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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B60L
管理番号 1003903
異議申立番号 異議1998-74969  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-07 
確定日 1999-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2741295号「パンタグラフの離線計測方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 I.手続の経緯
特許第2741295号の請求項1及び請求項2に係る発明についての出願は、平成3年12月6日に特許出願され、平成10年1月30日にその特許の設定登録がなされ、その後、財団法人鉄道総合技術研究所より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年5月6日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のa〜gのとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1を削除する。
b.特許請求の範囲の請求項2を「パンタグラフの舟板に取り付けた光ファイバ加速度センサの光出力信号から、パンタグラブと業線との間の摺動振動成分を取り出し、その振幅の実効値の大きさを基準値と比較して離線を判定するパンタグラフの離線計測方法。」と訂正して、請求項1とする。
c.発明の詳細な説明中(特許公報第1頁右欄第15行)の「振動センサ」を「光ファイバ加速度センサ」と訂正する。
d.発明の詳細な説明中(特許公報第2頁左欄第4〜9行)の「本発明では、パンタグラフの舟板に振動センサを設ける。振動センサの出力からフィルタを用いて離線情報を含んだ信号を取り出す。この信号の振幅の実効値を基準値と比較して離線しているかどうかを判定する。振動センサとしては光ファイバ加速度センサを用いることができる。」を「本発明では、パンタグラフの舟板に取り付けた光ファイバ加速度センサの光出力信号から、パンタグラフと架線の間の摺動振動成分を取り出し、その信号の振幅の実効値の大きさを基準値と比較して離線を判定することを特徴とする。」と訂正する。
e.発明の詳細な説明中(特許公報第2頁左欄第40〜41行)の「ここでは、振動センサとして加速度センサを用いる。加速度センサとして」を「ここでは、光ファイバ加速度センサとして」と訂正する。
f.発明の詳細な説明中(特許公報第2頁右欄第1〜3行)の「バンドパスフィルタ8実効値回路9を介して、コンパレータ10に接続されている。」を「バンドパスフィルタ8および実効値回路9を介して、コンパレータ10に入力される。」と訂正する。
g.発明の詳細な説明中(特許公報第2頁右欄第10〜11行)の「同様に、(a)(b),(c)は」を「同様に、(b),(c)は」と訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記aの訂正は、請求項1を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記bの訂正は、「その振幅の実効値の大きさを基準値と比較するパンタグラフの離線計測方法」を「その振幅の実効値の大きさを基準値と比較して離線を判定するパンタグラフの離線計測方法」とする訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡娘し、又は変更するものではない。
上記c乃至eの訂正は、上記a,bの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記fの訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記gの訂正は、誤記の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、訂正後の特許請求の範囲に記載された発明は出願の際独立して特許を受けることができない理由は見当たらない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.特許異議申立てについての判断
請求項1に係る発明は、訂正の結果削除され、特許異議の申立ての対象が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パンタグラフの離線計測方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 パンタグラフの舟板に取り付けた光ファイバ加速度センサの光出力信号から、パンタグラフと架線の間の摺動振動成分を取り出し、その振幅の実効値の大きさを基準値と比較して離線を判定するパンタグラフの離線計測方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電気鉄道におけるパンタグラフと架線の離線を計測する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電気鉄道における架線とパンタグラフの離線を求める方法は、パンタグラフに印加されている電圧をPTもしくは抵抗分圧法で測定して、電圧が0ボルト(軌道の電圧を基準にして)になった状態を離線とする方法がある。また、2つのパンタグラフをブスで結んでブスに流れる電流をモニタして、2つのパンタグラフの離線を求めたり、パンタグラフを流れる負荷電流の大きさをモニタして、電流が0アンペアになった時を離線とする方法もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の電圧もしくは電流を監視するという電気量から離線を判定する方法では、架線とパンタグラフの間にアークが発生した場合は機械的には架線とパンタグラフが離れているにも関わらず、電気的にはアークによって短絡されて、架線とパンタグラフが同電位になり、電流は持続するために、離線を検出できない。
【0004】
そこで本発明は、光ファイバ加速度センサをパンタグラフの集電部である舟板に取り付けて、舟板の運動を測定することによって正確な離線を知るものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明では、パンタグラフの舟板に取り付けた光ファイバ加速度センサの光出力信号から、パンタグラフと架線の間の摺動振動成分を取り出し、その振幅の実効値の大きさを基準値と比較して離線を判定することを特徴とする。
【0006】
【作用】
上記の方法をとる本発明の離線計測方法では、パンタグラフの舟板の運動を直接監視するので、アークの有無に関わらず、正確な離線の測定ができる。
【0007】
パンタグラフの舟板の振動について、図3を用いて説明する。車体6は台車17のばね15によって支持されているので、軌道16の振動と合わせて、パンタグラフ3の振動となる。これは軌道16の継ぎ目などが原因であり、低周波の振動である。パンタグラフ3自体もばね18の押し上げ力によって、舟板5を架線4に押しつけていて、舟板5は架線4に良く追随するように設計されているため、舟板5はばね18によるパンタグラフの固有振動数で振動する。このばね18による振動は架線4の固定点となる支柱など支持物によるものである。また、パンタグラフ3の舟板5と架線4の接触面はともに細かい凹凸があり、摺動振動を生じる。この摺動振動の周波数は最も高い。以上3つの振動の周波数の関係を図2に示す。12が台車のばね15によるもの、13がパンタグラフ3のばね18、14が舟板5と架線4の摺動振動によるものである。
【0008】
この3つの信号の内、摺動振動14は架線4と舟板5の接触によるものであり、もし、機械的に架線4と舟板5が離れた場合には、舟板5は架線4より自由となり、摺動振動信号14は0となる。
【0009】
このようにパンタグラフ3の船板の運動は、周波数によって三分できるので、フィルタを用いて舟板5の振動信号から、摺動振動信号を取り出すことができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の離線計測方法の一例を図1を用いて説明する。ここでは、光ファイバ加速度センサとして、光ファイバを利用した高岳製作所製FA2010(本体)とFAPl(センサプローブ)を用いる。FAPlは小型軽量であり、パンタグラフの舟板に取り付けてもその運動に影響を与えない。また光ファイバを用いていることから、測定器本体とパンタグラフの間の電気絶縁に対する影響も小さい。FAPlの加速度検出部1は、パンタグラフ3の舟板5に取り付けられる。FAPlの光ファイバ2は車上のFA2010本体7に接続されている。FA2010本体7は車体6に設置され、光信号を電気信号に変換して出力する。加速度を表す電気信号はバンドパスフィルタ8および実効値回路9を介して、コンパレータ10に入力される。バンドパスフィルタ8では、舟板5と架線4の接触状態を表す摺動振動信号成分のみを取り出し、実効値回路9でその振幅の実効値に変換して、コンパレータ10では基準電圧と比較して、離線であるかどうかを判定し、離線信号11を出力する。
【0011】
図4を用いて、各部の信号波形を説明する。図4の(a)はばね15による振動のみを測定したときの光ファイバ加速度計の出力信号である。同様に、(b),(c)はそれぞればね18、摺動振動による振動を単独に光ファイバ加速度計7で測定したときの出力信号である。実際に舟板5の振動を測定すると、作用で述べたように、この3つの振動波形を合成したもの力瓢光ファイバ加速度計7から出力される。これを(d)に示す。バンドパスフィルタ8では(c)に示す摺動振動信号成分のみを通過させ、その他の(a)、(b)に示す信号は阻止される。バンドパスフィルタ8の出力を(e)に示す。(e)は交流信号であり、このままでは大きさの比較が困難であるので、実効値回路9で振幅の大きさの実効値を表す直流信号に変換される。この信号を(f)に示す。この信号をコンパレータ10で基準電圧と比較する。
【0012】
【発明の効果】
以上述べたように、パンタグラフ舟板の振動をモニタすることによって、舟板の運動を直接監視が可能になり、パンタグラフの舟板と架線の離線を正確に計測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による離線計測方法の実施例を示す図である。
【図2】パンタグラフの舟板の振動の周波数特性を示す図である。
【図3】パンタグラフの舟板の振動を説明するための図である。
【図4】各部の信号波形を説明するための図である。
【符号の説明】
1 加速度センサの加速度検出部
2 光ファイバ
3 パンタグラフ
4 架線
5 舟板
6 車体
7 光ファイバ加速度計本体
8 バンドパスフィルタ
9 実効値回路
10 コンパレータ
11 離線信号
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。
▲2▼訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を明りょうでない記載の釈明を目的として、「パンタグラフの舟板に取り付けた光ファイバ加速度センサの光出力信号から、パンタグラフと架線との間の摺動振動成分を取り出し、その振幅の実効値の大きさを基準値と比較して離線を判定するパンタグラフの繭線計測方法。」と訂正して、請求項1とする。
▲3▼訂正事項c
上記訂正事項a、bに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るため、明りようでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明中(特許公報第1頁右欄第15行)の「振動センサ」を「光ファイバ加速度センサ」と訂正する。
▲4▼訂正事項d
上記訂正事項a、bに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るため、明りようでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明中(特許公報第2頁左欄第4〜9行)の「本発明では、パンタグラフの舟板に振動センサを設ける。振動センサの出力からフィルタを用いて離線情報を含んだ信号を取り出す。この信号の振幅の実効値を基準値と比較して離線しているかどうかを判定する。振動センサとしては光ファイバ加速度センサを用いることができる。」を「本発明では、パンタグラフの舟板に取り付けた光ファイバ加速度センサの光出力信号から、パンタグラフと架線の間の摺動振動成分を取り出し、その信号の振幅の実効値の大きさを基準値と比較して離線を判定することを特徴とする。」と訂正する。
▲5▼訂正事項e
上記訂正事項a、bに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るため、明りようでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明中(特許公報第2頁左欄第40〜41行)の「ここでは、振動センサとして加速度センサを用いる。加速度センサとして」を「ここでは、光ファイバ加速度センサとして」と訂正する。
▲6▼訂正事項f
発明の詳細な説明中(特許公報第2頁右欄第1〜3行)の「バンドパスフィルタ8実効値回路9を介して、コンパレータ10に接続されている。」を明りようでない記載の釈明を目的として、「バンドパスフィルタ8および実効値回路9を介して、コンパレータ10に入力される。」と訂正する。
▲7▼訂正事項g
発明の詳細な説明中(特許公報第2頁右欄第10〜11行)の[同様に、(a)(b),(c)は」を誤記の訂正を目的として「同様に、(b),(c)は」と訂正する。
異議決定日 1999-06-25 
出願番号 特願平3-348541
審決分類 P 1 652・ 121- XA (B60L)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 中野 宏和  
特許庁審判長 奥村 壽一
特許庁審判官 江頭 信彦
藤井 浩
登録日 1998-01-30 
登録番号 特許第2741295号(P2741295)
権利者 株式会社高岳製作所 オリックス・レンテック株式会社 東海旅客鉄道株式会社
発明の名称 パンタグラフの離線計測方法  

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