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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1003842 |
異議申立番号 | 異議1999-70166 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-11-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-22 |
確定日 | 1999-10-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2778349号「窒化ガリウム系化合物半導体の電極」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2778349号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2778349号の請求項1〜4に係る発明(以下、本件発明1〜4という。)は、平成4年4月10日に特許出願され、平成10年5月8日に設定登録され、その後、特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月16日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年9月10日に訂正請求の補正がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 ア.訂正の内容 ▲1▼ 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1において、「ニッケルを接して、オーミック接触」とあるを「ニッケルを接してその上に金が積層された少なくとも二層構造を有し、オーミック接触」と訂正する。 ▲2▼ 訂正事項b 特許請求の範囲の請求項2と請求項3を削除する。 ▲3▼ 訂正事項c 特許請求の範囲の請求項4を請求項2と訂正する。 ▲4▼ 訂正事項d 明細書の段落【0007】第2行目の「あるいは、Ptを含む白金電極を使用すること」を削除する。 ▲5▼ 訂正事項e 明細書の段落【0008】第1行目に【実施例】とあるを【実施例及び比較例】と訂正する。 ▲3▼ 訂正事項f 明細書の段落【0013】第1行目の「ないし請求項3」を削除する。 ▲7▼ 訂正事項g 明細書の段落【0013】第4行目の「p型窒化ガリウム系化合物半導体に接触する電極にニッケル電極を使用する」を削除する。 ▲3▼ 訂正事項h 明細書の段落【0013】の【請求項4】を【請求項2】と訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ.独立特許要件の判断 (訂正発明) 本件特許第2778349号の請求項1及び2に係る発明(以下、訂正発明1及び2という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】マグネシウムがドープされると共に、電子線照射またはアニーリングして低抵抗なp型となっている、一般式GaxAl1-xN(0≦x≦1)で表される窒化ガリウム系化合物半導体の表面に、ニッケルを接してその上に金が積層された少なくとも二層構造を有し、オーミック接触させてなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体の電極。 【請求項2】ケイ素をドープした、一般式GaxA11-xN(0≦x≦1)で表されるn型窒化ガリウム系化合物半導体の表面に、クロムが窒化ガリウム系化合物半導体に接する側とし、クロムの上にアルミニウムが形成されてオーミック接触してなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体の電極。」 (引用刊行物) これに対して、当審が取消理由通知で引用した甲第1号証(特開平4-68579号公報)の8頁左下欄11〜15行には、 「電極形成用の金属元素としてはAlに限って説明したがその他のIn、Ga、Ni、Ti、Cu、Au、Ag、Cr、Si、Ge等の単体あるいは混合金属膜のいづれもがオーミック用電極として適用可能であることは明らかである。」ということが記載されている。 同じく、甲第2号証(特開平3-218625号公報)の2頁左下欄8〜15行には、 「マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)或いは炭素(C)などのアクセプタ不純物を添加した((Ga1-xAl)1-yInyN:0≦x<1、0≦y<1)よりなる窒化ガリウム系化合物半導体結晶に電子線照射処理を行い、添加したアクセブタ不純物を活性化させp型窒化ガリウム系化合物半導体((Ga1-xAl)1-yInyN:0≦x<1、0≦y<1)よりなる結晶を得ること」が記載されている。 同じく、甲第3号証(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.31,1992 pp.L139-L142)のアブストラクトには、「マグネシウムがドープされると共にアニーリングして低抵抗なp型となっているGaNで表される窒化ガリウム系化合物半導体」が記載され、「N2雰囲気中、700℃以上でアニールするとMgドープGaNは、アニール前にはほぼ1×106Ωcmであったが、2Ωcmにに低抵抗化した。」ということが記載されている。 L139左欄1〜3行には、 「このGaN成長層は、青色発光LEDに用いられる。」ということが記載されている。 同じく、甲第4号証(特開平4ー63479号公報)の10頁左下欄2〜6行には、 「III-V族化合物半導体GaN、AlGaN、InGaN、InGaAlN等の化合物ならびに多元化合物半導体基板およびエピタキシャル基板を用いてヘテロ接合デバイスを構成する場合にも適用されることは明白である。」ということが記載されている。 更に、その10頁左下欄17〜同頁右下欄6行には、「発光素子形成に使用される電極用金属元素としては、Au(正極)、Al(負極)に限って説明したが、全く同様にAuとともにAg、Cr、Ni、Ti、Be、Te、Cu、Fe、In、Al、Pt、Pd等が単体、混合体あるいは多層膜として適用可能であり、またAlとともに、In、Ga、Ni、Ti、Ta、Cr、Si、Sn、Pd、Pt、Cd等が単体、混合体あるいは多層膜として適用可能であり、オーミツク電極として好適である。」ということが記載されている。 (対比・判断) ▲1▼訂正発明1について 本件発明1の「窒化ガリウム系化合物半導体の表面に、ニッケルを接してその上に金が積層された少なくとも二層構造を有し、オーミック接触させてなる」ことは、甲第1〜4号証のいずれにも記載されていない。 そして、訂正発明1は「窒化ガリウム系化合物半導体の表面に、ニッケルを接してその上に金が積層された少なくとも二層構造を有し、オーミック接触させてなる」ことにより、図1に示されるような作用効果を呈するものである。 なお、異議申立人は、甲第4号証には”窒化ガリウム系化合物半導体発光素子において、正極にAu、Niを単体もしくは多層膜として用いる”ことが記載されているから、”正極としてニッケルの上に金を積層する多層膜を形成する”ことは当業者であれば容易になし得る程度のものであると、主張している。 ところが、甲第4号証の10頁左下欄17〜同頁右下欄6行には、 「発光素子形成に使用される電極用金属元素としては、Au(正極)、Al(負極)に限って説明したが、全く同様にAuとともにAg、Cr、Ni、Ti、Be、Te、Cu、Fe、In、Al、Pt、Pd等が単体、混合体あるいは多層膜として適用可能であり、またAlとともに、1n、Ga、Ni、Ti、Ta、Cr、Si、Sn、Pd、Pt、Cd等が単体、混合体あるいは多層膜として適用可能であり、オーミック電極として好適である。」と記載されている。 上記甲第4号証の記載においては「ニッケルを接してその上に金が積層された少なくとも二層構造を有する」ことが選択肢の一つとして示唆されているにすぎないから、訂正発明1の「窒化ガリウム系化合物半導体の表面に、ニッケルを接してその上に金が積層された少なくとも二層構造を有し、オーミック接触させてなる」ことにより、図1に示されるような作用効果を呈することまでは、上記甲第4号証の記載から当業者といえども容易に予期し得ることではない。 してみると、異議申立人の前記の主張は当を得ないものである。 ▲2▼訂正発明2について 訂正発明2は、異議申立がなされていない訂正前の請求項4に係る発明である。 したがって、訂正発明1及び2は、甲第1〜4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 エ.むすび 以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立についての判断 ア.異議申立の理由の概要 異議申立人 高木 栄は、証拠として甲第1号証(特開平4-68579号公報)、甲第2号証(特開平3-218625号公報)、甲第3号証(Jpn.J.Appl.Phys.Vo1.31,1992 pp.L139-L142)及び甲第4号証(特開平4-63479号公報)を提出し、訂正発明1及び2は、甲各号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができるものであり、特許法第29条第2項に違反して特許されたものであるから、その特許を取り消すべき旨主張している。 イ.異議申立人が提出した甲各号証に記載の発明 上記「2.ウ.(引用刊行物)」の記載を参照。 ウ.訂正発明と異議申立人が提出した甲各号証に記載の発明との対比・判断 上記「2.ウ.(対比・判断)」で示したとおり、訂正発明1及び2は、甲各号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることができないから、特許法第29条第2項に違反して特許されたものとすることができない。 エ.むすび 以上のとおりであるから、異議申立の理由及び証拠によっては、訂正発明1及び2についての特許を取り消すことができない。 また、他に訂正発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 窒化ガリウム系化合物半導体の電極 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 マグネシウムがドープされると共に、電子線照射またはアニーリングして低抵抗なp型となっている、一般式GaxAl1-xN(0≦x≦1)で表される窒化ガリウム系化合物半導体の表面に、ニッケルを接してその上に金が積層された少なくとも二層構造を有し、オーミック接触させてなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体の電極。 【請求項2】 ケイ素をドープした、一般式GaxAI1-xN(0≦x≦1)で表されるn型窒化ガリウム系化合物半導体の表面に、クロムが窒化ガリウム系化合物半導体に接する側とし、クロムの上にアルミニウムが形成されてオーミック接触してなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体の電極。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は紫外、青色発光ダイオード、レーザーダイオード等に使用される窒化ガリウム系化合物半導体の電極に係り、特に半導体層とオーミック接触が得られる電極に関する。 【0002】 【従来の技術】 紫外、青色発光ダイオード、レーザーダイオード等の発光デバイスの材料として、一般式がGaxA11-xN(0≦x≦1)で表される窒化ガリウム系化合物半導体が知られている。しかし、室化ガリウム系化合物半導体の物性については、未だよく解明されておらず、窟化ガリウム系化合物半導体のp蜃層、およびn型層とオーミック接触を得ることのできる電極材料もよく知られていないのが実伏である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 窒化ガリウム系化合物半導体を利用して、低駆動電圧化、高輝度化した発光デバイスを実現するには、p型層およびn型層からオーミック接触を得ることが不可欠である。 【0004】 従来の窒化ガリウム系化合物半導体の電極には、金、インジウム、インジウムーアルミニウムが使用されている。しかしながら、これ等の電極は好ましいオーミック接触が得られず、駆動電圧が高くなる欠点がある。 【0005】 本発明はこのような事晴を鑑み成されたもので、窒化ガリウム系化合物半導体層にオーミック接触の得られる電極を提供して、高輝度化、低竜圧駆動化で 20きる発光デバイスを実現するものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明者らはMOCVD法を用い、サファイア基板上にSiをドープしたn型GaxA11-xNと、Mgをドープしたp型GaxAl1-xNとをそれぞれ成長させ、さらにp型GaxAl1-xNには電子線を照射、または500℃以上にアニーリングしてさらに低抵抗なp型とした後、n型及びp型GaxAl1-xNに数十種類の電極材料を蒸着して、オーミック接触の確認を取ったところ、特定の金属、またはそれらの合金に対してのみ良好なオーミック接触が得られることを発見し、本発明を成すに至った。 【0007】 本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の電極は、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体にはNiを含むニッケル電極を使用することを特徴とするものであり、また、n型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体には、Crを含むクロム電極を使用することを特徴とするものである。 【0008】 【実施例及び比較例】 図1にp型GaxAl1-xNに電極を蒸着し、その電流電圧特性を測定してオーミック接触を調べた結果を示す。この図において、(1)は白金電極単独、▲2▼はNiをベースとし、その上にAuを設けた電極、▲3▼はAu電極単独である。また、いうまマもなくNi電極単独、またはNiをベースとしその上にPt、Agを設けた場合は▲2▼と同一の直線となる。 【0009】 この図に示すようにいずれの電極材料でもp型層に対しオーミック接触が得られるが、特に好ましい電極材料として ▲1▼Pt、 ▲2▼Niベースの電極を挙げることができる。 特にNiをベースとすることにより、例えば、p型GaxAl1-xNに対しアニーリング等の熱処理を行った場合、Au電極単独であれば剥がれ落ちてしまう欠点があるが、アニーリングの熱にも耐えることができ、強固に電極を付着させることができる。蒸着する好ましいNiの厚さは0.01μm〜0,5μmであり、その上に形成するAuの厚さは0.01μm〜0,8μmである。それらの範囲で電極を形成することにより、剥がれ落ちにくく、良好なオーミック接触が得られる。 【0010】 図2にn型GaxAl1-xNに同じく電極を蒸着し、その電流電圧特性を測定してオーミック接触を調べた結果を示す。この図において、▲4▼は本発明の実施例の電極、(E)は従来の比較例の下記の電極の電流電圧特性を示す。 ▲4▼はC「をベースとし、その上にA1を設けた電極、(5)はA1電極単独である。 Cr電極単独、またはCrをベースとしその上にTi、Inを設けた場合は▲4▼と同一の直線となる。 【0011】 この図に示すように、▲4▼のCrベースのクロムが従来のA1電極に勝る優れた特性を示す。 【0012】 窒化ガリウム系化合物半導体に不純物をドープしてp型にし得る不純物とじてはMgを用い、またn型にし得る不純物としてはSiを用いる。 【0013】 【発明の効果】 本発明の請求項1に記載される窒化ガリウム系化合物半導体の電極は、p型窒化ガリウム系化合物半導体の表面に極めて低抵抗な状態でオーミック接触する。このため、低い駆動電圧で高輝度に発光できる発光ディバイスを実現できる。さらに、本発明の請求項1の電極は、p型窒化ガリウム系化合物半導体を熱処理する工程での剥離を有効に阻止できる特長も実現する。さらに、本発明の請求項2に記載されるクロム電極は、n型窒化ガリウム系化合物半導体の表面に極めて低抵抗な状態でオーミック接触する。このため、低い駆動電圧で高輝度に発光できる発光ディバイスを実現する。このため、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体に接続される電極は、GaxAl1-xNに低抵抗な状態でオーミック接触され、これを利用して発光ダイオード、レーザーダイオード等の開発に向けてその利用価値は多大である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 電極を蒸着したp型GaxAl1-xNの電流電圧特性を示す図。 【図2】 電極を蒸着したn型GaxA11-xNの電流電圧特性を示す図。 |
訂正の要旨 |
訂正要旨 ▲1▼ 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1において、「ニッケルを接して、オーミック接触」とあるを「ニッケルを接してその上に金が積層された少なくとも二層構造を有し、オーミック接触」と訂正する。 ▲2▼ 訂正事項b 特許請求の範囲の請求項2と請求項3を削除する。 ▲3▼ 訂正事項c 特許請求の範囲の請求項4を請求項2と訂正する。 ▲4▼ 訂正事項d 明細書の段落【0007】第2行目の「あるいは、Ptを含む白金電極を使用すること」を削除する。 ▲5▼ 訂正事項e 明細書の段落【0008】第1行目に【実施例】とあるを【実施例及び比較例】と訂正する。 ▲6▼ 訂正事項f 明細書の段落【0013】第1行目の「ないし請求項3」を削除する。 ▲7▼ 訂正事項g 明細書の段落【0013】第4行目の「p型窒化ガリウム系化合物半導体に接触する電極にニッケル電極を使用する」を削除する。 ▲8▼ 訂正事項h 明細書の段落【0013】第7行目の「請求項4」を「請求項2」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-09-16 |
出願番号 | 特願平4-118227 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YA
(H01L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 後藤 時男、吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
小林 邦雄 |
特許庁審判官 |
河原 英雄 東森 秀朋 |
登録日 | 1998-05-08 |
登録番号 | 特許第2778349号(P2778349) |
権利者 | 日亜化学工業株式会社 |
発明の名称 | 窒化ガリウム系化合物半導体の電極 |
代理人 | 豊栖 康弘 |
代理人 | 石井 久夫 |
代理人 | 豊栖 康弘 |
代理人 | 石井 久夫 |