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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G07D |
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管理番号 | 1003729 |
異議申立番号 | 異議1998-72967 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-07-15 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-06-09 |
確定日 | 1999-06-25 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第2690618号「紙幣の認識装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2690618号の特許を取り消す。 |
理由 |
(1)本件発明 本件特許2690618号に係る発明(平成2年11月28日出願、平成9年8月29日設定登録、以下「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】紙幣の磁気インクの濃淡を電気信号に変換する第1のセンサと、 前記紙幣の濃淡及び形状を電気信号に変換する第2のセンサと、 前記第1及び第2のセンサによる電気信号に基づいて金種及び真偽を判別する認識回路と、 入金時と出金時とでは相異なる方向に前記紙幣を搬送する駆動系とを含み、 前記認識回路は前記相異なる方向のいずれからでも前記紙幣を受け入れることを特徴とした紙幣の認識回路。」 (2)引用刊行物に記載される発明 当審が平成10年10月12日付けで通知した取消理由に引用された刊行物1(特公昭64-5356号公報)には、「挿入された紙幣を鑑別して真とみなしたものを収納庫へ搬入、指定された金種、金額の紙幣を収納庫から搬出する入出金処理装置において、 入金紙幣の挿入口と出金紙幣の排出口とを一緒にして挿入・排出口とし、 前記挿入・排出口の内側に挿入紙幣を1枚ずつ搬送路へ取込む紙幣取込み手段と搬送路から搬出された紙幣を集積する紙幣集積手段を設けるとともに、 入金紙幣の収納庫と出金紙幣の収納庫とを一緒にして一つの収納庫とし、 前記収納庫に対して紙幣の収納と繰出しのいずれもが動作可能でかつ前記搬送路に対しても紙幣の受入と送出のいずれもが動作可能な紙幣収納繰出し手段を設け、 前記搬送路には紙幣の鑑別手段と搬入・搬出いずれの方向にも動作可能な紙幣搬送機構とを設けたことを特徴とする入出金処理装置。」(特許請求の範囲)、「以上のように従来の入出金処理装置では、入金機構と出金機構とが別個に独立して設けられており、その各々の機構について紙幣の搬送路、搬送手段並びに紙幣の収納庫を有するがために装置が大型かつ複雑化し、また装置価格も高くなる欠点があった。 本発明は上記欠点を除去するため、従来入金機構と出金機構の各々に用いられている紙幣の各取扱い手段をできるだけ入金機構と出金機構の両方に兼用できるようにすることを目的とする。」(第2頁第3欄第8〜17行)「顧客が挿入・排出口2に紙幣を挿入すると、これを図示せぬ紙幣センサで検知する。 ・・・ 全体制御回路22は紙幣の挿入検知後一定時間経過すると、挿入・排出制御回路17に紙幣吸入指令を出す。 ・・・ 全体制御回路22はまた前記紙幣吸入指令と同時に搬送制御回路18へ紙幣の搬入指令を出す。搬送制御回路18はこれにより第一の搬送機構4、第二の搬送機構10、第三の搬送機構12を搬入方向へ動作させる。 紙幣1は第一の搬送機構4にて搬送される間紙幣鑑別器5を通過する。紙幣鑑別器5では通過する紙幣の真偽、金種を鑑別するとともに斜め、連鎖、二重などの異常を検出する。これら鑑別結果及び検出結果は鑑別制御回路19を介して全体制御回路22へ転送され、全体制御回路22はこれに基づいて紙幣1の搬送先を決定し、ブレード制御回路21に動作位置指令を出す。」(第3頁第6欄第6〜30行、第1、3図)、「次に顧客が出金取引を希望してコンソールパネル23で出金取引を指定すると、全体制御回路22は装置を出金モードとする。出金モードになると全体制御回路22はコンソールパネル23に出金金額の指定を促す表示を行なう。顧客が金額、金種の指定を行なうと、全体制御回路22は紙幣収納繰出し制御回路20へ放出指令を出す。 ・・・ また全体制御回路22は、搬送制御回路18へ搬出指令を出し、第一の搬送機構4並びに第二の搬送機構10が入金時とは逆方向の搬出方向へ動作するようにする。 ・・・ この送出された紙幣は第一の搬送機構へ運ばれる途中紙幣鑑別器5を通過する。紙幣鑑別器5では通過する紙幣の金種を鑑別し、この鑑別信号により鑑別制御回路19で計数を行うとともに、二重送りなどの異常搬送を検出する。」(第4頁第7欄第27行〜同頁第8欄第13行、第1、3図)と記載されている。 同刊行物2(特開昭58-37791号公報)、刊行物3(特開昭61-290589号公報)には、刊行物1と同様の紙幣の搬送方向を入金時と出金時とでは相異なる方向に搬送し、この搬送路途中に紙幣鑑別器を備える紙幣処理機構が開示されている。 同刊行物4(実願昭53-136030号(実開昭55-53276号)のマイクロフイルム)には、「予め定められた紙幣通路に沿って配列された複数の光検知器を有し、搬送されてくる紙幣の挿入方向の検出、ならびに紙幣の寸法及び透かしの検査を行う光学検知装置と、 この検査装置と共に前記通路に沿って配列され紙幣の所定部分を磁気検出することにより図柄を検査する磁気検知装置と、 前記光学検知装置および磁気検知装置の出力に応じて前記通路を利用して挿入された紙幣の受入または返却を行う装置とをそなえ、 前記光学検知装置の検知動作に基いて前記寸法、透かし、図柄の検査順序を定めるようにした紙幣の受入返却制御装置。」(実用新案登録請求の範囲)、「光学検知用検出器PDは、紙幣の幅、長さの検出、透かし検出および挿入方向の検出のために同図(b)に示すように配列されて設けられている。さらに、磁気検知装置9は、紙幣の特定部分の図柄におけるインク中の磁性材を検知するために設けられている。」(第5頁第15行〜第6頁第2行、第1図)、「このような点から、紙幣の挿入方向に応じて何れが先になるかは別として長さと透かしの何れかを最先に検査し、次いでこれらの残った一方と磁気検査を行えばよい。本実施例では1000円札を透かしのある側から挿入した場合、に透かし→長さ→磁気の順に、また透かしのない側から挿入した場合に、長さ→磁気→透かしの順となるように構成している。」(第6″″頁第8〜16行)と記載されている。 同刊行物5(特開平1-261797号公報)には、「第2図は紙幣鑑別装置のセンサ類の配置を示す図である。第2図において、鑑別対象の紙幣1は搬送路2上を図示の矢印方向に搬送され、この搬送路2に沿って紙幣1からの透過光による明暗パターンを検出する2組の透過光センサ3a、3bと、紙幣1からの反射光による明暗パターンを検出する3組の反射光センサ4a、4b、4cが配置されている。更に、透過光センサ3a、3bと反射光センサ4a、4b、4cとの間に紙幣1の磁気インクにより形成される磁気パターンを検出する2つの磁気センサ5a、5bが配置される。」(第2頁左上欄第17行〜同頁右上欄第7行、第2図)、「透過光センサ3a、3b、反射光センサ4a、4b、4c及び磁気センサ5a、5bにより検出された紙幣1の明暗パターン及び磁気パターンを示す検出信号は、対応する各増幅回路10a〜12cに入力され、マルチプレクサ13の仕様により定められている所定のレベルまで増幅される。 ・・・ コンピュータ16は、このようにして読み込んだ紙幣1の明暗パターン及び磁気パターンの検出信号、即ち検出データをメモリ17に格納する。次いで、コンピュータ16は予めメモリ17に記憶されている紙幣1を鑑別するためのプログラムに従って、紙幣1の明暗パターン及び磁気パターンと、標準パターン発生器18から出力される標準パターンとを比較して予め定めた類似度を満足するか否かの判定をする。」(第2頁左下欄第20行〜同頁右下欄第20行、第1、3図)と記載されている。 (3)対比・判断 本件発明と刊行物1に記載される発明(以下「引用発明」という。)とを比較すると、引用発明における「鑑別制御回路19」、「紙幣搬送機構」、「紙幣鑑別器5」が、本件発明における「認識回路」、「紙幣を搬送する駆動系」、「紙幣の認識装置」に相当することは明白である。また、引用発明における「紙幣鑑別器5」は、その明細書の記載からみて、相異なる方向のいずれからでも紙幣を受け入れることは、明白であるから、鑑別制御回路19も相異なる方向のいずれからでも受け入れることは明白である。してみれば、両者は、金種及び真偽を判別する認識回路と、入金時と出金時とでは相異なる方向に紙幣を搬送する駆動系とを含み、前記認識回路は、前記相異なる方向のいずれからでも前記紙幣を受け入れる紙幣の認識装置である点で一致し、認識回路に関し、本件発明は、紙幣の磁気インクの濃淡を電気信号に変換する第1のセンサと、前記紙幣の濃淡及び形状を電気信号に変換する第2のセンサと、前記第1及び第2のセンサによる電気信号に基づいて金種及び真偽を判別しているのに対して、引用発明は単に金種及び真偽を判別するとしてその具体的構成については何等記載されていない点で相違する。 上記相違点について検討する。紙幣の磁気インクの濃淡を電気信号に変換する第1のセンサと、前記紙幣の濃淡及び形状を電気信号に変換する第2のセンサと、前記第1及び第2のセンサによる電気信号に基づいて金種及び真偽を判別する認識回路は、刊行物4及び5にその具体的構成が開示されている。従って、刊行物4、5に記載される認識回路を、入金時と出金時とでは相異なる方向に紙幣を搬送する駆動系を有する、引用発明に適用することは当業者であれば容易に想到し得るものと認められる。確かに、刊行物4、5に開示される認識回路においては、相異なる方向のいずれからでも紙幣を受け入れることについては何ら開示されていないが、本件発明においても認識回路それ自体の構成については特に工夫はなく、刊行物4、5に開示されるものと何ら異なるところはない。即ち、本件発明において、相異なる方向に紙幣を受け入れるための構成は、駆動系のみである。してみれば、認識回路が、相異なる方向のいずれからでも紙幣を受け入れるとする機能は、刊行物4、5に開示される認識回路を、相異なる方向に紙幣を搬送する駆動系を有する引用発明に適用すれば当然に有する機能と認めらる。そして、本件発明の奏する作用効果も、引用発明および刊行物4、5から予測される以上のものではない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件発明は上記刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-04-30 |
出願番号 | 特願平2-326551 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(G07D)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 伏見 隆夫 |
特許庁審判長 |
佐藤 久容 |
特許庁審判官 |
三原 彰英 高木 彰 |
登録日 | 1997-08-29 |
登録番号 | 特許第2690618号(P2690618) |
権利者 | 甲府日本電気株式会社 |
発明の名称 | 紙幣の認識装置 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 河合 信明 |