• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1001947
審判番号 審判1997-1638  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-02-10 
確定日 1999-09-16 
事件の表示 平成6年 特許願 第162503号「複数の分析物の同時測定方法ならびに装置」拒絶査定に対する審判事件(平成7年3月20日出願公開、特開平7-77525)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成6年7月14日(パリ条約による優先権主張、1993年7月15日、ドイツ連邦共和国)に出願された。
本願の請求項1の発明は、平成9年2月17日付手続補正書により補正された明細書および図面の記載から見て、その請求項1に記載された事項により構成される。
その請求項1は、次のとおりである。
【請求項1】
液体サンプル中に含有される複数の分析物を測定する方法であって、
- サンプル適用ゾーン、該サンプル適用ゾーンから間隔を置いて配置された複数のサンプル回収ゾーン、該サンプル回収ゾーンのそれぞれを該サンプル適用ゾーンに連絡する複数の輸送通路及び該輸送通路の少なくとも1つに設けられかつ該サンプル適用ゾーンに適用された液体サンプルが該サンプル回収ゾーンのそれぞれに同時に到達するように配置された遅滞手段からなる繊維状毛管活性輸送手段を用意し、
- 分析物を含有する液体サンプルを該適用ゾーンに適用し、(ただし、繊維状毛管活性輸送手段は、測定しようとする分析物と反応する試薬を含まない)、
- 試薬を含有する試験要素を少なくとも2つの該サンプル回収ゾーンに適用し(該試薬は、該分析物と反応して、観察可能な結果を与える)、そして
- 該結果に従って該分析物を測定する
ステップからなる方法。
2.拒絶理由の概要
これに対して、原査定の拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「 本願発明は、下記の引用例1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。」
[引用例]
引用例1: 特表平1-502797号公報
引用例2: 特開昭63-096559号公報
引用例3: 特開昭56-125663号公報
引用例4: 特開平3-505261号公報
引用例5: 特表平3-505702号公報
3.引用例の記載事項
引用例1〜5には、下記の事項が記載されている。
(1)引用例1の記載事項
(1a) 液体アッセイを実施するエレメント(引用例1、請求項1)
液体アッセイを実施するためのエレメントであって、該エレメントは相互に連通するサンプルウェル及び反応容積部を規定するチャネル構造を含んでおり、該チャネル構造は該サンプルウェルに配置された液体サンプルウェルを毛管作用により該反応容積部内に吸引し且つ該反応容積部を充填するような形状を有しており、該反応容積部を充填後に該液体サンプルは該反応容積部内に残留する前記エレメント。
(1b) 複数の反応スペース(第63図)(22頁右下欄2行〜)
第63図は複数の反応スペースを有する反応スライドの第2の具体例304の平面図である。固体ベース30、内側に形成されたサンプル受容開口14を有するカバー10、及びカバー10とベース30との間に配置されたスペーサが設けられており、スペーサはU字形部材306及び2個のディバイダ308から形成されている。エレメント306及び308はカバー10がベース30から一定の間隔に配置されるように均一な高さである。 サンプルウェル64は下方に向かってU字形部材306内に延び、通路316を通って反応容積部310,312及び314の各々をに連通している。3個の反応容積部の各々は横方向(図面では頂部に向かって)に開口している。必要に応じて第13図に示すように外部LAM82を設けてもよい。各反応容積部に別々のLAMを設けてもよいし、単一のLAMで全3つの反応容積部を補ってもよい。
サンプルウェル64に液体サンプルを加えると、3つの全反応容積部は迅速に充填される。中心容積部312はその位置が通路316によっているのでやや速く充填する。必要に応じてサンプルウェル64を再配置してもよいし、あるいは反応容積部310,312及び314の各々を同一速度で充慎するように他の幾何学的形状を採用してもよい。
(1c) 複数の反応容積部(23頁右上欄5行〜)
第65図及び第66図は本発明の反応スライドの第4の具体例336を示しており、この場合、反応スライド336は平行充填により充填される複数の反応容積部を有している。反応容積部336は、プラスミノ-ゲンアクチベ-タアッセイを実施する場合に利用すると特に有用である。同様に第65図及び第66図はTPAアッセイの実施に有用な器具も示している。
反応スライド336では、ベース30、スペーサ及びカバー10は338に示すように切り取られ、第1及び第2の脚部340,342を形成している。カバー10はサンプルウェル64の開口と、第1の反応容積部350及び第2の反応容積部352に夫々連通するベント354の各々の開口とを備えている。スペーサはサンプルウェル64を形成し、且つ第1及び第2の分岐導管346,348を形成するべく分岐する共通導管344を形成するように切り取られ、分岐導管はそれぞれ反応容積部350及び352に連通している。前の具体例のいくつかと同様に、スペーサは反応容積部の近傍に内部導波路27を提供するように透明である。サンプルウェル64内に配置されたサンプルが共通導波路344を介して毛管作用により吸引され、分岐導管346,348を通って反応容積部350,352に分類されることが理解されよう。
第65図及び第66図は更に、第1の光源356、第2の光源358、第1の散乱検出器360、第2の散乱検出器362及び透過検出器364を示している。光シールド386は第2の反応容積部352が第1の光源356から輻射を受容しないように保護する。第1及び第2の光源356,358からの光は夫々第1及び第2の反応容積部350,352に入射し、該容積部内でその一部は90゜で散乱し、ベース30を透過した後、散乱光は360及び362で検出されることが理解されよう。透過検出器364は、反応容積部352内で散乱も吸収もされなかった光源358からの光の部分を検出する。
(1d) 遅延(23頁左下欄16行〜)
▲1▼ 「選択的流れ」
本発明の反応スライドの各種の具体例は「選択的流れ」を達成するための装置を備えてもよく、この流れによると、サンプルがサンプルウェルに配置されてから任意の所望の時間の間、サンプルウェルからの反応容積部の充填は遅延し得る。このような選択的流れは第67図に関して後述するような選択的ベンディングによって達成できるし、あるいは第68図及び第69図に関して後述するようなピンチバルブを使用することによっても達成できる。
▲2▼ 選択的ベンティング
選択的ベンティングでは、まず空気の下流出口を閉塞することにより毛管作用を阻止する。これは最も簡単には開口、カバーを通って鉛直方向にベンティングが得られるような反応スライドの具体例で得られる。第67図は代表的な反応スライド1の鉛直縦断面図である。反応スライド1はべントカバーアセンブリ370を含んでおり、ベントカバー370はカバーサポート372及びカバーサポート372に装着されたエラストーパッド374を含んでおり、該パッド374はLAMでなはない。エラストマ-パッド374は例えばシリコーン又はラテックスから作成され得る。構造的にみるとカバーサポート372は第6図に関して上述したLAMサポート52と類似しているが、パッド374はLAMでなく、カバーサポート372はパッド374をベント開口12に向かって絶えず偏倚させ、これを閉塞する点が異なっている。
サンプルウェル64に配置されたサンプルはパッド374がもはやベントを閉塞しなくなるような時点までサンプルウェル内に維持される。ベントのこのような閉塞解除はカバーサポート372を上昇させることにより得られる。このような上昇は手動、機械的あるいは電気機械的に実施され得る。
変形も可能である.例えは、カバーサポート372はベース30に装着する必要はなく、図面の右側に向かって伸延する直線状のエレメントの形態であってもよい。サポート372を把持してこれを上昇させるためには任意の適当な手段を使用することができる。このような場合、早期の変位を阻止するようにパッド374及びカバー10の間にやや接着性の結合を形成することが望ましい。あるいは、反応スライド1とは全く別に器具ハウジング内にベント力バーアセンブリを収容してもよい。反応スライドがハウジングが挿入されると、ベント力バーアセンブリはベントを覆うように下降され得る。
▲3▼ ピンチバルブメカニズム
第68図及び第69図はピンチバルブメカニズムを示す。カバー10の開口にはエラストマーディスク376が固定されており、ディスク376はサンプルウェル64及び反応容積部66を連結する導管26の上に直接配置されている。器具ハウジング内の制御メカニズムに装着され得るピンチロッド378は、サンプルウェル64からの流れを閉塞するべくエラストマーディスクをチャネル26内に下降及び押し当てるように鉛直方向に可動である。任意の所望の時点でピンチロッド378を上昇させることによりサンプルを反応容積部66に到達させることができる。
▲4▼ 選択的ベンティング又はピンチバルブメカニズム
選択的ベンティング又はピンチバルブメカニズム、又はその両者により選択的流れを導入すると、予め指定した時点で反応容積部に液体を送ることが可能であり、又は後述するように予め指定した時点である反応容積部から別の反応容積部に液体流を移動させることが可能である。また、例えは反応容積部を部分的に充填すると反応容積部内への液体の流れを停止させることも可能である。可能な用途としては以下に挙げるようなものがある。
A.前の反応が生じた後のような特定の時点で化学反応を開始することができる(例えは診断用アッセイ用)。
B.同様に後述するように2種の液体の混合が可能で且つ制御が容易である。
C.後述するように反応スペースのカスケーディングを制御できる。
D.2種の液体を混合することにより、希釈(逐次希釈)を実施することが可能である。(1e) 第73図(25頁左下欄19行〜)
第73図は第72図に示した順序と逆の順序のカスケーディングを概略的に示している。特に、サンプルウェル428に配置され且つ反応容積部430内で最初に反応した単一の初期サンプルはその後下流の反応容積部432,434の一方又は両方に送られ得る。第73図の選択的流れは上述のようにピンチパルブメカニズム又は選択的ベンティングにより得られる。
(1f)反応スライド(8頁左下欄1行〜)
第1図から第6図を参照すると、カバー10は薄いガラス若しくはポリマーシ一トでできており、通常は透明で、その中にはサンプル受容開口14とカバーの遠位端部近傍に細長い開口12とが形成してある。
オーバーレイ20は、薄いガラス若しくはポリマーシートでできており、通常は透明で、その中には切矢部が形成してあるが、前記切矢部は図に示すように、サンプル受容開口22と、反応スペース24と、反応スペース24とサンプル受容開口22とを連通する導管26とを形成する形状を有する。(反応スペース24は、カバー、オーバーレイ及びベースを組み立てると反応容積部になる。)テーパー形壁25が導管26と反応スペース24との間の転移部を形成するのが有利である。オーバーレイの遠位端部28は図に示すように29のところでは閉じている。
ベース30は、シート状のガラス若しくはポリマー材料でできており、通常は透明であり、カバー10もしくはオーバーレイ20のいずれかよりは幾分厚いのが通常である。
カバー10及びベース30はスペーサ60によって分離されており(第6図)、スペーサ60は.それぞれオーバーレイ20をカバー10に,オーバーレイ20をベース30に結合する2枚の接着剤層62の間に挟まれたオーバーレイ20から成る。
(1g) 液体吸収マトリックス(LAM)(9頁左下欄19行〜)
好ましくは、必要なときに反応スペースから液体を回収するために液体吸収マトリックス(LAM)を備える。このためには、第6図に示すような、LAM支持体52上に固定されるスポンジのようなLAMパッド51を包含するLAMアセンブリ50を備えることができる。LAM支持体52は、アーム53と、ベース30上に固定されたタブ54と、アーム53及びタブ54を連結する一体蝶番55から成る。アーム53を下向きに手で又は自動プレッサー(不図示)で押すと、LAM51はベント12に入り込み、反応容積部66中の液体に接触し、それによって液体を引き出す。カバー10がポリマー材料でできている場合には、この回収作用は、カバー10のベント12に隣接する部分が下向きにたわむことによって強化され得ることが分かった。このように吸引が強化されるのは、カバー10とベース30との間の距離が局所的に狭くなって、それによって狭い通路が形成されて毛管作用が強化されることによるものであることが分かる。カバー10は剛性若しくは可撓性の材料で製造することができるが、本具体例では、カバー10は可撓性材料で作製してあるのが好ましい。
(lh) 試薬含有層252(19頁右下欄3行〜)
第38図は本発明の反応スライド1の一部の縦断面図である。同図は反応容積部66の領域でべース30上に配置された試薬含有層252を示している。必要に応じて試薬含有層252は図面よりも更に左側に延びてテーパ状壁25、導管26あるいはサンプルウェル64まで延びてもよい。図例の反応スライドは横方向に開口する型(即ちカバー10にベント開口がない)であるが、試薬層252はあらゆる態様で使用され得る。
第39図は第38図の反応容積部の領域の部分鉛直断面図であり、第38図に示すような試薬含有層252の第1の具体例を示している。特に、試薬含有層252は試薬反応ゲル254の形態である。
第40図は試薬含有層の第2の具体例を示す同様の図である。特に、層252は薄い多孔性の親水性(半透過性)膜の上部層256を含んでいる。膜256は液体吸収マトリックス(LAM)の形態である第2の層258に付着されている。
(2)引用例2の記載事項
(2a) 固相法
試料体液に対する特定の結合検定を実施するための固相法に関し、そして更に詳しくはこの検定を実施するに当たってのクロマトグラフ技術の使用に関する(引例2の第4頁左上欄下から4行〜下から2行)。
(2b) 第3aおよび3b図
第3aおよび3b図は試料液体中の分析物の検出のための「ダイオード」(diode)と称される二経路装置を説明する。
第3a図に記載された装置では、中心溶媒バリヤー手段62により左手クロマトグラフィー溶媒輸送経路および右手クロマトグラフィ溶媒輸送経路が分かれる。装置の第一末端54をクロマトグラフィー溶媒中に浸漬すると、溶媒は、左手クロマトグラフィー溶媒輸送経路および右手クロマトグラフィ溶媒輸送経路に沿って第二末端60の方向に進む。第二帯域56に沈着した試料は、固定化された第二試薬を含有する第三帯域57に進み、ここで第二試薬と反応して固定化される。第一帯域55中に含浸した第一試薬は、第二帯域56に沈着した試料と反応することなく、第三帯域57で試料とともに固定化される。右手輸送経路に沿って進む第四および第五帯域58および59中の第三および第四試薬は、第一溶媒バフル63および第二溶媒バフル64によって形成される遅延された経路を通って、第三帯域57で固定化された第一試薬と反応して分析物の存在を示す検知可能なシグナルを興える。上記した遅延された輸送経路は、第一試薬と反応して検知可能なシグナルを興える第三および第四試薬と第一試薬との接触を第三帯域57前で最小限にするためである。
(2c) 第4aおよび4b図
第4aおよび4b図は、試料液体中の分析物の検出のために改良された三経路〔トリオ一ド(triode)〕装置(70)を説明する。装置は第3図のダイオード装置の改良をなすものであり、この装置が試料及び第一試薬が第三および第四試薬とのこれらの試薬が第三帯域(77)と接触する前に接触を防止する助けをなす第三クロマトグラフィー溶媒搬送経路を包含する点に改良がある。・・・
(2d) 第6aおよび6b図
第6aおよび6b図は、試料液体中の分析物の検出のために改良された四経路[テトロード(tetrode)]装置(90)を説明する。装置は第4図のトリオ一ド装置の改良をなすものであり、4個の溶媒輸送経路の配置が第一試薬と第三または第四試薬との早期接触を防止するだけでなく、第一試薬が試料が第三帯域(97)に接触する前に試料と接触するのを防止する働きをする点で改良されている。・・・
(3) 引用例3の記載事項
(3a) 乾式試験素子(2頁左上欄2行〜)
米国特許第3,992,158号は、血清の如き試験液の1滴に対する非常に正確な定量検定のために必要なあらゆる試薬を乾式試験素子が含む化学分析に対する新しい試みについて開示している。この試験素子は1層以上の試薬と展着層が設けられ、この展着層は、均等な濃度の溶解された即ち分散された試験液の物質が必要な化学的反応を行う試薬層に確実に達するように均等な多孔質であることが望ましい。その結果、検討中の液試料の濃度に予測可能に関連する検出可能な応答が均等に生じる。
(3b) 1滴の試験液、複数の検定(3頁左上欄7行〜)
本発明(引用例3)の目的は、各検定の反応間に干渉を生じることなく1滴の試験液に対して複数の検定を行うための多重試験装置を提供することにより従来技術の前記の問題を克服することにある。
(3c) 装置10(3頁左下欄18行〜)
第1図および第2図に、本発明(引用例3)の一実施態様により構成された装置10が示されている。装置10は望ましくは透明な支持部材12と、カバー部材14とを有する。
(3d) 試験素子(3頁右下欄10行〜)
支持部材12の内表面の中心部にはボス22が配置され、このボスは部材20の内壁面24と共にボスから半径方向に延存する複数の腔部を画成する。これらの腔部は複数個の個々の試験素子30、32、34、36(第1図)で充填され、この各々は試験液中に存在することを予期されたいくつかの試料の各々の検出のため必要なすべての試薬を含んでいる。中間部材20は装置10の各隅部にスペーサ40(第1図)を有し、試験素子により充填されない腔部の各部を充填する。
(3e) 毛管流(3頁右下欄20行〜)
素子30、32、34、36の頂面は、ボス22の頂面と共に、カバー部材14(第2図)の内面42から距離「S」だけ離間されている。この距離「S」はカバー部材14と、ボス22又は試験素子のいずれかとの間に導入された液体の毛管流を生じ、これにより液体移送帯域38を形成するため有効である。帯域38は、中間部材20の壁面24とスペーサ40によって第2図に示す如く垂直方向に区切られている。距離「S」は約25乃至500ミクロンの範囲内であることが望ましい。
(3f) 試験液の導入(4頁左上欄10行〜)
試験液の導入を許容するため、受取り帯域として作用する接近開口46がカバー部材14に形成されている。代替的に、この接近口はボス22を介して部材12の中心部に設けることができる。接近口の寸法および形状は、試験液液滴を受け入れるに適しかつそれが表面42とボス22の相方と接触することを保証しながら液滴を収容する如き様になっている。毛管作用空隙「S」の故に、このような接触は直ちに液滴を毛管作用の吸引力の作用下で分散させる。接近用開口46を画成する壁面の形状は重要でなく図示の如く円筒状でよいが、図示しない正六角形の如き断面形状が液滴を開口の中心におくよう作用する内側の隅部を提供する。試験素子からの試薬の相互汚染を防止するため、開口46はどの試験素子とも接近位置に配置されない。
(3g) 試験液の導入(4頁右上欄10行〜)
液体が面42とボス22の頂面と試験素子間に矢印48(第2図)に示す如く流れる時、補足された空気は外に出なければならない。捕捉された空気に対する通気手段を設けるため、中間部材20により画成される如きカバー部材14の帯域38の略々縁部に通気口50が形成される。各試験素子30、32、34、36はその上方に通気口50を有する。
(3h) 液体流(4頁右上欄18行〜)
帯域38における液体流は、捕捉された空気が追出される方向のみに生じ得る。このように、本発明の一特質によれば、開口50と中間部材20を含む制御手段が予め定めた複数の制御された流れの経路(第3図)に沿って液体が流れるよう制限し、そのため試験素子30、32、34、36の各々が前記経路のただ1つと整合するように作用的に配置される。経路は第3図においてそれぞれ52I、52II、52III、52IVとして識別され、開口46から特定の試験部材と関連する通気口50迄延長する。流れが試験素子30、32、34、36間でなくこれら素子に向かって進むため、1つの試験素子の試薬による他の試験素子の重要な汚染を防止するのはこの構成である。
(3i) 試薬層(4頁右下欄1行〜)
各試験素子30、32、34、36は種々の結合剤成分を有する1つ以上の試薬層を含むことが望ましい(第2図)。
(4) 引用例4の記載事項
(4a) 2チャンネルを含む液体移送装置(2頁左下欄11行〜)
一対の各チャンネル端部から共通の部位に通じ、液体を上記チャンネル端部に同時に添加した後に連続した一定時間に上記部位に液体を供給するように操作可能な、2チャンネルを含む液体移送装置。
(4b) 第1図;ろ紙タイプ(3頁左下欄18行〜)
第1図の実施態様は例えばろ紙タイプのような孔質材料を通しての毛管流を含む。同様な均一断面を有し、それぞれの個々の自由端部から接点30aまでの相対的に短いまたは長い長さを有する、第1チャンネル10aと第2チャンネル20aが存在する。第3チャンネル40aは接点から拡大断面の部分50aまでに伸びている。この孔質構造はチャンネルは異なる長さで液体リザーバー容器60aへ下方に存在する10aと20aと共通の垂直面内にあるように示される。
(4c)分析部位(3頁右下欄5行〜)
分析部位として役立つ、接点30aの孔質材料ゾーン31a円内に特異抗体を固定し、このゾーンの表面を血清分離層32aで覆うことによって、上記分析方法を実施するための装置は完成される。
(4d)流れに要する時間(3頁右下欄10行〜)
装置を使用する場合に、容器60aを希釈剤61aで満たし、分析サンプルを層32aに加え、チャンネルの自由端部を図示したように希釈剤中に浸せきさせる。目的の抗原は、ゾーン31aに移行し、抗体と結合し、希釈剤はチャンネル10aと20aを上昇してゾーン31aまで運ぶ。操作では、チャンネル流はゾーン31aに達するまでに時間を要する;このような流れに要する時間はチャンネル長さが異なるために種々であり、チャンネル10aは短いために20%迅速である;まだ希釈剤容器の容積、チャンネル材料吸収度および容器へのチャンネルの依存性は、このようなチャンネル内の流れがゾーン31aに達した後、チャンネル20a内の流れがゾーン31aに達する前に容器内の希釈剤レベルがチャンネル10aの下方にあるように定める。
(4e)インキュベーション期間(3頁右下欄23行〜)
この結果、操作の開始がゾーン31aでの血清/固定抗体インキュベーション期間を実質的に予め定める。この期間はチャンネル10a内の流れが抗体結合抗原を標識し、非結合血清量をチャンネル40aから領域50a(廃棄物リザーパーとして用いられる)へのフラッシュ(flush)を達成することによって終了し、さらに実質的な予定インキュベーション期間が経過した後に、チャンネル10a内の流れは終わるが、チャンネル20a内の流れはゾーン31aに達して、結合標識を検出し、他の成分を廃棄物リザーバーまでフラッシュする。
(4f)遅延機構(4頁左上欄7行〜)
この実施態様がチャンネル長さの変化に依存する遅延機構と、他方の流れが分析部位で有効になる前に一方の流れを終わらせるようにチャンネル/リザーバー結合の変化を配備する切換機構とを実証することが認められるであろう
(5)引用例5の記載事項
引用例5には、第1図を参照すると、試料受容容器15、各々がFCFD(蛍光毛管充填装置)または他の毛管充填センサーセル3からなる試験ステーションおよび上記容器と導管との間の液体連絡を提供する手段22からなり、上記導管は、使用の際上記容器からの試料が上記複数のセルに実質的に同時に供給されるように、上記セルの末端部分を連絡する、多分析物試験ビヒクルが記載されている。
引用例5記載のビヒクルは、各アッセイについての時間ゼロを容易に設定することを可能にする。液体連絡を提供する手段22は、液体の表面張力が、リガンドが漏れるのを防ぐ様な大きさを持つ。ビヒクルの回転は、表面張力を破壊し、液体が導管に放出される。(3頁右上欄6行〜右下欄12行)
FCFDセルは、典型的には、狭いギャップで分離された2枚のガラスからなる。1枚のガラスは、リガンドで被覆されており、導波管として作用する。別のガラスは、リガンド(競合アッセイ)または分析物(非競合標識アッセイ)に対する親和性を有する、可溶性蛍光試薬で被覆されている。試料をFCFDセルの一端に供給すると、試料はギャップ中に毛管作用により引き込まれ、試薬を溶解する。(2頁右下欄下から9行〜下から3行)
4.本願発明の概要
4.01産業上の利用分野
本発明は多重ゾーン装置による複数の分析物の測定方法、およびその方法に適した装置に関する。
4.02従来の技術
医学的診断方法における近年の発達は、主治医または患者自身による、体液中の特徴的分析物の検出による病状の診断を容易にしている。臨床像が複雑であったり、病気の原因がまだ正確に突き止められない場合は、複数の異なる分析物の測定を実施することがしばしば望ましいか、または必要である。したがって、例えば薬物乱用に関するテストの場合、可能性のある薬物が複数あり、またしばしば患者の病歴は不明なので、多数の薬物に対する別々のテストを実施しなければならない。同様の問題が、例えば腎臓や甲状腺の病気、または伝染病などの診断をする場合にも起る。
4.03ドライテスト
いわゆるドライテストは、分析物の迅速で簡便な測定について信頼できることが実証された。ドライテストにおいては、1または複数種類の乾燥形態の試薬を毛管状の担体に担持させ、この担体を液体サンプルと接触させてテストを行なう。試薬は液体サンプル中に溶解し、その分析物に特徴的なシグナル、例えば色の変化などを示す。このようなシグナルに基づき、分析が実施可能となる。単純なテストでは、複数の試薬を含有する毛細状担体を単一の試験要素上に配置し、それをすべての担体が液体サンプルによって濡れるようにサンプル中に浸す、ということも可能である。このような試験要素の例としては、複数の分析物、例えば白血球、密度、pH、等に関するテストゾーンを含む尿の試験片があげられる。
4.04免疫学的測定
しかし、このようにテストゾーンを一回浸すというような単純なやり方は、例えば抗原類、ハプテン類および抗体類などの分析物を免疫学的に測定する場合には不可能である。なぜなら、これらの測定は、多段階の連続反応を伴なう過程だからである。この場合、分析物を含む液体は、この液体とテストゾーンの間で種々の試薬について交換が起る複数のゾーンを含むテスト通路に沿って進む。テスト通路の終りに近い1つのゾーンで、分析物の存在を特徴づけるシグナルが得られ、分析される。
4.05複数の分析物の測定
EP-A-0 467 165に、大便のような糊状サンプルから複数の分析物を測定する方法と装置が提案されている。その装置は、溶離液適用ゾーン1つと、所望の測定のために液体と試験片の接触を確実にする複数の溶出液移動剤を含む。溶離液適用ゾーンと溶出液移動剤の間に、糊状サンプルを載せる領域がある。溶離液適用ゾーンとサンプル適用領域の間には、比較的異種成分からなる固体サンプルを効果的に溶出させるため溶離液の流れがサンプルによって相当遅延させられるように設計した、純粋溶離液の輸送通路がある。まず純粋溶離液が溶離液適用ゾーンに置かれ、そこからサンプル適用領域へ成分を変えることなく輸送される。サンプル適用領域においてサンプルから分析物を溶出させた後、今や分析物を含有する溶出液は、テスト担体(test carriers)に向かって広がっていく輸送ゾーンを通って流れるが、輸送通路は互いに分かれていない。EP-A-0 467 165に記述された方法は下記のような不利な点を有する。即ち、種々の試験片が、ひいては試薬もまた、溶出液と異なった時間に接触し、その結果、ある場合には異なった溶出液移動剤を用いると同一の試験片について異なった試験結果が得られることになる。このことは分析結果の定量的評価においては特に不利である。更に、この問題は溶出液移動剤の数が増えるほど増大する。
4.06発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、複数の試験要素上の異なったサンプル回収部位において本質的に同時でかつ均一な分析物の測定を可能とする、液体に含まれる複数の分析物の測定のための方法と装置を提供することにある。
4.07課題を解決するための手段
本発明者らは、上記の事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、下記の特定のものからなる分析物の測定方法、およびこの方法を実施するのに適切な装置により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
4.08分析物
本発明の方法による分析物は、とくに体液の構成要素、例えば尿、血液、血清、唾液、汗、血漿など、またはこれらに由来する流体(例:水、緩衝液またはアルコールで希釈したもの)、またはそれら以外の液体、例えば薬物含有量について試験するための粉剤の溶液などである。
好ましい体液は尿である。好ましい分析物は、ある体液におけるそれの存在、不在または濃度が、病気またはある身体症状を示す溶解した化学物質である。免疫学的に検出し得る分析物、例えばハプテン類、抗原類、抗体類は特に好ましいが、核酸やその他の生物特異的に検出可能な物質も好ましい。尿中の好ましい分析物はコカイン、大麻(ハシシュ)またはアヘン剤(ヘロイン)などの薬物、またはアルブミン、α-1M、β-NAGなどの腎臓パラメーターである。
4.09 本発明の装置
本発明の装置は、毛管活性的に相互に結合している少なくとも4つのゾーン、即ち2つまたはそれ以上の輸送ゾーンと2つまたはそれ以上のサンプル回収ゾーン、を有する。更に、この装置はサンプル適用箇所を含有する。
4.10 サンプル適用箇所
好ましくはサンプル適用箇所は、液体サンプルに対して化学的に不活性な毛管状の柔らかくけばのある布地(以後”フリース”と称する)または織物の上に位置する。このサンプル適用箇所は、適切なマーク、例えば丸印、X印、矢印などのような明白なシンボルを施すことによって、あるいは適用箇所を囲むフリースを覆うなどする構造的分離によって、場所をはっきりさせることが好ましい。
4.11輸送ゾーン
輸送ゾーンは、サンプル適用箇所からサンプル回収ゾーンまで延びている。本発明による装置は、輸送ゾーンを、サンプル回収ゾーンと同数持つことが好ましい。それによって、輸送ゾーンは少なくともサンプル回収ゾーンの近傍において空間的に相互に分離され、液体が1本の輸送通路から他の通路へ行けないようになる。輸送ゾーンは毛管状の材料で作られており、特に液体サンプルに対して化学的に不活性な毛管状フリースまたは織物で構成されている。輸送ゾーンとは、液体を吸収することのできる平らな材料がその上に延びている領域を意味する。この材料は、この領域の幅及び長さよりも小さい厚さを有する。液体サンプルは、輸送ゾーンの長さに沿って流れる。輸送ゾーンは相互に空間的に分離されているか、または、輸送ゾーン内の液体サンプルの各部分がそれぞれのサンプル回収ゾーンへ向かって動くように相互の境界が形づくられている。
4.12サンプル回収ゾーン
サンプル回収ゾーンは、試験要素と一組みとなって液体接触を可能としている、またはそのような組み合わせを取ることのできる、毛管活性の一領域を意味する。サンプル回収ゾーンが輸送ゾーンから液体を受けとるとすぐ、その液体は回収ゾーンに付いている試験要素へと進んで行くことができる。
4.13毛管容量
毛管容量は、輸送ゾーンとサンプル回収ゾーンの吸込み量によって規定される。この量は、適用された液体サンプルの量よりも小さいか、最大でもそれに等しい量である。毛管容量を超えて適用されたサンプル量は、サンプル回収ゾーンに付いている試験要素の追加吸込み量に等しいことが特に好ましい。
4.14輪送通路
特定量の液体がそれに沿って移動する、サンプル適用箇所とサンプル回収ゾーンの間の通路は、以下、輸送通路と称する。適用された液体サンプルは、これら輸送通路上では少なくとも分析物については変化をうけない。
4.15毛管活性な材料
合成繊維(例えばポリエステル)で作られたフリースは所望であればこれをセルロース繊維と混合することも可能であるが、毛管活性な材料として特に好ましい。このような材料は、試験片を作成する上でよく知られている。フリースの厚さは、好ましくは0.35から1.5mmの間である。
4.16遅滞ゾーン
本発明の本質的な特徴は、少なくとも1本の輸送通路に遅滞ゾーンが設けられていることである。遅滞ゾーンは輸送ゾーン内に位置することが好ましい。遅滞ゾーンの効果は、サンプル適用箇所から少なくとも1つのサンプル回収ゾーンへの液体の流れが、遅滞ゾーンが1つもない場合ほど速く進まないことである。この遅滞を獲得するための第1の目的は、異なるサンプル回収ゾーンへ延びている複数の輸送通路を同じ長さにすることである。第2の目的は、複数の輸送ゾーンの面積を等しくすることである。等しい長さの輸送通路を獲得するためには、サンプル適用箇所とサンプル回収ゾーンの間の最も短い連結通路に関して1本または数本の輸送通路を引き延ばすか、または1個または数個の疎水性障壁を導入する必要があるかもしれない。等しい容量を獲得するには、原則として次の措置が適切である:
(1)輸送ゾーンの材料の幅を、少なくとも1位置において他の輸送ゾーンに比較して(水平方向に)引き延ばす, (2)輸送ゾーンの材料の厚さを、少なくとも1位置において他の輸送ゾーンに比較して(垂直方向に)縮める、
(3)輸送ゾーンの材料を少なくとも1位置において他の輸送ゾーンに比べて圧縮することにより、輸送ルートの流動断面積を小さくする。
4.17これらの措置の組み合わせ
これらの措置は相互に組み合わせることも可能である。
特に、等しい容量を利用して所望の遅滞を確保することが不可能な場合(例えば多数のサンプル回収ゾーンが存在するなどして)は、1本または数本の輸送通路の流動断面積を小さくするか、または疎水性障壁を置くことを勧める。
サンプル適用箇所とサンプル回収ゾーンの間の最短連結通路が短かければ短いほど、もたらされる遅滞を大きくしなければならない。もし種々のサンプル回収ゾーンとサンプル適用箇所との最短連結通路の長さが等しいと、もたらされる遅滞もまたすべての輸送通路についてほぼ等しい規模のものとなるに違いない。
4.18試験要素
試験要素とは、ある分析物の存在または量を検出する手段を意味し、その手段により好ましい要素が試験片の形に構築される。これは、試験要素が、その上に吸収性材料を付着させ、更にその上に試験に必要な試薬を塗布した支持用薄片(ホイル)を有することを意味する。このような試験要素は、例えばEP-A-0 374 684に記述されている。このような試験要素とサンプル回収ゾーンとの接触は、試験要素のまだ何も試薬を含まないゾーンを介して行なうのが好ましい。もし本発明の装置によって分析物の測定を行なうのに、EP-A-0 374 684によるテスト担体(test carrier)を用いるつもりであれば、その明細書に記述されている開始ゾーン21を、本発明の装置のサンプル回収ゾーン3と接触させる。複数の分析物を同時に測定するためには、必要な測定と同数の試験要素をサンプル回収ゾーンと接触させる。
4.19本発明の装置の有利な点
本発明の装置の有利な点は、液体サンプルによって試験要素が溢れることが、遅滞ゾーンによって回避されることである。更に、複数のテスト担体と液体サンプルの同時接触は、いかなる試薬担体も他の担体より多くの液体を受け取ることはないという効果を有する。信頼性のある測定を実施するには、試験要素からの信号を試験要素を液体サンプルと接触させてから一定期間内に読むことがしばしば必要とされるので、液体サンプルの前部がすべてのサンプル回収ゾーンに同時に到達するという事実は本発明の主要な利点である。液体の同時到着によるもう1つの効果は、異なる分析ための複数の試験要素が必ずしもそれぞれのサンプル回収部位とマッチした順序で装置中に組み込まれていなくてもよく、むしろ交換可能なことである。このことは、使用者自身が要請された測定を行なう場合には特に重要である。均一湿潤化のさらなる利点は、複数の分析物の測定のための複数の試験要素が、要請に応じてあるプロフィール(概要)を示すように配置できることである。したがって、適切な試験要素を用いることにより、本発明の装置は例えば腎機能プロフィールを作成する、つまり腎機能に特徴的な幾つかの分析物を測定する、または薬物プロフィールを作成する、つまり複数のよく使われる薬物(薬物乱用)の測定をするのに使用できる。したがって本発明の装置は、例えば試験要素をハウジング内に包含するなどして試験要素をすでにサンプル回収ゾーンに接触させた形で販売することもできるし、またはハウジングがサンプル適用箇所、輸送通路及びサンプル回収ゾーンと共に一つのコンポーネントをなし、多数の試験要素は別の容器に納められていて分析を実行しようとする人間がハウジングに挿入できる形にして販売することもできる。
4.20 第1の実施態様(図1)
この装置にとって2つの実施態様が好ましいことが判明した。第1の形においては、サンプル回収ゾーン4はサンプル適用箇所2の回りに本質的に完全にまたは部分的に放射状の配置をなしている(図1参照)。特に望ましい場合においては、最短連結通路はすべて等しい長さである。輸送通路はまず放射対称的な毛管活性フリースを通って、次にサンプル吸収ゾーンと同じ量のフリースを通って延びる。後者のフリースは、それらの間で液体が流れないように設計されている。これらのフリースは、例えばサンプル適用フリースの末端からサンプル回収ゾーンへ延びるコネクターの形にすることもできる。このコネクターの材料は、好ましくはサンプル適用フリースと少しオーバーラップし、オーバーラップの部位で材料が圧縮された時にその部位の流動断面積が小さくなって遅滞ゾーン7として機能するようなるのがよい。このオーバーラップ部位は約1〜2mmの幅であることが好ましい。図1に示す例では、すべての輸送通路における遅滞は同じ規模である。もし液体サンプルが正確にサンプル適用箇所に分与されなかった場合、その液体は最短輸送通路の遅滞ゾーンに到達した後、まず、すべての遅滞ゾーンの毛管圧が等しくなるまで他の輸送通路の遅滞ゾーンに流出するであろう。次に、液体は本質的に同時にすべての遅滞ゾーンを通過するであろう。輸送通路に隣接する部分は皆同じ長さでかつ同じ組成なので、液体は複数の試験要素に同時に到達するであろう。サンプル適用箇所から遠い方のコネクター末端は、それ自身でサンプル回収ゾーンとなることができる。もしくは別のフリースをそのために設けることもできる。試験要素5は、サンプル回収ゾーン4と毛管接触をなしている。この実施態様では、試験片の溢れが特に防止されている。
図2はX-Yで切断した装置の断面を示す。
4.21第2の実施態様(図3)
操作が一層容易な第2の実施態様(図3参照)では、サンプル回収ゾーン4は、すべての試験要素5が同じ方向を向くように、想像上の一本の直線上に位置する。この場合、遅滞ゾーンの遅滞効果は、サンプル回収ゾーンがサンプル適用箇所2からそれぞれ異なる距離にある時は異なる。もし遅滞ゾーンがなければ液体は均一な毛管活性材料の中に迅速に拡散するので、液体はまずサンプル適用箇所に最も近いサンプル回収部位4/Iに到達し、試験要素へと送られていくであろう。したがって、遅滞はこの輸送通路において最大にしなければならない。他のサンプル回収部位4/IIおよび4/III がサンプル適用箇所2から離れれば離れるほど、遅滞の規模は小さくてすむだろう。またこの場合、輸送通路3/I、3/IIおよび3/III はフリース材料のコネクターを一部分通過することが望ましい。
4.22 ハウジング
輸送ゾーンとサンプル回収ゾーンを構成している材料はハウジングの中に収められている。このハウジングはサンプル適用箇所の領域に開口部9を有し、適用箇所の下にある材料に液体サンプルが適用できるようになっている。このハウジングは更に、試験要素を挿入して、試験要素のフリースまたは織物をサンプル回収ゾーンの材料と接触させるためのサンプル回収ゾーン領域にも開口部6を有する。液体サンプルを透過させない材料であればなんでもハウジング材として用いることができる。例えば、プラスチックや水分を吸収しないよう飽和させた紙などでハウジングを構成することができる。
4.23 最短通路Bを延ばして、遅滞が達成
図4は、サンプル適用箇所2からサンプル回収ゾーン4/I、4/IIおよび4/IIIへ向かう液体の流れにどのようにして遅滞が達成されるかを示す。サンプル回収ゾーン4を同時に濡すことは、通路Bが液体の最短輸送通路ではなく、通路A、B、およびCがほぼ同じ長さになるように他の通路に比べてBが延ばされていることによって達成されている。
4.24 輸送の領域が同じ面積
図5は、サンプル回収ゾーン4/I、4/IIおよび4/IIIを同時に濡すのに適切な毛管活性材料の形状がどのように決定されるかを示す。そこを通って液体サンプルが各サンプル回収ゾーンに流れていく、サンプル適用箇所とサンプル回収ゾーンとの間に位置するF1、F2およびF3領域は、同時湿潤のためには本質的に同じ面積でなければならない。
4.25 垂直方向の収縮
図6は、垂直方向の収縮(この場合はフリース材の絶え間ない軽い圧縮)によって液体流動の遅滞が達成される輸送通路の上にある材料を示す。その圧力は、相互に向かい合っている、または底で互い違いになっている横材および/または装置の蓋の部分によって作り出すことができる。横材の高さは、異なる輸送通路について異なる輸送遅滞を生じさせるのに使用することができる。
4.26圧迫性のオーバーラップ
図7は、構成材料がサンプル適用箇所とサンプル回収ゾーンでオーバーラップしている輸送通路の断面図を示す。装置の蓋と底の間に常に空間がある場合は、圧迫性のオーバーラップが達成されるとこれが次に遅滞を引起こす。この効果は、不活性材料を追加することによって増強できる。
4.27 疎水性障壁による遅滞
疎水性障壁による遅滞の場合、原則として想像し得る少なくとも2つの可能性がある。液体がそこを通過しなければならない吸収性の材料を一時的または永久的疎水化物質で含浸する[例:3%モイオル(Mowiol)/ポリビニルアルコール溶液を用いた幅5mmの針注入]と液体の流れは遅滞する。第2の方法では、より疎水性の高い材料(例:紙または膜)を輸送通路に組み込むことができる。このような疎水性障壁はサンプル適用箇所と試験片の第1の試薬ゾーンの間で、所望の位置に組入れることができる。
4.28最も近い輸送通路における液体輸送の遅滞 液体サンプル中に含有される複数の分析物を測定するための本発明の方法では、液体サンプルは単一のサンプル適用箇所に適用される。これは例えば液体をピペットで移すかまたは滴下することによって達成できる。適用する液体の量は、装置全体の毛管活性量にほぼ等しいかまたはこれより幾分多いことが好ましい。
液体は毛管輸送により輸送通路に沿って複数のサンプル回収ゾーンへ移動する。サンプル適用箇所に最も近い輸送通路における液体輸送の遅滞が、試験要素を同時に濡すことを可能とする。
4.29発明の効果
本発明の複数分析物の測定方法、およびこの方法を実施するのに適切な装置によれば、複数の分析物、特に尿、血液などの体液の構成要素を、本質的に同時に、かつ均一に測定することが可能となる。
4.30実施例
〔実施例〕
TI 532[ビンツァ一社(Binzer Company)]紙より図3の輪郭10をもつ紙片を切り取る。この紙片を、紙片と試験片5のために凹部を備えた、ポリエステルを射出成形して作ったハウジングの半部材8に組み込む。・・・
図1および2に示した装置を作成し、使用するにあたっても上記と同じ手順で行なうことができる。
5.対比
本願の請求項1の発明(以下、本願発明という)、および、引用例1に記載の発明(以下、引用例1発明という)、を対比する。
5.1 複数の分析物を測定
引用例1の第63図(前記(1b)参照)、第65〜66図(前記(1c)参照)、および、第73図(前記(le)参照)の反応装置は、いずれも、液体サンプル中に含有される複数の分析物を測定する装置である。
5.2 サンプル適用ゾーン
引用例1発明のこれらの装置は、いずれも、サンプル適用ゾーンを有している(第63図中のサンプルウエル64、第65図中のサンプルウェル64、第73図中のサンプルウェル428)。
5.3 サンプル回収ゾーン
本願発明において「サンプル回収ゾーン」とは、試験要素と一組みとなって液体接触を可能としている、またはそのような組み合わせを取ることのできる、毛管活性の一領域を意味する。「サンプル回収ゾーン」が「輸送ゾーン」から液体を受けとるとすぐ、その液体は回収ゾーンに付いている試験要素へと進んで行くことができる(前記4.12参照)。
引用例1発明のこれらの装置では、試験要素は、反応容積中のベース30上に試薬含有層252として形成されているといえるから(前記(lh)参照)、反応容積のテーパー形壁25のある領域が、本願発明の「回収ゾーン」に対応するといえる。
そうすると、引用例1の第65〜66図の装置は、該サンプル適用ゾーンから間隔を置いて配置された複数のサンプル回収ゾーンを有している(反応容積部350、352の、分岐導管346、348に接続している部分:第2図では導管26と反応スペース24との間の転移部)。
5.4 複数の輸送通路
そして、引用例1発明の第65〜66図の装置は、「該サンプル回収ゾーンのそれぞれを該サンプル適用ゾーンに連絡する複数の輸送通路」を有している(分岐導管346、348)。
5.5 遅滞手段
本願発明において、「遅滞手段」は、異なるサンプル回収ゾーンへ延びている複数の輸送通路を同じ長さにすることを含む(前記4.16参照)。
本願発明の実施例に示された装置は第3図のものである(前記4.30参照)。第3図では、もし遅滞ゾーンがなければ液体は均一な毛管活性材料の中に迅速に拡散するので、液体はまずサンプル適用箇所に最も近いサンプル回収部位4/Iに到達し、試験要素へと送られていく、したがって、遅滞はこの輸送通路において最大にしなければならない(前記4.21参照)。そして、第4図に示されるように、最短通路Bを延ばして、遅滞を達成することが記載されている(前記4.23参照)。
そうすると、引用例1発明の第65〜66図の装置は、「輸送通路」(分岐導管346、348)が同じ長さに図示されているから、この引用例1発明の装置は、「輸送通路」に「該サンプル適用ゾーンに適用された液体サンプルが該サンプル回収ゾーンのそれぞれに同時に到達するように配置された遅滞手段」が設けられているということができる。
なお、引用例1発明の装置において、反応容積部310、312、314の各々を同一速度で充填するように他の幾何学的形状を採用してもよいことも、示されている(前記(1b)参照)。これは、中心容積部312が、その位置が通路316によっているので他の容積部310、314に比較してやや速く充填する問題点を解決するものである(前記(1b)参照)。この記載からも、引用例1の装置では、液体サンプルが該サンプル回収ゾーンのそれぞれに同時に到達するように配置された遅滞手段をもうけているといえる。
5.6 毛管活性輸送手段
引用例1発明の装置は、毛細作用にチャンネル構造を含んでいる(前記(la)参照)。これは、本願発明の「毛管活性輸送手段」に対応する。
そして、上述したように、この引用例1発明の1毛管作用によるチャンネル構造」(「毛管活性輸送手段」)には、[サンプル適用ゾーン」、「サンプル回収ゾーン」、「輸送通路」および「該輸送通路の少なくとも1つに設けられた遅滞手段」が含まれる。
5.7 一致点
したがって、本願発明と引用例1発明とは、次の点で一致している。
[一致点]
液体サンプル中に含有される複数の分析物を測定する方法であって、
- サンプル適用ゾーン、該サンプル適用ゾーンから間隔を置いて配置された複数のサンプル回収ゾーン、該サンプル回収ゾーンのそれぞれを該サンプル適用ゾーンに連絡する複数の輸送通路及び該輸送通路の少なくとも1つに設けられかつ該サンプル適用ゾーンに適用された液体サンプルが該サンプル回収ゾーンのそれぞれに同時に到達するように配置された遅滞手段からなる毛管活性輸送手段を用意し、
- 分析物を含有する液体サンプルを該適用ゾーンに適用し、(ただし、毛管活性輸送手段は、測定しようとする分析物と反応する試薬を含まない)、
- 少なくとも2つの該サンプル回収ゾーンに後続する試薬を含有する試験要素に液体サンプルを移行させ、(該試薬は、該分析物と反応して、観察可能な結果を与える)、そして
- 該結果に従って該分析物を測定するステップからなる方法。
5.8 相違点
そして、本願発明と引用例1発明とは、次の点で一応相違する。
[相違点]
(相違点1)
「毛管活性輸送手段」について、本願発明においては、「繊維状」であると限定されているのに対して、引用例1においては、それが「繊維状」であることが記載されていない点。
(相違点2)
本願発明においては「試薬を含有する試験要素」をサンプル回収ゾーンに接触させるのに対し、引用例1発明では「試薬を含有する層」はサンプル回収ゾーンに隣接しているといえるものの、試験装置内の反応容積部のベース上に層形成されているもので、装置から独立した試験要素ではない点。
6.相違点についての検討
そこで、これらの相違点について検討する。
6.1 相違点1について
医学的診断方法において、いわゆるドライテストは、周知であり、毛管状担体が使用される。ドライテストで使用する毛管状担体としては、繊維状材料は普通である。
引用例4には、分析物を測定する方法について記載されていて、その方法に「2チャンネルを含む液体移送装置」を使用することが記載されている(前記(4a)参照)。その「2チャンネルを含む液体移送装置」には、「例えばろ紙タイプのような孔質材料を通しての毛管流を含む」ことが記載されている(前記(4b)参照)。このような材料を「チャンネル材料」と呼んでいる(前記(4d)参照)。
この「例えばろ紙タイプのような孔質材料」というのは、繊維状材料である。
また、「2チャンネルを含む液体移送装置」には、「チャンネル長さの変化に依存する遅延機構」を有することも記載されている(前記(4f)参照)。
そうすると、引用例1の装置の「毛管作用によるチャンネル構造」(「毛管活性輸送手段」)を繊維状のチャンネル材料により形成することは、当業者が格別の創意を要するということはできない。
6,2 相違点2について
医学的診断方法においていわゆるドライテストは周知であり、試験要素として毛細状担体に試薬を含有する試験片が使用される。この試験片は通常独立しているものである。
そして、乾式試験素子、血清の如き試験液の1滴に対する非常に正確な定量検定に乾式試験素子が使用されることが、引用例3にも記載されている(前記(3a)参照)。この乾式試験素子は独立した試験片であることは明らかである。これらの試験片は、サンプル液体と接触するようになっていることは明らかである。
試験素子が1滴の試験液に対して複数の検定を行う方法に使用されることがあることは、引用例3に記載されている(前記(3b)参照)。そして、引用例3には、流路52の唯1つと接触するように試験素子30、32、34、36が配置されることが記載されている(前記(3h)参照)。そして、引用例3の第3図の「帯域38」は、「回収ゾーン」に相当する。そうすると、引用例3の発明では、独立した試験片をサンプル回収ゾーンに接触させるように構成されているといえる。
したがって、引用例1発明における試験装置内1の反応容積部のベース上に層形成されているものに替えて、独立した試験片をサンプル回収ゾーンに接触させるように構成する点は、当業者が格別の創意を要するということができない。
6.3 相違点の構成に基づく効果
そして、これらの相違点の構成に基づいて、本願発明が格別の効果を奏するものということはできない。
7.むすび
したがって、本願の請求項1の発明は、引用例1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-04-02 
結審通知日 1999-04-16 
審決日 1999-04-20 
出願番号 特願平6-162503
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 祥子  
特許庁審判長 市川 信郷
特許庁審判官 小柳 正之
新井 重雄
発明の名称 複数の分析物の同時測定方法ならびに装置  
代理人 平木 祐輔  
代理人 石井 貞次  
代理人 早川 康  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ