• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1004573
審判番号 審判1997-6599  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-04-25 
確定日 1999-11-08 
事件の表示 平成2年 特 許 願 第313238号「抵抗感圧型タブレット」拒絶査定に対する審判事件〔(平成7年12月20日出願公告、特公平7-120238)、特許請求の範囲に記載された請求項の数( 1)〕について、次のとおり審決する。 
理由 I.出願の経緯及び本願発明
本願は、平成 2年11月19日の出願であって、その請求項1に係る発明は、出願公告後の平成 9年5月23日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の通りのものと認められる(以後、本願発明と称す)。「絶縁基板上の抵抗層の両端に、X軸電極を形成したX軸抵抗板と、絶縁基板上の抵抗層の両端に、Y軸電極を形成したY軸抵抗板とをわずかな絶縁空間をもって重合してなるタブレットにおいて、前記X軸電極とY軸電極との内側にそれぞれX軸補助電極とY軸補助電極を設け、これらX軸補助電極とY軸補助電極の出力電極を位置情報出力電圧と基準出力電圧として利用するようにし、前記補助電極のアナログ出力電圧とペン出力電圧とを、電極間接触抵抗値や導体抵抗値より十分高い入力インピーダンスを有するA/D変換回路と演算回路としてのマイクロコンピュータによりディジタル演算して位置を求めるようにしたことを特徴とする抵抗感圧型タブレット。」
II.引用刊行物
これに対し、当審で拒絶の理由として引用した特開昭62-189525号公報(以後刊行物1と称す)には、
「絶縁基板上の抵抗層(面抵抗4,13)の両端に、X軸電極(1a、1b;2,3;11,12)を形成したX軸抵抗板(X軸側座標入力シート1A、9)と、絶縁基板上の抵抗層(面抵抗4,13)の両端に、Y軸電極(3a,3b;2,3;11,12)を形成したY軸抵抗板(Y軸側座標入力シート1B、9)とを絶縁させて重合してなるタブレット(デジタイザ)において、前記X軸電極とY軸電極のそれぞれに補助電極(電圧印加用リード端子11a,12a、印加電圧(基準電圧)取出し用リード端子11b、12b、電圧印加用オン・オフスイッチ(X-Y電源切換えスイッチ)14,印加電圧(基準電圧)取出し用スイッチ15,アナロググランド取出し用スイッチ16,グランド切換えスイッチ17、分圧取出しスイッチ18)を設け、これらの出力電圧を位置情報出力電圧と基準出力電圧として利用するようにし、前記補助電極のアナログ出力電圧と位置情報出力電圧としてのペン出力電圧とをA/D変換回路(A/Dコンバータ21)と演算回路としてのマイクロコンピュータ(中央情報処理回路)によリディジタル演算して位置を求めるようにした抵抗感圧型タブレット(デジタイザ)であって、前記補助電極の出力電圧(15,16間)を基準出力電圧として利用することにより、位置情報出力を補正し、正確な位置情報を得られるようにしたもの」が記載されており、この構成により、オン・オフスイッチ14による電圧降下(すなわち外部配線抵抗による電圧降下)に起因する入力電圧の変化を除去して(この場合スイッチ以外の外部配線抵抗による電圧変化は無視できるものとしている)無調整で補正できるようにするものである。
また、同様に当審で拒絶の理由として引用した特開昭63-20522号公報(以後、刊行物2と称す)には、
「抵抗感圧型タブレット(ディジタイザ)において、X軸抵抗板のX軸電極とY軸抵抗板のY軸電極との内側にそれぞれ複数のX軸補助電極(中間電極)とY軸補助電極(中間電極)を設け、これら隣接するX軸補助電極間およびY軸補助電極間の出力電圧を基準出力電圧として利用するようにすること」が記載され、この構成によって、電極間距離を小さくし、座標入力シート(抵抗板)の面抵抗の直線性を改善して位置精度を向上しようとするものである。
そして、やはり当審で拒絶の理由として引用した特開昭58-207187号公報(以後、刊行物3と称す)には、
「抵抗感圧型タブレット(座標位置検出装置)において、X軸抵抗板とY軸抵抗板とにそれぞれ設けた電極からA/D変換回路への入力インピーダンスを十分高くすること」が記載されている。
III.対比・判断
本願発明を刊行物1に記載の発明と対比すると、両者は
「絶縁基板上の抵抗層の両端に、X軸電極を形成したX軸抵抗板と、絶縁基板上の抵抗層の両端に、Y軸電極を形成したY軸抵抗板とを絶縁させて重合してなるタブレットにおいて、前記X軸電極とY軸電極のそれぞれに補助電極を設け、これらの出力電圧を位置情報出力電圧と基準出力電圧として利用するようにし、前記補助電極のアナログ出力電圧と位置情報出力電圧としてのペン出力電圧とをA/D変換回路と演算回路としてのマイクロコンピュータによりディジタル演算して位置を求めるようにした抵抗感圧型タブレット。」
である点で一致し、以下の各点で異なる。
相違点1.
本願発明では、A/D変換回路の入力インピーダンスを電極間接触抵抗値や導体抵抗値より十分高くして、これらの抵抗値を無視可能にし、かつ通常必要な前段バッファや増幅器を省略可能としているのに対し、刊行物1に記載の発明では、A/D変換器の前段にオペアンプを用いている。
相違点2.
本願発明では、X軸電極及びY軸電極のそれぞれの内側に、補助電極であるX軸補助電極及びY軸補助電極が設けられているのに対し、刊行物1に記載の発明では、補助電極はX軸電極、Y軸電極に付設されている。
これらの相違点の夫々について、さらに子細に検討を加える。
(1)相違点1について
一般に、計測器等では入力インピーダンスを高くして、外部抵抗の変動の影響を少なくするのが常套手段となっており、刊行物3の記載を参照して、刊行物1に記載の発明の、A/D変換器の前段に入力インピーダンスの高いオペアンプを配置する代わりにA/D変換器の入力インピーダンスそのものを高くする程度のことは、技術者なら当然想到可能である。
(2)相違点2について
刊行物1に記載の発明の構成では、A/D変換器の基準出力電圧となるアナログ電圧はX軸電極、Y軸電極に直接付設した補助電極から出力させる構成としているため、各電極の外部に設けたオン・オフスイッチによる電圧降下の影響は除去できるものの、各抵抗板を流れる電流が比較的大電流であり、X軸電極、Y軸電極の接触抵抗のタブレット個体間のばらつき、径年変化等による変動によって生じる電圧降下量も大きくなって、基準出力電圧、位置情報出力電圧に異なる比率で含まれることになり、両者の比から算定される測定値に大きな影響を及ぼす。これに対し、本願発明では、補助電極をX軸電極、Y軸電極の内側に設けたため、両電極の接触抵抗は影響は基準出力電圧、位置情報出力電圧に同じ比率で含まれるので、測定値としては実質的な影響は受けない。
当審で引用した刊行物2の記載においても、複数の中間電極をX軸電極、Y軸電極の内側に設けて、その隣接する中間電極の出力電圧をA/D変換器の基準出力電圧として利用するようにして測定領域を複数の領域に細分することにより、抵抗板(面抵抗)の抵抗値の直線性の不揃いによる読取り精度(分解能)の低下を防ぐこと、すなわち抵抗板の抵抗値のばらつきを極小化して、その影響を緩和することは示されている。しかし、抵抗板の抵抗値のばらつき以外の要素、すなわち、本願発明で課題としている接触抵抗、導体抵抗のばらつきや変動による測定値への影響についての考察はなく、刊行物2に記載の構成により、結果的には中間電極間での測定値は導体抵抗やX軸、Y軸電極における接触抵抗の影響を免れることができるものの、抵抗板のほぼ全面に加わる印加電圧を基準出力電圧として用い、タブレット全体の導体抵抗、接触抵抗の変動を基準出力電圧、位置情報出力電圧に反映し、測定値の補償に利用することによって、上記導体抵抗、接触抵抗の測定値への影響を無くするという本願発明の技術思想は見られない。
また、本願の原査定の拒絶理由となった特許異議の決定において理由として引用された実願昭62-30830号のマイクロフィルム(実開昭63-139641号公報参照)の第1図(a)の実施例は刊行物1に記載の発明と同様にX軸電極、Y軸電極から出力を得ており、第1図(b)の実施例は、差動アンプとオペレーショナルアンプによって各電極間電圧を一定に保つようにしたもので、いずれも本願発明とは異なり、また同時に引用された実願昭61-63167号のマイクロフィルム(実開昭62-179649号公報参照)に記載のものも刊行物2に記載の発明と同様のものであり、さらに、これらとともに引用された特開昭62-189525号公報は刊行物1と同一物であるため、これらの刊行物のいずれにも相違点2で示した本願発明を刊行物1に記載の発明と明確に区別する構成を示す記載及びこの構成を示唆するような記載もなく、また上記構成により刊行物1に記載の発明の有さない格別の作用効果を奏していると認められるため、本願発明は、これら引用刊行物に記載の発明から容易に想到できたとも言えない。
IV.むすび
したがって、本願発明は、各引用刊行物に記載の発明であるとも、これらの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとも認められないので、「本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」として本願を拒絶すべきものとした原査定は妥当ではない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 1999-10-15 
出願番号 特願平2-313238
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 義男山崎 慎一  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 小川 謙
内藤 二郎
発明の名称 抵抗感圧型タブレット  
代理人 加納 一男  
代理人 古澤 俊明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ