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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1001946
審判番号 審判1996-10452  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-06-24 
確定日 1999-09-28 
事件の表示 平成2年 特許願 第510221号「グラフィックアート装置の二酸化炭素クリーニング」拒絶査定に対する審判事件[(平成3年8月22日国際公開WO91/12137、平成5年6月24日国内公表特許出願公表平5-503885号)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.本願は、平成2年6月6日(優先権主張平成2年2月13日)の出願であって、その請求項1及び16に係る発明は、平成7年12月13日付け及び平成8年7月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び16に記載された次のとおりのものと認める。
請求項1「不純物を印刷装置の円筒状要素の表面からクリーニングする方法であって、二酸化炭素を凍結させ、二酸化炭素からなる粒子を形成する工程と、前記粒子を送りガスでノズル(54、254)に通し、送る工程と、前記粒子を前記ノズル(54、254)から排出し、前記表面に接触させ、前記不純物を除去する工程とを備え、前記排出の前、前記形成された粒子の多くても10%が昇華し、さらに、前記粒子が前記ノズル(54、254)から排出されるとき、前記ノズル(54、254)を前記印刷装置の前記円筒状要素に平行のバー(252)に沿って移動させる工程を備えたことを特徴とする方法。」(以下、本願発明1という。)
請求項16「印刷装置の円筒状要素の表面をクリーニングするクリーニング装置であって、固体二酸化炭素粒子を発生させる手段(19、20)と、上流端(56)および下流端(57)を有するノズル(54、254)とを備え、前記下流端は前記粒子を排出し、これを前記表面に接触させることができるよう配置されており、前記粒子をその発生手段から前記ノズル(54、254)に送るための手段(22、30、40)と、前記印刷装置に取り付けられたバー(252)とを備え、前記バー(252)は前記円筒状要素に平行であり、前記ノズル(54、254)は前記バー(252)に取り付けられ、排出のとき、前記バーに沿って移動することができ、前記円筒状要素に向けられており、これによってリントおよびインキからなる不純物を前記円筒状要素の表面からクリーニングすることができるようにしたことを特徴とするクリーニング装置。」(以下、本願発明2という。)
II.これに対して、前審における拒絶の理由に引用された特開昭63-4947号公報(以下、引用例1という)及び特開昭58-158599号公報(以下、引用例2という)には、それぞれ下記の事項が記載されいる。
引用例1
「本発明は、・・・印刷を中断することなく、しかも版面を傷つけることもない活版輪転印刷機の版洗浄装置を提供することを目的とするものである。」(2頁右上欄8行〜同11行)、「版面に高圧の空気を吹きつける高圧空気噴射手段と、該高圧空気噴射手段から吹きつけられた高圧空気により飛散する紙粉、インキかす等を吸い取る吸引除去手段と、上記高圧空気噴射手段・・・を版胴軸方向に移動させる移動手段とからなる活版輪転印刷機の版洗浄装置」(2頁右上欄13行〜同19行)、「版洗浄装置1は、高圧空気噴射手段である高圧空気噴射ノズル7と、吸引除去手段であるバキュームダクト8と、上記高圧空気噴射ノズル7及びバキュームダクト8を版胴2の軸方向に移動させる移動手段30とから構成されており、高圧空気噴射ノズル7には高圧空気発生装置(図示せず)が接続されており、バキュームダクト8にはフィルター(図示せず)を介して吸引装置(図示せず)が接続されている。」(2頁右下欄5行〜同14行)、「第4図乃至第6図は、移動手段の他の実施例を示しており、・・・まず、第4図は、・・・2本のガイドバ-52を版胴2の軸方向と平行に2つの摺動部材43に固定設置し、該ガイドバー52をバキュームダクト8にリニアベアリング53等を介して挿通させたものである。」(4頁右下欄4行〜13行)。
又、第1図及び第3図の記載から、高圧空気噴射ノズル7は、上流端と下流端を有し、前記下流端は高圧空気を版胴2の版面3に噴射することが認められる。
上記によると、引用例1には、
「紙粉、インキかす等を活版輪転印刷機の版胴の版面から洗浄する方法であって、高圧空気を発生させる工程と、前記高圧空気を高圧空気噴射ノズルから前記版胴の版面に噴射し、前記紙粉、インキかす等を除去する工程とを備え、前記高圧空気が前記高圧空気噴射ノズルから噴射されるとき、前記高圧空気噴射ノズルを前記活版輪転印刷機の前記版胴に平行のガイドバーに沿って移動させる工程を備えた方法」の発明(以下、引用発明1という)、及び、
「活版輪転印刷機の版胴の版面を洗浄する洗浄装置であって、高圧空気発生装置と、上流端および下流端を有する高圧空気噴射ノズルとを備え、前記下流端は前記高圧空気を前記版面に噴射できるよう配置されており、前記高圧空気を高圧空気発生装置から前記高圧空気噴射ノズルに送るための手段と、前記版胴の軸方向と平行な摺動部材に固定設置されたガイドバーとを備え、前記ガイドバーは前記版胴に平行であり、前記高圧空気噴射ノズルは前記ガイドバーに取り付けられ、噴射のとき、前記ガイドバーに沿って移動することができ、前記版胴に向けられており、これによって紙粉およびインキかす等を前記版胴の版面から洗浄することができるようにした洗浄装置」の発明(以下、引用発明2という)が記載されている。
引用例2
「前記固体二酸化炭素噴出装置(11)の容器(12)内に、その基端部からノズル(13)を介して高圧液体二酸化炭素が注入噴霧され、同液体二酸化炭素の断熱膨張による温度低下によって噴霧された液体二酸化炭素の一部は固化し、固体二酸化炭素(ドライアイス)微粒子となり、・・・一方固体二酸化炭素微粒子は前記容器(12)の先端ノズル(14)部分に到達し、同部に配設された低温窒素ガス噴出ノズル(15)より噴出された低温窒素ガスによって更に冷却、且つ加速されて前記ノズル(14)より噴出されて被除染表面に衝突して、同表面の汚染物被膜を除去するものである。なお本発明は原子力発電所の1次系除染の他に船舶防錆塗料の除去等の無公害ブラスティング装置等にも適用されるものである。」(2頁左下欄11行〜同右下欄8行)。
上記によれば、引用例2には、
「温度低下によって、液体二酸化炭素を固化させ、固体二酸化炭素微粒子を形成し、固体二酸化炭素微粒子を低温窒素ガスにより加速させてノズルから噴出させ、被除染表面に衝突して、同表面の汚染物を除去する」技術が記載されている。
III.そこで、本願の各発明と引用発明とを比較検討する。
1)先ず、本願発明1と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「活版輪転印刷機」、「版胴」、「版面」、「洗浄」、「紙粉、インキかす等」、「噴射」、「ガイドバー」は、
本願発明1の「印刷装置」、「円筒状要素」、「表面」、「クリーニング」、「不純物」、「排出」、「バー」にそれぞれ相当し、引用発明1において、高圧空気を高圧空気噴射ノズルに通し、送ること、及び、高圧空気噴射ノズルから噴射した高圧空気が版面に接触することは自明であるから、両者は、
「不純物を印刷装置の円筒状要素の表面からクリーニングする方法であって、クリーニング媒体を発生させる工程と、クリーニング媒体をノズルに通し、送る工程と、クリーニング媒体をノズルから排出し、前記表面に接触させ、前記不純物を除去する工程とを備え、前記クリーニング媒体が前記ノズルから排出されるとき、前記ノズルを前記印刷装置の前記円筒状要素に平行のバーに沿って移動させる工程を備えた方法」で一致し、下記の点で相違する。
▲1▼本願発明1は、クリーニング媒体が、二酸化炭素を凍結させた二酸化炭素からなる粒子であり、二酸化炭素を凍結させ、二酸化炭素からなる粒子を形成する工程と、前記粒子を送りガスでノズルに通し、送る工程を備えているのに対し、引用発明1は、クリーニング媒体が高圧空気であり、このような工程を有しない点。
▲2▼本願発明1は、排出の前、前記形成された粒子の多くても10%が昇華するものである点。
先ず、上記相違点▲1▼について検討すると、
引用例2に記載された技術の「温度低下によって、液体二酸化炭素を固化」、「微粒子」、「低温窒素ガス」及び「表面の汚染物を除去する」は、
本願発明1の「二酸化炭素を凍結」、「粒子」、「送リガス」及び「不純物を表面から除去する」に夫々相当するから、引用例2に記載された技術には上記相違点▲1▼の本願発明の構成が備わっている。
そして、本願発明1及び引用例1、引用例2に記載された技術は、いずれも、物品の表面に付着した不純物や汚染物をクリーニング媒体を吹き付けることによって除去(クリーニング)するものである点で、共通の技術分野に属している。
しかも、物品の表面に付着した不純物や汚染物を除去(クリーニング)するのに、公知のクリーニング媒体のうちから何を選択するかは、被洗浄物及びその表面に付着した不純物や汚染物に応じて選択されるべき設計的事項である。
また、引用例2記載の「二酸化炭素を凍結させた粒子による洗浄」を引用発明1の「印刷装置の円筒状要素の表面のクリーニング」に適用することが不可能であるなどの特段の事情も認められない。
そうしてみると、上記相違点▲1▼の本願発明の構成は、引用発明1の印刷機の洗浄方法における、高圧空気に代え、引用例2に記載された技術を適用することにより当業者が容易に想到できたものである。
次に、上記相違点▲2▼について検討すると、
クリーニングの経済効率等を考慮すれば、二酸化炭素を凍結させた二酸化炭素からなる粒子の排出前の昇華は少なければ少ない程良いことは自明のことである。また、本願発明1において、昇華を10%までに限定することに関して、本願の明細書にはその根拠が格別開示されていない。
してみると、相違点▲2▼の本願発明1の構成は、当業者が普通に想到できる数値の限定にすぎない。
そして、本願発明1に関する効果も、引用発明1及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別のものではない。
2)次に、本願発明2と引用発明2とを比較すると、引用発明2の「活版輪転印刷機」、「版胴」、「版面」、「洗浄」、「洗浄装置」、「噴射」、「版胴の軸方向と平行な部材に固定設置され」、「ガイドバー」、「紙粉及びインキかす」は、
本願発明2の「印刷装置」、「円筒状要素」、「表面」、「クリーニング」、「クリーニング装置」、「排出」、「活版輪転印刷機に取り付けられた」、「バー」、「リントおよびインキからなる不純物」」に相当するから、両者は、
「印刷装置の円筒状要素の表面をクリーニングするクリーニング装置であって、クリーニング媒体を発生させる手段と、上流端および下流端を有するノズルとを備え、前記下流端は前記クリーニング媒体を排出し、これを前記表面に接触させることができるよう配置されており、前記クリーニング媒体をその発生手段から前記ノズルに送るための手段と、前記印刷装置に取り付けられたバーとを備え、前記バーは前記円筒状要素に平行であり、前記ノズルは前記バーに取り付けられ、排出のとき、前記バーに沿って移動することができ、前記円筒状要素に向けられており、これによってリントおよびインキからなる不純物を前記円筒状要素の表面からクリーニングすることができるよにしたクリーニング装置」で一致し、下記の点で相違する。
▲1▼本願発明2は、クリーニング媒体が、固体二酸化炭素粒子であって、その固体二酸化炭素粒子を発生させる手段及び前記粒子をその発生手段から前記ノズルに送るための手段を具備するのに対し、引用発明2は、クリーニング媒体が高圧空気であって、そのような手段を有しない点。
しかし、上記相違点▲1▼の本願発明2の構成は、引用例2に記載された事項であり、上記III.1)の本願発明1の相違点▲1▼についての検討で述べたと同様の理由(ただし、「方法」は「装置」と読み替える。)により、当業者が容易に想到できたものである。
そして、本願発明2に関する効果も、引用発明2及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別のものではない。
IV.以上のとおり、本願の請求項1及び請求項16に係る各発明は、引用例1(引用発明1及び引用発明2)及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-04-05 
結審通知日 1999-04-20 
審決日 1999-04-27 
出願番号 特願平2-510221
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 宏輔國田 正久中村 圭仲  
特許庁審判長 櫻井 義宏
特許庁審判官 砂川 克
青山 待子
発明の名称 グラフィックアート装置の二酸化炭素クリーニング  
代理人 武石 靖彦  

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