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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H03H
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H03H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H03H
管理番号 1001146
異議申立番号 異議1999-70989  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-07-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-19 
確定日 1999-07-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2800905号「弾性表面波フィルタ」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2800905号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1.本件特許発明
本件特許第2800905号(平成4年2月19日出願、平成10年7月10日設定登録)の請求項1〜10に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、各々その特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定されるものと認められる。
2.特許異議申立て理由の概要
(1)申立人沖電気工業株式会社(以下、「第1申立人」という。)は、証拠として甲第1号証(特開昭63-132515号公報)、甲第2号証(特公昭58-1850号公報)、甲第3号証(実願昭55-62563号(実開昭56-165428号公報)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特公昭56-19765号公報)、甲第5号証(特開平3-220911号公報)並びに参考文献1 (特開平5-206778号公報)及び参考文献2(山崎弘郎著「電子回路技術」第3刷(平成2年3月5日東京大学出版会発行))を提出し、以下の理由で請求項1〜10についての特許を取り消すべきであると主張している。
▲1▼請求項1、5、8〜10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、これらの請求項についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
▲2▼請求項1〜10に係る発明は、甲第2号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
▲3▼特許明細書に不備があり、請求項5及び10についての特許は、平成6年法律第116号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(2)申立人遠藤治代(以下、「第2申立人」という。)は、証拠として甲第1号証(実願昭52-84247号(実開昭54-11120号公報)のマイクロフィルム)及び甲第2号証(八鍬和夫外著「濾波回路」初版(昭和43年9月16日 日刊工業新聞社発行))を提出し、請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきであると主張している。
(3)申立人小林祐紀子(以下、「第3申立人」という。)は、証拠として甲第1号証(特開昭52-19044号公報)を提出し、請求項1〜10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一又は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項についての特許は、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきであると主張している。
3.申立人が提出した甲各号証記載の発明
(1)第1申立人が提出した証拠
甲第1号証には、弾性表面波複合フィルタに関する発明が記載されており、具体的内容として、特許請求の範囲の第1項には、「圧電基板上に、容量素子を含む複数の回路素子が直列接続された直列回路と上記回路素子の電極と共通アースとの間に一開口弾性表面波共振器を形成して構成されたことを特徴とする弾性表面波複合フィルタ。」と、同第3項には、「第1項記載の直列回路が、容量素子と一開口弾性表面波フィルタが直列接続された弾性表面波複合フィルタ。」と、各々記載されている。
また、第2頁左下欄第14行〜第17行には、「しかし、阻止域は直列接続一開口弾性表面波共振器の反共振周波数近傍および各接続点と共通アース間に導入したー開口弾性表面波共振器の共振周波数近傍の2つで形成される。」と記載されている。
甲第2号証には、表面音響波変換器に関する発明が記載されており、具体的内容として、第3頁右欄第40行〜第42行には、「すだれ状電極の数の増加に応じて、導電体の長さも増加されなければならない。この結果、キャパシタンスが増大する。」と記載されている。また、第6頁右欄第9行〜第7頁左欄第44行には、「第5A図は、T源回路網が第3A図の弾性表面波装置によって構成されるのを示している。・・・・導電体17は導電体33により端子37を通りアースに接続される。端子35,36及び37は、T型フィルタの3外部端子を形成する。・・・・第1弾性表面波変換器は、導電体26及び27とそれらの間のすだれ状電極28を含む。・・・・第3弾性表面波変換器は、導電体16,17及びすだれ状電極18を含む。・・・・第5C図は、第3弾性表面波変換器に関して共振周波数はFrBで、これは反共振周波数FaBよりも低い。このFaBは第1弾性表面波変換器の共振周波数FrAと等しい。・・・・」と記載されている。
甲第3号証には、弾性表面波装置に関する発明が記載されており、具体的内容として、明細書第2頁第15行〜第19行には、「本考案の特徴は、圧電性基板上に設置されている入出力電極のうち、少なくとも一方の電極の両極を引き出し線を介して電気的に接続し、インダクタを形成するようにしていることである。」と記載されている。また、第4頁第9行〜第12行には、「また、ワイヤボンドの位置を変えることにより、ワイヤの長さを自由に調整できるため、ワイヤのインダクタンスと電極のキャパシタンスとの共振周波数の変更も容易となる。」と記載されている。
甲第4号証には、弾性表面波フィルタに関する発明が記載されており、具体的内容として、特許請求の範囲の欄には、「直列腕を所定の共振周波数を有する第1の弾性表面波共振子とし、並列腕を上記第1の弾性表面波共振子の共振周波数と等しい反共振周波数を有し且上記第1の弾性表面波共振子に比し大なる等価並列容量を有する第2の弾性表面波共振子として構成された梯子型回路構成を有し、・・・・た事を特徴とする弾性表面波フィルタ。」と記載されている。また、第3頁右欄第14行〜16行には、「第3図に示す所謂逆L型の構成又は所謂L型、T型、π型等の構成を単位としてその複数を縦続接続せる構成とすることも出来、・・・・」と記載されている。
甲第5号証には、弾性表面波フィルタに関する発明が記載されており、具体的内容として第4頁左上欄第10行〜第18行には、「300および400は接地端子で弾性表面波フィルタ素子1のダイボンディングパッドである350と接続されている。5Ιは膜回路素子(ストリップラインが誘電体に挟まれた、いわゆる、平衡型マイクロストリップラインによるインダクタンス素子)で、・・・・並列インダクタンスが得られた。」と記載されている。
(2)第2申立人が提出した証拠
甲第1号証には、映像中間周波帯域フィルタ装置に関する発明が記載されており、具体的内容として、明細書第6頁第6行〜第8行には、「第7図は従来より用いられている帯域伸長手段で共通端子にインダクタンス素子を接続する方法である。」と記載されている。また、第7頁第6行〜第11行には、「これによりZsの腕のみにインダクタンス成分が接続された第7図cの対称格子型回路に等価変換され、Zsの共振周波数のみが低域側に動き同図dに示す周波数関係となる。従って、特性は第7図eの点線のように低域側が伸びることになる。」と記載されている。
甲第2号証には、濾波回路に関する発明が記載されており、具体的内容として、第202頁の図6・5の下部に、「さらにセラミックフィルタでは,図6・5(a)のような,はしご形の回路を組合わせて用いることがある.はしご形回路と格子形回路は相互に等価変換できる(図6・5(b)参照).」と記載されている。
(3)第3申立人が提出した証拠
甲第1号証には、弾性表面波フィルタに関する発明が記載されており、具体的内容として、第2頁右上欄第14行〜第20行には、「所定の共振周波数(これをfOAとする)を有する弾性表面波共振千Aと、その共振周波数fOAと等しい反共振周波数(これをfrBとする)を有し且共振子Aの等価並列容量(これをCOAとする)に比し大なる等価並列容量(これをCOBとする)を有する共振子Bとを有し・・・・」と記載されている。また、第2頁右下欄第8行〜第15行には、「更に共振子Bが有すべき共振子Aに比し大なる等価並列容量は、主としてその電極E1及びE2の電極素子の数(共振子Aの電極E1及びE2の電極素子の数に比し大なる)及び電極E1の電極素子と電極E2のそれとの対向長(共振子Bの電極E1の電極素子と電極E2のそれとの対向長に比し長い)によって決められるものである。」と記載されている。また、第4頁左上欄第4行〜第11行には、「第3図に示す所謂逆L型の構成又は所謂L型、T型、π型等の構成を単位としてその複数を縦続接続せる構成とすることも出来、又直列腕となる共振子Aと並列腕となる共振子Bとを第4図に示す如く共通の基板11上で形成するに代え、共振子A及びBを夫々の基板上に形成する様になすことも出来、その他種々の変型変更をなし得るであろう。」と記載されている。
4.本件発明と申立人が提出した甲各号証記載の発明との対比・判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と各申立人が提出した甲各号証記載の発明とを比較すると、甲各号証いずれにも、請求項1に係る発明の主要な構成である 「・・・・第1の一端子対弾性表面波共振器(21)を並列腕(22)に、・・・・第2の一端子対弾性表面波共振器(23)を直列腕(24)に配してなる梯子型の弾性表面波フィルタにおいて該第1の弾性表面波共振器(21)に直列にインダクタンス(25)を付加した構成」、すなわち並列腕と直列腕に各々弾性表面波共振器を有する梯子型の弾性表面波フィルタにおいて、並列腕を構成する弾性表面波共振器に直列にインダクタンスを付加した構成が記載されていない。そして、当該構成により、請求項1に係る発明は、特許明細書の【0043】〜【0044】及び【発明の効果】の欄に記載されているように、通過帯域幅が改善すなわち拡大されるという顕著な効果を奏するものである。
したがって、請求項1に係る発明が、第1申立人、第2申立人、又は第3申立人の甲各号証のいずれかに記載された発明であるとも、また、当該甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができない。
なお、これに関連して、以下の2点につき付言する。
▲1▼まず、現実に存在する全ての線材が多かれ少なかれインダクタンスを有するので、例えば第1申立人の甲第1号証及び第3申立人の甲第1号証に記載されているような、弾性表面波共振器を直列腕と並列腕に有するフィルタ(請求項1に係る発明の従来技術に相当)においても、並列腕を構成する弾性表面波共振器に対して「直列にインダクタンスを付加した構成」を有しているということができるか否かについて述べる。
本件特許明細書の【0043】〜【0044】の記載からみて、請求項1に係る発明においては通過帯域幅の改善(拡大)を図ることを目的として、並列腕を構成する弾性表面波共振器に直列にインダクタンスを付加していることが明らかである。
したがって、請求項1に係る発明における「直列にインダクタンスを付加した」とは、当然、通過帯域幅の改善に資するような大きさを有するインダクタンスを直列に付加したことを意味するものであり、電子部品を用いて回路を実現する際に不可避的に発生する程度のインダクタンス(第1申立人の参考文献1にも記載されているように、通常このようなインダクタンスは、所望の回路動作を妨害するものとして、むしろその影響を排除するような工夫がなされるのが普通である。)が発生していることをもって、請求項1に係る発明における「直列にインダクタンスを付加した構成」に相当するものが存在しているということはできない。
▲2▼次に、第2申立人の甲第1号証に記載されたフィルタ装置との関連について述べる。
第2申立人の甲第1号証には、上に述べたように、「第7図は従来より用いられている帯域伸長手段で共通端子にインダクタンス素子を接続する方法である。」と記載されている。ここにおいて「共通端子」とは、同号証の図面第2図に示されたような、2個の分割端子(分割電極)と1個の共通端子(共通電極)を有するバルク波を利用したセラミックフィルタにおける共通端子であることが明らかであり、また、「帯域伸張」とは請求項1に係る発明における通過帯域幅の改善と同義であるから、同号証における上記「第7図は・・・・方法である。」の記載は、2個の分割端子と1個の共通端子を有するバルク波を利用したセラミックフィルタにおいて、通過帯域幅を改善するために、共通端子にインダクタンスを付加することを意味するものと認められる。
そこで、こうした前提に立ち、請求項1に係る発明と第2申立人の甲第1号証とを比較すると、通過帯域幅を改善するために、フィルタの端子にインダクタンスを付加するという点で両者は一致するが、インダクタンスを付加する素子が、請求項1に係る発明では一端子対弾性表面波共振器であるのに対して、甲第1号証記載のものは、2個の分割端子と1個の共通端子を有するバルク波を利用したセラミックフィルタであり、動作原理も構造(2端子の素子であるか3端子の素子であるか)も異なっている。また、インダクタンスを付加する箇所についても、請求項1に係る発明が、「第1の弾性表面波共振器」すなわち、並列腕と直列腕に各々弾性表面波共振器を有する梯子型の弾性表面波フィルタにおける並列腕を構成する弾性表面波共振器であるのに対して、甲第1号証記載のものはセラミックフィルタの共通端子と異なっている。
したがって、請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とは、インダクタンスを付加する素子もインダクタンスを付加する箇所も異なるものであるから、たとえ両者が甲第2号証に記載されているように等価回路レベルで互換のものであるとしても、請求項1に係る発明が甲第1号証甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)請求項2〜10に係る発明について
請求項2〜10に係る発明は、各々文言上の相違はあれ、いずれも請求項1に係る発明と同様、並列腕と直列腕に各々弾性表面波共振器を有する梯子型の弾性表面波フィルタにおいて、並列腕を構成する弾性表面波共振器に対して直列にインダクタンスを付加する構成を含むものである。
しかしながら、上に述べたように、各申立人が提出した甲各号証記載の発明のいずれにも、並列腕と直列腕に各々弾性表面波共振器を有する梯子型の弾性表面波フィルタにおいて、並列腕を構成する弾性表面波共振器に対して直列にインダクタンスを付加する構成が記載されていない。
そして、当該構成により、請求項2〜10に係る発明では、特許明細書の【0043】〜【0044】及び【発明の効果】の欄に記載されているように、通過帯域幅が改善すなわち拡大されるという顕著な効果を奏するものである。
したがって、請求項2〜10に係る発明も、請求項1に係る発明と同様、上記甲各号証のいずれかに記載された発明であるとも、また、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができない。
5.特許法36条に規定する要件についての判断
本件特許明細書の【0090】〜【0097】には、「またフィルタチップ82の表面には、ボンディング用端子としての、二つの信号線用端子85-1 85-2・・・・が形成してある。86-1〜86-5はボンディングワイヤであり、・・・・86-3〜86-5は長さが共に2.0mmと長い。このように、細くて長いワイヤは高周波の理論によれば、インダクタンス分を持つ。空中リボンインダクタの理論式・・・・によれば、上記のワイヤ86-3, 86-4, 86-5のインダクタンスは約1nHとなる。4nHのインダクタンスを得るためにはこれでは不充分であり、後述する図40及び図41に図示するようなセラミックパッケージとフィルタチップ上のLを利用した。」と記載されている。
ここにおいて、86-3〜86-5は、並列腕を構成する弾性表面波共振器、すなわち請求項1に係る発明における「第1の弾性表面波共振器」、並びに請求項8に係る発明及び請求項9に係る発明における「複数の並列腕」に該当するものであることが図面第14図等から明らかであるので、上の部分の記載は、請求項1に係る発明における「第1の弾性表面波共振器」、並びに請求項8に係る発明及び請求項9に係る発明における「複数の並列腕」に対して直列に接続するインダクタンスをボンディングワイヤで構成すること、すなわち請求項5に係る発明、及び請求項10に係る発明を記載したものということができる。
したがって、請求項5及び請求項10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、旧特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たすものである。
なお、この点に関連して付言すれば、上の部分の記載には、ボンディングワイヤのみでは所定のインダクタンスを得るには不充分なので、セラミックパッケージとフィルタチップ上のLを利用した旨が記載されている。しかしながら、請求項5、請求項10のいずれも、インダクタンスをボンディングワイヤのみで構成することは記載されていないので、ボンディングワイヤに加えてセラミックパッケージとフィルタチップ上のLを利用するという記載は、請求項5又は請求項10に係る発明と矛盾するものではない。ちなみに、線長が増すに従ってインダクタンスが増加することは当業者にとって周知の事項であるので、上の部分の記載により、フィルタのパラメータに応じてボンディングワイヤを適当な線長とすれば、ボンディングワイヤのみで充分なインダクタンスを構成できることも当業者にとって自明に理解可能な事項である。
6.申立人の主張
(1)第1申立人について
▲1▼請求項1〜10に係る発明が、甲第1号証〜甲第5号証記載の発明のいずれかと同一、若しくはこれらの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるという主張については上記4(1)及び(2)において述べたように(特に4(1)▲1▼のインダクタンスに関する説明に注意)、甲第1号証〜甲第5号証のいずれにも請求項1〜10に係る発明の主要な構成である、並列腕と直列腕に各々弾性表面波共振器を有する梯子型の弾性表面波フィルタにおいて、並列椀を構成する弾性表面波共振器に直列にインダクタンスを付加した構成が記載されていないから、請求項1〜10に係る発明が甲第1号証〜甲第5号証のいずれかに記載された発明であるとも、これらの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができない。したがって、この点についての申立人の主張は採用することができない。
▲2▼請求項5及び10に係る各発明が発明の詳細な説明に記載されていないという主張については、上記5において述べたように、明細書の【0090】〜【0097】に請求項5及び10に係る発明が記載されているから、この点に関する申立人の主張も採用することができない。
(2)第2申立人について
請求項1に係る発明が甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているが、上記4(1)において述べたように(特に4(1)▲2▼の説明に注意)、甲第1号証、第2号証のいずれにも、請求項1に係る発明の主要な構成である、並列腕と直列腕に各々弾性表面波共振器を有する梯子型の弾性表面波フィルタにおいて、並列椀を構成する弾性表面波共振器に直列にインダクタンスを付加した構成が記載されていないから、請求項1に係る発明が甲第1号証又は第2号証記載の発明であるとも、これらの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができず、申立人の主張は採用することができない。
(3)第3申立人について
請求項1〜10に係る発明が甲第1号証に記載された発明と同一、若しくは甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているが、上記4(1)及び(2)において述べたように(特に4(1)▲1▼のインダクタンスに関する説明に注意)甲第1号証には、請求項1〜10に係る発明の主要な構成である、並列腕と直列腕に各々弾性表面波共振器を有する梯子型の弾性表面波フィルタにおいて、並列椀を構成する弾性表面波共振器に直列にインダクタンスを付加した構成が記載されていないから、請求項1〜10に係る各発明が甲第1号証記載の発明であるとも、甲第1号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができず、申立人の主張は採用することができない。
7.むすび
以上のとおりであるから、本件特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1〜10についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜10についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-06-28 
出願番号 特願平4-32270
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H03H)
P 1 651・ 534- Y (H03H)
P 1 651・ 121- Y (H03H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 村上 友幸  
特許庁審判長 内藤 照雄
特許庁審判官 北島 健次
橋本 正弘
登録日 1998-07-10 
登録番号 特許第2800905号(P2800905)
権利者 富士通株式会社
発明の名称 弾性表面波フィルタ  
代理人 大西 健治  

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