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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01B
管理番号 1001162
異議申立番号 異議1999-70934  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-05-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-16 
確定日 1999-07-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2797521号「自動焦点制御装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2797521号の特許を維持する。 
理由 (1)本件発明
本件特許2797521号の請求項1に係る発明(平成1年9月26日出願、平成10年7月3日設定登録。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「レーザの焦点が常に対称物の面上に合うように集光用対物レンズを追従させるように構成された自動焦点制御装置において、前記レーザの反射光が導かれる焦点誤差検出用の2つのPINフォトダイオードに流れる電流からフォーカス誤差信号を発生する回路と、対物レンズの位置を検出する位置検出器及び位置信号発生回路と、フォーカスサーチ回路と、位置保持回路と、フォーカスサーボ系と位置制御系とを切り替えるイッチとを備え、フォーカスがはずれた時に前記スイッチを位置制御系に切り替え、前記位置保持回路によってその位置を保持し、前記フォーカスサーチ回路によって対物レンズを上下してフォーカス引き込み範囲を捜し、フォーカス位置に復帰させるように構成したことを特徴とする自動焦点制御装置。」(以下、「本件発明」という)
(2)特許異議申立て理由の概要
特許異議申立人徳間功は、証拠として甲第1号証(特開昭63-121133号公報)及び甲第号証(特開昭63-223513号公報)を提出し、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法113条第1項第2号の規定により特許を取り消すべき旨主張している。
(3)特許異議申立人が提出した甲各号証記載の発明
ア.特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭63-121133号公報)には、次のことが図面とともに記載されている。
「(1)レーザ・ビームの焦点を対物レンズ1駆動装置によって光ディスク面上につくるための制御装置において、
(2)光ディスク面からの反射光スポットに基づいて焦点位置誤差を検出し、この焦点位置誤差に対応する信号を出力する焦点位置誤差検出回路と、
(3)この焦点位置誤差検出回路からの焦点位置誤差信号に基づいて焦点位置制御のための信号を出力する焦点位置制御回路と、
(4)所定水準の信号を出力するチェック信号発生器と、・・・焦点外れ状態の有無を判定してその判定信号としての焦点外れ検知信号を出力する判定回路とを有する焦点外れ検知回路と、
(5)レーザ・ビームの焦点を、光ディスク面から大きく外れた位置から、この光ディスク面に引き込むための信号を出力する焦点位置引込回路と、
(6)焦点位置誤差検出回路の出力信号に基づいて合焦状態に達したとき合焦検知信号を出力する合焦検知回路と、
(7)対物レンズ駆動装置に駆動信号を出力する駆動回路と、
(8)焦点外れ検知信号に基づいて、この焦点外れ検知信号の入力される直前における焦点位置制御回路の出力信号の直流成分だけを固定値として保持するとともに、これを出力する固定値保持回路と、
(9)焦点外れ検知信号によって起動されるとともに焦点位置誤差検出信号の極大値または極小値がそれぞれ連続して2回現れることに基づいて、焦点位置制御が働きうる状態にあることを検知し、その検知信号を出力する再引込検知回路と、
(10)初期には焦点位置引込回路の出力を駆動回路に、合焦検知信号もしくは再引込検知信号に基づいて焦点外れ検知回路の加算器の出力を駆動回路に、または焦点外れ検知信号に基づいて固定値保持回路の出力を駆動回路に、それぞれ切り替えて入力させる切替回路とを備えた。」(3頁左下欄19行〜4頁左上欄18行)、
「この再引込検知回路9の作用は、概略次のようになる。固定値保持回路8からの信号Jによって、焦点位置は光ディスク21に対して、ある平均的な固定位置をとるが、この焦点位置に対して、光ディスク21の回転にともなう焦点位置誤差検出信号Eの時間的変化は、第7図(a)のような波形をとる。・・・したがって、比較器91,92によって、焦点位置誤差検出信号Eの極大部と極小部とを検出し、どちらかが連続して2回出たとき、その直ぐ後に合焦状態がある、ことになる。」(6頁右上欄12行〜同頁左下欄4行)、
「以上の動作を整理すると、▲1▼初期に、焦点位置の引き込み(切替回路:破線表示位置)がおこなわれ、▲2▼合焦検知によって、焦点位置制御(切替回路:実線表示位置)に移行し、▲3▼焦点外れ検知によって、焦点はあらかじめ設定された固定位置(切替回路:一点鎖線)をとり、▲4▼再引込検知に基づいて、ふたたび焦点位置制御(切替回路:実線表示位置)に移行する。以後、▲3▼、▲4▼の動作が繰り返される。」(7頁左上欄12〜20行)
イ.特許異議申立人が提出した甲第2号証(特開昭63-223513号公報)には、次のことが図面とともに記載されている。
「被検面を光プローブで走査する手段と前記被検面からの反射光を受光して合焦状態の判別を行う判別手段と該判別手段からの信号を用い光プローブを被検面にフォーカスさせる為のサーボ機構と前記反射光のセンサへの入射光量にもとづき前記サーボ機構の駆動を制御する手段と前記合焦状態にもとづいて被検面の形状を測定する測定手段とを有することを特徴とする面形状測定装置。」(特許請求の範囲)
(4)本件発明と特許異議申立人が提出した甲各号証記載の発明との対比・判断
本件発明と特許異議申立人が提出した甲各号証記載の発明とを対比すると、甲各号証には、「レーザの反射光が導かれる焦点誤差検出用の2つのPINフォトダイオードに流れる電流からフォーカス誤差信号を発生する回路」、「対物レンズの位置を検出する位置検出器及び位置信号発生回路」及びフォーカスがはずれた時に「前記フォーカスサーチ回路によって対物レンズを上下してフォーカス引き込み範囲を捜し、フォーカス位置に復帰させる」点が記載されていない。したがって、本件発明は、特許異議申立人が提出した甲各号証に記載された発明であるとはいえず、またそれらから当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
そして、上記相違点により、明細書記載の作用効果を生ずるものである。
(5)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、「甲第1号証の第3頁右下欄第5行目〜第7行目に記載された『この焦点位置誤差検出回路からの焦点位置誤差信号に基づいて焦点位置制御のための信号を出力する焦点位置制御回路と、』は、本件特許発明の構成要件C(対物レンズの位置を検出する位置検出器及び位置信号発生回路と、)に相当する。」(特許異議申立書6頁22〜25行)と主張するが、甲第1号証のものは、「焦点位置誤差検出回路」からの「焦点位置誤差検出信号」に基づいて「焦点位置制御のための信号」を出力するものであり、本件発明においては、「フォーカス誤差信号を発生する回路」「フォーカス誤差信号」がこれに相当するものであって、上記「焦点位置制御回路」は本件発明の「位置検出器」「位置信号発生回路」に相当するものではない。また、特許異議申立人は、「甲第1号証の第3頁右下欄第12行目〜第14行目に記載された『焦点外れ状態の有無を判定してその判定信号としての焦点外れ検知信号を出力する判定回路とを有する焦点外れ検知回路と、』は、本件特許発明の構成要件D(フォーカスサーチ回路と、)に相当する。」(特許異議申立書6頁26〜29行)と主張するが、本件発明は、フォーカスがはずれた時に、「スイッチ」によりフォーカスサーボ系と位置制御系を切り替え、「前記フォーカスサーチ回路」によりフォーカス引き込み範囲を捜すものであるのに対し、甲第1号証において焦点が大きくはずれた位置から光ディスク面に引き込むのは「焦点位置引込回路4」であって、「焦点外れ検知回路3」は単に「焦点外れ状態の有無を判定してその判定信号としての焦点外れ検知信号を出力する判定回路とを有する」ものであって、フォーカス引き込み範囲を捜すものではない。なお、「再引込検知回路9」に関しては、甲第1号証に「この再引込検知回路9の作用は、・・・焦点位置誤差検出信号Eの極大値と極小値とを検出し、どちらかが連続して2回出たとき、その直ぐ後に合焦状態がある、ことになる。」との記載があり、上記再引込検知回路9は、該記載のように合焦状態を確認することにより焦点位置の再引込を行うものであってフォーカスサーチを行うものではないから、本件発明の「フォーカスサーチ回路」とは相違するものである。よって、甲第1号証の「焦点外れ検知回路」は、本件発明の「フォーカスサーチ回路」に相当するものではないので、特許異議申立人の上記主張は採用するに足らないものである。
なお、特許異議申立人は、甲第1号証ばかりでなく、甲第2号証によっても同様に容易に推考できたものである旨主張しているが、甲第2号証のものは甲第1号証と同様の技術を開示する面形状測定装置を記載するのみで、請求項に係る発明のすべての構成要件が各号証に記載されていないのは上記のとおりであるから、かかる主張は根拠がない。
(6)むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-07-12 
出願番号 特願平1-249552
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 有家 秀郎  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 森 雅之
島田 信一
登録日 1998-07-03 
登録番号 特許第2797521号(P2797521)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 自動焦点制御装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  

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