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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C12N |
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管理番号 | 1003715 |
異議申立番号 | 異議1997-71155 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-03-11 |
確定日 | 1999-06-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2532858号「形質転換したミエローマ細胞系」の特許について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2532858号の特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2532858号は、出願日が昭和61年4月1日(パリ条約による「優先権主張」 1985年4月1日 イギリス)を国際出願日とする特願昭61-501959号に係る出願であって、平成8年6月27日に設定登録がなされ、その後、その特許について、プロテイン デザイン ラブス,インコーポレイテッドから特許異議の申立てがなされ、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年1月23日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由に対して手続補正書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正請求に対する補正の適否について 2-1-1.補正の要旨 補正事項(1) 訂正請求書記載の請求項1記載の「ウイルスプロモーター」を[SV40初期プロモーターを除くウイルスプロモーター」に補正する。 補正事項(2) 訂正請求書記載の請求項1記載の「ウイルスプロモーターの指示による場合真核細胞ポリペプチドが1mg/L以上のレベルで生産されるように、」を「ウイルスプロモーターの指示による場合該真核細胞ポリペプチドが初期細胞数0.1×106/ml.培養日数3日以上の培養条件において1mg/L以上のレベルで生産されるように」に補正する 補正事項(3) 請求項3〜請求項12を請求項2〜請求項11に補正する。そして、その補正に伴い、補正後の請求項2〜請求項11記載の引用請求項をそれぞれ補正する。 2-1-2.補正の適否の判断 上記訂正請求書に対する補正は、訂正請求の要旨を変更するものでなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。 2-2.訂正に対する適否について 平成10年9月30日付訂正請求書に対する手続補正書により補正された平成10年1月23日付の訂正請求書からみて、訂正の要旨は以下のものである。 2-2-1.訂正の要旨 訂正事項(1) 特許明細書記載の請求項1記載の「ウイルスプロモーター」を「SV40初期プロモーターを除くウイルスプロモーター」に補正する。 訂正事項(2) 特許明細書記載の請求項1記載の「指示により発現するように、」と「該真核細胞ポリペプチドをコードする遺伝子」の間に「かつ、該ウイルスプロモーターの指示による場合該真核細胞ポリペプチドが初期細胞数0.1×106/ml、培養日数3日以上の培養条件において1mg/L以上のレベルで生産されるように、」を挿入する。 訂正事項(3) 「100μ/ml以上」(本件特許公報第12欄第10行)を「100U/ml以上」と訂正する。 2-2-2.訂正の適否の判断 訂正事項(2)について、特許権者は、「100U/ml」を「1mg/L」に換算したと主張するが、「U」なる活性を示す単位とポリペプチドの重量は、ポリペプチド毎に異なるものである。そして、本件特許明細書には、換算関係を示す記載がなく、また、それを示唆する記載もないので、「100U/ml」の単位を「mg/L」に換算したということはできない。 また、本件特許明細書には、「第3図エアリフト培養におけるpPRI1/10細胞の増殖と該細胞によるtPA合成の各曲線を示す。・・・・十分な活性を有していたことを示すものである。」(本件発明特許公報第16欄第39〜47行)と記載され、第3図には、初期細胞数0.1×106/ml、培養日数3日の培養条件において1mg/LのtPAが生産されたことが記載されている。ここで、pPRI1/10細胞とは、本件特許明細書の記載からみて、tPAをコードする遺伝子がRous sarcomaウイルスプロモーターの指示により発現するように設計されたベクターpPRIで形質転換したYB2/3.0細胞を意味する。 そうすると、本件特許明細書には「YB2/3.0細胞をpPRI(Rous sarcomaウイルスのLTRプロモーター)で形質転換した細胞であるpPRI1/10細胞が、エアリフト培養により、初期細胞数0.1×106/ml、培養日数3日の培養条件において1mg/LのtPAを生産した」ということが記載されているものと認められる。 一方、上記訂正事項(2)においては、細胞、プロモーター、培養方法、生産されるポリペプチド等の事項が特定されておらず、訂正事項(2)は願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてした訂正とは認められない。 よって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされるところの同第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正請求は認められない。 3.本件発明 本件請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「真核細胞ポリペプチドをコードする遺伝子がウイルスプロモーター又はマウスメタロチオネインプロモーターの指示により発現するように、該真核細胞ポリペプチドをコードする遺伝子及び該ウイルスプロモーターまたは該マウスメタロチオネインプロモーターを含むベクターで形質転換されたミエローマ細胞系。」 4.取消理由通知の概要 上記刊行物1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.80,p.825-829(1983))には、SV40プロモーターに、細菌由来の酵素であるキサンチンーグアニン-ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を結合させたベクターで、マウスミエローマ細胞株(J558L)及びラットミエローマ細胞株(Y3)を形費転換して、gptを発現させたことが記載されている。 本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、ポリペプチドをコードする遺伝子がSV40プロモーターの指示により発現するように、該ポリペプチドをコードする遺伝子およびSV40プロモーターを含むベクターで形質転換されたミエローマ細胞系である点で共通するが、ベクター中に含まれる遺伝子のコードするポリペプチドが、前者では、真核細胞由来のものであるのに対して、後者では、原核細胞由来のものである点で、相違する。 ところで、例えば、大腸菌に対するtrpプロモーター、1acプロモーターという組み合わせのように、特定の宿主細胞に対する特定のプロモーターの組み合わせが、組換えポリペプチドの発現に重要であるという知見が、本願優先日当時の技術水準として存在している。また、発現させようとする細換えポリペプチドの遺伝子がクローニングされていれば、そのポリベプチドが原核細胞由来か真核細胞由来かの区別により、ミエローマ細胞とSV40プロモーターの組合せ利用して遺伝子組換えを行う上で技術的障害があるとも認められない。そうすると、刊行物1には、細換えポリペプチドの発現に使用する宿主細胞とプロモーターの組合せとして、ミエローマ細胞とSV40プロモーターの組合せが上述のごとく記載され、これを利用して、原核細胞由来の細換えポリペプチドが発現したことが記載されている以上、原核細胞由来のものに代え、真核細胞由来のポリペプチドをコードする遺伝子を用いてこれを発現させることは、当業者であれば容易に成し得たことである。 したがって、本件発明は、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 5.判断 平成10年1月23日付特許異議意見書において特許権者は、刊行物1には「細胞由来のHPRTの活性及び細菌系XGPRTの活性の双方とも検出可能であった。」(第827頁左欄第38〜39行)と記載されているのでXGPRTの発現量がかろうじて検出できた程度の低いレベルのものであったことを示している旨を主張する。しかし、検出可能であったということは、検出の可能性を意味するものと解され、直ちに発現量を意味するものではないので、この記載のみをもってXGPRTの発現量がかろうじて検出できた程度の低いレベルのものであったとはいえない。しかも、刊行物1記載の発明で使用された細胞と同じミエローマ細胞株であるJ558L細胞を使用し、プロモーターとベクターまでも同じものが記載されているGene,vol.33(1985)181-189(申立人の提出する甲第2号証参照。以下、刊行物2という。)には、その発現量に関し「他方、pSV2-HIG1で形質転換されたJ558L細胞から得られたすべての形質転換体は、培地中に大量のヒトγ鎖を分泌した(第5図)」(第186頁左欄第25行〜同頁右欄第1行)と記載されている。そうすると、細胞、プロモーター、ベクターまでもが同一である形質転換体において、培地中に大量の外来遺伝子産物であるヒトγ鎖を分泌したことからみて、刊行物1記載の発明においても大量の外来遺伝子産物であるXGPRTが発現したと認められる。 6.むすび 以上のとおり、本件発明は、当業者が刊行物1に記載された発明に基づき容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願についてされたものと認める。 よって、本件発明についての特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116条)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-01-18 |
出願番号 | 特願平61-501959 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(C12N)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 高堀 栄二 |
特許庁審判長 |
田中 倫子 |
特許庁審判官 |
郡山 順 佐伯 裕子 |
登録日 | 1996-06-27 |
登録番号 | 特許第2532858号(P2532858) |
権利者 | アルスイセ ホールディングス アクチェンゲゼルシャフト |
発明の名称 | 形質転換したミエローマ細胞系 |
代理人 | 坂本 徹 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 原田 卓治 |