• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1004845
審判番号 審判1997-6696  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-04-28 
確定日 1999-10-04 
事件の表示 平成5年特許願第308244号「半導体装置の製造方法」拒絶査定に対する審判事件(平成7年6月23日出願公開、特開平7-161813)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年12月8日の出願であって、その発明の要旨は、平成9年5月28日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された「半導体装置の製造方法」にあるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「第1発明」という)は、次のとおりのものである。
「半導体素子あるいは下層配線に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔にTi膜を形成する工程と、AlまたはA1合金膜を200℃以下でスパッタリング法により配線として要求される厚さ形成する工程と、基板を加熱し、前記AlまたはAl合金膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程と、その後前記AlまたはAl合金膜と前記Ti膜をパターニングして配線を形成する工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記Ti膜の膜厚が前記AlあるいはAl合金膜の膜厚の10%以下かつ25nm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。」
2.引用例
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平5-102064号公報(以下、「引用例」という)には、
「本発明は、半導体装置におけるビアホールにメタルプラグを形成する方法に関し、特にレーザ溶融技術を用いるメタルプラグ形成方法に関する。」(【0001】)
「一般に、金属膜の堆積は最初に島状成長から始まり、それが網目状成長に移行する不連続膜状態の成長から、最後に連続膜成長へと移行する。従って、膜厚が薄い場合には、島状段階で堆積が終了する可能性が大きい。特に、ビアホールの側壁の上では、金属原子の飛来確率が小さくなるから島状段階で堆積が終了する可能性が一層大きい。
図4は連続膜状態からのレーザプラグ法を説明する模式図である。図4(a)は、ビアホール53の側壁上に、金属膜が連続膜状態に形成されている状態を示す図である。この状態にある金属膜をレーザ溶融することによって、図4(b)に示されるような所期のプラグ55が形成される。
図5は不連続膜状態からのレーザプラグ法を説明する模式図である。図5(a)は、島状成長或いは網目状成長のような金属の不連続膜がビアホール53の側壁上に形成されている状態を示す図である。この状態にある金属膜をレーザ溶融すると、側壁上の金属膜の一部又は全部がビア53の上部又は底部に物質移動して、図5(b)に示されるようなボイド56が発生する。」(【0006】〜【0008】、
「本発明は金属固有の凝集作用を低減することにより、薄い金属の連続膜をビアホール側壁上に形成し、これをレーザ溶融することによりメタルプラグを形成する方法を提供することを目的とする。
上記の課題は、プラグ形成用金属薄膜を堆積する前に、厚さ50nm以下の”ぬれ性”が良い材料より成る下地膜を形成する工程と、100℃以下の基板温度において該プラグ形成用金属材料(Al)を堆積する工程を有するメタルプラグ形成方法によって解決される。」(【0011】〜【0012】)、
「連続膜状態を実現するためには、飛来金属原子が堆積する際の凝集作用を弱めればよい。そのために本発明においては、チタニウム(Ti)や窒化チタニウム(TiN)のような飛来する金属の”ぬれ性”が良い材料膜6を下地として形成しておく。」(【0014】)、
「キャップ金属を形成する場合の基板温度を100℃以下に保持することにより該金属の凝集力が低減される。」(【0016】)、
「【実施例】本発明の実施例について以下に説明する。図2はメタルプラグを形成する製造工程を説明するための模式図である。
図2(a)に示されるように、通常の方法により、Si基板1表面を酸化してSi酸化膜(SiO2膜)2を形成し、該SiO2膜2にビアホール3を形成する。図2(b)に示されるように、”ぬれ性”の良い下地材料膜6として厚さ100nmのTiN膜を通常のスパッタリング法により堆積する。
”ぬれ性”の良い下地材料膜6として、TiNの代わりに、厚さ20nmのTi膜を使用することもできる。図2(c)に示されるように、RIE(ReactiveIon Etching)法によって、ビアホール3の側壁上のみに残るようにTi膜6を除去する。
図2(d)に示されるように、通常のスパッタリング法により厚さが約200nmのA1膜を堆積する。この際、基板温度は、室温乃至100℃の範囲の一定温度に保持される。次いでこれをパターニングして金属キャップ4を形成する。
図2(e)に示されるように、パノレスレーザ照射を行って、金属キャップ4をレーザ溶融し、ビアホール3にメタルプラグ5を形成する。レーザには、XeClエキシマレーザを用い、パルスエネルギー密度は、約0.6J/cm2である。
”ぬれ性”の良い下地材料膜6として、TiN膜の代わりに、Ti膜を使用する場合は、キャップ金属4のレーザ溶融時にTi膜も同時に溶融するため、特に図2(c)に対応する工程は省略できる。」(【0017】〜【0022】)が図面とともに記載されており、また図2(d)から図2(e)にかけて、表面に存在した凹部が埋込まれて平坦化する様子が示されている。
そして、本願第1発明の「半導体素子」、「接続孔」、「層間絶縁膜」はそれぞれ引用例に記載された発明の「Si基板」、「ビアホール」、「絶縁体層」に相当する。したがって、上記各記載及び図面から、引用例には、
「半導体素子に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔に金属膜をスパッタリング法により形成する工程と、前記金属膜を加熱し、前記金属膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程とを含む半導体装置の製造方法において、ボイドが発生して接続孔を埋込むことができない場合があること。」、
「半導体素子に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔に金属膜をスパッタリング法により形成する工程と、前記金属膜を加熱し、前記金属膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記接続孔に前記金属膜をボイドを生じることなく埋込むためには、接続孔の側壁上に前記金属膜が連続膜状態に形成されている状態で前記金属膜を加熱して流動させることが必要であること。」、
「金属膜を連続膜状態に形成するためには、厚さ50nm以下のTi膜を下地として形成しておき、かつ金属膜を形成する場合の基板温度を100℃以下に保持することが望ましいこと。」、及び、実施例に、「半導体素子に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔にTi膜を形成する工程と、A1膜を100℃以下でスパッタリング法により200nm形成する工程と、前記Al膜を加熱し、前記A1膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記Ti膜の膜厚を20nmとすることで、前記接続孔の側壁上に前記A1膜を連続膜状態に形成でき、その結果、前記接続孔に前記Al膜をボイドを生じることなく埋込むことができたこと。」が記載されているものと認められる。
一方、半導体素子あるいは下層配線に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔にAlまたはAl合金膜をスパッタリング法により配線として要求される厚さ形成する工程と、前記AlまたはAl合金膜を加熱し、前記AlまたはAl合金膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程と、その後前記AlまたはAl合金膜をパターニングして配線を形成する工程とを含む半導体装置の製造方法は、本願出願時において周知であると認められる。(このことは、例えば本願明細書の従来の技術の欄に提示された文献である特開平3-188267号公報の記載からも明らかである。)
3.対比
本願第1発明と、前記周知の半導体装置の製造方法に係る発明とを対比すると、両者は、「半導体素子あるいは下層配線に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔にAlまたはAl合金膜をスパッタリング法により配線として要求される厚さ形成する工程と、加熱し、前記AlまたはA1合金膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程と、その後前記AlまたはAl合金膜をパターニングして配線を形成する工程とを含む半導体装置の製造方法」である点で一致し、
本願第1発明では、AlまたはAl合金膜の形成に先だって、「AlあるいはAl合金膜の膜厚の10%以下かつ25nm以下のTi膜を形成」しているのに対して、前記周知の半導体装置の製造方法は、AlまたはAl合金膜の形成に先だって、AlあるいはAl合金膜の膜厚の10%以下かつ25nm以下のTi膜を形成する工程を有していない点(相違点1)、
本願第1発明では、「AlまたはAl合金膜を200℃以下で形成」しているのに対して、前記周知の半導体装置の製造方法は、AlまたはAl合金膜を形成する温度を規定していない点(相違点2)、
本願第1発明では、AlまたはAl合金膜を流動させて接続孔を埋込むとともに表面を平坦化するために「基板を加熱」しているのに対して、前記周知の半導体装置の製造方法は、AlまたはAl合金膜を加熱している点(相違点3)、
また、本願第1発明では、AlまたはAl合金と共に「Ti膜をパターニング」しているのに対して、前記周知の半導体装置の製造方法は、Ti膜のパターニングについて規定していない点(相違点4)で相違する。
4.当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1、2について)
引用例には、半導体素子に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔に金属膜をスパッタリング法により形成する工程と、前記金属膜を加熱し、前記金属膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程とを含む半導体装置の製造方法において、ボイドが発生して接続孔を埋込むことができない場合があることが示されている。
してみれば、半導体素子に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔に金属膜をスパッタリング法により形成する工程と、前記金属膜を加熱し、前記金属膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程とを含む半導体装置の製造方法である点で引用例に記載された発明と同一の構成を有する前記周知の半導体装置の製造方法においても、ボイドが発生して接続孔を埋込むことができない場合があることは当業者であれば容易に予測し得たことである。そして、この不具合の発生を防止するための手段が知られていればこれを採用して、ボイドの発生を防ぐことは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないといえる。
ところで、引用例には、接続孔の側壁上に金属膜を連続膜状態に形成した状態で金属膜を加熱して流動させることで、接続孔に金属膜をボイドを生じることなく埋込むことができると示されている。また、金属膜を連続膜状態に形成するためには、厚さ50nm以下のTi膜を下地として形成し、かつ金属膜を形成する場合の基板温度を100℃以下に保持することが望ましいことも示されている。
そして、具体的には引用例の実施例に、半導体素子に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔にTi膜を20nm形成し、Al膜を100℃以下でスパッタリング法により200nm形成した後に、前記Al膜を加熱し、前記Al膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化することで、前記接続孔の側壁上に前記Al膜を連続膜状態に形成でき、その結果、前記接続孔に前記Al膜をボイドを生じることなく埋込むことができると記載されている。
ところで、厚さ20nmのTi膜上にAl膜を200nm形成すると接続孔の側壁上にAl膜が連続膜状態に形成されるのであれば、これ以後成膜を継続して膜厚を増大してもA1膜が連続膜状態に形成されることは変わらない。してみれば、形成すべきAl膜の厚さが200nmであっても、あるいは200nm以上の「配線として要求される厚さ」であったとしても、下地のTi膜の膜厚が20nmあれば、接続孔の側壁上にA1膜を連続膜状態で形成することができ、その結果として、前記接続孔をボイドなく埋込みできるといえる。そして、このときの20nmというTi膜の膜厚は200nm以上のA1膜の膜厚の10%以下にあたる。
してみれば、半導体素子あるいは下層配線に達する接続孔を形成した層間絶縁膜及び前記接続孔にAlまたはAl合金膜をスパッタリング法により配線として要求される厚さ形成する工程と、前記AlまたはAl合金膜を加熱し、前記AlまたはAl合金膜を流動させて前記接続孔を埋込むとともに表面を平坦化する工程と、その後前記AlまたはAl合金膜をパターニングして配線を形成する工程とを含む前記周知の半導体装置の製造方法において、AlまたはA1合金膜の形成に先だって、AlあるいはAl合金膜の膜厚の10%以下かつ20nm以下のTi膜を形成し、かつ、AlまたはAl合金膜を100℃以下で形成することで、前記接続孔の側壁上に前記AlまたはAl合金膜を連続膜状態に形成し、その結果として、前記接続孔に前記AlまたはAl合金膜をボイドを生じることなく埋込むようにすることは当業者が容易に想到し得たことであると認められる。
(相違点3について)
AlまたはAl合金膜の流動のための加熱は、AlまたはAl合金膜の温度が上昇してAlまたはAl合金膜が流動するという効果が生じればよいのであり、AlまたはAl合金膜を加熱しても、基板を加熱しても、同様な効果を生じるから、両加熱方法の間に格別の差異は認められない。
また、基板を加熱してAlまたはAl合金膜を流動するという方法自体は周知でもある。(このことは、例えば本願明細書の従来の技術の欄に提示された文献である本願出願日前に頒布された刊行物の記載からも明らかである。)
したがって、AlまたはAl合金膜の流動のための加熱方法として、AlまたはAl合金膜を加熱する方法を採用するか、基板を加熱する方法を採用するかは、当業者が適宜選択し得た設計事項にすぎないと認められる。
(相違点4について)
AlまたはA1合金膜をパターニングして配線を形成するにあたり、下地のTi膜を一緒にパターニングすることは単なる設計事項にすぎない。
したがって、上記各相違点は格別なものとは認められない。
そして、本願第1発明は、その他前記引用例に記載されたものから予測し得ない効果を奏するということもできない。
なお、請求人は請求の理由において、「本願発明は、接続孔の底でのA1等とTiとの濡れ性を良くするために、接続孔底部にTi膜を所定の厚さ形成することが一つの特徴であり、引用例1には、接続孔底部での膜厚が重要であるとの示唆もない。」と主張する。しかしながら、本願明細書全体を精査しても、「接続孔の底でのA1等とTiとの濡れ性を良くするために、接続孔底部にTi膜を所定の厚さ形成する」旨の記載はなく、また、本願明細書に、「接続孔底部での膜厚が重要であるとの示唆」も認められない。したがって、請求人の前記主張は根拠がないから採用できない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-07-01 
結審通知日 1999-07-16 
審決日 1999-07-26 
出願番号 特願平5-308244
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 知久  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 橋本 武
加藤 浩一
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 京本 直樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ