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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01C
管理番号 1003788
異議申立番号 異議1997-75882  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-01-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-12-16 
確定日 1999-08-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第2622208号「苗植付装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2622208号の特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2622208号は、平成3年6月26日に出願された特願平3-154231号に係り、平成9年4月4日に設定登録されたものである。
これに対して、特許異議の申立てが、三菱農機株式会社よりなされ、当審より取消理由通知がされ、その指定期間内である平成10年7月14日に訂正請求がなされ、当審より訂正拒絶理由通知がされ、その指定期間内である平成11年4月26日に訂正請求に対する手続補正がなされたものである。
2.訂正の適否
(2-1)補正の適否について
特許権者は、訂正明細書の【特許請求の範囲】の【請求項1】の第6行「横方向にほぼ全幅に亘って延びる横フレーム(7)を備えて」を『右及び左の最外側に位置する前記植付伝動ケース(9))よりも右及び左の横外側に延びる横フレーム(7)を備えて』と補正すると共に、考案の詳細な説明の記載を補正するものである。
そして、上記手続補正は、訂正明細書の特許請求の範囲を減縮するものであって、新規事項を追加するものではなく、訂正請求の要旨を変更するものではないから、この補正は適法なものと認める。
(2-2)訂正明細書の請求項1に係る発明
補正された訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、訂正発明という。)は、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「走行機体側の動力取り出し軸(8)から伝動ケース(6)を介して横向きの駆動軸(18)に動力を伝達し、苗のせ台(1)の横送り駆動機構とは別体に形成された複数の植付伝動ケース(9)に前記駆動軸(18)を介して動力を伝達して、前記植付伝動ケース(9)に備えられた植付機構(2)を駆動するように構成すると共に、
右及び左の最外側に位置する前記植付伝動ケース(9)よりも右及び左の横外側に延びる横フレーム(7)を備えて、前記伝動ケース(6)における前記動力取り出し軸(8)の入力部とは異なる部分で、前記横フレーム(7)に前記伝動ケース(6)を連結し、前記横フレーム(7)に前記植付伝動ケース(9)を片持ち状に連結して、
前記駆動軸(18)を前記横フレーム(7)の外方側に配置し、前記植付伝動ケース(9)において前記横フレーム(7)との連結部分とは異なる部分に、前記駆動軸(18)の動力が伝達される入力部(10a)、及び前記植付機構(2)に動力を伝達する出力部(10b)を備えてある苗植付装置。」
(2-3)刊行物記載の発明
訂正発明に対し、当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(特開昭52-34212号公報)、及び、刊行物2(特公昭60-43085号公報)には、次のとおりの発明が記載されている。
刊行物1には、(第2頁左下欄第8〜13行)「また、前記苗植装置3は、第3図参照のように、上下に循環回動駆動される4対の植付爪20・・等からなる植付機構21を装備した二つの植付ケース22,22が前記連結用枠体12に連結された状態で横方向に並置されて構成されるものであって」(第2頁左下欄第8〜13行)、「前記回転軸7と連動連結される横軸27,前記入力軸25の端部と連結される横軸28及び中間伝動横軸29が前記枠体12に連結支持されるミッションケース30に夫々軸支されており、これら各軸27,28,29に軸支されるギヤを介して以下に述べる様に動力伝達が行われる。すなわち、縦軸27→・・・・横軸28→入力軸25・・。」(第2頁右下欄第5〜19行)、「また、実施例においては、各植付ケース22が4対の植付爪20・・からなる植付機構21を装備するのを例示したが、2対の植付爪20からなる植付機構21等を装備するものに構成してもよい。」(第3頁右下欄第7〜11行)と記載され、第2図には、「連結用枠体12が右及び左の最外側に位置する植付ケース22近傍まで延びていること。」、第4図には「一方の植付ケース22が苗のせ台24の横送り駆動機構を内蔵し、他方の植付ケース22が苗のせ台の横送り駆動機構を備えていないこと。」、第1〜第4図には「動力取り出し軸の縦軸27とほぼ同じ高さで、連結用枠体12にミッションケース30を連結すること。」が記載されている。そして、上記の記載から、4対の植付け爪に替えて2対の植付爪20からなる植付機構21等を装備する場合には、連結用枠体12が右及び左に位置する植付けケース22端部まで延びることが記載されているとみることができる。
刊行物2には、「機体進行方向に対する横方向に所要間隔を隔てて並設させた植付け部駆動用伝動ケース1・・・・・・これら伝動ケース1・・・・・・の並設方向中間箇所に設置されて前記各伝動ケース1・・・・・・に動力達するための伝動機構3および苗載せ台4の往復移動を司る螺軸5を内装してある中央伝動ケース6とから構成される田植機における植付け部伝動装置・・・・・・(特許請求の範囲)が記載され、第2図、第3図には、「植付け部駆動用伝動ケース1が苗のせ台の横送り駆動機構(ケース部分6B)とは別体に形成されたこと」が記載されている。
(2-4)対比・判断
訂正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の「回転軸7」、「ミッションケース30」、「横軸28」、「植付ケース22」、「連結用枠体12」、「入力軸25」が、それぞれ、訂正発明の「動力取り出し軸(8)」、「伝動ケース(6)」、「駆動軸(18)」、「植付伝動ケース(9)」、「横フレーム(7)」、「入力部(10a)」に対応し、両者は、「走行機体側の動力取り出し軸から伝動ケースを介して横向きの駆動軸に動力を伝達し、複数の植付伝動ケースに前記駆動軸を介して動力を伝達して、前記植付伝動ケースに備えられた植付機構を駆動するように構成すると共に、横フレームに前記伝動ケースを連結し、前記横フレームに前記植付伝動ケースを片持ち状に連結して,前記駆動軸を前記横フレームの外方側に配置し、前記植付伝動ケースにおいて前記横フレームとの連結部分とは異なる部分に、前記駆動軸の動力が伝達される入力部、及び前記植付機構に動力を伝達する出力部を備えてある苗植付装置」で一致し、次の点で相違する。
相違点(1):訂正発明は、植付伝動ケースが苗のせ台の横送り駆動機構とは別体に形成されたものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、一方の植付伝動ケースが苗のせ台の横送り駆動機構を内蔵した点。
相違点(2):訂正発明は、横フレームが右及び左の最外側に位置する植付伝動ケースよりも右及び左の横外側に延びているのに対し、刊行物1記載の発明は、横フレームが右及び左の最外側に位置する植付伝動ケース端部まで延びている点。
相違点(3):訂正発明は、伝動ケースにおける動力取り出し軸の入力部とは異なる部分で、横フレームに伝動ケースを連結しているのに対し、刊行物1記載の発明は、このような構成が明らかでない点。
相違点(1)について検討する。刊行物2には、植付伝動ケース(植付け部駆動用伝動ケース1)が苗のせ台の横送り駆動機構(ケース部分6B)とは別体に形成することが記載されており、このことが公知である以上、刊行物2記載の構成を刊行物1記載の発明に適用して、訂正発明のように構成することは、当業者であれば容易になしうることである。
相違点(2)について検討する。刊行物1記載の横フレームは、横フレームが右及び左の最外側に位置する前記植付伝動ケースよりも右及び左の横外側に延びてはいないものの、2対の植付爪からなる植付機構では、横フレームは植付伝動ケースの右及び左の端部まで延びていることは明らかであり、十分な支持強度を得るために横フレームをどの程度の長さにすればよいかは、当業者が当然考慮することであるから、訂正発明の構成とするとは、当業者であれば、容易に発明できたものである。
相違点(3)について検討する。刊行物1において、動力取り出し軸の入力部(縦軸27)とほぼ同じ高さで、横フレーム(連結用枠体12)に伝動ケース(ミッションケース30)を連結すると、横フレーム(連結用枠体12)に、縦軸27挿入用の穴を設けなければならず強度上不利であることは当業者にとって明らかであるから、動力取り出し軸の入力部(縦軸27の個所)とは異なる部分で、横フレーム(連結用枠体12)に伝動ケース(ミッションケース30)を連結することは、当業者であれば、適宜採用しうる設計事項にすぎない。
そして、本件発明のように構成したことによる格別の効果も認められない。
したがって、訂正発明は、上記刊行物1及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件訂正請求は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する同法126条第4項の規定に違反するので、当該訂正は認めない。
3.異議申立てについての判断
(3-1)本件発明
請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「走行機体側の動力取り出し軸(8)から伝動ケース(6)を介して横向き駆動軸(18)に動力が伝えられ、この駆動軸(18)から複数の植付伝動ケース(9)に動力を分岐伝動して、横方向に並列配備した複数の植付機構(2)を駆動するよう構成してある苗植付機構であって、横方向にほぼ全幅に亘って延びる横フレーム(7)を配備し、この横フレーム(7)に、前記伝動ケース(6)を連結するとともに、前記各植付伝動ケース(9)を片持ち状に連結し、前記駆動軸(18)を前記横フレーム(7)の外方側に配設してこの駆動軸(18)から前記各植付伝動ケース(9)に動力を伝えるよう構成してある苗植装置。」
(3-2)刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由において示した刊行物1(特開昭52-34212号公報)及び刊行物2(特公昭60-43085号公報)は、それぞれ、上記「(2-3)刊行物記載の発明」に記載したとおりの発明が記載されている。
(3-3)対比・判断
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、上記「(2-4)対比・判断」の相違点(1)〜(3)で相違しているが、本件発明を減縮した訂正発明は、上記「(2-4)対比・判断」において述べたとおり、訂正発明の上位概念である本件発明も、上記刊行物1及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものということができる。
(3-4)むすび
上記のとおり、本件発明は、上記刊行物1及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-06-29 
出願番号 特願平3-154231
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (A01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 木原 裕
新井 重雄
登録日 1997-04-04 
登録番号 特許第2622208号(P2622208)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 苗植付装置  
代理人 廣瀬 哲夫  
代理人 北村 修一郎  

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