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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1001988
審判番号 審判1998-14696  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-09-17 
確定日 1999-09-17 
事件の表示 平成6年 特 許 願 第 98980号「衛星非常用位置指示無線標識」拒絶査定に対する審判事件(平成7年11月21日出願公開、特開平 7-306256)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年5月13日に出願されたものであって、その請求項に係る発明は、平成6年5月23日付け、平成8年9月24日付け及び平成10年9月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「GPS等の電波測位システムが送信した測位用信号を受信し、受信情報を生成する測位用信号受信部と、
該受信情報に基づいて自己位置情報をリアルタイムに算出する演算処理部と、
該演算処理部による前記自己位置情報の算出の都度、送信制御のための送信制御信号を生成するとともに、自局識別情報に前記自己位置情報を付加した遭難情報を従来の衛星非常用位置指示無線標識のものと互換性のあるフォーマットで生成する送信制御部と、
該送信制御部による前記送信制御信号および前記遭難情報の生成の都度、該遭難情報を前記送信制御信号に基づいて送信する送信部とを備えてなることを特徴とする衛星非常用位置指示無線標識。」(以下、「本願発明」という。)
2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-113984号公報(以下、「引用例1」という)には、次のことが図面とともに記載されている。
「例えばGPS(・・・)などの衛星航法装置によって現在位置の経度緯度を測位する手段、上記衛星航法装置の測位データから漂流速度,進路を演算する手段、
着水時に自動的に各機能を動作させる手段、
現在位置の緯度経度データおよび過去の緯度経度データ(航跡データ)ならびに上記演算によって得た漂流速度,進路データと救難信号を合成して送信する手段、
を備えたことを特徴とする救難信号発信ブイ。」(特許請求の範囲)、
「[作用]
衛星航法装置が位置座標を測位し、この測位データから速度,進路が求められ、これらデータが救難信号と合成されて発信されるので、救助者は遭難者の現在位置および過去の位置(航跡)を知ることができると共に、将来の漂流位置の予測も可能となる。
[実施例]
以下、この発明の一実施例を図面を用いて説明する。第1図はこの発明の一実施例を示すブロック図で、・・・(4)は例えばGPS(・・・)などの測位衛星からの電波を受信する衛星受信回路、(5)は衛星受信用アンテナ、(6)は座標計算回路、(7)は航海情報計算回路である。
遭難時に遭難者がブイを海上に投入すると、着水判別回路(2)とシステム制御回路(3)とにより装置の電源供給回路がONとなり、バッテリ(1)から装置全体に電源が供給される。
そして、衛星受信回路(4)が動作して衛星からの電波を受信し、座標計算回路(6)によって現在位置の緯度経度座標が求められ、この座標データから航海情報計算回路(7)によって、漂流速度および進路が求められる。
そして、変調回路(8)により、座標計算回路(6)で求められた現在位置の座標データ、および着水時から現在までの航跡の位置座標データ、ならびに航海情報計算回路(7)で求められた漂流速度,進路データで電波が変調され、送信機(9)から発信される。
従って救助者は、発信された電波を受信して復調し、読み取ったこれらのデータにより容易に遭難者の捜索を行うことができる。」(2頁左下欄13行〜3頁左上欄6行)
同じく、特開平5-203720号公報(以下、「引用例2」という)には、次のことが図面とともに記載されている。
「【0005】この発明は、・・・自動的に遭難位置,遭難時間および遭難した船舶または航空機のコールサインを、遭難信号として伝送させることができ、また、遭難信号をより遠方まで届けることができるVHFデータリンクを用いた遭難救助システムを得ることを目的とする。」(2頁1欄41〜46行)、
「【0008】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1はこの発明の一実施例による遭難救助システムの構成図であり、図において、1は航空機、2は遭難船舶、3は巡視船、4は捜索救助機関(RCC:Rescue Coordination Center)、5は航空局、6は海岸局、7は航空局5及び海岸局6と捜索救助機関4とを結ぶ専用回線である。図3はこの発明で使用するデータフォーマツトを示す図であり、10は自己のコールサイン、11はGPS受信機より得られる位置情報、12はGPS受信機より得られる時計情報である。
【0009】例えば、船舶が遭難すると、自動又は手動で遭難信号を発生する。この遭難信号は図3に示す所定のデータフォーマツトにより形成されており、そのデータフォーマツトには、遭難した船舶のコールサイン10、GPS受信機より得られる位置情報11及び時計情報12の3つの情報が含まれている。
【0010】この遭難信号が、図1に示すように遭難船舶2からVHF帯の電波に乗せられて送信され、海岸局6に受信される。海岸局6は、遭難信号を受信するやいなや即時に専用回線7を用いて捜索救助機関4に連絡を入れる。その後、捜索救助機関4においては然るべき措置がとられ、遭難救助が開始される。」(2頁2欄14〜36行)
3.対比・判断
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを比較すると、引用例1の「衛星受信回路(4)」「座標計算回路(6)」「送信機(9)」「救難信号発信ブイ」がそれぞれ本願発明の「測位用信号受信部」「演算処理部」「送信部」「衛星非常用位置指示無線標識」に相当することは明らかである。また、引用例1に、「衛星受信回路(4)が動作して衛星からの電波を受信し、座標計算回路(6)によって現在位置の緯度経度座標が求められ、この座標データから航海情報計算回路(7)によって、漂流速度および進路が求められる。そして、変調回路(8)により、座標計算回路(6)で求められた現在位置の座標データ、および着水時から現在までの航跡の位置座標データ、ならびに航海情報計算回路(7)で求められた漂流速度,進路データで電波が変調され、送信機(9)から発信される。」との記載があるのは上記のとおりであり、該記載によれば座標計算回路(6)は、現在位置の座標データ等を求めているのであるから、現在のデータを「リアルタイム」に算出しているものと解することができる(なお、この点について必要であれば特開平6-118158号公報参照)。さらに、引用例1のものは「変調回路(8)」「システム制御回路(3)」により「現在位置の座標データ、および着水時から現在までの航跡の位置座標データ、ならびに漂流速度、進路データ」で変調して送信機(9)から発信するものであるから、上記回路は、遭難情報の生成の都度送信制御信号に基づいて送信するものと解することができるので、引用例1の「変調回路(8),システム制御回路(3)」は本願発明の「送信制御部」に相当する。したがって、両者は、「GPS等の電波測位システムが送信した測位用信号を受信し、受信情報を生成する測位用信号受信部と、該受信情報に基づいて自己位置情報をリアルタイムに算出する演算処理部と、該演算処理部による前記自己位置情報の算出の都度、送信制御のための送信制御信号を生成する送信制御部と、該送信制御部による前記送信制御信号および前記遭難情報の生成の都度、該遭難情報を前記送信制御信号に基づいて送信する送信部とを備えてなる衛星非常用位置指示無線標識」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:
本願発明のものは、自局識別情報に自己位置情報を付加した遭難情報を従来の衛星非常用位置指示無線標識のものと互換性のあるフォーマットで生成するのに対し、引用例1のものは、自己位置情報(現在位置の座標データ)を遭難情報として生成するものではあるが、自局識別情報を有しているかは不明であり、また従来の衛星非常用位置指示無線標識のものと互換性のあるフォーマットとしているかどうか不明である点。
上記相違点について検討すると、引用例2には、遭難救助システムに関し、「この遭難信号は図3に示す所定のデータフォーマツトにより形成されており、そのデータフォーマツトには、遭難した船舶のコールサイン10、GPS受信機より得られる位置情報11及び時計情報12の3つの情報が含まれている。」と記載されていることは上記のとおりであり、上記「位置情報11」「コールサイン10」が本願発明の「自己位置情報」「自局識別情報」に対応することは明らかなことであるから、遭難情報を、自己位置情報に自局識別情報を付加したものとすることは容易になし得ることである。また、該引用例2には、遭難情報を「所定のデータフォーマツトにより形成」することが記載されており、所定のデータフォーマツトが従来のものと互換性のあるデータフォーマツトも含むことは明らかであるとともに、従来の衛星非常用位置指示無線標識のものと互換性のあるものにした場合に利便性が高まることは明らかなことであるから、遭難情報を従来のものと互換性のあるデータフォーマツトにする点は当業者が任意に設計し得る事項にすぎないので、結局引用例2の遭難情報の形式を引用例1に適用することにより上記相違点の技術的事項とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
そして、本願発明が奏する作用効果は引用例1,2に記載された発明から予測しうる程度のものである。
4.むすび
したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-06-24 
結審通知日 1999-07-06 
審決日 1999-07-14 
出願番号 特願平6-98980
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 雅人  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 島田 信一
森 雅之
発明の名称 衛星非常用位置指示無線標識  
代理人 河合 信明  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  

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