に入力し、予め決められたプログラムに従い計算機が操業を管理制御することも可能である。」(第2頁左下欄19行〜右下欄19行) 「第3図に本発明による鋼中成分の連続分析結果を示す。同図の場合には信号処理に小型のコンピュータを用いたため、処理時間に3〜4秒必要であった。また分析間隔は吹錬開始後12分までは60秒間隔、その後は30秒間隔とし、P濃度が0.025%以下となったことが判明した時点で吹錬を停止した。」(第3頁右上欄13〜19行) とそれぞれ記載されている。 同じく提出した甲第4号証(特開昭60-231141号公報)には、 「1.溶湯の温度及び化学組成を測定する方法において、高い強度のパルス光線を通路を介して溶湯の表面部分にピント合せし、この表面部分でイオン、原子及び電子からなるプラズマを発生させ、このプラズマ中に存在する元素から固有のビームを放射させ、このビームを通路を介して分光写真器上に返送しかつこの分光写真器中で分解し、得られた信号スペクトルを溶湯中でビームに励起される元素を確認するために使用し及び/又は高温計による温度測定に利用することを特徴とする、溶湯の温度及び化学組成を測定する方法。」(特許請求の範囲第1項) が記載され、また、 「第2図に示した、スラグ及び金属の組成ならびに溶湯の温度の経過により、操作は制御することができる。金属の燐含有量がCaO対SiO2の比及びスラグの酸化鉄含有量の関数であることは、公知である。そのつどの組成を実際に認識することにより、脱燐経過が不十分で吹込み時間10分間の時間範囲内での脱炭素速度が高すぎる場合に吹込み時間11分後にランスの距離を拡大することによって脱炭速度は減少されかつスラグの酸化鉄含有量の低下率は明らかに少なくなる。」(第6頁左下欄3〜13行) と記載されている。 同じく提出された甲第5号証(特開昭60-347号公報)には、流動状態の金属、絶縁物のレーザー連続分析方法に関し、 「第2図に焦点距離100cmの集光レンズを用いた時の被測定物4の上下動によるFe,Mnスペクトル強度およびその比の変化を示す。」(第2頁左下欄11〜14行) 「スペクトル強度比は不変であり、被測定物の上下動にかかわらず、安定した分析値が得られることが判明した。」(第2頁右下欄3〜5行) 「次に被測定物4として絶縁物系のSiO2・Al2O3を用い、Si(288.2nm),Al(309.3nm)の線スペクトルについて、第2図と同様の測定を行った。その結果を第4図に示す。この場合にも、被測定物表面が集光レンズ3の焦点より5cmずれても、スペクトル強度比はほぼ一定となっている。」(第2頁右下欄6〜12行) 「比測定物4は溶鉱炉の出銑樋を流れる銑鉄である。」(第3頁左下欄7〜8行) 「分析した元素、スペクトル線の波長、分析結果を第1表に示す。」(第3頁右下欄11〜12行) 「本発明方法によって、流動状態の金属または絶縁物をレーザーを用いて精度よくオンライン分析することが可能となり、オンラインの工程管理や品質管理の精度を著しく高めることが可能となった。」(第3頁右下欄16〜最下行) とそれぞれ記載され、また、 第1表にはSi,Mn,Cr及びNiについて、それらの波長及び分析結果が示されている。 同じく提出した本出願前頒布された甲第6号証(社団法人日本分析化学会「ぶんせき」1979年第5号、1979年5月5日発行、第296〜303頁)には、「高温測定」と題し、 「また、同種の原子の2本のスペクトル線に対するε,L,mnの比からも温度を求めることができる。 式(16)から ε1/ε2=(gAν)1/(gAν)2exp{-(E1-E2)/kT} ・・・・・(18) が得られる。添字1,2は2本のスペクトル線に対する物理量を区別するもので、各記号の意味は式(16)と同じである。 この場合も、空間的に一様な高温気体では、式(18)の左辺はスペクトル線強度の比I1/I2で置き換えることができる。」(第299頁右欄6〜14行) 「以上の観点から推奨されている線対を表6に示す。図5は、1気圧のアルゴン中に微量の鉄の原子が混ざった気体を高温に加熱した場合のFe I302.403nmとFe I303.015nmの2本のスペクトル線のε,L,mnと温度の関係を示す。」(第300頁右欄9〜13行) とそれぞれ記載され、 表6には温度測定に適した線対とその定数が、 図5には絶対温度の温度依存性が、それぞれ示されている。 4.本件各発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断 (1)本件請求項1に係る発明について 本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明は、鉄鋼の精錬、製鋼のプロセスにおいて、溶鉄表面に酸素または酸素を含む混合ガスを吹きつけた時に形成される火点から発生する発光スペクトルを分光する分光分析方法(本件請求項1に係る発明における「発熱溶融冶金プロセスの光学分光測定法」に相当)による操業管理(本件請求項1に係る発明における「監視及び制御」に相当)のための方法であって、溶鋼1の火点9から発生したFeの385.9nmの原子線およびMnの403.4nmの原子線を測定し(本件請求項1に係る発明における「各発熱溶融冶金プロセスに対して一つの波長区間において同時に特徴的な光の発光を測定し、発光の原子起源を同定し」に相当)、溶鉄成分を直接にオンライン・リアルタイムで分光分析し(本件請求項1に係る発明における「連続するプロセスの間じゅうの特徴的な発光の変化を時々刻々記録し」に相当)、Feの発光スペクトル強度と分析対象元素の発光スペクトル強度の比(本件請求項1に係る発明における「少なくとも2つの放射する生成物の光の強度の間の比」に相当)を計算しているから、両者は、「発熱溶融冶金プロセスの光学分光測定法による監視及び制御のための方法であって、先ず各発熱溶融冶金プロセスに対して一つの波長区間において同時に特徴的な光の発光を測定し、発光の原子起源を同定し、連続するプロセスの間じゅうの特徴的な発光の変化を時々刻々記録し、少なくとも2つの放射する生成物の光の強度の間の比を計算して行う監視及び制御のための方法。」である点で一致し、本件請求項1に係る発明が、「この比の変化をプロセスおよびプロセス用の装置の状態に関係づけ、そしてこれに関してまたそれによってプロセスを制御する限界値を決定すること」を構成としているのに対して、甲第1号証に記載された発明は、溶鉄成分の分光分析方法であって、上記比を用いて、Mn等の各種成分の含有率を分析するものであり、上記構成が示されていない点で相違する。 上記相違点について検討する。 甲第2号証には、溶鉄・溶鋼等の表面と電極棒との間で放電を行なわせることにより発光を励起させ、これを光ファイバーで分光分析器に伝送して、分光分析器で発光のスペクトルより元素の種類及び量並びに温度等を検知し、吹錬作業の全工程管理を行なうコンピュータに送って、予じめ設定された目標値との比較を行ない、目標値に到達しておれば吹錬作業の完了となし、また目標値以下であれば目標値までの残りの吹錬作業を支持することが示されており、発光のスペクトルを元素の種類及び量並びに温度等のプロセスの状態に関係づけ、それによってプロセスを制御する限界値(目標値に到達した値)を決定することが示唆されているが、プロセスの間じゅうの発光の変化を記録するものではないから、「比の変化をプロセスおよびプロセス用の装置の状態に関係づけ、そしてこれに関してまたそれによってプロセスを制御する限界値を決定すること」が示されているとはいえない。 甲第3号証には、レーザーのエネルギーにより溶鋼を発光させ、発光した光を分光器を通す場合、レーザー光は溶鋼中各成分の濃度に対応した各成分に固有の波長の光の強度が増減するので、これを信号に変換し計算機に導き、得られた光強度の信号を成分濃度に変換しディスプレイに表示することにより、鋼中成分を吹錬開始後12分までは60秒間隔、その後は30秒間隔で連続分析し(本件請求項1に係る発明における「連続するプロセスの間じゅうの特徴的な発光の変化を時々刻々記録し」に相当)、成分分析値を操業に反映させ、各種操業要因を変更し(本件請求項1に係る発明における「プロセスの状態に関係づけ」に相当)、P濃度が0.025%以下となったことが判明した時点で吹錬を停止する(本件請求項1に係る発明における「プロセスを制御する限界値を決定する」に相当)等、操業を管理制御(本件請求項1に係る発明における「監視及び制御」に相当)することが可能である旨が示されているものの、「少なくとも2つの放射する生成物の光の強度と/又は放射する生成物の、少なくとも2つの相違する波長での光の強度の間の比を計算してこの比の変化をプロセスおよびプロセス用の装置の状態に関係づける」ものではないから、「比の変化をプロセスおよびプロセス用の装置の状態に関係づけ、そしてこれに関してまたそれによってプロセスを制御する限界値を決定すること」が示されているとはいえない。 甲第4号証には、溶湯の表面部分でプラズマを発生させ、このプラズマ中に存在する元素から固有のビームを放射させ、このビームを分光写真器中で分解して、溶湯の温度及び化学組成を測定する方法において、分子起源を同定し、CaO対SiO2の比(本件請求項1に係る発明における「2つの放射する生成物の光の強度の間の比」に相当)を計算することが、甲第5号証には、流動状態の金属、絶縁物のレーザー連続分析方法において、原子起源を同定し、Fe,Mnスペクトル強度比(本件請求項1に係る発明における「2つの放射する生成物の光の強度の間の比」に相当)、Si(288.2nm),Al(309.3nm)の線スペクトル強度比(同上)を計算して、分析結果をオンラインの工程管理や品質管理に利用することが、甲第6号証には、Fe I302.403nmとFe I303.015nmの2本のスペクトル線の強度の比(本件請求項1に係る発明における「放射する生成物の、少なくとも2つの相違する波長での光の強度の間の比」に相当)を計算して温度を求めることが、それぞれ、記載されているだけで、「比の変化をプロセスおよびプロセス用の装置の状態に関係づけ、そしてこれに関してまたそれによってプロセスを制御する限界値を決定すること」は示されていない。 以上のとおり、本件請求項1に係る発明の上記相違点に示した構成は、甲第2〜6号証にも記載がなく、そして、本件請求項1に係る発明は、上記相違点に示した構成を具備することにより、明細書に記載した「銅製造プロセスのスラグ形成段階の正確な監視及び制御のために本発明の方法を利用することは、通過風及び早めに中断されたスラグ通風の数が最少に減少されるような潜在的に大きな利益を引き起す」(本願特許公報第7欄12〜15行)等の顕著な効果を奏するものであるから、甲第1号証に記載された発明に甲第2〜6号証に記載された発明を組み合わせても、本件請求項1に係る発明を当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (2)本件請求項6,7,8,10及び11に係る発明について 本件請求項6,7,8,10及び11に係る発明は、請求項1又は請求項1を引用する請求項を引用するものであり、「少なくとも2つの放射する生成物の光の強度と/又は放射する生成物の、少なくとも2つの相違する波長での光の強度の間の比を計算してこの比の変化をプロセスおよびプロセス用の装置の状態に関係づけ、そしてこれに関してまたそれによってプロセスを制御する限界値を決定すること」という構成に関しては本件請求項1に係る発明と共通するから、本件請求項1に係る発明と同様の理由で、甲1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 5.むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1,6,7,8,10及び11に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1,6,7,8,10及び11に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-07-16 |
出願番号 | 特願昭63-505393 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(C22B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中村 朝幸 |
特許庁審判長 |
松本 悟 |
特許庁審判官 |
金沢 俊郎 三浦 均 |
登録日 | 1998-03-27 |
登録番号 | 特許第2761643号(P2761643) |
権利者 | スカンディナビアン エミッション テクノロジー アクティボラグ |
発明の名称 | 治金の制御方法 |
代理人 | 田中 久喬 |
復代理人 | 坂本 徹 |