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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H01S
管理番号 1003831
異議申立番号 異議1997-73136  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-06-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-07-07 
確定日 1999-06-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第2569087号「半導体レーザ素子」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2569087号の特許を取り消す。 
理由 1、手続きの経緯
本件特許の出願 昭和62年11月27日
特許権設定登録 平成8年10月3日
特許異議の申立て(申立人:シャープ株式会社)
平成9年7月7日
取消理由通知 平成9年10月24日
訂正請求 平成9年12月24日
訂正拒絶理由通知 平成10年4月20日
訂正請求書の補正 平成10年7月6日
訂正拒絶理由通知 平成10年8月12日
2、訂正の適否
(独立特許要件について)
イ、訂正明細書の請求項1に係る発明について
特許請求の範囲の減縮と明瞭でない記載の釈明とを目的として補正された訂正明細書の請求項1に係る発明は、同訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「平坦な形状をもつ半導体活性層の両端を、活性層よりも禁制帯幅が大きく、かつ屈折率の小さな半導体クラッド層でサンドウィッチした構造を有し、少なくとも一方のクラッド層の厚さが、光導波部において、その外側よりも厚くなっているような、ストライプ状凸形状、あるいは逆凸形状を有し、かつ該クラッド層のストライプ状凸形状、あるいは逆凸形状の外側の領域に該クラッド層と反対導電型の半導体電流狭窄層を有する半導体レーザ素子において、上記半導体レーザ素子の構造パラメータが上記光導波路の一部でパルセーション現象を生じるように設定され、該ストライプ状凸形状、あるいは逆凸形状の幅が半導体レーザ素子の少なくとも光ビーム取り出し側の反射面近傍で広くなっており、かつ、その変化がなめらかであり、上記広がった幅により上記光導波路内のレーザスポットサイズを拡大して上記光ビームの拡がり角を設定することを特徴とする、半導体レーザ素子。」
ロ、引用出願の発明
訂正明細書の請求項1に係る発明に対し、特許異議申立人が甲第1号証として提出し、当審が訂正拒絶理由通知において示した出願(特願昭62-333967号出願のうち、昭和62年8月4日付けの国内優先権主張の根拠となった特願昭62-195722号に記載された部分、以下「引用出願」という。)の明細書及び図面には、p型GaAs基板上に形成された共振器中央部で幅が4μm、端面近傍でなめらかに広がる幅が10μmの逆凸形状ストライプ溝を有するVSIS型半導体レーザ素子が記載されている。
ハ、対比・判断
訂正明細書の請求項1に係る発明と引用出願の明細書及び図面に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。
上記補正された訂正請求書において、本件特許公報の第2頁第3欄第13〜第19行記載の「上記の特性を実現している半導体レーザの例としては、応用物理学会講演会予稿集9P-K-7,p.170(1981年秋)において論じられている形のもので、構造パラメータを適切に設定することにより、自励発振(パルセーション)現象が発生し、マルチ軸モード発振で、かつ、各スペクトル線幅の広い、すなわち、コヒーレンシーの適度に悪いものが得られている。」という箇所が、同訂正明細書の第2頁第7〜11行の「上記の特性を実現している半導体レーザの例としては、応用物理学会講演会予稿集9P-K-3,p.170(1981年秋)において論じられている形のレーザ素子において、その構造パラメータを適切に設定することにより、自励発振(パルセーション)現象が発生し、マルチ軸モード発振で、かつ、各スペクトル線幅の広い、すなわち、コヒーレンシーの適度に悪いものを得ることができる。」
という記載に補正されたが、当初の明細書の同記載部分の趣旨が、応用物理学会講演会予稿集の該当箇所における半導体レーザ素子において、“自励発振(パルセーション)現象が発生し、マルチ軸モード発振で、かつ、各スペクトル線幅の広い、すなわち、コヒーレンシーの適度に悪いものが得られている。”というものであるから、訂正明細書中の該当記載部分も、同じように、応用物理学会講演会予稿集9P-K-3,p.170(1981年秋)記載の半導体レーザ素子は自励発振現象が生じているという趣旨を述べていると解される。
ところで、訂正明細書中に記載の応用物理学会講演会予稿集9P-K-3,p.170(1981年秋)には、VSIS型半導体レーザ素子においてp型GaAs基板上に共振器中央部で幅が4μmの逆凸形状ストライプ溝が形成されているなど、上記引用発明と、ストライプ端部近傍を除いてストライプ幅や材料、タイプなど、実質的に同一の半導体レーザ素子構造が示されている。この半導体レーザ素子は、前記したように、訂正明細書において自励発振を行うものと認められているものであるから、よって、上記引用発明も、自励発振(パルセーション)を生じる構造のものであると認められる。
次に、引用発明においては、端面付近のストライプ幅をなめらかな変化により10μmの大きさに広げているが、この大きさは、本件特許明細書に記載されているビーム広がり角を小さくできる端面ストライプ幅4μmより充分に大きいので、引用例記載の発明においても、端面部のストライプ幅は、出力光のビ一ム広がり角が小さくなるように、結果的には設定されている。
以上の点を勘案して、訂正請求され、かつ補正された本件特許発明を引用発明と対比すると、両者は同一である。
したがって、訂正請求に係る本件特許は、その出願の目前の特許法第41条第2項の規定により昭和62年8月4日に出願されたものとみなされた出願であって、その出願後に出願公開された上記引用出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本件出願の発明者がその出願前の出願に係る上記発明をしたものと同一であるとも、また、本件出願の時にその出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるから、独立して特許を受けることができない。
(むすび)
したがって、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する改正前の特許法126条第3項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
3、特許異議申立について
(本件発明)
本件請求項1に係る発明は、特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】平坦な形状をもつ半導体活性層の両端を、活性層よりも禁制帯幅が大きく、かつ屈折率の小さな半導体クラッド層でサンドウイッチした構造を有し、少なくとも一方のクラッド層の厚さが、光導波部において、その外側よりも厚くなっているような、ストライプ状凸形状、あるいは逆凸形状を有し、かつ該クラッド層のストライプ状凸形状、あるいは逆凸形状の外側の領域に該クラッド層と反対導電型の半導体電流狭窄層を有する半導体レーザ素子において、該ストライプ状凸形状、あるいは逆凸形状の幅が半導体レーザ素子の少なくとも光ビーム取り出し側の反射面近傍で広くなっており、かつ、その変化がなめらかであることを特徴とする、半導体レーザ素子。」
(第29条の2違反について)
当審が通知した取消理由に示した引用出願には、前記したように、p型GaAs基板上に形成された共振器中央部で幅が4μm、端面近傍でなめらかに広がる幅が10μmの逆凸形状ストライプ溝を有するVSIS型半導体レーザ素子が記載されている。この引用出願の記載内容と請求項1〜3記載の各発明とを比較すると、それぞれの発明と引用出願発明とは明らかに同一である。
したがって、本件請求項1に係る発明は、引用出願明細書に記載された発明と同一である。
そして、本件請求項1に係る発明の発明者が上記引用出願明細書に記載された発明と同一の者であるとも、本件出願の出願時の出願者が当該他の出願の出願人と同一の者であるとも認められない。
(むすび)
本件請求項1に係る発明は、上記引用出願明細書に記載された発明と同一であり、本件請求項1に係る特許は特許法第29条の2第1項の規定に違反してなされたものである。 したがって、本件請求項1に係る特許は、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める平成7年政令第205号第4条の規定により、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-03-31 
出願番号 特願昭62-297547
審決分類 P 1 651・ 16- ZB (H01S)
最終処分 取消  
前審関与審査官 原 光明  
特許庁審判長 張谷 雅人
特許庁審判官 左村 義弘
河口 雅英
登録日 1996-10-03 
登録番号 特許第2569087号(P2569087)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 半導体レーザ素子  
代理人 木下 雅晴  
代理人 小川 勝男  
代理人 小池 隆彌  

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