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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01R
管理番号 1001232
異議申立番号 異議1998-72479  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1987-12-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-05-19 
確定日 1999-06-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第2679030号「両波整流器回路」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2679030号の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての特許を取り消す。 同特許請求の範囲第3項に記載された発明についての特許を維持する。 
理由 (1)本件特許発明
本件特許第2679030号(昭和61年6月10日出願、平成9年8月1日設定登録)の発明は、特許請求の範囲第1項及び第3項に記載されたとおりの次のもの(以下、それぞれ「本件第1発明」、「本件第2発明」という。)と認められる。
「1.エミッタサイズがk:1(k>1)の2つのトランジスタから成る差動増幅器を2対有し、前記2対の差動増幅器間においては、エミッタサイズが異なるトランジスタのベースが互いに接続されて入力対を構成し、エミッタサイズが等しいトランジスタのコレクタが互いに接続されて出力対を構成することを特徴とする両波整流器回路。」
「3.エミッタサイズがk:1(k>1)の2つのトランジスタから成る差動増幅器を2対有し、前記2対の差動増幅器間においては、エミッタサイズが異なるトランジスタのベースが互いに接続されて入力対を構成し、エミッタサイズが等しいトランジスタのコレクタが互いに接続されて出力対を構成する単位両波整流器回路が複数個並列接続され、それぞれの該単位両波整流器回路の加算出力電流を出力電流とする両波整流器回路において、それぞれの前記単位両波整流器回路の整流特性を互いに異ならせたことを特徴とする両波整流器回路。」
(2)特許異議申立て理由の概要
異議申立人高橋豊治は、本件第1発明は、甲第1号証(特開昭54-160155号公報)の第1図に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に規定する発明に該当し、本件第2発明は、甲第1号証ないし甲第2号証(特公昭46-38071号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明であり、また、特許請求の範囲第2項及び第4項に記載された技術的事項について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があり、特許法36条4項に規定する要件を満たしておらず、本件特許は取り消されるべき旨主張している。
(3)引用刊行物記載の発明
当審が取消理由通知において示した刊行物1(特開昭54-160155号公報:甲第1号証)には、「逓倍回路」に関し、「すなわち、第1図に示すように被逓倍信号(基本波)となる入力正弦波(Vin=sin wt)が印加される入力両端はそれぞれ互いのエミッタ面積が異ならせた二対の差動形トランジスタQ1,Q2およびQ1’,Q2’の各ベースに対応させて共通に接続される。ここで、二対の差動形トランジスタQ1,Q2およびQ1’,Q2’は各共通エミッタがそれぞれ定電流源IB,IB’を介して負電源-VEEに接続され且つ各共通コレクタが負荷抵抗R1,R1を介して正電源+Vccに接続されるもので、それぞれエミッタ電流密度を異ならせるためにQ1およびQ1’がQ2およびQ2’に対してN倍のエミッタ面積を有している。」(1頁右下欄15行〜2頁左上欄7行)と記載され、「従って、以上のような入出力特性を有する増幅回路に加えられる入力信号が正弦波であれば、出力信号は
Vout=(略)=RL・K/2-(RL・K/2)cos 2w t
となって、入力正弦波の2倍の周波数の余弦波をつまりは二逓倍された出力を得ることができる。
第3図は以上のような入出力関係を図式的に表したものである。」(2頁左上欄18行〜右上欄9行)と記載されている。
同じく刊行物2(特公昭46-38071号公報:甲第2号証)には、「レベル検出回路」に関し、相補出力発生回路のトランジスタ15,16の各エミッタには抵抗器12,13が挿入され(第2図)、この抵抗器12,13に関し、「特にエミッタに直列帰還をかけている抵抗器12,13は、動作範囲の拡大及び直線性の改善のために取り付けられている。」(1頁右欄26〜28行)と記載されている。
(4)本件第1発明との対比・判断
刊行物1第1図に記載された逓倍回路は、エミッタサイズがN:1の2つのトランジスタQ1,Q2およびQ1’,Q2’からそれぞれ成る2対の差動増幅器を有し、これら2対の差動増幅器間においては、エミッタサイズが互いに異なるトランジスタQ1及びQ2’のベースが互いに接続され、また、エミッタサイズが互いに異なるトランジスタQ2およびQ1’のベースが互いに接続され、これらはいずれも入力端Vinに接続されて入力対を構成していることが認められ、さらに、エミッタサイズが互いに等しいトランジスタQ1およびQ1’のコレクタが互いに接続され、また、エミッタサイズが互いに等しいトランジスタQ2およびQ2’のコレクタが互いに接続され、これらはいずれも出力端Vccに接続されて出力対を構成していることが認められる。
従って、本件第1発明と刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、「エミッタサイズがk:1(k>1)の2つのトランジスタから成る差動増幅器を2対有し、前記2対の差動増幅器間においては、エミッタサイズが異なるトランジスタのベースが互いに接続されて入力対を構成し、エミッタサイズが等しいトランジスタのコレクタが互いに接続されて出力対を構成する回路」で一致し、本件第1発明が、両波整流回路であるのに対し、引用発明は、逓倍回路である点で相違する。
そこで検討すると、引用発明は逓倍回路であるとしても、引用発明の出力信号を示す上記式及び刊行物1第3図に示された入出力特性を参照すると、正弦波交流が余弦波の脈流に変換され両波整流されていることは明らかである。したがって、刊行物1に接した当業者であれば、引用発明の回路を両波整流回路に用いようとすることは容易に想到しうるものといわざるをえない。
(5)本件第2発明との対比・判断
当審が取消理由通知において示した刊行物1ないし刊行物2には、本件第2発明の構成要件である「単位両波整流器回路が複数個並列接続され」ること、及び「それぞれの前記単位両波整流器回路の整流特性を互いに異ならせた」ことについては開示も示唆もされていない。
そして、本件第2発明は、上記構成を採用したことにより、「Ip,Iqを平滑化すれば対数特性を有する検波回路が得られる。」(本件特許公報3頁5欄32〜33行)という作用効果を奏すると認められる。
したがって、本件第2発明は、刊行物1ないし刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
異議申立人は、本件請求項1に係る単位両波整流器回路として、これを単に複数個並列に接続し、各単位両波整流器回路の整流特性を互いに異ならせるということは、当業者であれば、容易に想到し得ると主張するが、本件第2発明が、単位両波整流回路を複数組合せ、単位両波整流回路の整流特性すなわちエミッタサイズの比k:1を異ならせることによって、たとえば対数特性を有する検波回路を得るという明細書記載の作用効果を奏することを考慮すると、異議申立人の主張は採用できない。
(6)なお、異議申立人は、特許請求の範囲第2項及び第4項に記載された実施態様について、エミッタ抵抗の抵抗値及び各抵抗値間の関係について明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されていないと主張するが、当業者であればエミッタ抵抗の抵抗値は実施に際して適宜選択しうるものであり、エミッタ抵抗の抵抗値及び各抵抗値間の関係を具体的に明示されなければ、本件発明が実施できないものとも認められないから、異議申立人のいう記載不備はない。
(7)むすび
以上のとおり、本件第1発明は、上記刊行物1に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件第1発明の特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件第2発明については、他に取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-04-20 
出願番号 特願昭61-134328
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (G01R)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 武田 悟小川 浩史樋口 信宏  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 志村 博
新井 重雄
登録日 1997-08-01 
登録番号 特許第2679030号(P2679030)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 両波整流器回路  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  

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