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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63F
管理番号 1001269
異議申立番号 異議1999-71380  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-15 
確定日 1999-08-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第2811291号「パチンコ機」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2811291号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 (1)本件発明
特許第2811291号(平成7年4月13日出願、平成10年8月7日設定登録。)の請求項1ないし3に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】図柄を順に並べて成る図柄列を複数表示し、複数の図柄列を順次停止して、図柄列の停止状態において表示されている図柄の組み合わせが、予め定められた第1の当たり図柄の場合に第1の利益ある状態を提供し、予め定められた第2の当たり図柄の場合に第2の利益ある状態を提供するパチンコ機であって、最初に停止される図柄列において、停止時に表示される複数個の図柄に前記第1の当たり図柄を構成する図柄と、第2の当たり図柄とを構成する図柄とが同時に表示できるよう構成したことを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】第1の利益ある状態が提供される第1の当たりと、第2の利益ある状態が提供される第2の当たりとが設けられたパチンコ機であって、図柄ラインに並べられた図柄を変動表示する図柄表示装置であって、複数の図柄ラインが設けられ、複数の図柄ラインに第1の当たりに対応する図柄と、第2の当たりに対応する図柄とを同時に表示し得る図柄表示装置と、前記図柄表示装置を制御して図柄を変動表示させる図柄制御手段と、前記図柄表示装置の複数の図柄ラインのいずれが有効かを表示する有効ライン特定手段と、を有し、第1の当たり又は第2の当たりが発生した際に、前記図柄制御手段が、前記図柄表示装置に前記第1の当たりに対応する図柄と第2の当たりに対応する図柄とを同時に表示させ、第1の当たりのときには、有効ライン特定手段が、第1の当たり図柄の表示されている図柄ラインが有効であることを表示し、第2の当たりのときには、有効ライン特定手段が、第2の当たり図柄の表示されている図柄ラインが有効であることを表示することを特徴とするパチンコ機。
【請求項3】高確率状態と低確率状態とを切り換えて当たりを決定するパチンコ機であって、図柄ラインに並べられた図柄を変動表示する図柄表示装置であって、複数の図柄ラインが設けられ、複数の図柄ラインに高確率状態へ移行する当たり(以下第1の当たりという)に対応する図柄と、高確率状態へ移行しない当たり(以下第2の当たりという)に対応する図柄とを同時に表示し得る図柄表示装置と、前記図柄表示装置を制御して図柄を変動表示させる図柄制御手段と、前記図柄表示装置の複数の図柄ラインのいずれが有効かを表示する有効ライン特定手段と、を有し、第1の当たり又は第2の当たりが発生した際に、前記図柄制御手段が、前記図柄表示装置に前記第1の当たりに対応する図柄と第2の当たりに対応する図柄とを同時に表示させ、第1の当たりのときには、有効ライン特定手段が、第1の当たり図柄の表示されている図柄ラインが有効であることを表示し、第2の当たりのときには、有効ライン特定手段が第2の当たり図柄の表示されている図柄ラインが有効であることを表示することを特徴とするパチンコ機。」
(2)申立て理由の概要
申立人、町田彬は、証拠として、甲第1号証(特開平7-96071号公報)、
甲第2号証(特開平2-299679号公報)、
甲第3号証(特開平3-261493号公報)、
甲第4号証(特開昭62-254787号公報)、
甲第5号証(特開平6-190119号公報)、
甲6号証(特開平7-68027号公報)を提出し、請求項1ないし3に係る発明は、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項3号の規定に違反し、さらに、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。
(3)申立人が提出した各号証記載の発明
甲1号証には、
「【請求項1】複数の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を備え、予め定めた識別情報で停止表示する特定表示状態のとき、遊技者に付加価値を与えるようにしたパチンコ機において、可変表示装置は、表示窓内に識別情報として左図柄、中図柄、右図柄を表示すると共に、特定識別情報が揃って停止表示する有効ラインを複数備え、該有効ラインの何れかには特定表示状態が成立する可能性が生じるように特定識別情報を表示すると共に、中図柄を各有効ラインに対して共通としたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】 最初の図柄が停止したときは、表示窓内には特定状態となる可能性を有する特定識別情報が表示されるようにした請求項1記載のパチンコ機。」(第1欄第2行又第14行)、
「この発明は、パチンコ機に関し、特に複数の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を備え、停止表示する識別情報が予め定めた識別情報のとき、遊技者に付加価値を与えるようにしたパチンコ機に関するものである。」(第1欄第20行〜第24行)、
「識別情報として左図柄、中図柄、右図柄を有し、複数ある有効ラインの何れかには、特定状態となる可能性を備える特定識別情報が現れると共に中図柄には外れ図柄が含まれないため、リーチ状態の期待感が持続する。」(第2欄第36行〜第40行)、
「【0011】そして、本発明に係るパチンコ機1では、定められたプログラムに従って遊技が進行し、図柄始動口4に打球が入賞すると、可変表示装置5における図柄の可変表示を開始し、所定時間経過後、或は図柄停止スイッチを遊技が操作したとき、可変表示を停止する。この可変表示の停止に際しては、先ず最初に、例えば左図柄が停止する。この左図柄には、外れ図柄が含まれていないで、大当たりになる可能性が常にある。次に、右図柄が停止する。この右図柄は、上記左図柄と逆配列の図柄である。従って、通常のリーチ状態が出現するばかりではなく、トリプルリーチ、ダブルリーチが出現し、大当たりになる期待感が高い。」(第3欄第44行〜第4欄第5行)、
「【発明の効果】以上要するに本発明は、複数の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を備え、予め定めた識別情報で停止表示する特定表示状態のとき、遊技者に付加価値を与えるようにしたパチンコ機において、可変表示装置は、表示窓内に識別情報として左図柄、中図柄、右図柄を表示すると共に、特定識別情報が揃って停止表示する有効ラインを複数備え、該有効ラインの何れかには特定表示状態が成立する可能性が生じるように特定識別情報を表示すると共に、中図柄を各有効ラインに対して共通としたので、識別情報である図柄を確認し易いばかりではなく、遊技に不慣れな初心者等であっても、大当りと間違えることがない興趣の高い遊技が可能なパチンコ機を提供する。また、本発明に係るパチンコ機によれば、常に大当りになる可能性が存在し、期待感が持続するばかりではなく、ダブルリーチ、トリプルリーチ、特殊リーチが出現する多様で且つ遊技性が高く、興趣に富んだ遊技が可能である。」(第5欄第1行〜第6欄第2行)が、
甲第2号証には、
「複数種類の識別情報を可変表示可能な識別情報表示部が複数配設された可変示装置と、前記複数の識別情報表示部が停止したときの組合せ表示状態を判定する表示状態判定手段と、該表示状態判定手段から識別情報表示部の組合せが複数であるうちの1つの、特定識別情報の組合せとなって特定表示状態である旨の判定出力があることに基づいて遊技者に所定の価値を付与する所定価値付与手段と、を備えた弾球遊技機において、前記表示状態判定手段は、前記複数の識別情報表示部の組合せに対して複数設定される有効ライン上の組合せ表示状態を判定するように構成され、前記可変表示装置は、前記複数の有効ラインのうち1つの有効ライン上に特定表示状態が成立する可能性が生じたときに、他の少なくとも1つの有効ライン上にも特定表示状態が成立する可能性が生じるように特定識別情報を識別情報表示部に表示するよにしたことを特徴とする弾球遊技機。」(第1頁左欄第5行〜右欄第5行)、
「以上、実施例について説明してきたが、この実施例においては、左ドラムと右ドラムに表示される図柄が、複数ある有効ラインのいずれかの有効ライン上に大当たりとなる図柄である場合には他の有効ライン上にも大当たりとなる図柄が表示される場合があるので、そのような場合には、大当りとなる期待感がより一層高まり、遊技者の興趣を極めて強烈に引き付けることができる。」(第13頁右下欄第3行〜第10行)が、
甲第3号証には、
「表示態様が変化可能な可変表示部を複数有する可変表示装置と、前記複数の可変表示部のうち有効となる可変表示部を特定する有効表示部特定手段と、該有効表示部特定手段によって特定された可変表示部が予め定めた表示結果となったことに基づいて遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、を備えた可変表示装置付遊技機。」(第1頁左下欄第5行〜第12行)、
「更に、可変表示装置90として、第6図に示すような構成のものでもよい。ここで、可変表示装置90の構成について説明すると、可変表示装置90は、遊技盤10の表面に取り付けられる取付基板91を有し、その取付基板91の中央に形成された正方形状の開口に可変表示部としての複数(3つ)の回転ドラム92a〜92cが臨んでいる。それぞれの回転ドラム92a〜92cの外周面には、複数の識別情報(図柄)が描かれ、その複数の識別情報のうち上下3つの識別情報が視認できるようになっている。このため、回転ドラム92a〜92cが停止した際には、縦3つ横3つの全部で9つの識別情報を表示する表示部が形成されることになる。つまり、可変表示装置90においては、可変表示部として正確には上記9つの識別情報が表示される表示部を示すことになる。また、取付基板91の両サイドには、回転ドラム92a〜92cで表示される識別情報の組合せインのうち有効な組合せラインを特定する有効ライン特定LED93a,93b、94a,94b、95a,95b、96a,96b、97a,97bが設けらている。具体的には、中央の横ラインを表示するために有効ライン特定LED93a、93bが設けられ、上部の横ラインを表示するために有効ライン特定LED94a、94bが設けられ、下部の横ラインを表示するために有効ライン特定LED95a、95bが設けられ、左上部から右下がりのラインを表示するために有効ライン特定LED96a、96bが設けられ、左下部から右上がりのラインを表示するために有効ライン特定LED97a、97bが設けられている。」(第7頁右下欄第5行〜第8頁左上欄第16行)、
「このように、第6図に示す可変表示装置90においても、可変表示装置90に設けられる複数の可変表示部としての回転ドラム92a〜92cの識別情報が表示される表示部の組合せラインのうち有効となる組合せライン自体が有効ライン特定LED93a〜97bによって明確に特定されるので、有効となる組合せラインを遊技者は、即座に見分けることができる。また、有効となる組合せラインが回転ドラム92a〜92cの回転動作毎に変更されていると共に所定の停止条件が成立したときにその変更が停止されるので、仮にいずれかの組合せライン上の表示結果が大当たり状態となったときでも、その組合せラインが有効な組合せラインとして特定されない場合には、遊技者に大当たり状態を提供することはない。つまり、可変表示部としての回転ドラム92a〜92cの可変表示による特定識別情報の表示可能性と、有効ライン特定LED93a〜97bにる有効な組合せラインの特定の可能性とが組み合わさって遊技者に所定の遊技価値を付与するものであるため、回転ドラム92a〜92cの可変表示動作以外の要因によっても遊技者に所定の遊技価値を付与することになり、より遊技の興趣を盛り上げることができるものである。」(第8頁左下欄第4行〜右下欄7行)、
「▲2▼可変表示部として、7セグメントLEDやLEDだけでなく、ドット・マトリックス・ディスプレイ、LCD等の電気的可変表示器や回転ドラム、回転円盤等の機械的可変表示部材であってもよい。」 (第9頁左上欄第3行〜第7行)、
「▲4▼上記した実施例では、有効となる可変表示部が変更されても、遊技価値付与手段によって付与される価値が同一であるものを示したが、付与される価値が異なるものであってもよい。」
(第9頁左上欄第17行〜第20頁)、
「以上、説明したところから明らかなように、この発明に係る可変表示装置付遊技機は、複数の可変表示部のうち有効となる可変表示部が特定されるように構成されるので、可変表示部自体が可変表示されることと、有効とされる可変表示部が特定されることとが組み合わさることになり、これにより遊技者に所定の遊技価値を付与する可能性が可変表示部の可変表示動作以外の要因によっても決定され、遊技の興趣を盛り上げることができる。また、可変表示装置に設けられる複数の可変表示部のうち有効となる可変表示部自体が特定されるので、有効な可変表示部を遊技者は、即座に見分けることができる。」(第9頁右上欄第15行〜左下欄第7行)が、
甲第4号証には、
「▲1▼メダルの投入を検出するメダル検出手段(S5)、このメダル投入検出手段(S5)の情報に基づいて、複数種類の絵柄のうちの所要数を選択して複数列、複数行に整列表示する絵柄表示手段(100)、この絵柄表示手段(100)にて表示された絵柄の複数種類の入賞配列ラインを設定可能な入賞配列ライン設定手段(101)、この入賞配列ライン設定手段(101)にて設定された入賞配列ライン上に特定の絵柄配列が成立したことを判別する入賞判別手段(102)を備えたスロットマシンであって、前記入賞配列ライン設定手段(101)を、前記メダル投入検出手段(S5)の情報に基づいて、複数種類の入賞配列ラインをある確率分布をもって選択表示すべく構成してあるスロットマシン。」(第1頁左欄第5行〜第19行)、
「▲4▼前記入賞配列ライン設定手段(101)が前記絵柄表示手段(100)による絵柄表示後に入賞配列ラインを表示すべく構成されている特許請求の範囲第▲1▼項に記載のスロットマシン。」(第1頁右欄第10行〜第13行)、
「▲5▼ 前記絵柄表示手段(100)が外周面に複数種類の絵柄を付記してある数本のリール(R1),(R2),(R3)、これらリール(R1),(R2),(R3)を各別に駆動回転させるモータ(M1),(M2),(M3)、これらのモータ(Ml),(M2),(M3)を起動させるスタートスイッチ(SW0)、前記モータ(M1),(M2),(M3)を各別に停止させる停止スイッチ(SW1), (S2),(SW3)を備えたものである特許請求の範囲第▲1▼項に記載のスロットマシン。」(第1頁右欄第14行〜第2頁左上欄第2行)、
「第7図はスロットマシンを示し、これは、表示パネル部(1)に、複数種類の絵柄を3列、3行状態で整列表示するための絵柄表示窓(2)と、表示された絵柄に対する複数種類の入賞配列ラインを選択表示するためのライン表示窓(3)、ならびに、入賞メダル数をデジタル表示する入賞表示窓(4)とを形成する」(第3頁左上欄第13行〜第19行)、
「(イ)上述実施例では、ライン表示窓(3)を上下の中央位置に一つだけ形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第8図に示すように、上段と下段に夫々ライン表示窓(3),(3)を形成して、リール(R4)の外周面に付記された入賞配列ラインの二箇所を表示すべく構成してもよい。」(第4頁右下欄第7行〜第13行)が、
甲第5号証には、
「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を複数有するとともに、複数本の組合せ有効列が定められた可変表示装置を含み、前記複数の可変表示部の可変停止時の表示結果が前記複数本の組合せ有効列のうちのある組合せ有効列上で予め定められた特定の識別情報の組合せとなった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって、前記複数本の組合せ有効列のうちの複数本の組合せ有効列上で前記特定の識別情報の組合せが成立した場合に特別の遊技価値を付与可能な特別価値付与手段を含むことを特徴とする、遊技機。」(第1欄第2行〜第12行)、
「本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシンなどで代表される遊技機に関する。詳しくは、複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を複数有するとともに、複数本の組合せ有効列が定められた可変表示装置を有し、前記複数の可変表示部の可変停止時の表示結果が前記複数本の組合せ有効列のうちのある組合せ有効列上で予め定められた特定の識別情報の組合せとなった場合に所定の遊技価値が付与可能な状態となる遊技機に関する。」(第1欄第15行〜第23行)、
「しかし、この種の従来の遊技機では、可変表示装置において複数本の組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合でも、1本の組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合と同じ遊技価値しか付与されないため、遊技者が不満を感じるという欠点があった。」(第1欄第36行〜第41行)、
「本発明によれば、可変表示装置において特定の識別情報の組合せが複数本の組合せ有効列上で成立した場合に、特別の遊技価値が付与される。したがって、特定の識別情報の組合せが成立した組合せ有効列が複数本である場合には1本の場合とは異なる遊技価値が付与可能となる」(第2欄第10行〜第15行)、
「このようにリーチ状態のときに、リーチが発生した有効ライン上の各図柄表示部を囲む枠を表示するという制御は、第3図柄の停止時にも行なわれる。この場合、2本の対角線と、中央で交差する2本の有効ラインにおいてリーチ状態が発生する可能性があり、リーチ状態が発生すればその有効ダリ上の各図柄表示部に、表示枠が表示される。同様にもしもこの時点で、停止した図柄のすべてがフルーツ図柄である場合には、第4図柄の停止時の識別情報がすべてフルーツとなれば大当りが発生する可能性がある。そのため、この場合には可変表示装置3上のすべての図柄表示部に、リーチ発生表示のための表示枠が表示される。このようにリーチ発生を示す表示枠を表示することにより、第4図柄が停止するまで遊技者は可変表示装置3上の表示を注視することになり、遊技の興趣が一層盛り上げられる。」(第3欄第29行〜第43行)、
「このようにリーチラインを示す表示枠が実際に次の図柄停止時に大当たりが発生する可能性のある場所を示して変化することによって遊技者の興趣はさらに盛り上がる。」(第5欄第47行〜第50行)、
「以上のようにこの実施例のパチンコ遊技機では、可変表示装置3の表示において、複数本の有効ライン上に特定の識別情報が成立した場合に、その成立により生じた大当りが終了した後の遊技において、ランダム1カウンタのカウント値に対する当り判定値の個数が多くされて大当りの発生確率が高くなるという特別の遊技価値が付与される。このように特別の遊技価値が付与されることにより、複数本の有効ライン上に特定の識別情報を成立させた遊技者は、1本の有効ライン上に特定の識別情報を成立させた場合には得られないような大きな満足感を得ることができる。」(第13欄第32行〜第42行)、
「遊技価値として、大当りの他に、付与される遊技価値が大当りよりも低い中当り(たとえば、特定の有効ライン上に「7」 が2つ揃った場合に可変入賞球装置4を6秒間だけ1回開放させる)と、付与される遊技価値が中当りよりも低い小当り(たとえば、特定の有効ライン上に「7」が1つ揃った場合に可変入賞球装置4を1.5秒間だけ1回開放させる)との遊技状態が生じるように制御するようにしておき、大当り終了後の前記中当り、前記小当りの発生する確率を通常時よりも高くする。」(第14欄第5行〜第14行)が、甲第6号証には、「表示状態が変化して複数種類の表示態様を表示結果として導出表示可能な可如表示装置を含み、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって、前記可変表示装置の表示結果の表示態様を決定する表示態様決定手段と、該表示態様決定手段により決定された内容に従って前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段と、前記表示態様決定手段により決定された表示結果が前記特定の表示態様となる場合に、特定の表示態様となる前に報知するか否かを選択決定する選択決定手段と、該選択決定手段により報知する旨が決定された場合に、特定の表示態様となる旨を前記可変表示装置の表示結果が導出される前に報知する報知手段とを含むことを特徴とする、遊技機。」(第1欄第2行〜第17行)、
「本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシン等で代表される遊技機に関する。詳しくは、表示状態が変化して複数種類の表示態様を表示結果として導出表示可能な可変表示装置を含み、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機に関する」(第1欄第20行〜第26行)、
「【0044】図7は、当りラインが複数本設定されている可変表示装置の場合の予告報知動作を示す図である。当りラインとは、可変停止時の可変表示装置により表示される複数の停止図柄の組合せがそのライン上において予め定められた特定の組合せとなっている場合に大当りが発生するという大当り発生の判断対象となる停止図柄の組合せラインのことである。
【0045】(A)は当りラインが、上段,中段,下段の横3本と斜め対角線上に2本との合計5本定められており、この5本の当りライン上において停止図柄の組合せがぞろめになれば、大当りが発生する。そして、リーチの予告報知を行なう場合には、すべての図柄57,58,59が可変表示中に、5本の当りライン上においてリーチが成立するラインをリーチライン61で表示させる。また、大当りを予告報知する場合には、5本の当りライン上において停止図柄がぞろめとなる当りが成立するラインを当りライン60で表示する。【0046】(B)は、横方向3本と縦方向3本と斜め対角線上に2本との合計8本の当りラインが定められている可変表示装置の場合を示している。リーチを予告報知する場合には、LCD表示装置5によりすべての図柄62a〜62iが可変表示されている最中に、8本の当りラインのうちリーチが成立するラインをリーチライン64で表示するとともに、そのリーチライン上の図柄表示領域をリーチ枠63g,63f,63bにより囲んで表示する。一方、大当りが発生する当り表示が行なわれることを予告報知する場合には、すべての図柄62a〜62iが可変表示されている最中に、8本の当りラインのうち停止図柄がぞろめとなり当りが成立するラインを当りライン65により表示するとともに、その当りライン上にある図柄表示領域を当り枠63a,63i,63bにより囲んで表示する。【0047】なお、(A),(B)の場合に、当りライン60,65とリーチライン61,64とを色を異ならせる等して区別できるようにしてもよい。【0048】この図7に示した当りラインが複数本ある可変表示装置の場合には、同時に複数本の当りライン上においてリーチが成立するといういわゆるダブルリーチが発生するようにしてもよい。また、可変表示装置の可変停止時の表示結果に従って大当りが発生した場合のその停止時の図柄(大当り図柄)の種類によって、以降の大当りが発生する確率が変動するようにしてもよい。このダブルリーチが発生する場合や確率変動が発生する場合には、ダブルリーチあるいは確率変動が生ずる大当り図柄(確率変動図柄)による大当りが発生する旨を通常のリーチや大当りとは別の態様で事前報知するようにしてもよい。【0049】また、以上説明した実施例においては、事前報知の内容として、リーチおよび大当りの両方を報知するものを示したが、大当りのみを事前報知するものであってもよい。また、大当りのみの事前報知を行なう場合には、すべての図柄の可変表示を同時に停止させてもよい。」(第12欄第2行〜第13欄第4行)が、それぞれ各号証に開示されている。
(4)対比・判断
(4.1)請求項1に係る発明について
甲第1号証ないし甲6号証には、いずれも「停止時に表示される複数個の図柄に、第1の利益ある状態を提供する第1の当たり図柄を構成する図柄と、第2の利益ある状態を提供する第2の当たり図柄とを構成する図柄とが同時に表示できる」ようにしたパチンコ機の構成が備えられておらず、該構成を示唆する記載もない。そして、本件の請求項1に係る発明は、この構成を備えることで、遊技者にとって非常に有利な第1の当たりが発生しているのではないかという期待を持たせ、遊技の興趣を高める効果を奏するものである。
よって、請求項1に係る発明は、甲第3号証、甲5号証、及び甲6号証に記載された発明ではなく、また、当業者が甲各号証に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない
(4.2)請求項2に係る発明について
甲第1号証ないし甲6号証には、いずれも「当たりが発生した際に、図柄制御手段が、図柄表示装置に第1の利益ある状態が提供される第1の当たりに対応する図柄と第2の利益ある状態が提供される第2の当たりに対応する図柄とを同時に表示させ、そのいずれが有効かを表示する有効ライン特定段」を有するパチンコ機の構成が、備えられておらず、該構成を示唆する記載もない。そして、本件の請求項2に係る発明は、この構成を備えることで、有効ラインによって当たり図柄が最終的に確定するまで、遊技の興趣を高める効果を奏するものである。
よって、請求項2に係る発明は、甲第3号証、甲5号証、及び甲6号証に記載された発明ではなく、また、当業者が甲各号証に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。(4.3)請求項3に係る発明について
甲第1号証ないし甲6号証には、いずれも「当たりが発生した際に、図柄制御手段が、図柄表示装置に高確率状態へ移行する当たりが提供される第1の当たりに対応する図柄と高確率状態へ移行しない当たりが提供される第1の当たりに対応する図柄とを同時に表示させ、そのいずれが有効かを表示する有効ライン特定手段」を有するパチンコ機の構成が、備えられておらず、該構成を示唆する記載もない。そして、本件の請求項3に係る発明は、この構成を備えることで、有効ラインによって当たり図柄が最終的に確定するまで、遊技の興趣を高める効果を奏するものである。
よって、請求項3に係る発明は、甲第3号証、甲5号証、及び甲6号証に記載された発明ではなく、また、当業者が甲各号証に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(5)むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-07-30 
出願番号 特願平7-112350
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A63F)
P 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 斎藤 利久  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 新井 重雄
吉村 尚
登録日 1998-08-07 
登録番号 特許第2811291号(P2811291)
権利者 マルホン工業株式会社
発明の名称 パチンコ機  

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