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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01R
管理番号 1003815
異議申立番号 異議1998-71988  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-01-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-27 
確定日 1999-06-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第2668768号「電気的特性測定用プローブ装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2668768号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1 本件発明
本件特許第2668768号(平成5年12月16日出願、平成9年7月4日設定登録)の請求項1及び2に係る各特許発明は、特許明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】測定対象となる試料を載せる試料台と、その試料台上の試料に接触せしめられる測定針とを有し、外部で計測器と接続して前記試料の電気的特性の評価を行う電気的特性測定用プローブ装置において、前記試料台につき、その試料接触面の導電部を計測用電極として、その計測用電極を含めて絶縁体を介挿せしめた三重電極構造とし、且つ前記計測器から計測用電極までの間を連絡する計測線の構成につき、該計測線を中心軸電極として絶縁体を介挿せしめた同じく三重電極構造とし、試料台の中間電極を計測線の中間軸電極に繋いでガード用に前記計測器に連絡すると共に、試料台の最下側電極を計測線の最外軸電極に繋いで計測器のシャーシに繋ぎ計測器のシャーシと同電位になるようにしたことを特徴とする電気的特性測定用プローブ装置。
【請求項2】請求項1に記載された電気的特性測定用プローブ装置の構成を備えると共に、その試料台の構成中に、試料の加熱又は冷却が可能な加熱装置又は冷却装置が設置されていることを特徴とする電気的特性測定用プローブ装置。」
2 引用刊行物記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物1〜刊行物3には、つぎのとおりの発明が記載されている。
(1)刊行物1(特開平2-220453号公報)
半導体ウエファ上に形成されている半導体集積回路などのウエファ上電子回路を、それに探針を接触させて検査するウエファ上電子回路検査装置(2頁〔産業上の利用分野〕)に関し、「従来のウエファ上電子回路検査装置の場合、ウエファ載置台6自体が、外部から電磁遮蔽されていないため、ウエファ5を通る電流が、ウエファ載置台6を通る過程で、雑音の影響を受けるおそれを有する。」(5頁左下欄15〜19行)ことから提案された発明が記載され、その実施例4は、以下のとおりである。
「第4図に示す本発明によるウエファ上電子回路検査装置は、次の事情を除いて、第2図で上述した従来のウエファ上電子回路検査装置と同様の構成を有する。
すなわち、ウエファ載置台6を構成している絶縁材部23内に、ウエファ載置部24を取囲んでいる電磁遮蔽体51が設けられている。(略)
また、同軸コネクタ26が、3軸コネクタ52に置換され、そして、その3軸コネクタの接地用端子(外部導体)がウエファ載置台6の基部21に連結され、また、第1の信号用端子(中心導体)がウエファ載置台6のウエファ載置部24にリード線53を介して連結され、策2の信号用端子(中心導体と外部導体間の断面環状導体)が電磁遮蔽体41(51の誤りと認める。)にリード線54を介して連結されている。」(9頁右上欄17行左下欄15行)
ウエファ載置部24上にはウエファ5が載置され、[ウエファ5上に形成される電子回路検査を行う場合において、検査用信号の授受は、探針10の外、同軸線82及び3軸コネクタ31と、その3軸コネクタ31から検査装置本体に延長している3軸線(図示せず)を介して行われる。」(8頁右上欄12行〜17行)
「第4図に示す本発明によるウエファ上電子回路検査装置の場合、電磁用遮蔽体51を有するので、第2図で上述した従来のウエファ上電子回路検査装置の場合に比しより高い電磁遮蔽効果を得ることができるとともに、電磁遮蔽体51が3軸コネクタ42の第2の信号用端子に連結されているので、電磁遮蔽体41(51の誤記と認める。)に、3軸コネクタ52とリード線54を介して、ウエファ載置部24と同じ電位を印加させることができるので、電磁的な誘導雑音を有効に回避することができる。」(9頁右下欄10〜15行)
(2)刊行物2(実願平2-2256号(実開平3-95645号)のマイクロフィルム)
半導体の微小電流測定に用いるプローブ針に関し(1頁〔産業上の利用分野〕)、「従来のプローブ針は外皮をシールドとして使用するため静電気的ノイズには強いが電磁気的ノイズに弱いという問題点があった。この考案は上記のような問題点を解決するためになされたもので、最外皮の内側にさらに金属ガード層を設けて両方のノイズ防止効果を目的としたものである。」 (2頁〔考案が解決しようとする課題〕)
また、「測定器(5)よりのガード出力は、市販の低雑音ケーブル(6)及びコネクタ(7)を経由してプロープ針に加えられる。」(同頁15〜17行)との記載及び手続補正書の訂正図面(第1図)によれば、タングステン針(1)は、それぞれ絶縁物(2)を介してガード金属皮膜(3)とシールド金属皮膜(4)で被われ、最外皮のシールド金属皮膜(4)は低雑音ケーブル(6)に接続され、測定器(5)内で接地されていることが認められる。
(3)刊行物3(実願昭58-111787号(実開昭60-19977号)のマイクロフィルム
温度を変えながら行われる半導体測定用の試料台に関し(2頁3〜4行)、「試料台1は上部に試料2をマウントする面と熱交換部3と冷凍部4とから成る。冷却装置はガス圧縮機6、冷凍部4、低圧ガス用パイプ7および高圧ガス用パイプ8から成り、ガスの断熱膨脹を利用して冷却を行う種類のものである。加熱装置は熱媒体加熱機9と循環用ポンプ10とから成り、加熱された熱媒体はパイプ11により熱交換部3に供給される。」(4頁14行〜5頁1行)。
3 対比・判断
(1)請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)について
本件発明1と刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比すると、本件発明1の「試料台」、「測定針」、試料台における「計測用電極」「中間電極」「最下側電極」は、それぞれ、引用発明1の「ウエファ載置台6」、「探針10」、ウエファ載置台6における「ウエファ載置部24」「電磁用遮蔽体51」「基部21」に相当するから、引用発明1の試料台であるウエファ載置台も3重電極構造であり、また、引用発明1においても、3軸コネクタ52の最外軸電極が基部21に連結され、中心軸電極がウエファ載置部24にリード線53を介して連結され、中間電極が電磁遮蔽体51にリード線54を介して連結され、さらに、3軸コネクタ52は本件発明の計測器に相当する検査装置本体に計測線に相当する3軸線で接続されると認められるから、本件発明1と引用発明1とは、「測定対象となる試料を載せる試料台と、その試料台上の試料に接触せしめられる測定針とを有し、外部で計測器と接続して前記試料の電気的特性の評価を行う電気的特性測定用プローブ装置において、前記試料台につき、その試料接触面の導電部を計測用電極として、その計測用電極を含めて絶縁体を介挿せしめた三重電極構造とし、且つ前記計測器から計測用電極までの間を連絡する計測線の構成につき、該計測線を中心軸電極として絶縁体を介挿せしめた同じく三重電極構造とし、試料台の中間電極を計測線の中間軸電極に繋いでガード用に前記計測器に連絡すると共に、試料台の最下側電極を計測線の最外軸電極に繋いでなることを特徴とする電気的特性測定用プローブ装置。」で一致し、本件発明1が、計測線の最外側電極を計測器のシャーシに繋ぐことによって、試料台の最下側電極を計測器のシャーシと同電位になるようにしたのに対して、引用発明1では、この構成に関し明らかでない点で相違する。
そこで、相違点について検討すると、刊行物2には、半導体の微小電流測定に用いるプローブ針に関し、3軸構成とされたプローブ針が3軸のケーブルを介して計測器に接続され、ケーブルの最外側電極が計測器内で接地されていることが認められ、一般に計測器内で接地することは計測器のシャーシに繋ぐことであることを考慮すると、本件発明1のように計測線の最外側電極を計測器のシャーシに繋ぐことは、当業者にとっては格別のことではなく、普通に採用しうるものといわざるをえない。(ちなみに、本件明細書においても、「従来の試料台が試料接触面の計測用電極を含め絶縁体を介挿させた二重構造であり、その最下側電極を測定器のシャーシに繋ぐ」(本件特許公報4欄37〜39行)「最下側電極(通常測定器側で接地)」(同42〜43行)と記載されている。)
したがって、本件発明1は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に推考し得たものである。
(2)請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)について
本件発明2と引用発明1とを対比すると、本件発明1と引用発明1との相違点に加えて、本件発明2が、その試料台の構成中に、試料の加熱又は冷却が可能な加熱装置又は冷却装置が設置されているのに対し、引用発明1はこれを備えていない点で相違すると認められるが、刊行物3にも記載されているように、試料に温度変化を与えるために、試料台に加熱装置又は冷却装置を設けることは周知であるから、引用発明1の試料台の構成中に加熱装置又は冷却装置を設けることは、当業者が適宜なし得るものと認められる。
したがって、本件発明2は、刊行物1〜刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に推考し得たものである。
特許権者は、特許異議意見書で、刊行物1及び2には、いずれも試料台自身内部から発生するノイズの影響を排除するという思想は存在せず、3重電極構造にした上に最外側電極を計測器のシャーシに繋いで同電位とする構成もないから、本件発明の構成は容易に発明しうるものではないと主張するが、引用発明1の課題は、「ウエファ載置台6自体が、外部から電磁遮蔽されていないため、ウエファ5を通る電流が、ウエファ載置台6を通る過程で、雑音の影響を受けるおそれを有する。」というもので、そのために、試料台(ウエファ載置台)を3重電極構造としたものであるから、3重電極構造の外側からのノイズを遮蔽しようとする点において本件発明の課題と共通し、また、上述のように、3重電極構造の最外側電極を計測器のシャーシに繋いで同電位とすることは、当業者にとって普通のことであり、さらに、作用効果についても、本件発明が、当業者の予測を越えた格別の作用効果を奏するとは認めらないから、特許権者の主張は採用できない。
4 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明の特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。
請求項2に係る発明は、刊行物1〜刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る発明の特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、請求項1ないし請求項2に係る発明の特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-04-28 
出願番号 特願平5-342767
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G01R)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中塚 直樹  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 志村 博
新井 重雄
登録日 1997-07-04 
登録番号 特許第2668768号(P2668768)
権利者 ベクターセミコン株式会社
発明の名称 電気的特性測定用プローブ装置  
代理人 佐藤 英世  

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