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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04F |
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管理番号 | 1002237 |
異議申立番号 | 異議1999-71999 |
総通号数 | 3 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-01-09 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-05-25 |
確定日 | 1999-09-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2828240号「鋼製大引き」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2828240号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件特許第2828240号の請求項1乃至5に記載された発明(以下、本件特許発明1乃至5という)は、平成6年6月16日に出願され、平成10年9月18日に特許の設定登録がなされ、その後、平成11年5月25日に異議申立人 笠下義隆による特許異議の申立がなされた。 2 本件特許発明の認定 本件特許発明1乃至5は、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】鋼製の角柱材から成り、根太を支持する上面の幅が、束によって支持される下面の幅よりも大きい、断面略逆台形状に形成され、左右両側面に補強用リブが長手方向に沿って形成されている、ことを特徴とする鋼製大引き。 【請求項2】請求項1に記載の鋼製大引きにおいて、前記上面に、前記根太を大引きに固定するためのビス等の固着具がねじ込まれ等する溝が長手方向に沿って形成されていることを特徴とする鋼製大引き。 【請求項3】前記溝が複数形成されている、請求項2に記載の鋼製大引き。 【請求項4】前記溝が、断面逆台形状をしている、請求項2もしくは請求項3に記載の鋼製大引き。 【請求項5】前記補強用リブが複数である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼製大引き。 3 特許異議申立の理由の概要 特許異議申立人は、甲第1号証から甲第6号証を提示し、本件各特許発明は、甲各号証に記載されたものから当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、拒絶査定をしなければならない特許出願に対して特許されたものであるから、取り消されるべきであると主張している。 4 証拠及びその記載事項 異議申立人が提示した甲各号証には次の記載が認められる。 (1)甲第1号証(特開昭53-14926号公報) 床下地の施工法に関する発明であり、支持脚部材4の上部には亜鉛メッキ鋼板等からなる通し根太1が固定され、さらに通し根太1の上部にはベースフロアーと称される捨貼材18が固定されるようになっている。ここで通し根太1は長手方向に長く延びており、断面の形状は、第1図、第3図、第4図から、略コ字状で、下端部には折曲部1a、1a′が内側に向かって形成され、下端中央には長手方向に開口部が設けられている。また、第1図、第4図から、通し根太1の側面には、長手方向に沿って凹状の窪みが設けられているように判断される。 (2)甲第2号証(実開昭52-73030号公報) 床組支持構造に関する考案であり、第1図、第2図において、調節ボルト1の上部には形鋼製根太材Aが固定され、この形鋼製根太材Aは長手方向に長く延びており、断面の形状は、図面から、略コ字状で、下端部には側縁a.aが内側に向かって形成され、下端中央には長手方向に開口部が設けられ、また、根太材Aの側面には、長手方向に沿って凹状の窪みが設けられているように判断される。 (3)甲第3号証(実開昭61-187841号公報) 遮音性床のシステム工法に関する考案であり、その明細書の記載から、第2図において、床組は鋼製の大引きをもって床の骨組みとしており、明細書においては、大引き1の形状については具体的に説明はないが、図面から、大引きまたは根太は長手方向に長く延びており、断面の形状は略ロ字状で、その上面と底面の間、および両側面の間はほぼ平行に矩形状になっており、また、その上面及び側面には長手方向に沿って凹状の窪みが設けられているように判断される。 (4)甲第4号証(特開昭60-141956号公報) 屋内運動場の床装置に関する発明であり、束部材3の上部には大引材5が固定され、大引材5の上部には根太材6が固定されている。大引材5は長手方向に長く延びており、例えば1.2mmの鋼板を折曲して形成される断面ハット(注:帽子)状の部材11よりなっており、上面部から底面部にかけて幅が狭くなっているが、底面部は外側に折曲して上面部より広くなっている。 (5)甲第5号証(AMカタログ1994、(株)鹿島出版会1993年12月20日発行)(1994.2.7日本建築学会図書館の印あり) 上記甲第4号証に記載した大引材5と同様ハット状の断面形状をした鋼製根太が調整ボルトと仕上げ材との間に設けられている。 (6)甲第6号証(実願昭55-58036号(実開昭56-159544号)のマイクロフィルム) 床支持構造物に関する考案であり、第1図に関して、脚体4、螺杆10、支持体13の上部に根太18が固定され、根太18の上部には床2が固定されるものであって、該根太18は図面上甲第4号証に記載した大引材5と同様ハット状の断面形状をしており、上面の中央には溝部19が設けられ、床2の上方より打ち込まれた固定釘が係合して床2と支持構造物1とにズレを生じない様にされている。 5 本件各特許発明に対する異議申立理由の検討 (1)本件特許発明1について 異議申立人の提示した甲各号証には、本件特許発明1の構成要件のうち、鋼製大引きの断面形状について限定した「根太を支持する上面の幅が、束によって支持される下面の幅よりも大きい、断面略逆台形状に形成され」た点が、開示されていない。つまり、甲第1及び第2号証においては、根太の断面形状は略コ字状となっており、甲第3号証においては大引きまたは根太は断面略ロ字状の矩形状となっており、甲第4から第6号証においては大引きまたは根太の断面はハット状の形状をしており、いずれのものにも、断面略逆台形状に形成された大引きまたは根太が開示されていない。 本件特許発明1は、大引きの断面形状を甲各号証に記載されていない上記の構成としたことと、左右両側面に補強用リブを形成したことと相俟って、明細書に記載したように ▲1▼上面幅の等しい矩形状の鋼製大引きに比較して、薄い鋼板材を用いながらもこれらと同等の強度を持たせることができ、 ▲2▼材料費の節減に貢献できるばかりでなく、軽量化も達成され、 ▲3▼底部がすぼんだ形状なので、束での受けも容易となる という効果(段落番号【0021】【0022】参照)を奏するものと認められる。 したがって、本件特許発明1は、異議申立人の提示した甲各号証に開示されていない構成を有し、そのことによって甲各号証のものが奏し得ない作用効果を奏するものであるから、本件特許発明1を、異議申立人の提示した証拠に基づいて容易に発明できたものとすることはできない。 (2)本件特許発明2乃至5について 本件特許発明2乃至5は、いずれも本件特許発明1である請求項1を引用し、更に限定した構成とした発明であり、上記(1)で検討したように、本件特許発明1は、異議申立人の提示した証拠から、容易に発明できたものとすることはできないのであるから、本件特許発明2乃至5についても、上記(1)に記載した理由と同じ理由により、異議申立人の提示した証拠から、容易に発明できたものとすることはできない。 6 異議申立人の主張に対して 異議申立人は、本件各特許発明の大引きの断面形状である「断面略逆台形状」は、甲第4乃至6号証に記載されているように当業者にとって周知の技術手段である旨主張する。 しかしながら、甲第4乃至6号証に記載された大引きまたは根太は、上記4の(4)乃至(6)で認定したように、ハット状の断面形状をしており、上面部から底面部にかけては確かに幅が狭くなってはいるが、底面部は外側に折曲して上面部より広くなって、その広くなった底面部分が受けとして作用するのに対し、本件各特許発明においては、閉じた断面形状である「角柱材」において上面部から底面部にかけて幅を狭くして「断面略逆台形状」としたものであり、その狭くなった底面部が受けとして作用するのであるから、両者は基本的形態を異にするものであり、異議申立人の主張は採用できない。 7 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件各特許発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件各特許発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-08-16 |
出願番号 | 特願平6-158005 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E04F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 七字 ひろみ |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 鈴木 公子 |
登録日 | 1998-09-18 |
登録番号 | 特許第2828240号(P2828240) |
権利者 | 奥地建産株式会社 大和ハウス工業株式会社 |
発明の名称 | 鋼製大引き |