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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60H
管理番号 1002227
異議申立番号 異議1999-71730  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1987-07-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-06 
確定日 1999-09-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第2820681号「車両用冷房装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定ずる。 
結論 特許第2820681号の特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2820681号に係る発明についての出願は、昭和61年2月24日に特許出願し、平成10年8月28日にその発明について特許の設定登録がなされた後、その特許について、特許異議申立人 青木恭光 より特許異議の申立てがなされたものである。
2.特許異議申立てについて
i.本件発明
特許第2820681号に係る発明の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載されたとおりの次のものと認められる。
「車両エンジンによって駆動される冷凍サイクルの第1蒸発器、この第1蒸発器に向かって送風する第1送風機、および前記第1蒸発器で冷却された冷風を車室内に吹き出すための第1吹出口を有し、この第1吹出口から車室内に前記冷風を吹き出すことによって車室内を冷房するように設けられた第1冷却ユニットと、前記冷凍サイクルに設けられた第2蒸発器、前記冷凍サイクルの運転時において前記第2蒸発器によって蓄冷可能なごとく構成された蓄冷材、少なくとも前記第2蒸発器と前記蓄冷材とを収納し、空気の吸込口および第2吹出口が形成されたケース、および前記吸込口から前記第2吹出口にかけて、前記蓄冷材に沿うようにして前記ケース内に送風する第2送風機を有し、前記第2吹出口から車室内の所定区域に冷風を吹き出すことによって前記所定区域を冷房するように設けられた第2冷却ユニットと、
前記第2蒸発器へ前記冷凍サイクルの冷媒を供給する状態と供給しない状態とを切り換える弁と、前記第2蒸発器への冷媒供給を指示する蓄冷開始指示手段と、
前記第2送風機の起動を指示する冷房開始指示手段と、
前記蓄冷開始指示手段からの信号に基づいて、この蓄冷開始指示手段が前記第2蒸発器への冷媒供給を指示したとき、前記第2蒸発器へ前記冷凍サイクルの冷媒を供給するように前記弁を制御して前記蓄冷材を蓄冷させる蓄冷制御手段と、
前記冷房開始指示手段からの信号に基づいて、この冷房開始指示手段が前記第2送風機の起動を指示したとき、前記第2送風機を駆動させて前記蓄冷材による冷風を前記第2吹出口から前記車室内の所定区域に吹き出す冷房制御手段とを備え、
前記ケースは車室内の側壁部に設けられ、
前記吸込口は、前記ケースの前面の下方部に形成され、
前記第2吹出口は、前記ケースの前面の上方部に形成されたことを特徴とする車両用冷房装置。」(以下、「本件発明」という。)
ii.特許異議申立て理由の概要
特許異議申立人 青木恭光 は、本件発明は、本件発明の出願日前に頒布された、甲第1号証(実願昭56-154024号(実開昭58-58919号)のマイクロフィルム。)、甲第2号証(実願昭58-22105号(実開昭59-129064号)のマイクロフィルム。)及び甲第3号証(実願昭57-95006号(実開昭58-196781号)のマイクロフィルム。)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は、特許法第113条第2号に該当すると認められるので、取り消されるべきものである旨主張している。
iii.異議申立人が提出した甲各号証記載の発明
特許異議申立人が提出した甲第1号証には、車両用冷房装置に関して、図面とともに、「蒸発器と並列に蓄冷式熱交換器を設け、同蓄冷式熱交換器に、一部が車室内に突出し、他の部分が蓄冷式熱交換器内に挿入され、内部に高温側で蒸発し、低温側で凝縮する作動流体を封入したヒートパイプを設けたことを特徴とする車両用冷房装置。」(実用新案登録請求の範囲)であること、「エンジン1で駆動されるコンプレッサ2で圧縮された高温・高圧の冷媒ガスは車室外設置のコンデンサ3で放熱、凝縮し、レシーバ4を通り、膨張弁5により絞られて減圧し、車内設置のエバポレータ
6に入り蒸発し、車内より吸熱して車室を冷房し、コンプレッサ2に吸入される。車内ファン7はエバポレータ6の冷風吹出し用である。」(第1頁第15行〜第2頁第3行)こと、「エンジン停止中においても冷房することができる車両用冷房装置を提供することにある。」(第2頁第18行〜同第19行)こと、「第2図において、5は膨張弁、6は蒸発器、7は車内ファン、8は冷媒配管であり、これらは、図示されていないコンプレッサ、その他の機器とによって、第1図に示したような公知の冷房装置を構成している。9は、膨張弁5の入口側と蒸発器6の出口側との間に操作弁14を介して接続された分岐管で、途中に膨張弁5aとフィン付熱交換器13を設けている。12は車内運転席10あるいは寝台席11等の上部天井付近に設けられた蓄冷式熱交換器で、上記フィン付熱交換器13が内部に設けられている。15は内部に高温側で蒸発し、低温側で凝縮する作動流体を封入したフィン付きのヒートパイプで、一部は車室内に突入し、他の部分は蓄冷式熱交換器12内に挿入されている。16は蓄冷式熱交換器12に取付けられた温度検出器である。上記構成において、エンジン稼動時、必要に応じて操作弁14を蓄冷式熱交換器側に冷媒が流れるように開け、蓄冷操作を行なう。充分蓄冷されたら温度検知器16により、操作弁14を冷房運転側に切換える。ここで、冷房運転と蓄冷運転とをパラ運転するか、完全にどちらか一方に切換えて運転するかは、冷房負荷と冷房能力との関係如何で、任意に選ぶことも可能である。」(第3頁第12行〜第4頁第17行)こと、が記載されている。そして、第1図には、エンジン1に1駆動されるコンプレッサ2を備えた冷房装置の構成図が、第2図には、運転席10と寝台席11の上部天井付近に設けられた蓄冷式熱交換器12を操作弁14を介して、冷房装置の蒸発器6の冷媒配管8に接続した構成図が、示されている。
同じく甲第2号証には、冷凍庫内に冷凍サイクルの冷却器及び蓄熱冷却器を並設し、冷却器及び蓄熱冷却器を交互に切換えて、冷蔵庫内を一定の温度に保冷する冷凍車に関して、図面とともに、「冷凍車内の冷却器及び蓄冷却器を並列にして設け、これを庫内温度検出器(庫内サーモ又は温度センサーともいう)によって切換え作動せしめて、走行及び停車時、常に一定の保冷温度に制御して生鮮食品や冷凍食品の保冷温度の温度管理をし、信頼性及び安全性の向上を図ることを目的とする冷凍車を提供するものである。」(第4頁第3行〜同第9行)こと、「第1図及び第2図において、符号1は、自動車の車体であって、この車体1には断熱材によって箱形に形成された冷凍庫2が設置されており、この冷凍庫2内には被冷凍品を収納する冷凍室3が形成されている。又、上記冷凍庫2には、第2図の系統線図に示されるように、冷凍サイクルIが組込まれている。即ち、この冷凍サイクルIの冷媒回路4にはアキュームレータ5を備えた冷媒圧縮機6が設置されており、この冷媒圧縮機6の吐出側の上記冷媒回路4には冷却用ファン7を有する凝縮器8が接続されている。又、この凝縮器8の下流側の冷媒回路4には受液器9及び膨張弁10が順に配設されており、この膨張弁10の下流側の冷媒回路4と上記アキュームレータ5との間には各冷媒通路11、12が分岐して並列に設けられている。さらに、この各冷媒通路11、12には、冷却用ファン13を備えた冷却器(蒸発器)14及び冷却用ファン15を備えた蓄熱冷却器(蓄熱蒸発器)16が並設されており、この蓄熱冷却器16は、補助冷却器16a及びブライン17を内蔵したブラインタンク16bで構成したものである。一方、上記冷却器14及び蓄熱冷却器16の上流側の各冷媒流路11、12には各電磁弁18a、18bが付設されており、この各電磁弁18a、18bには、これを交互に開閉し得るようにした庫内温度検出器(庫内サーモともいう)19が、上記各電磁弁18a、18bを連動し得るようにして上記冷凍室3内に設けられている。又、上記冷却器14及び蓄熱冷却器16の下流側の各冷媒流路11,12には、各逆止弁20a、20bが液バックしないようにして設けられており、上記凝縮器8の上流側と上記冷却器14の上流側との間には電磁弁(開閉弁)21を備えた保安回路21が付設されている。」(第5頁第2行〜第6頁14行)こと、「次に、上記冷凍室3が一定の保冷温度に達し、これを庫内温度検出器19が検出して作動すると、上記電磁弁18bは開弁すると、同時に、他方の電磁弁18aは閉弁する。しかして、上記膨張弁10で減圧された液冷媒は上記電磁弁18bを通って蓄熱冷却器16に移送され、この蓄熱冷却器16の液冷媒は、冷媒用ファン15によって熱交換されて、再びガス冷媒となり、上記アキュームレータ5へ環流されるようになっている。又、熱交換器によって冷却した蓄熱冷却器16は、ブライン17に蓄冷して一定の保冷温度に冷却する。そして、この一定の保冷温度に達すると、これを上記庫内温度検出器19が検出作動して、上記電磁弁18aが開弁すると、同時に、上記電磁弁18bは閉弁する。このようにして上記各電磁弁18a、18bは交互に開閉することにより、冷凍室3内を一定の保冷温度に保持される。」(第7頁第15行〜第8頁第11行)こと、が記載されている。そして、図面の第1図には、車体1の冷凍室3内の前壁側に、冷却器14と蓄冷冷却器16とが設置されたものが窺える。また、第2図には、冷却器14の冷媒回路に電磁弁18aを、蓄熱冷却器16の冷媒回路16に電磁弁18bを備えた冷凍サイクルの系統図が示されている。
同じく、甲第3号証には、冷凍車用蓄冷式冷凍機で、強制対流式によるクーリングユニットの通風構造に関して、図面とともに、「第1図〜第3図において、1は金属製のブラインタンクで、その内部にはブライン水およびブライン水を凍結させる冷凍サイクルの蒸発器(図示しない)が収納されている。」(第2頁第10行〜同第13行)こと、「ブラインタンク1はボデー4の前壁4aとの間に通風路が構成されるように設置され、更にダクト3によってブラインタンク1の全面に通風路が構成されるようになっている。ファンユニット2はボデー上壁に設置されている。6はクーリングユニット2の吹出口で、ファンユニット2の吹出口と一体になっている。5はクーリングユニットの吸込口で、クーリングユニットの下部に設けられている。 上記構成おにいて作動を説明する。昼間の配送時はファンユニット2を車両バッテリ電源(例えばDC12V.DC24V)にて作動させ、強制対流冷却を行う。この時、庫内の空気は第2図に示すように吸込口5よりクーリングユニット内に吸込まれ、ブラインタンク1の全面で熱交換されながら通風路を上昇し、ファンユニット2の吸込口2aに吸込まれ、吹出口6より冷風となって庫内に吹出される。」(第3頁第1行〜同第18行)こと、が記載されている。そして、図面には、ブラインタンク1を内部に有するダクト3付近の強制対流時と自然対流時における冷気の流れが示されている。
iv.対比・判断
そこで、本件発明と甲第1号証に記載されたものとを対比し、検討する。
甲第1号証に記載されたものは、運転手が仮眠を要する場合に、車室の運転席あるいは寝台席を冷房するようにする車両用冷房装置であるから、本件発明の車両用冷房装置の技術分野と共通する。
そして、甲第1号証の第1図に示された冷房装置と第2図のエバポレータ6の冷風吹出し用車内ファン7からなる構成、第2図の蓄冷式熱交換器12のフィン付熱交換器13へ前記冷房装置の冷凍サイクルの冷媒を操作弁14によって供給して蓄冷操作を行なう構成は、各々、表現上には差異があるものの、その機能からして、本件発明の「第1冷却ユニット」、「第2蒸発器へ(第1冷却ユニットの)冷凍サイクルの冷媒を供給する状態と供給しない状態とを切り換える弁と、前記第2蒸発器への冷媒供給を指示する蓄冷開始指示手段」に相当するから、両者は、
「車両エンジンによって駆動される冷凍サイクルの第1蒸発器、この第1蒸発器に向かって送風する第1送風機、および前記第1蒸発器で冷却された冷風を車室内に吹き出すための第1吹出口を有し、この第1吹出口から車室内に前記冷風を吹き出すことによって車室内を冷房するように設けられた第1冷却ユニットと、
前記冷凍サイクルに設けられた第2蒸発器、前記冷凍サイクルの運転時において前記第2蒸発器によって蓄冷可能なごとく構成された蓄冷材、少なくとも前記第2蒸発器と前記蓄冷材とを収納したケースを有し、車室内の所定区域を冷房する第2冷却ユニットと、 前記第2蒸発器へ前記冷凍サイクルの冷媒を供給する状態と供給しない状態とを切り換える弁と、
前記第2蒸発器への冷媒供給を指示する蓄冷開始指示手段と、
を備えた車両用冷房装置。」
において一致しているといえる。
しかし、次の点で相違している。
相違点▲1▼
本件発明が、第2蒸発器と蓄冷材とを収納したケースに、「空気の吸込口および第2吹出口が形成され」ているのに対して、甲第1号証に記載されたものには、空気の吸込口および吹出口が形成されていない点。
相違点▲2▼
本件発明において、「前記吸込口から前記第2吹出口にかけて、前記蓄冷材に沿うようにして前記ケース内に送風する第2送風機を有し、前記第2吹出口から車室内の所定区域に冷風を吹き出す」ようにしているのに対して、甲第1号証に記載されたものには、送風機がなく、ヒートパイプで車室空間と蓄冷式熱交換器との熱移送によって運転席あるいは寝台席に冷気を送っている点。
相違点▲3▼
本件発明は、「前記第2送風機の起動を指示する冷房指示手段」を備えているのに対して、甲第1号証に記載されたものには、このような手段が記載されていない点。
相違点▲4▼
本件発明が、蓄冷材を蓄冷させる際に、「蓄冷開始指示手段からの信号に基づいて、この蓄冷開始指示手段が前記第2蒸発器への冷媒供給を指示したとき、前記第2蒸発器へ前記冷凍サイクルの冷媒を供給するように前記弁を制御して前記蓄冷材を蓄冷させる蓄冷制御手段」を有しているのに対して、甲第1号証には、このような信号に基づいた制御手段が示されていない点。
相違点▲5▼
本件発明が、「前記冷房開始指示手段からの信号に基づいて、この冷房開始指示手段が前記第2送風機の起動を指示したとき、前記第2送風機を駆動させて前記蓄冷材による冷風を前記第2吹出口から前記車室内の所定区域に吹き出す冷房制御手段」とを備えているのに対して、甲第1号証には、このような冷房制御手段を備えていない点。
相違点▲6▼
本件発明は、「前記ケースは車室内の側壁部に設けられ、前記吸込口は、前記ケースの前面の下方部に形成され、前記第2吹出口は、前記ケースの前面の上方部に形成され」ているのに対して、甲第1号証に記載されたものは、ケースは、車内上部天井付近に設けられ、ケースに吸込口、吹出口が形成されていない点。
そこで、この相違点を検討する。
相違点▲1▼について
本件発明は、特許明細書の〔発明の作用効果〕の欄に記載されているように、「冷房開始指示手段にて第2送風機の起動を指示したときは、第2送風機が作動し、車室内の側壁部に設けられたケースの前面下方部の吸込口からこのケース内に空気が吸い込まれ、この吸い込まれた空気が蓄冷材により冷却された後、ケースの前面上方部の第2吹出口から吹き出されて、上記所定区域内に強制対流される。これによって、上記所定区域全体が効率良く冷房される。」ということにあり、本件発明の第2吹出口は、送風機によって冷風を車室内の所定区域に吹き出し、所定区域を効率良く冷房するためのものであり、この第2吹出口は、車室内に設けられた他の第1吹出口とは区別されたものである。
甲第3号証には、ダクト3内に蓄冷材であるブライン水と冷凍サイクルの蒸発器を収納させたブラインタンク1を配設し、ファンユニット2ダクト3の通風路を設けたものが示され、ダクト3の上下部が空気の吸込口および吹出口となっているものが示されており、このダクト3が本件発明のケースに相当するものとしても、このブラインタンク1は冷凍庫内の全体を冷却するものであり、ここに示された空気の吸込口と吹出口は、単に、冷気を循環させて庫内を保冷温度にするだけのものである。
したがって、甲第3号証には、庫内の所定区域を効率良く冷房するために冷風を送るための空気の吸込口と吹出口が記載されているといえない。
また、同じように、甲第2号証には、冷凍室3に冷却器14と蓄熱冷却器16とを設置したものが記載されてはいるが、冷凍室3内の所定区域に冷気をおくるための空気の吸込口および吹出口を設けた構成の記載はされていない。
相違点▲2▼について
本件発明は、上記したように、車室内の所定区域に、第2送風機を起動して第2吹出口から冷風を吹き出し、所定区域を効率良く冷房するようにしたものであり、甲第2号証には、ブライン17の蓄冷材に蓄冷し、ファン15によって熱交換させるものが、また、甲第3号証には、ブラインタンク1に蓄冷し、ファンユニット2によってブラインタンク1に沿うようにして冷風を吹出すものが、示されてはいるが、これらは、庫内全体を一定の保冷温度に冷却するためのものであって、車室内の所定区域を、車室内を冷房する他の送風機、吹出口とは別の第2送風機と第2吹出口からの冷風によって冷房するものは示されていない。
相違点▲3▼について
甲第2号証に示されたファン15、甲第3号証に示されたファンユニット2は、庫内に冷風を吹き出し、庫内全体を保冷するための送風機であり、この送風機の起動を指示する手段があるとしても、本件発明の第2送風機の起動の指示は、車室内の所定区域を冷房するだめのものであり、甲第2号証および甲第3号証に示されたものとは目的が異なる。
相違点▲4▼について
甲第2号証には、「冷凍室3が一定の保冷温度に達し、これを庫内温度検出器19が検出して作動すると、上記電磁弁18bは開弁すると、同時に、他方の電磁弁18aは閉弁する。しかして、上記膨張弁10で減圧された液冷媒は上記電磁弁18bを通って蓄熱冷却器16に移送され、この蓄熱冷却器16の液冷媒は、冷媒用ファン15によって熱交換されて、再びガス冷媒となり、上記アキュームレータ5へ環流されるようになっている。又、熱交換によって冷却した蓄熱冷却器16は、ブライン17に蓄冷して一定の保冷温度に冷却する。」と記載されており、蓄熱冷却器16は、冷凍車の走行時の冷却器(蒸発器)14に対して、第2蒸発器ということができので、甲第2号証には、蓄冷材を蓄冷させる蓄冷制御手段が記載されているといえる。
相違点▲5▼について
上記したように甲第2号証および甲第3号証には、車室内の所定区域に、第2送風機、第2吹出口によって冷風を吹き出す構成の記載がない以上、冷房開始指示手段からの信号に基づいて第2送風機の起動を制御する冷房制御手段は、いずれの証拠にも開示がされていない。
相違点▲6▼について、
甲第3号証には、ダクト3の吸込口5を下部に、吹出口6を上部にして、ボデー4の前壁4aに設置したものが示されており、ダクト3が本件発明のケースに相当し得るとしても、このダクト3は、庫内の全体を冷却するものであり、本件発明のように車室内を冷房する第1吹出口とは異なる車室内の所定区域を冷房する冷却ユニットであるケースに空気の吸込口、第2吹出口を設けたものではない。
v.むすび
以上のとおり、相違点▲4▼については、甲第2号証に記載されているとしても、本件発明を構成する他の相違点については、甲第2号証及び甲第3号証に記載が認められず、そして、これらの構成を発明の構成要件とする本件発明は、特許明細書に記載された作用効果を奏するものであり、特許異議申立人が提出した甲第1号証ないし甲第3号証に記載さた事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものとすることはできない。
なお、本件特許の特許請求の範囲の第2項、第7項、第10項、第11項は、第1項を引用した実施態様項であり、また、第4項、第5項、第6項は、第2項を引用した実施態様項であるから、上記したように第1項が、当業者にとって容易に発明し得るものでない以上、これらの請求項についても当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
3.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-08-27 
出願番号 特願昭61-38638
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B60H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 岡田 弘規
櫻井 康平
登録日 1998-08-28 
登録番号 特許第2820681号(P2820681)
権利者 株式会社デンソー
発明の名称 車両用冷房装置  
代理人 杉村 次郎  

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