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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1003799
異議申立番号 異議1997-71073  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-01-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-03-05 
確定日 1999-09-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第2532478号「半導体装置の製造方法」の特許について、次のとおり決定する。 
結論 特許第2532478号の特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許2,532,478号に係る主な手続の経緯は以下のとおりである。
特許出願 昭和62年6月26日
特許権設定登録 平成8年6月27日
特許公報発行日 平成8年9月11日
特許異議の申立て 平成9年3月5日
取消理由通知 平成9年5月13日
訂正請求 平成9年7月29日
訂正拒絶理由通知 平成9年11月17日
意見書 平成10年1月30日
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的等について
(1.1)訂正事項1について
特許発明の明細書に記載された特許請求の範囲請求項1において、「前記ゲート電極に対して対称形状の前記高濃度不純物層を形成する」という構成を付加する訂正は、特許請求の範囲の減縮に相当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。
(1.2)訂正事項2について
明細書第3頁第8行において「特公昭」を「特開昭」とする訂正は、誤記の訂正に該当する。
(1.3)訂正事項3について
明細書第5頁第8行において「5s」を「8s」とする訂正は、誤記の訂正に該当する。
(1.4)訂正事項4について
明細書第5頁第4行における「75d」を「8d」とする訂正は、誤記の訂正に該当する。
(2)独立特許要件について
(2.1)本件発明
訂正明細書の特許請求の範囲第1項に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正明細書及び図面からしてその特許請求の範囲請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「第1導電型の半導体基板に選択的に形成され、直交するゲートパターンを有する複数のMOSトランジスタの形成領域となる部分に第2導電型のチャネル領域を形成する工程と、前記チャネル領域の前記半導体基板表面に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極をマスクとして、前記半導体基板表面をイオンビームの入射方向に対して傾けて第1のイオン注入を行ない第1導電型の高濃度不純物層を前記チャネル領域の下部の一部を含む如く形成する工程と、ゲート電極側面を覆う如く絶縁膜を形成する工程と、側面を前記絶縁膜で覆われたゲート電極をマスとして第2のイオン注入を行ない第2導電型のソース及びドレインを形成する程と、その後の熱処理工程とを有する半導体装置の製造方法であって、前記第1のイオン注入を行なう工程において、前記半導体基板表面をイオンビームの入射方向に対して角度を傾け全部で2または4回のイオン注入を行ない、1回ごとの前記半導体基板の回転角度を各々約180度または90度とし、前記ゲート電極に対して対称形状の前記高濃度不純物層を形成する、半導体装置の製造方法。」
本件発明は、上記構成を採用することにより、半導体装置、特に埋め込みチャネルMOS形トランジスタにおいて、サブスレショルド域電気特性を維持しつつ、デバイスの微細化が可能となり、かつソース,ドレインの向きによらず対称な電気特性を得ることができるという効果を奏するものである。
(2.2)引用刊行物記載の発明
平成9年5月13日付け取消理由通知書において引用した刊行物1(特開昭62-76617号公報)には、その第2頁右下欄第18行〜第3頁左下欄第16行において、「第1図に本発明方法の実施例を示す。本実施例では半導体基板1の表面にレジスト膜2を形成した後、該レジスト膜2に互いに垂直に配置された2個の同一面積のレジスト開口2aを形成し、このレジスト開口2a内に該基板1の法線に対して8゜傾いた方向からイオンビーム3を照射しつつ該イオンビーム3を半導体基板1の表面に沿って全面スキャンした。この時のドーズ量は0.25×1013cm-2となるようにイオン電流を設定した。次に、半導体基板1をその中心軸線のまわりに9O°平面的に回転させた後、再び同じドーズ量になるようにイオン電流を設定してイオンビーム3を半導体基板1の表面に沿って全面スキャンした。そして90°回転における以上の操作を、最初の半導体基板の位置から180°と270°回転させたところでも行って、第1図(b)に示すように互いに向きの異なる二つのイオン注入領域8と9を半導体基板1内に形成した。」と記載され、その効果として、「イオン注入予定領域内にイオン不注入領域を生じさせることがないため、電気的特性のすぐれた素子を高密度に集積した高密度半導体装置を製造することができ、又、すべての方向において同じ不純物分布となるので半導体基板上の素子の向きにかかわらず、同一の素子は同一の特性を持つこととなり、この結果、回路設計や素子形成における困難性や煩雑性が除かれる」と記載されている。
同じく刊行物2(特開昭62-113474号公報)には、特許請求の範囲第1項において、「MOSFET素子の製造工程で、イオン注入角度を変化させてLDD構造を作成する半導体集積回路の製造方法」と記載され、第2頁左上欄第16行〜同左下欄第5行において、「例えば、第1図に示すようにMOSFET素子のLDD構造を形成する場合を考える。MOSFETのゲート電極の側壁部に、例えばSiO2の層(9)を形成させておき、先ず高ドーズ量(1014〜1015cm-2)のイオン注入(8)を半導体基仮に対してほぼ垂直に行う。そして次に低ドーズ量(1013〜1014cm-2)のイオン注入(7)を半導体基板に対して垂直な線と角度 だけ、ゲート電極のゲート長方向についてドレインのある側に傾けて行う(但し7゜<Θ<90゜)。すると不純物濃度が1018〜1020cm-3と高い領域(6)の更に内側に不純物濃度が1016〜1018cm-3と低い領域(5)が形成される。・・・・・また、従来の方法では、ソース側とドレイン側の両方の拡散領域の内側に、不純物濃度の低い領域が形成されるが、LDD構造の目的は、ホットキャリアの生成を抑制することであり、低濃度領域はドレイン側には必要ではない。そこで、本発明によるイオン注入方法を用いれば、基板内で全てのゲート電極が同じ方向に形成してあり、その同じ側にドレイン領域がある場合には、ゲート電極から見て、ドレインのある側へ傾けた方向から一定の勾配をもたせて低ドーズ量のイオン注入を行えばドレイン側にのみ、不純物濃度が低い拡散領域を高濃度の領域の内側に形成することもできる。」と記載されており、第2頁左下欄第19行〜同右下欄第7行において、「次に、低ドーズ量(1013〜1014cm-3)のAs+イオン注入(7)をゲート電極(4)のゲート長方向についてドレインのある側に基板(1)表面に対して垂直な線から角度θだけ傾けて行う。所望であればソース側からもイオン注入してよい。このようにイオン注入を行うことにより不純物濃度の高い(1018〜1020cm-3)拡散領域(6)の内側の部分に不純物濃度の低い(1016〜1019cm-3)領域を(5)を形成できる。」と記載されている。
すなわち、刊行物2には、MOSFETの作成において、ゲートの端部下部近傍に拡散領域を形成するためにはゲート電極等をマスクとして斜め上からイオンを注入することおよびLDDの形成においてはソース及びドレインが基板内で全て同じ方向に並んでいる場合は一定方向からイオンを注すればよいが、所望であれば他の方向からからもイオン注入すればよいことが記載されている。
同じく刊行物3(特開昭61-160975号公報)には、第2頁右下欄第1行〜同第18行において、「第2図〜第4図は、第1図に示された0.5μmのゲート長をもつP型埋め込みチャネルMOSFETの製造工程を説明するものである。第2図に示すごとく、通常工程にしたがってn-ウエル7を形成した後、スレッショルド電圧vt制御用のBF2を40keV、ドーズ量3.2×1012/cm2で200Åの酸化膜を通してイオン注入して、p型チャネル領域5を形成し、10OÅのゲート酸化膜3とゲート電極2を選択的に形成する。次に第3図のように、燐を130keV、ドーズ量1.0×1012/cm2で注入し、p型チャネル領域5の直下のn+層6を形成する。次に第4図のごとく化学蒸着法いわゆるCVD法でSiO2を堆積した後、エッチング除去を行ってSiO2側壁を形成した後、自己整合的にソース・ドレイン領域1をBF2を40keV、ドーズ量3×1015/cm2で注入して形成する。この後、図示していないが周知の方法でMOSFETを完成させる。」と記載され、その効果として、「本発明は、埋込みチャネル形のMOS型電界効果トランジスタであって、チャネル領域の直下の一部でソース、ドレイン領域の側部にチャネル領域と反対導電型の高濃度不純物層を形成しているため、サブスレッショルド電流係数が小さく、ドレイン電圧によるVT変動をおさえることができる。」(第3頁左上欄「発明の効果」の項)と記載されている。ここで、「n-ウエル7を形成し」とは、半導体基板の一部にMOSFETを作成する領域を形成することであるので、「半導体基板に選択的に形成され」ることを意味しており、かつMOSFET集積回路であるので、「複数MOSトランジスタ形成領域」を意味している。
したがって、上記刊行物3には、第1導電型(n-型)半導体基板に選択的に形成され、ゲートパターンを有する複数のMOSトランジスタの形成領域となる部分に第2導電型(p型)のチャネル領域を形成する工程と、前記チャネル領域の前記半導体基板表面に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極をマスクとして第1のイオン注入を行ない第1導電型の高濃度不純物層を前記チャネル領域の下部の一部を含む如く形成する工程と、ゲート電極側面を覆う如く絶縁膜を形成する工程と、側面を前記絶縁膜で覆われたゲート電極をマスとして第2のイオン注入を行ない第2導電型のソース及びドレインを形成する程とを有する半導体装置の製造方法が記載されていると認められる。
同じく、刊行物4(特開昭54-158177号公報)には、第1導電型の半導体基板に選択的に形成され、直交するゲートパターンを有する複数のMOSトランジスタの形成領域となる部分にイオンビームの入射方向に対して傾けて4方向からイオンビームを照射する半導体装置の製造方法が記載されている。
(2.3)対比
本件発明(以下「前者」という。)と上記刊行物3に記載されている発明(以下「後者」という。)とを比較すると、両者は、第1導電型の半導体基板に選択的に形成され、ゲートパターンを有する複数のMOSトランジスタの形成領域となる部分に第2導電型のチャネル領域を形成する工程と、前記チャネル領域の前記半導体基板表面に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極をマスクとして第1のイオン注入を行ない第1導電型の高濃度不純物層を前記チャネル領域の下部の一部を含む如く形成する工程と、ゲート電極側面を覆う如く絶縁膜を形成する工程と、側面を前記絶縁膜で覆われたゲート電極をマスとして第2のイオン注入を行ない第2導電型のソース及びドレインを形成する程とを有する半導体装置の製造方法である点において一致し、以下の点において相違している。
▲1▼前者においては、直交するゲートパターンを有しているのに対し、後者には、直交するものを有しているか否か不明である点。
▲2▼前者においては、熱処理工程を有しているが、後者には、熱処理に関する記載がない点。
▲3▼前者においては、前記第1のイオン注入を行なう工程において、前記半導体基板表面をイオンビームの入射方向に対して角度を傾け全部で2または4回のイオン注入を行ない、1回ごとの前記半導体基板の回転角度を各々約180度または90度とし、前記ゲート電極に対して対称形状の前記高濃度不純物層を形成しているのに対し、後者においては、イオンを注入することは記載されているが、イオンの注入方向等については記載されていない点。
(2.4)上記相違点についての判断
上記相違点▲1▼について
半導体基板上に直交するゲートパターンを有するものは、上記刊行物4において知られているので、一定方向のみならず直交するゲートパターンを有するものに、埋め込みチャンネルMOSFETを形成することは当業者が容易になし得たことと認める。
上記相違点▲2▼について
半導体製造方法においては、一般に、イオン注入を行った後には熱処理することが普通であるので、本件のMOSFETの場合においてもイオン注入の後に熱処理することは当業者が容易になし得たことと認める。
上記相違点▲3▼について
上記刊行物2には、MOSFETの作成において、ゲートの端部下部近傍に拡散層を形成するためにゲート電極等をマスクとして斜めからイオンを注入することおよびLDD形成においてソース及びドレインが基板内で全て同じ方向に並んでいる場合は一定方向からイオンを注入すればよく、所望であれば他の方向からからもイオン注入すればよいことが記載されている。すなわち、ソース及びドレインが必ずしも一定方向に並んでいない場合にはイオンビームと半導体基板とを相対的に180°回転して2回イオン注入すればよいことが示唆されており、その状況が刊行物2の第1図に示されている。そして、その場合、イオン注入は、どちらがソース及びドレインになるか設計前には決定できない場合もあることから、ゲート電極に対して対称形状に行われるのは当然のことと認められる。したがって、埋め込みMOSFETのゲート電極の端部下部に高濃度不純物層を形成するに当たっては、半導体基板とイオンビームとを相対的に180°回転して2回、基板に傾けてイオン注入を行い、ゲート電極に対して対称形状の不純物層を形成することは当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、本件発明の奏する効果、すなわち、半導体装置、特に埋め込みチャネルMOS形トランジスタにおいて、サプスレショルド域電気特性を維持するという効果については、上記刊行物3に記載されており、デバイスの微細化が可能となり、かつソース,ドレインの向きによらず対称な電気特性を得ることができるという効果は、上記刊行物2及び3記載の発明に基いて当業者が容易に想到しうる程度のものであり格別のもではない。
(2.5)特許権者の主張について
上記当審の判断に対し、特許権者は、以下のとおり主張する。
▲1▼刊行物3には、本件発明を想起する動機付けがない。
▲2▼EPS領域と刊行物2のLDD構造とが同一視されている。
▲3▼刊行物2の解釈(相違点3)に飛躍がある。
しかしながら、上記▲1▼に関しては、刊行物3には、ゲート電極端部の下部近傍に斜め上から不純物をイオン注入することは示唆されていないが、刊行物3には、本件発明の製造法の対象とするゲート電極端部の直下に不純物が導入された半導体装置が記載されており、また、刊行物2には、ゲート電極端部の下部近傍に斜め上から不純物をイオン注入する方法が記載されているので、刊行物3に記載されている上記半導体装置に刊行物2記載の方法を応用することは当業者が容易になし得たことと認められる。次に、上記▲2▼に関しては、EPS領域とLDD領域は、共にゲート電極端部の下部近傍に不純物が導入されている点において共通しているので、LDD領域を形成するために、ゲート電極端部の下部近傍に斜め上方よりイオン注入する方法が知られていれば、EPS領域を形成するためにゲート電極端部の下部近傍に不純物を導入する方法として、上記LDD領域を形成する方法を応用することは当業者が容易になし得たことと認められる。最後に、上記▲3▼に関しては、刊行物▲2▼において、その従来例が示されている第2図(a)及び(b)並びにその説明を参照すると、LDD部分は、ドレイン側及びソース側が対称的に形成されているので、斜め上方からイオン注入する場合においても対称的にすることは当然の対処であると認められるので、刊行物▲2▼の解釈に飛躍があるとは考えられない。
(2.6)この項のむすび
したがって、本件発明は、上記刊行物1ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第4項の規定により認めることができない。
3.特許異議の申立てについての判断
(3.1)本件特許発明の要旨は、特許明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「第1導電型の半導体基板に選択的に形成され、直交するゲートパターンを有する複数のMOSトランジスタの形成領域となる部分に第2導電型のチャネル領域を形成する工程と、前記チャネル領域の前記半導体基板表面に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極をマスクとして、前記半導体基板表面をイオンビームの入射方向に対して傾けて第1のイオン注入を行ない第1導電型の高濃度不純物層を前記チャネル領域の下部の一部を含む如く形成する工程と、ゲート電極側面を覆う如く絶縁膜を形成する工程と、側面を前記絶縁膜で覆われたゲート電極をマスとして第2のイオン注入を行ない第2導電型のソース及びドレインを形成する程と、その後の熱処理工程とを有する半導体装置の製造方法であって、前記第1のイオン注入を行なう工程において、前記半導体基板表面をイオンビームの入射方向に対して角度を傾け全部で2または4回のイオン注入を行ない、1回ごとの前記半導体基板の回転角度を各々約180度または90度としてなることを特徴とする半導体装置の製造方法。」
(3.2)上記特許明細書に記載された請求項1は、上記訂正明細書に記載された請求項1に比べて、「ゲート電極に対して対称形状の前記高濃度不純物層を形成する」という構成要件を欠くものであるから、上記(2)の「独立特許要件について」の記載において、上記構成要件を省いた理由により、上記特許明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された発明は、上記刊行物1ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
4.むすび
以上のとおりであるので、本件特許は、特許法第113条第1項第2号に該当するので、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1998-06-30 
出願番号 特願昭62-160028
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岡 和久  
特許庁審判長 小林 邦雄
特許庁審判官 小野田 誠
河口 雅英
登録日 1996-06-27 
登録番号 特許第2532478号(P2532478)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 滝本 智之  

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