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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F15B
審判 全部申し立て 2項進歩性  F15B
管理番号 1002310
異議申立番号 異議1998-71170  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-07-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-03-09 
確定日 1999-05-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2651226号「操作レバー装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2651226号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2651226号の請求項1及び請求項2に係る発明については、昭和63年12月26日に特許出願され、平成9年5月16日にその特許の設定登録がされ、その後、同10年3月9日に株式会社神戸製鋼所より全請求項に対して特許異議の申立てがされ、取消しの理由の通知がされ、その指定期間内である同10年8月19日に明細書の訂正の請求がされ、さらに、訂正の拒絶の理由の通知がされ、その指定期間内である同10年12月1日に手続補正書が提出された。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正明細書の請求項1に係る発明
上記手続補正書の記載からみて、訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。
「(1)操作レバーの操作量を油圧パイロット弁により油圧信号に変換し、その発生した油圧信号に基づき流量及び方向制御弁をストロークさせ、油圧アクチュエー夕の動作を制御する操作レバー装置において、
前記油圧パイロット弁により発生した油圧信号を電気信号に変換する圧力センサと、
任意の処理を行うためのプログラムが組まれ、このプログラムにしたがって前記圧力センサからの電気信号を処理するコントローラと、
パイロットポンプで発生したパイロット圧力を減圧して油圧信号を発生すると共に、前記コントローラからの電気信号により作動し、その電気信号を再度油圧信号に変換する電気油圧変換弁とを有し、
前記電気油圧変換弁からの油圧信号により前記流量及び方向制御弁をストロークさせることを特徴とする操作レバー装置。」
2.引用例記載の発明
これに対して、上記訂正の拒絶の理由に引用した本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物(特開昭63-31995号公報。以下「引用例」という。)には、以下の発明乃至技術的事項が記載されていると認める。
操作レバー53の操作量を一対の可変減圧弁を有するリモコン弁52により油圧信号に変換し、その発生した油圧信号に基づき流量及び方向制御弁32をストロークさせ、油圧モータ34の動作を制御する操作レバー装置において、
前記リモコン弁52により発生した油圧信号を電気信号に変換する圧力検出器12,13と、
前記油圧モータ34の動きを抑制するための抑制パターン記憶手段16を有し、この抑制パターンにしたがって前記圧力検出器12,13からの電気信号を処理するマイコンと、
前記リモコン弁52の二次側回路54,55の油圧を減圧して油圧信号を発生すると共に、前記マイコンからの電気信号により作動し、その電気信号を再度油圧信号に変換する電磁比例減圧弁25,26とを有し、
前記電磁比例減圧弁25,26からの油圧信号により前記流量及び方向制御弁32をストロークさせる操作レバー装置。
「また、ブーム用の電磁比例減圧弁25,26の一次側を上記巻上用の電磁比例減圧弁27,28と同様に電磁切替弁(図示せず)を介してブーム俯仰用リモコン弁52の二次側回路54,55と上記一次側回路51とに切替自在に接続してもよい。」(第5頁左下欄第4〜9行)
上記一次側回路51には、パイロット油圧ポンプ50が設けられていること。(第4図)
3.対比
訂正明細書の請求項1に係る発明と引用例記載の操作レバー装置とを対比すると、引用例記載の操作レバー装置における「一対の可変減圧弁を有するリモコン弁52」、「油圧モータ34」及び「圧力検出器12,13」は、それぞれ訂正明細書の請求項1に係る発明の「油圧パイロット弁」、「油圧アクチュエータ」及び「圧カセンサ」に相当することが明らかである。また、引用例記載の操作レバー装置における「マイコン」は、油圧モー夕34、すなわち、油圧アクチュエー夕の動きを抑制するという処理を行うための抑制パターン記憶手段16を有しており、この抑制パターンにしたがって圧力検出器12,13、すなわち、圧力センサからの電気信号を処理するものであることから、この処理を行うためのプログラムが当然組み込まれており、訂正明細書の請求項1に係る発明の「コントローラ」に相当する。さらに、引用例記載の操作レバー装置における「電磁比例減圧弁25,26」は、上流側の油圧を減圧して油圧信号を発生すると共に、マイコン、すなわち、コントローラからの電気信号により作動し、その電気信号を再度油圧信号に変換する弁であるという限りにおいて、訂正明細書の請求項1に係る発明の「電気油圧変換弁」に対応している。
したがて、両者は、
「操作レバーの操作量を油圧パイロット弁により油圧信号に変換し、その発生した油圧信号に基づき流量及び方向制御弁をストロークさせ、油圧アクチュエー夕の動作を制御する操作レバー装置において、
前記油圧パイロット弁により発生した油圧信号を電気信号に変換する圧力センサと、
処理を行うためのプログラムが組まれ、このプログラムにしたがって前記圧力センサからの電気信号を処理するコントローラと、
上流側の圧力を減圧して油圧信号を発生すると共に、前記コントローラからの電気信号により作動し、その電気信号を再度油圧信号に変換する電気油圧変換弁とを有し、
前記電気油圧変換弁からの油圧信号により前記流量及び方向制御弁をストロークさせる操作レバー装置。」
である点で一致し、以下の2点で相違している。
相違点1:
訂正明細書の請求項1に係る発明では、コントローラに、任意の処理を行うためのプログラムが組まれているのに対して、引用例記載の発明ではそのようになっていない点。
相違点2:
電気油圧変換弁が、訂正明細書の請求項1に係る発明では、パイロットポンプで発生したパイロット圧力を減圧して油圧信号を発生するものであるのに対して、引用例記載の操作レバー装置では、リモコン弁52、すなわち、油圧パイロット弁の二次側回路の油圧を減圧して油圧信号を発生するものである点。
4.判断
そこで、まず上記相違点1について検討すると、コントローラに任意の処理を行うためのプログラムを組み込むことは、必要に応じて適宜なされる特に例示するまでもない自動制御技術における常套の技術的手法であり、操作レバー装置において斯く構成することは、当業者が格別の発明力を要することなく容易に想到し得る事項である。
次に、相違点2について検討すると、上記したように引用例には、「また、ブーム用の電磁比例減圧弁25,26の一次側を上記巻上用の電磁比例減圧弁27,28と同様に電磁切替弁(図示せず)を介してブーム俯仰用リモコン弁52の二次側回路54,55と上記一次側回路51とに切替自在に接続してもよい。」こと及び上記一次側回路51には、パイロット油圧ポンプ50が設けられていることも記載されている。
したがって、引用例記載の操作レバー装置において、電磁比例減圧弁25,26、すなわち、電気油圧変換弁の上流側を、リモコン弁52、すなわち、油圧パイロット弁の二次側回路とすることに代えて、パイロット油圧ポンプ50に連なる一次側回路に接続することにより、訂正明細書の請求項1に係る発明のように構成する点に格別の困難性は見当たらない。
また、訂正明細書の請求項1に係る発明によりもたらされる効果も引用例記載の発明乃至技術的事項から当然予期しうる程度のものであって格別のものではない。
5.むすび
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、引用例記載の発明乃至技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
III.特許異議の申立てについての判断
1.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証(特開昭63-31995号公報)に記載された発明であるか、または、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものあるから、本件の請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである旨主張している。
2.特許異議申立人の主張の検討
(1)本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明
本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、それぞれ特許明細書の請求項1及び請求項2に記載されたとおりの次のものであると認める。
「【請求項1】操作レバーの操作量を油圧パイロット弁により油圧信号に変換し、その発生した油圧信号に基づき流量及び方向制御弁をストロークさせ、油圧アクチュエー夕の動作を制御する操作レバー装置において、
前記油圧パイロット弁により発生した油圧信号を電気信号に変換する圧力センサと、前記圧力センサからの電気信号を処理するコントローラと、前記コントローラからの電気信号により作動し、その電気信号を再度油圧信号に変換する電気油圧変換弁とを有し、この電気油圧変換弁からの油圧信号により前記流量及び方向制御弁をストロークさせることを特徴とする操作レバー装置。
【請求項2】前記電気油圧変換弁からの油圧信号を前記流量及び方向制御弁に伝達する経路に、前記操作レバーの中立時には該電気油圧変換弁からの油圧信号をカットする安全装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の操作レバー装置。」
(2)甲第1号証記載の発明
甲第1号証は、上記II.2.の引用例と同一であり、そこに摘示した発明乃至技術的事項が記載されていると認める。
(3)対比・判断
はじめに、本件特許の請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明は、本件特許の請求項1に係る発明の構成要件を全て備えており、本件特許の請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明とは同一である。
次に、本件特許の請求項2に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明は、本件特許の請求項2に係る発明の構成要件である「前記電気油圧変換弁からの油圧信号を前記流量及び方向制御弁に伝達する経路に、前記操作レバーの中立時には該電気油圧変換弁からの油圧信号をカットする安全装置を設けたこと」を備えていない。
そして、本件特許の請求項2に係る発明は、この構成要件を備えることにより特許明細書記載の「マイコン制御を付加した場合に生じがちな誤動作を防止でき、信頼性を向上させることができる。」という効果を奏するものである。
したがって、本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証記載の発明であるとすることができないだけでなく、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件の請求項2に係る特許については、他に取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-03-31 
出願番号 特願昭63-328339
審決分類 P 1 651・ 121- ZE (F15B)
P 1 651・ 113- ZE (F15B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 北村 英隆  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 久保田 健
本郷 徹
登録日 1997-05-16 
登録番号 特許第2651226号(P2651226)
権利者 日立建機株式会社
発明の名称 操作レバー装置  
代理人 春日 譲  
代理人 安田 敏雄  

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