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審決分類 |
審判 全部申し立て 特39条先願 H01L 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1002217 |
異議申立番号 | 異議1999-70219 |
総通号数 | 3 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-12-17 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-25 |
確定日 | 1999-09-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2777791号「石英ガラス製ウェハボート搬送治具」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2777791号の特許を維持する。 |
理由 |
特許2777791号に係る本件発明についての出願は、昭和59年7月9日に特許出願した特願昭59-141614(以下、「原々出願」という。)の一部を平成6年11月25日に特願平6-314286号として新たな特許出願(以下「原出願」という。)とし、平成8年6月28日に特願平8-187007号として更に新たな特許出願として、その発明について平成10年5月8日に特許の設定登録がなされた後、その特許について、平成11年1月25日に特許異議申立人信越石英株式会社より特許異議の申立がなされたものである。 2,特許異議申立について ア、本件発明 本件特許に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「半導体ウェハを載置したウェハボートを炉芯管へ出し入れする際に用いる石英ガラス製ウェハボート搬送治具において、管状の石英ガラスの一端部に縦断面形状が円弧状及び直線状をなす切欠部を設けてウェハボート保持部を形成し、前記ウェハボート保持部の最も曲げモーメントが大きくなる部分及びその近傍をウェハボート保持部の全長の1/4〜1/2にわたって他の部分より肉厚にし、その肉厚の部分以外は該搬送治具全体を実質的に同じ厚みにしかつ肉厚部分の該搬送治具の長さ方向の両端をいずれも厚さが減少するように傾斜した形状にしたことを特徴とする石英ガラス製ウェハボート搬送治具。」 イ、申立ての理由の概要 特許異議申立人は、甲第1号証(特公平6-30349号公報)、甲第2号証(甲第1号証の原出願である類似意匠登録願59-5533号の願書及び図面)、甲第5号証(特開昭58-111342号公報)をもとに、本件発明は甲第1号証記載の発明と同一であるから特許法第39条第1項の規定に違反してなされたものであり、また、甲第3号証(本件特許の原出願である特願平6-314286号の願書、明細書及び図面)、甲第4号証(特開昭61-20319号公報、本件特許の原々出願の公開公報)、甲第5号証及び甲第6号証(「実験室のガラス細工」昭和33年12月25日共立出版株式会社発行、第88〜91頁)をもとに、本件特許は原々出願にない事項を要件として分割出願されているから出願日の遡及を受けることができず、そのために本件発明は甲第4〜6号証記載の技術内容より当業者が容易になしえた発明であるから特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件特許は取り消されるべき旨主張している。 ウ、甲各号証に記載の発明 甲第1号証は、意願昭59-5533号(甲第1号証に記載されている「実願昭59-5533」は誤記である。)より出願変更した特願昭63-129264号の公告公報であり、平成7年7月28田こ特許第1952761号として特許登録された。その発明の要旨は、甲第1号証の特許請求の範囲請求項1に記載された次の通りのものである。 「【請求項1】円筒状石英ガラスの一方の端部側が軸方向に切り欠かれてウェーハボート保持部が形成されたウェーハ熱処理搬送治具において、該管の中央側の断面弧状の切欠き開始部及びその近傍の肉厚を、他の部分より厚肉に形成して成るウェーハ搬送用治具。」 甲第2号証には、石英ガラス製ウェーハ搬送用治具の正面図、平面図、底面図、断面図及び使用状態を示す参考図が記載されている。 甲第3号証には、本件特許の原出願の願書と明細書及び図面が示されている。 甲第4号証は、本件特許の原々出願の公開公報である。 甲第5号証には、ウェハボートを搬送するフォークを、切り欠いた載置部と円筒状部とを分割して用意し、それらの溶接によって製造するようにしたことなどが記載されている。 甲第6号証には、ガラス材の溶接方法について記載されている。特に異径、異肉厚のガラス管の溶接方法については、「ピペットの胴と足の接着、カルシウムの胴と足のつなぎのようガラス細工では太い管と細い肉厚管と接着する必要がしばしば起きる。太い管は細くし、厚肉管は中肉管に、細い管は開口し、薄肉管には中肉に直し・・・」(第91頁第2〜5行)という記載がある。 エ、当審の判断 (特許法第39条第1項違反の主張について) 本件発明と特許登録された甲第1号証の発明を対比すると、甲第1号証記載の発明は、本件発明における必須の構成要件である「ウェハボート保持部の全長のウェハボート保持部の全長の1/4〜1/2にわたって他の部分より肉厚にする」点及び「その肉厚の部分以外は該搬送治具全体を実質的に同じ厚みにしかつ肉厚部分の該搬送治具の長さ方向の両端をいずれも厚さが減少するように傾斜した形状にした」点の構成を備えていない。 したがって、本件発明と甲第1号証記載の発明とは同一とは認められないから、本件発明が特許法第39条第1項の規定に違反してなされたものであるということはできない。 なお異議申立人は、肉厚部からの厚さを減少させて傾斜した形状を有することは、甲第5号証に示されているような溶接によって肉厚管と肉薄管とを接合させてその後に切欠きを行うという方法が甲第1号証記載の治具の製法に採用されているとみられるところ、この方法によれば、必ず肉厚部からの厚さが減少して傾斜した形状が生ずるから、このような形状は甲第1号証の発明に当然に含まれているものであると主張している。しかしながら、甲第6号証に示されているような肉厚の傾斜を生じるような溶接方法もガラス管の接合方法の1つではあっても、様々な接合方法や厚肉形成方法がある中で、甲第1号証中には、何らかの接合方法を用いたかどうかという点はもとより、肉厚部の形成方法についてなんらの示唆もされていないので、甲第1号証記載の発明の肉厚形成方法を特定して肉厚の傾斜を有する形状を当然に含むものとすることはできない。 (特許法第29条第2項違反の主張について) 本件発明の「その肉厚の部分以外は該搬送治具全体を実質的に同じ厚みにしかつ肉厚部分の該搬送治具の長さ方向の両端をいずれも厚さが減少するように傾斜した形状にした」という部分について説明した、発明の詳細な説明における「肉厚部3以外は搬送治具本体1の全体を実質的に同じ厚みにし、かつ肉厚部3の搬送治具本体1の長さ方向の両端4,5をいずれも厚さが減少するように傾斜した形状にしている。」という記載は、特許異議申立人主張のように、本件特許の原出願の発明の詳細な説明には確かにないが、原出願及び原々出願(甲第4号証)の図面の第1〜2図をみると、ウェハ搬送治具の上面図及び断面図において、肉厚の厚さが肉厚部の両端において減少し傾斜した形状が示されていることは明瞭に認められる。 したがって、本件特許はこの点において分割の要件を満たしており、出願日の遡及は受けられるものと認められる。よって、甲第4号証は本件特許の出願前に頒布された刊行物に該当せず、さらに、本件発明が甲第5〜6号証刊行物記載の技術内容に基づいて当業者が容易になしえたということはできない。 3,むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-09-06 |
出願番号 | 特願平8-187007 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01L)
P 1 651・ 4- Y (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮澤 尚之 |
特許庁審判長 |
内野 春喜 |
特許庁審判官 |
橋本 武 左村 義弘 |
登録日 | 1998-05-08 |
登録番号 | 特許第2777791号(P2777791) |
権利者 | 東芝セラミックス株式会社 |
発明の名称 | 石英ガラス製ウェハボート搬送治具 |
代理人 | 服部 平八 |